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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】映像記録装置及び映像記録方法
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20230614BHJP
   H04N 5/77 20060101ALI20230614BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20230614BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
H04N5/77
G08G1/00 D
B60R11/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019058237
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020160690
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(72)【発明者】
【氏名】春名 淳子
【審査官】平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-191207(JP,A)
【文献】特開2018-112892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 1/00 - 15/00
G08G 1/00 - 99/00
H04N 5/76 - 5/775,
5/80 - 5/907
B60R 9/00 - 11/06
G08B 19/00 - 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置されたカメラによって撮影された車両周辺映像に保護期間を設定し記憶する映像記録装置であって、マイクロコンピュータを備え、
前記マイクロコンピュータは、
前記車両で発生した第1イベントに基づいて第1保護期間を設定し、
前記車両への煽り運転である第2イベントに基づいて第2保護期間を設定するとともに、
前記第1保護期間または前記第2保護期間の終了後、所定のしきい時間よりも短い時間に前記第1イベントを検出した場合、当該第1イベントに対応する保護期間の開始時刻を、前記第1保護期間または前記第2保護期間の終了時刻に補正し前記当該第1イベントに対応する前記第1保護期間を延長する映像記録装置。
【請求項2】
車両に設置されたカメラによって撮影された車両周辺映像に保護期間を設し記憶する映像記録装置であって、マイクロコンピュータを備え、
前記マイクロコンピュータは、
前記車両への煽り運転である第2イベントに基づいて第2保護期間を設定し、
前記第2保護期間の終了後、所定のしきい時間よりも短い時間に前記第2イベントを検出した場合、当該第2イベントに対応する保護期間の開始時刻を、前記第2保護期間の終了時刻に補正し前記当該第2イベントに対応する前記第2保護期間を延長する映像記録装置。
【請求項3】
前記車両に設置されたマイクによって取得された音声データに保護期間を設定し記憶する音声記録装置をさらに備え、
前記マイクロコンピュータは、前記音声データのうち、前記第2保護期間において取得された音声データを保護する、
請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記カメラは複数のカメラからなり、前記マイクロコンピュータは、前記複数のカメラで撮影され、記第2保護期間において取得された映像を保護する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
車両に設置されたカメラによって撮影された車両周辺映像に保護期間を設定し記憶する映像記録方法であって、
マイクロコンピュータが、
前記車両で発生した第1イベントに基づいて第1保護期間を設定し、前記車両への煽り運転である第2イベントに基づいて第2保護期間を設定するとともに、
前記第1保護期間または前記第2保護期間の終了後、所定のしきい時間よりも短い時間に第1イベントを検出した場合、当該第1イベントに対応する保護期間の開始時刻を、前記第1保護期間または前記第2保護期間の終了時刻に補正し前記当該第1イベントに対応する前記第1保護期間を延長する映像記録方法。
【請求項6】
車両に設置されたカメラによって撮影された車両周辺映像に保護期間を設定し記憶する映像記録方法であって、
マイクロコンピュータが、
前記車両への煽り運転である第2イベントに基づいて第2保護期間を設定し、
前記第2保護期間の終了後、所定のしきい時間よりも短い時間に第2イベントを検出した場合、当該第2イベントに対応する保護期間の開始時刻を、前記第2保護期間の終了時刻に補正し前記当該第2イベントに対応する前記第2保護期間を延長する映像記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像記録装置及び映像記録方法に関する。
【0002】
走行中の車両は、他車両から極端に車間距離を詰められることがある。このような他車両の行為は、煽り運転と呼ばれる危険度の高い行為の一つである。特許文献1は、他車両から煽り運転を受けた場合、煽り運転を行った他車両の映像を記録するドライブレコーダを開示している。
【0003】
しかしながら、煽り運転が行われた状況を事後的に特定できるように車両周辺映像を記録するには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-112892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、煽り運転が行われた状況を事後的に特定できる映像記録装置及び映像記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による映像記録装置は、車両に設置されたカメラによって撮影された車両周辺映像に保護期間を設定し記憶する映像記録装置であって、マイクロコンピュータを備え、前記マイクロコンピュータは、前記車両で発生した第1イベントに基づいて第1保護期間を設定し、前記車両への煽り運転である第2イベントに基づいて第2保護期間を設定するとともに、前記第1保護期間または前記第2保護期間の終了後に続いて前記第1イベントを検出した場合、当該第1イベントに対応する保護期間の開始時刻を、前記第1保護期間または前記第2保護期間の終了時刻に補正し前記当該第1イベントに対応する前記第1保護期間を延長して記憶する
【発明の効果】
【0007】
