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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】引き戸装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 17/00 20060101AFI20230614BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20230614BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
E05F17/00 A
E05D15/06 117
E06B3/46
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019130248
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021014731
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄治
(72)【発明者】
【氏名】野村 一平
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-104830(JP,A)
【文献】実開昭50-124126(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 17/00
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸体の上端縁部に設けた吊りローラが吊りレールを転動することで該戸体が左右方向に移動をして開口部の開閉を行うものであって、
上側に位置し、伝動機構に設けた左右方向に移動する伝動体と、下側に位置する戸体の上端縁部とを連結部材を介して一連状に連結することで、
前記戸体の左右方向の移動を、伝動体の左右方向の移動に連動して行うように構成してなる引き戸装置において、
戸体の上端縁部と連結部材の下端部とのあいだの連結は、キー溝部にキー部が嵌入するキー嵌合により位置決めされる連結であって、
伝動体は歯付きの伝動ベルトであり、連結部材と伝動ベルトとは、連結部材の上端部に伝動ベルトの歯が噛合することにより左右方向の位置決めがなされる固定であり、ローラブラケットと連結部材下端部とは、ローラブラケットまたは連結部材に設けられる長孔に固定部材が貫通することで固定されていることを特徴とする引き戸装置。
【請求項2】
戸体の上端縁部に設けた吊りローラが、吊りレールを転動することで該戸体が左右方向に移動をして開口部の開閉を行うものであって、
上側に位置し、伝動機構に設けた左右方向に移動する伝動体と、下側に位置する戸体の上端縁部とを連結部材を介して一連状に連結することで、
前記戸体の左右方向の移動を、伝動体の左右方向の移動に連動して行うように構成してなる引き戸装置において、
戸体の上端縁部と連結部材の下端部とのあいだの連結は、キー溝部にキー部が嵌入するキー嵌合により位置決めされる連結であって、
前記キー嵌合は、戸体上端縁部の上下方向中間位置に配される左右方向に長いキー溝部に、連結部材の下端部に設けられる左右方向に長いキー部が嵌入するものであることを特徴とする引き戸装置。
【請求項3】
連結部材の下端部にキー嵌合により連結される戸体の上端縁部は、吊りローラ用のローラブラケットであることを特徴とする請求項1または2記載の引き戸装置。
【請求項4】
キー溝部は、ローラブラケットの上下方向中間位置に、左右方向に長い上下溝側片と左右方向一端側の溝底片とを供えて形成され、キー部は、連結部材の下端部に左右方向に長い上下側片を供えて形成され、キー嵌合は、キー部の上下側片がキー溝部の上下溝側片に挟まれる状態のキー嵌合であることを特徴とする請求項記載の引き戸装置。
【請求項5】
連結部材の下端部には、前記キー部を挟んだ上下に固定部材が貫通する左右方向に長い長孔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1記載の引き戸装置。
【請求項6】
固定部材が貫通する長孔は、伝動ベルトの少なくとも1つ分の歯超えをする長さに設定されていることを特徴とする請求項5記載の引き戸装置。
【請求項7】
