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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】電池制御ユニットおよび電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230614BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230614BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230614BHJP
   B60L 58/22 20190101ALN20230614BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H01M10/44 P
H01M10/48 P
B60L58/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019167284
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021045017
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-169509(JP,A)
【文献】特開2010-28920(JP,A)
【文献】特開2013-31249(JP,A)
【文献】特開2013-90525(JP,A)
【文献】特開2013-172552(JP,A)
【文献】特開2014-23361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/22
H01M 10/44
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列接続された複数の組電池各々が有する、互いに直列接続された複数の電池、毎に設けられ、対応する前記電池が他の前記電池と直列接続された接続状態と、対応する前記電池が他の前記電池と直列接続から切り離された非接続状態と、に切り替える切替部と、
充電又は放電時に終止電圧に達したと判定した前記電池に対応する前記切替部を前記非接続状態に制御する第1制御部と、
複数の前記組電池の総電圧が同等になるように、前記終止電圧に達していない前記電池の前記切替部を前記非接続状態に制御する第2制御部と、を備え
前記第2制御部は、前記終止電圧に達していない前記電池のうち、前記非接続状態に制御するものの組み合わせを設定し、設定した組合せ毎に複数の前記組電池の前記総電圧を求め、複数の前記組電池の前記総電圧が同等となる組み合わせに従って前記切替部を制御する、
電池制御ユニット。
【請求項2】
請求項に記載の電池制御ユニットにおいて、
前記第2制御部は、充電時において前記同等となる組み合わせ毎に、充電電力を求めて、求めた充電電力が最大となる組み合わせに従って前記切替部を制御する、
電池制御ユニット。
【請求項3】
請求項又はに記載の電池制御ユニットにおいて、
前記第2制御部は、放電時において前記同等となる組み合わせのうち前記組電池の放電電力が最大となる組み合わせに従って前記切替部を制御する、
電池制御ユニット。
【請求項4】
直列接続された複数の電池を有し、互いに並列接続された複数の組電池と、
請求項1~の何れか1項に記載の電池制御ユニットと、を備えた、
電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御ユニットおよび電池システム、に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池を直列に接続して構成される電池システムがある。複数の電池は、例えば製造時のバラツキや動作環境のバラツキに起因して、劣化がばらつく。例えば、熱源に近い電池は早く劣化してしまうが、熱源から離れた電池は劣化が遅い。
【0003】
このため、充放電時に劣化の進んだ電池が最初に充放電終止電圧に達してしまう。この場合、他の電池に余力が残っていたとしても充放電を停止しなければならず、電池容量を使いきることができない。そこで、充電終了電圧に達した電池をバイパスして充電から切り離し、充電終了電圧に達していない電池の充電を継続させるシステムが提案されている(特許文献1)。また、放電時も同様に、放電終止電圧に達した電池をバイパスして放電から切り離し、放電終止電圧に達してない電池の放電を継続させる電池システムが考えられる。
【0004】
