(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】非焼成食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20230614BHJP
A23L 7/126 20160101ALI20230614BHJP
【FI】
A23L5/00 Z
A23L5/00 K
A23L7/126
(21)【出願番号】P 2019157561
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】落合 優希
(72)【発明者】
【氏名】菊池 光倫
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 和広
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 真一
(72)【発明者】
【氏名】小林 正志
【審査官】正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-82670(JP,A)
【文献】特開2003-284501(JP,A)
【文献】特開2005-229832(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1672948(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙焼小麦粉及びグリセリンを含有する非焼成食品組成物であって、前記グリセリンを非焼成食品組成物全体重量中1.5重量%以上含有することを特徴とする非焼成食品組成物。
【請求項2】
前記グリセリンを、非焼成食品組成物全体重量中3.3重量%以上含有する請求項1記載の非焼成食品組成物。
【請求項3】
押出し成形された請求項1又は2記載の非焼成食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な食感を有する非焼成食品組成物に関し、さらに詳しくは、濃厚で、粉っぽさのない滑らかな食感を有する非焼成食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クエン酸カルシウム等のカルシウム源、ケーキ用小麦粉及びグリセリンを含有するカルシウム強化食品が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該カルシウム強化食品は、用いるカルシウム源を微粉化することで、しっとりした口あたり、柔らかい食感を提供するものであり、焙焼小麦粉を非焼成で用いる場合に生じる粉っぽさやざらつきを解消する方法については開示されていない。また、該カルシウム強化食品として提示された、事前に焼成されていない小麦粉が配合された非焼成食品は、小麦粉の生食による消化不良や、小麦粉中の雑菌の繁殖による食中毒発生の危険性を含むものであった。
【0003】
一方、本発明者らは、グリセリンを含有する油脂性生地を押し出し成形で連続して製造しても、変形や膨張のない油脂性成形菓子を提案している(例えば、特許文献2参照)。また、該生地の場合、グリセリンを3.0重量%より多く含有すると、強度が劣ったり、成形直後に膨張することを開示している。しかしながら、該油脂性成形菓子は小麦粉を使用しておらず、まして焙焼小麦粉を含有する生地を押し出し成形して得られる成形品に係る問題点は不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2009-523026号公報
【文献】特開2015-177783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、良好な食感を有する非焼成食品組成物に関し、さらに詳しくは、濃厚で、粉っぽさのない滑らかな食感を有する非焼成食品組成物を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、焙焼小麦粉及びグリセリンを含有する非焼成食品組成物であって、前記グリセリンを非焼成食品組成物全体重量中1.5重量%以上含有することを特徴とする非焼成食品組成物により上記目的を達成する。
【0007】
好ましくは、前記グリセリンを、非焼成食品組成物全体重量中3.3重量%以上含有する。より好ましくは、押出し成形された非焼成食品組成物である。
【0008】
すなわち、本発明者らは、濃厚で滑らかな食感を有する新たな食品組成物を提供するため焼成前の焼菓子生地に注目した。しかしながら、焼菓子の主原料である小麦粉を焼成せずに生地のまま食すと消化されにくく、小麦粉中の雑菌の繁殖による食中毒が発生し得るという問題があった。そこで焙焼小麦粉を用いて、消化性の向上と安全性を担保しながら、目的の食感を再現するため鋭意検討を行った。その結果、焙焼小麦粉由来の粉っぽさやざらつきのある舌触りの悪い食感を解消するために、焙焼小麦粉にグリセリンを併用する生
地を用いて成形する非焼成の食品組成物とすると、焼菓子やキャンディとも異なる、濃厚で、粉っぽさのない滑らかな食感となることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非焼成食品組成物は、良好な食感、すなわち、濃厚で、舌触りが悪くざらつくような粉っぽさのない滑らかな食感を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を詳しく説明する。本発明の非焼成食品組成物は、焙焼小麦粉及びグリセリンを含有する非焼成食品組成物であって、前記グリセリンを非焼成食品組成物全体重量中1.5重量%以上含有することが、食感の点で重要である。
【0011】
