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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】超臨界流体分散方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 19/00 20060101AFI20230614BHJP
   B02C 23/36 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
B02C19/00 Z
B02C23/36
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019053466
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020151674
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000146445
【氏名又は名称】株式会社常光
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】佐野 恵一
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-094473(JP,A)
【文献】特開平09-201521(JP,A)
【文献】特開2018-047407(JP,A)
【文献】特開2017-035647(JP,A)
【文献】特開2018-100474(JP,A)
【文献】特開2011-136290(JP,A)
【文献】特開平11-042428(JP,A)
【文献】特開平10-192670(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1621185(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 19/00、19/06、23/36
B01F 25/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体を貯留する流体貯留タンクと、
前記流体貯留タンクの下流に設置され前記流体貯留タンクから供給される超臨界流体中に被処理物を分散させる原料タンクと、
前記原料タンクの下流に設置される分岐ブロックと、
前記分岐ブロックの下流の一方側に設置されるポンプ部と、
前記分岐ブロックの下流の他方側に設置されるオリフィスホモジナイザ部と、
前記オリフィスホモジナイザ部の下流に設置され、前記オリフィスホモジナイザ部と前記原料タンクと接続する配管部に設置される中間タンクと、を備える超臨界流体分散装置における超臨界流体分散方法であって、
前記原料タンクにおいて被処理物を超臨界流体中に分散させて第1分散物を得る第1超臨界流体分散工程と、
前記第1分散物を前記ポンプ部に流入させた後に前記ポンプ部から押出して小径流路部を備えてなる前記オリフィスホモジナイザ部へ加圧供給し前記第1分散物中の被処理物を微小化して第2分散物を得る第2超臨界流体分散工程と、
前記第2分散物を前記中間タンクに流入させる工程と、
前記中間タンクに流入した前記第2分散物を前記オリフィスホモジナイザ部と、前記分岐ブロックとを経由して前記ポンプ部に流入させる工程と、
を備えることを特徴とする超臨界流体分散方法。
【請求項2】
前記第2超臨界流体分散工程において、前記第1分散物が前記オリフィスホモジナイザ部を通過後、通過後の前記第1分散物が再度前記オリフィスホモジナイザ部を通過することを繰り返して前記第2分散物が調製される請求項1に記載の超臨界流体分散方法。
【請求項3】
前記第2超臨界流体分散工程の後、前記第2分散物から前記超臨界流体を除去し被処理物の微小化物を単離する単離工程が加えられる請求項1または2に記載の超臨界流体分散方法。
【請求項4】
前記超臨界流体が、二酸化炭素の超臨界流体である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の超臨界流体分散方法。
【請求項5】
前記オリフィスホモジナイザ部は、
複数の流入側流路部と、
複数の流出側流路部と、
前記複数の流入側流路部を単一に集合させる集合部と、
前記集合部の下流に接続されたオリフィス流路部と、
前記オリフィス流路部の下流に接続され前記オリフィス流路部を分岐させ前記複数の流出側流路部と接続する分岐部と、
を備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の超臨界流体分散方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界流体分散方法に関し、特に被処理物を超臨界流体中に分散させて微小化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理物の微小化方法としては、従前、乾式または湿式の粉砕機が使用されている従前の乾式または湿式の粉砕機では、少量の微小化には不向きであった。発明者は、以前より被処理物と流体を混合した混合物を細管内に加圧しながら流動させることにより、効率的な少量の被処理物の微小化を実現してきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