しかしながら、上述した従来の電池システムでは、放電時において、電池のバイパス状態を切り替えるたびに負荷に対する給電が停止する。そこで、本出願人は、複数の電池から構成される組電池を複数、並列接続して、複数の組電池の1つがバイパス切り替え中でも、残りが負荷への給電を維持できるようにすることを考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-31249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術は、電池をバイパスして利用するため、組電池を並列接続すると、組電池間の総電圧に大きな差異が発生する。このため、総電圧の最も高い組電池からしか放電を行うことができなかった。また、総電圧の最も低い組電池しか充電を行うことができず、充電、放電の効率がよくない、という問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、充電又は放電の効率を向上した電池制御ユニットおよび電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電池制御ユニットおよび電池システムは、下記[1]~[]を特徴としている。
[1]
互いに並列接続された複数の組電池各々が有する、互いに直列接続された複数の電池、毎に設けられ、対応する前記電池が他の前記電池と直列接続された接続状態と、対応する前記電池が他の前記電池と直列接続から切り離された非接続状態と、に切り替える切替部と、
充電又は放電時に終止電圧に達したと判定した前記電池に対応する前記切替部を前記非接続状態に制御する第1制御部と、
複数の前記組電池の総電圧が同等になるように、前記終止電圧に達していない前記電池の前記切替部を前記非接続状態に制御する第2制御部と、を備え
前記第2制御部は、前記終止電圧に達していない前記電池のうち、前記非接続状態に制御するものの組み合わせを設定し、設定した組合せ毎に複数の前記組電池の前記総電圧を求め、複数の前記組電池の前記総電圧が同等となる組み合わせに従って前記切替部を制御する、
電池制御ユニットであること。

]に記載の電池制御ユニットにおいて、
前記第2制御部は、充電時において前記同等となる組み合わせ毎に、充電電力を求めて、求めた充電電力が最大となる組み合わせに従って前記切替部を制御する、
電池制御ユニットであること。

]又は[]に記載の電池制御ユニットにおいて、
前記第2制御部は、放電時において前記同等となる組み合わせのうち前記組電池の放電電力が最大となる組み合わせに従って前記切替部を制御する、
電池制御ユニットであること。

直列接続された複数の電池を有し、互いに並列接続された複数の組電池と、
[1]~[]の何れか1項に記載の電池制御ユニットと、を備えた、
電池システムであること。
【0009】
上記[1]および[]の構成の電池制御ユニットおよび電池システムによれば、第2制御部が、複数の組電池の総電圧が同等になるように、終止電圧に達していない電池の切替部を非接続状態に制御する。これにより、複数の組電池の総電圧が同等となり、同時に充電又は放電を行うことができ、充電又は放電の効率の向上を図ることができる。
更に、上記[および[4]の構成の電池制御ユニットおよび電池システムによれば、第2制御部は、終止電圧に達していない電池のうち、非接続状態に制御するものの組み合わせを設定し、設定した組合せ毎に複数の組電池の総電圧を求め、複数の組電池の総電圧が同等となる組み合わせに従って切替部を制御する。これにより、容易に、複数の組電池の総電圧が同等とすることができる。
上記[]の構成の電池制御ユニットによれば、第2制御部は、同等となる組み合わせ毎に、充電電力を求めて、求めた充電電力が最大となる組み合わせに従って切替部を制御する。これにより、充電電力を最大とすることができ、より一層、充電の効率の向上を図ることができる。
上記[]の構成の電池制御ユニットによれば、第2制御部は、同等となる組み合わせのうち組電池の放電電力が最大となる組み合わせに従って切替部を制御する。これにより、放電電力を最大とすることができ、より一層、放電の効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、充電又は放電の効率の向上を図ることができる電池制御ユニットおよび電池システムを提供することができる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の電池システムを示す回路図である。
図2図2は、図1に示す制御部の放電処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、図1に示す制御部の充電処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0014】