上記焙焼小麦粉は、小麦粉単独又は小麦粉を主体とする穀粉類を焙焼したものである。本発明では、市販品、該小麦粉又は小麦粉を主体とする穀粉類を焙焼して調製したもののどちらを用いてもよく、これらは単独でも複数組み合わせて用いてもよい。市販品としては、例えば、日清製粉株式会社製の「ローストフラワーRG」、「ローストフラワーRM」、千葉製粉株式会社製の「ローストフラワーBFW」等が挙げられる。また、焙焼して調製する方法としては、小麦粉を鉄板に挟み約200℃に加熱する方法等が挙げられる。
【0012】
上記グリセリンは、C3H5(OH)3で示される3価の糖アルコールで、粘稠で甘味やえぐみのある無色透明の液体である。融点は18℃で、水に溶けやすく、吸湿性や保水性を有する物質である。油脂(トリアシルグリセロール)の加水分解または化学合成によって製造される。
【0013】
本発明の非焼成食品組成物は、上記グリセリンを、非焼成食品組成物全体重量中、1.5重量%以上含有することが食感の点で重要であり、1.5重量%より少ないと、舌触りが悪く、ざらつくような粉っぽさがあり、滑らかさや濃厚さのない食感になる。好ましくは、3.3重量%以上含有すると、更に良好な食感となる点で好適である。
【0014】
また、本発明の非焼成食品組成物には、焙焼小麦粉及びグリセリンの他に、副原料を適宜添加してもよい。例えば、副原料としては、甘味料、油脂、風味原料(ココアパウダー、抹茶パウダー、種実類のナッツペーストやナッツ粉砕物等)、ドライフルーツ類、乳製品(脱脂粉乳、生クリーム、サワークリーム、チーズ等)、香料、着色料、調味料(食塩等)、エキス類、粉末果汁、粉末野菜汁、食物繊維、乳化剤、増粘剤、安定剤、澱粉、栄養成分(ビタミン類(A、B1、B2、ナイアシン、B6、B12、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸等)、ミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン等)等が挙げられる。
【0015】
上記甘味料は、喫食時のトップの風味立ちの点で好適に用いられる。該甘味料としては、例えば、単糖類(ブドウ糖、果糖、D-キシロース等)、二糖類(砂糖、乳糖、麦芽糖、イソマルツロース、トレハロース等)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、糖アルコール(ソルビトール、キシリトール、マルチトール、還元水飴等)、澱粉糖(水飴、粉飴、異性化糖等)、蜂蜜、高甘味度甘味料(アスパルテーム、ステビア、スクラロース、アセスルファムカリウム等)等が挙げられる。これらは単独でも複数組み合わせて用いてもよい。これらの中でも砂糖は、栄養価が高く甘味料の中でも最も風味が良好な点で好適に用いられる。また、甘味料を複数併用すると非焼成食品組成物そのものの風味が良好になる点で好適に用いられる。
【0016】
上記油脂は、保形性の点で好適に用いられる。該油脂としては、動植物性油脂、該動植物性油脂の硬化油脂等が挙げられる。例えば、大豆油、サラダ油、カカオ脂、オリーブ油、
米油、ラード、乳脂及びこれらの加工油脂等、また、マーガリン、ショートニング、バター等も挙げられる。これらは、単独でも複数組み合わせて用いてもよい。
【0017】
次に、本発明の非焼成食品組成物に係る「非焼成」とは、上述した原料から目的の食品組成物を調製する迄の間、焼成等の熱加工工程を全く含まないことを意味する。具体的には、焼菓子類、ケーキ類及びパン類等を製造する際実施する焼成工程のような100℃以上の熱加工工程を含まないことを意味する。
【0018】
上記原料を用いて、本発明の非焼成食品組成物は、例えば、次のように調製される。
【0019】
まず、焙焼小麦粉、グリセリン及び必要に応じて副原料を混合して生地を得る。混合方法は、例えばニーダー、リボンミキサー等に上記原料を投入して撹拌する等が挙げられる。
【0020】
次に、上記生地を成形し、本発明の非焼成食品組成物を得る。成形方法は、例えば、シート成形、ロープ成形、モールド成形、スタンピング成形、押出し成形、カット成形等の公知の成形方法が挙げられる。好ましくは、特開2013-074874号公報に記載の、押出し直後に切断する押出し成形方法が好適である。この方法は、切断直後に目的形状に成形できることから、シート成形後の型抜きで生じるような無駄な残生地が発生せず、効率良く製造できる点で好適である。また、押出す吐出口がそのまま目的の食品組成物の形状になることから、吐出口の形状を変更することで、自在に食品組成物のデザインを設計できる点でも好適である。更に、複数の異なる形状の吐出口を備えることで、同時に異なる形状を量産成形することもできる。
【0021】
次に、本発明の非焼成食品組成物を製品化する場合は、適宜包装体で充填包装すればよい。なお、包装体の材質は特に制限するものではなく、例えば、軟質プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、紙、金属(アルミ、アルミ蒸着、ガラス蒸着等)等、適宜用いればよい。もしくはこれらの材質を組み合わせてラミネートしたものでもよい。また、包装体の形状も特に限定するものではなく、袋状、筒状、箱等適宜設定すればよい。
【実施例】
【0022】
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
【0023】
<実施例1~7、比較例1>
<<非焼成食品組成物の調製>>
表1に示す原料をニーダーに投入し、混合して、表1に示す組成の生地を得た。次に、該生地を押出し機に投入し、押出し直後に切断し、非焼成食品組成物(2.9±0.3g/個)を得た。
【0024】
【0025】
以上のようにして得られた実施例及び比較例の食感及び外観について、専門パネラー5名により、表2の基準で評価した。その評価結果の平均値を表1に示す。なお、専門パネラー5名の個別の評価結果は表3に示す。
【0026】
【0027】
【0028】
評価の結果、本発明の実施例は良好な食感を有し、比較例1の食感は不良であった。また、グリセリンを非焼成食品組成物全体重量中6.1重量%以下含有する実施例については、良好な食感と共に良好な外観も有していた。