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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】吸収性物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20230614BHJP
   A61F 5/441 20060101ALI20230614BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230614BHJP
   A61L 15/46 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61F13/15 141
A61F13/15 320
A61F5/441
A61F13/53 300
A61L15/46 200
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017067183
(22)【出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2018166878
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-09-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼間 一晃
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】八木 誠
【審判官】一ノ瀬 覚
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-501803(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056307(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0158296(US,A1)
【文献】特表2000-505692(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ及び高吸水性ポリマーを含有する吸収体を備えた吸収性物品において、
前記高吸水性ポリマーの表面に、消臭機能を持つ物質をシクロデキストリンに包接させたシクロデキストリン複合体が添加されるとともに、前記シクロデキストリン複合体は、前記高吸水性ポリマー100質量部に対して、0.01~1質量部添加され、かつ前記シクロデキストリン複合体の他に、前記高吸水性ポリマーの表面に、100質量部の高吸水性ポリマーに対して、消臭機能を持つ物質を包接していない未包接のシクロデキストリンが0~0.1質量部(ただし、0質量部を除く。)で添加され、
前記吸収体の排尿口に対応する所定領域において、前記パルプと、前記シクロデキストリン複合体が表面に添加された高吸水性ポリマーとがそれぞれ少なくとも平面方向に分散配置されるとともに、前記吸収体のそれ以外の領域において、前記パルプと、前記シクロデキストリン複合体が表面に添加されない高吸水性ポリマーとがそれぞれ少なくとも平面方向に分散配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記消臭機能を持つ物質は、前記シクロデキストリンに包接されない状態では実質的に含まれていない請求項1記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、尿取りパッド、失禁パッドなどの吸収性物品に係り、詳しくは尿などの体液に反応して消臭機能を発揮する消臭機能付き高吸水性ポリマーが吸収体に含有された吸収性物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に、パルプ及び高吸水性ポリマーを含有する吸収体が介在したものが知られている。
【0003】