図1に示す電池システム1は、例えば劣化が進んだ電池を再利用して電力を供給する装置である。
【0015】
同図に示すように、電池システム1は、複数の組電池21、22と、電池制御ユニット3と、を備えている。複数の組電池21、22は、互いに並列接続されて、負荷10及び充電器40に接続されている。本実施形態では、説明を簡単にするために2つの組電池21、22を並列接続した例について説明するが、これに限ったものではない。組電池21、22の数は複数あればよく、3つ以上でもよい。
【0016】
組電池21は、複数の電池21a~21cを有している。組電池22は、複数の電池22a~22cを有している。本実施形態では、説明を簡単にするために、3つの電池21a~21c、22a~22cを直列接続した例について説明するが、これに限ったものではない。電池21a~21c、22a~22cの数は複数あればよく、2つでも、4つ以上でもよい。複数の電池21a~21c、22a~22cは各々、充放電可能な蓄電池であり、1つのセルから構成されていてもよいし、複数のセルから構成されていてもよい。
【0017】
電池制御ユニット3は、複数の切替部41a~41c、42a~42cと、複数の電圧測定部51a~51c、52a~52cと、複数の充放電制限部61、62と、制御部8と、を備えている。
【0018】
複数の切替部41a~41cは、複数の電池21a~21cに各々対応して設けられている。複数の切替部42a~42cは、複数の電池22a~22cに各々対応して設けられている。複数の切替部41a~41c、42a~42cは、互いに同じ構成である。
【0019】
切替部41a~41c、42a~42cは、対応する電池21a~21c、22a~22cが他の電池21a~21c、22a~22cと直列接続された接続状態と、対応する電池21a~21c、22a~22cが他の電池21a~21c、22a~22cとの直列接続から切り離された非接続状態と、の間で切り替え可能に設けられている。詳しく説明すると、切替部41a~41c、42a~42cにより接続状態に切り替えられた電池21a~21c、22a~22c同士が直列接続されて電源として用いられる。一方、切替部41a~41c、42a~42cにより非接続状態に切り替えられた電池21a~21c、22a~22cが接続状態の電池21a~21c、22a~22cから切り離されて電源として用いられなくなる。
【0020】
切替部41aは、電池21aに直列接続された第1スイッチSW11aと、電池21a及び第1スイッチSW11aに並列接続された第2スイッチSW12aと、から構成されている。第1スイッチSW11aは、一端T11が電池21aの一極(例えば正極)に接続されている。第2スイッチSW12aは、一端T21が電池21aの他極(例えば負極)に接続され、その他端T22が第1スイッチSW11aの他端T12に接続されている。切替部41b、41cについては、上述した切替部41aについての説明中の「a」を「b」、「c」にそれぞれ置き換えて説明することができるため、詳細な説明を省略する。
【0021】
切替部42aは、電池22aに直列接続された第1スイッチSW21aと、電池22a及び第1スイッチSW21aに並列接続された第2スイッチSW22aと、から構成されている。第1スイッチSW21aは、一端T11が電池22aの一極(例えば正極)に接続されている。第2スイッチSW22aは、一端T21が電池22aの他極(例えば負極)に接続され、その他端T22が第1スイッチSW21aの他端T12に接続されている。切替部42b、42cについては、上述した切替部42aについての説明中の「a」を「b」、「c」にそれぞれ置き換えて説明することができるため、詳細な説明を省略する。
【0022】
また、第1スイッチSW11bの他端T12は、電池21aの負極に接続され、第1スイッチSW11cの他端T12は、電池21bの負極に接続されている。即ち、互いに隣接する電池21a-電池21b間、電池21b-電池21c間にそれぞれ、第1スイッチSW11b、SW11cが接続されている。
【0023】
また、第1スイッチSW21bの他端T12は、電池22aの負極に接続され、第1スイッチSW21cの他端T12は、電池22bの負極に接続されている。即ち、互いに隣接する電池22a-電池22b間、電池22b-電池22c間にそれぞれ、第1スイッチSW21b、SW21cが接続されている。
【0024】
