(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】フィルタエレメントカートリッジおよび濾過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 27/08 20060101AFI20230614BHJP
F02M 37/34 20190101ALI20230614BHJP
【FI】
B01D27/08
F02M37/34
(21)【出願番号】P 2019103505
(22)【出願日】2019-06-03
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000102348
【氏名又は名称】エイケン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】原 盛朗
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-013479(JP,A)
【文献】特開昭63-224706(JP,A)
【文献】特表2002-502682(JP,A)
【文献】実開昭61-015006(JP,U)
【文献】特開平05-200210(JP,A)
【文献】特公昭57-014889(JP,B1)
【文献】特開2007-203286(JP,A)
【文献】実公昭63-030487(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 27/00-12、29/00-48、35/00-30
F01M 11/03
F02M 37/32-52
F16N 39/06
F15B 21/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を一時的に収容する収容部に対して前記液体を導入する導入路と前記収容部内の前記液体を排出する排出路とが互いに隣接配置されたケース内に設けられて前記導入路から導入された前記液体を浄化して前記排出路に排出するフィルタエレメントカートリッジにおいて、
前記導入路に対向する導入端面を有して前記ケース内に嵌合する筒状に形成されたフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントの中心部を軸線方向に貫通して前記導入端面側および同導入端面に対して反対側の端面である排出端面側でそれぞれ開口する帰還通路管と、
前記帰還通路管の両端部のうちの前記導入端面側の開口部と前記排出路とを液密的に連通させる排出連通路管とを備え、
前記フィルタエレメントは、
前記導入端面が前記導入路から導入された前記液体を前記フィルタエレメント内に取り込むことができるように露出しており、
前記排出端面が前記フィルタエレメント内を通過した前記液体を前記収容部内に排出するように露出して
おり、
前記排出連通路管は、
弾性体で構成されて前記ケースの内側面における前記排出路の周囲に押し付けられる環状のケース接続部と、
前記ケースの内側面に押し付けられる前記ケース接続部を支持する環状の支持部とを有しており、
前記支持部は、
前記ケース接続部を前記ケースの内側面に押圧する部分に周方向に沿って凹状に凹む環状の溝部を有していることを特徴とするフィルタエレメントカートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載したフィルタエレメントカートリッジにおいて、さらに、
前記フィルタエレメントにおける前記導入端面に対向する対向面を有しつつ同導入端面側の外周面に嵌合する導入端面覆い体を備え、
前記導入端面覆い体は、
前記導入路から導入された前記液体を前記導入端面に流通させる流通貫通孔を有していることを特徴とするフィルタエレメントカートリッジ。
【請求項3】
請求項2に記載したフィルタエレメントカートリッジにおいて、
前記排出連通路管と前記導入端面覆い体とが一体的に形成されていることを特徴とするフィルタエレメントカートリッジ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載したフィルタエレメントカートリッジにおいて、
前記対向面は、
前記導入路に対向する位置に形成されていることを特徴とするフィルタエレメントカートリッジ。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したフィルタエレメントカートリッジにおいて、
前記対向面は、
前記導入端面に対して隙間を介して設けられていることを特徴とするフィルタエレメントカートリッジ。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載したフィルタエレメントカートリッジにおいて、
前記対向面は、
前記導入端面に対向する内側面に同導入端面側に突出する突起部を有していることを特徴とするフィルタエレメントカートリッジ。
【請求項7】
液体を一時的に収容する収容部に対して前記液体を導入する導入路と前記収容部内の前記液体を排出する排出路とが互いに隣接配置されたケース内に設けられて前記導入路から導入された前記液体を浄化して前記排出路に排出するフィルタエレメントカートリッジを備えた濾過装置において、
前記フィルタエレメントカートリッジは、