前記吸収性物品は、尿などの体液を吸収した際に、悪臭を発するのを防止するため、消臭機能を備えたものが種々開発されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、液透過層と、液不透過層と、これら両層の間に位置する吸収層と、前記吸収層及び前記液不透過層の間に位置するシクロデキストリン含有層とを含む吸収性物品が開示されている。また、着用者から排出された尿などの体液に含まれる水分と接触することによって、シクロデキストリンに保持されていた活性成分を徐々に放出(除放)し、前記活性成分の有する作用を発現させる機能を有するように、前記シクロデキストリンは、天然香料や合成香料等の任意の香料を保持したシクロデキストリンを用いてもよいことが記載されるとともに、シクロデキストリンの配置方法として、分散媒体(例えば、ポリシロキサンオイル、鉱油など)に分散させた状態で配置しても、溶剤に溶解した溶液の状態で配置してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5769896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、香料を包接したシクロデキストリン-香料複合体を分散媒体に分散させた状態や溶剤に溶解した状態で配置した場合には、包接反応の平衡状態になって、分散媒体中や溶剤中に単独の香料が遊離することがあり、この溶液を噴霧することにより、吸収性物品に単独の香料が付着してしまい、体液と接触する前から香料の機能が発現され、体液と接触したときには香料の機能が低下していることがあった。
【0007】
また、上記特許文献1記載の吸収性物品では、シクロデキストリン含有層としてシクロデキストリンを粉粒物の状態のまま配置しているため、粉粒状のシクロデキストリンが移動しやすく、吸収性物品の製造工程や製品輸送時、使用時などにシクロデキストリンが偏在することにより、消臭機能が偏在するおそれがあった。また、吸収性物品が高速で製造されている状況下などにおいて、粉粒物として配置した場合には、粉粒物の飛散やこぼれが生じやすく、製造などの際の取り扱いが困難であった。
【0008】
更に、上記特許文献1記載の吸収性物品では、シクロデキストリン含有層として消臭機能を有する物質が集中的に配置されているため、この層まで達しない体液に対しては消臭機能が発現されないとともに、シクロデキストリン含有層内での体液の拡散性が低いと考えられるため、シクロデキストリンと体液との接触が生じにくく、消臭機能が十分満足するに至らない場合があった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、体液との接触前には消臭機能が発現せず、体液との接触によって確実に消臭機能が発揮されるようにするとともに、消臭機能が吸収性物品の全体に亘ってほぼ均一化でき、かつ製造などの際の取り扱いを容易にした吸収性物品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、パルプ及び高吸水性ポリマーを含有する吸収体を備えた吸収性物品において、
前記高吸水性ポリマーの表面に、消臭機能を持つ物質をシクロデキストリンに包接させたシクロデキストリン複合体が添加されるとともに、前記シクロデキストリン複合体は、前記高吸水性ポリマー100質量部に対して、0.01~1質量部添加され、かつ前記シクロデキストリン複合体の他に、前記高吸水性ポリマーの表面に、100質量部の高吸水性ポリマーに対して、消臭機能を持つ物質を包接していない未包接のシクロデキストリンが0~0.1質量部(ただし、0質量部を除く。)で添加され、
前記吸収体の排尿口に対応する所定領域において、前記パルプと、前記シクロデキストリン複合体が表面に添加された高吸水性ポリマーとがそれぞれ少なくとも平面方向に分散配置されるとともに、前記吸収体のそれ以外の領域において、前記パルプと、前記シクロデキストリン複合体が表面に添加されない高吸水性ポリマーとがそれぞれ少なくとも平面方向に分散配置されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、前記高吸水性ポリマーの表面に、香料などの消臭機能を持つ物質をシクロデキストリンに包接させたシクロデキストリン複合体を添加している。香料などの消臭機能を持つ物質は、シクロデキストリンに包接されているため、体液との接触前には、その機能を発現することがない。シクロデキストリン複合体が排泄された体液と接触し、香料などが除放されることによってはじめて消臭機能が発揮される。したがって、体液との接触前には消臭機能が発現せず、体液との接触によって確実に消臭機能が発揮されるようになる。
【0012】
また、前記消臭機能を持つ物質が包接されたシクロデキストリン複合体は、高吸水性ポリマーの表面に添加されているため、体液と確実に接触でき、除放された消臭機能を持つ物質によって消臭効果が確実に発揮されるとともに、高吸水性ポリマーに吸水保持された体液の消臭効果が増大できるようになる。
【0013】
前記シクロデキストリン複合体が添加された高吸水性ポリマーは、パルプとともに吸収体中にほぼ均一に分散されるとともに、吸収性物品の製造工程や製品の搬送時の移動が少ないため、消臭機能が吸収性物品の全体に亘ってほぼ均一化できるようになる。
【0014】
