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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20230614BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20230614BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20230614BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20230614BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20230614BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230614BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
H02J50/80
H02J50/90
H02M7/12
H02M7/48 E
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019144091
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021027705
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】宇田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 侑生
(72)【発明者】
【氏名】清水 敏久
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-046824(JP,A)
【文献】特開2003-189636(JP,A)
【文献】特開2005-210862(JP,A)
【文献】特開2014-110662(JP,A)
【文献】特開2015-107027(JP,A)
【文献】特開2018-064333(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118274(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00
H02M 7/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電装置(100,100b,100c,100d)であって、
電源(PW)から入力される直流電力の電圧波形を変化させて変換直流電力として出力する可変電圧回路(132)と、
前記可変電圧回路に接続され、前記変換直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(122)と、
前記インバータ回路に接続され、前記出力された交流電力を供給される送電コイル(112)と、
前記インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する送電制御装置(150,150b、150d)と、を備え
前記送電制御装置は、
前記インバータ回路から出力される交流電力の電流波形(I1)を取得し、
前記取得した電流波形と、予め定められた目標電流波形(Id)とを比較し、
前記取得した電流波形と、前記予め定められた目標電流波形との差(GP)が小さくなる電圧波形に変化させた前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する、
非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電装置であって、
前記送電制御装置は、
前記インバータ回路から出力される交流電力の電流値を取得し、
前記インバータ回路から出力される交流電力の電流値と、前記インバータ回路が出力する交流電力の電圧損失(Dp)を補填する目標出力電圧との対応関係を表す電圧ドロップマップを参照して、前記取得した電流値から前記変換直流電力を決定する
非接触給電装置。
【請求項3】
請求項1に記載の非接触給電装置であって、
前記送電制御装置は、
前記インバータ回路から出力される交流電力の電圧波形(V1)を取得し、
前記取得した電圧波形から、前記インバータ回路が出力する交流電力の電圧損失(Dp)を取得し、
前記電圧損失に対応する電圧を補正した電圧波形で前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する
非接触給電装置。
【請求項4】
前記送電制御装置は、段階的な電圧値からなる矩形波の前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の非接触給電装置。
【請求項5】
前記可変電圧回路は、
第1スイッチ(SW1)と第2スイッチ(SW2)とを中間接続点(41M)を介して互いに直列接続されたスイッチ直列体(41)と、前記スイッチ直列体の一端側の第1接続部(421)と他端側の第2接続部(422)とに接続され前記スイッチ直列体と並列接続されたコンデンサ(Cm2)と、を備える回路ユニット(40)を複数備え、前記回路ユニットを互いに接続した回路ユニット群(400)と、
前記第1接続部を前記インバータ回路の一端側と接続される最終段の回路ユニット(40Z)の前記第2接続部と、前記電源の負極との間に接続され、前記回路ユニットごとに対応する複数の第3スイッチ(SW3)を互いに直列接続する直列スイッチユニット(60)と、を備える電気回路であり、
前記回路ユニット群は、
前記電源の負極と前記直列スイッチユニットの一端と、前記インバータ回路の他端側とが接続され、
1段目の前記回路ユニットの前記中間接続点に、前記電源の正極が接続され、
kを2以上の自然数としたとき、k段目の前記回路ユニットの前記中間接続点に、k-1段目の前記回路ユニットの前記第1接続部が接続され、
k段目の前記回路ユニットの前記第2接続部と、k-1段目の前記回路ユニットの前記第2接続部との間には、前記第3スイッチが接続され、
1段目の前記回路ユニットの前記第2接続部と前記電源の負極との間には、前記直列スイッチユニットにおける前記第3スイッチが接続されて構成される
請求項に記載の非接触給電装置。
【請求項6】
前記送電制御装置は、正弦波の前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の非接触給電装置。
