(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】検査装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/087 20180101AFI20230614BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20230614BHJP
【FI】
G01N23/087
G01N23/04
(21)【出願番号】P 2019172783
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】598105802
【氏名又は名称】株式会社 システムスクエア
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 幸寛
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-205123(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159440(WO,A1)
【文献】特開2016-065855(JP,A)
【文献】特開平08-096136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0012419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
A61B 6/00 - A61B 6/14
G01B 15/00 - G01B 15/08
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に電磁波を照射する電磁波照射部と、
前記検査対象物を透過した前記電磁波の透過量の分布を、複数の異なるエネルギー帯についてそれぞれ検出し出力する検出部と、
前記複数の異なるエネルギー帯についてそれぞれ検出された前記透過量の分布に基づき、前記検査対象物の2以上の異なる透過画像を生成する画像生成手段と、
第1の前記透過画像において、所定の異物の可能性がある異物候補の存在部分を特定し、前記存在部分の、前記第1の前記透過画像とは別の第2の前記透過画像における対応部分を特定する対応部分特定手段と、
前記対応部分の画像に基づき、前記異物候補が前記所定の異物であるか否かを判定する判定手段と、
を備え
、
前記画像生成手段が生成する透過画像には、1つのエネルギー帯における前記透過量の分布に基づき生成されたシングルエナジー画像と、2つのエネルギー帯においてそれぞれ検出された前記透過量の分布に基づき生成されたデュアルエナジー画像とが含まれ、前記第1の前記透過画像と前記第2の前記透過画像のいずれか一方が、前記デュアルエナジー画像である検査装置。
【請求項2】
検査対象物に電磁波を照射する電磁波照射部と、
前記検査対象物を透過した前記電磁波の透過量の分布を、複数の異なるエネルギー帯についてそれぞれ検出し出力する検出部と、
前記複数の異なるエネルギー帯についてそれぞれ検出された前記透過量の分布に基づき、前記検査対象物の2以上の異なる透過画像を生成する画像生成手段と、
第1の前記透過画像において、所定の異物の可能性がある異物候補の存在部分を特定し、前記存在部分の、前記第1の前記透過画像とは別の第2の前記透過画像における対応部分を特定する対応部分特定手段と、
前記対応部分の画像に基づき、前記異物候補が前記所定の異物であるか否かを判定する判定手段と、
を備え
、
前記画像生成手段が生成する透過画像には、2つのエネルギー帯においてそれぞれ検出された前記透過量の分布に基づき生成されたデュアルエナジー画像が、エネルギー帯の組み合わせが異なる2通り含まれ、前記第1の前記透過画像と前記第2の前記透過画像は、前記2通りの前記デュアルエナジー画像である検査装置。
【請求項3】
前記対応部分特定手段は、前記異物候補の存在部分を所定の第1画像要件に基づき特定することを特徴とする請求項1
又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記対応部分特定手段は、前記第1の前記透過画像において前記異物候補の存在を特定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに、前記第1の前記透過画像を入力することにより前記異物候補の存在部分を特定することを特徴とする請求項1
又は2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記対応部分の画像が所定の第2画像要件を満たしているか否かにより、前記異物候補が前記所定の異物であるか否かを判定することを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記対応部分の画像に基づき当該対応部分に存在する前記異物候補が前記所定の異物であるか否かを判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに、前記対応部分の画像を入力することで、前記異物候補が前記所定の異物であるか否かを判定することを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検査対象物は鶏軟骨であり、前記異物候補は硬骨と骨膜であり、前記所定の異物は前記硬骨であることを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記対応部分特定手段における処理に使用する前記第1の透過画像の種類、前記第2の透過画像の種類及び前記第1の透過画像における異物候補の存在部分の特定方法、並びに前記判定手段において行う前記第2の透過画像に含まれるそれぞれの異物候補が所定の異物であるか否かの判定方法の選択入力を受け付ける受付手段を更に備え、
