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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】配管装置及び配管工法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
F16L1/00 S
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019057690
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159408
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英司
(72)【発明者】
【氏名】深井 守
(72)【発明者】
【氏名】北山 智一
(72)【発明者】
【氏名】税所 秋利
(72)【発明者】
【氏名】能仁 廣明
(72)【発明者】
【氏名】森田 祥央
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】藤中 牧也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 憲一郎
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-057723(JP,A)
【文献】特開2004-180405(JP,A)
【文献】特開平11-304050(JP,A)
【文献】特開2001-141110(JP,A)
【文献】特開2010-164073(JP,A)
【文献】特開2018-159427(JP,A)
【文献】特開平10-262312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に接合部を有したパイプの他端が他のパイプの前記接合部に差し込まれることにより、前記パイプが複数連結されてなる管体を、トンネル内に配管するための配管装置であって、
前記トンネル内においてトンネル軸方向に沿って延設され、前記トンネルの内面の頂部及び底部にそれぞれ当接して配置される一対のレールと、
前記管体の前記パイプ毎に設けられ、当該パイプを支持すると共に、前記一対のレールに沿って前記トンネル内を走行可能な複数の管支持台車と、
前記トンネル軸方向に互いに隣り合う前記管支持台車同士を連結する台車連結部と、を備え、
前記管支持台車は、
台車本体と、
前記台車本体に取り付けられ、前記管体の複数本が、前記トンネル軸方向に延び、且つ前記トンネル軸方向と直交するトンネル上下方向及びトンネル幅方向に所定の間隔を隔てて多列多段に配置されるように、当該複数の管体の各々の前記パイプを支持する管支持部と、を含み、
前記管支持部は、前記管支持台車が前記トンネル内における曲線部を通過するときに、前記トンネル軸方向への前記パイプのスライド移動が可能となるように当該パイプを支持し、
前記台車本体は、前記管支持部を収容する収容空間を有する枠状に形成され、前記トンネル上下方向に延びる一対の第1側枠部及び第2側枠部と、前記トンネル幅方向に延びて前記第1側枠部及び前記第2側枠部の上端を繋ぐ上枠部と、前記トンネル幅方向に延びて前記第1側枠部及び前記第2側枠部の下端を繋ぐ下枠部と、を有し、
前記台車連結部は、前記トンネル軸方向に互いに隣り合う前記管支持台車において、前記第1側枠部同士を連結する第1側枠連結部材と、前記第2側枠部同士を連結する第2側枠連結部材と、を含み、
前記第1側枠連結部材は、前記第1側枠部同士の前記トンネル軸方向に沿った間隔を調整可能な第1長さ調整部を有し、
前記第2側枠連結部材は、前記第2側枠部同士の前記トンネル軸方向に沿った間隔を調整可能な第2長さ調整部を有し、
前記管支持台車が前記トンネル内における曲線部を通過するときの、前記管支持部に支持された複数の前記パイプのうちで最も内側に配置されたパイプが描く円弧の弧長と最も外側に配置されたパイプが描く円弧の弧長との差異をパイプの内外弧長差とし、前記第1側枠連結部材が描く円弧の弧長と前記第2側枠連結部材が描く円弧の弧長との差異を側枠連結部材の内外弧長差とした場合、
前記パイプの長さは、前記パイプの内外弧長差よりも長い値に設定され、
前記第1長さ調整部による前記第1側枠部同士の間隔と、前記第2長さ調整部による前記第2側枠部同士の間隔とは、前記パイプの長さと前記側枠連結部材の内外弧長差とに応じて設定される、配管装置。
【請求項2】
前記一対のレールは、前記トンネルの内面の周方向に沿って湾曲可能な帯状の板体に固設された第1レール部と、前記第1レール部に接続された第2レール部と、を含み、
前記板体は、前記トンネルの内面の周方向の長さよりも短い長さに形成されて、その長手方向の両端部間が間隔調整部材によって連結され、前記両端部間の間隔が前記間隔調整部材によって調整されることにより、前記トンネルの内面に密着される、請求項1に記載の配管装置。
【請求項3】
記台車連結部は、前記トンネル軸方向に互いに隣り合う前記管支持台車において、前記上枠部同士を連結する上枠連結部材と、前記下枠部同士を連結する下枠連結部材と、を含み、
前記上枠連結部材は、前記トンネル上下方向に延びる軸回りに回動可能に前記上枠部に接続され、
前記下枠連結部材は、前記トンネル上下方向に延びる軸回りに回動可能に前記下枠部に接続されている、請求項1又は2に記載の配管装置。
【請求項4】
前記管支持台車は、当該管支持台車の走行時に前記一対のレールに当接しつつ回転する車輪を含み、
前記車輪は、前記上枠部及び前記下枠部の各々に取り付けられ、前記トンネル軸方向に所定の間隔を隔てて配置される第1車輪及び第2車輪を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の配管装置。
【請求項5】
前記複数の管支持台車のうちの走行方向の最先頭に配置される管支持台車に連結され、当該複数の管支持台車を先導する先導台車を、更に備えている、請求項1~のいずれか1項に記載の配管装置。
【請求項6】
前記管体の前記パイプを支持した状態の前記管支持台車の走行によって、前記トンネル内に前記管体が配管された後、前記トンネルと前記管体との隙間に充填するコンクリートが流れる充填管を、更に備え、
前記充填管は、一端に接合部を有した充填パイプの他端が他の充填パイプの前記接合部に差し込まれることにより、前記充填パイプが複数連結されてなり、
前記管支持台車は、前記台車本体に取り付けられ、前記管支持台車が前記トンネル内における曲線部を通過するときに、前記トンネル軸方向への前記充填管のスライド移動が可能となるように当該充填管を支持する充填管支持部を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の配管装置。
【請求項7】
一端に接合部を有したパイプの他端が他のパイプの前記接合部に差し込まれることにより、前記パイプが複数連結されてなる管体を、トンネル内に配管するための配管工法であって、
前記トンネルの内面の頂部及び底部にそれぞれ当接して配置されるように一対のレールを、前記トンネル内においてトンネル軸方向に沿って敷設するレール敷設ステップと、
前記パイプの複数本が、前記トンネル軸方向に延び、且つ前記トンネル軸方向と直交するトンネル上下方向及びトンネル幅方向に所定の間隔を隔てて多列多段に並ぶように、当該複数本のパイプを、複数の管支持台車の台車本体に取り付けられた管支持部に配置するパイプ配置ステップと、
前記複数の管支持台車における前記管支持部の各々に支持された前記パイプ同士を連結すると共に、前記管支持台車同士を台車連結部によって連結する連結作業を順次実施する連結ステップと、
前記連結作業の実施毎に、前記複数の管支持台車を、前記一対のレールに沿って前記トンネル内を順次走行させることにより、前記パイプが複数連結されてなる前記管体を前記トンネル内に配管するトンネル内への引入れステップと、を含み、
前記管支持台車における前記管支持部は、当該管支持台車が前記トンネル内における曲線部を通過するときに、前記トンネル軸方向への前記パイプのスライド移動が可能となるように当該パイプを支持しており、
前記台車本体は、前記管支持部を収容する収容空間を有する枠状に形成され、前記トンネル上下方向に延びる一対の第1側枠部及び第2側枠部と、前記トンネル幅方向に延びて前記第1側枠部及び前記第2側枠部の上端を繋ぐ上枠部と、前記トンネル幅方向に延びて前記第1側枠部及び前記第2側枠部の下端を繋ぐ下枠部と、を有し、
前記台車連結部は、前記トンネル軸方向に互いに隣り合う前記管支持台車において、前記第1側枠部同士を連結する第1側枠連結部材と、前記第2側枠部同士を連結する第2側枠連結部材と、を含み、
前記第1側枠連結部材は、前記第1側枠部同士の前記トンネル軸方向に沿った間隔を調整可能な第1長さ調整部を有し、
前記第2側枠連結部材は、前記第2側枠部同士の前記トンネル軸方向に沿った間隔を調整可能な第2長さ調整部を有し、
前記管支持台車が前記トンネル内における曲線部を通過するときの、前記管支持部に支持された複数の前記パイプのうちで最も内側に配置されたパイプが描く円弧の弧長と最も外側に配置されたパイプが描く円弧の弧長との差異をパイプの内外弧長差とし、前記第1側枠連結部材が描く円弧の弧長と前記第2側枠連結部材が円弧の弧長との差異を側枠連結部材の内外弧長差とした場合、