前記導入路に対向する導入端面を有して前記ケース内に嵌合する筒状に形成されたフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントの中心部を軸線方向に貫通して前記導入端面側および同導入端面に対して反対側の端面である排出端面側でそれぞれ開口する帰還通路管と、
前記帰還通路管の両端部のうちの前記導入端面側の開口部と前記排出路とを液密的に連通させる排出連通路管とを備え、
前記フィルタエレメントは、
前記導入端面が前記導入路から導入された前記液体を前記フィルタエレメント内に取り込むことができるように露出しており、
前記排出端面が前記フィルタエレメント内を通過した前記液体を前記収容部内に排出するように露出して
おり、
前記排出連通路管は、
弾性体で構成されて前記ケースの内側面における前記排出路の周囲に押し付けられる環状のケース接続部と、
前記ケースの内側面に押し付けられる前記ケース接続部を支持する環状の支持部とを有しており、
前記支持部は、
前記ケース接続部を前記ケースの内側面に押圧する部分に周方向に沿って凹状に凹む環状の溝部を有していることを特徴とする濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの内燃機関の燃料またはオイルを濾過する濾過装置に取り付けられるフィルタエレメントカートリッジおよび濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの内燃機関の燃料またはオイルを濾過する濾過装置には、フィルタエレメントカートリッジが着脱自在に取り付けられている。例えば、下記特許文献1には、濾過対象となる燃料がフィルタエレメントを貫通する筒状体内を流通した後にフィルタエレメント内に導かれるように構成されたフィルタエレメントカートリッジとしてのフィルタエレメント組立体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載したフィルタエレメントカートリッジにおいては、濾過対象となる燃料が筒状体内を流通した後にフィルタエレメント内に導かれるように構成されているため、濾過対象となる燃料がフィルタエレメントまで導かれる流路経路が長く燃料に含まれる異物が流路経路内に付着または堆積して燃料の流通を阻害することが懸念される。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、濾過対象となる燃料がフィルタエレメントに導かれる流路経路を短くして燃料に含まれる異物が流路経路内に残留することを抑制することができるフィルタエレメントカートリッジおよび濾過装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、液体を一時的に収容する収容部に対して液体を導入する導入路と収容部内の液体を排出する排出路とが互いに隣接配置されたケース内に設けられて導入路から導入された液体を浄化して排出路に排出するフィルタエレメントカートリッジにおいて、導入路に対向する導入端面を有してケース内に嵌合する筒状に形成されたフィルタエレメントと、フィルタエレメントの中心部を軸線方向に貫通して導入端面側および同導入端面に対して反対側の端面である排出端面側でそれぞれ開口する帰還通路管と、帰還通路管の両端部のうちの導入端面側の開口部と排出路とを液密的に連通させる排出連通路管とを備え、フィルタエレメントは、導入端面が導入路から導入された液体を前記フィルタエレメント内に取り込むことができるように露出しており、排出端面がフィルタエレメント内を通過した液体を収容部内に排出するように露出しており、排出連通路管は、弾性体で構成されてケースの内側面における排出路の周囲に押し付けられる環状のケース接続部と、ケースの内側面に押し付けられるケース接続部を支持する環状の支持部とを有しており、支持部は、ケース接続部をケースの内側面に押圧する部分に周方向に沿って凹状に凹む環状の溝部を有していることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、フィルタエレメントカートリッジは、導入路から収容部内に導入された液体が直ちにフィルタエレメントの導入端面からフィルタエレメント内に取り込まれて排出連通路管を介して排出路に導かれるため、濾過対象となる液体がフィルタエレメントに導かれる流路経路を短くして液体に含まれる異物が流路経路内に残留することを抑制することができる。
【0008】
また、本発明の特徴によれば、フィルタエレメントカートリッジは、排出連通路管がケースの内側面における排出路よりも大径で同排出路の周囲に押し付けられる環状のケース接続部を有しているため、排出路の位置が異なる複数種類のケースに対して共通に使用することができる。
【0009】