前記画像生成手段は、前記受付手段で選択入力された種類の前記第1の透過画像と前記第2の透過画像を生成し、
前記対応部分特定手段は、前記受付手段で選択入力された前記特定方法により、前記第1の透過画像における異物候補の存在部分を特定した後、当該存在部分の前記第2の透過画像における対応部分を特定し、
前記判定手段は、前記受付手段で選択入力された前記判定方法により、前記第2の透過画像に含まれるそれぞれの異物候補が所定の異物であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の検査装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から
8のいずれか1項に記載の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物に電磁波を照射して異物の検査を行う検査装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製品の製造から梱包、出荷に至るまでの各工程では、検査対象となる製品や混入しうる異物の種類(材料、大きさなど)に適した検査方法によって、製品や梱包内に異物等が混入していないか検査が行われる。
【0003】
このような検査のひとつである電磁波を用いて行う非破壊検査では、検査対象物にX線、紫外線、可視光線、赤外線、又はマイクロ波などの電磁波を照射し、透過した電磁波を検出する。このとき、検査対象物内の異物の有無や異物の材質等により電磁波の透過の程度に相違が生じる。そのため、検出された透過電磁波の強度の分布が濃淡などにより表現された二次元画像を生成することで、外観からは知りえない検査対象物内部の状況を検査することができる。
【0004】
検査対象物を透過した電磁波により非破壊検査を行う装置の検出方式には、主に、電磁波の1つのエネルギー帯を利用するシングルエナジータイプ(例えば、特許文献1参照)と、2つのエネルギー帯を利用するデュアルエナジータイプ(例えば、特許文献2参照)がある。
【0005】
シングルエナジータイプでは、電磁波の透過量を測定し、透過量が小さい部分に異物が存在していると判定する。一方、デュアルエナジータイプは、基本原理はシングルエナジータイプと同じであるが、シングルエナジータイプでは1つのエネルギー帯の透過量を測定するのに対し、デュアルエナジータイプでは2つの異なるエネルギー帯の透過量を同時に測定する点において異なる。電磁波の透過率は、一般に物質の種類と電磁波のエネルギーにより変化するため、検査対象物と異物の透過率の関係がエネルギー帯によって異なる。このような性質を利用して、画像化した際に、検査対象物との関係で相対的に異物を強調して表現することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-215163号公報
【文献】特開2010-190830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シングルエナジータイプの場合、電磁波の透過量を測定し、基本的には透過量が小さい部分に異物が存在していると判定する。しかし、例えば、検査対象物の厚みの変動が大きい場合や検査対象物が重なっている場合には、透過量が大きく変化し、誤検出が生じやすい。具体的には、ヤゲン軟骨を代表とする鶏軟骨に混入した硬骨をシングルエナジー画像で検出しようとすると、ヤゲン軟骨が重なった部分などが誤って硬骨として検出される場合などが挙げられる。
【0008】
一方で、デュアルエナジータイプの場合、例えば、異物と異物でないものとが同程度に強調されて、識別できない場合がある。具体的には、ヤゲン軟骨に付着している、異物ではない骨膜が、デュアルエナジー画像では硬骨と同じように表現され、硬骨を検出するように設定した場合に誤って骨膜が検出されてしまう場合などが挙げられる。
【0009】
本発明の目的は、従来の検出方式より誤検出が少ない検査装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の検査装置は、検査対象物に電磁波を照射する電磁波照射部と、検査対象物を透過した電磁波の透過量の分布を、複数の異なるエネルギー帯についてそれぞれ検出し出力する検出部と、複数の異なるエネルギー帯についてそれぞれ検出された透過量の分布に基づき、検査対象物の2以上の異なる透過画像を生成する画像生成手段と、第1の透過画像において、所定の異物の可能性がある異物候補の存在部分を特定し、当該存在部分の、第1の透過画像とは別の第2の透過画像における対応部分を特定する対応部分特定手段と、対応部分特定手段により特定された対応部分の画像に基づき、異物候補が所定の異物であるか否かを判定する判定手段と、を備える。
【0011】
画像生成手段が生成するそれぞれの透過画像は、それぞれ異なるエネルギー帯における透過量の分布に基づき生成されたシングルエナジー画像であってもよい。