戸体として、互いに隣接する第一戸体と第二戸体とが備えられ、第一戸体に設けた吊りローラが第二戸体に設けた吊りレールを転動することで第一戸体が第二戸体に対して左右相対移動をするものであり、伝動機構は第二戸体に設けられ、第一戸体に設けられる吊りローラ用のローラブラケットと前記伝動機構の伝動体とがキー嵌合により位置決めされる状態で連結部材を介して連結されていることを特徴とする請求項3乃至6の何れか1記載の引き戸装置。
【請求項8】
キー嵌合は、キー溝部にキー部が嵌入することで連結部材の左右方向の倒れ変姿を規制しようとするものであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1記載の引き戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物内の部屋の出入り口等の開口部を開閉するため建て付けられる引き戸装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、出入口等の開口部に、戸体が左右方向に移動することで該開口部の開閉をする引き戸装置を建て付けることがあるが、このような引き戸装置の中には、戸体が複数枚あった場合に、該戸体同士を、戸尻側の戸体に対して戸先側の戸体を出没自在に内嵌できる構成にして開口部の開閉をする所謂入れ子継手(テレスコピック継手)状に連結したものがあり、このような引き戸装置においては、互いに隣接する戸先側及び戸尻側の戸体同士を、戸先側戸体を開閉作動させたことに連動して戸尻側戸体も開閉移動するよう連動連結し、これによって開口部全体の開閉を、一枚一枚が個々に行われるものでなく、同時的に行われるようにしたものが提供されている(例えば特許文献1参照。)。
ところでこのものは戸体の開閉移動を吊りレール方式のものとし、そして開口部の上方空間に、これら開閉連動機構、吊りレール機構を構成するための各種の部材装置を組込んだ構成にしている。そしてこの場合に、前記戸先側と戸尻側との戸体同士は、無端の伝動ベルトを備えて構成されるベルト伝動機構を介して連動連結されている。具体的には、戸先側戸体に設けられる吊りローラ用のローラブラケットと戸尻側戸体に設けられる伝動ベルトとを連結部材を介して連結し、戸先側戸体が開閉作動した場合に、戸尻側戸体も同時的に開閉移動するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-104830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで前記従来のものでは、前述したようにローラブラケットと伝動ベルトとを連結部材を介して連結する場合の手段としてビス固定とすることが簡便であってメンテナンス性にも優れたものになるが、ビス固定した場合に、ビスと該ビスが貫通するビス孔とのあいだに隙間(遊び)があるため取付け誤差が発生しやすく、寸法通りの取付けをするための調整に手間がかかって作業性に劣るという問題がある。さらに誤差のない(誤差が僅かな)取付けができた場合であっても、連結部材を自閉装置(あるいは自開装置)に連結して自閉(あるいは自開)する構成にしたような場合に、連結部材が自閉装置による引張り力を受けて事後的に前記隙間分だけ移動して傾斜姿勢になってしまうことがある。
さらにこのものでは、伝動ベルトを歯付きベルトとして戸体同士の連結関係が左右方向にずれない(変化しない)ようにすることがあり、このものでは、前記ビス孔を長孔にして、伝動ベルトに対する連結部材の取付け位置を微調整するため必要になる歯飛び調整に対応させることが要求され、このようにビス孔を長孔にした場合、連結部材の傾斜がさらに大きくなってしまう惧れがあり、このように連結部材が傾斜した場合、両戸体の開閉動作が所定通り行われないことになって、例えば全開時において一方の戸体(例えば戸先側の戸体)が完全に開放姿勢にならないような場合が発生する、傾斜姿勢になった連結部材が他部材に干渉して円滑な開閉作動が損なわれてしまう、さらには傾斜姿勢になった連結部材から伝動ベルトを捻る(捩じる)ような無理な負荷が働くことになって伝動ベルトの劣化や損耗が促進される等の不具合発生が想定され、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、戸体の上端縁部に設けた吊りローラが吊りレールを転動することで該戸体が左右方向に移動をして開口部の開閉を行うものであって、上側に位置し、伝動機構に設けた左右方向に移動する伝動体と、