IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-流体圧回転機 図1
  • 特許-流体圧回転機 図2
  • 特許-流体圧回転機 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】流体圧回転機
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/344 20060101AFI20230614BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
F04C2/344 331B
F04C15/00 G
F04C15/00 K
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018075026
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2019183735
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 康平
(72)【発明者】
【氏名】津田 久史
(72)【発明者】
【氏名】長坂 良一
(72)【発明者】
【氏名】シャワルヒュディン ビンモハマドドム
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-239871(JP,A)
【文献】特開2016-027248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0306668(US,A1)
【文献】特開2010-025121(JP,A)
【文献】特開平10-238478(JP,A)
【文献】国際公開第2014/064594(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/344
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるロータと、
前記ロータの径方向に往復動自在に前記ロータに設けられる複数のベーンと、
前記ロータの回転に伴って前記複数のベーンの先端部が摺接するカム面を内周に有するカムリングと、を備え、
前記ロータは、前記ベーンを摺動自在に支持し径方向外側において開口する複数のスリットと、前記スリットの径方向内側の端部に前記ロータの回転軸方向に貫通して設けられる背圧孔と、を有し、
前記背圧孔は、前記スリットの幅方向における前記背圧孔の長さが、前記スリットの幅よりも長く、且つ、前記ロータの径方向における前記背圧孔の長さよりも長い楕円状の断面形状を有し、
前記ロータの径方向における前記背圧孔の長さは、前記ロータの径方向において、前記背圧孔を形成する内面の中で最も径方向内側に位置する部分から前記背圧孔に前記スリットが接続される接続部までの長さであって、前記接続部に面取部が設けられている場合は、前記背圧孔と前記面取部とが接続する部分までの長さであり、
前記背圧孔は、前記ロータの径方向内側に向けて凸状に形成される円弧面を有し、
前記円弧面の曲率半径は、前記ロータの径方向における前記背圧孔の長さを直径とする円の半径よりも大きく、
前記ロータは、金型を用いて粉末冶金により形成された焼結体であることを特徴とする流体圧回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧回転機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体圧回転機として、例えば、特許文献1には、回転駆動されるロータと、ロータに設けられる複数のベーンと、ロータ及びベーンを収容するカムリングと、を備えたベーンポンプが記載されている。特許文献1に記載のベーンポンプのロータは、金型に金属粉末を入れて圧縮した後、焼結することによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-180121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなベーンポンプのロータを形成する金型には、ベーンが挿入されるスリットをロータに形成するための突起が径方向内側に向かって複数設けられる。突起の先端部は、スリットの一端が開口する背圧室に相当する空間をロータに形成することになるが、金型に金属粉末を入れて圧縮する際、この先端部には応力が集中することになる。したがって、圧縮時に先端部が変形するおそれがあることから、先端部の断面積を大きくすることにより金型の剛性を向上させる必要がある。