【0012】
画像生成手段が生成する透過画像は、1つのエネルギー帯における透過量の分布に基づき生成されたシングルエナジー画像と、2つのエネルギー帯においてそれぞれ検出された透過量の分布に基づき生成されたデュアルエナジー画像とを含み、第1の透過画像と第2の透過画像のいずれか一方が、デュアルエナジー画像であってもよい。
【0013】
画像生成手段が生成する透過画像は、2つのエネルギー帯においてそれぞれ検出された透過量の分布に基づき生成されたデュアルエナジー画像を、エネルギー帯の組み合わせが異なる2通り含み、第1の透過画像と第2の透過画像が当該2通りのデュアルエナジー画像であってもよい。
【0014】
対応部分特定手段は、異物候補の存在部分を所定の第1画像要件に基づき特定してもよい。
【0015】
対応部分特定手段は、第1の透過画像において異物候補の存在を特定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに、第1の透過画像を入力することにより異物候補の存在部分を特定してもよい。
【0016】
判定手段は、対応部分の画像が所定の第2画像要件を満たしているか否かにより、異物候補が所定の異物であるか否かを判定してもよい。
【0017】
判定手段は、対応部分の画像に基づき当該対応部分に存在する異物候補が所定の異物であるか否かを判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに、対応部分の画像を入力することで、異物候補が所定の異物であるか否かを判定してもよい。
【0018】
検査対象物が鶏軟骨である場合、異物候補を硬骨と骨膜とし、所定の異物を硬骨としてもよい。
【0019】
本発明の検査装置は、対応部分特定手段における処理に使用する第1の透過画像の種類、第2の透過画像の種類及び第1の透過画像における異物候補の存在部分の特定方法、並びに判定手段において行う第2の透過画像に含まれるそれぞれの異物候補が所定の異物であるか否かの判定方法の選択入力を受け付ける受付手段を更に備え、画像生成手段が、受付手段で選択入力された種類の第1の透過画像と第2の透過画像を生成し、対応部分特定手段が、受付手段で選択入力された特定方法により、第1の透過画像における異物候補の存在部分を特定した後、当該存在部分の第2の透過画像における対応部分を特定し、判定手段が、受付手段で選択入力された判定方法により、第2の透過画像に含まれるそれぞれの異物候補が所定の異物であるか否かを判定するように構成してもよい。
【0020】
本発明の検査装置の各手段の機能は、プログラムに記述し、コンピュータに実行させることにより実現してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の検査装置によれば、異物候補の組み合わせに応じ、異なるエネルギー条件で生成された2つの透過画像を適切に選択することで、或るエネルギー条件で生成された透過画像を用いて異物候補である2以上の物質の存在部分を特定した上で、当該存在部分の、異なるエネルギー条件で生成された別の透過画像における対応部分の画像に基づき、異物候補が所定の異物であるか否かを精度よく判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の検査装置100の機能構成例を示す図である。
【
図2】対応部分特定手段150及び判定手段160による処理の具体例を説明する図である。
【
図3】本発明の検査装置200の機能構成例を示す図である。
【
図4】本発明の検査装置100、200の機能構成例を示す別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明及び図面では、同一の機能部には同一の符号を付し、一度説明した機能部については説明を省略するか、必要な範囲で説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本発明の検査装置100の機能構成図である。検査装置100は、電磁波照射部110、搬送部120、検出部130、画像生成手段140、対応部分特定手段150及び判定手段160を備える。
【0025】
電磁波照射部110は、搬送部120に載置され、
図1におけるY軸方向に搬送される検査対象物Wに、X線、紫外線、可視光線、赤外線などの電磁波を照射する。電磁波照射部110が発生する電磁波には、2以上の異なるエネルギー帯の電磁波が含まれる。このような電磁波が発生される構成であれば、電磁波の発生源は1つでもよいし、発生させたいエネルギー帯に応じて2以上設けてもよい。
【0026】
搬送部120は、3次元直交座標系においてXY平面をなす搬送面に載置された検査対象物Wを、Y軸方向に所定の速度で搬送する。搬送部120は、検査対象物Wを透過した電磁波が極力減衰せずに検出部130に届くよう、電磁波の透過性が高いものであることが望ましい。
【0027】
検出部130は、検査対象物を透過した電磁波の透過量を、複数の異なるエネルギー帯についてそれぞれ検出し出力する。複数の異なるエネルギー帯は、検査対象物Wと異物候補(透過画像から所定の特定方法により、特定されるべき所定の異物と、当該異物と混同して特定され得る非異物との総称)の組み合わせに応じ、任意に決定してよい。
【0028】
