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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20230614BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H01L21/30 501
H01L21/30 502D
H01L21/68 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019170831
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021048326
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】有澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正也
(72)【発明者】
【氏名】春本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
(72)【発明者】
【氏名】中山 知佐世
(72)【発明者】
【氏名】本野 智大
(72)【発明者】
【氏名】宮本 周治
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-107392(JP,A)
【文献】特開2002-346379(JP,A)
【文献】特開昭63-260028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0160946(US,A1)
【文献】特開2018-137378(JP,A)
【文献】特開2018-159828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が円形状を有する基板に露光処理を行う露光装置であって、
前記基板を収容可能な処理空間を形成するとともに上部開口および下部開口を有する円筒形状の周壁部材と、
前記周壁部材の前記上部開口を塞ぐように前記周壁部材の上方に設けられかつ前記処理空間に真空紫外線を出射可能な出射面を有する光出射部と、
前記周壁部材の下方で上下方向に移動可能に設けられかつ前記下部開口を閉塞可能および開放可能に構成された閉塞部材と、
前記基板が前記出射面に対向するように前記出射面と前記閉塞部材との間に前記基板を支持する基板支持部と、
前記処理空間内で前記基板支持部により前記基板が支持されかつ前記閉塞部材により前記下部開口が閉塞された状態で前記処理空間に不活性ガスを供給する供給部と、
前記処理空間内で前記基板支持部により前記基板が支持されかつ前記閉塞部材により前記下部開口が閉塞された状態で前記処理空間内の雰囲気を前記処理空間の外部へ排出する排出部とを備え、
前記周壁部材の内部には、前記周壁部材の外部と前記処理空間とを連通する第1の気体流路および第2の気体流路が形成され、
前記供給部は、前記第1の気体流路を通して前記処理空間内に不活性ガスを供給可能に設けられ、
前記排出部は、前記第2の気体流路を通して前記処理空間内の雰囲気を前記処理空間の外部に排出可能に設けられ、
前記第1の気体流路および前記第2の気体流路は、前記処理空間内で前記基板支持部により支持された基板より上方に設けられる、露光装置。
【請求項2】
前記第1の気体流路は、前記周壁部材の内周面に繋がる単一の開口を有し、前記不活性ガスを前記開口から前記処理空間内に単一の方向に向けて供給可能に設けられた、請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記第1の気体流路および前記第2の気体流路は、前記周壁部材のうち前記処理空間を挟んで互いに対向する部分にそれぞれ形成された、請求項1または2記載の露光装置。
【請求項4】
前記閉塞部材は、前記出射面に対向する平坦な上面を有し、
前記閉塞部材の前記上面には、複数の前記基板支持部が取り付けられた、請求項1~3のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記処理空間の下方の位置で上下方向に延びかつ前記基板を支持可能な複数の上端部をそれぞれ有する複数の支持ピンをさらに備え、
前記閉塞部材は、前記複数の支持ピンが挿入される複数の貫通孔を有し、
前記複数の支持ピンは、前記閉塞部材により前記下部開口が閉塞されたときに前記複数の支持ピンの上端部が前記複数の基板支持部の上端よりも下方に位置し、前記閉塞部材により前記下部開口が開放されたときに前記複数の支持ピンの上端部が前記複数の基板支持部の上端よりも上方に位置するように設けられた、請求項4記載の露光装置。
【請求項6】
前記光出射部および前記供給部を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記処理空間内で前記基板支持部により前記基板が支持されかつ前記閉塞部材により前記下部開口が閉塞された時点から予め定められた第1の時間中第1の流量で前記処理空間内に不活性ガスが供給され、前記第1の時間の経過時点から第2の時間中前記第1の流量よりも低い第2の流量で前記処理空間内に不活性ガスが供給されるように前記供給部を制御するとともに、前記第2の時間中前記出射面から前記基板に真空紫外線が出射されるように前記光出射部を制御する、請求項1~5のいずれか一項に記載の露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外線を用いて基板に露光処理を行う露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された膜を改質させるために、真空紫外線が用いられる場合がある。例えば、特許文献1には、基板上の誘導自己組織化材料を含む膜に真空紫外線を用いて露光処理を行う露光装置が記載されている。
【0003】
その露光装置は、処理室、投光部および閉塞部を備える。処理室は、上部開口および内部空間を有する。投光部は処理室の上部開口を塞ぐように処理室の上方に配置されている。処理室の側面には、処理室の内部と外部との間で基板を搬送するための搬送開口が形成されている。閉塞部は、シャッタにより搬送開口を開閉可能に構成されている。
【0004】
基板の露光処理時には、まず搬送開口が開放され、その搬送開口を通して処理室の内部に基板が搬入される。次に、処理室の内部に基板が配置された状態で、搬送開口が閉塞され、その処理室の内部空間が密閉される。また、基板に照射される真空紫外線が酸素により減衰することを低減するために、処理室内の雰囲気が不活性ガスで置換される。処理室内の酸素濃度が予め定められた濃度まで低減されると、処理室の上部開口を通して基板に真空紫外線が照射される。これにより、基板上の膜が改質される。その後、搬送開口が再度開放され、露光後の基板が処理室の外部に搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-159828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1に記載された露光装置においては、1枚の基板について露光処理が行われるごとに、処理室内の酸素濃度が予め定められた濃度に到達するまで処理室内の雰囲気を不活性ガスで置換する必要がある。この場合、露光処理の効率を向上させるために、処理室内の雰囲気の置換に要する時間は短くすることが望ましい。