また、本発明の特徴によれば、フィルタエレメントカートリッジは、ケースの内側面に押し付けられるケース接続部を支持する環状の支持部が周方向に沿って凹状に凹む環状の溝部を有しているため、ケース接続部の硬度または成形精度に拘らずケース接続部と支持部との密着性を向上させて排出連通路管内の液密性を長期間に亘って維持することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記フィルタエレメントカートリッジにおいて、さらに、フィルタエレメントにおける導入端面に対向する対向面を有しつつ同導入端面側の外周面に嵌合する導入端面覆い体を備え、導入端面覆い体は、導入路から導入された液体を導入端面に流通させる流通貫通孔を有していることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、フィルタエレメントカートリッジは、さらに、フィルタエレメントにおける導入端面に対向する対向面を有しつつ同導入端面側の外周面に嵌合する導入端面覆い体を備えているため、導入路から導入された液体の導入端面への流通を流通貫通孔によって確保しつつフィルタエレメントの外周面とケースの内周面との間に液体が流出することを防止して濾過精度を向上させることができる。また、本発明に係るフィルタエレメントカートリッジは、流通貫通孔の大きさまたは形状を適宜設定することでフィルタエレメントの導入端面に導かれる液体の量および位置を調整することもできる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記フィルタエレメントカートリッジにおいて、排出連通路管と導入端面覆い体とが一体的に形成されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、フィルタエレメントカートリッジは、排出連通路管と導入端面覆い体とが一体的に形成されているため、排出連通路管および導入端面覆い体の剛性を向上させることができるとともにフィルタエレメントカートリッジの部品点数を減らして組み立て作業の管理および作業自体の負担を軽減することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記フィルタエレメントカートリッジにおいて、対向面は、導入路に対向する位置に形成されていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、フィルタエレメントカートリッジは、対向面が導入路に対向する位置に形成されているため、導入路から供給された液体が対向面に当たって流れが拡散することでフィルタエレメントの導入端面における導入路に対向する部分に集中的に液体が流入することが防止されてフィルタエレメントの濾過精度を長期間に亘って維持することができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記フィルタエレメントカートリッジにおいて、対向面は、導入端面に対して隙間を介して設けられていることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、フィルタエレメントカートリッジは、対向面が導入端面に対して隙間を介して設けられているため、対向面が導入端面を塞ぐことで導入端面における液体を取り入れる面積が減少することを防止して液体の濾過能力の低下を防止することができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記フィルタエレメントカートリッジにおいて、対向面は、導入端面に対向する内側面に同導入端面側に突出する突起部を有していることにある。
【0019】
このように構成した本発明の特徴によれば、フィルタエレメントカートリッジは、対向面における導入端面に対向する内側面に同導入端面側に突出する突起部を有しているため、対向面の内側面の全面が導入端面に接触して導入端面の一部を塞ぐことを防止でき濾過能力の低下を防止することができる。
【0020】
削除
【0021】
削除
【0022】
また、本発明は、フィルタエレメントカートリッジの発明として実施できるばかりでなく、このフィルタエレメントカートリッジを備えた濾過装置の発明としても実施できるものである。
【0023】
具体的には、濾過装置は、液体を一時的に収容する収容部に対して液体を導入する導入路と収容部内の液体を排出する排出路とが互いに隣接配置されたケース内に設けられて導入路から導入された液体を浄化して排出路に排出するフィルタエレメントカートリッジを備えた濾過装置において、フィルタエレメントカートリッジは、導入路に対向する導入端面を有してケース内に嵌合する筒状に形成されたフィルタエレメントと、フィルタエレメントの中心部を軸線方向に貫通して導入端面側および同導入端面に対して反対側の端面である排出端面側でそれぞれ開口する帰還通路管と、帰還通路管の両端部のうちの導入端面側の開口部と排出路とを液密的に連通させる排出連通路管とを備え、フィルタエレメントは、導入端面が導入路から導入された液体をフィルタエレメント内に取り込むことができるように露出しており、排出端面がフィルタエレメント内を通過した液体を収容部内に排出するように露出しており、排出連通路管は、弾性体で構成されてケースの内側面における排出路の周囲に押し付けられる環状のケース接続部と、ケースの内側面に押し付けられるケース接続部を支持する環状の支持部とを有しており、支持部は、ケース接続部をケースの内側面に押圧する部分に周方向に沿って凹状に凹む環状の溝部を有していることにある。これによれば、濾過装置は、上記フィルタエレメントと同様の作用効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る濾過装置が備えるフィルタエレメントカートリッジの外観構成の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すフィルタエレメントカートリッジの外観構成の概略を示す正面図である。