更に、前記シクロデキストリン複合体は、高吸水性ポリマーの表面に添加されているため、吸収性物品の製造工程や製品の搬送時、又は吸収性物品の使用中において、シクロデキストリン複合体の飛散やこぼれがほとんどなく、製造などの際の取り扱いが容易になる。
【0015】
前記シクロデキストリン複合体は、前記高吸水性ポリマー100質量部に対して、0.01~1質量部添加される。この範囲の添加量とすることにより、確実に消臭効果が得られるとともに、高吸水性ポリマーの表面にシクロデキストリン複合体が固着した状態が維持されやすくなる。また、前記シクロデキストリン複合体の他に、前記高吸水性ポリマーの表面に、100質量部の高吸水性ポリマーに対して、消臭機能を持つ物質を包接していない未包接のシクロデキストリンが0~0.1質量部(ただし、0質量部を除く。)で添加されていることにより、排泄液との接触によって未包接のシクロデキストリンが排泄液の臭気成分を包接することによる消臭効果が得られるようになる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記消臭機能を持つ物質は、前記シクロデキストリンに包接されない状態では実質的に含まれていない請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、香料などの消臭機能を持つ物質が、シクロデキストリンに包接されない状態では実質的に含まれていないため、香料などの消臭機能を持つ物質が体液と接触する前にその機能を発現することがなく、体液との接触時に確実に消臭機能が得られるようにしている。
【発明の効果】
【0018】
以上詳説のとおり本発明によれば、体液との接触前には消臭機能が発現せず、体液との接触によって確実に消臭機能を発揮することができるとともに、消臭機能が吸収性物品の全体に亘ってほぼ均一化でき、かつ製造などの際の取り扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る吸収性物品1の断面図である。
図2】吸収体製造装置10の概略図である。
図3】高吸水性ポリマー5の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔吸収性物品の基本構成〕
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0021】
本発明に係る吸収性物品1は、図1に示されるように、パルプ繊維と高吸水性ポリマー5とからなる、ある程度の剛性を有するとともに、必要に応じてクレープ紙や不織布等からなる被包シート6によって囲繞された吸収体2と、前記吸収体2の肌側(表面側)を覆うように配設された有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなる透液性のトップシート3と、前記吸収体2の非肌側(裏面側)を覆うように配設されたポリエチレン等からなる不透液性の防水シート4とから主に構成されたものであり、具体的には、使い捨ておむつ、尿取りパッド、失禁パッド、生理用ナプキン等が例示できる。また、前記吸収体2の周囲において、その吸収体2の外縁よりも外側に延出しているトップシート3と防水シート4とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、外周に吸収体2の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0022】
前記吸収体2は、フラッフ状パルプに粉粒状の高吸水性ポリマー5が分散配置されて構成されたものを用いるのが好ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。吸収体2を囲繞する被包シート6を設ける場合には、結果的にトップシート3と吸収体2との間に被包シート6が介在することになり、吸収性に優れる被包シート6を用いることによって体液を速やかに拡散させるとともに、これら尿の逆戻りを防止するようになる。
【0023】
前記吸収体2の製造装置10としては、図2に示されるように、装置内に送られてきたパルプ原紙11を解繊する解繊装置12と、この解繊装置12を囲繞するとともに、粉砕された粉砕パルプを空気流に乗せて搬送するための粉砕パルプ供給ケーシング13と、この粉砕パルプ供給ケーシング13の下流側開口部に配設される積繊装置14とからなるものである。
【0024】
更に具体的に詳述すると、吸収体製造装置10の隣接位置に配置されたパルプ原反16から繰り出されたパルプ原紙11は、解繊装置12に供給される。前記解繊装置12のロール表面には多数の粉砕刃が設けられており、供給されたパルプ原紙11を細かく解繊する。細かくされた粉砕パルプ17は、積繊装置14による吸引作用によって前記粉砕パルプ供給ケーシング13内の空気流に乗って下流側に搬送される。