本発明は、煽り運転を行った車両の状況を事後的に特定できる映像を記録できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1による映像記録装置を搭載した車両の概略図である。
図2】本発明の実施の形態1による映像記録装置の構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1による映像記録装置の動作の概要を示すフローチャートである。
図4】煽り検出部の動作を説明するためのフローチャートである。
図5】煽り検出時の自車両と他車両との位置関係を示す図である。
図6】時刻T1において他車両を撮影した映像の一例である。
図7】時刻T2において他車両を撮影した映像の一例である。
図8】保護期間設定部の動作の一例を説明する図である。
図9】本発明の第2の実施の形態による映像記録装置の構成を示す機能ブロック図である。
図10A】間隔取得部および時刻補正部の1つの動作を説明する図である。
図10B】間隔取得部および時刻補正部の1つの動作を説明する図である。
図10C】間隔取得部および時刻補正部の1つの動作を説明する図である。
図11】本発明の第3の実施の形態による映像記録装置の構成を示す機能ブロック図である。
図12A】煽り運転と検知されない場合の相対距離Dおよび相対速度Vの時間変化の一例である。
図12B】高い煽り強度が検出される場合の相対距離Dおよび相対速度Vの時間変化の一例である。
図12C】高い煽り強度が検出される場合の相対距離Dおよび相対速度Vの時間変化の一例である。
図13A】第2保護期間の補正の一例である。
図13B】第2保護期間の補正の一例である。
図13C】第2保護期間の補正の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。また、これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【0010】
図1に、本発明の実施形態に係る映像記録装置を搭載した映像記録システム100を示す。図1に示すように、映像記録システム100は、自車両1に搭載される。映像記録システム100は、カメラ10、映像記録装置20、センサ部30、操作部40および通信バス50を備える。なお、説明のために映像記録システム100の各構成要素は実線を用いて記載しているが、実際は自車両1の内部に配置される。
【0011】
以降の説明では、自車両1に対する方向について、図1の記載と合わせ、次のように定義する。車両の「前方」とは、自車両1の直進方向である。自車両1の「後方」とは、「前方」の逆方向である。つまり、以下の説明で用いる方向については、運転席に座っている人間がフロントガラス越しに進行方向を向いている場合に、一般的に用いられる前方後方に対応する。
【0012】
カメラ10は、自車両1の所定の位置に設置され、自車両1の周辺の映像が撮影された車両周辺映像を生成する。カメラ10は、例えば撮像素子とレンズを有するデジタルビデオカメラである。カメラ10は、1台のカメラで自車両1の周辺を広く撮影するために、画角が広い広角レンズを有する。
【0013】
図1において、カメラ10aは、自車両1の前方に設置され、自車両1の前方を主に撮影するフロントカメラである。カメラ10bは、自車両1の後方に設置され、自車両1の後方を主に撮影するリアカメラである。自車両1は、1台のカメラ10、または3台以上のカメラ10を搭載してもよい。
【0014】
カメラ10は、通信バス50を介して映像記録装置20に接続される。カメラ10は、生成した車両周辺映像を映像記録装置20に出力する。
【0015】
映像記録装置20は、カメラ10によって生成された車両周辺映像を、記録ならびに保護する。詳細は後述する。
【0016】
センサ部30は、自車両1の種々の状態を検出する。センサ部30は、例えば加速度センサを有する。センサ部30は、通信バス50を介して映像記録装置20に接続される。センサ部30は、加速度センサなどで自車両1の種々の状態を検出し、検出した状態に対応するセンサ信号を、映像記録装置20に出力する。
【0017】
操作部40は、自車両1に搭載され、映像記録装置20へのユーザの操作を受け付ける。操作部40は、例えばタッチパネルや押しボタンスイッチなどを有する。操作部40は、通信バス50を介して映像記録装置20に接続される。操作部40は、ユーザによる操作を受け付け、受け付けた操作に対応する操作信号を、映像記録装置20に出力する。
【0018】
通信バス50は、センサ部30や操作部40などの機能ブロックと、映像記録装置20とを有線で接続する。通信バス50は例えば、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などを用いる。映像記録装置20と、センサ部30と、操作部40とが、互いに比較的近距離に配置される場合は、通信バスには例えば、I2C(Inter-Integrated Circuit)やSPI(Serial Peripheral Interface)などを用いてもよい。映像記録装置20と、センサ部30と、操作部40とは、WiFi(Wireless Fidelity)やBluetooth(登録商標)などによる無線通信をしてもよい。
【0019】
なお、映像記録装置20と、センサ部30と、操作部40とを一体の装置として構成してもよい。カメラ10は、一体の装置とは別に自車両1に取り付けられ、有線もしくは無線で一体の装置と接続する。このような構成としてもよい。
【0020】
<1.1.映像記録装置の構成>
次に、図2を用いて実施の形態1に係る映像記録装置20の構成を説明する。図2は、映像記録装置20の機能ブロック図である。映像記録装置20は、イベント検出部210、取得部220、記録部230、煽り検出部240、保護期間設定部250、保護部260および記憶部270を備える。
【0021】
映像記録装置20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read On ly Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート等を含むマイクロコンピュータである。
【0022】
マイクロコンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、映像記録装置20が備える各機能ブロック実行する。なお、各機能ブロックの少なくともいずれか一つまたは全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0023】
イベント検出部210は、車両に対する第1イベントを検出する。第1イベントの詳細については後述する。イベント検出部210は、通信バス50を介してセンサ部30および操作部40と接続される。イベント検出部210は、第1イベントを検出したことを保護期間設定部250に通知する。