【請求項7】
前記可変電圧回路は、降圧コンバータを含む電気回路で構成される、
請求項に記載の非接触給電装置。
【請求項8】
前記送電制御装置は、前記非接触給電装置からの出力電圧として要求される出力電圧指令値(Vx)と、前記変換直流電力の出力電圧との対応関係を表す可変電圧出力マップ(MP)を参照して、入力された前記出力電圧指令値から前記変換直流電力を決定する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の非接触給電装置。
【請求項9】
非接触給電装置(100,100b,100c,100d)であって、
電源(PW)から入力される直流電力の電圧波形を変化させて変換直流電力として出力する可変電圧回路(132)と、
前記可変電圧回路に接続され、前記変換直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(122)と、
前記インバータ回路に接続され、前記出力された交流電力を供給される送電コイル(112)と、
前記インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する送電制御装置(150,150b、150d)と、を備え
前記送電制御装置は、
前記インバータ回路から出力される交流電力の電流値を取得し、
前記インバータ回路から出力される交流電力の電流値と、前記インバータ回路が出力する交流電力の電圧損失(Dp)を補填する目標出力電圧との対応関係を表す電圧ドロップマップを参照して、前記取得した電流値から前記変換直流電力を決定する、
非接触給電装置。
【請求項10】
請求項に記載の非接触給電装置であって、
前記送電制御装置は、
前記インバータ回路から出力される交流電力の電圧波形(V1)を取得し、
前記取得した電圧波形から、前記インバータ回路が出力する交流電力の電圧損失(Dp)を取得し、
前記電圧損失に対応する電圧を補正した電圧波形で前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する
非接触給電装置。
【請求項11】
前記送電制御装置は、段階的な電圧値からなる矩形波の前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する
請求項9または請求項10に記載の非接触給電装置。
【請求項12】
前記可変電圧回路は、
第1スイッチ(SW1)と第2スイッチ(SW2)とを中間接続点(41M)を介して互いに直列接続されたスイッチ直列体(41)と、前記スイッチ直列体の一端側の第1接続部(421)と他端側の第2接続部(422)とに接続され前記スイッチ直列体と並列接続されたコンデンサ(Cm2)と、を備える回路ユニット(40)を複数備え、前記回路ユニットを互いに接続した回路ユニット群(400)と、
前記第1接続部を前記インバータ回路の一端側と接続される最終段の回路ユニット(40Z)の前記第2接続部と、前記電源の負極との間に接続され、前記回路ユニットごとに対応する複数の第3スイッチ(SW3)を互いに直列接続する直列スイッチユニット(60)と、を備える電気回路であり、
前記回路ユニット群は、
前記電源の負極と前記直列スイッチユニットの一端と、前記インバータ回路の他端側とが接続され、
1段目の前記回路ユニットの前記中間接続点に、前記電源の正極が接続され、
kを2以上の自然数としたとき、k段目の前記回路ユニットの前記中間接続点に、k-1段目の前記回路ユニットの前記第1接続部が接続され、
k段目の前記回路ユニットの前記第2接続部と、k-1段目の前記回路ユニットの前記第2接続部との間には、前記第3スイッチが接続され、
1段目の前記回路ユニットの前記第2接続部と前記電源の負極との間には、前記直列スイッチユニットにおける前記第3スイッチが接続されて構成される
請求項11に記載の非接触給電装置。
【請求項13】
前記送電制御装置は、正弦波の前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する
請求項9または請求項10に記載の非接触給電装置。
【請求項14】
前記可変電圧回路は、降圧コンバータを含む電気回路で構成される、
請求項13に記載の非接触給電装置。
【請求項15】
前記送電制御装置は、前記非接触給電装置からの出力電圧として要求される出力電圧指令値(Vx)と、前記変換直流電力の出力電圧との対応関係を表す可変電圧出力マップ(MP)を参照して、入力された前記出力電圧指令値から前記変換直流電力を決定する
請求項から請求項14のいずれか一項に記載の非接触給電装置。
【請求項16】
非接触給電装置(100,100b,100c,100d)であって、
電源(PW)から入力される直流電力の電圧波形を変化させて変換直流電力として出力する可変電圧回路(132)と、
前記可変電圧回路に接続され、前記変換直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(122)と、
前記インバータ回路に接続され、前記出力された交流電力を供給される送電コイル(112)と、
前記インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する送電制御装置(150,150b、150d)と、を備え
前記送電制御装置は、
前記インバータ回路から出力される交流電力の電圧波形(V1)を取得し、
前記取得した電圧波形から、前記インバータ回路が出力する交流電力の電圧損失(Dp)を取得し、
前記電圧損失に対応する電圧を補正した電圧波形で前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する、
非接触給電装置。
【請求項17】
前記送電制御装置は、段階的な電圧値からなる矩形波の前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する
請求項16に記載の非接触給電装置。
【請求項18】
前記可変電圧回路は、
第1スイッチ(SW1)と第2スイッチ(SW2)とを中間接続点(41M)を介して互いに直列接続されたスイッチ直列体(41)と、前記スイッチ直列体の一端側の第1接続部(421)と他端側の第2接続部(422)とに接続され前記スイッチ直列体と並列接続されたコンデンサ(Cm2)と、を備える回路ユニット(40)を複数備え、前記回路ユニットを互いに接続した回路ユニット群(400)と、