【0005】
しかしながら、先端部の断面積を大きくするとロータに形成される背圧室も大きくなる。例えば、ロータに形成される背圧室が径方向外側に向かって大きくなると、ベーンを支持するスリットの径方向長さが短くなるため、ベーンが傾斜するおそれがある。また、ロータに形成される背圧室が径方向内側に向かって大きくなると、駆動軸が挿通する挿通孔と背圧室との間隔が狭くなり、ロータの強度が低下するおそれがある。このように、金型に設けられる突起の先端部の断面積を単に大きくすることによってロータを形成する金型の剛性を向上させると、ロータの機能や強度を低下させるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ロータの機能や強度を低下させることなく、ロータを形成する金型の剛性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、流体圧回転機が、回転駆動されるロータと、ロータの径方向に往復動自在にロータに設けられる複数のベーンと、ロータの回転に伴って複数のベーンの先端部が摺接するカム面を内周に有するカムリングと、を備え、ロータは、ベーンを摺動自在に支持し径方向外側において開口する複数のスリットと、スリットの径方向内側の端部にロータの回転軸方向に貫通して設けられる背圧孔と、を有し、背圧孔は、スリットの幅方向における背圧孔の長さが、スリットの幅よりも長く、且つ、ロータの径方向における背圧孔の長さよりも長い楕円状の断面形状を有し、ロータの径方向における背圧孔の長さは、ロータの径方向において、背圧孔を形成する内面の中で最も径方向内側に位置する部分から背圧孔にスリットが接続される接続部までの長さであって、接続部に面取部が設けられている場合は、背圧孔と面取部とが接続する部分までの長さであり、背圧孔は、ロータの径方向内側に向けて凸状に形成される円弧面を有し、円弧面の曲率半径は、ロータの径方向における背圧孔の長さを直径とする円の半径よりも大きく、ロータは、金型を用いて粉末冶金により形成された焼結体であることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、スリットの幅方向における背圧孔の長さが、スリットの幅よりも長く、且つ、ロータの径方向における背圧孔の長さよりも長い断面形状を有する背圧孔がロータに形成される。このように背圧孔は、スリットの幅方向に長い断面形状を有する。このため、ロータの機能や強度を低下させることなく、ロータにスリットを成形するために金型に設けられる突起の先端部における断面積を大きくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロータを形成する金型の剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るベーンポンプの断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るロータ、ベーン及びカムリングの正面図であり、ロータ、ベーン及びカムリングを組み立てた状態を示す。
図3図1のIII-III線に沿うロータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1及び2を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧回転機について説明する。
【0017】
本実施形態では、流体圧回転機が、作動流体を吐出する固定容量型のベーンポンプ100である場合について説明する。ベーンポンプ100は、車両や産業機械に搭載される流体圧機器、例えば、パワーステアリング装置や無段変速機等の流体圧供給源として用いられる。ここでは、作動流体として作動油が用いられる場合について説明するが、作動水等の他の流体を作動流体として用いてもよい。また、ベーンポンプ100は、可変容量型のベーンポンプであってもよい。
【0018】
ベーンポンプ100は、駆動シャフト1の端部にエンジン(図示省略)の動力が伝達され、駆動シャフト1に連結されたロータ2が回転するものである。駆動シャフト1は、ハウジング5によって回転軸Oを中心に回転自在に支持されており、ロータ2は、図2において時計回りに回転する。ベーンポンプ100の動力源は、エンジンに限定されず、電動モータであってもよい。
【0019】
図1及び図2に示すように、ベーンポンプ100は、ロータ2に対して径方向に往復動自在に設けられた複数のベーン3と、ロータ2の回転に伴ってベーン3の先端部3aが摺接するカム面4aを内周に有しロータ2を収容するカムリング4と、ロータ2及びカムリング4を収容するハウジング5と、を備える。これらロータ2、カムリング4、及び一対の隣り合うベーン3によって、複数のポンプ室6が区画される。