【0007】
本発明の目的は、単純かつコンパクトな構成で基板の清浄度を低下させることなく露光処理の効率を向上させることが可能な露光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る露光装置は、少なくとも一部が円形状を有する基板に露光処理を行う露光装置であって、基板を収容可能な処理空間を形成するとともに上部開口および下部開口を有する円筒形状の周壁部材と、周壁部材の上部開口を塞ぐように周壁部材の上方に設けられかつ処理空間に真空紫外線を出射可能な出射面を有する光出射部と、周壁部材の下方で上下方向に移動可能に設けられかつ下部開口を閉塞可能および開放可能に構成された閉塞部材と、基板が出射面に対向するように出射面と閉塞部材との間に基板を支持する基板支持部と、処理空間内で基板支持部により基板が支持されかつ閉塞部材により下部開口が閉塞された状態で処理空間に不活性ガスを供給する供給部と、処理空間内で基板支持部により基板が支持されかつ閉塞部材により下部開口が閉塞された状態で処理空間内の雰囲気を処理空間の外部へ排出する排出部とを備え、周壁部材の内部には、周壁部材の外部と処理空間とを連通する第1の気体流路および第2の気体流路が形成され、供給部は、第1の気体流路を通して処理空間内に不活性ガスを供給可能に設けられ、排出部は、第2の気体流路を通して処理空間内の雰囲気を処理空間の外部に排出可能に設けられ、第1の気体流路および第2の気体流路は、処理空間内で基板支持部により支持された基板より上方に設けられる。
【0009】
その露光装置においては、基板が光出射部の出射面に対向するように、出射面と閉塞部材の間に基板が支持される。周壁部材の下部開口は閉塞部材により閉塞され、処理空間内の雰囲気が不活性ガスで置換される。この状態で、光出射部の出射面から基板に真空紫外線が出射され、基板が露光される。この露光時には、処理空間内の酸素濃度が不活性ガスにより低下しているので、光出射部の出射面から基板に出射される真空紫外線の減衰が低減される。
【0010】
上記の構成によれば、周壁部材は基板の形状に対応する円筒形状を有するので、処理空間の容積を小さくすることができる。それにより、処理空間内の雰囲気を不活性ガスにより迅速に置換することができる。したがって、処理空間の酸素濃度を短時間で低下させることができる。
【0011】
また、円筒形状の周壁部材により形成される処理空間には気体が滞留するような隅部が存在しない。そのため、処理空間内の雰囲気を不活性ガスにより置換する際には、周壁部材の内周面に沿って円滑な気体の流れが形成される。それにより、処理空間にはパーティクルが残留しにくい。したがって、処理空間内の基板の清浄度を向上させることが可能である。
【0012】
さらに、閉塞部材が周壁部材の下部開口を開閉することにより、処理空間内に基板を搬入することおよび処理空間内から基板を搬出することが可能である。閉塞部材が上下方向に移動することにより単純な構成および動作で下部開口を開閉することができる。したがって、周壁部材に基板の搬入搬出口を設けるとともにその搬入搬出口を開閉するための複雑な機構を設ける必要がなくなる。
【0013】
これらの結果、単純かつコンパクトな構成で基板の清浄度を低下させることなく露光処理の効率を向上させることが可能になる。
【0014】
(2)前記第1の気体流路は、前記周壁部材の内周面に繋がる単一の開口を有し、前記不活性ガスを前記開口から前記処理空間内に単一の方向に向けて供給可能に設けられてもよい
【0015】
この場合、処理空間内に不活性ガスを供給するための配管またはノズル等の部材を設ける必要がない。また、処理空間内にその内部の雰囲気を処理空間の外部に排出するための配管またはノズル等の部材を設ける必要がない。それにより、処理空間内で気体の流れの妨げとなる領域が低減されるので、処理空間にパーティクルが残留しにくくなる。
【0016】
(3)第1の気体流路および第2の気体流路は、周壁部材のうち処理空間を挟んで互いに対向する部分にそれぞれ形成されてもよい。
【0017】
この場合、処理空間において、第1の気体流路から第2の気体流路に向かって円滑な気体の流れが形成される。それにより、処理空間内の雰囲気を不活性ガスにより円滑に置換することができるので、雰囲気の置換に要する時間が短縮される。また、処理空間内の乱流の発生が抑制されるので、処理空間内の複数の部分における酸素濃度を均一に保つことができる。したがって、基板に対して均一な露光を行うことが可能になる。
【0018】
(4)閉塞部材は、出射面に対向する平坦な上面を有し、閉塞部材の上面には、複数の基板支持部が取り付けられてもよい。
【0019】
この場合、複数の基板支持部が閉塞部材の平坦な上面上に共通して取り付けられるので、閉塞部材への複数の基板支持部の取付時には、複数の基板支持部の上下方向の位置を容易かつ正確に合わせることができる。それにより、基板支持部により支持される基板が出射面に対して傾斜することが防止され、基板に対して均一な露光を行うことが可能になる。
【0020】
(5)露光装置は、処理空間の下方の位置で上下方向に延びかつ基板を支持可能な複数の上端部をそれぞれ有する複数の支持ピンをさらに備え、閉塞部材は、複数の支持ピンが挿入される複数の貫通孔を有し、複数の支持ピンは、閉塞部材により下部開口が閉塞されたときに複数の支持ピンの上端部が複数の基板支持部の上端よりも下方に位置し、閉塞部材により下部開口が開放されたときに複数の支持ピンの上端部が複数の基板支持部の上端よりも上方に位置するように設けられてもよい。
【0021】
この場合、処理空間への基板の搬入時には、閉塞部材により下部開口が開放された状態で処理空間の下方の位置で露光装置の外部から複数の支持ピンの上端部上に基板が載置される。その後、閉塞部材により下部開口が閉塞される際には、閉塞部材が複数の支持ピンに対して上方に移動することにより複数の基板支持部の上端が複数の支持ピンの上端部よりも上方に移動する。それにより、基板が複数の支持ピンから複数の基板支持部に渡され、基板が処理空間内で支持される。
【0022】
一方、処理空間からの基板の搬出時には、閉塞部材が複数の支持ピンに対して下方に移動することにより複数の基板支持部の上端が複数の支持ピンの上端部よりも下方に移動する。それにより、基板が複数の基板支持部から複数の支持ピンに渡され、基板が処理空間の下方で支持される。このように、閉塞部材を上下方向に移動させることにより、単純な構成および動作で処理空間に対する基板の搬入および搬出を行うことが可能である。
【0023】
(6)露光装置は、光出射部および供給部を制御する制御部をさらに備え、制御部は、処理空間内で基板支持部により基板が支持されかつ閉塞部材により下部開口が閉塞された時点から予め定められた第1の時間中第1の流量で処理空間内に不活性ガスが供給され、第1の時間の経過時点から第2の時間中第1の流量よりも低い第2の流量で処理空間内に不活性ガスが供給されるように供給部を制御するとともに、第2の時間中出射面から基板に真空紫外線が出射されるように光出射部を制御してもよい。