前記第1接続部を前記インバータ回路の一端側と接続される最終段の回路ユニット(40Z)の前記第2接続部と、前記電源の負極との間に接続され、前記回路ユニットごとに対応する複数の第3スイッチ(SW3)を互いに直列接続する直列スイッチユニット(60)と、を備える電気回路であり、
前記回路ユニット群は、
前記電源の負極と前記直列スイッチユニットの一端と、前記インバータ回路の他端側とが接続され、
1段目の前記回路ユニットの前記中間接続点に、前記電源の正極が接続され、
kを2以上の自然数としたとき、k段目の前記回路ユニットの前記中間接続点に、k-1段目の前記回路ユニットの前記第1接続部が接続され、
k段目の前記回路ユニットの前記第2接続部と、k-1段目の前記回路ユニットの前記第2接続部との間には、前記第3スイッチが接続され、
1段目の前記回路ユニットの前記第2接続部と前記電源の負極との間には、前記直列スイッチユニットにおける前記第3スイッチが接続されて構成される
請求項17に記載の非接触給電装置。
【請求項19】
前記送電制御装置は、正弦波の前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する
請求項16に記載の非接触給電装置。
【請求項20】
前記可変電圧回路は、降圧コンバータを含む電気回路で構成される、
請求項19に記載の非接触給電装置。
【請求項21】
前記送電制御装置は、前記非接触給電装置からの出力電圧として要求される出力電圧指令値(Vx)と、前記変換直流電力の出力電圧との対応関係を表す可変電圧出力マップ(MP)を参照して、入力された前記出力電圧指令値から前記変換直流電力を決定する
請求項16から請求項20のいずれか一項に記載の非接触給電装置。
【請求項22】
非接触給電装置(100,100b,100c,100d)であって、
電源(PW)から入力される直流電力の電圧波形を変化させて変換直流電力として出力する可変電圧回路(132)と、
前記可変電圧回路に接続され、前記変換直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(122)と、
前記インバータ回路に接続され、前記出力された交流電力を供給される送電コイル(112)と、
前記インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する送電制御装置(150,150b、150d)と、を備え
前記送電制御装置は、正弦波の前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する、
非接触給電装置。
【請求項23】
前記可変電圧回路は、降圧コンバータを含む電気回路で構成される、
請求項22に記載の非接触給電装置。
【請求項24】
前記送電制御装置は、前記非接触給電装置からの出力電圧として要求される出力電圧指令値(Vx)と、前記変換直流電力の出力電圧との対応関係を表す可変電圧出力マップ(MP)を参照して、入力された前記出力電圧指令値から前記変換直流電力を決定する
請求項22または請求項23に記載の非接触給電装置。
【請求項25】
非接触給電装置(100,100b,100c,100d)であって、
電源(PW)から入力される直流電力の電圧波形を変化させて変換直流電力として出力する可変電圧回路(132)と、
前記可変電圧回路に接続され、前記変換直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(122)と、
前記インバータ回路に接続され、前記出力された交流電力を供給される送電コイル(112)と、
前記インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する送電制御装置(150,150b、150d)と、を備え
前記送電制御装置は、前記非接触給電装置からの出力電圧として要求される出力電圧指令値(Vx)と、前記変換直流電力の出力電圧との対応関係を表す可変電圧出力マップ(MP)を参照して、入力された前記出力電圧指令値から前記変換直流電力を決定する、
非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源からの直流電力を交流電力に変換して送電コイルに入力させる非接触給電装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-64333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非接触給電装置では、高調波成分を含む交流電力が送電コイルに入力されると、受電側への電力伝送の効率を低下させるといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、非接触給電装置(100,100b,100c,100d)が提供される。この非接触給電装置は、電源(PW)から入力される直流電力の電圧波形を変化させて変換直流電力として出力する可変電圧回路(132)と、前記可変電圧回路に接続され、前記変換直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(122)と、前記インバータ回路に接続され、前記出力された交流電力を供給される送電コイル(112)と、前記インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する送電制御装置(150,150b、150d)と、を備える。前記送電制御装置は、前記インバータ回路から出力される交流電力の電流波形(I1)を取得し、前記取得した電流波形と、予め定められた目標電流波形(Id)とを比較し、前記取得した電流波形と、前記予め定められた目標電流波形との差(GP)が小さくなる電圧波形に変化させた前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する。
本開示の第二の形態によれば、非接触給電装置(100,100b,100c,100d)が提供される。この非接触給電装置は、電源(PW)から入力される直流電力の電圧波形を変化させて変換直流電力として出力する可変電圧回路(132)と、前記可変電圧回路に接続され、前記変換直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(122)と、前記インバータ回路に接続され、前記出力された交流電力を供給される送電コイル(112)と、前記インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する送電制御装置(150,150b、150d)と、を備える。前記送電制御装置は、前記インバータ回路から出力される交流電力の電流値を取得し、前記インバータ回路から出力される交流電力の電流値と、前記インバータ回路が出力する交流電力の電圧損失(Dp)を補填する目標出力電圧との対応関係を表す電圧ドロップマップを参照して、前記取得した電流値から前記変換直流電力を決定する。
