(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】刃付き吸引管
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20230614BHJP
A61B 17/3205 20060101ALI20230614BHJP
A61M 27/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61M1/00 161
A61B17/3205
A61M1/00 131
A61M27/00
(21)【出願番号】P 2019134191
(22)【出願日】2019-07-20
(62)【分割の表示】P 2018227700の分割
【原出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】518431794
【氏名又は名称】合同会社山鹿CL
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 謙剛
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-509491(JP,A)
【文献】特開2005-185427(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0014819(US,A1)
【文献】中国実用新案第204484874(CN,U)
【文献】中国実用新案第205338899(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0099536(US,A1)
【文献】米国特許第05947989(US,A)
【文献】特開平08-336595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61B 17/3205
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円柱状の本体部(3)と,前記本体部(3)と吸引装置(5)とを接続する接続部(7)とを有する医療用吸引管(1)であって,
前記本体部(3)の先端領域内部には,組織を切除するための刃(9)が設けられ,
前記本体部(3)の直径は,0.5mm以上1cm以下であり,
前記刃(9)は,前記本体部内部に前記本体部の中心軸(11)に対して傾斜して存在し,縁部が前記本体部内部と接
し,対象部分を切る部分である切刃部分が,前記医療用吸引管の内部において,前記医療用吸引管の中心軸方向に向かっている,中空状の刃であり,
前記本体部の先端が,前記本体部の中心軸に対して傾斜するように斜めにカットされた形状を有し,
前記刃(9)は,斜めにカットされた形状の前記本体部の先端に沿って存在する,医療用吸引管。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用吸引管(1)であって,
前記本体部を回転させるための回転機構(13)をさらに含む,医療用吸引管。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医療用吸引管(1)と,前記本体部(3)と接続され,吸引された対象物が収容される溶液槽とを含む,組織回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用の吸引管に関する。より詳しく説明すると,本発明は,筒の内部に刃を有する吸引管に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8-336595号公報には,刃を有する吸引管が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸引管は,通常,施術中に対象となる液体を吸収するために用いられるのみである。一方,特に,はさみを開閉しにくいような狭い患部での施術の場合,吸引管で液体を吸収するついでに,組織や対象物を切除したい場合がある。そのような場合,医療機器を取り換えるのは煩雑である。よって,液体を回収するのみならず,組織をも切除できる医療機器が望まれた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は,基本的には,医療用の細い吸引管の内部に,中心方向に向けられた刃を設けることで,切除対象物を吸引管内に導いて,吸引管を回転させることで,切除対象を容易に切除でき,しかも切除した対象を容易に回収できるという知見に基づく。
【0006】
この明細書により開示される最初の発明は,医療用吸引管1(吸引管1)に関する。
この吸引管1は,筒状の本体部3と,本体部3と吸引装置5とを接続する接続部7とを有する医療用吸引管1である。
そして,本体部3の先端領域内部には,組織を切除するための刃9が設けられている。
【0007】
この吸引管1の好ましい例は,以下のものである。
刃9が,本体部内部に本体部の中心軸11に対して傾斜して存在し,縁部が本体部内部と接する中空状の刃である。本体部の先端領域は,刃にそって本体部の中心軸に対して傾斜した形状を有する。
【0008】
この吸引管1の好ましい例は,以下のものである。
刃は,縁部が本体部内部と接する,1又は複数の刃部を有する。
【0009】
この吸引管1の好ましい例は,以下のものである。
刃は,縁部が本体部内部と接する複数の刃部を有し,複数の刃部は,本体部の中心軸に対して傾斜して存在する。