以上の構成によれば、第2スイッチSW12a~SW12c、SW22a~SW22cをオフし、第1スイッチSW11a~SW11c、SW21a~SW21cをオンすると、対応する電池21a~21c、22a~22cが接続状態となる。また、第1スイッチSW11a~SW11c、SW21a~SW21cをオフすると対応する電池21a~21c、22a~22cが非接続状態となる。このとき、第2スイッチSW12a~SW12c、SW22a~SW22cをオンするとバイパス経路が形成され、接続状態となっている電池21a~21c、22a~22cのみが直列に接続される。
【0025】
複数の電圧測定部51a~51c、52a~52cは、複数の電池21a~21c、22a~22cに各々対応して設けられている。複数の電圧測定部51a~51c、52a~52cは、対応する電池21a~21c、22a~22cの両端電圧を測定して、その測定結果を後述する制御部8に対して出力する。
【0026】
充放電制限部61、62は、2つの組電池21、22に各々対応して設けられている。充放電制限部61は、ダイオードD1と、スイッチSW1と、を有している。ダイオードD1は、電池放電方向が順方向となるように、組電池21に直列接続される。スイッチSW1は、組電池21に直列接続されると共に、ダイオードD1に並列接続される。
【0027】
上述した構成によれば、スイッチSW1をオフすると、組電池21にダイオードD1が接続され、他の組電池22から組電池21に対して流れ込む循環電流を遮断することができる。スイッチSW1をオンすると、ダイオードD1がバイパスされる。
【0028】
充放電制限部62は、ダイオードD2と、スイッチSW2と、を有している。ダイオードD2は、電池放電方向が順方向となるように、組電池22に直列接続される。スイッチSW2は、組電池22に直列接続されると共に、ダイオードD2に並列接続される。
【0029】
上述した構成によれば、スイッチSW2をオフすると、組電池22にダイオードD2が接続され、他の組電池21から組電池22に対して流れ込む循環電流を遮断することができる。スイッチSW2をオンすると、ダイオードD2がバイパスされる。
【0030】
制御部8は、周知のCPU、ROM、RAMから構成され、電池システム1全体の制御を司る。制御部8は、第1制御部として機能し、各電池21a~21c、22a~22cの両端電圧に基づいて第1スイッチSW11a~SW11c、SW21a~SW21c及び第2スイッチSW12a~SW12c、SW22a~SW22cをオンオフ制御する。詳しく説明すると、制御部8は、放電時又は充電時に放電終止電圧又は充電終止電圧に達した電池21a~21c、22a~22cを非接続状態としてバイパスさせる。
【0031】
また、制御部8は、複数の組電池21、22の総電圧が同等になるように、放電終止電圧又は充電終止電圧に達していない電池21a~21c、22a~22cの切替部41a~41c、42a~42cを非接続状態に制御する。この制御について簡単に説明する。まず、充電時における制御部8の動作について説明する。
【0032】
まず、制御部8は、電圧測定部51a~51c、52a~52cからの測定結果を取り込んで、組電池21、22の全電池21a~21c、22a~22cをバイパスさせずに使用した場合の総電圧を比較する。組電池21、22の総電圧とは、組電池21、22のうち接続状態となる電池21a~21c、22a~22cの両端電圧の合計である。即ち、制御部8は、全電池21a~21cの両端電圧の合計値を組電池21の総電圧として求め、全電池22a~22cの両端電圧の合計値を組電池22の総電圧として求める。そして、制御部8は、求めた組電池21、22の総電圧を比較する。
【0033】
このとき、組電池21、22の総電圧が同等であれば、両組電池21、22に対して充電電流が流れ、循環電流が流れることはない。制御部8は、組電池21、22に直列接続されたスイッチSW1、SW2をオンして、ダイオードD1、D2をバイパスさせる。これにより、組電池21、22の充電電流はオンしたスイッチSW1、SW2に流れるため、ダイオードD1、D2で発生する順方向電圧Vfによる損失が発生しない。
【0034】
なお、制御部8は、組電池21、22の総電圧の差分がΔVa(一定値)以内であれば、同等であると判定する。今、電池内部抵抗や各種デバイスの抵抗成分をRLとすると、循環電流ILは下記の式(1)で求められる。
IL=ΔVa/RL …(1)
【0035】
この循環電流ILが、下記の式(2)に示すように、電池21a~21c、22a~22cの定格電流Iを超えないような範囲でΔVaが決定される。
I>IL …(2)
【0036】