本開示の第三の形態によれば、非接触給電装置(100,100b,100c,100d)が提供される。この非接触給電装置は、電源(PW)から入力される直流電力の電圧波形を変化させて変換直流電力として出力する可変電圧回路(132)と、前記可変電圧回路に接続され、前記変換直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(122)と、前記インバータ回路に接続され、前記出力された交流電力を供給される送電コイル(112)と、前記インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する送電制御装置(150,150b、150d)と、を備える。前記送電制御装置は、前記インバータ回路から出力される交流電力の電圧波形(V1)を取得し、前記取得した電圧波形から、前記インバータ回路が出力する交流電力の電圧損失(Dp)を取得し、前記電圧損失に対応する電圧を補正した電圧波形で前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する。
本開示の第四の形態によれば、非接触給電装置(100,100b,100c,100d)が提供される。この非接触給電装置は、電源(PW)から入力される直流電力の電圧波形を変化させて変換直流電力として出力する可変電圧回路(132)と、前記可変電圧回路に接続され、前記変換直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(122)と、前記インバータ回路に接続され、前記出力された交流電力を供給される送電コイル(112)と、前記インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する送電制御装置(150,150b、150d)と、を備える。前記送電制御装置は、正弦波の前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する。
本開示の第五の形態によれば、非接触給電装置(100,100b,100c,100d)が提供される。この非接触給電装置は、電源(PW)から入力される直流電力の電圧波形を変化させて変換直流電力として出力する可変電圧回路(132)と、前記可変電圧回路に接続され、前記変換直流電力を交流電力に変換するインバータ回路(122)と、前記インバータ回路に接続され、前記出力された交流電力を供給される送電コイル(112)と、前記インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる前記変換直流電力を出力するように前記可変電圧回路を制御する送電制御装置(150,150b、150d)と、を備える。前記送電制御装置は、前記非接触給電装置からの出力電圧として要求される出力電圧指令値(Vx)と、前記変換直流電力の出力電圧との対応関係を表す可変電圧出力マップ(MP)を参照して、入力された前記出力電圧指令値から前記変換直流電力を決定する。
【0007】
この形態の非接触給電装置によれば、送電制御装置は、インバータ回路から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる変換直流電力を出力するように可変電圧回路を制御する。そのため、高調波成分を低減した交流電力を送電コイルに供給することができ、受電側への伝送効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】非接触給電システムの全体構成を示すブロック図。
図2】非接触給電装置と非接触受電装置とを示すブロック図。
図3】可変電圧回路の概要を表す回路図。
図4】直列状態の可変電圧回路を表す回路図。
図5】並列状態の可変電圧回路を表す回路図。
図6】可変電圧回路が出力する直流電力の電圧波形を表す説明図。
図7】インバータ回路が出力する交流電力の電流波形を表す説明図。
図8】第2実施形態の非接触給電装置を表すブロック図。
図9】インバータ回路が出力する交流電力の電圧波形を表す説明図。
図10】可変電圧回路が出力する直流電力の電圧波形を表す説明図。
図11】第3実施形態での可変電圧回路を表す回路図。
図12】第3実施形態の可変電圧回路が出力する直流電圧の電圧波形を表す説明図。
図13】第4実施形態の非接触給電装置を表すブロック図。
図14】他の実施形態の可変電圧回路を表す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1に示すように、非接触給電システム300は、車両200の走行中に電力を供給することが可能なシステムである。車両200は、例えば、電気自動車やハイブリッド車等の駆動モータを搭載する車両で構成される。非接触給電システム300は、道路RSに設置される非接触給電装置100と、道路RSを走行する車両200に搭載される非接触受電装置205とを含む。本実施形態の非接触給電装置100は、複数の送電共振回路110と、複数の送電回路120と、電源回路130と、受電コイル位置検出部140と、送電制御装置150とを備えている。
【0010】
複数の送電共振回路110は、道路RSの延在方向である車両200の進行方向に沿って道路RSの内部に埋設されている。個々の送電共振回路110は、後述するように送電コイルおよび共振コンデンサを含む。送電共振回路110は、送電コイルおよび共振コンデンサの両方を道路RSの延在方向に沿って設置する必要はなく、複数の送電コイルを道路RSの延在方向に沿って設置していればよい。
【0011】
複数の送電回路120は、電源回路130から供給される直流電力を交流電力に変換して送電共振回路110の送電コイルに供給する回路である。電源回路130は、直流電力を送電回路120に供給する回路である。送電回路120および電源回路130の具体的な構成例については後述する。
【0012】