【
図3】
図1に示すフィルタエレメントカートリッジを備える濾過装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図1に示すフィルタエレメントカートリッジが備える導入端面覆い体の外観構成を内側面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るフィルタエレメントカートリッジおよびこのフィルタエレメントカートリッジを備える濾過装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る濾過装置100が備えるフィルタエレメントカートリッジ110の外観構成の概略を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すフィルタエレメントカートリッジ110の外観構成の概略を示す正面図である。また、
図3は、
図1に示すフィルタエレメントカートリッジ110を備える濾過装置100の構成を概略的に示す断面図である。この濾過装置100は、4輪自動車などの内燃機関においてガソリンまたは経由などの燃料に含まれる物理的な異物を濾し取る装置である。
【0026】
(濾過装置100の構成)
濾過装置100は、ケース101を備えている。ケース101は、フィルタエレメントカートリッジ110を収容する樹脂製の容器であり、主として、ケース本体102、蓋体103および連結具105をそれぞれ備えて構成されている。ケース本体102は、フィルタエレメントカートリッジ110の一部(図示下側)を収容する部品であり、円板体の周縁部に壁部が起立して形成された有底円筒状に形成されている。
【0027】
蓋体103は、ケース本体102の開口部上を覆ってフィルタエレメントカートリッジ110の他の一部(図示上側)を収容する部品であり、円板体の周縁部に壁部が下垂して形成された有天円筒状に形成されている。すなわち、ケース本体102と蓋体103とは、一体的に組み付けられることによって内部空間にフィルタエレメントカートリッジ110の全体を収容する収容部104を形成する。この蓋体103には、導入路103aおよび排出路103bがそれぞれ形成されている。
【0028】
導入路103aは、フィルタエレメントカートリッジ110による濾過の対象となる液体としての燃料(図示せず)を収容部104内に導入する部分であり、蓋体103の外側面に一体的に形成された管路が蓋体103の内側面に開口して形成されている。この導入路103aは、図示しない配管および燃料供給ポンプを介して燃料タンクに接続されている。この導入路103aは、蓋体103の中心部から径方向にずれた位置に形成されている。
【0029】
排出路103bは、収容部104内で濾過された燃料を収容部104の外部に導くための部分であり、蓋体103の外側面に一体的に形成された管路が蓋体103の内側面に開口して形成されている。この排出路103bは、図示しない配管を介して一部が内燃機関に導かれるとともに他の一部が燃料タンクに接続されている。この排出路103bは、蓋体103の中心部形成されている。
【0030】
連結具105は、ケース本体102と蓋体103を互いに着脱自在に連結するための部品であり、円筒体の内周面に雌ネジが形成されて構成されている。すなわち、連結具105は、ケース本体102とケース本体102の開口部上に配置された蓋体103との合わせ目部分にネジ嵌合してケース本体102と蓋体103を互いに着脱自在に連結する。
【0031】
フィルタエレメントカートリッジ110は、収容部104内に導かれた燃料を濾過するための部品であり、主として、フィルタエレメント111、帰還通路管112および液体給排補助具120をそれぞれ備えて構成されている。
【0032】
フィルタエレメント111は、収容部104内に導かれた燃料を濾過するための部品であり、シート状の濾紙を円筒状に巻いて構成されている。この場合、フィルタエレメント111は、ケース本体102の内周面に対して接触または僅かな隙間を介して嵌合する外径に形成されている。このフィルタエレメント111は、円筒体における両端面における一方(図示上側)の端面が導入端面111aを構成しているとともに他方(図示下側)の端面が排出端面111bを構成している。
【0033】
導入端面111aは、導入路103aによって収容部104内に導入された燃料を取り込む部分であり、蓋体103の内側面に対向するように配置される。排出端面111bは、フィルタエレメント111内を通過した燃料がフィルタエレメント111内から流出する部分であり、ケース本体102の底部に対向するように配置される。
【0034】
帰還通路管112は、フィルタエレメント111の排出端面111bから流出した燃料を排出路103b側に戻すための樹脂製の部品であり、フィルタエレメント111の中心部に形成された貫通孔を貫通する円管状に形成されている。この帰還通路管112における一方(図示上側)の端部は、フィルタエレメント111の導入端面111aから突出して液体給排補助具120の排出連通路管121に連結されている。
【0035】