前記パイプの長さは、前記パイプの内外弧長差よりも長い値に設定され、
前記第1長さ調整部による前記第1側枠部同士の間隔と、前記第2長さ調整部による前記第2側枠部同士の間隔とは、前記パイプの長さと前記側枠連結部材の内外弧長差とに応じて設定される、配管工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル等を保護する管体をトンネル内に配管するための配管装置及び配管工法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブル等を保護するための、複数のパイプが連結されてなる管体を、地中等に埋設したトンネル内に配管するための技術として、トンネル内を走行可能な台車を用いる技術が知られている。この種の技術が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される技術では、管体のパイプ毎に設けた管支持台車上に当該パイプの複数本が多列多段に配置されるように固定し、その管支持台車をトンネル内に敷設されたレールに沿って走行させることにより、複数本の管体をトンネル内に配管する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3532804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接合部に差し込まれるようにしてパイプが連結された管体において、各管支持台車に固定されたパイプ同士の位置関係は、管支持台車のトンネル内での通過箇所に応じて変化する。すなわち、管支持台車がトンネル内における直線部を通過するときには、パイプ同士が直線上に配置された位置関係となる。一方、管支持台車がトンネル内における曲線部を通過するときには、パイプ同士が接合部を屈折点とする折れ線上に配置された位置関係となる。
【0005】
管支持台車がトンネル内における曲線部を通過する場合を想定する。この場合、管支持台車に固定された複数本のパイプにおいて、トンネル幅方向の中心に対して内側に配置された内側パイプが描く円弧の弧長と、外側に配置された外側パイプが描く円弧の弧長との間に差異が生じる。外側パイプの弧長が内側パイプの弧長よりも長くなる。管体の各パイプが管支持台車に固定された構成においては、内側パイプと外側パイプとの内外弧長の差異を吸収するために、外側パイプが連結された管体はパイプ同士の接合部を屈折点として開く方向に折れ、内側パイプが連結された管体は縮む方向に折れる。すなわち、外側パイプ同士の接合部における開きによって、内側パイプと外側パイプとの内外弧長の差異を吸収する。
【0006】
管支持台車が通過するトンネルの曲線部の長さ及び曲率半径に応じて、パイプ同士の接合部における開き量が大きくなり過ぎると、パイプ同士の連結状態が解除されてしまい段差が生じる虞がある。特許文献1に開示される技術では、パイプ同士の連結状態を維持するために、ジャバラ管や可撓管を介してパイプ同士を連結する構成が採用されている。しかしながら、この構成では、パイプ同士の開きに起因して、ジャバラ管や可撓管によるパイプ同士の連結部分に段差が生じる。トンネル内に配管された管体において、パイプ同士の連結部分に段差が生じていると、当該管体内への電力ケーブル等の挿入時に、ケーブル挿入治具等が前記段差に引っ掛かって管体の内面を傷付けてしまう虞がある。管体の内面に生じた傷は、電力ケーブル等の損傷の原因となり得る。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、管体のパイプを支持する台車がトンネル内における曲線部を通過するときの、パイプ同士の接合部における開き量を可及的に小さくすることができる配管装置及び配管工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、台車がトンネルの曲線部を通過するときの、内側パイプと外側パイプとの内外弧長の差異の吸収に関するメカニズムを解明し、トンネル内を走行する台車にはパイプを固定すべきとする先入観を取り払うことにより、パイプ同士の接合部における開き量を可及的に小さくすることができることを見出して、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0009】
本発明の一の局面に係る配管装置は、一端に接合部を有したパイプの他端が他のパイプの前記接合部に差し込まれることにより、前記パイプが複数連結されてなる管体を、トンネル内に配管するための装置である。この配管装置は、前記トンネル内においてトンネル軸方向に沿って延設され、前記トンネルの内面の頂部及び底部にそれぞれ当接して配置される一対のレールと、前記管体の前記パイプ毎に設けられ、当該パイプを支持すると共に、前記一対のレールに沿って前記トンネル内を走行可能な複数の管支持台車と、前記トンネル軸方向に互いに隣り合う前記管支持台車同士を連結する台車連結部と、を備える。前記管支持台車は、台車本体と、前記台車本体に取り付けられ、前記管体の複数本が、前記トンネル軸方向に延び、且つ前記トンネル軸方向と直交するトンネル上下方向及びトンネル幅方向に所定の間隔を隔てて多列多段に配置されるように、当該複数の管体の各々の前記パイプを支持する管支持部と、を含む。前記管支持部は、前記管支持台車が前記トンネル内における曲線部を通過するときに、前記トンネル軸方向への前記パイプのスライド移動が可能となるように当該パイプを支持する。前記台車本体は、前記管支持部を収容する収容空間を有する枠状に形成され、前記トンネル上下方向に延びる一対の第1側枠部及び第2側枠部と、前記トンネル幅方向に延びて前記第1側枠部及び前記第2側枠部の上端を繋ぐ上枠部と、前記トンネル幅方向に延びて前記第1側枠部及び前記第2側枠部の下端を繋ぐ下枠部と、を有する。前記台車連結部は、前記トンネル軸方向に互いに隣り合う前記管支持台車において、前記第1側枠部同士を連結する第1側枠連結部材と、前記第2側枠部同士を連結する第2側枠連結部材と、を含む。前記第1側枠連結部材は、前記第1側枠部同士の前記トンネル軸方向に沿った間隔を調整可能な第1長さ調整部を有する。前記第2側枠連結部材は、前記第2側枠部同士の前記トンネル軸方向に沿った間隔を調整可能な第2長さ調整部を有する。前記管支持台車が前記トンネル内における曲線部を通過するときの、前記管支持部に支持された複数の前記パイプのうちで最も内側に配置されたパイプが描く円弧の弧長と最も外側に配置されたパイプが描く円弧の弧長との差異をパイプの内外弧長差とし、前記第1側枠連結部材が描く円弧の弧長と前記第2側枠連結部材が描く円弧の弧長との差異を側枠連結部材の内外弧長差とした場合、前記パイプの長さは、前記パイプの内外弧長差よりも長い値に設定され、前記第1長さ調整部による前記第1側枠部同士の間隔と、前記第2長さ調整部による前記第2側枠部同士の間隔とは、前記パイプの長さと前記側枠連結部材の内外弧長差とに応じて設定される。
【0010】
この配管装置によれば、管支持台車において管支持部は、複数本の管体が多列多段に配置されるように、各管体のパイプを支持する。管支持部でパイプを支持した管支持台車は、台車連結部によって連結され、トンネル内に敷設された一対のレールに沿って走行する。これにより、複数本の管体をトンネル内に配管することができる。
【0011】
管支持台車がトンネル内における曲線部を通過する場合を想定する。この場合、管支持台車の管支持部に支持された複数本のパイプにおいて、トンネル幅方向の中心に対して内側に配置された内側パイプが描く円弧の弧長と、外側に配置された外側パイプが描く円弧の弧長との間に差異が生じる。管支持台車の管支持部は、パイプを固定的に支持するのではなく、パイプのスライド移動が可能となるように当該パイプを支持している。このため、管支持台車がトンネルの曲線部を通過するときには、内側パイプと外側パイプとの内外弧長の差異を吸収するために、管支持部上をパイプがスライド移動する。すなわち、管支持部上でのパイプのスライド移動によって、内側パイプと外側パイプとの内外弧長の差異を吸収することができる。これにより、内側パイプと外側パイプとの内外弧長の差異に応じた、パイプ同士の接合部における開き量を、可及的に小さくすることができる。このため、従来技術のようにジャバラ管や可撓管を介してパイプ同士を連結する構成を採用しなくても、接合部でのパイプ同士の連結状態を好適に維持することができる。従って、トンネル内に配管された管体においてパイプ同士の連結部分に段差が生じることを抑止し、当該管体内への電力ケーブル等の挿入時での、ケーブル挿入治具等による管体の損傷の発生を防止することができる。