一方、組電池21、22の総電圧が同等でなければ、制御部8は、充電終止電圧に達していない電池21a~21c、電池22a~22cのうち、非接続状態に制御するものの組み合わせを設定する。本実施形態では、制御部8は、全ての組み合わせを設定する。その後、制御部8は、組み合わせ毎に複数の組電池21、22の総電圧を求め、複数の組電池21、22の総電圧が同等となる組み合わせに従って切替部41a~41c、42a~42cを制御する。
【0037】
具体的な例を挙げて説明する。今、電池21aが充電終止電圧に達していたとする。この場合、電池21b、21c、22a~22cが充電終止電圧に達していない。制御部8は、この電池21b、21c、22a~22cのうち非接続状態とする組み合わせを設定する。組み合わせとして、例えば、電池22aを非接続状態とする組み合わせAと、電池22bを非接続状態とする組み合わせBが設定されたとする。制御部8は、組み合わせA、Bにおいて接続状態となる電池21b、21cの両端電圧の合計値を組み合わせA、Bでの組電池21の総電圧として求める。
【0038】
また、制御部8は、組み合わせAにおいて接続状態となる電池22b、22cの両端電圧の合計値を組み合わせAでの組電池22の総電圧として求め、組み合わせBにおいて接続状態となる電池21a、21cの両端電圧の合計値を組み合わせBでの組電池22の総電圧として求める。そして、制御部8は、組み合わせA、Bでの組電池21、22の総電圧が同等であるか否かを判定する。制御部8は、組み合わせAでの組電池21、22の総電圧が同等であると判定すると、組み合わせAに従って充電終止に達していない電池22aを非接続状態にし、電池21b、21c、22b、22cを接続状態に制御する。電池21aは、充電終止電圧に達しているため非接続状態に制御される。
【0039】
一方、制御部8は、例えば、全ての組み合わせのうち組み合わせA、Bの双方とも組電池21、22の総電圧が同等であれば、各組み合わせA、Bにおける組電池21、22の充電電力を求める。制御部8は、組み合わせA、Bのうち充電電力が最大となる組み合わせに従って、電池21a~21c、22a~22cの非接続状態、接続状態を制御する。なお、組み合わせA、Bにおける組電池21、22の充電電力は、例えば、組み合わせAにおける組電池21、22の「総電圧」と、組み合わせA、Bにおいて接続状態となる電池21a~21c、22a~22cの現SOC状態における「許容最大充電電流」と、の積として求めることができる。
【0040】
このように、組電池21、22の総電圧が同等となる組み合わせで、電池21a~21c、22a~22cの非接続状態、接続状態を制御すれば、両組電池21、22に充電電流が供給され、循環電流が流れることはない。制御部8は、組電池21、22に直列接続されたスイッチSW1、SW2をオンして、ダイオードD1、D2をバイパスさせる。これにより、組電池21、22の充電電流はオンしたスイッチSW1、SW2に流れるため、ダイオードD1、D2で発生する順方向電圧Vfによる損失が発生しない。
【0041】
また、制御部8は、同等となる組み合わせ毎に、充電電力を求めて、求めた充電電力が最大となる組み合わせの電池を非接続状態に制御する。これにより、充電電力を最大とすることができ、より一層、充電の効率の向上を図ることができる。
【0042】
次に、放電時における制御部8の動作について簡単に説明する。まず、制御部8は、電圧測定部51a~51c、52a~52cからの測定結果を取り込んで、組電池21、22の全電池21a~21c、22a~22cをバイパスさせずに使用した場合の総電圧を比較する。総電圧は、組電池21、22のうち接続状態となる電池21a~21c、22a~22cの両端電圧の合計である。即ち、制御部8は、全電池21a~21cの両端電圧の合計値を組電池21の総電圧として求め、全電池22a~22cの両端電圧の合計値を組電池22の総電圧として求める。そして、制御部8は、求めた組電池21、22の総電圧を比較する。
【0043】
このとき、組電池21、22の総電圧が同等であれば、両組電池21、22から負荷10に対して放電電流が流れ、循環電流が流れることはない。制御部8は、組電池21、22に直列接続されたスイッチSW1、SW2をオンして、ダイオードD1、D2をバイパスさせる。これにより、組電池21、22の放電電流はオンしたスイッチSW1、SW2に流れるため、ダイオードD1、D2で発生する順方向電圧Vfによる損失が発生しない。なお、制御部8は、充電時と同様に、組電池21、22の総電圧の差分がΔVa(一定値)以内であれば、同等であると判定する。
【0044】
一方、組電池21、22の総電圧が同等でなければ、制御部8は、放電終止電圧に達していない電池21a~21c、電池22a~22cのうち、非接続状態に制御するものの組み合わせを設定する。本実施形態では、制御部8は、全ての組み合わせを設定する。その後、制御部8は、全ての組み合わせ毎に複数の組電池21、22の総電圧を求め、複数の組電池21、22の総電圧が同等となる組み合わせの電池21a~21c、22a~22cを非接続状態に制御する。