【0020】
ロータ2は、中央にスプライン孔2cが形成された環状部材であり、駆動シャフト1の先端部にスプライン結合によって連結される。ロータ2には、外周面に開口する複数のスリット2aが放射状に形成され、各スリット2aにはベーン3が摺動自在に挿入される。スリット2aの径方向内側の端部には、回転軸O方向に貫通して設けられる複数の背圧孔2dが設けられる。スリット2aの底部には、スリット2aと背圧孔2dとベーン3とによって背圧室2bが形成される。上記形状を有するロータ2の製造方法については後述する。
【0021】
カムリング4は、短径と長径を有する略楕円形状のカム面4aが内周面に形成された環状部材である。カムリング4は、ロータ2の回転に伴ってポンプ室6の容積を拡張する2つの吸込領域と、ロータ2の回転に伴ってポンプ室6の容積を収縮する2つの吐出領域と、を有する。つまり、ロータ2が1回転する間に、ベーン3は2往復しポンプ室6は収縮と拡張を2回繰り返す。吸込領域と吐出領域は、カム面4aの形状によって規定される。
【0022】
ロータ2及びカムリング4の一側面には、円板状の第1サイドプレート10が当接して配置される。
【0023】
ロータ2、カムリング4、及び第1サイドプレート10は、ハウジング5に凹状に形成されたポンプ収容部5aに収容される。ポンプ収容部5aは、ロータ2及びカムリング4の他側面に当接して配置されるポンプカバー7によって封止される。つまり、第1サイドプレート10とポンプカバー7とは、ロータ2及びカムリング4の両側面を挟み込むように配置される。このため、ポンプ室6は第1サイドプレート10及びポンプカバー7によって密閉される。
【0024】
ポンプ収容部5aの底面5bには、ポンプ室6から吐出される作動油が導かれる高圧室8が環状に形成される。高圧室8は、底面5bに配置される第1サイドプレート10によって区画される。高圧室8は、ハウジング5の外面に開口して形成される吐出通路(図示省略)に連通する。
【0025】
ロータ2が摺接するポンプカバー7の端面7aには、カムリング4の2つの吸込領域に対応して開口し、ポンプ室6に作動油を導く円弧状の2つの吸込ポート(図示省略)が形成される。また、ポンプカバー7には、吸込ポートを通じてタンクの作動油をポンプ室6へと導く吸込通路(図示省略)が形成される。
【0026】
ポンプカバー7の端面7aに対向する第1サイドプレート10の端面10aには、カムリング4の2つの吸込領域に対応して開口し、ポンプ室6に作動油を導く円弧状の2つの吸込ポート(図示省略)が形成される。この吸込ポートは、ポンプ収容部5aの内周面に形成された通路(図示省略)を通じてポンプカバー7の吸込ポートと連通している。したがって、作動油は、ポンプカバー7の吸込ポート及び第1サイドプレート10の吸込ポートを通じて吸込通路からポンプ室6へと導かれる。
【0027】
第1サイドプレート10には、円弧状に貫通して形成される吐出ポート12がさらに設けられる。吐出ポート12は、カムリング4の吐出領域に対応して形成され、ポンプ室6の作動油を高圧室8へ吐出する。
【0028】
また、第1サイドプレート10には、高圧室8からロータ2の背圧室2bへ作動油を導く2つの背圧通路15が貫通して形成される。また、第1サイドプレート10の端面10aには、背圧室2bを互いに連通する図示しない円弧溝が形成される。
【0029】
上記構成のベーンポンプ100では、エンジンの駆動により駆動シャフト1が回転すると、駆動シャフト1に連結されたロータ2が回転する。カムリング4内の各ポンプ室6は、ロータ2の回転に伴って、ポンプカバー7の吸込ポート及び第1サイドプレート10の吸込ポートを通じて作動油を吸込み、第1サイドプレート10の吐出ポート12を通じて高圧室8へと作動油を吐出する。高圧室8に吐出された作動油は、吐出通路を通じて図示しない流体圧機器へと供給される。このように、カムリング4内の各ポンプ室6は、ロータ2の回転に伴う拡縮によって作動油を給排する。
【0030】
次に、図3を参照して、ロータ2の製造方法について説明する。図3は、図1のIII-III線に沿う断面図であり、説明のためロータ2以外の部材を省略して示している。
【0031】
ロータ2は、図示しない金型に金属粉末を注入して圧縮により成形した後、焼結する、いわゆる粉末冶金によって形成される。ロータ2は、上述のように、径方向に延びるスリット2a及びスリット2aが接続される背圧孔2dを有している。このため、ロータ2を形成する金型には、ロータ2にスリット2aを成形するための平板状の突起が径方向内側に向かって複数設けられる。また、これら突起の先端には、背圧孔2dを成形するための膨出部が設けられる。