【0010】
この吸引管1の好ましい例は,以下のものである。
本体部を回転させるための回転機構を含む。
【0011】
この吸引管1の好ましい利用例は,以下の組織回収装置である。
この組織回収装置は,吸引管1と,本体部と接続され,吸引された対象物が収容される溶液槽とを含む,組織回収装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸引管は,医療用の細い吸引管の内部に中心方向に向けられた刃が存在するので,切除対象物を吸引管内に導いて,吸引管を回転させることで,切除対象を容易に切除でき,しかも切除した対象を容易に回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は,吸引管の利用例を示す概念図である。
【
図3】
図3は,切刃部分が,本体部の中心軸に対して垂直方向より傾斜して延びている例を示す概念図である。
図3Aは,切刃部分が,本体部の中心軸に対して垂直方向より上方に向かって傾斜して延びていてるものの例を示し,
図3Bは,切刃部分が,本体部の中心軸に対して垂直方向より下方に向かって傾斜して延びていているものの例を示す。
【
図4】
図4は,刃が,本体部内部に本体部の中心軸に対して傾斜して存在し,縁部が本体部内部と接する中空状の刃である吸引管の例を示す概念図である。
【
図5】
図5は,複数の刃部を有する吸引管の例を示す概念図である。
図5Aは吸引管を半分に割った際の概念図である。
図5Bは,
図5Aの吸引管を上部から見た際の図である。
【
図6】
図6は,複数枚(3枚)の傾斜しており,切刃部分が,本体部の中心軸に対して垂直方向より傾斜して延びている例を示す概念図である。
図6Aは,吸引管を上方から見た概念図を示し,
図6Bは,
図6AのX-X断面図を示し,
図6Cは,
図6AのY-Y断面図を示す。
【
図7】
図7は,本体部を回転させるための回転機構を含む吸引管の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0015】
この明細書により開示される最初の発明は,医療用吸引管1(吸引管1)に関する。吸引管は,医療分野(例えば,耳鼻咽喉科用,歯科用,眼科用,涙道手術用,泌尿器科用,外科手術用,内視鏡手術用,腹腔鏡手術用,)や用途(例えば,凝固組織回収用,壊死組織回収用,分泌物回収用,粘液物回収用,血液回収用,涙回収用,唾液回収用)に応じて様々なものがある。
【0016】
図1は,吸引管の利用例を示す概念図である。
図2は,吸引管の先端部の例を示す概念図である。
図2Aは吸引管の先端部の断面図を示し,
図2Bは
図2AのX-X断面図を示す。この吸引管1は,筒状の本体部3と,本体部3と吸引装置5とを接続する接続部7とを有する医療用吸引管1である。吸引管は,本体部が直線状の筒状のもの,先端に向かう程径が小さくなる部分を有する円筒状のもの,途中から曲がった部分を有する筒状のものなど,様々な形状のものがある。筒状の本体部3の直径φの例は,0.5mm以上1cm以下であり,0.5mm以上5mm以下でもよいし,1mm以上3mm以下でもよい。本発明は,医療用のはさみの開閉がしにくい微小領域において用いられることが好ましいので,直径φは0.5mm以上2mm以下でもよい。
図2に示されるように,本体部3の先端領域内部には,組織を切除するための刃9が設けられている。刃9は,縁(峰)の全体又は一部が吸引管の本体部3の内壁と接続されていることが好ましい。そして,組織など対象部分を切る部分(切刃部分)が,吸引管の内部において,吸引管の中心軸方向に向かっていることが好ましい。切刃部分は,本体部3の中心軸に対して垂直方向に延びていてもよいし,上方に傾斜して延びていてもよいし,下方に傾斜して延びていてもよい。
【0017】
吸引管は,吸引装置から吸引することで陰圧となる。このため,刃9は,
図2Aに示されるように,先端(図の上部)に近づくほど刃の幅が大きくなるようなテーパー(傾斜)を有するものであること(切刃部分が,本体部3の中心軸に対して,上方に向かうように傾斜して延びていること)が好ましい。そのような刃を有することで,吸引力を高めることができる。一方,
図2Bに示されるように,刃が中空状(中心軸の周辺には刃が存在しない形状)とすることで,刃9の上部には吸引装置からの吸引が弱まる部分ができることとなり,吸気したくない微小組織がある場合は,刃9の上部に位置させることで,体液などを吸引しつつ,組織を保護できるため,好ましい。そのような観点から,刃の刃渡り(刃の幅:吸引管の内壁から刃先までの距離)は,吸引管の内径をφとした場合,φの1/20以上1/3以下が好ましく,1/10以上1/4以下でもよいし,1/10以上1/5以下でもよい。刃の厚さは,吸引管が微小なので,それに合わせた厚さであればよく,例えば10μm以上1mm以下でよく,50μm以上0.5mm以下でもよいし,0.1mm以上0.5mm以下でもよい。刃9は,吸引管の先端に存在してもよいし,
図2Aに示されるように,刃の上部を確保し,刃の欠損を避けるため,先端より下方に存在してもよい。
図2Bのものは,刃が中空円状になっている。一方,刃は弦状であってもよいし,完全な円ではなく,ゆがんだ円状や歯形のように部分部分に存在する状態のものであってもよい。
【0018】