また、各管支持台車は、台車本体の第1側枠部及び第2側枠部の各々において連結部材によって連結される。第1側枠部同士の間隔、並びに第2側枠部同士の間隔は、第1側枠連結部材及び第2側枠連結部材の各々の長さ調整部によって調整可能である。ここで、管支持台車がトンネル内における曲線部を通過するときには、パイプの場合と同様に、第1側枠連結部材が描く円弧の弧長と、第2側枠連結部材が描く円弧の弧長との間に差異が生じる。パイプの長さは、パイプの内外弧長差よりも長い値に設定される。第1長さ調整部による第1側枠部同士の間隔と、第2長さ調整部による第2側枠部同士の間隔とは、パイプの長さと、第1側枠連結部材と第2側枠連結部材との内外弧長差とに応じて設定される。これにより、第1側枠部及び第2側枠部の各々において連結部材によって連結された各管支持台車がトンネルの曲線部を通過するときに、当該管支持台車が傾くことを防止することができる。このため、トンネルの曲線部を通過するときの管支持台車の姿勢が、直線部の通過時と同様の姿勢に維持されるので、管支持台車の管支持部上においてパイプがスムーズにスライド移動する。
【0012】
上記の配管装置において、前記一対のレールは、前記トンネルの内面の周方向に沿って湾曲可能な帯状の板体に固設された第1レール部と、前記第1レール部に接続された第2レール部と、を含む構成であってもよい。そして、前記板体は、前記トンネルの内面の周方向の長さよりも短い長さに形成されて、その長手方向の両端部間が間隔調整部材によって連結され、前記両端部間の間隔が前記間隔調整部材によって調整されることにより、前記トンネルの内面に密着される。
【0013】
この態様では、トンネルの内面の周方向に沿って湾曲可能な板体に固設された第1レール部に第2レール部を接続することにより、一対のレールをトンネル内に敷設することができる。トンネル内への一対のレールの敷設時においては、板体の両端部間の間隔を間隔調整部材によって調整することにより、当該板体をトンネルの内面に密着させて固定する。板体のトンネル内面への固定作業は、所定長ずつ掘削したトンネルの内面に対して順次実施することができる。板体がトンネルの内面に密着して固定されると、その板体に固設された第1レール部がトンネル内面に当接し、その第1レール部に接続される第2レール部もトンネル内面に当接することになる。すなわち、板体の両端部間の間隔を間隔調整部材によって調整することにより、トンネルの内面の頂部及び底部に当接するように一対のレールを敷設することができる。このため、一対のレールをトンネル内に敷設する際に、レールの固定のためにアンカーボルト等を打設する必要がなく、トンネル内でのレールの敷設作業の負荷を軽減することができる。また、トンネル掘進中に第1レール部を敷設することで、掘進後のトンネル内への第1レール部の設置作業が不要になり、全体の工期短縮につながる。
【0014】
また、一対のレールは、トンネルの内面の頂部及び底部に当接して配置されるので、管支持台車の走行時の振動や撓みの発生が抑制される。これにより、一対のレールに沿った管支持台車の走行性を、良好な状態に維持することができる。
【0015】
上記の配管装置において、前記台車連結部は、前記トンネル軸方向に互いに隣り合う前記管支持台車において、前記上枠部同士を連結する上枠連結部材と、前記下枠部同士を連結する下枠連結部材と、を含む。前記上枠連結部材は、前記トンネル上下方向に延びる軸回りに回動可能に前記上枠部に接続されている。前記下枠連結部材は、前記トンネル上下方向に延びる軸回りに回動可能に前記下枠部に接続されている。
【0016】
この態様では、各管支持台車は、台車本体の上枠部及び下枠部の各々において連結部材によって連結される。ここで、上枠連結部材及び下枠連結部材は、トンネル上下方向に延びる軸回りの回動が可能となるように台車本体に接続されている。このため、上枠連結部材及び下枠連結部材は、各管支持台車が走行するトンネルの形状に応じて軸回りに回動する。これにより、各管支持台車は、トンネル内をスムーズに走行することができる。
【0019】
上記の配管装置において、前記管支持台車は、当該管支持台車の走行時に前記一対のレールに当接しつつ回転する車輪を含む構成であってもよい。そして、前記車輪は、前記上枠部及び前記下枠部の各々に取り付けられ、前記トンネル軸方向に所定の間隔を隔てて配置される第1車輪及び第2車輪を有する。
【0020】
この態様では、管支持台車の上枠部及び下枠部の各々に取り付けられた車輪が、トンネル軸方向に所定の間隔を隔てて配置される第1車輪及び第2車輪を有する。これにより、管支持台車が一対のレールに沿ってトンネルの曲線部を通過するときに、当該管支持台車がトンネル軸方向及びトンネル幅方向に傾くことを防止することができる。このため、トンネルの曲線部を通過するときの管支持台車の姿勢が、直線部の通過時と同様の姿勢に維持されるので、管支持台車の管支持部上においてパイプがスムーズにスライド移動する。
【0021】
上記の配管装置は、前記複数の管支持台車のうちの走行方向の最先頭に配置される管支持台車に連結され、当該複数の管支持台車を先導する先導台車を、更に備える構成であってもよい。
【0022】
この態様では、複数の管支持台車のトンネル内での走行を先導台車によって先導させることができる。
【0023】
上記の配管装置は、前記管体の前記パイプを支持した状態の前記管支持台車の走行によって、前記トンネル内に前記管体が配管された後、前記トンネルと前記管体との隙間に充填するコンクリートが流れる充填管を、更に備える構成であってもよい。そして、前記充填管は、一端に接合部を有した充填パイプの他端が他の充填パイプの前記接合部に差し込まれることにより、前記充填パイプが複数連結されてなる。前記管支持台車は、前記台車本体に取り付けられ、前記管支持台車が前記トンネル内における曲線部を通過するときに、前記トンネル軸方向への前記充填管のスライド移動が可能となるように当該充填管を支持する充填管支持部を含む。
【0024】
この態様では、管支持台車の走行によってトンネル内に管体が配管された後、管支持台車に支持された充填管を用いて、トンネルと管体との隙間にコンクリートを充填することができる。管支持台車の充填管支持部は、充填管を固定的に支持するのではなく、充填管のスライド移動が可能となるように当該充填管を支持している。このため、管体の場合と同様に、管支持台車がトンネルの曲線部を通過するときに、充填管支持部上を充填管がスライド移動し、充填パイプ同士の連結状態の解除が防止される。
【0025】
本発明の他の局面に係る配管工法は、一端に接合部を有したパイプの他端が他のパイプの前記接合部に差し込まれることにより、前記パイプが複数連結されてなる管体を、トンネル内に配管するための工法である。この配管工法は、前記トンネルの内面の頂部及び底部にそれぞれ当接して配置されるように一対のレールを、前記トンネル内においてトンネル軸方向に沿って敷設するレール敷設ステップと、前記パイプの複数本が、前記トンネル軸方向に延び、且つ前記トンネル軸方向と直交するトンネル上下方向及びトンネル幅方向に所定の間隔を隔てて多列多段に並ぶように、当該複数本のパイプを、複数の管支持台車の台車本体に取り付けられた管支持部に配置するパイプ配置ステップと、前記複数の管支持台車における前記管支持部の各々に支持された前記パイプ同士を連結すると共に、前記管支持台車同士を台車連結部によって連結する連結作業を順次実施する連結ステップと、前記連結作業の実施毎に、前記複数の管支持台車を、前記一対のレールに沿って前記トンネル内を順次走行させることにより、前記パイプが複数連結されてなる前記管体を前記トンネル内に配管するトンネル内への引入れステップと、を含む。前記管支持台車における前記管支持部は、当該管支持台車が前記トンネル内における曲線部を通過するときに、前記トンネル軸方向への前記パイプのスライド移動が可能となるように当該パイプを支持している。なお、前記パイプ配置ステップ、前記連結ステップ、及び前記トンネル内への引入れステップは、繰り返し実施される。前記台車本体は、前記管支持部を収容する収容空間を有する枠状に形成され、前記トンネル上下方向に延びる一対の第1側枠部及び第2側枠部と、前記トンネル幅方向に延びて前記第1側枠部及び前記第2側枠部の上端を繋ぐ上枠部と、前記トンネル幅方向に延びて前記第1側枠部及び前記第2側枠部の下端を繋ぐ下枠部と、を有する。前記台車連結部は、前記トンネル軸方向に互いに隣り合う前記管支持台車において、前記第1側枠部同士を連結する第1側枠連結部材と、前記第2側枠部同士を連結する第2側枠連結部材と、を含む。前記第1側枠連結部材は、前記第1側枠部同士の前記トンネル軸方向に沿った間隔を調整可能な第1長さ調整部を有する。前記第2側枠連結部材は、前記第2側枠部同士の前記トンネル軸方向に沿った間隔を調整可能な第2長さ調整部を有する。前記管支持台車が前記トンネル内における曲線部を通過するときの、前記管支持部に支持された複数の前記パイプのうちで最も内側に配置されたパイプが描く円弧の弧長と最も外側に配置されたパイプが描く円弧の弧長との差異をパイプの内外弧長差とし、前記第1側枠連結部材が描く円弧の弧長と前記第2側枠連結部材が円弧の弧長との差異を側枠連結部材の内外弧長差とした場合、前記パイプの長さは、前記パイプの内外弧長差よりも長い値に設定され、前記第1長さ調整部による前記第1側枠部同士の間隔と、前記第2長さ調整部による前記第2側枠部同士の間隔とは、前記パイプの長さと前記側枠連結部材の内外弧長差とに応じて設定される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、管体のパイプを支持する台車がトンネル内における曲線部を通過するときの、パイプ同士の接合部における開き量を可及的に小さくすることができる配管装置及び配管工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る配管装置の構成を概略的に示す図である。