【0032】
粉末冶金によってスリット2a及び背圧孔2dが形成されたロータ2には、仕上げ加工として、スリット2aに研削加工が施されるとともに、スリット2aと背圧孔2dとの接続部に面取り加工が施され面取部2fが形成される。
【0033】
ここで、一般的に突起を有する金型に金属粉末等の材料を注入して圧力をかけると、突起の先端には応力が集中することになる。このため、上記形状のロータ2を形成するにあたっては、圧縮時に突起の先端が変形してしまうことを抑制するため、回転軸Oに直交する断面における突起の先端の断面積、すなわち背圧孔2dを形成する部分の断面積を大きくし、金型の剛性を向上させる必要がある。
【0034】
本実施形態では、金型に設けられる突起の先端によって成形される背圧孔2dの断面形状を所定の方向に長い楕円形状とすることによって、突起の先端の断面積を確保することで、ロータ2を形成する金型の剛性を向上させている。
【0035】
具体的には、背圧孔2dは、ロータ2の径方向に対して直交するとともに回転軸O方向に対して直交する方向であるスリット2aの幅方向における背圧孔2dの長さである第1長さL1が、スリット2aの幅W1よりも長く、また、この第1長さL1がロータ2の径方向における背圧孔2dの長さである第2長さL2よりも長い楕円状の断面形状を有するように設計されている。
【0036】
第1長さL1は、ロータ2の径方向に直交し回転軸O方向に直交する方向において、背圧孔2dを形成する内面の中で最も離れた部分間の距離である。第2長さL2は、ロータ2の径方向において、背圧孔2dを形成する内面の中で最も径方向内側に位置する部分から最も径方向外側に位置する部分までの距離であり、本実施形態では、図3に示すように、ロータ2の径方向内側に向けて凸状に形成される円弧面2eの先端から背圧孔2dと面取部2fとの接続部までの距離である。なお、面取部2fが設けられていない場合、第2長さL2は、円弧面2eの先端から背圧孔2dに直線状のスリット2aが接続される接続部までの距離となる。
【0037】
また、背圧孔2dの円弧面2eの曲率は、ロータ2の径方向における背圧孔2dの長さである第2長さL2を直径とする図3において点線で図示される円C1の曲率よりも小さく設定される。つまり、円弧面2eにおける半径(曲率半径)Rは、第2長さL2の半分の長さである円C1の半径よりも大きい。なお、円弧面2eは、背圧孔2dを形成する内面の中で最もロータ2の径方向内側に位置する曲面であって、ロータ2の径方向においてスリット2aと対向する部分に設けられる曲面である。
【0038】
このように、背圧孔2dは、スリット2aの幅方向に長い断面形状を有するため、スリット2aを成形するために金型に設けられた突起の先端の断面積を大きくすることが可能となる。この結果、金型の剛性が向上し、圧縮時に突起の先端が変形してしまうことを抑制することができる。
【0039】
また、背圧孔2dは、スリット2aの幅方向に長い断面形状を有するため、金型の突起の先端の断面積を大きくしてもベーン3を支持するスリット2aの径方向長さが短くなることはない。このように、スリット2aの径方向長さを十分に確保することが可能となることで、スリット2aによってベーン3を傾斜させることなく安定して支持することができる。
【0040】
また、背圧孔2dは、スリット2aの幅方向に長い断面形状を有するため、金型の突起の先端の断面積を大きくしても駆動シャフト1が挿通するスプライン孔2cと背圧室2bとの間隔が狭まることはない。このように、スプライン孔2cと背圧室2bとの間隔を十分に確保することが可能となるため、ロータ2の強度を確保することができる。
【0041】
また、背圧孔2dは、比較的半径が大きく曲率が小さい円弧面2eをロータ2の径方向内側に有している。このため、応力が集中する金型の突起の先端の半径を大きくして突起の先端の曲率を小さくすることが可能となる。この結果、金型に金属粉末を注入して圧縮する際に突起の先端に応力が集中することが抑制され金型が変形してしまうことを防止することができる。
【0042】
以上の実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0043】