複数の異なるエネルギー帯について電磁波の透過量を検出可能とする構成は任意である。例えば、複数の検出素子がX軸方向に配列されたエネルギー弁別可能なラインセンサを採用してもよい。また例えば、複数の検出素子がX軸方向に配列された一般的なラインセンサを、エネルギー帯ごとにY軸方向に隣接配置して実現してもよいし、Z軸方向に公知の技術により積層配置して実現してもよい。
【0029】
検出部130は、各エネルギー帯についての検査対象物Wからの電磁波の透過量を、搬送部120による搬送速度に応じた周期で検査対象物Wの全体が通過するまで繰り返し検出し、出力する。これにより、各周期においてX軸方向に線状に各検出素子が検出した透過量の情報を収集することができ、検査対象物Wがラインセンサ上を通過する間の各周期の透過量の情報を収集することで、検査対象物W全体についての透過量の分布を得ることができる。
【0030】
画像生成手段140は、検出部130において、複数の異なるエネルギー帯についてそれぞれ検出された透過量の分布に基づき、検査対象物Wの2以上の異なる透過画像を生成する。
【0031】
具体的には、少なくとも、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに基づく、対応部分特定手段150における異物候補の存在部分の特定方法及び判定手段160における所定の異物の存否の判定方法に応じた2以上の異なる透過画像を生成する。
【0032】
例えば、対応部分特定手段150における異物候補の存在部分の特定と判定手段160における所定の異物の存否の判定を、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じた、それぞれ異なるエネルギー帯におけるシングルエナジー画像(1つのエネルギー帯における透過量の分布に基づき生成された透過画像)を用いて行う場合は、エネルギー帯が異なる2つのシングルエナジー画像を生成する。
各エネルギー帯における検査対象物W全体のシングルエナジー画像は、例えば、検出部130においてX軸方向に線状に検出された各検出素子の透過量の大小がそれぞれの画素の色調(色彩の明暗・濃淡・強弱などの調子)により表現された線状の画像を各周期について生成し、Y軸方向に時系列で並べることで生成することができる。
【0033】
また、対応部分特定手段150における異物候補の存在部分の特定をシングルエナジー画像を用いて、判定手段160における所定の異物の存否の判定をデュアルエナジー画像(2つのエネルギー帯においてそれぞれ検出された透過量の分布に基づき生成された透過画像)を用いて、それぞれ行う場合には、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じた、シングルエナジー画像とデュアルエナジー画像を生成する。
【0034】
また、対応部分特定手段150における異物候補の存在部分の特定をデュアルエナジー画像を用いて、判定手段160における所定の異物の存否の判定をシングルエナジー画像を用いて、それぞれ行う場合においても、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じた、シングルエナジー画像とデュアルエナジー画像を生成する。
【0035】
なお、シングルエナジー画像の生成の対象とするエネルギー帯は、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じ、デュアルエナジー画像の生成の対象とする2つのエネルギー帯のいずれか一方であってもよいし、別のエネルギー帯でもよい。
【0036】
対応部分特定手段150における異物候補の存在部分の特定に、或るエネルギー帯の組み合わせによるデュアルエナジー画像を用い、判定手段160における所定の異物の存否の判定に別のエネルギー帯の組み合わせによるデュアルエナジー画像を用いてもよい。この場合には、画像生成手段140は、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じた、これらのデュアルエナジー画像を生成する。なお、それぞれのデュアルエナジー画像の生成の対象とする2つのエネルギー帯は、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じ、いずれか一方のエネルギー帯が重複していてもよいし、重複していなくてもよい。
【0037】
画像生成手段140においてデュアルエナジー画像を生成する場合、デュアルエナジー画像は、2つのエネルギー帯の透過画像をそれぞれ生成した上で、両透過画像間で所定の演算(例えば、減算、加算、除算又は乗算など)を行うことにより生成してもよいし、2つのエネルギー帯においてそれぞれ検出された透過量の分布間で所定の演算を行うことにより直接生成してもよい。
【0038】
対応部分特定手段150は、まず、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じて画像生成手段140で生成された透過画像のひとつである第1の透過画像において、所定の異物の可能性がある異物候補の存在部分を特定する。
【0039】
異物候補とは、前述のとおり、透過画像において所定の特定方法により特定される所定の異物と、当該特定方法により当該異物と混同して特定され得る非異物とを総称したものである。例えば、検査対象物Wが鶏軟骨であり、所定の異物が硬骨であるとき、硬骨の検出に適した画像要件において硬骨とともに非異物である骨膜が検出されることがある。この場合、異物候補は硬骨と骨膜である。