【0024】
取得部220は、カメラ10によって生成された車両周辺映像をカメラ10から取得し、その取得した車両周辺映像を煽り検出部240、および記録部230に出力する。カメラがアナログの場合、取得部220は図示しないADコンバータ(Analog to Digital converter)を有してもよい。ADコンバータは、アナログ信号をデジタル変換することにより車両周辺映像を取得する。車両周辺映像は、複数の映像フレームを含む動画像である。つまり、取得部220は、所定のフレームレートで映像フレームを取得し、取得した映像フレームを煽り検出部240、および記録部230に出力する。フレームレートは、例えば、1/60秒である。
【0025】
記録部230は、取得部220で取得された車両周辺映像を記録する。記録部230は、車両周辺映像を符号化し、記憶部270に記録する。具体的には、記録部230は、車両周辺映像に対し、MPEG(Moving Picture Expert Group)などの映像圧縮手法を用いた符号化を行う。
【0026】
煽り検出部240は、取得部220で取得された車両周辺映像に基づいて、車両が受ける煽り運転を第2イベントとして検出する。煽り検出部240は、検出した第2イベントを検出したことを保護期間設定部250に通知する。
【0027】
保護期間設定部250は、記録部230が記録した車両周辺映像のうち、保護すべき車両周辺映像を特定する保護期間を設定する。具体的には、保護期間設定部250は、イベント検出部210が第1イベントを検出した場合、第1イベントの検出時刻に基づいて第1保護期間を設定する。また、保護期間設定部250は、煽り検出部240が第2イベントを検出した場合、第2イベントの検出時刻に基づいて第1保護期間よりも長い第2保護期間を設定する。保護期間設定部250は、設定した保護期間を保護部260に出力する。
【0028】
保護部260は、保護期間設定部250が設定した第1保護期間及び第2保護期間に基づいて記録部270に記録された車両周辺映像を保護する。具体的には、保護部260は、保護期間設定部250が設定した第1保護期間及び第2保護期間の各々においてカメラ10により生成された車両周辺映像を保護する。保護部260は、車両周辺映像の保護に関する保護情報を映像保護情報として、記憶部270に記録する。保護情報は、保護期間設定部250により設定された第1保護期間および第2保護期間を含む。
【0029】
記憶部270は、不揮発性記憶装置であり、記録部230によって記録される車両周辺映像、および保護部260によって記録される映像保護情報を記憶する。記憶部270は、車両周辺映像を記録するリングバッファである映像記録領域271と、映像保護情報を記録する管理領域272と、を含む。記憶部270は、例えばフラッシュメモリやSDカード(Secure Digital Card)などの半導体記憶デバイスや、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶デバイスで構成される。
【0030】
<1.2.映像記録装置の動作>
図3を用いて映像記録装置20の動作の概要を説明する。図3は映像記録装置20の映像記録処理の概要を示すフローチャートである。
【0031】
映像記録装置20は、自車両1のイグニション信号がONである期間において、本フローチャートを所定の周期で繰り返し実行する。映像記録装置20は、ユーザの操作により映像記録装置20の電源スイッチがオンされている期間において、本フローチャートを所定の周期で繰り返し実行してもよい。所定の周期は、例えばカメラ10により生成される車両周辺映像のフレームレートと等しい1/60秒周期などである。
【0032】
映像記録装置20は、自車両1のイグニション信号がOFFとなった場合、本フローチャートの処理を停止する。映像記録装置20は、ユーザの操作により映像記録装置20の電源スイッチがオフされた場合に、本フローチャートの処理を停止してもよい。
【0033】
映像記録装置20は、取得部210が取得した車両周辺映像を記憶部270の映像記憶領域271に記録する(ステップS101)。映像記憶領域271は、リングバッファである。映像記憶領域271は、上書き可能領域と保護領域とを含み、映像記録装置20は、車両周辺映像を上書き可能領域に記録する。上書き可能領域の全領域が使用されている場合、映像記録装置20は、上書き可能領域において最も過去に記録された車両周辺映像に、新たに取得した車両周辺映像を上書きする。
【0034】
映像記録装置20は、第1イベントおよび第2イベントの少なくとも一方のイベントが検出されたか否かを判定する(ステップS102)。
【0035】
具体的には、イベント検出部210は、所定の閾値よりも大きい加速度を示すセンサ信号をセンサ部30から受けた場合、第1イベントを検出したと判断する。所定の閾値は、自車両1の運転者が急ブレーキをかけたか否かを判断するために用いられる。また、イベント検出部210は、所定の操作を示す操作信号を操作部40から受けた場合、第1イベントを検出したと判断する。
【0036】
煽り検出部240は、煽り運転を検出した場合、第2イベントを検出したと判断する。
【0037】
第1イベントおよび第2イベントの両者が検出されなかった場合(ステップS102:No)、映像記録装置20は処理を終了する。
【0038】
一方、第1イベントおよび第2イベントの少なくとも一方が検出された場合(ステップS102:Yes)、映像記録装置20は、検出したイベントが第1イベントであるか否かを判定する(ステップS103)。
【0039】
検出したイベントが第1イベントである場合(ステップS103:Yes)、映像記録装置20は、保護期間として第1保護期間を設定する(ステップS104a)。
【0040】
検出したイベントが第2イベントの場合(ステップS103:No)、映像記録装置20は、保護期間として第2保護期間を設定する(ステップS104b)。なお、第2保護期間の長さは、第1保護期間の長さよりも長い。
【0041】
保護期間を設定すると(ステップS104aおよびステップS104bの後)、映像記録装置20は、設定した保護期間に基づき、車両周辺映像を保護する(ステップS105)。映像記録装置20は、映像記録領域271において、設定された保護期間に生成された車両周辺映像が記録されている上書き可能領域を、新たに保護領域に変更する。詳細については後述する。
【0042】
上記のように、映像記録装置20は、車両が煽り運転を受けた場合に、第2保護期間に生成された車両周辺映像の保護を行う。また、急ブレーキなどの場合に保護する第1保護期間よりも、煽り運転を受けた場合の第2保護期間の長さを長く設定する。
【0043】