下側に位置する戸体の上端縁部とを連結部材を介して一連状に連結することで、前記戸体の左右方向の移動を、伝動体の左右方向の移動に連動して行うように構成してなる引き戸装置において、戸体の上端縁部と連結部材の下端部とのあいだの連結は、キー溝部にキー部が嵌入するキー嵌合により位置決めされる連結であって、伝動体は歯付きの伝動ベルトであり、連結部材と伝動ベルトとは、連結部材の上端部に伝動ベルトの歯が噛合することにより左右方向の位置決めがなされる固定であり、ローラブラケットと連結部材下端部とは、ローラブラケットまたは連結部材に設けられる長孔に固定部材が貫通することで固定されていることを特徴とする引き戸装置である。
請求項2の発明は、戸体の上端縁部に設けた吊りローラが、吊りレールを転動することで該戸体が左右方向に移動をして開口部の開閉を行うものであって、上側に位置し、伝動機構に設けた左右方向に移動する伝動体と、下側に位置する戸体の上端縁部とを連結部材を介して一連状に連結することで、前記戸体の左右方向の移動を、伝動体の左右方向の移動に連動して行うように構成してなる引き戸装置において、戸体の上端縁部と連結部材の下端部とのあいだの連結は、キー溝部にキー部が嵌入するキー嵌合により位置決めされる連結であって、前記キー嵌合は、戸体上端縁部の上下方向中間位置に配される左右方向に長いキー溝部に、連結部材の下端部に設けられる左右方向に長いキー部が嵌入するものであることを特徴とする引き戸装置である。
請求項3の発明は、連結部材の下端部にキー嵌合により連結される戸体の上端縁部は、吊りローラ用のローラブラケットであることを特徴とする請求項1または2記載の引き戸装置である。
請求項4の発明は、キー溝部は、ローラブラケットの上下方向中間位置に、左右方向に長い上下溝側片と左右方向一端側の溝底片とを供えて形成され、キー部は、連結部材の下端部に左右方向に長い上下側片を供えて形成され、キー嵌合は、キー部の上下側片がキー溝部の上下溝側片に挟まれる状態のキー嵌合であることを特徴とする請求項記載の引き戸装置である。
請求項5の発明は、連結部材の下端部には、前記キー部を挟んだ上下に固定部材が貫通する左右方向に長い長孔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1記載の引き戸装置である。
請求項6の発明は、固定部材が貫通する長孔は、伝動ベルトの少なくとも1つ分の歯超えをする長さに設定されていることを特徴とする請求項5記載の引き戸装置である。
請求項7の発明は、戸体として、互いに隣接する第一戸体と第二戸体とが備えられ、第一戸体に設けた吊りローラが第二戸体に設けた吊りレールを転動することで第一戸体が第二戸体に対して左右相対移動をするものであり、伝動機構は第二戸体に設けられ、第一戸体に設けられる吊りローラ用のローラブラケットと前記伝動機構の伝動体とがキー嵌合により位置決めされる状態で連結部材を介して連結されていることを特徴とする請求項3乃至6の何れか1記載の引き戸装置である。
請求項8の発明は、キー嵌合は、キー溝部にキー部が嵌入することで連結部材の左右方向の倒れ変姿を規制しようとするものであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1記載の引き戸装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、伝動体が左右方向に移動することに連動して戸体の左右方向の移動を行うものにおいて、連結部材と戸体との連結がキー嵌合により連結されたものである結果、連結部材が傾斜状になって戸体の開閉姿勢が乱れたり、連結部材が他部材に衝接したりすることを防止できることになる。
しかも、上側の伝動体と下側の吊りローラ用のローラブラケットとのあいだを連結する連結部材の下端部がローラブラケットとキー嵌合により位置決めされているため、連結部材は、下端部がキー嵌合により位置決めされた起立姿勢に保持される状態になって戸体の開閉姿勢が乱れたり、連結部材が他部材に衝接したりすることを防止できることになる。
そのうえ、上側の伝動体と下側のローラブラケットとを連結する連結部材の下端部がローラブラケットとキー嵌合により位置決めされるため、ローラブラケットと連結部材下端部とを長孔を用いて左右方向の位置調整ができるものでありながら、連結部材の姿勢保持が確実にでき、戸体の開閉姿勢の乱れや連結部材が他部材に衝接したりする不具合を防止できることになる。