【0045】
一方、制御部8は、全ての組み合わせのうち組電池21、22の総電圧が同等のものが複数あれば、同等の組み合わせのうち組電池21、22の総電圧が最大となる組み合わせに従って、電池21a~21c、22a~22cの非接続状態、接続状態を制御する。
【0046】
このように、組電池21、22の総電圧が同等となる組み合わせで、電池21a~21c、22a~22cの非接続状態、接続状態を制御すれば、両組電池21、22から負荷10に対して放電電流が流れ、循環電流が流れることはない。制御部8は、組電池21、22に直列接続されたスイッチSW1、SW2をオンして、ダイオードD1、D2をバイパスさせる。これにより、組電池21、22の放電電流はオンしたスイッチSW1、SW2に流れるため、ダイオードD1、D2で発生する順方向電圧Vfによる損失が発生しない。
【0047】
また、制御部8は、同等となる組み合わせのうち組電池21、22の総電圧が最大となる組み合わせの電池21a~21c、22a~22cを非接続状態に制御する。総電圧は組電池21、22の放電電力にほぼ比例する値である。これにより、放電電力を最大とすることができ、より一層、放電の効率の向上を図ることができる。
【0048】
次に、上記概略で説明した電池システム1の充電時の動作について図2を参照して説明する。図2は、図1に示す制御部8の充電処理手順を示すフローチャートである。制御部8は、外部システムなどから充電信号を受信すると充電処理を実行する。まず、制御部8は、全第1スイッチSW11a~SW11c、SW21a~SW21c、全第2スイッチSW12a~SW12c、SW22a~SW22c、スイッチSW1、SW2をオフにする(ステップS1)。その後、制御部8は、全第1スイッチSW11a~SW11c、SW21a~SW21cをオンする(ステップS2)。
【0049】
次に、制御部8は、充電終止電圧に達していない電池21a~21c、22a~22cのうち、非接続状態に制御するものの組み合わせを設定し、設定した組み合わせのうち組電池21、22の総電圧が等しく、かつ、充電電力が最も高い組み合わせを1つ選ぶ(ステップS3)。なお、充電処理の開始から最初にステップS3に進んだ場合、制御部8は、全ての電池21a~21c、22a~22cが充電終止電圧に達していないとして、組み合わせを設定する。そのときの組み合わせの1つとして、非接続状態に制御する電池21a~21c、22a~22cがないもの(全ての電池21a~21c、22a~22cをバイパスしない組み合わせ)も含まれる。
【0050】
その後、制御部8は、充電終止電圧に達していない電池21a~21c、22a~22cが、ステップS3で選択した組み合わせに従ったバイパス状態となるように切替部41a~41c、42a~42cを制御する(ステップS4)。次に、制御部8は、スイッチSW1、SW2をオンしたダイオードD1、D2をバイパスさせ(ステップS5)、組電池21、22に充電器40を接続して充電を開始する(ステップS6)。
【0051】
次に、制御部8は、各組電池21、22に流れる充電電流を計測し、計測した各充電電流が「許容最大充電電流」以下になるように充電電流を制御する(ステップS7)。具体的には、制御部8は、充電電流が「許容最大充電電流」を超えると、充電器40の出力電圧を低下させる。
【0052】
その後、制御部8は、電圧測定部51a~51c、52a~52cにより測定された電池21a~21c、22a~22cを取り込み、充電終止電圧に達した電池21a~21c、22a~22cがあるか否かを判定する(ステップS8)。充電終止電圧に達した電池21a~21c、22a~22cがなければ(ステップS8でN)、制御部8は、ステップS3に戻る。
【0053】
一方、充電終止電圧に達した電池21a~21c、22a~22cがあれば(ステップS8でY)、制御部8は、全電池21a~21c、22a~22cが充電終止電圧に達したか否かを判定する(ステップS9)。全電池21a~21c、22a~22cが充電終止電圧に達してなければ(ステップS9でN)、制御部8は、充電終止電圧に達したと判定された電池21a~21c、22a~22cに対応する第1スイッチSW11a~SW11c、SW21a~SW21cをオフ、第2スイッチSW12a~SW12c、SW22a~SW22cをオンして、充電終止電圧に達した電池21a~21c、22a~22cをバイパスした後(ステップS10)、ステップS3に戻る。
【0054】