また、帰還通路管112における他方(図示上側)の端部は、フィルタエレメント111の排出端面111bから突出するとともにサブフィルタ保持部113が形成されている。また、帰還通路管112は、前記一方の端部から前記他方の端部に向かって管を構成する肉厚が厚くなるテーパ形状に形成されており、フィルタエレメント111の内周部分を介してフィルタエレメント111のセンタリングおよび保持をするように構成されている。また、帰還通路管112は、フィルタエレメント111の内周面に対して接触または僅かな隙間を介して嵌合する外径に形成されている。
【0036】
サブフィルタ保持部113は、サブフィルタ114を保持する部分であり、主として、保持部113aと底板113dとで構成されている。保持部113aは、円環状に形成されたサブフィルタ114を保持する部分であり、帰還通路管112における前記他方の端部に径方向外側に円板状に広がって形成されている。
【0037】
この場合、保持部113aの板面には、サブフィルタ114の内側面の位置を規定する内側支持部113bが底板113dに向かって突出した状態で周方向に沿って3つ形成されている。また、保持部113aの板面の外周部には、サブフィルタ114の内側面の位置を規定するとともに底板113dを着脱自在に保持する外側支持部113cが底板113dに向かって突出した状態で周方向に沿って3つ形成されている。
【0038】
底板113dは、保持部113aの内側支持部113bおよび外側支持部113cに嵌合するサブフィルタ114を保持部113aとともに挟んで保持するための部品であり、樹脂材を円板状に形成して構成されている。この底板113dは、中央部が保持部113a側に向かって錘状に突出して形成されるとともに外周部に外側支持部113cの先端部に形成された鉤状部を引っ掛けるための引掛け部が形成されている。
【0039】
サブフィルタ114は、フィルタエレメント111の排出端面111bから流出した燃料を濾過しつつ帰還通路管112に流通させる部品であり、樹脂製で弾性を有する多孔質体で構成されている。この場合、多孔質体としては、連続気泡を有したフォーム材、網目構造体または多数の繊維を絡ませた繊維集合体がある。このサブフィルタ114は、本実施形態においては、平板環状に形成された複数(本実施形態においては、5つ)のサブフィルタ114を積み重ねて構成されているが、1つの円筒体で構成することもできる。
【0040】
液体給排補助具120は、フィルタエレメント111に対する燃料の供給および排出を補助するための樹脂製の部品であり、主として、排出連通路管121と導入端面覆い体124とを備えて構成されている。排出連通路管121は、帰還通路管112によって導かれた燃料を排出路103bに導くための部品であり、主として、管側接続部121a、ケース接続部122および支持部123をそれぞれ備えて構成されている。
【0041】
管側接続部121aは、
図4に示すように、帰還通路管112の一方(図示上側)の端部に挿し込まれて気密的に接続される部分であり、円筒状に形成されている。この場合、管側接続部121aは、接着剤などを用いて帰還通路管112の一方(図示上側)の端部に固着される。
【0042】
ケース接続部122は、蓋体103の内側面における排出路103bに接続される部分であり、排出路103bの周囲に押し付けられることで弾性変形して液密的に密着するゴム材またはエラストマなどの弾性材料を円筒状に形成して構成されている。この場合、ケース接続部122は、排出路103bの内径に対して2倍以上かつ5倍以下の十分に大きな内径に形成されている。
【0043】
支持部123は、ケース接続部122を支持する部分であり、主として、内側嵌合部123aと受け部123bとで構成されている。内側嵌合部123aは、ケース接続部122の内径に嵌合する円筒状に形成されている。また、受け部123bは、ケース接続部122の図示下面を支持して支持部123を蓋体103に押し付ける部分であり、円環状に形成されている。この場合、受け部123bにおけるケース接続部122が載置される部分には、凹状に凹む環状の溝部123cが同心円で複数形成されている。
【0044】
導入端面覆い体124は、フィルタエレメント111における導入端面111aの一部を覆いつつ外縁部に嵌合する部品であり、平面視で略円板状に形成されている。この導入端面覆い体124は、主として、対向面125、流通貫通孔126および嵌合部127をそれぞれ備えて構成されている。
【0045】
対向面125は、
図4に示すように、フィルタエレメント111における導入端面111aに対向する部分であり、板状に形成されている。この対向面125は、導入端面111a側の内側面125aが導入端面111aに対して隙間Sを介して接触しないように形成されている。この場合、対向面125は、内側面125aから導入端面111a側に突出した状態で突起部125bが形成されている。
【0046】
突起部125bは、対向面125の内側面125aが導入端面111aに密着することを防止するための部分であり、対向面125の内側面125aの幅方向の中央部に長手方向に沿って凸状に突出して形成されている。この場合、突起部125は、本実施形態においては、導入端面111aに接する突出量で形成されているが、導入端面111aに接触しない突出量で形成されていてもよい。
【0047】