請求項2の発明とすることにより、伝動体が左右方向に移動することに連動して戸体の左右方向の移動を行うものにおいて、連結部材と戸体との連結がキー嵌合により連結されたものである結果、連結部材が傾斜状になって戸体の開閉姿勢が乱れたり、連結部材が他部材に衝接したりすることを防止できることになる。
そのうえ、キー嵌合を、連結部材側に設けられるキー部とローラブラケットに設けられるキー溝部とによるものとし、そして固定部材が貫通する孔が、キー部を挟んだ上下に設けられる長孔となっているため、キー嵌合による連結部材の位置決めによる姿勢保持ができながら、長孔を利用しての位置調整ができることになり、組付け性、メンテナンス性の向上が図れることになる。
請求項3の発明とすることにより、キー嵌合は、連結部材側に設けられるキー部とローラブラケットに設けられるキー溝部とによるものであるため、構造を簡単なものにできる。
請求項4の発明とすることにより、キー嵌合が、キー部の上下側片がキー溝部の上下溝側片に挟まれる状態のキー嵌合となって正確に位置決めされたキーものとなる。
請求項5の発明とすることにより、キー嵌合を、連結部材側に設けられるキー部とローラブラケットに設けられるキー溝部とによるものとし、そして固定部材が貫通する孔が、キー部を挟んだ上下に設けられる長孔となっているため、キー嵌合による連結部材の位置決めによる姿勢保持ができながら、長孔を利用しての位置調整ができることになり、組付け性、メンテナンス性の向上が図れることになる。
請求項6の発明とすることにより、伝動体が歯付きの伝動ベルトであったときの微調整が、該歯の一つ分を越える長さに設定される長孔によってできることになって、歯付きの伝動ベルトを採用したものであっても、組付け性、メンテナンス性が損なわれることが回避される。
請求項7の発明とすることにより、戸体が、互いに隣接する第一、第二戸体を備えたもので構成され、そして第一戸体に設けた吊りローラが第二戸体に設けた吊りレールを転動することで第一戸体が第二戸体に対して左右相対移動をする引き戸装置において、伝動機構を第二戸体に設けたものにおいても、第一戸体側の吊りローラ用のローラブラケットと前記伝動機構の伝動体とをキー嵌合により位置決めできるようにし、これによって、第一、第二戸体の開閉を、連結部材が傾斜状になることを防止して円滑な開閉作動ができることになる。
請求項8の発明とすることにより、連結部材の左右方向の倒れ防止を、キー嵌合という簡単な構成によって確実にできることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】引き戸装置の正面図である。
図2】(A)(B)は戸体が閉鎖した状態、開放した状態をそれぞれ示す引き戸装置の水平断面図である。
図3】戸体が閉鎖した状態を示す引き戸装置の要部正面図である。
図4】戸体が開放した状態を示す引き戸装置の要部正面図である。
図5】引き戸装置の吊りレール部位を示す要部正面図である。
図6】引き戸装置の要部縦断面側面図である。
図7】吊りローラ部位を示す要部正面図である。
図8】(A)(B)はローラブラケットの側面図、正面図である。
図9】(A)(B)はローラブラケットと連結部材とを連結した状態を示す正面図、背面図である。
図10】(A)(B)は連結部材の背面図、側面図である。
図11】(A)(B)は伝動ベルトの遊端部の連結状態を示す要部斜視図、連結部材との連結部位を示す要部斜視図である。
図12】伝動ベルトの遊端部の連結状態を示す分解斜視図である。
図13】伝動ベルトの連結部材との連結部位を示す分解斜視図である。
図14】(A)(B)(C)(D)は連結金具の正面図、側面図、水平断面図、伝動ベルトを組込んだ状態を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は建物内に形成される部屋の出入り口等の開口部Eに設けられる引き戸装置であって、該引き戸装置1は、開口部Eの開閉をする戸体Dを備え、開口部Eの上方には、前記戸体Dの開閉をするため後述する各種の部材装置が内装(収容)される上部空間(部材収容部)Fを備えて構成されるが、前記戸体Dは、本実施の形態においては、開閉操作方向(戸体Dの作動方向であって、左右方向)に互いに隣接する一対の第一、第二戸体2、3を備えて構成されている。これら第一、第二戸体2、3は、開口部Eの戸尻側に形成された戸袋部4に収納されて開口部Eを開放する全開姿勢から、第一、第二戸体2、3が戸袋部4から引き出されて、戸先側と戸尻側とに並列する状態で開口部Eを閉鎖する全閉姿勢とのあいだを変姿することで、該開口部Eの開閉を行う構成となっていること等は従来通りである。