【0025】
前記粉砕パルプ供給ケーシング13には、上面側にポリマー投入口18が設けられており、粉粒状の高吸水性ポリマー5が前記粉砕パルプ17とともに空気流に乗って、下流側に配設された積繊装置14の周面に供給される。後段で詳述するように、前記高吸水性ポリマー5の表面にはシクロデキストリン複合体7が添加されている。前記高吸水性ポリマー5は、空気流に乗って積繊装置14に供給されるまでの間に、粉砕パルプ17にほぼ均一に分散して配置されるようになる。
【0026】
前記積繊装置14の吸収体成形用凹部内に積繊された粉砕パルプ17及び高吸水性ポリマー5からなる吸収体2は、周方向に搬送され、コンベア19に転写される。このコンベア19には、吸収体2下面側を覆う被包シート6が供給され、前記吸収体2が被包シート6上に積層されるようになっている。
【0027】
前記吸収体2は、平面形状を略砂時計状として成形されたものを使用することにより、股下部では吸収体の幅寸法を狭めることにより股間部への当たりを弱くし着用者にゴワ付き感を与えないようにすることもできるし、略長方形状として成形されたものを使用してもよい。この吸収体2は、形状保持、高吸水性ポリマー5のこぼれ防止、及びトップシート3を透過した体液の拡散性向上のために被包シート6によって被包されているのが好ましい。
【0028】
前記吸収体2の肌側(上層側)を覆う透液性のトップシート3としては、液を透過する性質を有し、例えば、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は特に限定されない。例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法、ポイントボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性(=ソフト性)が高い点で優れている。また、トップシート3は、1枚のシートから成るものであっても、2枚以上のシートを貼り合わせて得た積層シートから成るものであってもよい。透液性トップシート3に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0029】
前記吸収体2の非肌側(下層側)を覆う防水シート4は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも用いることができる。
【0030】
〔高吸水性ポリマー5〕
前記高吸水性ポリマー5は、粒子以外に粉体からなるものも含む。高吸水性ポリマー5は、この種の吸収性物品に使用される粒径のものをそのまま使用でき、未吸水時の平均粒径が1000μm以下、好ましくは未吸水時の平均粒径が106μm以上のものが全体の99重量%以上、特に150~850μmのものが全体の99重量%以上であるのが望ましい。未吸水時の平均粒径は250~500μm程度であるのが好ましい。また、高吸水性ポリマー5は吸水後の平均粒径が未吸水時の平均粒径の3倍以上、具体的には500μm以上であることが望ましい。なお、未吸水時の高吸水性ポリマー5の平均粒径は、重量基準粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。この場合における重量基準粒度分布は、JISZ8815-1994に準拠して測定される。すなわち、内径150mm、深さ45mmの710μm、500μm、300μm、150μm及び106μmの目開きのふるいを、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。
前記高吸水性ポリマー5の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸水性ポリマー5としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。また、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等を用いることも可能である。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。高吸水性ポリマー5の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸水性ポリマー5としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体2内に供給された液が吸収体2外に戻り出てしまう、所謂逆戻りを発生し易くなる。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマー5は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸収倍率(吸水力)と吸収速度の調整が可能である。