混合物の細管内の流動に際し、処理効率の点から高速で流動させる必要があり、混合物は非常に高圧にして流動されていた。特に、水、有機溶媒の場合、被処理物と流体を混合した混合物の状態では高粘度となり流動性の低下が生じやすい。そのため、圧送用のポンプには高出力が要求され、装置自体の規模は大きくなりやすい。また配管は混合物の流動時の圧力負荷を受けるため、耐圧施工等が必要である。そこで、微小化のための設備負担は大きい。
【0004】
さらに、微小化の処理を終えて微小化された被処理物と溶媒となる流体の混合物から、目的の微小化された被処理物を分離する必要がある。水、有機溶媒の使用では、蒸発等の事後的な分離の処理が必要な場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-100474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、発明者は、被処理物と混合した流体の良好な流動性を維持しつつ、処理後の分離の容易な被処理物の微小化の方法が望まれていた。本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、被処理物と混合する流体に超臨界流体を用いることにより、処理時の良好な流動性と処理後の分離の容易さを兼ね備える超臨界流体分散方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、第1の形態は、被処理物を超臨界流体中に分散させて第1分散物を得る第1超臨界流体分散工程と、第1分散物を、小径流路部を備えてなるオリフィスホモジナイザ部へ加圧供給し第1分散物中の被処理物を微小化して第2分散物を得る第2超臨界流体分散工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
第2の形態は、第2超臨界流体分散工程において、第1分散物がオリフィスホモジナイザ部を通過後、通過後の第1分散物が再度オリフィスホモジナイザ部を通過することを繰り返して第2分散物が調製されることを特徴とする。
【0009】
第3の形態は、第2超臨界流体分散工程の後、第2分散物から超臨界流体を除去し被処理物の微小化物を単離する単離工程が加えられることを特徴とする。
【0010】
第4の形態は、超臨界流体が、二酸化炭素の超臨界流体であることを特徴とする。
【0011】
第5の形態は、オリフィスホモジナイザ部は、複数の流入側流路部と、複数の流出側流路部と、複数の流入側流路部を単一に集合させる集合部と、集合部の下流に接続されたオリフィス流路部と、オリフィス流路部の下流に接続されオリフィス流路部を分岐させ複数の流出側流路部と接続する分岐部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の超臨界流体分散方法によると、被処理物を超臨界流体中に分散させて第1分散物を得る第1超臨界流体分散工程と、第1分散物を、小径流路部を備えてなるオリフィスホモジナイザ部へ加圧供給し第1分散物中の被処理物を微小化して第2分散物を得る第2超臨界流体分散工程と、を備えるため、被処理物を微小化する処理時の良好な流動性と処理後の溶媒となる流体の分離の容易さを兼ね備えことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】超臨界流体分散方法を実施する第1実施形態の超臨界流体分散装置の全体構成図である。
図2】オリフィスホモジナイザ部の主要部縦断面図である。
図3】オリフィスホモジナイザ部の主要部横断面図である。
図4】第1実施形態の超臨界流体分散装置の可動時の第1概略説明図である。
図5】第1実施形態の超臨界流体分散装置の可動時の第2概略説明図である。
図6】第2実施形態の超臨界流体分散装置の可動時の第1概略説明図である。
図7】第2実施形態の超臨界流体分散装置の可動時の第2概略説明図である。
図8】第2実施形態の超臨界流体分散装置の可動時の第3概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の超臨界流体分散方法を説明するに際し、図1の超臨界流体分散装置1(第1実施形態)の全体構成図を用いながら説明する。むろん、図示の装置はひとつの実施形態の開示であるため、本発明の超臨界流体分散方法を実現する構成は図示の形態に限定されない。
【0015】
図示の超臨界流体分散装置1では、原料タンク30、分岐ブロック40、オリフィスホモジナイザ部10、ポンプ部50を備え、原料タンク30に流体貯留タンク60が接続される。そして、最終的に処理を終えた被処理物はドレイン部90から回収される。
【0016】
被処理物を貯留する原料タンク30と、その下流の分岐ブロック40は配管部81を介して設置される。原料タンク30は被処理物を貯留する耐圧容器であり、後出の超臨界流体の流通時の温度、圧力を維持可能な容器である。さらに、原料タンク30には、攪拌機31が設けられ、被処理物と超臨界流体は混合されて分散物となる。
【0017】