【0009】
前記戸袋部4は、躯体側部材を構成する表裏一対のパネル板4aのあいだが戸体Dの収納スペースSとなっており、そしてこの場合に、第二戸体3が、戸袋部4の戸先側端部の開口端縁部4bから左右方向出没自在に移動できるように構成されているが、該第二戸体3は、表裏一対のパネル体3aのあいだが第一戸体2の収納スペースTとなっており、該第一戸体2は、第二戸体3の戸先側端部に設けられる開口端縁部3bから出没自在に移動できるように構成され、この様に構成することで戸体Dは、第一戸体2が第二戸体3に対して入れ子継手(テレスコピック継手)状に連結した状態で戸袋部4に嵌入組込みして収納することができる構成になっている。
【0010】
前記戸体Dは、戸袋部4に収納される全開姿勢では、第二戸体3の開口端縁部(戸先側端部)3bが戸袋部4の開口端縁部4b位置に略位置する状態で第二戸体3が戸袋部4に収納されるのに対し、第一戸体2は、戸先側端縁部2aが第二戸体3の開口端縁部3bに対して戸先側に突出した(はみ出た)状態(戸袋部4の開口端縁部4bから突出した状態)で第二戸体3に収納される構成になっている。
一方、戸袋部4から引き出された全閉姿勢では、戸体Dは、第二戸体3の戸尻側端縁部3cが戸袋部4の開口端縁部4bに積層する(重なり合う)状態で第二戸体3が戸袋部4から引き出され、第一戸体2の戸先側端縁部2aが開口部Eの戸先側端部に設けた戸当り5に当接すると共に、戸尻側端縁部2bが第二戸体3の開口端縁部3bに積層する(重なり合う)状態で第一戸体2が第二戸体3から引き出される構成になっている。
尚、このように互いに隣接する戸体同士を入れ子継手状に連結して本発明を実施する構成は、本実施の形態のように二枚の戸体2、3のものに限定されず、三枚以上の戸体においても同様にして実施できる。さらに本発明の戸体としては、このような入れ子継手方式の戸体Dのものに限定されることはなく、後述するように伝動機構に設けられる伝動体の移動に基づいて開閉する戸体であれば、引き違い戸方式の戸体、さらには一枚板状の戸体であっても実施できることは言うまでもない。
【0011】
前記第一戸体2の上端縁部2cには左右一対の第一ローラブラケット6(本発明の「ローラブラケット」に相当する。)が設けられており、該第一ローラブラケット6に第一吊りローラ(ハンガーローラ:本発明の「吊りローラ」に相当する。)7が支軸7aを介して回転自在に軸承されているが、第一ローラブラケット6は、横板状の下片部6aと該下片部6aの前後方向一方の端縁から起立形成された縦板状の起立片部6bとから構成された側面視でL字形をし、第一戸体2の幅内に納まる状態で、下片部6aが第一戸体2の上端縁部2cにボルト2dを介して取付けられる設定になっている。
前記第一ローラブラケット6の起立片部6bは、本実施の形態においては、下片部6aの左右方向中央部位において該下片部6aよりも幅狭な状態で下片部6aから起立する下側起立片部6cと、該下側起立片部6cよりも左右方向幅広になってはいるが下片部6aよりは幅狭な上側起立片部6dとを備えた一枚板状のもので形成されているが、上側起立片部6dの左右両端縁部には、支軸7a側が溝底となった左右方向に長いキー溝部6eが上下方向中央位置(中間位置)に形成され、該キー溝部6eをあいだに挟む状態で上下に丸孔状のビス孔6fが形成されている。
そしてこのように形成される左右方向に長いキー溝部6eは、図8から明らかなように、左右方向に長い上下の溝側片6eaと、左右方向一端側の溝底片6ebとにより形成されたものになっている。
そして前述したように戸体Dが全開した状態(図4参照)では、戸先側の第一ローラブラケット6の戸先側端部6gが、第二戸体3の開口端縁部3bよりも戸先側に位置する、つまり第二戸体3から突出した位置に位置するように設定されている。
【0012】
一方、前記第二戸体3の上端縁部3dには、前記第一吊りローラ7が走行するための第一吊りレール(ハンガーレール)8が前後パネル体3aに挟まれ、かつ第二戸体3の開口端縁部3bから戸先側に延出していて第一戸体2の第二戸体3に対する開閉移動を許容する長さを有した状態で第二戸体3に設けられるが、該第一吊りレール8には、下端部に第一吊りローラ7が走行するレール面8aが形成され、上側部8bに左右一対の第二ローラブラケット9を介して第二吊りローラ10がそれぞれ設けられている。10aは第二吊りローラ10の支軸である。尚、本実施の形態では、第二ローラブラケット9は、上下二部材9a、9bをボルト9cを介して固定することで形成されているが、一体物であってもよいことは勿論である。