図2】配管装置の構成を概略的に示す図である。
図3図1の配管装置を切断面線(III-III)から見た断面図である。
図4】配管装置によるトンネル内へのケーブル保護管の配管後に、コンクリートが充填された状態を示す図である。
図5】ケーブル保護管を示す図である。
図6】充填管を示す図である。
図7】配管装置に備えられる一対のレールの構成を示す図であって、トンネル幅方向から見た図である。
図8】一対のレールをトンネル軸方向から見た図である。
図9】配管装置をトンネル幅方向から見た図である。
図10】配管装置をトンネル上下方向から見た図である。
図11】配管装置に備えられる管支持台車の構成を示す図である。
図12】複数の管支持台車の連結状態を示す図であって、トンネル上下方向から見た図である。
図13】複数の管支持台車の連結状態を示す図であって、トンネル幅方向から見た図である。
図14】配管装置に備えられる先導台車における第1先導台車の構成を示す図である。
図15】複数の管支持台車がトンネルの曲線部を通過するときの様子を示す図であって、トンネル上下方向から見た図である。
図16】複数の管支持台車がトンネルの曲線部を通過するときの、ケーブル保護パイプのスライド移動の様子を示す図である。
図17】最後尾の管支持台車における、ケーブル保護パイプのスライド移動の様子を示す図である。
図18】管支持台車がトンネルの曲線部を通過するときの、接合部におけるケーブル保護パイプの開き状態を示す図である。
図19】配管装置を用いたケーブル保護管の配管工法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る配管装置及び配管工法について説明する。
【0029】
[配管装置について]
<配管装置の全体構成>
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る配管装置1の構成を概略的に示す図である。図3は、図1の配管装置1を切断面線(III-III)から見た断面図である。図4は、配管装置1によるトンネルTN内へのケーブル保護管100の配管後に、コンクリートCCが充填された状態を示す図である。配管装置1は、トンネルTN内にケーブル保護管100を配管するための装置である。トンネルTNは、地盤中に掘削された円筒形状を有するものであり、その両端に立坑VSが設けられる。ケーブル保護管100は、円筒形状を有する管体である。配管装置1によるトンネルTN内へのケーブル保護管100の配管後には、図4に示すように、トンネルTNとケーブル保護管100との隙間にコンクリートCCが充填される。コンクリートCCが充填された後、ケーブル保護管100内に電力ケーブルEC等が挿入される。ケーブル保護管100は、挿入された電力ケーブルEC等を保護する機能を有する。
【0030】
なお、配管装置1は、トンネルTN内にケーブル保護管100を配管する機能を有すると共に、コンクリートCCを充填するための充填管110をトンネルTN内に導入する機能を有する。以下の説明では、水平面上においてトンネルTNが延びる方向をトンネル軸方向D1と称し、水平面上においてトンネル軸方向D1と直交する、トンネルTNの幅を示す方向をトンネル幅方向D2と称する。また、トンネル軸方向D1及びトンネル幅方向D2と直交する鉛直方向をトンネル上下方向D3と称する。
【0031】
配管装置1の説明に先立って、図5及び図6を参照してケーブル保護管100及び充填管110について説明する。図5に示すように、ケーブル保護管100は、複数のケーブル保護パイプ101が連結されてなる管体である。ケーブル保護パイプ101は、直線状に延びる円筒状のパイプであり、一端に接合部102を有する。ケーブル保護管100は、一のケーブル保護パイプ101の他端が他のケーブル保護パイプ101の接合部102に差し込まれることにより、複数のケーブル保護パイプ101が連結されてなる。
【0032】
ケーブル保護管100においては、ケーブル保護パイプ101同士の位置関係は、パイプ同士が直線上に配置された位置関係(図5(A)参照)と、パイプ同士が接合部102を屈折点とする折れ線上に配置された位置関係(図5(B)参照)との間で変化可能である。ケーブル保護管100が接合部102を屈折点として折れ曲がったときには、接合部102においてケーブル保護パイプ101同士が開くことになる。ケーブル保護パイプ101同士が接合部102において開いたときの、各パイプの端面が成す角で示される開き角には、許容値が存在する。すなわち、ケーブル保護管100には、ケーブル保護パイプ101同士の開き角の許容値を示す許容開き角αPが設定されている。ケーブル保護パイプ101同士の開き角が許容開き角αPを超えた場合には、ケーブル保護パイプ101同士の連結状態が解除される。この場合、ケーブル保護パイプ101内にコンクリートCCが侵入する虞があり、また電力ケーブルEC等のケーブル保護管100内への挿入に支障をきたす虞がある。従って、トンネルTN内にケーブル保護管100を配管するときには、ケーブル保護パイプ101同士の開き角が許容開き角αPを超えないようにする必要がある。
【0033】
充填管110は、トンネルTNとケーブル保護管100との隙間にコンクリートCCが充填されるときに、当該コンクリートCCが流れる管である。充填管110は、図6に示すように、複数の充填パイプ111が連結されてなる。充填パイプ111は、直線状に延びる円筒状のパイプであってもよい。充填パイプ111は、様々なタイプのものが存在するが、その一例を挙げると、図6に示すように、一端に接合部112を有する。このタイプの充填パイプ111を用いた場合、充填管110は、一の充填パイプ111の他端が他の充填パイプ111の接合部112に差し込まれることにより、複数の充填パイプ111が連結されてなる。
【0034】
図1図3に示すように、配管装置1は、一対のレール2と、複数の管支持台車3と、台車連結部4と、先導台車5とを備える。
【0035】
一対のレール2は、トンネルTN内においてトンネル軸方向D1に沿って延設される円筒状に形成されたレールである。図3に示すように、一対のレール2は、トンネルTNの内面TNSの頂部TNT及び底部TNBにそれぞれ当接して配置される。なお、トンネルTNの内面TNSの頂部TNTは、トンネルTNの内面TNSにおいて最も高い位置を示す最頂部であってもよいし、その最頂部を中心にトンネルTNの周方向に所定の範囲内の領域であってもよい。同様に、トンネルTNの内面TNSの底部TNBは、トンネルTNの内面TNSにおいて最も低い位置を示す最底部であってもよいし、その最底部を中心にトンネルTNの周方向に所定の範囲内の領域であってもよい。
【0036】
複数の管支持台車3は、ケーブル保護管100のケーブル保護パイプ101毎に設けられ、当該ケーブル保護パイプ101を支持する台車である。図3に示すように、管支持台車3は、ケーブル保護管100の複数本が、トンネル軸方向D1に延び、且つトンネル幅方向D2及びトンネル上下方向D3に所定の間隔を隔てて多列多段に配置されるように、当該複数のケーブル保護管100の各々のケーブル保護パイプ101を支持する。また、管支持台車3は、ケーブル保護管100に加えて、充填管110も支持する。複数の管支持台車3の各々は、一対のレール2に沿ってトンネルTN内を走行可能である。管支持台車3は、出発側の立坑VS(図1)から到達側の立坑(不図示)に向かって、一対のレール2に沿ってトンネルTN内を走行する。以下の説明では、管支持台車3がトンネルTN内を走行する方向を、走行方向D4と称する。
【0037】
台車連結部4は、図1及び図2に示すように、トンネル軸方向D1に互いに隣り合う管支持台車3同士を連結する。先導台車5は、複数の管支持台車3の走行を先導する台車である。先導台車5は、図2に示すように、複数の管支持台車3のうちの走行方向D4の最先頭に配置される管支持台車3に連結される。
【0038】
配管装置1では、管支持台車3は、複数本のケーブル保護管100が多列多段に配置されるように、各ケーブル保護管100のケーブル保護パイプ101を支持する。更に、管支持台車3は、充填管110を支持する。ケーブル保護パイプ101及び充填管110を支持した管支持台車3は、台車連結部4によって連結され、トンネルTN内に敷設された一対のレール2に沿って走行する。これにより、複数本のケーブル保護管100をトンネルTN内に配管することができると共に、充填管110をトンネルTN内に導入することができる。
【0039】
<配管装置の詳細構成>
次に、配管装置1の各構成要素について、図1図3に加えて図7図14を参照して詳細に説明する。図7及び図8は一対のレールの構成を示す図であって、図7がトンネル幅方向D2から見た図であり、図8がトンネル軸方向D1から見た図である。図9は、配管装置1をトンネル幅方向D2から見た図である。図10は、配管装置1をトンネル上下方向D3から見た図である。図11は、管支持台車3の構成を示す図である。図12及び図13は複数の管支持台車3の連結状態を示す図であって、図12がトンネル上下方向D3から見た図であり、図13がトンネル幅方向D2から見た図である。図14は、先導台車5における第1先導台車51の構成を示す図である。