【0024】
上記の制御によれば、下部開口が閉塞された後、基板の露光前に比較的高い第1の流量で処理空間内に不活性ガスが供給され、処理空間内の雰囲気が排出される。それにより、処理空間内の雰囲気の大部分を短時間で不活性ガスに置換することができる。
【0025】
その後、基板の露光時には比較的低い第2の流量で処理空間内に不活性ガスが供給され、処理空間内の雰囲気が排出される。この場合、処理空間内に生じる気体の流れが低下する。それにより、基板の露光中に処理空間内に残留するパーティクルが不活性ガスの気流により飛散することが防止される。したがって、基板の露光中にパーティクルが処理空間内を飛散することによる処理不良の発生が防止される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、単純かつコンパクトな構成で基板の清浄度を低下させることなく露光処理の効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係る露光装置の構成を示す模式的断面図である。
図2図1の露光装置のうち一部の構成要素の動作を説明するための斜視図である。
図3図1の露光装置の一部の構成要素を示す模式的平面図である。
図4】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図5】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図6】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図7】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図8】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図9】露光処理時における露光装置の基本動作を説明するための模式的側面図である。
図10図4図9の露光装置の動作を実現するために図1の制御部により行われる一連の処理を示すフローチャートである。
図11図4図9の露光装置の動作を実現するために図1の制御部により行われる一連の処理を示すフローチャートである。
図12】処理空間内の雰囲気の置換方法の一例を説明するための図である。
図13】処理空間内の雰囲気の置換方法の他の例を説明するための図である。
図14】処理空間内の雰囲気の置換方法のさらに他の例を説明するための図である。
図15図1の露光装置を備える基板処理装置の一例を示す模式的ブロック図である。
図16】他の実施の形態に係る露光装置の構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る露光装置について図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、基板とは、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。なお、以下に説明する基板は、少なくとも一部が円形状を有する基板であり、例えばノッチまたはオリエンテーションフラットが形成された円形基板である。また、基板の主面には、真空紫外線により改質される膜が形成されているものとする。
【0029】
さらに、以下に説明する露光装置においては、基板の主面が上方に向けられかつ基板の裏面(主面とは反対側の面)が下方に向けられた状態で、その基板の主面に上方から約120nm以上約230nm以下の波長を有する紫外線(以下、真空紫外線と呼ぶ。)が照射される。したがって、以下の説明において、基板の上面は基板の主面であり、基板の下面は基板の裏面である。
【0030】
[1]露光装置の構成
図1は本発明の実施の形態に係る露光装置の構成を示す模式的断面図であり、図2図1の露光装置100のうち一部の構成要素の動作を説明するための斜視図である。図1に示すように、露光装置100は、光出射部10、周壁部材20、下蓋部材30、基板支持機構40、気体供給系51、気体排出系52、昇降駆動部53および制御部60を含む。
【0031】
その露光装置100においては、基板Wに露光処理を行うための処理空間20Sが周壁部材20により形成される。具体的には、周壁部材20は、扁平な円筒形状を有する。周壁部材20の内周面により取り囲まれる空間が処理空間20Sとして用いられる。また、周壁部材20は、円環状の平坦な上端面23および下端面24を有する。上端面23の内側には上部開口21が形成され、下端面24の内側には下部開口22が形成されている。
【0032】
周壁部材20の上部開口21を塞ぐように周壁部材20の上方に光出射部10が設けられている。光出射部10は、ハウジング11、透光板13、面状の光源部14および電源装置15を含む。
【0033】
ハウジング11は、底壁部11a、角筒形状の周壁部11bおよび天井部11cを有する。底壁部11a、周壁部11bおよび天井部11cにより内部空間10Sが形成される。なお、図2では、光出射部10のうちハウジング11のみが一点鎖線で示される。
【0034】
図1に示すように、ハウジング11の底壁部11aには、下部開口12が形成されている。下部開口12は、例えば円形状を有する。下部開口12の内径は、周壁部材20の内径よりもやや小さい。透光板13は、下部開口12を閉塞するように底壁部11aに取り付けられている。本実施の形態では、透光板13は石英ガラス板である。透光板13の材料として、真空紫外線を透過する他の材料が用いられてもよい。
【0035】
光源部14および電源装置15は、ハウジング11の内部空間10Sに収容される。光源部14は、真空紫外線を出射する複数の棒形状の光源素子LEが所定間隔で水平に配列された構成を有する。各光源素子LEは、例えばキセノンエキシマランプであってもよいし、他のエキシマランプまたは重水素ランプ等であってもよい。電源装置15は、光源部14に電力を供給する。
【0036】
底壁部11aの下面には、透光板13の下面が出射面13Sとして処理空間20Sに向くように、周壁部材20の上端面23が接続されている。このような構成により、光源部14から発生される真空紫外線は、出射面13Sを通して処理空間20S内に出射される。
【0037】
下蓋部材30は、周壁部材20の下方で上下方向に移動可能に設けられている。また、下蓋部材30は、上下方向の移動により下部開口22を閉塞可能および開放可能に構成されている。以下、下蓋部材30が下部開口22を閉塞する位置を蓋閉塞位置と呼び、下蓋部材30が下部開口22を開放する位置を蓋開放位置と呼ぶ。昇降駆動部53は、例えばステッピングモータを含み、図2に太い点線の矢印で示すように、蓋閉塞位置と蓋開放位置との間で下蓋部材30を上下方向に移動させる。
【0038】
下蓋部材30は、光出射部10の出射面13Sに対向する平坦な上面31を有する。下蓋部材30の上面31には、図1に示すように、シール部材39が取り付けられている。下蓋部材30が蓋閉塞位置にある状態においては、シール部材39が周壁部材20の下端面24のうち下部開口22を取り囲む部分に密着する。シール部材39は、例えばOリングからなる。