受電コイル位置検出部140は、車両200の底部に設置された受電コイルの位置を検出する。複数の送電回路120は、受電コイル位置検出部140で検出された受電コイルの位置に応じて、受電共振回路210に近い1つ以上の送電共振回路110を用いて送電を実行する。受電コイル位置検出部140は、例えば、複数の送電回路120における送電電力や送電電流の大きさから受電コイルの位置を検出してもよく、車両200の位置を検出する位置センサや測距装置を利用して受電コイルの位置を検出してもよい。
【0013】
車両200は、非接触受電装置205と、メインバッテリ230と、モータジェネレータ240と、受電側インバータ回路250と、DC/DCコンバータ回路260と、補機バッテリ270と、補機280と、受電制御装置290とを備えている。非接触受電装置205は、受電共振回路210と受電回路220とを有している。
【0014】
受電共振回路210は、受電コイルおよび共振コンデンサを含んでおり、送電共振回路110との間の電磁誘導現象によって受電コイルに誘導された交流電力を受電する装置である。受電回路220は、受電共振回路210から出力される交流電力を直流電力に変換する回路である。受電回路220から出力される直流電力は、負荷としてのメインバッテリ230の充電に利用することができ、また、補機バッテリ270の充電や、モータジェネレータ240の駆動、及び、補機280の駆動にも利用可能である。
【0015】
メインバッテリ230は、モータジェネレータ240を駆動するための直流電力を出力する2次電池である。モータジェネレータ240は、モータとして動作し、車両200の走行のための駆動力を発生する。モータジェネレータ240は、車両200の減速時にはジェネレータとして動作し、3相交流電力を発生する。受電側インバータ回路250は、モータジェネレータ240がモータとして動作するとき、メインバッテリ230の直流電力を3相交流電力に変換してモータジェネレータ240を駆動する。受電側インバータ回路250は、モータジェネレータ240がジェネレータとして動作するとき、モータジェネレータ240が出力する3相交流電力を直流電力に変換してメインバッテリ230に供給する。
【0016】
DC/DCコンバータ回路260は、メインバッテリ230の直流電圧を、より低い直流電圧に変換して補機バッテリ270及び補機280に供給する。補機バッテリ270は、補機280を駆動するための直流電力を出力する2次電池である。補機280は、空調装置や電動パワーステアリング装置等の周辺装置である。
【0017】
受電制御装置290は、CPUやメモリを備え、車両200内の各部を制御する。受電制御装置290は、走行中に非接触給電を受ける際には、受電回路220を制御して受電を実行する。
【0018】
非接触給電装置100の電源回路130、1つの送電回路120および送電共振回路110と、車両200の非接触受電装置205の受電共振回路210および受電回路220とは、図2に示す等価回路として表される。
【0019】
受電回路220は、2つのインダクタンス224Lと1つのコンデンサ224Cを有するイミタンス変換回路224と、交流電力を直流電力に変換する整流回路226と、メインバッテリ230の充電に適した直流電力に変換する電力変換回路としてのDC/DCコンバータ回路228とを有する。イミタンス変換回路224は、T-LCL型ローパスフィルタとして構成される。
【0020】
送電共振回路110は、本実施形態において、直列に接続された送電コイル112と共振コンデンサ116とを有している。受電共振回路210は、直列に接続された受電コイル212と共振コンデンサ216とを有している。送電共振回路110および受電共振回路210には、一次直列二次直列コンデンサ方式(「SS方式」とも呼ばれる)による磁気共振方式が適用されている。送電共振回路110および受電共振回路210は、送電側単相-受電側単相の非接触給電方式を適用し、送電側を単相の送電コイル112で構成し、受電側を単相の受電コイル212で構成する。
【0021】
送電回路120は、インバータ回路122と、インバータ回路122から出力された交流電力の電流値を取得する電流センサ123と、2つのインダクタンス124Lと1つのコンデンサ124Cを有するイミタンス変換回路124とを有している。インバータ回路122は、電源回路130から入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。電流センサ123は、インバータ回路122から出力される交流電力の電流値を連続的に取得することで電流波形I1として取得して送電制御装置150に出力する。イミタンス変換回路124は、T-LCL型のローパスフィルタとして構成される。送電制御装置150については後述する。
【0022】
電源回路130は、直流電源である電源PWと、可変電圧回路132とを備える。本実施形態において、可変電圧回路132は、電源PWから入力される直流電力の電圧波形を変化させてインバータ回路122に出力する。可変電圧回路132によって電圧波形を変化された直流電力を、以下、変換直流電力とも呼ぶ。
【0023】
次に図3から図6を用いて電源回路130が有する可変電圧回路132の詳細について説明する。図3に示すように、可変電圧回路132は、電源PWに並列接続されるコンデンサCm1と、回路ユニット群400と、直列スイッチユニット60とで構成される。
【0024】
回路ユニット群400は、互いに接続されるk段からなる複数の回路ユニット40によって構成される。kは2以上の自然数であり、可変電圧回路132の出力電圧に応じて任意の数で設定してよい。図3では、k=3であり、3段の回路ユニット40で構成された回路ユニット群400の例が示されている。各回路ユニット40は、説明の便宜のため、電源PWに近い側から、1段目を回路ユニット40Aとも呼び、2段目を回路ユニット40Bとも呼び、最終段となる3段目を回路ユニット40Zとも呼ぶ。
【0025】
回路ユニット40は、それぞれ、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2とを中間接続点41Mを介して互いに直列接続されたスイッチ直列体41と、スイッチ直列体41の一端側の第1接続部421と他端側の第2接続部422とに接続されスイッチ直列体41と並列接続されたコンデンサCm2とを備える。
【0026】
1段目の回路ユニット40Aの中間接続点41Mには、電源PWの正極が接続される。回路ユニット群400において、k段目の回路ユニット40の中間接続点41Mと、(k-1)段目の回路ユニット40の第1接続部421とが接続される。すなわち、回路ユニット群400の各回路ユニット40は、第1接続部421と中間接続点41Mとの接続により互いに接続される。最終段の回路ユニット40Zの第1接続部421は、インバータ回路122の一端側に接続される。