ベーンポンプ100は、スリット2aの幅方向における背圧孔2dの第1長さL1が、スリット2aの幅Wよりも長く、且つ、ロータ2の径方向における背圧孔2dの第2長さL2よりも長い断面形状を有する背圧孔2dが形成されたロータ2を備える。このように、背圧孔2dは、スリット2aの幅方向に長い断面形状を有するため、金型の突起の先端の断面積を大きくすることが可能となる。この結果、金型の剛性が向上し、圧縮時に突起の先端が変形してしまうことを抑制することができる。
【0044】
また、ロータ2に形成される背圧孔2dは、スリット2aの幅方向に長い断面形状を有するため、金型の突起の先端の断面積を大きくしてもベーン3を支持するスリット2aの径方向長さが短くなることはない。このように、スリット2aの径方向長さを十分に確保することが可能となることで、スリット2aによってベーン3を傾斜させることなく安定して支持することができる。
【0045】
さらに、ロータ2に形成される背圧孔2dは、スリット2aの幅方向に長い断面形状を有するため、金型の突起の先端の断面積を大きくしても駆動シャフト1が挿通するスプライン孔2cと背圧室2bとの間隔が狭まることはない。このように、スプライン孔2cと背圧室2bとの間隔を十分に確保することが可能となるため、ロータ2の強度を確保することができる。この結果、ロータ2の機能や強度を低下させることなく、ロータ2を形成する金型の剛性を向上させることができる。
【0046】
以下に、本発明の実施形態の変形例について説明する。
【0047】
上記実施形態では、流体圧回転機が、作動油を吐出するベーンポンプ100である場合について説明したが、流体圧回転機としては、作動油により駆動されるベーンモータであってもよい。この場合、外部から供給される作動油の圧力によりロータ2が回転して駆動シャフト1が回転することで、回転駆動力が出力される。
【0048】
また、上記実施形態では、ロータ2は、金型に金属粉末を注入して圧縮した後、焼結されることによって形成される。これに代えて、ロータ2は、金型に溶融金属を注入する鋳造により形成されてもよい。
【0049】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0050】
ベーンポンプ100は、回転駆動されるロータ2と、ロータ2の径方向に往復動自在にロータ2に設けられる複数のベーン3と、ロータ2の回転に伴って複数のベーン3の先端部3aが摺接するカム面4aを内周に有するカムリング4と、を備え、ロータ2は、ベーン3を摺動自在に支持し径方向外側において開口する複数のスリット2aと、スリット2aの径方向内側の端部にロータ2の回転軸O方向に貫通して設けられる背圧孔2dと、を有し、背圧孔2dは、スリット2aの幅方向における背圧孔2dの第1長さL1が、スリット2aの幅Wよりも長く、且つ、ロータ2の径方向における背圧孔2dの第2長さL2よりも長い断面形状を有する。
【0051】
この構成では、スリット2aの幅方向における背圧孔2dの第1長さL1が、スリット2aの幅Wよりも長く、且つ、ロータ2の径方向における背圧孔2dの第2長さL2よりも長い断面形状を有する背圧孔2dがロータ2に形成される。このように、背圧孔2dは、スリット2aの幅方向に長い断面形状を有するため、スリット2aを成形するために金型に設けられる突起の先端の断面積を大きくすることが可能となる。この結果、ロータ2の機能や強度を低下させることなく、ロータ2を形成する金型の剛性を向上させることができる。
【0052】
また、背圧孔2dは、ロータ2の径方向内側に向けて凸状に形成される円弧面2eを有し、円弧面2eの半径Rは、ロータ2の径方向における背圧孔2dの長さを直径とする円の半径よりも大きい。
【0053】
この構成では、背圧孔2dが、比較的半径が大きい円弧面2eをロータ2の径方向内側に有している。このため、応力が集中する金型の突起の先端の半径を大きくすることが可能となり、結果として、金型に材料が注入された際に突起の先端に応力が集中することが抑制され金型が変形してしまうことを防止することができる。
【0054】
また、ロータ2は、金型を用いて粉末冶金により形成される。
【0055】
この構成では、ロータ2は、金型に金属粉末を注入して圧縮により成形された後、焼結する、いわゆる粉末冶金によって形成される。このようにロータ2は、比較的精度の高い部品を大量生産可能な粉末冶金によって形成されるため、ベーンポンプ100の製造コストを低減することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0057】
100・・・ベーンポンプ(流体圧回転機)、1・・・駆動シャフト、2・・・ロータ、2a・・・スリット、2d・・・背圧孔、2e・・・円弧面、3・・・ベーン、3a・・・先端部、4・・・カムリング、4a・・・カム面
図1
図2
図3