図示の実施形態の超臨界流体分散装置1では、原料タンク30が超臨界流体の温度及び圧力条件を維持する。原料タンク30には加温器(ヒータ)等が設置される。なお、分散物の流動時の圧力は、流体貯留タンク60から圧送ポンプ61により供給される超臨界流体の供給圧力を通じて制御される。配管部81には逆止弁70と切替弁71が設置される。分岐ブロック40側から原料タンク30側への逆流は逆止弁70と切替弁71により規制される。
【0018】
ポンプ部50は分岐ブロック40と配管部82により接続される。また、オリフィスホモジナイザ部10は配管部83により分岐ブロック40と接続される。さらに、オリフィスホモジナイザ部10は配管部84により原料タンク30と接続される。ドレイン部90側には配管部86が設けられる。また、図示のとおり、各配管部には切替弁72,73,74が接続される。各切替弁はポンプ部50の動作時の流体の流路を規制する。各切替弁は電磁弁、手動弁の適宜である。配管部81,82,83,84,85,86は、保温性、耐圧性に優れた中空管体であり、被処理物と超臨界流体の混合により生じた分散物が温度及び圧力を維持しながら流動する。
【0019】
分岐ブロック40の構造は特段限定されないものの、金属等の耐圧材料から形成され、内部にT字状の流路が形成された部材である。または、分岐ブロック40は公知の三方弁等でも良い。
【0020】
ポンプ部50は構造体内にピストン51を備えており、一般にピストンポンプと称される。ピストン51の後退時(後出の図3参照)、ポンプ部50のハウジング52内に被処理物と超臨界流体との混合により生じた分散物が流入する。ピストン51の前進時(後出の図4参照)、被処理物と超臨界流体の分散物はポンプ部50から吐出されてオリフィスホモジナイザ部10に流入する。ピストン51の前進及び後退は、油圧駆動またはサーボモータ等により制御される。被処理物と超臨界流体の分散物はオリフィスホモジナイザ部10を通過後、原料タンク30に流入する。
【0021】
原料タンク30の上流に超臨界流体を貯留する流体貯留タンク60が設置され、配管部85により接続される。超臨界流体を圧送する圧送ポンプ61は配管部85に設置され、超臨界流体は流体貯留タンク60から原料タンク30へ供給される。
【0022】
オリフィスホモジナイザ部10を通過して微小化(粉砕)が進行した被処理物と超臨界流体の分散物は、最終的にドレイン部90から超臨界流体分散装置1の外部に流出する。
【0023】
オリフィスホモジナイザ部10について、図2の主要部縦断面図及び図3の主要部横断面図を用いてその構造を説明する。図2のA-A線における横断面が図3(a)であり、図2のB-B線における横断面が図3(b)であり、図2のC-C線における横断面が図3(c)である。
【0024】
オリフィスホモジナイザ部10は、第1ブロック21と第2ブロック22、そして第1ブロック21と第2ブロック22の間に介装される第3ブロック23により形成される。第1ブロック21において、複数の流入側流路部11,12が形成される(図2及び図3(a)参照)。また、第2ブロック22においても、複数の流出側流路部18,19が形成される。
【0025】
第1ブロック21と第3ブロック23との接合面に意図的に第1空隙部14が形成される。この第1空隙部14が複数の流入側流路部11,12を単一に集合させる集合部13となる(図2及び図3(b)参照)。集合部13(第1空隙部14)の下流側は第3ブロック23となり、同第3ブロック23内にオリフィス流路部15が形成される(図2及び図3(c)参照)。
【0026】
オリフィス流路部15の下流側においても、第3ブロック23と第2ブロック22との接合面にも意図的に第2空隙部16が形成される。この第2空隙部16がオリフィス流路部15を分岐させて複数の流出側流路部18,19と接続する分岐部17となる。
【0027】
流入側流路部11,12及び流出側流路部18,19の内直径(D1)は相互に同一であり、オリフィス流路部15の内直径(D2)よりも大きく形成される。具体的には、内直径(D1)は、内直径(D2)の5ないし7倍である。また、第1空隙部14の距離(D3)は内直径(D1)と同等に規定される。従って、オリフィス流路部15は小径流路部である。
【0028】
次に、オリフィスホモジナイザ部10を用いた際の作用を説明する。被処理物を超臨界流体中に分散させた分散物(圧送流体)は流入側流路部11,12を経由して集合部13(第1空隙部14)に侵入する。ここで、オリフィス流路部15は流入側流路部11,12よりも狭小であるため、分散物の流量は低下する。そして、分散物(圧送流体)の圧力変化が生じ、それぞれの流入側流路部から流入した分散物は集合部13において衝突する。このときの分散物中の被処理物同士は衝突時のエネルギーにより破砕される。このように、分散物が流入側流路部11,12からオリフィス流路部15へ流動するごとに、分散物中の被処理物同士の衝突が進み、結果として分散物は粉砕される。
【0029】