【0013】
また、11は第二吊りローラ10が走行するためのレール面11aが設けられた第二吊りレールであって、該第二吊りレール11は、前記上部空間Fの前後を塞ぐ表面板(化粧板)12、12aのうちの一方の表面板12a側に設けられている。尚、他方の化粧板12は着脱自在になっていてメンテナンス用の点検板となっている。
さらに13は前記第一吊りレール8の上側部8bに設けられるベルト伝動機構(本発明の「伝動機構」に相当する。)であって、該ベルト伝動機構13は戸尻側、戸先側のプーリ13a、13bを備えているが、戸尻側プーリ13aは、第二戸体3の上側位置で、かつ戸尻側の第二ローラブラケット9よりも戸先側位置に位置する状態で該戸尻側第二ローラブラケット下部材9bの下部に設けられ、戸先側プーリ13bは、戸先側の第二ローラブラケット9よりも戸先側に位置する状態で、第一吊りレール8の戸先側端縁部からさらに戸先側に延出するよう該第一吊りレール8に設けられた延出材8dに支持されており、そしてこれらプーリ13a、13bは歯付きのものであって、歯同士が互いに噛合する状態で無端(リング状)の歯部14a付きの伝動ベルト(本発明の「伝動体」に相当する。)14が戸先側の第二ローラブラケット下部材9bを前後から挟む状態で巻回されている。
因みに本発明において、伝動機構としてはベルト伝動機構のものに限定されず、伝動体としてベルト式ではなく、チェーン式、ワイヤ式等の各種のものを採用した伝動機構を用いて実施することができる。
【0014】
前記伝動ベルト14は、長尺物のもの両遊端部(先端部)14b同士を、前記一方の表面板12aにビス15aを介して支持固定される支持材15に取付け支持することで無端状に形成されるものであるが、該支持材15の表面には左右一対の受け板15bがビス15gを介して固定され、該受け板15bの表面にさらに左右一対の取付け板15cが当てがわれた状態で、これら受け板15b、取付け板15cをビス15dを介して前記支持材15に固定することになる。そして伝動ベルト14の両遊端部14bが、歯部14aが取付け板15cに設けられる歯部15eに噛合する状態で前記受け板15b、取付け板15cのあいだに挟持されることで、支持材15に取付けられる構成になっている。尚、本実施の形態では、無端体として歯付きの伝動ベルトを採用したが、歯付きでない伝動ベルト(例えば平ベルト、Vベルト等)であってもよく、さらにはベルトではなくチェーン、ワイヤ等の適宜の長尺物を無端にしたものであっても実施できることはいうまでもない。さらにまた伝動ベルト14は無端のものを用いて実施しているが、伝動ベルト14は、第一、第二戸体2、3の一連状の移動を行うものであればよく、例えば両遊端部を各別に躯体側に連結したものであってもよい。
【0015】
このように躯体側に支持された無端の伝動ベルト14は、前記躯体側に取付けられたとは逆側のベルト部位であって、戸体Dが全開したときに戸袋部4の開口端縁部4bよりも僅かに戸先側に偏倚した部位(開口端縁部4bから僅かに突出した部位)に連結部材16の上端部16aが連結固定されている。この場合に、伝動ベルト14の歯部14aが歯部17aに噛合された状態の支持材17を連結部材上端部16aに当てがい、このものに側面視で冂字形をした補助金具18を、連結部材上端部16a、伝動ベルト14並びに支持材17を前後から挟むようにして外嵌し、ビス18aを介して固定することにより、連結部材16と伝動ベルト14との左右方向に位置決めされた状態での連結固定ができるようになっている。
このようにして伝動ベルト14に連結された連結部材16の上端部16aには、戸尻側に延出する状態で連結金具19がビス19aを介してさらに連結されている。
【0016】
一方、連結部材16の下端部16bは、第一戸体2に設けられた戸先側の第一ローラブラケット6の戸先側端部6gに連結されることになるが、連結部材下端部16bには、上下方向中央部(中間部)に左右方向に長く形成されたキー部20が前後方向外方に向けて突出する状態でビス20aを介して固定されていると共に、該キー部20を挟むよう上下に左右方向に長い長孔16cが形成されている。そして連結部材16の下端部16bに形成されるキー部20は、図10に示す如く、左右方向に長い上下側片20bを供えて形成されたものとなっている。