高吸水性ポリマー5の目付量は、当該吸収体2の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/mとすることができる。ポリマーの目付量が50g/m未満では、吸水量を確保し難くなる。350g/mを超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸水性ポリマーの過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0031】
前記高吸水性ポリマー5の表面には、図3に示されるように、香料などの消臭機能を持つ物質をシクロデキストリンに包接させたシクロデキストリン複合体7が添加されている。すなわち、前記シクロデキストリン複合体7は、高吸水性ポリマー5の製造段階で、高吸水性ポリマー5の表面に添加され、その後の吸収体2の製造工程や吸収性物品1の組立工程では扱うことがない。
【0032】
前記香料などの消臭機能を持つ物質としては、天然香料及び合成香料のいずれを用いてもよく、これらを組み合わせて使用してもよい。前記消臭機能を持つ物質の具体例としては、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。前記消臭機能を持つ物質は、香料などとして市販品のものを広く使用することもできる。前記消臭機能を持つ物質は、揮発性の高い香料を使用するのが好ましい。
【0033】
また、前記消臭機能を持つ物質として、物質自体に消臭効果があるものや、排泄物の不快臭と調和して新たに不快を感じさせない香りを発生させるハーモナイズド効果を有するものを使用することができる。
【0034】
前記消臭機能を持つ物質は、シクロデキストリンに内包されたシクロデキストリン複合体7として、高吸水性ポリマー5の表面に添加されている。これにより、以下の効果が奏される。
【0035】
香料などの消臭機能を持つ物質がシクロデキストリンに包接されているため、体液との接触前には、香料などがその機能を発現することがなく、吸収性物品1の使用前に香料などの機能低下が生じにくい。吸収性物品1の使用により、シクロデキストリン複合体7が排泄された体液と接触し、香料などの物質が除放されることによってはじめて、香料などの消臭機能が発揮されるようになる。
【0036】
また、前記シクロデキストリン複合体7が高吸水性ポリマー5の表面に添加されているため、高吸水性ポリマー5が吸水することによりシクロデキストリン複合体7が体液と確実に接触でき、シクロデキストリン複合体7から除放された消臭機能を持つ物質による消臭効果が確実に得られるようになる。また、排泄量が少量の場合であっても、吸収体2を構成するパルプの液拡散効果によって、排泄液が高吸水性ポリマー5に吸水保持されやすい構造となっているため、消臭機能を持つ物質による消臭効果が確実に得られるようになる。
【0037】
前記シクロデキストリン複合体7が添加された高吸水性ポリマー5は、パルプとともに吸収体2中にほぼ均一に分散して配置されるとともに、吸収性物品1の製造工程や製品の搬送時、又は吸収性物品1の使用中に移動しにくいため、消臭機能が偏在することがなく、消臭機能が吸収性物品1の全体に亘ってほぼ均一化できる。
【0038】
更に、前記シクロデキストリン複合体7は、高吸水性ポリマー5の表面に添加され、この高吸水性ポリマー5の表面に固着されているため、吸収性物品1の製造工程や製品の搬送時、又は吸収性物品1の使用中において、シクロデキストリン複合体7の飛散やこぼれがほとんどなく、製造などの際の取り扱いが容易になる。
【0039】
排便に対しても、シクロデキストリン複合体7が高吸水性ポリマー5の表面に添加されることで水分と接触できる表面積が増えるため、便に含まれる少量の水分に対しても消臭効果を発揮することができる。
【0040】
吸収体2に対する高吸水性ポリマー5の配置は、消臭機能の発現形態に応じて以下の3つの実施形態のいずれかとすることができる。
【0041】