【0040】
一対のレール2は、図7及び図8に示すように、第1レール部21と第2レール部22とを含む。第1レール部21は、トンネルTNの内面TNSの周方向に沿って湾曲可能な帯状の板体211に固設されたパイプレールである。第1レール部21は、直線状に延びる円筒形状に形成される。板体211は、トンネルTNの内面TNSの周方向の長さよりも短い長さに形成されて、その長手方向の両端部間が間隔調整部材212によって連結されている。板体211は、その両端部間の間隔が間隔調整部材212によって調整されることにより、トンネルTNの内面TNSに密着される。間隔調整部材212は、例えばターンバックルによって実現される。ターンバックルは、胴部の両端にネジ山が切られており、一方は右ネジ、他方は左ネジとされている。ターンバックルは、胴部を回転させることにより、両端に取り付けられたボルトが締め込まれ、或いは緩められる。これにより、板体211の両端部間の間隔を調整することができる。
【0041】
第2レール部22は、円筒状のパイプレールであって、トンネルTNの内面TNSに密着されて固定された板体211に固設される第1レール部21に対して接続される。第2レール部22は、トンネルTNのトンネル軸方向D1の形状に合致した形状に形成される。すなわち、トンネルTNの直線部の領域に敷設される第2レール部22は、直線状に延びる円筒形状に形成される。一方、トンネルTNの曲線部の領域に敷設される第2レール部22は、前記曲線部に沿って湾曲した形状に形成される。
【0042】
トンネルTNの内面TNSの周方向に沿って湾曲可能な板体211に固設された第1レール部21に第2レール部22を接続することにより、一対のレール2をトンネルTN内に敷設することができる。トンネルTN内への一対のレール2の敷設時においては、板体211の両端部間の間隔を間隔調整部材212によって調整することにより、当該板体211をトンネルTNの内面TNSに密着させて固定する。板体211のトンネル内面TNSへの固定作業は、所定長ずつ掘削したトンネルTNの内面TNSに対して順次実施することができる。板体211がトンネルTNの内面TNSに密着して固定されると、その板体211に固設された第1レール部21がトンネル内面TNSに当接し、その第1レール部21に接続される第2レール部22もトンネル内面TNSに当接することになる。すなわち、板体211の両端部間の間隔を間隔調整部材212によって調整することにより、トンネルTNの内面TNSの頂部TNT及び底部TNBに当接するように一対のレール2を敷設することができる。このため、一対のレール2をトンネルTN内に敷設する際に、レールの固定のためにアンカーボルト等を打設する必要がなく、トンネルTN内でのレールの敷設作業の負荷を軽減することができる。また、トンネル掘進中に第1レール部21を敷設することで、掘進後のトンネルTN内への第1レール部21の設置作業が不要になり、全体の工期短縮につながる。
【0043】
また、一対のレール2は、トンネルTNの内面TNSの頂部TNT及び底部TNBに当接して配置されるので、管支持台車3の走行時の振動や撓みの発生が抑制される。これにより、一対のレール2に沿った管支持台車3の走行性を、良好な状態に維持することができる。
【0044】
管支持台車3は、図11に示すように、台車本体31と、管支持部32と、充填管支持部33と、車輪34とを含む。
【0045】
台車本体31は、管支持台車3の本体部分を構成する。台車本体31は、管支持部32を収容する収容空間31Sを有する枠状に形成される。台車本体31は、上枠部311と、下枠部312と、第1側枠部313と、第2側枠部314とを有する。第1側枠部313及び第2側枠部314は、台車本体31の側面部分を構成する。第1側枠部313と第2側枠部314とは、トンネル幅方向D2に所定の間隔を隔てて対向配置され、トンネル上下方向D3に延びる。上枠部311は、台車本体31の上面部分を構成する。上枠部311は、トンネル幅方向D2に延び、第1側枠部313及び第2側枠部314の上端を繋ぐ。下枠部312は、台車本体31の下面部分を構成する。下枠部312は、トンネル幅方向D2に延び、第1側枠部313及び第2側枠部314の下端を繋ぐ。
【0046】
管支持部32は、管支持台車3においてケーブル保護管100を支持する部分を構成する。管支持部32は、収容空間31Sに収容されるように台車本体31に取り付けられている。管支持部32は、ケーブル保護管100の複数本が、トンネル軸方向D1に延び、且つトンネル幅方向D2及びトンネル上下方向D3に所定の間隔を隔てて多列多段に配置されるように、当該複数のケーブル保護管100の各々のケーブル保護パイプ101を支持する。管支持部32は、格子状に配置された複数の開口321を有する枠体である。図11に示す例では、管支持部32は、トンネル幅方向D2に4列、トンネル上下方向D3に3段の、合計12個の開口321を有している。管支持部32は、前記複数の開口321の各々にケーブル保護パイプ101が挿通された状態において、当該ケーブル保護パイプ101を支持する。詳細については後述するが、管支持部32は、管支持台車3がトンネルTN内における曲線部を通過するときに、トンネル軸方向D1へのケーブル保護パイプ101のスライド移動が可能となるように、当該ケーブル保護パイプ101を支持している。
【0047】
充填管支持部33は、管支持台車3において充填管110を支持する部分を構成する。充填管支持部33は、台車本体31の上枠部311に取り付けられている。充填管支持部33は、充填管110がトンネル軸方向D1に延びるように、当該充填管110を支持する。充填管支持部33は、管支持台車3がトンネルTN内における曲線部を通過するときに、トンネル軸方向D1への充填管110のスライド移動が可能となるように、当該充填管110を支持している。
【0048】
車輪34は、管支持台車3の走行時に一対のレール2に当接しつつ回転する。車輪34は、台車本体31の上枠部311及び下枠部312の各々に、車輪支持部343を介して取り付けられている。上枠部311及び下枠部312の各々に対応して2つの車輪支持部343が設けられ、一方の車輪支持部343は上枠部311から上方に突出するように設けられ、他方の車輪支持部343は下枠部312から下方に突出するように設けられる。
【0049】
図9及び図13に示すように、上枠部311及び下枠部312の各々に取り付けられた各車輪34は、トンネル軸方向D1に所定の間隔を隔てて配置される第1車輪341と第2車輪342とを有する。このように、トンネル軸方向D1に第1車輪341と第2車輪342とが並設される構成とすることにより、管支持台車3が一対のレール2に沿ってトンネルTNの曲線部を通過するときに、当該管支持台車3がトンネル軸方向D1及びトンネル幅方向D2に傾くことを防止することができる。このため、トンネルTNの曲線部を通過するときの管支持台車3の姿勢が、トンネルTNの直線部の通過時と同様の姿勢に維持される。これにより、管支持台車3の管支持部32上においてケーブル保護パイプ101がスムーズにスライド移動する。
【0050】
台車連結部4は、図9,10,12,13に示すように、上枠連結部材41と、下枠連結部材42と、第1側枠連結部材43と、第2側枠連結部材44とを含む。
【0051】
上枠連結部材41は、トンネル軸方向D1に延びる連結部材であって、トンネル軸方向D1に互いに隣り合う管支持台車3において、トンネル幅方向D2の中央位置で上枠部311同士を連結する。上枠部311には、2つの上枠連結突片3111が固設されている。一方の上枠連結突片3111は、上枠部311から走行方向D4に突出して設けられた突片である。他方の上枠連結突片3111は、上枠部311から走行方向D4とは逆方向に突出して設けられた突片である。上枠連結部材41は、トンネル上下方向D3に延びるボルト411によって上枠連結突片3111に接続されることにより、上枠部311に接続される。上枠連結部材41は、ボルト411を軸とし、そのボルト411回りに回動可能に上枠部311(上枠連結突片3111)に接続されている。
【0052】
下枠連結部材42は、トンネル軸方向D1に延びる連結部材であって、トンネル軸方向D1に互いに隣り合う管支持台車3において、トンネル幅方向D2の中央位置で下枠部312同士を連結する。下枠部312には、2つの下枠連結突片3121が固設されている。一方の下枠連結突片3121は、下枠部312から走行方向D4に突出して設けられた突片である。他方の下枠連結突片3121は、下枠部312から走行方向D4とは逆方向に突出して設けられた突片である。下枠連結部材42は、トンネル上下方向D3に延びるボルト421によって下枠連結突片3121に接続されることにより、下枠部312に接続される。下枠連結部材42は、ボルト421を軸とし、そのボルト421回りに回動可能に下枠部312(下枠連結突片3121)に接続されている。
【0053】
上記のように、複数の管支持台車3は、台車本体31の上枠部311及び下枠部312の各々において、上枠連結部材41及び下枠連結部材42によって連結される。上枠連結部材41及び下枠連結部材42は、トンネル上下方向D3に延びるボルト411,421回りの回動が可能となるように台車本体31に接続されている。このため、上枠連結部材41及び下枠連結部材42は、各管支持台車3が走行するトンネルTNの形状に応じてボルト411,421回りに回動する。これにより、各管支持台車3は、トンネルTN内をスムーズに走行することができる。