流通貫通孔126は、導入路103aから供給された燃料を導入端面111aに向けて流通させるための部分であり、対向面125を貫通する貫通孔によって構成されている。この場合、流通貫通孔126の開口面積は、導入端面111aに流通させたい燃料の量に応じて適宜設定される。
【0048】
嵌合部127は、フィルタエレメント111の外縁部に嵌合する部分であり、導入端面111aの外縁部を覆いつつ同外縁部に隣接する外周部に嵌合する有天円筒状に形成されている。なお、嵌合部127の下端部は、ケース本体102の円環上の上端部上に載置されて収容部104内においてフィルタエレメント111が底付きせずに浮いた状態で配置されるように支持する。また、嵌合部127の外周部には、導入端面覆い体124上の燃料がフィルタエレメント111とケース本体102との間に入り込まないようにOリングなどのシール部材が設けられている。
【0049】
これらの排出連通路管121と導入端面覆い体124とは、樹脂材料の射出成形などの成形法によって一体的に形成されて液体給排補助具120を構成されているが、それぞれ別体で構成されて互いに組み付け合って液体給排補助具120を構成することもできる。
【0050】
(濾過装置100の作動)
次に、このように構成した濾過装置100の作動について説明する。この濾過装置100は、自動車のエンジンルーム内に配置されたケース101内にフィルタエレメントカートリッジ110がセットされて使用される。
【0051】
具体的には、フィルタエレメントカートリッジ110をケース101内にセットする作業者は、フィルタエレメントカートリッジ110をケース本体102に挿し込んだ状態でケース本体102を蓋体103に嵌合させる。この場合、作業者は、フィルタエレメントカートリッジ110における対向面125を蓋体103の導入路103aに対向する位置に位置決めした状態でケース本体102を蓋体103に嵌合させることができる。
【0052】
次いで、作業者は、連結具105を用いてケース本体102を蓋体103に締め付ける。これにより、フィルタエレメントカートリッジ110は、ケース接続部122が蓋体103の内側面に押し付けられた状態で収容部104内に配置される。なお、作業者は、フィルタエレメントカートリッジ110における対向面125を蓋体103の導入路103aに対向しないずれた位置に位置決めした状態でケース本体102を蓋体103に嵌合させてもよいことは当然である。
【0053】
濾過装置100の使用に際しては、図示しない燃料タンクから燃料が導入路103aを介して供給される(
図3において破線矢印参照)。この場合、導入端面111aよりも図示上側の領域は、排出連通路管121のケース接続部122および導入端面覆い体124の嵌合部127によって蓋体103の内側面との間およびケース本体102の内側面との間がそれぞれ塞がれている。このため、ケース101の収容部104内に供給された燃料は、排出連通路管121内およびフィルタエレメント111とケース本体102との間に進入することなく、流通貫通孔126を介してフィルタエレメント111の導入端面111aに流れ込む。
【0054】
この場合、燃料は、対向面125によって直接導入端面111aに導かれることが防止されるとともに対向面125の内側面125aが導入端面111aに対して離隔していることで導入端面111a全体に均等に流れ込んで導入端面111a内に進入することができる。導入端面111aを介してフィルタエレメント111内に進入した燃料は、フィルタエレメント111で物理的な異物が濾された後、排出端面111bから流出する(
図3において破線矢印参照)。
【0055】
フィルタエレメント111から流出した燃料は、収容部104内における排出端面111bよりも図示下方の領域で一時的に留まった後、サブフィルタ114を介してサブフィルタ保持部113の内部に進入する(
図3において破線矢印参照)。次いで、サブフィルタ保持部113の内部に進入した燃料は、帰還通路管112内に流れ込んで同帰還通路管112内を排出連通路管121側(図示上側)に向かって流れた後、排出連通路管121を介して排出路103b内に流入する(
図3において破線矢印参照)。これにより、収容部104内の燃料は、フィルタエレメントカートリッジ110から外部に排出される(
図3において破線矢印参照)。
【0056】
このような濾過装置100の使用によってフィルタエレメント111の濾過性能が低下した場合には、フィルタエレメントカートリッジ110を交換することができる。具体的には、作業者は、連結具105の締め付け状態を弛めてケース本体102を蓋体103から分離した後、ケース本体102内からフィルタエレメントカートリッジ110を取り出して新品のフィルタエレメントカートリッジ110と差し替える。次いで、作業者は、前記と同様にして、フィルタエレメントカートリッジ110をケース本体102に挿し込んだ状態でケース本体102を蓋体103に嵌合させて連結具105を締め付けることによってケース本体102を蓋体103に取り付けることができる。
【0057】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、濾過装置100は、導入路103aから収容部104内に導入された燃料が直ちにフィルタエレメント111の導入端面111aからフィルタエレメント111内に取り込まれて排出連通路管121を介して排出路103bに導かれるため、濾過対象となる燃料がフィルタエレメント111に導かれる流路経路を短くして燃料に含まれる異物が流路経路内に残留することを抑制することができる。