そして連結部材下端部16bが、前述したように戸体Dの閉鎖姿勢で戸袋部4から突出している第一ローラブラケット6の戸先側端部6gに設けられるキー溝部6eにキー部20が左右方向戸尻側に向けて嵌入するキー嵌合をすることになる。この場合のキー嵌合は、図7、9から明らかなように、キー部20の上下側片20bがキー溝部6eの上下溝側片6eaに挟まれる状態のキー嵌合となり、このようなキー嵌合をすることで、連結部材16は、取付け姿勢(縦姿勢)に位置決めされた取付け姿勢になり、この取付け姿勢になった状態で、第一ローラブラケット6側のビス孔6fと連結部材下端部16bに設けた長孔16cとにビス16dを螺入することで第一ローラブラケット6と伝動ベルト14との位置決めされた連結が連結部材16を介してできるようになっている。
そしてこの場合に、連結部材下端部16bに設けられる長孔16cの長さは、伝動ベルト14の歯部14aの1ピッチ分の長さよりも長い設定になっていて、伝動ベルト14に対する連結部材下端部16bの連結位置の調整が、伝動ベルト14の歯飛びをする状態でできるようになっている。
因みに本実施の形態では、キー溝部6eは前後方向に開口した状態で形成されているため、キー部20は、前述したように左右方向の嵌入ではなく、前後方向の嵌入でも組み付けることができる。そしてこのような左右方向、前後方向の嵌入作業を容易にするため、キー溝部6eやキー部20の入り口部位を面取りする等の配慮をすることができ、本実施の形態ではキー溝部6eの入り口部位を面取りしている。
【0017】
21は自閉装置(自動閉鎖装置)であって、該自閉装置21から繰出されるワイヤ等の索条(紐状体)からなる作動体21aの先端部が前記連結金具19に連結されている。そして戸体Dが開放した場合に、任意の遅延時間(例えば1秒、5秒等)を経過後、作動体21aが牽引されることになって、開放した戸体Dを全閉姿勢まで閉鎖移動させるようになっているが、これは汎用のものを採用しており、その詳細は省略する。
また22は制動装置であって、該制動装置22は、第二ローラブラケット9に連結されたものであり、戸体Dの移動速度に制動を与えることによって戸体Dの開閉速度が予め設定される速度以上にならないようにするためのものであり、これも汎用のものを採用しており、その詳細は省略する。
因みに本実施の形態では、自閉装置21を設けて開放した戸体Dを自閉する構成にしているが、これに限定されず、逆に自開装置(自動開放装置)を設けて閉鎖した戸体Dを自開する構成にしてもよく、さらにこのような自閉装置、自開装置を用いることなく、手動による開閉を行うようにしたものであっても本発明を実施することができる。
【0018】
叙述の如く構成された本実施の形態において、第一戸体2を開閉操作した場合に、該第一戸体2は、第一吊りローラ7が第二戸体3に設けた第一吊りレール8を転動することになって左右方向に開閉移動することになるが、この第一戸体2の開閉移動に伴い、第一ローラブラケット6に連結部材16を介して連動連結された伝動ベルト14が、支持材15を介して躯体側に固定された状態で左右方向に移動する。これによって第二戸体3は、左右方向に移動する荷重を受けることになって第二吊りローラ10が第二吊りレール11を転動することになり、このようになることで、第一、第二戸体2、3は協働(共働)状態で左右移動して開口部Eの開閉がなされることになる。
【0019】
このように戸体Dは、ベルト伝動機構13を構成する伝動ベルト14の移動を受けて開閉作動することになるが、該伝動ベルト14と第一戸体2とのあいだを連結するために設けられる連結部材16は、第一ローラブラケット6に対してキー嵌合状態で連結されているため、連結部材16を第一ローラブラケット6に対してビス16dを介して連結したものでありながら、連結部材16は、キー嵌合により起立姿勢(縦姿勢)状態での保持(姿勢維持)が図られることになって、傾斜状になったりすることで戸体Dの開閉姿勢が乱れたり、連結部材16が他部材に衝接したり劣化や損耗したりすること等を防止できることになる。
【0020】
しかもこのものでは、連結部材16は、上側に位置する伝動ベルト14と下側に位置する第一吊りローラ7用の第一ローラブラケット6とのあいだを連結することになるが、該連結部材16は、下端部16bがキー嵌合により第一戸体2側に位置決めされた起立姿勢で保持されることになって連結部材16の姿勢保持が確実になり、戸体Dの開閉姿勢が乱れたり、連結部材16が他部材に衝接したりすることをより確実に防止できることになる。