【0039】
また、下蓋部材30の上面31には、基板Wの下面を支持可能に構成された複数(本例では3つ)の支持部材38が取り付けられている。各支持部材38は、球状のプロキシミティボールであり、例えばセラミック等で形成される。
【0040】
さらに、下蓋部材30の中央部には、後述する複数の支持ピン41にそれぞれ対応する複数の貫通孔32が形成されている。また、下蓋部材30の下面における複数の貫通孔32の形成部分には、一定距離下方に延びるように複数の収容管33が設けられている。各収容管33は、貫通孔32の内径と同じ内径を有する。収容管33の下端部には、その収容管33の内周面からその軸心に向かうように形成された内向きフランジが形成されている。
【0041】
基板支持機構40は、複数(本例では3つ)の支持ピン41およびピン連結部材42を含む。各支持ピン41は、先端部材41aおよび支持軸41bを含む。複数の支持軸41bは、それぞれ上下方向に延びるように設けられ、下蓋部材30の複数の貫通孔32および複数の収容管33にそれぞれ挿入されている。ピン連結部材42は、複数の支持軸41bの下端部を連結するとともに露光装置100の図示しないベース部分に固定されている。複数の先端部材41aは、複数の支持軸41bの上端部にそれぞれ設けられ、例えばセラミックまたは樹脂等で形成される。
【0042】
下蓋部材30が蓋開放位置にある場合、複数の先端部材41a(複数の支持ピン41の上端部)は、下蓋部材30に取り付けられた複数の支持部材38の上端よりも上方に位置する。それにより、図1に示すように、複数の先端部材41a上に処理対象の基板Wを載置することが可能になる。このとき、基板Wの上面は光出射部10の出射面13Sに対向する。
【0043】
下蓋部材30が蓋開放位置から蓋閉塞位置に向けて上方に移動すると、基板支持機構40の複数の先端部材41aは、下蓋部材30の複数の貫通孔32を通して収容管33の内部に収容される。そのため、下蓋部材30が蓋閉塞位置にある場合、複数の先端部材41a(複数の支持ピン41の上端部)は、下蓋部材30に取り付けられた複数の支持部材38の上端よりも下方に位置する。それにより、複数の先端部材41a上に支持された基板Wは、複数の支持部材38に渡される。
【0044】
ここで、基板支持機構40の各先端部材41aには、支持軸41bの直径よりも大きい直径を有する外向きフランジが形成されている。一方、複数の収容管33の各々の下端部に形成された内向きフランジの上面部分には、先端部材41aの外向きフランジの下面に接触可能なシール部材(図示せず)が設けられている。これらのシール部材は、例えばOリングからなる。また、各シール部材は、下蓋部材30が蓋閉塞位置にあるときに、処理空間20S、貫通孔32の内部空間および収容管33の内部空間と処理空間20Sの外部との間の気体の流れを遮断する。それにより、処理空間20Sが密閉される。
【0045】
図1の気体供給系51は、配管51a、不活性ガス供給源(図示せず)およびバルブ(図示せず)等を含む。また、気体排出系52は、配管52a、バルブ(図示せず)および排気設備(図示せず)等を含む。
【0046】
周壁部材20の内部には、周壁部材20の外部と処理空間20Sとを連通する第1の気体流路25および第2の気体流路26が形成されている。周壁部材20においては、第1の気体流路25および第2の気体流路26は、処理空間20Sを挟んで互いに対向するように形成される(後述する図3参照)。
【0047】
第1および第2の気体流路25,26の各々は、周壁部材20の外周面から内周面にかけて形成された貫通孔により構成される。第1の気体流路25には、気体供給系51から延びる配管51aが接続されている。第2の気体流路26には、気体排出系52から延びる配管52aが接続されている。
【0048】
気体供給系51は、図示しない不活性ガス供給源から配管51aおよび第1の気体流路25を通して処理空間20Sに不活性ガスを供給する。本実施の形態では、不活性ガスとして窒素ガスが用いられる。気体排出系52は、周壁部材20の処理空間20Sの雰囲気を第2の気体流路26および配管52aを通して周壁部材20の外部に排出する。
【0049】
配管52aには、酸素濃度計29が設けられる。酸素濃度計29は、配管52aを流れる気体の酸素濃度を処理空間20S内の酸素濃度として計測し、計測された酸素濃度を所定周期で制御部60に与える。酸素濃度計29は、例えばガルバニ電池式酸素センサまたはジルコニア式酸素センサである。
【0050】
制御部60は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリにより構成される。制御部60のメモリには、各種制御プログラムが記憶されている。制御部60のCPUがメモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、図1に一点鎖線の矢印で示すように、露光装置100内の各構成要素の動作が制御される。
【0051】
図3は、図1の露光装置100の一部の構成要素を示す模式的平面図である。図3では、光出射部10のハウジング11の外形および下部開口12が一点鎖線で示される。また、図3では、処理空間20S内に収容される基板Wと周壁部材20との間の位置および大きさの関係が理解しやすいように、基板Wにドットパターンが付され、周壁部材20にハッチングが付されている。
【0052】
図3に示すように、露光処理が行われる際には、処理空間20S内の略中央部に位置するように、基板Wが基板支持機構40(図1)により支持される。この状態で、周壁部材20の内周面は、基板Wの外周端部に対向する。また、基板Wの外周端部と周壁部材20の内周面との間の距離は、略一定に保持される。
【0053】
また、図3では、下蓋部材30に形成される3つの貫通孔32と、下蓋部材30に取り付けられる3つの支持部材38とが、点線で示される。図3に示すように、3つの貫通孔32は、平面視で下蓋部材30の中心30Cを基準とする第1の仮想円cr1上で等間隔に形成されている。一方、3つの支持部材38は、平面視で下蓋部材30の中心30Cを基準とする第2の仮想円cr2上で等間隔に形成されている。ここで、第2の仮想円cr2は、第1の仮想円cr1よりも大きく、基板Wの直径の1/2程度の大きさを有する。それにより、3つの支持部材38により基板Wが支持される際には、3つの貫通孔32により基板Wが支持される場合に比べて、基板Wの支持の安定性が向上する。
【0054】
ここで、露光装置100による露光対象となる基板Wの直径D1が300mmである場合、周壁部材20の内径D2は、例えば300mmよりも大きく400mm以下であり、300mmよりも大きく350mm以下であることが好ましく、300mmよりも大きく320mm以下であることがより好ましい。本例の周壁部材20の内径D2は、310mmである。
【0055】
また、周壁部材20の厚み(高さ)は、例えば5mmよりも大きく50mm以下であり、5mmよりも大きく20mm以下であることが好ましい。本例の周壁部材20の厚み(高さ)は、10mmである。
【0056】
[2]露光処理時における露光装置100の基本動作