【0027】
直列スイッチユニット60は、複数の第3スイッチSW3(図3において3つ)を互いに直列接続して構成される。直列スイッチユニット60は、最終段の回路ユニット40Zの第2接続部422と、電源PWの負極との間に接続される。k段目の回路ユニット40の第2接続部422と、(k-1)段目の回路ユニット40の第2接続部422との間に一つの第3スイッチSW3が接続される。1段目の回路ユニット40Aの第2接続部422と電源PWの負極との間にも、一つの第3スイッチSW3が接続される。すなわち、回路ユニット群400の回路ユニット40ごとに第3スイッチSW3が設けられ、回路ユニット40の数と第3スイッチSW3との数は同数となるように構成される。直列スイッチユニット60の一端は、電源PWの負極に接続されるとともに、インバータ回路122の他端側に接続される。
【0028】
各スイッチSW1,SW2,SW3は、炭化珪素(SiC)や、シリコン(Si)にて形成したパワー半導体素子からなり、送電制御装置150からの信号によって、適宜オンオフさせることができる。各スイッチSW1,SW2,SW3には、例えば、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)等を用いることができる。
【0029】
各スイッチSW1,SW2,SW3には、ダイオードが並列接続されている。第1スイッチSW1に並列接続されたダイオードは、中間接続点41M側がアノードとなる向きに接続されている。第2スイッチSW2に並列接続されたダイオードは、中間接続点41M側がカソードとなる向きに接続されている。第3スイッチSW3に並列接続されたダイオードは、電源PWの負極に近い側がアノードとなる向きに接続されている。
【0030】
図4における破線矢印Ip及び図5における破線矢印Icは、電流の流れる方向を示す。可変電圧回路132は、各スイッチSW1,SW2,SW3のオンオフの切り替えにより、回路ユニット群400の各コンデンサCm2の直列状態と並列状態とを切り替えることができるよう構成されている。
【0031】
より具体的には、図4に示すように、各第1スイッチSW1及び各第3スイッチSW3をオフ(開放とも呼ぶ)にすると共に各第2スイッチSW2をオン(短絡とも呼ぶ)にすることにより、直列状態が形成される。他方、図5に示すように、各第1スイッチSW1及び各第3スイッチSW3をオンにすると共に各第2スイッチSW2をオフにすることにより、並列状態が形成される。
【0032】
直列状態は、図4に示すように、複数のコンデンサCm1,Cm2を互いに直列接続した状態である。直列状態では、パルス電圧がインバータ回路122に出力される。並列状態は、図5に示すように、各コンデンサCm2を互いに並列接続した状態である。並列状態では、インバータ回路122の図示しないコンデンサの容量成分から各コンデンサCm1,Cm2への電気エネルギーの回収が行われる。
【0033】
図4では、すべての回路ユニット40のコンデンサCm2を直列状態とした例が示されているが、可変電圧回路132では、回路ユニット40ごとに各スイッチSW1,SW2を切り換えることにより、回路ユニット群400に含まれる任意の数のコンデンサCm2を直列状態とすることが可能である。例えば、図4の状態から回路ユニット40Zの第1スイッチSW1をオンとし、回路ユニット40Zの第2スイッチSW2をオフとすることにより、回路ユニット40ZのコンデンサCm2を含まず、回路ユニット40A,40Bの2つのコンデンサCm2を直列状態にすることができる。
【0034】
図6に、可変電圧回路132から出力されるインバータ回路122への入力電圧(以下、入力電圧Vinとも呼ぶ)の電圧波形の例を示す。図6に示すように、入力電圧Vinの電圧波形は段階的な電圧値からなる矩形波である。電圧Vnは、電源PWの電圧であり、電源PWに並列に接続されるコンデンサCm1の端子間電圧は電源PWの電圧Vnに等しい。各コンデンサCm2の電圧も電圧Vnであるので、可変電圧回路132がインバータ回路122に出力できる電圧の最大値は(k+1)Vnとなる(図6の例において、4Vn)。インバータ回路122への入力電圧Vinは、上述した回路ユニット40ごとの各スイッチSW1,SW2のオンオフ制御によって直列状態とするコンデンサCm2の個数を調節することにより、電圧Vnから電圧(k+1)Vnの範囲内で、電圧Vnごとに段階的な任意の電圧値に調節することができる。可変電圧回路132がコンデンサCm1を備えない態様であれば、0から電圧(k+1)Vnの範囲内で調節できる。また、各スイッチSW1,SW2,SW3のオンオフを、任意のタイミングで切り換えることにより、入力電圧Vinの電圧波形を任意のパルス幅に調節することができる。このように、可変電圧回路132は、入力電圧Vinの電圧波形を段階的な電圧値からなる任意の矩形波に変換した変換直流電力をインバータ回路122に出力する。
【0035】
次に、図2図7とを用いて、送電制御装置150の詳細について説明する。図2に示すように、送電制御装置150は、電流比較部152と、電圧制御部154とを備える。送電制御装置150は、CPUとメモリとを備えるマイクロコンピュータで構成され、メモリ内のプログラムをCPUが読み込むことによって各部を機能させる。
【0036】
図7には、電流センサ123によって取得されるインバータ回路122から出力された交流電力の電流値の電流波形I1と、目標電流波形Idとが示されている。目標電流波形Idは、いわゆる正弦曲線に近似される交流電流の理想波形であり、送電制御装置150のメモリ内に予め記憶されている。インバータ回路122から出力される交流電流の電流波形が目標電流波形Idに近いほど、送電コイル112から受電コイル212への伝送効率はより好適なものとなる。電流波形I1は、インバータ回路122からの出力電流に高調波成分(特に、奇数高調波成分)が含まれることにより理想波形から歪んだ波形となる。
【0037】
図2に示すように、電流比較部152は、電流センサ123によって取得された電流波形I1の入力を受け付けると、予めメモリ内に記憶された目標電流波形Idを読み出す。電流比較部152は、電流波形I1と目標電流波形Idとを比較して単位時間ごとの電流値の差を算出する。図7に、電流波形I1と目標電流波形Idとの電流値の差GPを概念的に示した。電流比較部152は、差GPに相当するインバータ回路122からの出力電流の補正値(以下、補正電流値I1cとも呼ぶ)を、例えば、半周期ごとや予め定められた単位時間ごと等の予め定められた期間ごとに算出し、電圧制御部154に出力する。