これにより、映像記録装置20は、煽り運転を行った車両の状況を事後的に特定できる映像を記録できる。
【0044】
イベント検出部210による第1イベントの検出について詳しく説明する。上述のように、第1イベント、センサ部30から受けるセンサ信号、及び操作部40から受けるユーザの操作に対応する操作信号に基づいて検出される。
【0045】
イベント検出部210は、加速度が所定のしきい値を超えるセンサ信号を受けた場合、第1イベントを検出したと判断する。所定のしきい値は、自車両1の前後方向、左右方向及び上下方向ごとに設定される。例えば、前後方向の閾値は、急ブレーキ及び急加速を検出するために用いられる。左右方向の閾値は、自車両1の急旋回を検出するために用いられる。上下方向の閾値は、自車両1の横転、転覆等を検出するために用いられる。イベント検出部210は、これら3方向の閾値のうち少なくとも1方向の閾値を用いればよい。
【0046】
イベント検出部210は、映像記録装置20に対する所定の操作信号を操作部40から受けた場合、第1イベントを検出する。具体的には、イベント検出部210は、映像保護を指示するボタンの押下を示す操作信号を受けた場合、第1イベントを検出されたと判断する。
【0047】
イベント検出部210は、第1イベントを検出したか否かを保護期間設定部250に出力する。
【0048】
次に、映像記録領域271に設定される上書き可能領域と保護領域とを説明する。記録部230は、符号化した車両周辺映像を記憶部270の映像記録領域271の上書き可能領域に記録する。映像記録領域271は、上書き可能領域と、保護領域とを含む。記録しようとする領域がいずれに該当するかは、管理領域272に記録された映像保護情報を参照することで識別する。
【0049】
まず記録部230は、映像記録領域271のうち、未記録の領域に対して車両周辺映像を記録していく。なお、未記録の領域は上書き可能領域である。
【0050】
次に、映像記録領域271に未記録の領域がなくなった場合を考える。映像記録領域271は、リングバッファとして用いられる。したがって、映像記録領域271の全ての領域が使用された場合、記録部230は、上書き可能領域のうち、記録時刻の最も古い車両周辺映像が記録されている領域に、今回生成した車両周辺映像を上書きして記録する。
【0051】
記録部230は、映像記録領域271のうち、映像保護情報によって指定された保護領域を上書きしない。記録部230は、保護領域とは別の上書き可能領域に今回生成した車両周辺映像を上書きする。
【0052】
これにより、保護領域に記録されている車両周辺映像は記録部230によって上書きされることが無く、保護される。
【0053】
次に、煽り検出部240による第2イベントの検出について詳しく説明する。煽り検出部240の動作を、図4を用いて説明する。図4は、煽り検出部240の動作を示すフローチャートである。
【0054】
まず煽り検出部240は、取得部220から車両周辺映像を取得する(ステップS201)。
【0055】
次に、煽り検出部240は、取得した車両周辺映像から、煽り運転を行っているか否かを検出する対象車両を検出する(ステップS202)。対象車両は、自車両に後続して走行している他車両である。煽り検出部240は、パターンマッチングを用いて対象車両を検出する。なお、パターンマッチング以外の公知の手法を用いてもよい。また対象車両そのものの検出ではなく、対象車両に対応する映像の検出でもよい。例えば、後続する路面に落ちる対象車両の影を検出してもよい。
【0056】
煽り検出部240は、対象車両と自車両との車間距離Dに基づいて、対象車両が煽り運転を行っているか否かを判定する(ステップS203)。具体的には、対象車両と自車両との車間距離が近い場合、煽り検出部240は、対象車両が煽り運転を行っていると判定する。車間距離が近いか否かは、車間距離が所定のしきい距離Dthより小さいか否かによって判定する。
【0057】
図5を用いて、煽り運転の検出について詳細説明する。図5は、時刻T1およびT2における自車両1と、対象車両2との位置関係を示す図である。
【0058】
時刻T1において、自車両1と対象車両2との車間距離Dは、距離D1である。なお、車間距離とは、図に示すように、車両(この場合自車両1)の後端と、後続する車両(この場合対象車両2)の先端との間の距離である。時刻T1では、距離D1がしきい距離Dthより長いため、煽り検出部240は、時刻T1において対象車両2は煽り運転を行っていないと判定する。
【0059】
一方、時刻T2では、自車両1と対象車両2との車間距離は、距離D1より短い距離D2である。時刻T2では、距離D2がしきい距離Dthよりも短いため、煽り検出部240は、時刻T2において、対象車両2は煽り運転を行っていると判定する。
【0060】
つまり、図5に示すように、自車両1の後方において、自車両1の後端面よりも後方であり、かつ、しきい距離Dthよりも自車両1に近い領域を対象車両2が走行する場合に、煽り検出部240は、対象車両2が煽り運転を行っていると判定する。
【0061】
煽り検出部240は、実際には、車間距離Dを直接求めることなく、煽り運転を検出する。煽り検出部240は、車間距離Dがしきい距離Dthよりも小さくなる近接領域Apを、対象車両2が走行しているか否かを車両周辺映像に基づき判定し、煽り運転を行っているか否かを判定する。具体的には、煽り検出部240は、車両周辺映像において近接領域Apに相当する領域に対象車両が映っている場合、対象車両2が煽り運転を行っている判定する。
【0062】
図6、および図7を用いて車間距離の判定について説明する。図6は、時刻T1において、カメラ10aが生成した車両周辺映像PIC1である。図7は、時刻T2に生成された車両周辺映像PIC2である。いずれの時刻における車両周辺映像PIC1,PIC2にも、自車両1と、対象車両2とが映っている。
【0063】
煽り検出部240は、車両周辺映像上における距離基準線Lthおよび煽り検出領域Athを設定する。距離基準線Lthは、車両周辺映像におけるしきい距離Dthに相当する。また、煽り検出領域Athは、車両周辺映像において近接領域Apに相当する領域である。距離基準線Lthは、しきい距離Dth、カメラの取付位置、取付方向およびカメラ光学系の歪みに基づき算出される。車両周辺映像PIC1,PIC2において、距離基準線Lthは、車両周辺映像において横方向に延び、かつ、車両周辺映像を上下に等分割する中央線よりも下に配置される。煽り検出領域Athは、車両周辺映像において距離基準線Lthより下側の領域として設定されている。
【0064】
煽り検出部240は、対象車両2が煽り検出領域Athに一部でも映っている場合、車両1と対象車両2との車間距離DがDthよりも小さくなったと判断し、対象車両2は煽り運転を行っていると判定する。
【0065】