【0058】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態においては、フィルタエレメントカートリッジ110は、液体給排補助具120を備えて構成した。しかし、フィルタエレメントカートリッジ110は、液体給排補助具120を省略して構成することもできる。この場合、フィルタエレメントカートリッジ110は、帰還通路管112を排出路103bに直結するように構成するとよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、フィルタエレメントカートリッジ110は、排出連通路管121および導入端面覆い体124の両方を備えて構成した。しかし、フィルタエレメントカートリッジ110は、排出連通路管121および導入端面覆い体124のうちの一方を備えて構成することもできる。
【0061】
また、上記実施形態においては、導入端面覆い体124は、対向面125をフィルタエレメント111の径方向に互いに直交する方向に沿ってそれぞれ設けた。しかし、導入端面覆い体124は、対向面125をフィルタエレメント111の径方向に互いに直交する方向以外の方向、例えば、フィルタエレメント111の中心部から放射状に形成するようにしてもよいし網目状に形成してもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、対向面125は、フィルタエレメント111の導入端面111aに対して隙間Sを形成するように構成した。これにより、フィルタエレメントカートリッジ110は、導入端面111aにおける燃料を取り入れる面積が減少することを防止して燃料の濾過能力の低下を防止することができる。しかし、対向面125は、フィルタエレメント111の導入端面111aに対して密着させて隙間Sを形成しないように構成することもできる。
【0063】
また、上記実施形態においては、対向面125は、内側面125aに突起部125bを形成して構成した。これにより、フィルタエレメントカートリッジ110は、対向面125が導入端面111a側に変形した場合においても対向面125の内側面125aの全面が導入端面111aに接触して導入端面111aの一部を塞ぐことを防止でき濾過能力の低下を防止することができる。しかし、対向面125は、突起部125bを省略して構成することができる。また、対向面125は、直線状に連続して突出する突起部125bに代えて断続的または点状に突出する形状に突起部125bを形成して構成することもできる。
【0064】
また、上記実施形態においては、フィルタエレメントカートリッジ110は、サブフィルタ114を備えて構成した。しかし、フィルタエレメントカートリッジ110は、サブフィルタ114を省略して構成することもできる。この場合、フィルタエレメントカートリッジ110は、サブフィルタ保持部113を省略して構成することができる。
【0065】
また、上記実施形態においては、排出連通路管121は、排出路103bの周囲を覆う大きさケース接続部122を備えて構成した。しかし、ケース接続部122は、排出路103bの内径と略同じ大きさの内径に形成されていてもよい。また、排出連通路管121は、ケース接続部122を省略して排出連通路管121自体が排出路103bに直接接続されるように構成することもできる。
【0066】
また、上記実施形態においては、支持部123は、ケース接続部122をケース101における蓋体103の内側面に押圧する部分である受け部123bに周方向に沿って凹状に凹む環状の溝部123cを有して構成されている。これにより、フィルタエレメントカートリッジ110は、ケース接続部122の硬度または成形精度に拘らずケース接続部122と受け部123bとの密着性を向上させて排出連通路管121内の液密性を長期間に亘って維持することができる。しかし、支持部123は、溝部123cを省略して受け部123bを構成することもできる。
【0067】
また、上記実施形態においては、濾過装置100は、内燃機関の燃料を濾過するように構成した。しかし、濾過装置100は、内燃機関の燃料以外の液体の濾過に広く適用することができる。例えば、濾過装置100は、内燃機関内の潤滑オイルまたは油圧用オイルを濾過するように構成することができる。
【符号の説明】
【0068】
S…隙間、
100…濾過装置、
101…ケース、102…ケース本体、103…蓋体、103a…導入路、103b…排出路、104…収容部、105…連結具、
110…フィルタエレメントカートリッジ、111…フィルタエレメント、111a…導入端面、111b…排出端面、112…帰還通路管、113…サブフィルタ保持部、113a…保持部、113b…内側支持部、113c…外側支持部、113d…底板、114…サブフィルタ、
120…液体給排補助具、121…排出連通路管、121a…管側接続部、122…ケース接続部、123…支持部、123a…内側嵌合部、123b…受け部、123c…溝部、124…導入端面覆い体、125…対向面、125a…内側面、125b…突起部、126…流通貫通孔、127…嵌合部。