第1の実施形態では、フラッフ状パルプと、シクロデキストリン複合体7が表面に添加された高吸水性ポリマー5とがそれぞれ吸収体2の少なくとも平面方向に分散配置されている。本第1の実施形態は、複数回の排泄に対して排泄直後からほぼ同等に消臭機能が発揮できるようにしたものである。具体例としては、フラッフ状パルプ5.6gと、高吸水性ポリマー100質量部に対し0.3質量部のシクロデキストリン複合体7が表面に添加された高吸水性ポリマー10.5gとからなり、これらフラッフ状パルプ及び高吸水性ポリマー5が0.05mの略砂時計状の平面形状からなる吸収体2に分散配置されたものとすることができる。本第1の実施形態では、排泄前にはシクロデキストリンに包接されている香料など消臭機能を持つ物質の消臭効果が発揮されず、排泄により吸収体内で排泄物が拡散することで確実にシクロデキストリン複合体7に接触して消臭機能が発揮される。また、シクロデキストリン複合体7が高吸水性ポリマー5の表面に添加されているため、高吸水性ポリマー5が吸収体2の全体に分散配置されることにより、シクロデキストリン複合体7も吸収体2の全体に分散配置されている。そして、この高吸水性ポリマー5が吸収体2の全体に分散配置された状態は、吸収性物品の製造段階や製品の輸送段階の振動などによって変化しないため、シクロデキストリン複合体7の分散配置状態も変化することがない。なお、前記高吸水性ポリマー5は、吸収体2の少なくとも平面方向に分散配置されていればよく、吸収体2の厚み方向に対しては、分散配置されるようにしてもよいし、高吸水性ポリマー5が配合された層と配合されない層とを積層するなどして分散配置されないようにしてもよい。
【0042】
次いで第2の実施形態では、吸収体2の排尿口に対応する所定領域において、フラッフ状パルプと、シクロデキストリン複合体7が表面に添加された高吸水性ポリマー5とがそれぞれ少なくとも平面方向に分散配置されるとともに、吸収体2のそれ以外の領域において、フラッフ状パルプと、シクロデキストリン複合体7が表面に添加されない高吸水性ポリマー5とがそれぞれ少なくとも平面方向に分散配置されている。本第2の実施形態では、1回目の排泄時に確実に消臭機能が発揮されるようにし、時間が経って吸収された排泄物が前記所定領域の外側に拡散したときや、2回目以後の排泄により前記所定領域の外側に拡散したときには消臭機能が発揮されず、排泄があったことが判るようにしたものである。前記所定領域は、平面寸法として、吸収性物品の長手方向及び幅方向の寸法がそれぞれ30~70mm、好ましくは50mm程度とするのがよく、平面形状としては、四角形や円形、楕円形などとするのがよい。また、前記所定領域に配置されるシクロデキストリン複合体7が表面に添加された高吸水性ポリマー5の重量としては、吸収体2の全体に配置される高吸水性ポリマー5の重量の1~10%、好ましくは3~7%とするのがよい。具体例としては、吸収体2が全体として、フラッフ状パルプ5.6gと、高吸水性ポリマー10.5gとからなる0.05mの略砂時計状の平面形状で形成され、排尿口に対応する50mm四方の正方形からなる前記所定領域に、前記10.5gの高吸水性ポリマー5のうち、高吸水性ポリマー100質量部に対して0.3質量部のシクロデキストリン複合体7が表面に添加された高吸水性ポリマー0.5gが分散配置されるとともに、それ以外の領域に、残りのシクロデキストリン複合体7が表面に添加されない高吸水性ポリマー10gが分散配置されたものとすることができる。本第2の実施形態では、香料などの消臭機能をもつ物質がシクロデキストリンに包接されているため排泄前には消臭効果が発揮されず、1回目の排泄時には排泄物が50mm四方の所定領域に拡散して消臭効果が発揮される。また、シクロデキストリン複合体7が高吸水性ポリマー5の表面に添加されているため、吸収性物品の製造段階や製品の輸送段階の振動などによって吸収体2の前記所定領域に分散配置された状態が変化しないため、シクロデキストリン複合体7の分散配置状態も変化せず、1回目の排泄時に確実に対応することができるようになる。なお、前記高吸水性ポリマー5は、吸収体2の少なくとも平面方向に分散配置されていればよく、吸収体2の厚み方向に対しては、分散配置されるようにしてもよいし、高吸水性ポリマー5が配合された層と配合されないそうとを積層するなどして分散配置されないようにしてもよい。ただし、前記所定領域においては、この領域が排尿口に対応する領域であり、排尿時の圧力によって尿が厚み方向に拡散する割合が大きいため、シクロデキストリン複合体7が表面に添加された高吸水性ポリマー5が吸収体2の平面方向及び厚み方向の両方に分散配置されるようにするのが望ましい。
【0043】