上記のように、本実施の形態に係る露光装置100においては、処理対象となる基板Wに、例えば172nmの波長を有する真空紫外線が照射されることにより露光処理が行われる。ここで、基板Wに向かう真空紫外線の経路上に多量の酸素が存在すると、酸素分子が真空紫外線を吸収して酸素原子に分離するとともに、分離した酸素原子が他の酸素分子と再結合することによりオゾンが発生する。この場合、基板Wに到達する真空紫外線が減衰する。真空紫外線の減衰は、約230nmよりも長い波長の紫外線の減衰に比べて大きい。そこで、本実施の形態に係る露光装置100においては、酸素濃度が低く維持された処理空間20S内で基板Wに真空紫外線が照射される。以下、露光処理時における露光装置100の基本動作について説明する。
【0057】
図4図9は、露光処理時における露光装置100の基本動作を説明するための模式的側面図である。図4図9では、蓋開放位置pa1および蓋閉塞位置pa2がそれぞれ下蓋部材30の上面31(図1)の高さ位置で示される。
【0058】
露光装置100に電源が投入される前の初期状態において、下蓋部材30は蓋閉塞位置pa2にあるものとする。露光装置100の電源がオン状態になると、図4に白抜きの矢印a1で示すように、下蓋部材30が蓋開放位置pa1に移動する。
【0059】
次に、基板支持機構40の複数の先端部材41aが周壁部材20よりも下方に位置する状態で、露光装置100の外部から露光装置100の内部に基板Wが搬入される。この場合、図5に白抜きの矢印a2で示すように、図示しない搬送装置により搬送される基板Wが、露光装置100の側方から周壁部材20と複数の先端部材41aとの間の空間に挿入され、複数の先端部材41a上に載置される。この状態で、基板Wの上面は、処理空間20Sを挟んで光出射部10の出射面13Sに対向する。上記の搬送装置は、例えば後述する図15の搬送装置220である。
【0060】
次に、図6に白抜きの矢印a3で示すように、下蓋部材30が蓋閉塞位置pa2に移動する。これにより、基板Wが処理空間20S内に収容された状態で、周壁部材20の下部開口22が下蓋部材30により閉塞される。また、処理空間20S内で、基板Wが複数の支持部材38により支持される。さらに、下蓋部材30に設けられた複数の収容管33の下端部が複数の先端部材41aおよび図示しないシール部材により閉塞される。それにより、処理空間20Sが密閉される。
【0061】
この状態で、図6に太い一点鎖線の矢印で示すように、図1の気体供給系51から第1の気体流路25を通して処理空間20S内に不活性ガスが供給される。また、処理空間20S内の雰囲気が第2の気体流路26を通して図2の気体排出系52により露光装置100の外部に排出される。それにより、処理空間20S内の雰囲気が漸次不活性ガスに置換され、処理空間20S内の酸素濃度が低下する。
【0062】
その後、処理空間20S内の酸素濃度が予め定められた濃度(以下、目標酸素濃度と呼ぶ。)まで低下すると、図7に太い実線の矢印で示すように、光出射部10の光源部14から出射面13Sを通して基板Wの上面に真空紫外線が照射される。ここで、目標酸素濃度は、例えば露光処理後で周壁部材20の下部開口22が開放される際に、周壁部材20の近傍におけるオゾンの濃度が予め許容された濃度(0.1ppm)以下となるように設定され、例えば1%である。処理空間20S内の酸素濃度が目標酸素濃度まで低下したか否かは、例えば図1の酸素濃度計29から出力される信号に基づいて判定することができる。なお、基板Wに真空紫外線が照射される間、不活性ガスによる処理空間20S内の雰囲気の置換動作は継続して行われてもよいし、停止されてもよい。
【0063】
基板Wに照射される真空紫外線の露光量(基板上の単位面積当たりに照射される真空紫外線のエネルギー)が予め定められた設定露光量に到達すると、基板Wの上面に対する真空紫外線の照射が停止される。このようにして基板Wの上面が露光されることにより、基板Wに形成された膜が所定の露光条件に従って改質される。
【0064】
ここで、目標酸素濃度の環境下で基板Wに照射される真空紫外線の照度(基板上の単位面積当たりに照射される真空紫外線の仕事率)は既知であるものとする。この場合、基板Wに照射される真空紫外線の露光量は、真空紫外線の照度と真空紫外線の照射時間とに基づいて定まる。本実施の形態では、基板Wに照射される真空紫外線の露光量が予め定められた設定露光量に到達したか否かは、真空紫外線の照射が開始されてから設定露光量に対応する時間(露光時間)が経過したか否かに基づいて判定される。
【0065】
基板Wの上面に対する真空紫外線の照射が停止された後、図8に白抜きの矢印a4で示すように、下蓋部材30が蓋開放位置pa1に移動する。これにより、周壁部材20の下部開口22が開放され、基板Wが複数の先端部材41a上に支持された状態で処理空間20Sの下方に取り出される。
【0066】
最期に、図9に白抜きの矢印a5で示すように、複数の先端部材41a上に支持された基板Wが、図示しない搬送装置により受け取られ、露光装置100の側方に搬出される。上記の搬送装置は、例えば後述する図15の搬送装置220である。
【0067】
[3]露光処理時に制御部60により行われる一連の処理
図10および図11は、図4図9の露光装置100の動作を実現するために図1の制御部60により行われる一連の処理を示すフローチャートである。図10および図11に示される一連の処理は、例えば露光装置100の電源がオフ状態からオン状態に切り替わることにより開始される。まず、制御部60は、図1の昇降駆動部53を制御することにより、下蓋部材30を蓋開放位置pa1に移動させる(ステップS1)。
【0068】
次に、制御部60は、基板Wが複数の先端部材41a上に載置されたか否かを判定する(ステップS2)。この判定は、例えば露光装置100内に基板支持機構40上の基板Wの有無を検出するセンサ(例えば光電センサ等)を設け、そのセンサからの出力に基づいて行われてもよい。あるいは、露光装置100の外部の制御装置(例えば、後述する図15の制御装置210)からの指令信号に基づいて行われてもよい。
【0069】
複数の先端部材41a上に基板Wが載置されない場合、制御部60は、基板Wが複数の支持ピン41の先端部材41aに載置されるまでステップS2の処理を繰り返す。一方、複数の先端部材41a上に基板Wが載置されると、制御部60は、図1の昇降駆動部53を制御することにより、下蓋部材30を蓋閉塞位置pa2に移動させる(ステップS3)。
【0070】
次に、制御部60は、図1の気体排出系52を制御することにより周壁部材20の処理空間20S内の雰囲気を排出させる(ステップS4)。また、制御部60は、図1の気体供給系51を制御することにより周壁部材20の処理空間20S内に不活性ガスを供給させる(ステップS5)。ステップS4,S5の処理は、いずれか一方の処理が先に行われてもよいし、同時に行われてもよい。
【0071】
次に、制御部60は、図1の酸素濃度計29により計測される酸素濃度に基づいて、処理空間20Sの酸素濃度が目標酸素濃度まで低下したか否かを判定する(ステップS6)。
【0072】
