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特許7295577飲料マルチパック小出し用のばね付陳列ケース
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  • 特許-飲料マルチパック小出し用のばね付陳列ケース 図1
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  • 特許-飲料マルチパック小出し用のばね付陳列ケース 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】飲料マルチパック小出し用のばね付陳列ケース
(51)【国際特許分類】
   A47F 3/022 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
A47F3/022
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020550909
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018084116
(87)【国際公開番号】W WO2019115433
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】1720618.6
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520206667
【氏名又は名称】エーティーエル アソシエイツ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ATL ASSOCIATES LIMITED
【住所又は居所原語表記】161 GLOUCESTER CRESCENT, WIGSTON, LEICESTERSHIRE LE18 4YH (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,ジェームズ アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ-フェンレイ,ベンジャミン ジェームズ
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-504215(JP,A)
【文献】米国特許第03004813(US,A)
【文献】中国実用新案第206228281(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 3/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に開口すると共に、内部に複数の同種の飲料マルチパックを第一の向きで垂直に積み重ねることが可能な垂直な容器と、
前記容器内で垂直に摺動可能に取り付けられると共に、貫通形成された少なくとも1つの空気孔を有する水平な載せ台と、
前記容器内で前記載せ台の下側と該容器の基部の上側の間に取り付けられて、該載せ台を該容器の前記上端に向けて付勢する1つの弾性圧縮可能部材と、
第1の端部において前記載せ台に取り付けられると共に第2の端部において前記容器の前記基部に取り付けられて、該載せ台が該容器の前記上端から外へ出ることを防止する繋止部材と、
を含み、
前記載せ台は、前記空気孔を周辺部に有し、前記飲料マルチパックが前記載せ台上に前記第一の向きで積み重ねられたときに前記空気孔が塞がれないような大きさ及び形状を有する
飲料マルチパック小出し用のばね付陳列ケース。
【請求項2】
前記容器が実質的に直方体である請求項1に記載のケース。
【請求項3】
前記載せ台がシート材料で形成されている請求項1又は2に記載のケース。
【請求項4】
前記載せ台が板金で形成されている請求項3に記載のケース。
【請求項5】
前記載せ台が、貫通形成された複数の前記空気孔を有する請求項1~4の何れか1項に記載のケース。
【請求項6】
前記弾性圧縮可能部材がコイルばねである請求項1~5の何れか1項に記載のケース。
【請求項7】
前記コイルばねが8mm以上の直径を有する鋼線で形成されている請求項6に記載のケース。
【請求項8】
前記繋止部材が前記コイルばね内の中心に取り付けられている請求項6又は7に記載のケース。
【請求項9】
前記繋止部材が前記コイルばね内の中心に配置されている請求項8に記載のケース。
【請求項10】
前記繋止部材がチェーンである請求項1~9の何れか1項に記載のケース。
【請求項11】
前記弾性圧縮可能部材の強度が、前記載せ台の上側に積み重ねられた最上段の前記飲料マルチパックが常に前記容器の前記上端またはその付近に位置するように選択されている請求項1~1の何れか1項に記載のケース。