図示の流入側流路部及び流入側流路部はともに2つである。むろん、流入側流路部及び流入側流路部の形成数は1以上である。ただし、分散物中の被処理物の衝突を促すため、流入側流路部及び流入側流路部の形成数は2以上であることがさらに望ましい。図示のオリフィスホモジナイザ部10は、流入側及び流出側はともに対称形である。そこで、説明の便宜状流入側及び流出側としている。流入側と流出側が対称形であるため、オリフィスホモジナイザ部10はいずれの向きからの流入においても機能し得る。従って、分散物が流出側流路部18,19から流入してオリフィス流路部15通過し流入側流路部11,12より流出する場合もある。
【0030】
これより、第1実施形態の超臨界流体分散装置1を用い、本発明の超臨界流体分散方法を説明する。はじめに、被処理物は超臨界流体中に分散されて「第1分散物」となる(「第1超臨界流体分散工程」)。分散は原料タンク30で行われる。
【0031】
微小化の対象である被処理物は、例えば、セルロース、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、複合金属酸化物(スピネル、ペロブスカイト等の結晶質)等の多岐にわたる物質である。被処理物同士の衝突を通じて微小化することにより、事後的に樹脂等に混合する際の均一な分散性が高まる。そのため、素材の性能向上が見込まれる。
【0032】
この分散方法において使用される超臨界流体は二酸化炭素または水である。特に、二酸化炭素は、常温、常圧下において気化するため超臨界流体として好ましい。また、極性を有する分子ではあるものの、水と比較して極性に伴う反応性は弱い。超臨界流体が二酸化炭素の場合、ドレイン部90からの放出後、二酸化炭素のみが常温、常圧下において気化する。このため、分散後の分離は極めて容易である。
【0033】
ここで、超臨界流体は、各物質に特有の温度、圧力条件により液体と気体の区別がつかない状態となった流体である。具体的に、二酸化炭素の臨界温度は304.1K、臨界圧力は7.38MPaであり、水の臨界温度は647.3K、臨界圧力は22.12MPaであり、エタンの臨界温度は305.3K、臨界圧力は4.87MPaであり、プロパンの臨界温度は369.8K、臨界圧力は4.25MPaである。
【0034】
超臨界流体は、通常状態の水、有機溶媒等と比較して高い流動性を備える。このことから被処理物を混合後の第1分散物の粘度低下が予想される。従って、配管部内、特には小径流路部を有するオリフィスホモジナイザ部10へ加圧供給時の圧送時の抵抗軽減が期待される。
【0035】
超臨界流体には、二酸化炭素、水の他に、エタン、プロパン、エチレン等の有機分子を使用することも可能である。二酸化炭素と水は極性を有する分子である。そのため、超臨界流体分散装置1において処理を続ける間に、超臨界の条件により被処理物が極性分子により攻撃(反応)を受ける可能性もある。これに対し、エタン、プロパン、エチレンは、非極性の分子である。そのため、超臨界の条件が持続するとしても被処理物との反応性は乏しい。そこで、被処理物の性質を考慮して超臨界流体の種類は選択される。
【0036】
第1分散物は、小径流路部を有するオリフィスホモジナイザ部10へ加圧供給される。加圧供給は、ポンプ部50内のピストン51の押圧力により行われる。第1分散物がオリフィスホモジナイザ部10に流入して当該オリフィスホモジナイザ部10を通過する。ここで、前述の説明のとおり、第1分散物中の被処理物は、オリフィスホモジナイザ部10の流路内において衝突した際の衝撃エネルギーにより、当初よりも微小化が促進する。こうして第1分散物がオリフィスホモジナイザ部10を通過することにより「第2分散物」が得られる(「第2超臨界流体分散工程」)。第2分散物は、第1分散物と比較して分子鎖長の縮小、結晶構造の崩壊等により、被処理物の微小化が進行した状態の分散物である。
【0037】
第2超臨界流体分散工程の後、第2分散物は配管部86を経由してドレイン部90から放出される。超臨界流体に二酸化炭素を使用した場合、二酸化炭素の超臨界流体はドレイン部90へ放出された第2分散物から蒸発により容易に除去される。結果、被処理物の微小化物は単離される(「単離工程」)。超臨界流体に水を使用した場合、被処理物の微小化物の単離のため、蒸発器(図示せず)等が別途ドレイン部90に装備される。エタン、プロパン、エチレン等が超臨界流体である場合、これらは常温、常圧下では可燃性の気体であるため専用の回収器(図示せず)等が別途ドレイン部90に装備される。
【0038】
単離工程は、超臨界流体の溶媒から微小化された被処理物(微小化物)を分離する際に加えられる工程である。例えば、セルロースの被処理物と超臨界流体の水が混合された状態において、微小化後においても微小化物を分離する必要が無い場合、つまり、湿潤な混合状態が所望されているときには、単離工程は省略される。
【0039】
図4及び図5の概略説明図を用い、第1実施形態の超臨界流体分散装置1における流体の経路を説明する。はじめに、ポンプ部50のピストン51が後退し(図4の白抜き矢印方向)、ハウジング52内が減圧する。そこで、原料タンク30内の第1分散物は配管部81、分岐ブロック40、配管部82を通じてポンプ部50のハウジング52内に流入する(図4参照)。このとき、第1分散物の流動する方向は原料タンク30から分岐ブロック40へ向かう正流方向であるため、逆止弁70と弁開放状態の切替弁71を通過可能である。
【0040】