第3の実施形態では、吸収体2の排尿口に対応する所定領域において、フラッフ状パルプと、シクロデキストリン複合体7が表面に添加されない高吸水性ポリマー5とがそれぞれ少なくとも平面方向に分散配置されるとともに、吸収体2のそれ以外の領域において、フラッフ状パルプと、シクロデキストリン複合体7が表面に添加された高吸水性ポリマー5とがそれぞれ少なくとも平面方向に分散配置されている。本第3の実施形態では、排泄直後には排泄があったことがわかるように消臭効果が発揮されず、一定時間経過後に消臭効果が発揮されるようにしたものである。前記所定領域は、上記第2の実施形態と同様に形成することができる。また、前記所定領域に配置されるシクロデキストリン複合体7が表面に添加されない高吸水性ポリマー5の重量としては、吸収体2の全体に配置される高吸水性ポリマー5の重量の1~10%、好ましくは3~7%とするのがよい。具体例としては、吸収体2が全体として、フラッフ状パルプ5.6gと、高吸水性ポリマー10.5gとからなる0.05mの略砂時計状の平面形状で形成され、排尿口に対応する50mm四方の正方形からなる前記所定領域に、前記10.5gの高吸水性ポリマー5のうち、シクロデキストリン複合体7が表面に添加されない高吸水性ポリマー0.5gが分散配置されるとともに、それ以外の領域に、残りの高吸水性ポリマー100質量部に対して0.3質量部のシクロデキストリン複合体7が表面に添加された高吸水性ポリマー10gが分散配置されたものとすることができる。本第3の実施形態では、香料などの消臭機能をもつ物質がシクロデキストリンに包接されているため排泄前には消臭効果が発揮されず、排泄直後には、排泄物がシクロデキストリン複合体7が表面に添加されない高吸水性ポリマー5のみに接触するため、消臭効果が発揮されない。そして、排泄から一定時間経過後、吸収された排泄物が前記所定領域の外側に拡散してシクロデキストリン複合体7が表面に添加された高吸水性ポリマー5に接触することで消臭効果が発揮される。また、シクロデキストリン複合体7が高吸水性ポリマー5の表面に添加されているため、吸収性物品の製造段階や製品の輸送段階の振動などによって吸収体2の前記所定領域に分散配置された状態が変化しないため、シクロデキストリン複合体7の分散配置状態も変化せず、1回目の排泄直後には消臭機能が発揮されず、一定時間経過後に確実に消臭機能が発揮できるようになる。
【0044】
前記シクロデキストリン複合体7は、100質量部の前記高吸水性ポリマー5に対して、0.01~1質量部、好ましくは0.1~1質量部添加するのがよい。0.01質量部より少ないと消臭効果が小さく、1質量部より多いと高吸水性ポリマー5の表面にシクロデキストリン複合体7が固着された状態を維持しにくく、高吸水性ポリマー5の表面から剥がれ落ちやすくなる。
【0045】
下記の官能評価試験に示されるように、100質量部の高吸水性ポリマーに対してシクロデキストリン複合体が0.01質量部未満、たとえば0.005質量部が表面に添加されている高吸水性ポリマーを備えた吸収性物品は、着用者が着用中排尿前の香りを感じにくく排尿があったと勘違いすることもないが、排尿後の消臭効果としては十分発揮されない。一方で100質量部の高吸水性ポリマーに対してシクロデキストリン複合体が1質量部を超えて、たとえば2質量部が表面に添加されている高吸水性ポリマーを備えた吸収性物品は、着用者が着用中排尿前にでも香りを感じてしまい排尿があったと勘違いしてしまう。シクロデキストリン複合体は空気中の湿度によって徐放しており、その徐放の量が一定以上になると着用者やその周囲の人間が官能的に消臭や香りを実感してしまう。使用後には十分消臭効果が発揮されかつ排尿前の消臭効果や香りが感じられない範囲が高吸水性ポリマー100質量部に対して0.01質量部から1質量部である。
【0046】
(官能評価試験)
試験方法:シクロデキストリン複合体をポリマー100質量部に対して所定量表面に添加した高吸水性ポリマーを備えた吸収性物品について、排尿前の香りを7段階で官能評価(1:香りが弱い→7:香りが強い)するとともに、使用後(排泄後)の消臭度合を7段階で官能評価(1:消臭が弱い→7:消臭が強い)する。
【0047】
試験結果:
(1)高吸水性ポリマー100質量部に対してシクロデキストリン複合体0.005質量部をポリマー表面に添加した高吸水性ポリマーを備えた吸収性物品では、
使用前香り評価:1
排泄後消臭評価:2
(2)高吸水性ポリマー100質量部に対してシクロデキストリン複合体0.3質量部をポリマー表面に添加した高吸水性ポリマーを備えた吸収性物品では、
使用前香り評価:2
排泄後消臭評価:6
(3)高吸水性ポリマー100質量部に対してシクロデキストリン複合体2質量部をポリマー表面に添加した高吸水性ポリマーを備えた吸収性物品では、
使用前香り評価:6
排泄後消臭評価:7
前記シクロデキストリン複合体7の他に、前記高吸水性ポリマー5の表面に、100質量部の高吸水性ポリマー5に対して、消臭機能を持つ物質を包接していない未包接のシクロデキストリンを0~0.1質量部添加してもよい。高吸水性ポリマー5の表面に未包接のシクロデキストリンを所定量添加することにより、排泄液との接触によって未包接のシクロデキストリンが排泄液の臭気成分を包接することによる消臭効果が得られるようになる。