処理空間20Sの酸素濃度が目標酸素濃度まで低下しない場合、制御部60は、処理空間20Sの酸素濃度が目標酸素濃度に到達するまでステップS6の処理を繰り返す。一方、処理空間20Sの酸素濃度が目標酸素濃度まで低下すると、制御部60は、図1の光出射部10を制御することにより、光源部14から処理空間20S内の基板Wに向けて真空紫外線を出射させる(ステップS7)。これにより、真空紫外線が基板Wに照射され、基板Wに形成された膜が改質する。
【0073】
次に、制御部60は、光源部14が真空紫外線の出射を開始した時点から上記の設定露光時間が経過したか否かを判定する(ステップS8)。設定露光時間が経過していない場合、制御部60は、設定露光時間が経過するまでステップS8の処理を繰り返す。一方、設定露光時間が経過すると、制御部60は、光出射部10における真空紫外線の出射を停止させる(ステップS9)。
【0074】
次に、制御部60は、図1の気体排出系52を制御することにより処理空間20S内の雰囲気の排出を停止させる(ステップS10)。また、制御部60は、図1の気体供給系51を制御することにより処理空間20S内への不活性ガスの供給を停止させる(ステップS11)。ステップS9,S10,S11の処理は、いずれか一部の処理が先に行われてもよいし、全ての処理が同時に行われてもよい。
【0075】
次に、制御部60は、図1の昇降駆動部53を制御することにより、下蓋部材30を蓋開放位置pa1に移動させる(ステップS12)。その後、制御部60は、基板Wが複数の先端部材41a上から搬送されたか否かを判定する(ステップS13)。この判定は、ステップS2の処理と同様に、例えば露光装置100内に基板支持機構40上の基板Wの有無を検出するセンサ(例えば光電センサ等)を設け、そのセンサからの出力に基づいて行われてもよい。あるいは、露光装置100の外部の制御装置(例えば、後述する図15の制御装置210)からの指令信号に基づいて行われてもよい。基板Wが搬送されない場合、制御部60は、基板Wが搬送されるまでステップS13の処理を繰り返す。一方、制御部60は、基板Wが搬送されると、上記のステップS2の処理に戻る。
【0076】
[4]処理空間20S内の雰囲気の置換方法
上記のように、露光装置100においては、処理空間20S内の酸素濃度を低下させるために、処理空間20S内の雰囲気が排出されるとともに処理空間20S内に不活性ガスが供給され、処理空間20S内の雰囲気が不活性ガスで置換される。
【0077】
図12は、処理空間20S内の雰囲気の置換方法の一例を説明するための図である。図12では、露光処理時に処理空間20Sに供給される不活性ガスの供給量の時間的変化がグラフにより示される。なお、本実施の形態においては、露光処理中の処理空間20Sに対する不活性ガスの供給量および排出量は同じであるものとする。図12の縦軸は不活性ガスの供給量を表し、横軸は時間を表す。
【0078】
図12の時間軸に関して、時点t0で、露光装置100内に基板Wが搬入されるものとする。時点t1で、搬入された基板Wが処理空間20S内に収容されかつ周壁部材20の下部開口22が下蓋部材30により閉塞されるものとする。時点t2で、処理空間20S内の基板Wに対して真空紫外線の照射が開始されるものとする。時点t3で、処理空間20S内の基板Wに対する真空紫外線の照射が停止されるものとする。また、時点t4で周壁部材20の下部開口22が開放されるものとする。
【0079】
図12の例では、不活性ガスの供給量(および排気量)は時点t0~t1にかけて0で維持されている。続いて、時点t1~t2にかけて不活性ガスの供給量(および排気量)は比較的高い値αで維持され、時点t2~t3にかけて不活性ガスの供給量(および排気量)は値αよりも低い値βで維持されている。その後、時点t3~t4では、不活性ガスの供給量(および排気量)は0で維持されている。
【0080】
このような置換方法によれば、時点t1~t2にかけて基板Wの露光前に比較的高い流量(値α)で処理空間20S内に不活性ガスが供給され、処理空間20S内の雰囲気が排出される。それにより、処理空間20S内の雰囲気の大部分を短時間で不活性ガスに置換することができる。すなわち、短時間で酸素濃度を低下させることができる。
【0081】
その後、基板Wの露光時には比較的低い流量(値β)で処理空間20S内に不活性ガスが供給される。この場合、処理空間内に生じる気体の流れが低下する。それにより、基板Wの露光中に処理空間20S内に残留するパーティクルが不活性ガスの気流により飛散することが防止される。したがって、基板Wの露光中にパーティクルが処理空間20S内を飛散することによる処理不良の発生が防止される。
【0082】
図13は、処理空間20S内の雰囲気の置換方法の他の例を説明するための図である。図13には、図12の例と同様に、露光処理時に処理空間20Sに供給される不活性ガスの供給量の時間的変化がグラフにより示される。図13の時間軸に関して、時点t0,t1,t2,t3,t4は、図12の時点t0,t1,t2,t3,t4と同じである。
【0083】
図13の例では、不活性ガスの供給量(および排気量)は時点t0~t1にかけて0で維持されている。続いて、時点t1~t3にかけて不活性ガスの供給量(および排気量)は比較的高い値αで維持される。その後、時点t3~t4では、不活性ガスの供給量(および排気量)は0で維持されている。このような置換方法によれば、周壁部材20の下部開口22が下蓋部材30により閉塞されている間、常に高い流量で不活性ガスが処理空間20Sに供給される。それにより、処理空間20S内の酸素濃度を低い状態で維持しやすい。また、この場合、時点t2~t3にかけて露光により発生するオゾンを処理空間20Sから排出しやすい。さらに、この置換方法によれば、不活性ガスの供給量(および排気量)を複数の値に切り替える必要がない。したがって、気体供給系51および気体排出系52の構成を単純化することができる。
【0084】
図14は、処理空間20S内の雰囲気の置換方法のさらに他の例を説明するための図である。図14には、図12の例と同様に、露光処理時に処理空間20Sに供給される不活性ガスの供給量の時間的変化がグラフにより示される。図14の時間軸に関して、時点t0,t1,t2,t3,t4は、図12の時点t0,t1,t2,t3,t4と同じである。
【0085】
図14の例では、不活性ガスの供給量(および排気量)は時点t0~t4にかけて比較的高い値αで維持される。このような置換方法によれば、周壁部材20の下部開口22が開放されている間でも、処理空間20S内に不活性ガスが供給されている。したがって、下部開口22が下蓋部材30により閉塞される時点で、処理空間20S内の酸素濃度がある程度低く維持される。それにより、下部開口22が下蓋部材30により閉塞された後、処理空間20S内の酸素濃度をより短時間で目標酸素濃度に近づけることができる。また、オゾンの発生量をさらに抑制することができる。
【0086】
[5]効果
(1)上記の露光装置100においては、周壁部材20は基板Wの形状に対応する円筒形状を有するので、処理空間20Sの容積を小さくすることができる。それにより、処理空間20Sの雰囲気を不活性ガスにより迅速に置換することができる。したがって、処理空間20Sの酸素濃度を短時間で低下させることができる。
【0087】