なお、ステップS3~S6は、毎回、実行されなくてもよい。例えば、制御部8は、組電池21、22の総電圧が前回のステップS3の実行時に比べて一定値以上変化した場合のみ、ステップS3~S6を実行するようにしてもよい。これにより、電池21a~21c、22a~22cのバイパス状態の変更が頻繁に行われることを避けることができる。
【0055】
また、全ての電池21a~21c、22a~22cが充電終止電圧に達していれば(ステップS9でY)、制御部8は、充電を停止すると共に(ステップS11)、全第1スイッチSW11a~SW11c、SW21a~SW21c、全第2スイッチSW12a~SW12c、SW22a~SW22c、スイッチSW1、SW2をオフする(ステップS12)。その後、制御部8は、全第1スイッチSW11a~SW11c、SW21a~SW21cをオンした後(ステップS13)、充電処理を終了する。
【0056】
次に、上記概略で説明した電池システム1の放電時の動作について図3を参照して説明する。図3は、図1に示す制御部8の放電処理手順を示すフローチャートである。なお、図3において、上述した図2と同等のステップについては、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。制御部8は、充電処理と同様にステップS1、S2を実行する。
【0057】
次に、制御部8は、放電終止電圧に達していない電池21a~21c、22a~22cのうち、非接続状態に制御するものの組み合わせを設定し、設定した組み合わせのうち組電池21、22の総電圧が等しく、かつ、総電圧が最も高い組み合わせを1つ選ぶ(ステップS21)。なお、放電開始から最初にステップS21に進んだ場合、制御部8は、全ての電池21a~21c、22a~22cが放電終止電圧に達していないとして、組み合わせを設定する。そのときの組み合わせの1つとして、非接続状態に制御する電池21a~21c、22a~22cがないもの(全ての電池21a~21c、22a~22cをバイパスしない組み合わせ)も含まれる。
【0058】
その後、制御部8は、放電終止電圧に達していない電池21a~21c、22a~22cが、ステップS21で選択した組み合わせに従ったバイパス状態となるように切替部41a~41c、42a~42cを制御する(ステップS22)。次に、制御部8は、スイッチSW1、SW2をオンしたダイオードD1、D2をバイパスさせ(ステップS23)、放電を開始する(ステップS24)。
【0059】
その後、制御部8は、電圧測定部51a~51c、52a~52cにより測定された電池21a~21c、22a~22cを取り込み、放電終止電圧に達した電池21a~21c、22a~22cがあるか否かを判定する(ステップS25)。放電終止電圧に達した電池21a~21c、22a~22cがなければ(ステップS26でN)、制御部8は、ステップS21に戻る。
【0060】
一方、放電終止電圧に達した電池21a~21c、22a~22cがあれば(ステップS26でY)、制御部8は、全電池21a~21c、22a~22cが放電終止電圧に達したか否かを判定する(ステップS27)。全電池21a~21c、22a~22cが放電終止電圧に達してなければ(ステップS27でN)、制御部8は、放電終止電圧に達したと判定された電池21a~21c、22a~22cに対応する第1スイッチSW11a~SW11c、SW21a~SW21cをオフ、第2スイッチSW12a~SW12c、SW22a~SW22cをオンして、放電終止電圧に達した電池21a~21c、22a~22cをバイパスした後(ステップS27)、ステップS21に戻る。
【0061】
なお、ステップS21~S25は、毎回、実行されなくてもよい。例えば、制御部8は、組電池21、22の総電圧が前回のステップS3の実行時に比べて一定値以上変化した場合のみ、ステップS21~S25を実行するようにしてもよい。これにより、電池21a~21c、22a~22cのバイパス状態の変更が頻繁に行われることを避けることができる。
【0062】
また、全ての電池が放電終止電圧に達していれば(ステップS27でY)、制御部8は、充電処理と同様にステップS11~S13を実行して、放電処理を終了する。
【0063】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0064】
上述した実施形態によれば、充電終止電圧又は放電終止電圧に達していない電池21a~21c、22a~22cのうち非接続状態に制御するものの組み合わせを設定する際、全ての組み合わせを設定していたが、これに限ったものではない。組電池21、22の総電圧を同等とできるようであれば、どのような組み合わせを設定してもよい。