【0038】
電圧制御部154は、インバータ回路122からの出力電流の電流波形において補正電流値I1c分を補正させる入力電圧Vinの電圧波形を算出する。電圧制御部154は、算出した電圧波形を出力させる可変電圧回路132の指令値(以下、指令電圧値Vs1とも呼ぶ)を決定する。電圧制御部154は、指令電圧値Vs1に基づいて可変電圧回路132のスイッチング制御を行い、可変電圧回路132に補正した変換直流電力を出力させる。これにより、インバータ回路122からの出力電力の電流波形は目標電流波形Idに近くなり、高調波成分が低減されることとなる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の非接触給電装置100によれば、送電制御装置150は、インバータ回路122から出力される交流電流に含まれる高調波成分を低減させる変換直流電力を出力するように可変電圧回路132を制御する。そのため、高調波成分を低減した交流電力を送電コイル112に供給することができ、受電側への伝送効率を高くすることができる。
【0040】
本実施形態の非接触給電装置100によれば、送電制御装置150は、電流センサ123から取得したインバータ回路122の出力電流の電流波形I1の結果から、予め定められた目標電流波形Idに近づける変換直流電力を出力するように可変電圧回路132を制御する。送電制御装置150は、インバータ回路122からの出力電流の結果を用いたフィードバック制御により、高調波成分を低減させる変換直流電力を可変電圧回路132に出力させることができる。
【0041】
本実施形態の非接触給電装置100によれば、送電制御装置150は、段階的な電圧値からなる矩形波の変換直流電力を可変電圧回路132に出力させる。高調波成分を低減させる電圧波形の変換直流電力を可変電圧回路132に出力させることができるとともに、高周波化のためのスイッチング回数を低減しインバータ回路122から出力される交流電力の損失を低減することができる。
【0042】
本実施形態の非接触給電装置100によれば、可変電圧回路132は、複数の回路ユニット40からなる回路ユニット群400と、直列スイッチユニット60と、を備える電気回路で構成される。したがって、可変電圧回路132は、回路ユニット40の数に応じた段階的な電圧値からなる任意の出力電圧と、任意のパルス幅とを有する矩形波の変換直流電力をインバータ回路122へ入力することができる。
【0043】
B.第2実施形態:
図8に示すように、第2実施形態の非接触給電装置100bは、電流センサ123に代えて電圧センサ125を有する送電回路120bを備える点と、送電制御装置150に代えて送電制御装置150bを備える点で、第1実施形態の非接触給電装置100と相違する。送電制御装置150bは、電流比較部152に代えて電圧比較部153を備える点で第1実施形態での送電制御装置150と相違する。電圧センサ125は、インバータ回路122から出力される交流電力の電圧値を連続的に取得することにより電圧波形V1として取得し、電圧比較部153に出力する。
【0044】
電圧センサ125により取得された電圧波形V1の例を図9に示す。図9には、電圧波形V1のほか、理想的な矩形波の電圧波形である目標電圧波形Vdが示されている。インバータ回路122内のスイッチング素子(例えば、MOSFET)を動作させた場合、インバータ回路122からの出力電圧には、ドレイン・ソース間の抵抗(以下、オン抵抗とも呼ぶ)が発生する。図9に示すように、電圧波形V1には、目標電圧波形Vdに対して、オン抵抗による電圧損失(以下、電圧ドロップDpとも呼ぶ)が発生する。本実施形態において、送電制御装置150bは、電圧センサ125により取得された電圧波形V1を用いて、電圧ドロップDp分を補正する変換直流電力を出力するように可変電圧回路132をフィードバック制御する。
【0045】
電圧比較部153は、電圧センサ125からの電圧波形V1の入力を受け付けると、予めメモリ内に記憶された目標電圧波形Vdを読み出す。電圧比較部153は、電圧波形V1と目標電圧波形Vdとを比較して予め定められた期間ごとの電圧値の差、すなわち電圧ドロップDpを算出して電圧制御部154に出力する。
【0046】
電圧制御部154は、電圧ドロップDp分を補正させるための入力電圧Vinの電圧波形を算出する。電圧制御部154は、算出した電圧波形を出力させる可変電圧回路132の指令値(以下、指令電圧値Vs2とも呼ぶ)を決定する。電圧制御部154は、可変電圧回路132のスイッチング制御を行い、指令電圧値Vs2に基づく変換直流電力を可変電圧回路132に出力させる。
【0047】
図10に、可変電圧回路132が出力する指令電圧値Vs2の電圧波形を模式的に示した。図10に示すように、指令電圧値Vs2の電圧波形は、スイッチング周期ごとに、変換前の指令電圧値に対して電圧ドロップDp分を補填する分を増加した電圧波形となるように制御される。これにより、インバータ回路122からの出力電力の電圧波形は目標電圧波形Vdに近くなり、電圧ドロップDpが低減され、可変電圧回路132は、インバータ回路122からの出力電流の高調波成分を低減する変換直流電力を出力することとなる。
【0048】
図9に示すように、インバータ回路122では、内部のスイッチング素子を動作させる際のシュートスルー電流の発生を抑制するため、スイッチング素子のオンオフの切り換え時にデッドタイムDTが設けられる。電圧比較部153は、指令電圧値Vs2の算出において、デッドタイムDT中の電圧値を除外してもよい。これにより、電圧比較部153の演算を簡略化できるとともに、電圧ドロップDpに対する誤差を除外した指令電圧値Vs2を算出できる。
【0049】
本実施形態の非接触給電装置100bによれば、送電制御装置150bが、電圧センサ125から取得したインバータ回路122の出力電圧の電圧波形V1の結果から、予め定められた目標電圧波形Vdに近づける変換直流電力を出力するように可変電圧回路132を制御する。送電制御装置150bは、インバータ回路122からの出力電圧の結果を用いたフィードバック制御により、電圧ドロップDp分の出力電圧を補填し、高調波成分を低減させる変換直流電力を可変電圧回路132に出力させることができる。