また、円筒形状の周壁部材20により形成される処理空間20Sには気体が滞留するような隅部が存在しない。そのため、処理空間20Sの雰囲気を不活性ガスにより置換する際には、周壁部材20の内周面に沿って円滑な気体の流れが形成される。それにより、処理空間20Sにはパーティクルが残留しにくい。したがって、処理空間20Sの基板Wの清浄度を向上させることが可能である。
【0088】
さらに、下蓋部材30が周壁部材20の下部開口22を開放および閉塞することにより、処理空間20Sに基板Wを搬入することおよび処理空間20Sから基板Wを搬出することが可能である。下蓋部材30が上下方向に移動することにより単純な構成および動作で下部開口22を開放および閉塞することができる。したがって、周壁部材20に基板Wの搬入搬出口を設けるとともにその搬入搬出口を開放および閉塞するための複雑な構造を設ける必要がなくなる。
【0089】
これらの結果、単純かつコンパクトな構成で基板Wの清浄度を低下させることなく露光処理の効率を向上させることが可能になる。
【0090】
(2)上記のように、周壁部材20の内部には、第1の気体流路25および第2の気体流路26が形成されている。処理空間20S内には、第1の気体流路25を通して不活性ガスが直接供給される。また、処理空間20S内の雰囲気は、第2の気体流路26を通して直接排出される。
【0091】
このような構成によれば、処理空間20S内に不活性ガスを供給するための配管またはノズル等の部材を設ける必要がない。また、処理空間20S内にその内部の雰囲気を処理空間20Sの外部に排出するための配管またはノズル等の部材を設ける必要がない。それにより、処理空間20S内で気体の流れの妨げとなる領域が低減されるので、処理空間20Sにパーティクルが残留しにくくなる。
【0092】
(3)周壁部材20においては、第1の気体流路25および第2の気体流路26は処理空間20Sを挟んで互いに対向するように形成されている。この場合、第1の気体流路25から第2の気体流路26に向かって円滑な気体の流れが形成される。それにより、処理空間20S内の雰囲気を不活性ガスにより円滑に置換することができるので、雰囲気の置換に要する時間が短縮される。また、処理空間20S内の乱流の発生が抑制されるので、処理空間20S内の複数の部分における酸素濃度を均一に保つことができる。したがって、基板Wに対して均一な露光を行うことが可能になる。
【0093】
(4)上記の露光装置100においては、処理対象となる基板Wは、処理空間20S内に収容された状態で、複数の支持部材38により支持される。ここで、複数の支持部材38は、下蓋部材30の平坦な上面31に共通して取り付けられるので、下蓋部材30への複数の支持部材38の取付時には、複数の支持部材38の上下方向の位置を容易かつ正確に合わせることができる。それにより、複数の支持部材38により支持される基板Wが光出射部10の出射面13Sに対して傾斜することが防止され、基板Wに対して均一な露光を行うことが可能になる。
【0094】
(5)上記の露光装置100においては、下蓋部材30が上下方向に移動することにより、単純な構成および動作で、処理空間20Sへの基板Wの搬入および処理空間20Sからの基板の搬出が実現されている。
【0095】
[6]図1の露光装置100を備える基板処理装置
図15は、図1の露光装置100を備える基板処理装置の一例を示す模式的ブロック図である。図15に示すように、基板処理装置200は、露光装置100に加えて、制御装置210、搬送装置220、熱処理装置230、塗布装置240および現像装置250を備える。
【0096】
制御装置210は、例えばCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、露光装置100、搬送装置220、熱処理装置230、塗布装置240および現像装置250の動作を制御する。
【0097】
搬送装置220は、基板処理装置200による基板Wの処理時に、基板Wを露光装置100、熱処理装置230、塗布装置240および現像装置250の間で搬送する。
【0098】
熱処理装置230は、塗布装置240による塗布処理および現像装置250による現像処理の前後に基板Wの熱処理を行う。塗布装置240は、所定の処理液を基板Wの上面に塗布することにより、真空紫外線により改質される膜を基板Wの上面に形成する。具体的には、本例の塗布装置240は、基板Wの上面に誘導自己組織化材料を含む処理液を塗布する。この場合、誘導自己組織化材料に生じるミクロ相分離により基板Wの上面上に2種類の重合体のパターンが形成される。
【0099】
露光装置100は、塗布装置240により膜が形成された基板Wの上面に真空紫外線を照射する。それにより、基板W上に形成された2種類の重合体のパターン間の結合が切断される。
【0100】
現像装置250は、露光後の2種類の重合体のパターンのうち一方の重合体を除去するための溶剤を、現像液として基板Wに供給する。それにより、基板W上に他方の重合体からなるパターンが残留する。
【0101】
なお、塗布装置240は、真空紫外線により改質される膜として、誘導自己組織化材料を含む膜に代えてSOC(Spin-On-Carbon)膜が形成されるように、所定の処理液を基板Wの上面に塗布してもよい。この場合、SOC膜が形成された基板Wを真空紫外線を用いて露光することにより、SOC膜を改質させることができる。
【0102】
塗布装置240においてSOC膜が形成される場合には、塗布装置240において露光処理後のSOC膜上にさらにレジスト膜が形成されてもよい。この場合、レジスト膜が形成された基板Wが基板処理装置200の外部に設けられる露光装置により露光された後、現像装置250がその露光後の基板Wに現像処理を行ってもよい。
【0103】
上記の露光装置100によれば、単純かつコンパクトな構成で基板Wの清浄度を低下させることなく露光処理の効率を向上させることが可能である。したがって、図15の基板処理装置200によれば、基板Wの処理精度が向上するとともに、基板Wの製造コストを低減することが可能になる。
【0104】
[7]他の実施の形態
(1)上記実施の形態に係る露光装置100おいては、第1の気体流路25に供給される不活性ガスは処理空間20S内に直接供給され、処理空間20S内の雰囲気は第2の気体流路26から直接排出される。そのため、処理空間20S内には、ノズル等の気体の供給および排出に用いられる部材が存在しないが、本発明はこれに限定されない。処理空間20S内には、処理空間20S内に発生する気体の流れを制御するための部材が設けられてもよい。
【0105】
(2)上記実施の形態に係る露光装置100においては、第1の気体流路25および第2の気体流路26は、周壁部材20に代えて下蓋部材30に形成されてもよい。
【0106】
(3)上記実施の形態に係る露光装置100においては、処理空間20Sに収容された基板Wが、下蓋部材30に取り付けられた複数の支持部材38により支持された状態で露光処理が行われるが、本発明はこれに限定されない。
【0107】
下蓋部材30に複数の支持部材38が取り付けられる代わりに、基板支持機構40が上下方向に移動可能に設けられてもよい。図16は、他の実施の形態に係る露光装置100の構成を示す模式的断面図である。図16の露光装置100が図1の露光装置100と異なる点を説明する。