【0054】
第1側枠連結部材43は、トンネル軸方向D1に延びる連結部材であって、トンネル軸方向D1に互いに隣り合う管支持台車3において、トンネル上下方向D3の中央位置で第1側枠部313同士を連結する。第1側枠部313には、2つの第1側枠連結突片3131が固設されている。一方の第1側枠連結突片3131は、第1側枠部313の走行方向D4前方側の面において、第1側枠部313から外側に突出して設けられた突片である。他方の第1側枠連結突片3131は、第1側枠部313の走行方向D4後方側の面において、第1側枠部313から外側に突出して設けられた突片である。
【0055】
第1側枠連結部材43は、トンネル軸方向D1に互いに隣り合う管支持台車3において、第1側枠部313同士のトンネル軸方向D1に沿った第1間隔CL1を調整可能な第1長さ調整部431を有している。本実施形態では、第1側枠連結部材43の長手方向(トンネル軸方向D1)両端部にそれぞれ第1長さ調整部431が設けられている。第1長さ調整部431は、第1側枠連結突片3131を貫通してトンネル軸方向D1に延びるボルト4311と、ボルト4311に螺合される一対のナット4312と、を含む。一対のナット4312は、第1側枠連結突片3131を挟んで両側に配置される。第1側枠連結部材43は、第1側枠連結突片3131に貫通したボルト4311に一対のナット4312が螺合されて当該第1側枠連結突片3131に接続されることにより、第1側枠部313に接続される。第1側枠連結部材43が第1側枠部313に接続された状態において、トンネル軸方向D1に関する第1側枠連結突片3131の位置、すなわち第1側枠部313の位置は、一対のナット4312の間で変化可能である。換言すると、第1長さ調整部431は、ボルト4311上における一対のナット4312の位置、並びに一対のナット4312の間隔の設定によって、第1側枠部313同士の第1間隔CL1を調整可能である。第1長さ調整部431による第1側枠部313同士の第1間隔CL1の調整に関する詳細については、後述する。
【0056】
第2側枠連結部材44は、トンネル軸方向D1に延びる連結部材であって、トンネル軸方向D1に互いに隣り合う管支持台車3において、トンネル上下方向D3の中央位置で第2側枠部314同士を連結する。第2側枠部314には、2つの第2側枠連結突片3141が固設されている。一方の第2側枠連結突片3141は、第2側枠部314の走行方向D4前方側の面において、第2側枠部314から外側に突出して設けられた突片である。他方の第2側枠連結突片3141は、第2側枠部314の走行方向D4後方側の面において、第2側枠部314から外側に突出して設けられた突片である。
【0057】
第2側枠連結部材44は、トンネル軸方向D1に互いに隣り合う管支持台車3において、第2側枠部314同士のトンネル軸方向D1に沿った第2間隔CL2を調整可能な第2長さ調整部441を有している。本実施形態では、第2側枠連結部材44の長手方向(トンネル軸方向D1)両端部にそれぞれ第2長さ調整部441が設けられている。第2長さ調整部441は、第2側枠連結突片3141を貫通してトンネル軸方向D1に延びるボルト4411と、ボルト4411に螺合される一対のナット4412と、を含む。一対のナット4412は、第2側枠連結突片3141を挟んで両側に配置される。第2側枠連結部材44は、第2側枠連結突片3141に貫通したボルト4411に一対のナット4412が螺合されて当該第2側枠連結突片3141に接続されることにより、第2側枠部314に接続される。第2側枠連結部材44が第2側枠部314に接続された状態において、トンネル軸方向D1に関する第2側枠連結突片3141の位置、すなわち第2側枠部314の位置は、一対のナット4412の間で変化可能である。換言すると、第2長さ調整部441は、ボルト4411上における一対のナット4412の位置、並びに一対のナット4412の間隔の設定によって、第2側枠部314同士の第2間隔CL2を調整可能である。第2長さ調整部441による第2側枠部314同士の第2間隔CL2の調整に関する詳細については、後述する。
【0058】
先導台車5は、図9,10,14に示すように、第1先導台車51と、第2先導台車52と、先導連結部材53とを含む。第1先導台車51と第2先導台車52とは、トンネル軸方向D1に並んで配置され、第1先導台車51が走行方向D4の先頭側であり、第2先導台車52が走行方向D4の後方側に配置される。第1先導台車51と第2先導台車52とは、先導連結部材53によって連結されている。先導連結部材53は、第2先導台車52の第1先導台車51に対するトンネル幅方向D2及びトンネル上下方向D3への揺動を規制した状態で、第1先導台車51と第2先導台車52とを連結している。
【0059】
第2先導台車52は、台車本体521と車輪522とを有する。車輪522は、台車本体521の上面部及び下面部の各々に取り付けられ、第2先導台車52の走行時に一対のレール2のそれぞれに当接しつつ回転する。第2先導台車52は、複数の管支持台車3のうちの走行方向D4の最先頭に配置される管支持台車3と連結される。第2先導台車52と最先頭の管支持台車3との間の連結は、管支持台車3同士の連結と同様に、上枠連結部材41、下枠連結部材42、第1側枠連結部材43及び第2側枠連結部材44によって行われる。
【0060】
第1先導台車51は、図14に示すように、台車本体511と、車輪512とを有する。車輪512は、台車本体511の上面部及び下面部の各々に取り付けられ、第1先導台車51の走行時に一対のレール2のそれぞれに当接しつつ回転する。第1先導台車51が走行すると、その第1先導台車51と先導連結部材53によって連結された第2先導台車52が走行し、更には複数の管支持台車3が走行する。
【0061】
<トンネルの曲線部を考慮した配管装置の設計について>
次に、管支持台車3がトンネルTN内における曲線部を通過する場合を想定した配管装置1の設計思想について、図15図18を参照して説明する。図15は、複数の管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときの様子を示す図であって、トンネル上下方向D3から見た図である。図16は、複数の管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときの、ケーブル保護パイプ101のスライド移動の様子を示す図である。図17は、最後尾の管支持台車3における、ケーブル保護パイプ101のスライド移動の様子を示す図である。図18は、管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときの、接合部102におけるケーブル保護パイプ101の開き状態を示す図である。
【0062】
管支持台車3がトンネルTN内における曲線部TNCを通過する場合を想定する。この場合、管支持台車3の管支持部32に支持されたケーブル保護管100においては、ケーブル保護パイプ101同士が接合部102を屈折点とする折れ線上に配置された位置関係となり、接合部102においてケーブル保護パイプ101同士が開こうとする(図18参照)。
【0063】
管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときには、管支持部32に多列多段に支持された複数本のケーブル保護パイプ101において、トンネル幅方向D2の中心に対して内側に配置された内側パイプが描く円弧の弧長と、外側に配置された外側パイプが描く円弧の弧長との間に差異が生じる。既述の通り、管支持部32は、ケーブル保護パイプ101を固定的に支持するのではなく、ケーブル保護パイプ101のスライド移動が可能となるように当該ケーブル保護パイプ101を支持している。
【0064】
このため、管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときには、内側パイプと外側パイプとの内外弧長の差異を吸収するために、管支持部32上をケーブル保護パイプ101がスライド移動する。すなわち、管支持部32上でのケーブル保護パイプ101のスライド移動によって、内側パイプと外側パイプとの内外弧長の差異を吸収することができる。これにより、内側パイプと外側パイプとの内外弧長の差異に応じた、ケーブル保護パイプ101同士の接合部102における開き量を、可及的に小さくすることができる。このため、従来技術のようにジャバラ管や可撓管を介してケーブル保護パイプ101同士を連結する構成を採用しなくても、接合部102でのケーブル保護パイプ101同士の連結状態を好適に維持することができる。従って、トンネルTN内に配管されたケーブル保護管100においてケーブル保護パイプ101同士の連結部分に段差が生じることを抑止し、当該ケーブル保護管100内への電力ケーブルEC等の挿入時での、ケーブル挿入治具等によるケーブル保護管100の損傷の発生を防止することができる。なお、上記の如く、ケーブル保護パイプ101同士の接合部102における開き量を小さくすることができる。このため、ケーブル保護管100のトンネルTN内への配管後に、コンクリートCCが充填される際に、ケーブル保護パイプ101内へのコンクリートCCの侵入が防止される。