時刻T1に生成された車両周辺映像PIC1(図6参照)において、対象車両2は、距離基準線Lthよりも上に位置し、煽り検出領域Athに対象車両2は映っていない。したがって、煽り検出部240は、車間距離Dはしきい距離Dthより小さいと判断し、対象車両2は煽り運転を行っていないと判定する。
【0066】
時刻T2に生成された車両周辺映像PIC2(図7参照)において、対象車両2の下端は、距離基準線Lthよりも下に位置し、煽り検出領域Athに対象車両2が映っている。したがって、煽り検出部240は、車間距離Dはしきい距離Dthより小さいと判断し、対象車両2は煽り運転を行っていると判定する。
【0067】
なお車両周辺映像PIC1,PIC2では距離基準線Lthを直線で図示したが、その限りではない。距離基準線Lthは光学系の歪みなどを反映して曲線としてもよい。
【0068】
また、距離基準線Lthで分割するのではなく、所定の領域として設定してもよい。例えば自車両1が走行する車線に限定して煽り検出領域Athを設定してもよい。これにより、隣接する車線の車両に対する誤検知を抑制できる。
【0069】
図4に戻り、対象車両と自車両との車間距離Dがしきい距離Dthよりも小さい場合(ステップS203:Yes)、煽り検出部240は、煽り検出状態を「検出」に設定する(ステップS204a)。車間距離Dがしきい距離Dth以上である場合(ステップS203:No)、煽り検出部240は、煽り検出状態を「未検出」に設定する(ステップS204b)。
【0070】
次に煽り検出状態が「未検出」から「検出」に変化したか否かを判定する(ステップS205)。煽り検出部240は、煽り検出状態が変化しなかったと判定した場合(ステップS205:No)、処理を終了する。煽り検出状態が「未検出」から「検出」に変化した場合(ステップS205:Yes)、煽り検出部240は、第2イベントを検出したと判定し(ステップS206)、処理を終了する。
【0071】
なお、上述のように、本実施の形態に係る煽り検出部240は、煽り検出状態が「検出」から「未検出」に変化した場合に第2イベントが検出されたと判定する。煽られる前の車両周辺映像を保護しておくことは、煽り運転の状態を事後的に特定するためが、有用であると考えられるためである。
【0072】
なお、煽り検出状態が「検出」から「未検出」に変化した場合にも第2イベントが検出されるようにしてもよい。例えば、記憶部270の空き容量に余裕がある場合などに、煽り検出部は、煽り検出状態の「検出」から「未検出」への変化を第2イベントして検出すればよい。
【0073】
次に、図8を参照しながら、車両周辺映像の保護に用いられる保護期間を詳しく説明する。図8は、第1イベントおよび第2イベントそれぞれに対する保護期間の設定を示す図である。
【0074】
イベント検出部210が第1イベントを検出した場合を考える。この場合、保護期間設定部250は、第1イベントの検出時刻T1rに基づいて、第1保護期間P1を設定する。第1保護期間P1は、開始時刻T1sから終了時刻T1eまでの期間であり、第1イベントの検出時刻T1rを含む。保護期間設定部250は、検出時刻T1rよりも所定時間遡った時刻を開始時刻T1sに設定し、第1イベントの検出時刻T1eよりも所定時間後の時刻を終了時刻T1eに設定する。開始時刻T1sの設定に用いられる所定時間と、終了時間T1eの設定に用いられる所定時間とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0075】
次に、煽り検出部240が第2イベントを検出した場合を考える。この場合、保護期間設定部250は、第2イベントの検出時刻T2rに基づいて第2保護期間P2を設定する。第2保護期間P2は、第1保護期間P1よりも長い。第2保護期間P2は、開始時刻T2sから終了時刻T2eまでの期間であり第2イベントの検出時刻T2rを含む。保護期間設定部250は、第2イベントの検出時刻T2rよりも所定時間遡った時刻を開始時刻T2sに設定し、検出時刻T2rよりも所定時間後の時刻を終了時刻T2eに設定する。開始時刻T2sの設定に用いられる所定時間と、終了時間T2eの設定に用いられる所定時間とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
この時、第2保護期間P2における開始時刻T2sから検出時刻T2rまでの時間は、第1保護期間P1における開始時刻T1sから検出時刻T1rまでの時間よりも長い。これにより、煽り運転が検出される前の状況を事後的に特定することが可能となる。
【0077】
急ブレーキや、急旋回等の発生を示す第1イベントを記録する場合、第1イベントを含む期間は、数十秒程度に設定されることが多い。
【0078】
一方、煽り運転の状態を事後的に特定するためには、煽り運転と判定したタイミングより過去の映像を数分程度の単位で長時間保護することが好ましい。煽り運転を行う対象車両が、煽り運転の前にどのような挙動を取っていたか確認できるためである。
【0079】
保護部260は、記憶部270に記録された車両周辺映像のうち、保護期間設定部250が設定した保護期間においてカメラ10により生成された映像を保護する。具体的には、保護部260は、保護期間設定部250が設定した保護期間に基づいて、保護すべき車両周辺映像が記録された領域を示すアドレス範囲を特定し、特定したアドレス範囲を含む映像保護情報を記憶部270に記憶する。
【0080】
具体的には、アドレス範囲は、保護開始アドレスと、保護終了アドレスとを少なくとも含む。映像記録領域271において、保護開始アドレスから保護終了アドレスまでの領域は保護領域として識別される。保護部260は、映像記録領域271を参照し、保護期間においてカメラ10が生成した車両周辺映像が記録された映像記録領域271の領域を取得する。保護部260は、当該領域の開始アドレスおよび終了アドレスに基づき、映像保護情報を生成する。保護部260は、生成した映像保護情報を記憶部270の管理領域272に記録し、管理領域272の映像保護情報を更新する。これにより、今回保護期間設定部250において保護領域として設定された車両周辺映像を記録した映像記録領域271の領域が、上書き可能領域から新たに保護領域に変更され、上書き可能領域から除外される。
【0081】
<1.3.映像記録装置の効果>
次に、実施の形態1に係る映像記録装置の効果について説明する。
【0082】
実施の形態1に係る映像記録装置20は、車両で発生する第1イベントを検出し、撮影された車両周辺映像に基づいて、車両が受ける煽り運転を第2イベントとして検出する。
【0083】
映像記録装置20は、第1のイベントを検出した場合、前記第1イベントの検出時刻に基づいて第1保護期間を設定し、前記第2イベントを検出した場合、前記第2イベントの検出時刻に基づいて前記第1保護期間よりも長い第2保護期間を設定する。