【0040】
第1の透過画像における異物候補の存在部分の特定は、例えば、第1の透過画像に対応するシングルエナジー画像又はデュアルエナジー画像において、所定の異物が検出される画像要件(例えば、それぞれの画素の色調や、画素間での色調の変化の態様など)である第1画像要件を満たす部分として特定する。
【0041】
また例えば、第1の透過画像に対応するシングルエナジー画像又はデュアルエナジー画像に含まれる所定の異物の存在部分を特定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに、第1の透過画像を入力することで、異物候補の存在部分を特定してもよい。
【0042】
機械学習は、例えば、第1の透過画像に対応するシングルエナジー画像又はデュアルエナジー画像における、異物候補の複数の透過画像と、非異物の複数の透過画像を学習データとして、それぞれの画素の色調の相違や、画素間での色調の変化の態様の相違などに基づき学習を行う。これにより、第1の透過画像の入力により異物候補の存在部分を特定する学習モデルを生成することができる。
【0043】
対応部分特定手段150は、第1の透過画像における異物候補の存在部分を特定した後、当該存在部分の、画像生成手段140で生成された別の透過画像である第2の透過画像における対応部分を特定する。
【0044】
判定手段160は、対応部分特定手段150において特定された、第1の透過画像における異物候補の存在部分の第2の透過画像における対応部分の画像に基づき、異物候補が所定の異物であるか否かを判定する。
【0045】
異物候補が所定の異物であるか否かの判定は、例えば、第2の透過画像に対応するシングルエナジー画像又はデュアルエナジー画像における対応部分において、所定の異物が非異物と切り分けて検出される画像要件(例えば、それぞれの画素の色調や、画素間での色調の変化の態様など)である第2画像要件を満たすか否かにより判定する。
【0046】
また例えば、第2の透過画像に対応するシングルエナジー画像又はデュアルエナジー画像における対応部分の画像に基づき、当該対応部分に存在する異物候補が所定の異物であるか否かを判定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに、対応部分の画像を入力することで、当該対応部分に存在する異物候補が所定の異物であるか否かを判定してもよい。
【0047】
機械学習は、例えば、第2の透過画像に対応するシングルエナジー画像又はデュアルエナジー画像における、所定の異物の複数の透過画像と、非異物の複数の透過画像を学習データとして、それぞれの画素の色調の相違や、画素間での色調の変化の態様の相違などに基づき行う。これにより、異物候補が表示された画像部分の入力により当該異物候補が所定の異物であるか否かを出力する学習モデルを生成することができる。
【0048】
対応部分特定手段150及び判定手段160による処理の具体例を、
図2を参照しつつ説明する。ここでは、画像生成手段140が、デュアルエナジー画像において異物候補の存在部分を特定し、当該存在部分の、シングルエナジー画像における対応部分を特定する場合について説明する。
【0049】
画像生成手段140において、
図2(a)に示すデュアルエナジー画像と、
図2(b)に示すシングルエナジー画像が得られたとき、まず、デュアルエナジー画像において、所定の異物が検出される画像要件により、異物候補の存在部分を特定する。
図2(c)は、
図2(a)に示すデュアルエナジー画像において、異物候補の存在部分を、それぞれ矩形領域で特定した例を示す。ここでは矩形領域で特定しているが、存在部分を特定できれば領域の形状は任意である。
【0050】
続いて、デュアルエナジー画像において特定された、異物候補の存在部分を示す各矩形領域を、シングルエナジー画像における対応部分に
図2(d)に示すように設定する。対応部分への設定は、例えばデュアルエナジー画像の座標系とシングルエナジー画像の座標系を一致させておけば容易に可能である。
【0051】
そして、
図2(d)に示すように特定された、それぞれの対応部分の画像に表現された異物候補について、学習モデルへの入力などにより、所定の異物であるか否かを判定する。
図2(e)は、所定の異物と判定されたものを矩形で包囲して表現した例であり、これを任意の表示部に表示してもよいし、表示と共に又は表示することなくデジタルデータとして保存し、更には所定の処理を施してもよい。
【0052】
以上説明した本発明の検査装置100によれば、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じ、異なるエネルギー条件で生成された2つの透過画像を適切に選択することで、或るエネルギー条件で生成された透過画像を用いて異物候補である2以上の物質の存在部分を特定した上で、当該存在部分の、異なるエネルギー条件で生成された別の透過画像における対応部分の画像に基づき、異物候補が所定の異物であるか否かを精度よく判定することが可能となる。
【0053】
<第2実施形態>
図3は、本発明の検査装置200の機能構成図である。検査装置200は、電磁波照射部110、搬送部120、検出部130、画像生成手段240、対応部分特定手段250、判定手段260及び受付手段270を備える。