図1に示される例では,吸引管1が,ホース21により吸引装置5と接続されている。そして,ホース21の途中には,施術者が指で穴をふさげば吸引状態が続き,穴を開放すると吸引力が弱まる穴23が存在している。この穴23は,ホース21といった吸引管と吸引装置とを連結するホース部分に存在してもよい。一方,この穴は,吸引管の接続部7や本体部分の接続部7側の部位に存在してもよい。吸引管は,接続部7があるので,ホースなどから取り外しでき,吸引管1を洗浄したり,吸引管を取り換えたりできるものが好ましい。
【0019】
図3は,切刃部分が,本体部の中心軸に対して垂直方向より傾斜して延びている例を示す概念図である。
図3Aは,切刃部分が,本体部の中心軸に対して垂直方向より上方に向かって傾斜して延びていてるものの例を示し,
図3Bは,切刃部分が,本体部の中心軸に対して垂直方向より下方に向かって傾斜して延びていているものの例を示す。
図2のものは,刃9が本体部3の内壁から実質的に垂直に伸びているが,
図3のものは,刃が傾斜している。
図3Aにおいてθは,切刃部分のテーパの角度を示し,θの例は1度以上45度以下であり,5度以上30度以下でもよいし,5度以上20度以下でもよい。
【0020】
図4は,刃が,本体部内部に本体部の中心軸に対して傾斜して存在し,縁部が本体部内部と接する中空状の刃である吸引管の例を示す概念図である。この例では,吸引管の先端が注射針のように斜めにカットされており,カットされた先端に沿って刃9が存在している。一方,先端部分が筒状であってもよい。刃9が,本体部内部に本体部の中心軸11に対して傾斜して存在し,縁部が本体部内部と接する中空状の刃であることで,小さな対象物を,容易に切除できる。本体部の先端領域は,刃にそって本体部の中心軸に対して傾斜した形状を有するものの場合,吸引管自体を注射針のように用いることができ,吸引管本体を用いて,対象を切除することや,組織に吸引管を挿入しつつ,血液などの液体を吸引し続けることができる。傾斜の角度は任意である。傾斜の例は,0度を中心軸11に垂直とすれば,1度以上70度以下であり,5度以上45度以下でもよく,10度以上30度以下でもよいし,10度以上50度以下でもよい。
【0021】
刃は,縁部が本体部内部と接するものであることが好ましい。刃の数は1枚でもよいし,又は複数の刃部を有するものであってもよい。
図5は,複数の刃部を有する吸引管の例を示す概念図である。
図5に示される例は,刃は,縁部が本体部内部と接する複数の刃部を有し,複数の刃部は,本体部の中心軸に対して傾斜して存在する。このような形状を有すると,対象となる組織などを容易に切除できることとなる。
図5Aは吸引管を半分に割った際の概念図である。
図5Bは,
図5Aの吸引管を上部から見た際の図である。
図5の例では,4枚の刃部が90度ごとに設置されている。刃先は中心軸方向に面した部分に存在し,吸引管内に挿入された組織などの対象物を切除できる。吸引管が複数の刃9を有する場合,複数の刃9は同じ方向に傾斜していてもよいし(本体部3を展開したとき,刃9向きが,/,/,/,/のようにおよそ平行になる),隣接する刃9が互いに逆方向に傾斜してもよい(本体部3を展開したとき,刃9向きが,/,\,/,\のようになる)。
【0022】
図6は,複数枚(3枚)の傾斜しており,切刃部分が,本体部の中心軸に対して垂直方向より傾斜して延びている例を示す概念図である。
図6Aは,吸引管を上方から見た概念図を示し,
図6Bは,
図6AのX-X断面図を示し,
図6Cは,
図6AのY-Y断面図を示す。吸引管の本体部を回転させることで,刃の切刃部分により対象となる組織を容易に切除できる。
【0023】
図7は,本体部を回転させるための回転機構を含む吸引管の例を示す概念図である。回転機構は,任意要素であるが,回転機構を有すると以下に説明する通り有利な効果がある。例えば,回転機構13は中空であり,吸引管による液や対象物の吸引を妨げない。この吸引管は,圧を逃がすための穴があってもよい。回転機構13の例は,ボールベアリングといった回転駆動機構を用いて,回転機構13を指又は手で回転させると,それに伴って,接続部7に対して,本体部3が相対的に回転移動するように駆動できるものである。回転機構13を指で移動させると,吸引管の本体部分の回転移動に連れて,刃が回転するので,施術中に容易に対象となる組織を切除できる。また,施術中に吸引管の吸引が悪くなった場合にも,回転機構13を回転させることで,本体部に振動を与え,詰まりを防止できるので,施術の効率化にも寄与することとなる。また,小型モータやアクチュエータにより,接続部7に対して,本体部3を回転できるように駆動してもよい。回転機構13は,図示しない電源と接続されており,施術者が電源をONにする(回転動作を開始する)と,回転機構13が駆動され,本体部3が電力により回転するようにされている。このようにすれば,効果的に,対象となる組織などを切除できる。。
【0024】
この吸引管1の好ましい利用例は,吸引管1と,本体部3と接続され,吸引された対象物が収容される溶液槽とを含む,組織回収装置である。溶液槽は,接続部7と接続されたホースなどと連結されていればよい。例えば,液体と固体とは重さが異なるので,固体と液体とが遠心分離されるようにされており,液体は吸引装置5へ吸引され,固体は溶液槽に主に回収される。溶液槽には,例えば組織保存液が収容されているので,回収された組織などを分析することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は,医療機器の分野にて利用されうる。
【符号の説明】
【0026】
1 医療用吸引管
3 本体部
5 吸引装置
7 接続部
9 刃
11 本体部の中心軸
13 回転機構