【請求項12】
前記飲料マルチパックが前記載せ台上に配置されていないときに、前記弾性圧縮可能部材が、前記繋止部材によって拘束された圧縮状態になるように構成されている請求項1~1の何れか1項に記載のケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小売店における製品の陳列に関する。本発明は、製品、特に重量のある製品を手の届きやすい高さに陳列するための改良されたケースを提供し、それによって消費者が下に手を伸ばして製品を床から持ち上げる必要性を回避することができる。
【背景技術】
【0002】
様々な製品のためのばね付陳列ケースは、何年も前から利用可能である。おそらく最も一般的なばね付陳列ケースは、垂直な箱の中で、水平なばね付載せ台の上に新聞を積み重ねて陳列する新聞箱であろう。新聞箱は、その中に積み重ねられた新聞の大きさに適合するような大きさ及び形状を有している。ばね付載せ台は、積み重ねられた最上段の新聞が常に陳列ケースの上端またはその付近に保持されるように形成されている。すなわち、新聞が箱から取り出されたとき、載せ台上の重量の減少により、載せ台は、取り出された新聞の厚さに実質的に等しい距離だけ箱の上端に向かって移動することができる。これは、箱内において、載せ台の下面と箱の基部の上面との間に、1つ以上の弾性圧縮可能部材、例えば、ばねを取り付けることによって達成される。弾性圧縮可能部材は、新聞が取り出されたときに載せ台の必要な変位を達成するのに適した強度を有することになる。このようにして、消費者が腰をかがめて箱の底部から新聞を抜き取る必要がない簡単な方法で新聞を陳列することができる。
【0003】
新聞箱の成功に照らして、より多様な範囲に亘る製品の陳列ケースを提供するための努力が行われてきた。様々な製品のばね付陳列ケースが生産され、その成功の度合いも様々である。特に重量のある製品については、顧客が床面や棚から製品を持ち上げる必要性をなくすために、ばね付陳列ケースの提供が必要とされている。特にばね付陳列ケースが有用であると考えられる製品の一つは、飲料のマルチパックである。飲料のマルチパックは、重量があり、比較的定型サイズであるため、ばね付陳列ケース内に陳列するのに適している。しかし、マルチパック飲料用の、弾力性があり信頼性の高いばね付陳列ケースは、これまで誰も製造できていない。現状では、マルチパック飲料は、ほとんどの棚設備には重すぎるため、単純に山積みまたはスタッキングされて「積み重ねて、高く積み上げる」陳列が行われている。
【0004】
飲料マルチパック用のばね付陳列設備に必要な高さ及び製品の重量を考慮すると、追加の部品なしに、容器内のばねに水平な載せ台を単純に簡単な方法で取り付けることが不可能であることが分かる。このような方法で単純にばね付陳列設備を構築する試みにより、このアプローチの技術的な課題が明らかになってきた。
【0005】
図1に、マルチパック飲料用のばね付陳列ケースの第1の従来技術の実施例を示す。このケース1は、上端に開口した垂直な容器2と、容器2内に摺動可能に取り付けられた水平な載せ台3と、容器2内で載せ台3の下に取り付けられたコイルばね4と、を含んでいる。従来のコイルばね4を使用してこのように形成された実施例では、ケース1が半分より多く満たされると、ばね4が図1に示すように蛇行してしまうことが分かった。この結果、ケースが詰まり、機能しなくなる。
【0006】
図1の実施例の問題を解消するために、ケースは、2つのばねと、2つのばねの間に取り付けられた中央プランジャとを含むように改変された。この実施例を図2に示す。実際には、1つの垂直ばねが、中央の載せ台またはプランジャによって2つに分割されている。図2のケース11は、上端に開口した垂直な容器12と、容器12内に摺動可能に取り付けられた水平な載せ台13と、容器12内で載せ台13の直下に取り付けられた上側コイルばね14と、容器12内で上側コイルばね14の下端に摺動可能に取り付けられた中央プランジャ15と、中央プランジャ15の下に取り付けられた下側コイルばね16と、を含んでいる。下側コイルばね16は、上側コイルばね14よりも比較的弾力性がある。水平な載せ台13及び中央プランジャ15は共に特注の射出成形部品であった。
【0007】
ケース11に約半分まで負荷がかかると、上側コイルばね14と下側コイルばね16の相対的な強度のために、実質的に全ての圧縮が上側コイルばね14で発生し、下側コイルばね16の圧縮はほとんどないか、または全くない。さらに負荷がかかると、下側コイルばね16は箱が一杯になるまで圧縮されるようになる。2つのばねと中央プランジャを設けることによって、図の実施例に存在する蛇行の問題を解消し、この実施例は満足に動作する。