【0048】
前記消臭機能を持つ物質は、その全てが前記シクロデキストリンに包接されたシクロデキストリン複合体7として高吸水性ポリマー5に添加され、シクロデキストリンに包接されない状態では実質的に含まれないようにするのが好ましい。前記消臭機能を持つ物質がシクロデキストリンに包接されない状態で実質的に含まれないとは、消臭機能を持つ物質を単体で高吸水性ポリマー5の表面に添加しないことであり、シクロデキストリン複合体7を高吸水性ポリマー5の表面に添加する際に、シクロデキストリン複合体7を溶媒に溶解することにより、一部のシクロデキストリン複合体から消臭機能を持つ物質が除放され、溶媒中に消臭機能を持つ物質が単体で存在しているものまで排除するものではない。
【0049】
次に、前記高吸水性ポリマー5の製造方法のうち、前記シクロデキストリン複合体7を高吸水性ポリマー5の表面に添加する方法について詳細に説明する。
【0050】
前記消臭機能を持つ物質をシクロデキストリンに包接させたシクロデキストリン複合体7を溶媒中に分散させた溶液を作成しておき、高吸水性ポリマー5の表面架橋時に、この溶液を高吸水性ポリマー5の表面に散布する。
【0051】
前記シクロデキストリン複合体7の分散溶液は、水を含むことが好ましい。つまり、前記シクロデキストリン複合体7を分散させる溶媒として水を用いたシクロデキストリン複合体水溶液であることが好ましい。
【0052】
シクロデキストリン複合体7は水分と接触すると消臭機能を持つ物質を除放するが、ある一定の範囲の水の量であれば、除放せずに平衡状態を保ったまま、シクロデキストリン複合体7として、溶媒中に分散するようになる。
【0053】
このとき、前記溶液中の前記シクロデキストリン複合体7の濃度は、溶媒100質量%に対して、1~15質量%、特に5~15質量%であるのが好ましい。これにより、シクロデキストリン複合体7から消臭機能を持つ物質が除放することなく、高吸水性ポリマー5の表面に添加することが可能となる。
【0054】
前記シクロデキストリン複合体7の水溶液を高吸水性ポリマー5に散布するには、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、スプレーノズルから前記水溶液を噴霧する方法、前記水溶液を少量ずつ滴下する方法などとすることができる。
【0055】
前記シクロデキストリン複合体7の水溶液には、表面架橋剤が添加されているのが好ましい。すなわち、溶媒(水)にシクロデキストリン複合体7及び表面架橋剤が溶解された水溶液を用いるのが好ましい。これにより、高吸水性ポリマー5の表面架橋とシクロデキストリン複合体7の添加が同時に行われ、シクロデキストリン複合体7が高吸水性ポリマー5の表面に強固に固着できるとともに、製造工程が簡略化でき、且つ表面架橋剤が添加された水溶液と、シクロデキストリン複合体が添加された水溶液とを別々に散布するよりも、高吸水性ポリマー5に散布する水分量が全体として少なくでき、後述の乾燥処理が容易となる。このときの前記シクロデキストリン複合体7の添加量は、表面架橋剤の水溶液に使用する水の量に応じて、上記の溶媒に対するシクロデキストリン複合体7の濃度の範囲内で添加するのが好ましい。
【0056】
なお、前記シクロデキストリン複合体7の水溶液と、表面架橋剤の水溶液とを別々に調製し、それぞれの水溶液を別工程で高吸水性ポリマー5の表面に散布することも可能である。この場合、表面架橋剤の水溶液を散布して乾燥処理を行った後、シクロデキストリン複合体7の水溶液を散布するのが好ましい。これにより、高吸水性ポリマー5の水分吸収による膨潤が抑えられた状態で、高吸水性ポリマー5の表面にシクロデキストリン複合体7を固着させることができるようになる。
【0057】
上述の水溶液散布工程の後、高吸水性ポリマー5を加熱して水分を乾燥させる。これにより、水溶液中の水分が取り除かれ、図3に示されるように、シクロデキストリン複合体7が微粉状態で高吸水性ポリマー5の表面に固着するようになる。乾燥手段としては、例えば熱風によるものなど、公知の方法を適宜用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…吸収性物品、2…吸収体、3…トップシート、4…防水シート、5…高吸水性ポリマー、6…被包シート、7…シクロデキストリン複合体、10…製造装置、11…パルプ原紙、12…解繊装置、13…粉砕パルプ供給ケーシング、14…積繊装置、16…パルプ原反、17…粉砕パルプ、18…ポリマー投入口
図1
図2
図3