【0050】
C.第3実施形態:
図11に示すように、第3実施形態の非接触給電装置100cは、電源回路130に代えて、電源回路130cを備える点で第1実施形態の非接触給電装置100と相違する。電源回路130cは、可変電圧回路132cを備える。本実施形態において、可変電圧回路132cは、いわゆる降圧コンバータで構成され、トランジスタTr1と、トランジスタTr2と、インダクタンスL3と、コンデンサCm3とを備える。
【0051】
可変電圧回路132cは、送電制御装置150によるトランジスタTr2の第5スイッチSW5のオンオフ制御によって、電圧波形を任意の正弦波に変換した変換直流電力を出力する。図11に示すように、可変電圧回路132cは、第5スイッチSW5をオフとし、トランジスタTr1の第4スイッチSW4をオンにすることにより、コンデンサCm3の電圧を調節することができる。
【0052】
図12に、可変電圧回路132cが出力する変換直流電力の電圧波形を模式的に示した。図12に示すように、インバータ回路122に出力する変換直流電力の電圧波形は、正弦波(正弦波半波)であり、指令電圧値Vs1に応じて、例えば、電圧の小さい電圧波形V1Lと、電圧の大きい電圧波形V1Hと、その中間となる電圧波形V1Mとのように出力電圧を任意に切り換えることができる。
【0053】
本実施形態の非接触給電装置100cによれば、可変電圧回路132cにより正弦波の電圧波形となる変換直流電力が出力されるので、インバータ回路122からの出力電流の高調波成分を低減することができる。
【0054】
D.第4実施形態:
図13に示すように、第4実施形態の非接触給電装置100dは、電流センサ123を備えない点と、送電制御装置150に代えて送電制御装置150dを備える点とで第1実施形態の非接触給電装置100と相違する。
【0055】
送電制御装置150dは、電圧決定部156で構成され、メモリ内に可変電圧出力マップMPを記憶している。可変電圧出力マップMPは、非接触給電装置100dから受電側への出力電圧として要求される出力電圧指令値Vxと、可変電圧回路132から出力する変換直流電力の電圧波形との対応関係を表す変換マップである。出力電圧指令値Vxは、例えば無線通信により受電側の受電制御装置290から送電制御装置150dに入力される。送電制御装置150dが、受電コイル位置検出部140で検出された受電コイルの位置に応じて、出力電圧指令値Vxを決定してもよい。可変電圧出力マップMPは、本実施形態において、要求されうる出力電圧指令値Vxに応じて複数の数(Vx1~Vxn、nは2以上の自然数)で設定されるが、単数であってもよい。可変電圧出力マップMPの電圧波形は、例えば、第1実施形態で例示した目標電流波形Idとの差GPを補正する電圧波形と、第2実施形態で例示した電圧ドロップDpを補正する電圧波形とを含む。
【0056】
電圧決定部156は、出力電圧指令値Vxの入力を受け付けると、入力された出力電圧指令値Vxに対応する可変電圧出力マップMPを選択する。電圧決定部156は、選択した可変電圧出力マップMPの電圧波形を出力させる可変電圧回路132の指令値(以下、指令電圧値Vs3とも呼ぶ)を決定する。電圧決定部156は、可変電圧回路132のスイッチング制御を行い、指令電圧値Vs3に基づく変換直流電力を可変電圧回路132に出力させる。これにより、インバータ回路122からの出力電流の高調波成分が低減されることとなる。
【0057】
本実施形態の非接触給電装置100dによれば、電流センサ123を備えず、可変電圧出力マップMPを用いたフィードフォワード制御によって可変電圧回路132を制御する。したがって、部品点数を削減した簡易な構成としつつ送電制御装置150dの制御負荷を低減して可変電圧回路132を制御し、高調波成分を低減させる変換直流電力を出力することができる。
【0058】
E.他の実施形態:
(E1)上記各実施形態では、送電共振回路110および受電共振回路210には、SS方式による磁気共振方式が適用されているが、一次並列二次並列コンデンサ方式(「PP方式」とも呼ばれる)を適用してもよい。このような態様において、送電共振回路110において送電コイル112と共振コンデンサ116とを並列に接続するとともに、受電共振回路210において受電コイル212と共振コンデンサ216とを並列に接続する。
【0059】
(E2)上記各実施形態において、電流センサ123は、インバータ回路122とイミタンス変換回路124との間に設けられるが、イミタンス変換回路124と送電共振回路110との間に設けられてもよい。非接触給電装置100は、イミタンス変換回路124を備えない態様であってもよい。
【0060】
(E3)上記第3実施形態において、可変電圧回路132cは、トランジスタTr1と、トランジスタTr2と、インダクタンスL3と、コンデンサCm3とを備える降圧コンバータで構成される。これに対して、可変電圧回路132cは、図14に示すように、トランジスタTr1に代えてダイオードDo1を備える態様であってもよい。このような態様において、第5スイッチSW5をオフにしてコンデンサCm3への電力供給を止めることにより電圧が調整される。
【0061】
(E4)上記第1実施形態において、送電制御装置150は、さらに電圧ドロップマップをメモリに記憶する態様であってもよい。電圧ドロップマップとは、インバータ回路122からの出力電流の電流値と、インバータ回路122が出力する交流電力の電圧ドロップDp分を補填させる指令電圧値Vs1との対応関係を示す変換マップをいう。送電制御装置150は、電圧ドロップマップを参照し、電流センサ123によって取得された電流値から指令電圧値Vs1を決定し、指令電圧値Vs1を用いて可変電圧回路132をフィードバック制御する。送電制御装置150を簡易な構成とすることで制御の発散を抑制し、可変電圧回路132に高調波成分を低減させる変換直流電力を安定して出力させることができる。
【0062】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0063】
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
100,100b,100c,100d 非接触給電装置、110 送電共振回路、112 送電コイル、122 インバータ回路、132 可変電圧回路、150,150b,150d 送電制御装置、PW 電源
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