【0054】
受付手段270は、対応部分特定手段250における処理に使用する第1の透過画像の種類、第1の透過画像とは異なる第2の透過画像の種類及び第1の透過画像における異物候補の存在部分の特定方法、並びに判定手段260において行う第2の透過画像に含まれるそれぞれの異物候補が所定の異物であるか否かの判定方法の選択入力を受け付ける。
【0055】
選択入力する透過画像の種類とは、いずれかのエネルギー帯の透過量の情報に基づくシングルエナジー画像、又はいずれか2つの異なるエネルギー帯それぞれの透過量の情報に基づくデュアルエナジー画像を意味する。
また、選択入力する第1の透過画像における異物候補の存在部分の特定方法としては、例えば画像要件に基づく特定方法や、学習モデルに基づく特定方法が挙げられる。
また、選択入力する第2の透過画像に含まれるそれぞれの異物候補が所定の異物であるか否かの判定方法としては、例えば画像要件に基づく判定方法や、学習モデルに基づく判定方法が挙げられる。
【0056】
選択入力の受け付けの実現方法は任意であり、例えば、後述するコンピュータ170の表示部174に入力インタフェースを表示させ、当該入力インタフェースに入力部173から入力を受け付けるように構成してもよい。
【0057】
なお、第1の透過画像と第2の透過画像とで異なる種類が選択入力されるようにするには、ユーザが意識的に異なる種類を選択入力するようにしてもよいし、装置側で同じ種類を選択入力できないように入力インタフェースを構成してもよい。
【0058】
画像生成手段240は、受付手段270で選択入力された種類の第1の透過画像と第2の透過画像を生成する。選択入力により各透過画像の種類が決定された以後の処理については、画像生成手段140と同様である。
【0059】
対応部分特定手段250は、受付手段270で選択入力された特定方法により、第1の透過画像における異物候補の存在部分を特定した後、当該存在部分の第2の透過画像における対応部分を特定する。その他の詳細については、対応部分特定手段150と同様である。
【0060】
判定手段260は、受付手段270で選択入力された判定方法により、第2の透過画像に含まれるそれぞれの異物候補が所定の異物であるか否かの判定を行う。その他の詳細については判定手段160と同様である。
【0061】
以上説明した検査装置200によれば、ユーザが任意に選択した第1の透過画像、第2の透過画像、第1の透過画像における異物候補の存在部分の特定方法、及び第2の透過画像に含まれるそれぞれの異物候補が所定の異物であるか否かの判定方法により検査を行うことが可能となる。
【0062】
<第3実施形態>
本発明の検査装置100の各手段の機能は、プログラムに記述し、コンピュータに実行させることにより実現してもよい。構成例を
図4に示す。
【0063】
検査装置100は、例えば、電磁波照射部110、搬送部120、検出部130及びコンピュータ170を備え、コンピュータ170は、CPU171、記憶部172、入力部173、表示部174、通信部175及び入力IF176を備える。
【0064】
検査装置100は、電磁波照射部110、搬送部120及び検出部130とコンピュータ170とが一体化された構成を採ってもよいし、電磁波照射部110、搬送部120及び検出部130と外部のコンピュータ170とが有線通信又は無線通信により接続された構成を採ってもよい。
【0065】
CPU171は、記憶部172に記憶された各手段の機能が記述されたプログラムを実行し、各手段の機能を実現する。記憶部172は、検査装置100又は200の各手段の機能が記述されたプログラムなど、各手段における処理に使用する情報を記憶する任意の記憶手段である。記憶部172には、例えば、HDDやフラッシュメモリ等の記憶媒体のほか、不揮発性メモリ、揮発性メモリなどを採用することができる。なお、記憶部172は、検査装置100に設ける代わりに、通信部175を介して接続されたクラウドストレージなどにより実現してもよい。入力部173は、装置利用者が必要に応じ情報の入力をするポインティングデバイス、キーボードなどの入力インタフェースである。表示部174は、CPU171の制御に従い各種の情報を表示する。通信部175は、無線ネットワーク又は有線ネットワークに接続するためのインタフェースであり、CPU171の制御に従い、ネットワークに接続されたクラウドストレージなどとの間で情報の送受を行う。入力IF176は、CPU171による制御により検出部130で検出された透過量のデータなどが入力される外部機器との任意の接続インタフェースである。
【0066】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。すなわち、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能であり、その様な変更や改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含む。
【符号の説明】
【0067】
100、200…検査装置
110…電磁波照射部
120…搬送部
130…検出部
140、240…画像生成手段
150、250…対応部分特定手段
160、260…判定手段
170…コンピュータ
171…CPU
172…記憶部
173…入力部
174…表示部
175…通信部
176…入力IF
270…受付手段
W…検査対象物