尚、本発明を実施するにあたり、第一戸体2の連結部材16に対する連結部材を第一ローラブラケット6としたがこれに限定されるものでなく、第一戸体2に連結部材16と連結するための専用の部材を設けたものでも実施することができる。
【0021】
そしてこの場合に、伝動ベルト14は歯部14aが設けられた歯付きベルトであり、連結部材16と伝動ベルト14とは、連結部材上端部16aに対して伝動ベルト14の歯部14aが噛合することにより左右方向の位置決めがなされる固定であり、第一ローラブラケット6と連結部材下端部16bとは、連結部材下端部16bに設けられる長孔16cに固定部材であるビス16dが貫通することで固定されたものであるため、伝動体として歯付きの伝動ベルト14を使用したものであっても、上側の伝動ベルト14と下側の第一ローラブラケット6とを連結する連結部材16の下端部16bが、第一ローラブラケット6とキー嵌合により位置決めされた固定となり、この結果、連結部材16の姿勢保持が確実にできることになる。
【0022】
しかもこのものでは、キー嵌合構造として、連結部材下端部16b側にキー部20が設けられ、第一ローラブラケット6側に該キー部20が嵌入するキー溝部6eが形成されたものになっているため、伝動ベルト14と第一ローラブラケット6とを連結部材16を介して連結するものでありながら、キー嵌合構造を、連結部材下端部16bと第一ローラブラケット6との連結部において構造簡単なものとして構成できることになる。
そして第一ローラブラケット6の上側起立片部6dに、上下方向中間位置に配される左右方向に長いキー溝部6eが設けられ、連結部材16の下端部16bに、前記キー溝部6eに嵌入する左右方向に長いキー部20と、該キー部20を挟んだ上下にビス16dが貫通する左右方向に長い長孔16cとが設けられた構造になっているため、キー嵌合による連結部材の位置決めによる姿勢保持ができながら、長孔16cを利用しての位置調整ができることになり、組付け性、メンテナンス性の向上が図れることになる。
この場合に、ビス16dが貫通する長孔16cは、伝動ベルト14の少なくとも1つ分の歯部14aの歯超えをする長さに設定されているため、伝動ベルト14が歯付きのものであっても、伝動ベルト14の取付け位置の微調整が、該歯部14aの一つ分を越える長さに設定される長孔16cによってできることになって、歯付きの伝動ベルト14を採用しながら組付け性、メンテナンス性が損なわれることが回避される。
【0023】
その上本実施の形態のものでは、戸体Dとして、互いに隣接する第一戸体2と第二戸体3とが備えたものとして構成され、第一戸体2に設けた第一吊りローラ7が第二戸体3に設けた第一吊りレール8を転動することで第一戸体2が第二戸体3に対して左右に相対移動をするものであり、しかもベルト伝動機構13は第二戸体3側に設けた前記第一吊りレール8に設けられ、そして第一戸体2に設けられる第一吊りローラ7用の第一ローラブラケット6と前記ベルト伝動機構13の伝動ベルト14とが、キー嵌合により位置決めされる状態で連結部材16を介して連結されたものであっても、第一戸体2側の第一ローラブラケット6とベルト伝動機構13の伝動ベルト14とがキー嵌合により位置決めされた状態で連結されることになり、これによって、第一、第二戸体2、3の開閉を、連結部材16が傾斜状になってしまうことをキー嵌合という簡単な構成によって防止して戸体Dの円滑な開閉作動ができることになる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、出入り口等の開口部の開閉をするための引き戸装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 引き戸装置
2 第一戸体
3 第二戸体
6 第一ローラブラケット
6e キー溝部
6f ビス孔
7 第一吊りローラ
8 第一吊りレール
9 第二ローラブラケット
10 第二吊りローラ
13 ベルト伝動機構
14 伝動ベルト(伝動体)
14a 歯部
16 連結部材
16a 上端部
16b 下端部
16c 長孔
20 キー部
D 戸体
E 開口部
図1
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