【0065】
また、管支持台車3の走行によってトンネルTN内にケーブル保護管100が配管された後、充填管支持部33に支持された充填管110を用いて、トンネルTNとケーブル保護管100との隙間にコンクリートCCが充填される(図4)。上記の如く、ケーブル保護パイプ101同士の接合部102における開き量が小さくされている。このため、コンクリートCCが充填される際に、ケーブル保護パイプ101内へのコンクリートCCの侵入が防止される。また、管支持台車3の充填管支持部33は、充填管110を固定的に支持するのではなく、充填管110のスライド移動が可能となるように当該充填管110を支持している。このため、ケーブル保護管100の場合と同様に、管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときに、充填管支持部33上を充填管110がスライド移動し、充填パイプ111同士の連結状態の解除が防止される。
【0066】
図18を参照して、ケーブル保護パイプ101同士が接合部102において開いたときの、各パイプの端面が成す角で示される開き角α1は、下記式(1)に基づき算出することができる。
【0067】
【数1】
【0068】
上記式(1)は、トンネルTNの曲線部TNCの曲率中心Aとケーブル保護パイプ101の両端点Bとを頂点とする二等辺三角形ABBに基づき導かれる。式中、「α1」はケーブル保護パイプ101同士の開き角を示し、「β2」はケーブル保護パイプ101の両端点Bを結ぶ線分を底辺とする二等辺三角形ABBの底角を示す。
【0069】
二等辺三角形ABBの頂角β1は、下記式(2)に基づき算出することができる。
【0070】
【数2】
【0071】
上記式(1)と上記式(2)との関係から、下記式(3)に示されるように、ケーブル保護パイプ101同士の開き角α1は、角β1と同じであり、ケーブル保護パイプ101の長さPL(図16)と、トンネルTNの曲線部TNCの曲率半径CR(図15)とに基づき算出することができる。なお、下記式(3)中の「π」は円周率である。
【0072】
【数3】
【0073】
既述の通り、ケーブル保護管100には、ケーブル保護パイプ101同士の開き角の許容値を示す許容開き角αPが設定されている(図5(B))。許容開き角αPは、例えば「1.5°」である。本実施形態では、上記式(3)に基づいて、ケーブル保護パイプ101同士の開き角α1が許容開き角αPを超えないように、ケーブル保護パイプ101の長さPLが設定される。例えば、トンネルTNの曲線部TNCの曲率半径CRが「60m」である場合を想定する。この場合、ケーブル保護パイプ101の長さPLを「1.5m」に設定することにより、ケーブル保護パイプ101同士の開き角α1が「1.43°」となり、許容開き角αPの「1.5°」を超えない。
【0074】
なお、ケーブル保護管100においてケーブル保護パイプ101同士の接合部102における開き量は、ケーブル保護パイプ101の内径PD(図16)と開き角α1とを用いて、「Sinα1×PD」で表すことができる。例えば、開き各α1が「1.43°」であり、内径PDが「175mm」である場合、ケーブル保護パイプ101同士の開き量は、「4.37mm」となる。このケーブル保護パイプ101同士の開き量は、管支持部32がケーブル保護パイプ101をスライド移動可能に支持する構成においては、多列多段に配置された各ケーブル保護管100で略同値となる。
【0075】
管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときの、管支持部32に支持された複数本のケーブル保護パイプ101のうちで最も内側に配置された最内側パイプが描く円弧の弧長(以下、「最内側パイプ弧長」という)AL1は、下記式(4)に基づき算出することができる。
【0076】
【数4】
【0077】
また、管支持部32に支持された複数本のケーブル保護パイプ101のうちで最も外側に配置された最外側パイプが描く円弧の弧長(以下、「最外側パイプ弧長」という)AL2は、下記式(5)に基づき算出することができる。
【0078】
【数5】
【0079】
上記式(4)及び式(5)中、「π」は円周率を示し、「CR」はトンネルTNの曲線部TNCの曲率半径を示し、「θ」はトンネルTNの曲線部TNCにおける曲率中心A回りの中心角を示す。また、上記式(4)及び式(5)中、「W1」は管支持部32に支持された最内側パイプと最外側パイプとの間のトンネル幅方向D2に関する離間距離(図16)を示す。
【0080】
最外側パイプ弧長AL2と最内側パイプ弧長AL1との間の差異を示す、ケーブル保護パイプ101の内外弧長差MLTは、下記式(6)に基づき算出することができる。
【0081】
【数6】
【0082】
既述の通り、本実施形態に係る配管装置1では、管支持部32がケーブル保護パイプ101をスライド移動可能に支持し、このスライド移動によってケーブル保護パイプ101の内外弧長差MLTを吸収する。このため、図17に示すように、走行方向D4の最後尾の管支持台車3においては、管支持部32に支持された複数本のケーブル保護パイプ101のうちで最も外側に配置された最外側パイプと、最も内側に配置された最内側パイプとの位置は、内外弧長差MLTの分だけ、トンネル軸方向D1に位置ずれすることになる。そこで、本実施形態では、ケーブル保護パイプ101の長さPLは、上記式(6)で示されるケーブル保護パイプ101の内外弧長差MLTよりも長くなるように、設定される。これにより、管支持部32上をスライド移動するケーブル保護パイプ101の、管支持台車3からの脱落や、接合部102の管支持部32への衝突を回避することができる。例えば、トンネルTNの曲線部TNCにおいて、曲率半径CRが「60m」であり、中心角θが「90°」であり、前記離間距離W1が「0.75m」である場合を想定する。この場合、ケーブル保護パイプ101の内外弧長差MLTは、「1.178m」となる。従って、ケーブル保護パイプ101の長さPLを「1.5m」に設定することにより、内外弧長差MLTよりも長くすることができる。
【0083】
また、トンネルTNの曲線部TNCの全長にわたってケーブル保護管100を配管するために必要な、トンネル軸方向D1に沿ったケーブル保護パイプ101の必要本数PNは、下記式(7)に基づき算出することができる。
【0084】
【数7】
【0085】
上記式(7)中、「π」は円周率を示し、「CR」はトンネルTNの曲線部TNCの曲率半径を示し、「θ」はトンネルTNの曲線部TNCにおける曲率中心A回りの中心角を示す。また、上記式(7)中、「PL」はケーブル保護パイプ101の長さを示す。
【0086】
そして、管支持部32に支持された複数本のケーブル保護パイプ101のうちで最も外側に配置された最外側パイプと、最も内側に配置された最内側パイプとの、管支持台車3の1台毎のスライド移動差ML1(図16)は、下記式(8)に基づき算出することができる。
【0087】
【数8】
【0088】
上記式(8)中、「MLT」は式(6)で算出されるケーブル保護パイプ101の内外弧長差を示し、「PN」は式(7)で算出されるケーブル保護パイプ101の必要本数を示す。例えば、トンネルTNの曲線部TNCにおいて、曲率半径CRが「60m」であり、中心角θが「90°」であり、ケーブル保護パイプ101の長さPLが「1.5m」である場合を想定する。この場合、上記式(7)に基づいて算出されるケーブル保護パイプ101の必要本数PNは、「63本」となる。そして、管支持台車3の1台毎のスライド移動差ML1は、「18.7mm」となる。
【0089】
既述の通り、各管支持台車3は、台車本体31の第1側枠部313及び第2側枠部314の各々において、第1側枠連結部材43及び第2側枠連結部材44によって連結される。図16に示すように、各管支持台車3の第1側枠部313同士の第1間隔CL1は、第1側枠連結部材43の第1長さ調整部431によって調整可能である。各管支持台車3の第2側枠部314同士の第2間隔CL2は、第2側枠連結部材44の第2長さ調整部441によって調整可能である。
【0090】
ここで、管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときに、第1側枠連結部材43が描く円弧の第1半径R1(図15)は、下記式(9)に基づき算出することができる。
【0091】
【数9】
【0092】
また、管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときに、第2側枠連結部材44が描く円弧の第2半径R2(図16)は、下記式(10)に基づき算出することができる。
【0093】
【数10】
【0094】
上記式(9)及び式(10)中、「CR」はトンネルTNの曲線部TNCの曲率半径を示し、「W2」は第1側枠連結部材43と第2側枠連結部材44との間のトンネル幅方向D2に関する離間距離(図16)を示す。
【0095】