【0008】
しかしながら、図2の実施例では、2つの別個のばねを必要とするため、図1のケース1の理論的な容量と比較して、ケース11の容量が大幅に減少する。さらに、2つの特注の射出成形部品(中央プランジャ15及びプランジャ13)を設けることにより、図2の実施例を製造するのに法外な費用がかかる。このことを考慮すると、飲料マルチパックのような重量のある製品と共に使用される場合に適切に機能することができ、特定のサイズの製品用に比較的少量で生産するのに経済的である、改良されたばね付陳列ケースが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上端に開口すると共に、内部に複数の製品を垂直に積み重ねることが可能な大きさ及び形状を有する垂直な容器と、前記容器内で垂直に摺動可能に取り付けられると共に、貫通形成された少なくとも1つの空気孔を有する水平な載せ台と、前記容器内で前記載せ台の下側と該容器の基部の上側の間に取り付けられて、該載せ台を該容器の前記上端に向けて付勢する1つの弾性圧縮可能部材と、第1の端部において前記載せ台に取り付けられると共に第2の端部において前記容器の前記基部に取り付けられて、該載せ台が該容器の前記上端から外へ出ることを防止する繋止部材と、を含む、製品小出し用のばね付陳列ケースを提供する。
【0010】
本発明のケースは、飲料のマルチパックのような重量のある製品を陳列することができる、比較的単純で安価な構造のばね付陳列ケースを提供するので有利である。これは主に、1つの弾性圧縮可能部材と、弾性圧縮可能部材の過度な伸長を防止するための繋止部材との組み合わせによって達成される。繋止部材を使用することにより、弾性圧縮可能部材(コイルばねであってもよい)が、従来技術に係る装置の対応する部材に比して、極めて強度が高くなり、より弾力性を有することが可能になる。特に、本発明の弾性圧縮可能部材は、図1の従来技術の実施例のコイルばね(4)よりも極めて強度が高くなり得る。これにより、本発明に従う構造のケースは、繋止部材なしでは必然的に発生するであろう、弾性圧縮可能部材の蛇行を回避することができる。これは、特に、製品が水平な載せ台上に配置されていないときに、弾性圧縮可能部材が繋止部材によって拘束されるように、弾性圧縮可能部材と繋止部材が構成されている場合に当てはまる。
【0011】
容易に理解されるように、ケースは、垂直な容器内で製品を1つずつ垂直に積み重ねることを可能にする任意の形状とすることができる。一般的に、多くの製品が直方体の形に包装されていることから、容器が一致した形状を有し、実質的に直方体であることが一般的に好ましいと考えられる。
【0012】
本発明のケースのコストを最小限に抑えるために、ケースの載せ台は適切なシート材料で形成されていることが好ましい。適切なシート材の例としては、ステンレス鋼などの板金が挙げられる。シート材料は、比較的単純で形成が容易であると共に、特注の射出成形部品のコストが法外なものとなる、少量生産されるケースのコストを大幅に削減することができるため、好ましい。
【0013】
本発明の載せ台が容器内で垂直に摺動できるようにするためには、載せ台が、貫通形成された少なくとも1つの空気孔を有することが一般的に必要である。これは、載せ台が垂直な容器内で垂直方向に摺動するためには、載せ台が垂直方向に移動する際に、空気が載せ台を通過または貫通して流れることができるようにする必要があるからである。これは、載せ台を貫通する少なくとも1つの空気孔を形成することによって達成することができる。載せ台を貫通する良好な空気の流れを可能にし、載せ台を容易に移動させるためには、複数の空気孔が載せ台に貫通形成されることが好ましい場合がある。容易に理解されるように、空気孔が載せ台に貫通形成され、載せ台は、製品が載せ台上に積み重ねられたときに空気孔が塞がれないような大きさ及び形状を有することが好ましい。少なくとも1つの空気孔は、容器内での載せ台の動きを減衰させるような大きさ及び形状を有していてもよい。特に、少なくとも1つの空気孔は、制限された空気の流れだけが載せ台及びその周囲を通過することができ、その制限された空気の流れによって、載せ台が移動するときに減衰を与えるような大きさを有していてもよい。
【0014】
本発明の弾性圧縮可能部材は、当業者には明らかな任意の適切な部材であってよい。しかしながら、最も単純で一般的に好ましい構造では、弾性圧縮可能部材はコイルばねである。ばねが圧縮されたときに蛇行しにくくするためには、ばねが、8mm以上の直径を有する鋼線で形成されていることが好ましい場合がある。直径が7mm未満の線材で形成されたコイルばねは、より蛇行しやすいことが分かっている。