【0084】
映像記録装置20は、保護時間設定部により設定された第1保護期間及び第2保護期間の各々において生成された映像を保護する。
【0085】
これにより、映像記録装置20は、煽り運転を行った車両の状況を事後的に特定できる映像を記録できる。また、イベント種別に応じた適切な保護期間を設定することができ、映像記録装置20は、記憶部270を効率的に使用することができる。
【0086】
また、映像記録装置20は、第2保護期間の開始時刻から第2イベントの検出時刻までの時間を、第1保護期間の開始時刻から第1イベントの検出時刻までの時間よりも長く設定する。
【0087】
これにより、映像記録装置20は、煽り運転と検出される前の車両の状態を長時間保護することができ、煽り運転を行った車両の状況を事後的により特定しやすい映像を記録することができる。
【0088】
<変形例>
実施の形態1に関する変形例について説明する。
【0089】
記録部は、車両周辺映像が所定のサイズのファイルごとに分割して記録してもよい。例えば、記録部は、1つのファイルあたりの記録時間が20分となるように、車両周辺映像を分割して記録できる。この場合、保護部260は、保護期間を含むすべてのファイルの上書きを禁止すればよい。
【0090】
例えば、保護期間が1分、ファイルの分割サイズが20分ごとであると仮定する。この仮定において、保護期間が1つのファイルにすべて含まれる場合は、保護部は、保護期間を含む1つのファイルの上書きを禁止する。保護部は、保護期間を含む2つのファイルの上書を禁止する。
【0091】
[実施の形態2]
<2.1.映像記録装置の構成>
次に、図9を用いて、本発明の実施の形態2に係る映像記録装置20の構成を説明する。なお、実施の形態1と重複する構成については説明を省略する。図9は、映像記録装置20の機能ブロック図である。実施の形態2に係る映像記録装置20は、間隔取得部310と、時刻補正部320とをさらに備える。
【0092】
実施の形態2に係る記録部230は、煽り検出部240から煽り検出状態を取得し、取得した煽り検出状態を、車両周辺映像と共に記憶部270に記録する。
【0093】
実施の形態2に係る保護期間設定部250は、設定した保護期間を間隔取得部310に出力する。
【0094】
間隔取得部310は、前回のイベント発生時に設定した保護期間と、今回のイベント発生時刻との時間間隔を取得する。取得する時間間隔の詳細については後述する。間隔取得部310は、取得した時間間隔と、今回のイベントに基づいて設定された保護期間とを、時刻補正部320に出力する。
【0095】
時刻補正部320は、間隔取得部310が取得した時間間隔に基づき、今回のイベントに基づいて設定された保護期間の開始時刻を補正する。時刻補正部320は、補正した保護期間を保護部260に出力する。
【0096】
<2.2.映像記録装置の動作ならびに効果>
次に、図10A図10Cを用いて間隔取得部310および、時刻補正部320の動作について説明する。
【0097】
(補正パターン1)
補正パターン1では、間隔取得部310は、一の保護期間を設定した後に第1イベントが検出された場合、一の保護期間の終了時刻から前記第1イベントの検出時刻までの時間間隔を取得する。
【0098】
図10Aを用いて具体的に説明する。図10Aは、近い時間に検出した2回のイベントにより、保護期間が補正される例である。
【0099】
映像記録装置20は、前回イベントを検出した時に一の保護期間として所定の保護期間を設定する(前回イベント時の保護期間)。補正パターン1では、前回イベントは、第1イベント、第2イベントのいずれでも構わない。前回イベント時の保護期間は時刻Teで終了する。
【0100】
その後、イベント検出部210は、時刻T1rで第1イベントを検出する。この時、保護期間設定部250は、第1保護期間P1を設定する。第1保護期間P1は、開始時刻T1sから終了時刻T1eまでの期間であり、第1イベントの検出時刻T1rを含む。ここまでの動作は実施の形態1と同様である。
【0101】
間隔取得部310は、記憶部270を参照し、前回イベント時の保護期間の終了時刻Teを取得する。次に間隔取得部310は、終了時刻Teと、今回の第1イベント検出時刻T1rに基づき、時間間隔ΔTを取得する。具体的には、ΔT=T1r-Teである。
【0102】
次に、時刻補正部320は、間隔取得部により取得された時間間隔ΔTが所定の第1しきい時間よりTth1も短い場合、保護時間設定部250により設定された第1保護期間の開始時刻を前記イベント時の保護期間の終了時刻Teに補正する。
【0103】
具体的には、時刻補正部320は、時間間隔ΔTが第1しきい時間Tth1よりも小さい場合、第1保護期間の開始時刻T1sを前回イベント時の保護期間の終了時刻Teに一致させる。
【0104】
補正パターン1では、第1イベントの検出が短時間で繰り返される場合に、車両周辺映像がとびとびにならずに連続した形で保護することができる。したがって、イベント発生時の状況を事後的に特定しやすくなる。
【0105】
(補正パターン2)
補正パターン2では、間隔取得部310は、煽り運転の検出状態から煽り運転の未検出状態へ移行した2つの移行時刻の時間間隔を煽り検出間隔として取得する。
【0106】
図10Bを用いて具体的に説明する。図10Bは、第2イベントが連続して検出されることにより保護期間が補正される例である。映像記録装置20は、前回第2イベントを検出した時に、第2保護期間を設定している(前回第2イベント時の保護期間)。なお、実施形態2に係る記録部230は、煽り検出状態を時刻と紐づけて記憶部270に記録する。前回第2イベント時の保護期間は時刻Teで終了する。前回第2イベント検出よりも後の移行時刻TeAにおいて、煽り検出状態が「検出」状態から「未検出」状態に移行する。
【0107】
その後、煽り検出部240は、時刻T2rで第2イベントを検出する。この時、保護期間設定部250は、検出時刻T2rを含む開始時刻T2sから終了時刻T2eまでの第2保護期間を保護期間として設定する。
【0108】
間隔取得部310は、記憶部270を参照し、移行時刻TeAを取得する。次に間隔取得部310は、移行時刻TeAと,今回の第2イベント検出時刻T2rに基づき、時間間隔ΔTを取得する。具体的には、ΔT=T2r-TeAである。
【0109】
次に、時刻補正部320は、時間間隔ΔTが第2しきい時間Tth2よりも小さい場合、第2保護期間の開始時刻T2sがTeとなるように補正する。なお、第2しきい時間Tth2は、第1しきい時間Tth1よりも長い。
【0110】