【0108】
図16の露光装置100においては、下蓋部材30に複数の支持部材38(図1)および複数の収容管33(図1)が取り付けられていない。一方、基板支持機構40は、複数の支持ピン41が下蓋部材30の複数の貫通孔32にそれぞれ挿入された状態で、露光装置100のベース部分に対して上下方向に移動可能に設けられている。また、図16の露光装置100は、基板支持機構40を上下方向に移動させるための昇降駆動部54をさらに備える。
【0109】
ここで、複数の支持ピン41の上端部が処理空間20S内に位置するときの基板支持機構40の上下方向の位置を処理位置と呼び、処理位置から一定距離下方の位置を待機位置と呼ぶ。
【0110】
昇降駆動部54は、例えばステッピングモータを含み、処理位置と待機位置との間で基板支持機構40を上下方向に移動させることが可能に構成される。このような構成により、本例では、下蓋部材30が蓋開放位置pa1にありかつ基板支持機構40が待機位置にある状態で、露光装置100の外部から搬入される基板Wが基板支持機構40の複数の先端部材41aにより受け取られる。
【0111】
露光装置100に搬入された基板Wが基板支持機構40により受け取られると、下蓋部材30が蓋閉塞位置pa2に移動するとともに基板支持機構40が処理位置に移動する。それにより、基板Wが処理空間20Sに収容される。複数の先端部材41aにより支持された基板Wに真空紫外線が照射される。
【0112】
基板Wの露光が終了すると、下蓋部材30が蓋開放位置pa1に移動するとともに基板支持機構40が待機位置に移動する。それにより、基板Wが処理空間20Sの下方に取り出される。最後に、複数の先端部材41aにより支持された基板Wが露光装置100の外部に搬出される。
【0113】
上記の構成において、複数の先端部材41aおよび下蓋部材30は、下蓋部材30および基板支持機構40がそれぞれ蓋閉塞位置pa2および処理位置にある場合に、複数の貫通孔32を閉塞可能に構成される。それにより、露光処理時の処理空間20Sの密閉状態が確保される。
【0114】
なお、図16の露光装置100においては、処理空間20Sの密閉状態が確保されるのであれば、基板Wの種類および処理の内容に応じて光出射部10の出射面13Sと基板Wとの間の距離を調整してもよい。この場合、光出射部10の出射面13Sと基板Wとの間の距離をより小さくすることにより、露光時間を短縮することができる。それにより、露光処理の効率を向上させることが可能になる。
【0115】
図16の例では、下蓋部材30および基板支持機構40を駆動するための構成として昇降駆動部53,54が個別に設けられるが、本発明はこれに限定されない。
【0116】
図16の露光装置100には、昇降駆動部53,54に代えて、下蓋部材30および基板支持機構40をともに駆動可能に構成された一の昇降駆動部が設けられてもよい。
【0117】
その昇降駆動部は、例えば1つのモータとそのモータの回転軸に設けられる第1のカムおよび第2のカムとを含んでもよい。この場合、第1のカムは、モータにより発生される回転力により下蓋部材30を蓋開放位置pa1および蓋閉塞位置pa2間で昇降させることが可能に構成される。また、第2のカムは、モータにより発生される回転力により基板支持機構40を待機位置および処理位置間で昇降させることが可能に構成される。
【0118】
あるいは、その昇降駆動部は、例えば1つのエアシリンダと棒状の軸部材とを含んでもよい。この場合、軸部材には、下蓋部材30および基板支持機構40が取り付けられる。この構成においては、例えば軸部材の一端部が固定された状態で、エアシリンダが軸部材の他端部を上下方向に移動させる。それにより、下蓋部材30が蓋開放位置pa1および蓋閉塞位置pa2間で昇降し、基板支持機構40が待機位置および処理位置間で昇降する。
【0119】
上記の構成によれば、露光装置100の部品点数が低減されるとともに露光装置100のコンパクト化が実現される。
【0120】
(4)上記実施の形態に係る露光装置100においては、処理空間20Sを密閉するために基板支持機構40に先端部材41aが設けられるが、本発明はこれに限定されない。例えば、処理空間20Sについて、極めて高い密閉性が要求されない場合には、基板支持機構40に先端部材41aは設けられなくてもよい。
【0121】
(5)上記実施の形態においては、露光処理中の処理空間20Sに対する不活性ガスの供給量および排出量は同じであるとしているが、本発明はこれに限定されない。露光処理中の処理空間20Sに対する不活性ガスの供給量および排出量は互いに異なっていてもよい。例えば、不活性ガスの供給量に対して処理空間20S内の雰囲気の排出量が小さくてもよいし、不活性ガスの供給量に対して処理空間20S内の雰囲気の排出量が大きくてもよい。
【0122】
(6)上記実施の形態に係る露光装置100おいては、露光処理中に処理空間20S内の酸素濃度が目標酸素濃度まで低下したか否かの判定が酸素濃度計29の出力に基づいて行われるが、本発明はこれに限定されない。
【0123】
例えば、下部開口22が閉塞された時点から処理空間20S内の酸素濃度が目標酸素濃度に到達するまでに要する時間(以下、濃度到達時間と呼ぶ。)が既知である場合には、上記の判定が濃度到達時間に基づいて行われてもよい。この場合、酸素濃度計29が不要となり、露光装置100の構成が単純化する。
【0124】
[8]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、下蓋部材30が閉塞部材の例であり、支持部材38が基板支持部の例であり、気体供給系51が供給部の例であり、気体排出系52が排出部の例であり、図12図14の時点t1~t2が第1の時間の例であり、図12図14の値αが第1の流量の例であり、図12図14の時点t2~t3が第2の時間の例であり、図12図14の値βが第2の流量の例である。
【0125】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【符号の説明】
【0126】
10…光出射部,10S…内部空間,11…ハウジング,11a…底壁部,11b…周壁部,11c…天井部,12,22…下部開口,13…透光板,13S…出射面,14…光源部,15…電源装置,20…周壁部材,20S…処理空間,21…上部開口,23…上端面,24…下端面,25…第1の気体流路,26…第2の気体流路,29…酸素濃度計,30…下蓋部材,31…上面,32…貫通孔,33…収容管,38…支持部材,39…シール部材,40…基板支持機構,41…支持ピン,41a…先端部材,41b…支持軸,42…ピン連結部材,51…気体供給系,51a,52a…配管,52…気体排出系,53,54…昇降駆動部,60…制御部,100…露光装置,200…基板処理装置,210…制御装置,220…搬送装置,230…熱処理装置,240…塗布装置,250…現像装置,cr1…第1の仮想円,cr2…第2の仮想円,LE…光源素子,pa1…蓋開放位置,pa2…蓋閉塞位置,pb1…待機位置,pb2…処理位置,t0~t4…時点,W…基板
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