次に、ポンプ部50のピストン51が前進し(図5の白抜き矢印方向)、ハウジング52内の第1分散物はポンプ部50から押出される。そして、第1分散物は配管部82、分岐ブロック40、配管部83を通過してオリフィスホモジナイザ部10に流入する。ポンプ部50の押出力により、第1分散物は小径流路部を備えたオリフィスホモジナイザ部10を通過することができる(図5参照)。
【0041】
第1分散物はオリフィスホモジナイザ部10を通過することにより微小化が進み第2分散物となる。そして、第2分散物は配管部84、切替弁73を経由して原料タンク30へ流入する。続いて、再度、原料タンク30内の第1分散物(混入後の第2分散物)はポンプ部50のハウジング52内に流入し(図4参照)、ポンプ部50の押出力により、第1分散物(混入後の第2分散物)はオリフィスホモジナイザ部10を通過する(図5参照)。
【0042】
こうして、第1分散物はオリフィスホモジナイザ部10を通過後、第1分散物が再度オリフィスホモジナイザ部10を通過することを繰り返して第2分散物が調製される。即ち、オリフィスホモジナイザ部10における被処理物の相互の衝突回数が増加して、より微小化が促進する。被処理物の微小化が十分に進行した時点において、第2分散物は配管部86の先のドレイン部90から放出される(図5中の破線矢印を参照。)。
【0043】
さらに、図6図7図8の概略説明図を用い、第2実施形態の超臨界流体分散装置2における流体の経路を説明する。第2実施形態の超臨界流体分散装置2は、配管部84に中間タンク35を設置している。その他の構成は第1実施形態の超臨界流体分散装置1と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
はじめに、ポンプ部50のピストン51が後退しハウジング52内が減圧する。そこで、原料タンク30内の第1分散物は配管部81、分岐ブロック40、配管部82を通じてポンプ部50のハウジング52内に流入する(図6参照)。このとき、第1分散物の流動する方向は正流方向であるため、逆止弁70と弁開放状態の切替弁71を通過可能である。
【0045】
次に、ポンプ部50のピストン51が前進してハウジング52内の第1分散物はポンプ部50から押出される。そして、第1分散物は配管部82、分岐ブロック40、配管部83を通過してオリフィスホモジナイザ部10に流入する。ポンプ部50の押出力により、第1分散物は小径流路部を備えたオリフィスホモジナイザ部10を通過することができる(図6参照)。第2分散物はオリフィスホモジナイザ部10通過することにより微小化が進み第2分散物となる。そして、第2実施形態の超臨界流体分散装置2においては、第2分散物は中間タンク35へ流入する。
【0046】
中間タンク35が原料タンク30と別に備えられているため、微小化の進んだ第2分散物と原料タンク30内の処理前の被処理物との混合は回避される。第2実施形態の超臨界流体分散装置2の場合、バッチ処理による方式が好適である。中間タンク35には、超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力を維持するための加温器、加圧器等が適宜備えられる(図示せず)。
【0047】
続いて、ポンプ部50におけるピストン51の後退により、ハウジング52内は負圧になる。そこで、中間タンク35内の第2分散物は、図7とは逆にオリフィスホモジナイザ部10の流出側流路部18,19から流入し、流入側流路部11,12から流出する。そして、配管部83、分岐ブロック40、配管部82を通過してポンプ部50のハウジング52内に流入する(図8参照)。この後、ポンプ部50のピストン51の押出力により、第2分散物は再びオリフィスホモジナイザ部10を通過する(図6参照)。
【0048】
第2実施形態の超臨界流体分散装置2では、第1分散物がオリフィスホモジナイザ部10を通過後、いったん中間タンク35に貯留され、再度オリフィスホモジナイザ部10を逆向きに通過することを繰り返して第2分散物が調製される。特に、オリフィスホモジナイザ部10は上流側及び下流側が共通構造であるため、このような流動の向きを逆転させる使い方が可能となる。むろん、配管部の構成から、中間タンク35に貯留された第2分散物を原料タンク30に戻し入れることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の超臨界流体分散方法は、溶媒に超臨界流体を用いることにより高い流動性を確保して被処理物を分散させて流動、粉砕できる。このため、流路中の流動性は良好となり、従前の圧送時の負荷を軽減することができて有望である。
【符号の説明】
【0050】
1,2 超臨界流体分散装置
10 オリフィスホモジナイザ部
11,12 流入側流路部
13 集合部
14 第1空隙部
15 オリフィス流路部
16 第2空隙部
17 分岐部
18,19 流出側流路部
21 第1ブロック
22 第2ブロック
23 第3ブロック
30 原料タンク
35 中間タンク
40 分岐ブロック
50 ポンプ部
51 ピストン
52 ハウジング
60 流体貯留タンク
61 圧送ポンプ
70 逆止弁
71,72,73,74 切替弁
81,82,83,84,85 配管部
90 ドレイン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8