これにより、補正パターン2では、映像記録装置20は、第2イベントの検出が短時間で繰り返される場合に、車両周辺映像をとびとびにならないように連続して保護することができる。また、第1イベントの場合と比べ、煽り運転の場合は、煽りが繰り返す時間間隔が長くなることが多い。そのため第2しきい時間を第1しきい時間より長くすることで、煽り運転の状況を事後的に特定しやすい映像を記録することができる。
【0111】
(補正パターン3)
図10Cは、第2イベントを検出した際の時刻補正について説明する図である。なお、間隔取得部310の動作は補正パターン2と同様のため説明を省略する。
【0112】
時刻補正部320は、時間間隔ΔTが第2しきい時間Tth2よりも小さい場合、第2保護期間の開始時刻T2sが移行時刻TeAになるように補正する。なお、移行時刻TeAが前回保護期間終了時刻Te以前の場合は、時刻補正部320は、開始時刻T2sが終了時刻Teになるように補正する。
【0113】
補正パターン3では、補正パターン2とは異なり煽り「検出」状態となっている期間のうち、一部の期間の車両周辺映像が保護されない。これは、煽り「検出」状態であることが分かっていれば、映像が無くても連続して煽り運転を受けていたと推定することができるからである。自車両1が、長時間継続して煽り運転を受けていた場合、補正パターン2に基づいて補正された保護期間が長くなる恐れがある。補正パターン3は、煽り運転を行った車両の状況を事後的に特定できる映像を記録しつつ、さらに記憶部270を効率的に使用することができる。
【0114】
なお、図では移行時刻TeAが終了時刻Teより遅い時刻となっているが、逆の場合もありうる。この場合、時刻補正部320は、開始時刻T2sが終了時刻Teに一致するように開始時刻T2sを補正する。
【0115】
[実施の形態3]
<3.1.映像記録装置の構成>
次に、図11を用いて、本発明の実施の形態3に係る映像記録装置20の構成を説明する。なお、実施の形態1と重複する構成については説明を省略する。図13は、映像記録装置20の機能ブロック図である。実施の形態3に係る映像記録装置20は、煽り強度検出部410をさらに備える。
【0116】
実施の形態3に係る取得部は、取得した車両周辺映像をさらに煽り強度算出部410に出力する。
【0117】
煽り強度算出部410は、車両周辺映像に基づき、車両に対する煽り強度を算出する。煽り強度とは、煽り運転の悪質さの指標である。具体的には、煽り強度算出部410は、車両周辺画像に写る対象車両の距離、および速度の少なくとも一つの時間変化量に基づき、煽り強度を算出する。煽り強度算出部410は、算出した煽り強度を保護期間設定部250に出力する。
【0118】
実施の形態3に係る保護期間設定部250は、煽り強度検出部410が算出した煽り強度に基づき、保護期間に対する補正を行う。具体的には、保護期間設定部250は、煽り強度検出部410が算出した煽り強度が大きいほど、保護期間が長くなるように保護期間を補正する。保護期間設定部250は、補正した保護期間を保護部260に出力する。
【0119】
<3.2.映像記録装置の動作>
煽り強度算出部410は、車両周辺映像に基づき、車両に対する煽り強度を算出する。具体的には、煽り強度検出部410は、取得部220が取得した車両周辺映像に基づき、まず煽り強度を算出する対象車両を検出する。対象車両の検出は、煽り検出部240と同様にパターンマッチングなどを用いて検出する。
【0120】
次に煽り強度検出部410は、対象車両の距離と速度を検出する。具体的には、煽り強度検出部410は、自車両と対象車両との車間距離と、自車両を基準とする対象車両の相対速度とを検出する。
【0121】
車間距離は、車両周辺映像において、対象車両の先端から路面に下した垂線の足を検出する。具体的には、対象車両のバンパ下端が映像上に映っている位置から算出する。
【0122】
相対速度は、上記で求めた車間距離の時間変化と、自車両の速度の時間変化に基づき算出する。具体的には、煽り強度検出部410は、前回煽り強度検出処理時の自車速度と、今回処理時の自車速度と、前回と今回の処理間隔時間に基づき、自車の移動量を算出する。次に煽り強度検出部410は、前回処理時と今回処理時の車間距離から、対象車両の移動量を算出する。煽り強度算出部410は、自車の移動量と、対象車両の移動量と、処理間隔時間に基づき、自車両に対する対象車両の相対速度を算出する。
【0123】
次に、図12A図12Cを用いて煽り強度の算出について説明する。図12A図12Cは煽り強度を算出する際の車間距離および相対速度の一例である。
【0124】
図12Aは、煽り運転と検出されない場合の車間距離と相対速度の一例である。具体的には、対象車両は安全な車間距離を取って追走しているような状況である。このような状況では対象車両の車間距離および相対速度は時間に対してほぼ一定であり、時間変化が小さい。このような場合は、煽り強度をゼロと設定する。
【0125】
図12Bは、高い煽り強度が算出される場合の車間距離と相対速度の一例である。具体的には、対象車両は高い相対速度で車間距離を詰めた後、狭い車間距離で追走するような状況である。この場合、特に距離の時間変化が大きいため、高い煽り強度を算出する。
【0126】
また図12Bにおいて、点線で示すパターンよりも実線で示すパターンの方が距離の時間変化は大きい。実線のパターンの方が、点線のパターンより車間距離を短時間に詰めてきているとも言える。つまり、実線のパターンの方が点線のパターンよりも、より「煽る」意図が強い悪質な走行パターンであると考えられる。したがって、煽り強度算出部410は、距離の時間変化量が大きい実線のようなパターンの場合、距離の時間変化量が小さい点線のようなパターンよりも高い煽り強度を算出する。つまり、煽り強度算出部410は、距離の時間変化量が大きいほど、高い煽り強度を算出する。
【0127】
図12Cは、高い煽り強度が算出される場合の車間距離と相対速度の一例である。具体的には、対象車両は自車両に対して接近と離反を繰り返すような状況である。この場合、距離の時間変化もあるが、相対速度の時間変化が大きいため、高い煽り強度を算出する。
【0128】
また、図12Cにおいて、点線で示すパターンよりも実線で示すパターンの方が相対速度の時間変化は大きい。実線のパターンの方が、点線のパターンより短周期で接近と離反を繰り返しているとも言える。つまり、実線のパターンの方が点線のパターンよりも、より「煽る」意図が強い悪質な走行パターンであると考えられる。したがって煽り強度算出部410は、相対速度の時間変化量が大きい実線のようなパターンの場合、相対速度の時間変化量が小さい点線のようなパターンよりも高い煽り強度と算出する。つまり、煽り強度算出部410は、相対速度の時間変化量が大きいほど、高い煽り強度を算出する。
【0129】
実施の形態3に係る保護期間設定部250は、煽り強度検出部410が算出した煽り強度に基づき、保護期間を補正する。具体的には、保護期間設定部250は、煽り強度検出部410が算出した煽り強度が大きいほど、保護期間が長くなるように保護期間を補正する。