【0015】
弾性圧縮可能部材がコイルばねである場合には、繋止部材は、コイルばねの中心の垂直軸に沿って延びるように、コイルばね内の中心に取り付けられることが一般的に好ましい。これは、陳列ケースが使用されているときに、中心に取り付けられた繋止部材の動作が、載せ台を水平方向に維持し、ばねの蛇行に抗して作用することになるため、好ましい。
【0016】
本発明の繋止部材は、当業者には明らかな任意の適切な方法で形成することができる。本発明の実施形態では、繋止部材は、非伸縮性のチェーンまたはストラップであってもよい。
【0017】
本発明に従う構造のケースは、実質的に任意の適切な製品を収容するための大きさ及び形状を有していてもよい。それでもやはり、本発明は、飲料マルチパック、例えば飲料缶のマルチパックと共に使用するのに特に適していると考えられる。ケースが飲料マルチパックと共に使用される場合、容器が当該製品を収容するための大きさ及び形状を有することが有利である。特に、容器は、複数の同一の飲料マルチパックが互いに積み重ねられることによって形成される形状にぴったり一致するような大きさ及び形状を有していてもよい。
【0018】
既存のばね付陳列ケースと同様に、弾性圧縮可能部材の強度は、載せ台の上側に積み重ねられた最上段の製品が常に容器の上端またはその付近に位置するように選択されることが好ましい。このようにすることで、顧客は、容器の上端から最上段の製品を簡単に持ち上げることができ、その後、ケースは、その製品のすぐ下にある製品を容器の上端に移動させるように動作する。これは、陳列ケースを使用して陳列しようとする特定の製品に基づいて、弾性圧縮可能部材の強度を選択することによって達成することができる。
【0019】
本発明のさらなる特徴及び利点は、図面に示されると共に以下に記載される実施形態から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術の第一の実施例としての陳列ケースを示す概略図。
図2】従来技術の第二の実施例としての陳列ケースを示す概略図。
図3】本発明の第一の実施形態としての陳列ケースを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図3には、本発明に従う構造のばね付陳列ケース21が示されている。ケース21は、上端23に開口した垂直な容器22と、容器22内で摺動可能に取り付けられた水平な載せ台24と、容器22内で載せ台24の下に取り付けられたコイルばね25と、第1の端部において載せ台24の下側に取り付けられると共に第2の端部において容器22の基部に取り付けられた繋止部材26と、を含んでいる。繋止部材26は、コイルばね25内の中心に配置されている。ケース21は、マルチパック飲料を陳列するように設計されている。
【0022】
載せ台24は、板金で形成されており、容器22内を垂直に摺動する際に、載せ台24を空気が通過するための複数の空気孔27が貫通形成されている。ばね25は、約9mmの直径を有する鋼線で形成されている。繋止部材26は鋼製チェーンである。陳列ケース21の高さは、垂直な容器22の上端が、平均的な人が安全に持ち上げ作業ができる高さとなるように設定されている。ケース21が空の状態にあるとき、繋止部材26は、ばね25を圧縮状態に保持し、載せ台24を容器22の実質的に上端に保持するように作用する。特に、繋止部材26は、載せ台24が容器22の上端からはみ出すことを防止する。
【0023】
陳列ケース21は、次のように操作する。複数の同一の飲料マルチパックを垂直な容器22内に積み重ねる。このとき、載せ台24が容器22の下方へ垂直に移動し、ばね25が圧縮される。ばね25の強度は、飲料マルチパックの最上段が垂直な容器22の実質的に上端に位置するように設定されている。顧客がマルチパックの購入を希望する場合、顧客は、ケース21から最上段のマルチパックを取り出すことができる。最上段のマルチパックを取り出すと、載せ台24及びばね25に作用する重量が減少し、ばねが載せ台24を上方に移動させるように作用する。これにより、次のマルチパックが容器22の実質的に上端に位置するまで、載せ台24上に配置されたマルチパックが上方に移動する。
【0024】
載せ台24に貫通形成された空気孔27は、ばね25の作用の下で、載せ台24が容器22に沿って容易に移動することを可能にする。空気孔27の大きさ及び配置は、マルチパックが載せ台24上に配置されているときでも、空気が流動できるように設定されている。さらに、空気孔27は、載せ台24及びその周囲を通過する空気の流れを制限して、載せ台24の動きを減衰させるような大きさを有している。これにより、載せ台24があまりにも急速に動くことが防止される。
図1
図2
図3