管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときには、ケーブル保護パイプ101の場合と同様に、第1側枠連結部材43が描く円弧の弧長と、第2側枠連結部材44が描く円弧の弧長との間に差異が生じる。その差異を示す第1側枠連結部材43及び第2側枠連結部材44の内外弧長差ALDは、「α1」が小さい場合には下記近似式(11)に基づき算出することができる。
【0096】
【数11】
【0097】
上記式(11)中、「α1」は式(3)で算出されるケーブル保護パイプ101同士の開き角を示し、「R1」は式(9)で算出される第1側枠連結部材43が描く円弧の第1半径を示し、「R2」は式(10)で算出される第2側枠連結部材44が描く円弧の第2半径を示す。
【0098】
例えば、トンネルTNの曲線部TNCにおける曲率半径CRが「60m」であり、第1側枠連結部材43と第2側枠連結部材44との間の離間距離W2が「1.062m」であり、ケーブル保護パイプ101同士の開き角α1が「1.43°」である場合を想定する。この場合、上記式(9)に基づく第1側枠連結部材43が描く円弧の第1半径R1は「59.469m」となり、上記式(10)に基づく第2側枠連結部材44が描く円弧の第2半径R2は「60.531m」となる。更に、上記式(11)に基づく第1側枠連結部材43及び第2側枠連結部材44の内外弧長差ALDは、「26.5mm」となる。
【0099】
第1側枠連結部材43の第1長さ調整部431による第1側枠部313同士の第1間隔CL1と、第2側枠連結部材44の第2長さ調整部441による第2側枠部314同士の第2間隔CL2とは、前記第1半径R1と前記第2半径R2との差に基づいて設定される。すなわち、第1側枠部313同士の第1間隔CL1と第2側枠部314同士の第2間隔CL2とは、第1側枠連結部材43と第2側枠連結部材44との内外弧長差ALDに応じて設定される。具体的には、第1側枠部313同士の第1間隔CL1は、下記式(12)に基づき算出することができ、第2側枠部314同士の第2間隔CL2は、下記式(13)に基づき算出することができる。
【0100】
【数12】
【0101】
【数13】
【0102】
上記式(12)及び式(13)中、「PL」はケーブル保護パイプ101の長さを示し、「ALD」は式(11)に基づく第1側枠連結部材43及び第2側枠連結部材44の内外弧長差を示す。
【0103】
例えば、上記式(11)に基づく第1側枠連結部材43及び第2側枠連結部材44の内外弧長差ALDが「26.5mm」であり、ケーブル保護パイプ101の長さPLが「1.5m=1500mm」である場合を想定する。この場合、第1側枠部313同士の第1間隔CL1は「1486.8mm」となり、第2側枠部314同士の第2間隔CL2は「1513.3mm」となる。そして、第1側枠連結部材43の第1長さ調整部431は、第1側枠部313同士の第1間隔CL1を「1487mm~1500mm」の範囲で調整可能とされる。また、第2側枠連結部材44の第2長さ調整部441は、第2側枠部314同士の第2間隔CL2を「1500mm~1513mm」の範囲で調整可能とされる。これにより、第1側枠部313及び第2側枠部314の各々において第1側枠連結部材43及び第2側枠連結部材44によって連結された各管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときに、当該管支持台車3が傾くことを防止することができる。このため、トンネルTNの曲線部TNCを通過するときの管支持台車3の姿勢が、直線部の通過時と同様の姿勢に維持されるので、管支持台車3の管支持部32上においてケーブル保護パイプ101がスムーズにスライド移動する。
【0104】
[配管工法について]
トンネルTN内にケーブル保護管100を配管する配管工法は、上記の配管装置1を用いて作業員によって実施される。図19は、配管装置1を用いたケーブル保護管100の配管工法を示すフローチャートである。配管工法は、レール敷設ステップS1と、台車・パイプ搬入ステップS2と、パイプ配置ステップS3と、連結ステップS4と、トンネル内への引入れ(走行)ステップS5と、コンクリート充填ステップS6と、を含む。
【0105】
レール敷設ステップS1では、作業員は、トンネルTN内に一対のレール2を敷設する。一対のレール2は、トンネルTNの内面TNSの頂部TNT及び底部TNBにそれぞれ当接して配置されるように、トンネル軸方向D1に沿って敷設される。このとき、作業員は、出発側の立坑VSから所定長ずつ掘削したトンネルTNの内面TNSに対して順次、第1レール部21が固設された板体211を密着させて固定する。作業員は、板体211の両端部間の間隔を間隔調整部材212によって調整することにより、トンネルTNの内面TNSに対して板体211を固定する。板体211のトンネル内面TNSへの固定作業においては、アンカーボルト等を打設する必要はない。トンネルTNの所定長ずつの掘削毎の板体211の固定作業が終了すると、作業員は、各板体211に固設された第1レール部21に対して第2レール部22を接続する作業を行う。これにより、トンネルTN内に一対のレール2が敷設される。
【0106】
台車・パイプ搬入ステップS2では、作業員は、出発側の立坑VS内に先導台車5及び複数の管支持台車3を搬入すると共に、ケーブル保護パイプ101及び充填パイプ111を搬入する。パイプ配置ステップS3では、作業員は、出発側の立坑VS内に搬入された複数の管支持台車3の管支持部32に複数本のケーブル保護パイプ101を多列多段に配置すると共に、充填管支持部33に充填パイプ111を配置する。このとき、作業員は、所定の長さPLを有するケーブル保護パイプ101を選定する。ケーブル保護パイプ101の長さPLは、上記式(3)に基づくケーブル保護パイプ101同士の開き角α1が許容開き角αPを超えず、且つ、上記式(6)に基づくケーブル保護パイプ101の内外弧長差MLTよりも長くなるように、設定される。
【0107】
連結ステップS4では、作業員は、複数の管支持台車3の各々の管支持部32に支持されたケーブル保護パイプ101同士を連結し、更に、充填管支持部33に支持された充填パイプ111同士を連結すると共に、管支持台車3同士を台車連結部4によって連結する連結作業を、順次実施する。このとき、作業員は、上記式(12)に基づく第1側枠部313同士の第1間隔CL1を第1側枠連結部材43の第1長さ調整部431により調整し、上記式(13)に基づく第2側枠部314同士の第2間隔CL2を第2側枠連結部材44の第2長さ調整部441により調整する。
【0108】
トンネル内への引入れ(走行)ステップS5では、作業員は、前記連結作業の実施毎に、複数の管支持台車3を、一対のレール2に沿ってトンネルTN内を順次走行させる。このとき、管支持台車3の走行を先導台車5に先導させるようにする。複数の管支持台車3を順次走行させることにより、ケーブル保護パイプ101が複数連結されてなるケーブル保護管100をトンネルTN内に配管することができると共に、充填パイプ111が連結された充填管110をトンネルTN内に導入することができる。なお、ケーブル保護パイプ101は管支持部32によってスライド移動可能に支持されている。このため、管支持台車3がトンネルTNの曲線部TNCを通過するときには、上記式(6)に基づくケーブル保護パイプ101の内外弧長差MLTは、ケーブル保護パイプ101のスライド移動によって吸収される。これにより、ケーブル保護パイプ101同士の接合部102における開き量を、可及的に小さくすることができる。
【0109】
台車・パイプ搬入ステップS2、パイプ配置ステップS3、連結ステップS4、及びトンネル内への引入れ(走行)ステップS5は、繰り返し実施される。その後、コンクリート充填ステップS6では、作業員は、充填管110内にコンクリートCCを流す。これにより、トンネルTN内へのケーブル保護パイプ101及び充填パイプ111の配管後、すなわち、ケーブル保護管100及び充填管110の配管後に、トンネルTNとケーブル保護管100との隙間にコンクリートCCを充填することができる。ここで、上記の如く、ケーブル保護パイプ101同士の接合部102における開き量が小さくされているので、ケーブル保護パイプ101同士の連結部分に段差が生じることが抑止されると共に、ケーブル保護パイプ101内へのコンクリートCCの侵入が防止される。
【符号の説明】
【0110】
1 配管装置
2 一対のレール
21 第1レール部
211 板体
212 間隔調整部材
22 第2レール部
3 管支持台車
31 台車本体
31S 収容空間
311 上枠部
312 下枠部
313 第1側枠部
314 第2側枠部
32 管支持部
33 充填管支持部
34 車輪
341 第1車輪
342 第2車輪
4 台車連結部
41 上枠連結部材
42 下枠連結部材
43 第1側枠連結部材
431 第1長さ調整部
44 第2側枠連結部材
441 第2長さ調整部
5 先導台車
51 第1先導台車
52 第2先導台車
53 先導連結部材
100 ケーブル保護管(管体)
101 ケーブル保護パイプ
102 ケーブル保護パイプの接合部
110 充填管
111 充填パイプ
112 充填パイプの接合部
TN トンネル
TNS 内面
TNT 頂部
TNB 底部
TNC 曲線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19