【0130】
第1の実施形態において、保護期間設定部250は、煽り検出部240が第2イベントを検出した場合、保護期間として第2保護期間を設定した。第1の実施形態では第2保護期間の長さはあらかじめ設定した所定の固定値を想定する。本実施の形態では、煽り強度算出部410が算出した煽り強度に基づき、保護期間設定部250は第2保護期間を補正する。
【0131】
(補正パターンA)
補正パターンAでは、保護期間設定部250が第2保護期間を設定する時に、併せて第2保護期間の補正を行う。図13Aを用いて具体的に説明する。まず、第1の実施形態と同様、煽り検出部240において第2イベントが検出された場合、保護期間設定部250は、第2保護期間P2を設定する。次に、保護期間設定部250は、第2保護期間の開始時刻T2sと、終了時刻T2eとを、煽り強度に基づき補正する。補正パターンAでは、煽り強度が高いほど、開始時刻T2sが早い時刻になるように補正する。例えば、第2イベント検出時刻において、煽り強度が所定のしきい値より大きい場合、先に設定された保護開始時刻T2sを、より過去の補正開始時刻T2s’に補正する。補正開始時刻T2s’は、所定の固定時間分、開始時刻T2sより過去の時刻とする。具体的には例えば2分前などである。また、煽り強度が高いほど、より過去の時刻となるように補正してもよい。つまり、煽り強度が高いほど、煽り検出時刻T2rより過去に行われた対象車両の状態をより長く保護するようにする。
【0132】
(補正パターンB)
補正パターンBでは、保護期間設定部250は、事後的に第2保護期間の補正を行う。
【0133】
例えば図12Cの実線で示す走行パターンを考える。図12Cでは、対象車両は、しきい距離Dthより近い車間距離において、高い煽り強度となる走行パターンで煽り運転を行っている。つまり、第2イベントが検出される時刻T2rにおいて、煽り強度はさほど高くないが、第2イベント検出後に、高い煽り強度を示すような場合もある。このような場合、第2イベント検出時刻T2rにおける煽り強度に基づいて補正する補正パターンAでは、高い煽り強度の走行パターンについては保護できない可能性がある。
【0134】
したがって、イベント検出が行われていないにもかかわらず高い煽り強度が算出された場合、保護期間設定部は、図13Bに示す補正パターンBのように、第2保護期間を補正する。図13Bを用いて具体的に説明する。保護期間設定部250はまず、第2イベントが検出された時に、補正パターンAによる補正も踏まえ、第2保護期間を設定する。その後、保護期間設定部250は、第2イベントが検出されていなくても、煽り検出状態が「検出」状態で継続している期間において当該第2保護期間を補正する。具体的には、第2イベント検出の後、今回処理時刻において煽り強度が高いほど、保護期間設定部250は、保護終了時刻T2eを遅い時刻になるように補正する。保護期間設定部250は、今回処理時刻において煽り強度がしきい強度より大きい場合、保護終了時刻T2eを、今回処理時刻より先のT2e’に補正する。つまり、煽り強度が高いほど、煽り検出時刻T2rより後に行われた対象車両の状態も長く保護するようにする。
【0135】
また、保護期間設定部250は、煽り強度が所定のしきい値より高い期間を追加して保護するようにしてもよい。この場合、図13Cに示すように、第2保護期間は、連続した1つの期間ではなく、複数の期間を含む構成とするとよい。
【0136】
<3.3.映像記録装置の効果>
実施の形態3に係る映像記録装置20は、撮影された車両周辺映像に基づき、前記車両に対する煽り強度を算出する煽り強度算出部410をさらに備える。保護時間設定部250は、算出された煽り強度に基づき第2保護時間を補正する。
【0137】
これにより、対象車両の煽り運転の状態に応じて保護する期間の長さを変えることができる。
【0138】
また、煽り強度算出部410は、対象車両の距離、および速度の少なくとも一つの時間変化量に基づき、煽り強度を算出する。
【0139】
これにより、煽り運転の悪質さを精度よく定量化して算出することができる。
【0140】
また、保護時間設定部250は、算出された煽り強度が大きいほど、前記第2保護時間が長くなるように補正する。
【0141】
これにより、事後的に強い煽り運転を受けていると判断される可能性が高い状況において、煽り運転の状態を撮影した映像を長時間保護することができる。
【0142】
<変形例>
映像記録装置20は、マイクに接続され、マイクによって取得された音声データを車両周辺映像とあわせて記録してもよい。またその場合、第2保護期間に生成された音声データを保護するとよい。
【0143】
煽り運転を受けている場合は、例えばクラクションなどの音声による煽りを受ける場合もある。したがって、音声も保護対象とすることが好ましい。一方で、車両に対するイベントで保護される第1保護期間においては、音声を残す必要性は低い場合が多い。したがって、第2保護期間の音声データを保護するようにすることで、記憶部270を効率的に使用することができる。
【0144】
また、上記の説明では、リアカメラによって生成された車両周辺映像を例に説明を行ってきたが、この限りではない。煽り検出部240および、煽り強度検出部410は、フロントカメラやサイドカメラの映像に基づいて処理を行ってもよい。
【0145】
例えばフロントカメラを用いて検出を行う場合、前方から車間距離を詰めてきて停止させようとする煽り運転なども検出することができる。
【0146】
またこの場合、どれか一つのカメラで第2イベントが検出された場合、他のすべてのカメラで生成された映像も保護すると好ましい。
【0147】
これにより、対象車両の以外の車両周辺全体の状態を記録することができる。これにより、煽り運転を行った車両の状況を事後的に特定することがより確度高くできる映像を記録することができる。
【0148】
また、煽り検出部240は車両周辺映像の画像認識によって煽り運転の検出を行ったが、この限りではない。レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、超音波ソナーなどの距離検出装置を用いて実際に測定した車間距離を用いてもよい。
【0149】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0150】
1 自車両
10 カメラ
20 映像記録システム
30 センサ部
40 操作部
50 通信バス
210 イベント検出部
220 取得部
230 記録部
240 煽り検出部
250 保護期間設定部
260 保護部
270 記憶部
100 映像記録システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C