【0065】
また、上述した実施形態によれば、切替部41a~41c、42a~42cとしては、2つの第1スイッチSW11a~SW11c、SW21a~SW21c、第2スイッチSW12a~SW12c、SW22a~SW22cとから構成されていたが、これに限ったものではない。切替部41a~41c、42a~42cとしては、電池21a~21c、22a~22cと、電池21a~21c、22a~22cに並列接続されたバイパス回路と、の何れかを選択する切替スイッチから構成されていてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態によれば、制御部8は、放電時において、組電池21、22の総電圧が同等となる組み合わせのうち組電池21、22の総電圧が最大となる組み合わせの電池21a~21c、22a~22cを非接続状態に制御して、放電電力を最大としていたが、これに限ったものではない。制御部8は、放電時において同等となる組み合わせ毎に、放電電力を求めて、求めた放電電力が最大となる組み合わせに従って切替部41a~41c、42a~42cを制御するようにしてもよい。なお、放電電力は、電圧測定部51a~51cにより測定された組電池21、22の電圧とその状態において、上記組電池21、22に予め容易された最大出力電流マップに基づき算出してもよいし、他の方法により決定してもよい。
【0067】
また、上述した実施形態によれば、充電電力は、組電池21、22の総電圧と、許容最大充電電流との積として求めていたが、これに限ったものではない。充電電力は、電圧測定部51a~51cにより測定された組電池21、22の電圧とその状態において、上記組電池21、22に予め用意された最大入力電流マップに基づき算出してもよいし、他の方法により決定してもよい。
【0068】
ここで、上述した本発明に係る電池制御ユニットおよび電池システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
互いに並列接続された複数の組電池(21、22)各々が有する、互いに直列接続された複数の電池(21a~21c、22a~22c)、毎に設けられ、対応する前記電池(21a~21c、22a~22c)が他の前記電池(21a~21c、22a~22c)と直列接続された接続状態と、対応する前記電池(21a~21c、22a~22c)が他の前記電池(21a~21c、22a~22c)と直列接続から切り離された非接続状態と、に切り替える切替部(41a~41c、42a~42c)と、
充電又は放電時に終止電圧に達したと判定した前記電池(21a~21c、22a~22c)に対応する前記切替部(41a~41c、42a~42c)を前記非接続状態に制御する第1制御部(8)と、
複数の前記組電池(21、22)の総電圧が同等になるように、前記終止電圧に達していない前記電池(21a~21c、22a~22c)の前記切替部(41a~41c、42a~42c)を前記非接続状態に制御する第2制御部(8)と、を備えた、
電池制御ユニット(3)。
[2]
[1]に記載の電池制御ユニット(3)において、
前記第2制御部(8)は、前記終止電圧に達していない前記電池(21a~21c、22a~22c)のうち、前記非接続状態に制御するものの組み合わせを設定し、設定した組合せ毎に複数の前記組電池(21、22)の前記総電圧を求め、複数の前記組電池(21、22)の前記総電圧が同等となる組み合わせに従って前記切替部(41a~41c、42a~42c)を制御する、
電池制御ユニット(3)。
[3]
[2]に記載の電池制御ユニット(3)において、
前記第2制御部(8)は、充電時において前記同等となる組み合わせ毎に、充電電力を求めて、求めた充電電力が最大となる組み合わせに従って前記切替部(41a~41c、42a~42c)を制御する、
電池制御ユニット(3)。
[4]
請求項2又は3に記載の電池制御ユニット(3)において、
前記第2制御部(8)は、放電時において前記同等となる組み合わせのうち前記組電池(21、22)の放電電力が最大となる組み合わせに従って前記切替部(41a~41c、42a~42c)を制御する、
電池制御ユニット(3)。
[5]
直列接続された複数の電池(21a~21c、22a~22c)を有し、互いに並列接続された複数の組電池(21、22)と、
[1]~[4]何れか1項に記載の電池制御ユニット(3)と、を備えた、
電池システム(1)。
【符号の説明】
【0069】
1 電池システム
3 電池制御ユニット
8 制御部(第1制御部、第2制御部)
21、22 組電池
21a~21c 電池
22a~22c 電池
41a~41c 切替部
42a~42c 切替部
図1
図2
図3