(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
B60N 2/803 20180101AFI20230614BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
B60N2/803
A47C7/38
(21)【出願番号】P 2019172126
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉井 孝昌
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-140958(JP,A)
【文献】特開2003-159486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/80-2/897
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のステー挿通部を有するインナーカバーと、袋状の表皮と、前記インナーカバーと前記表皮との間に形成された発泡体からなるパッドと、を有するヘッドレストであって、
前記インナーカバーは、底面における前記表皮に覆われた部分に貫通孔を有し、
前記表皮は、前記貫通孔と重なる位置に、交差する複数本のスリットを有し、
前記表皮のうち前記底面を覆う部分の内面には、プレートが固定されているヘッドレスト。
【請求項2】
請求項1記載のヘッドレストであって、
前記貫通孔は、前記一対のステー挿通部の間に配置され、
前記表皮の端部は、前記底面における前記一対のステー挿通部の間の領域の一部に係止された第1突出部と、当該領域の前記一部以外に係止された第2突出部と、を有し、
前記第1突出部が、前記貫通孔と重なっており、
前記第1突出部に前記プレートが固定されているヘッドレスト。
【請求項3】
一対のステー挿通部を有するインナーカバーと、袋状の表皮と、前記インナーカバーと前記表皮との間に形成された発泡体からなるパッドと、を有するヘッドレストであって、
前記インナーカバーは、底面における前記表皮に覆われた部分且つ前記一対のステー挿通部の間の領域に貫通孔を有し、
前記表皮の端部は、前記底面における前記領域の一部に係止された第1突出部と、当該領域の前記一部以外に係止された第2突出部と、を有し、
前記第1突出部と前記第2突出部のうち前記第1突出部のみが、前記貫通孔と重なっており、
前記第1突出部には、前記貫通孔と重なる位置に、交差する複数本のスリットを有するヘッドレスト。
【請求項4】
請求項3記載のヘッドレストであって、
前記第1突出部の内面に固定されたプレートを更に備えるヘッドレスト。
【請求項5】
一対のステー挿通部を有するインナーカバーと、袋状の表皮と、前記インナーカバーと前記表皮との間に形成された発泡体からなるパッドと、を有するヘッドレストであって、
前記インナーカバーは、底面における前記表皮に覆われた部分に貫通孔を有し、
前記表皮は、前記貫通孔と重なる位置に、交差する複数本のスリットを有すると共に、裏面に前記インナーカバーに設けられた嵌合孔に嵌合する嵌合ツメを備え
、
前記表皮は、プレートを備え、
前記プレートに前記嵌合ツメが設けられているヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1と特許文献2には、袋状の表皮内に注入ノズルを差し込み、注入ノズルからパッド成形用の発泡液を表皮内に注入することにより、パッドを表皮と一体に発泡成形して製造するヘッドレストの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3963337号公報
【文献】特開平10-71284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドレストの製造方法には、ステーを支持するインナーカバーに表皮を被せた状態にて、表皮の端部に形成された孔部を通してインナーカバーの貫通孔に注入ノズルを挿入し、インナーカバーと表皮の間に発泡液を注入して、パッドを成形する方法がある。この方法では、インナーカバーの構造によっては、貫通孔の軸方向長さが長くなる。貫通孔が長くなると、パッド成形後に注入ノズルを引き抜く際に、貫通孔内の発泡体の残留物が引き抜きの障害となって、注入ノズルが抜けないことがある。
【0005】
特許文献1と特許文献2は、インナーカバーに注入ノズルを挿入することは想定していない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パッドの発泡成形後の発泡液の注入ノズルの引き抜きを容易として、製造コストの低減を図ることのできるヘッドレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヘッドレストは、一対のステー挿通部を有するインナーカバーと、袋状の表皮と、前記インナーカバーと前記表皮との間に形成された発泡体からなるパッドと、を有するヘッドレストであって、前記インナーカバーは、底面における前記表皮に覆われた部分に貫通孔を有し、前記表皮は、前記貫通孔と重なる位置に、交差する複数本のスリットを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パッドの発泡成形後の発泡液の注入ノズルの引き抜きを容易として、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態を説明するためのヘッドレストの概略構成を示す外観模式図である。
【
図2】
図1に示すヘッドレスト100のアウターカバー40を外した状態を正面側から見た分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すヘッドレスト100のアウターカバー40及びパッド30を除く部分を正面側から見た分解斜視図である。
【
図4】
図3に示すインナーカバー10を背面側から見た斜視図である。
【
図5】
図1に示すヘッドレスト100のアウターカバー40を除く部分を底面側から上方向に見た模式図である。
【
図7】
図2に示すA-A線での断面を後ろ方向に見た模式図である。
【
図8】パッド30の発泡成形時における
図6に示す矩形枠Wの拡大模式図である。
【
図9】パッド30の発泡成形時における
図6に示す矩形枠Wの拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態を説明するためのヘッドレストの概略構成を示す外観模式図である。
図1に示すヘッドレスト100は、自動車等の座席を有する車両の座席部分に装着して用いられる。
【0012】
ヘッドレスト100は、ステー11と、ステー11を支持するインナーカバー10と、袋状の表皮20と、インナーカバー10と表皮20との間に形成されたウレタン等の発泡体からなるパッド30と、インナーカバー10によって支持されインナーカバー10との間にて表皮20の端部を挟持するアウターカバー40と、を備える。
【0013】
パッド30は、インナーカバー10と表皮20との間に発泡液が注入され、この発泡液が化学反応によって発泡することで、表皮20と一体的に発泡成形されたものである。
【0014】
以下では、ヘッドレスト100が装着された座席に正規の姿勢にて座る人の前方を前方向と記載し、その人の後方を後ろ方向と記載し、これらを併せて前後方向と記載する。また、前後方向に直交する方向(その人を前側から見たときのその人に対し右方向及び左方向)を左右方向と記載する。また、前後方向及び左右方向に垂直な方向であって、ヘッドレスト100から座面側に向かう方向を下方向と記載し、下方向の逆方向を上方向と記載する。また、ヘッドレスト100の前側の面を正面と記載し、ヘッドレスト100の後ろ側の面を背面と記載する。
【0015】
図2は、
図1に示すヘッドレスト100のアウターカバー40を外した状態を正面側から見た分解斜視図である。
図3は、
図1に示すヘッドレスト100のアウターカバー40及びパッド30を除く部分を正面側から見た分解斜視図である。
図4は、
図3に示すインナーカバー10を背面側から見た斜視図である。
図5は、
図1に示すヘッドレスト100のアウターカバー40を除く部分を底面側から上方向に見た模式図である。
図6は、
図5に示すB-B線の断面模式図である。
【0016】
図3に示すように、インナーカバー10は、内部においてステー11を支持している。インナーカバー10の底部(下端部)には、上方向に窪む凹部16が形成されている。凹部16は、上下方向に見たときの形状が略矩形となっている。凹部16の底面には、ステー11が挿通された左右方向に並ぶ一対のステー挿通部12R,12Lが設けられている。インナーカバー10の凹部16の底面におけるステー挿通部12Rとステー挿通部12Lの間には、パッド30の成形に用いる発泡液の注入ノズルの挿通孔13が形成されている。この挿通孔13は、例えば略円柱状となっており、
図4及び
図6に示すように、インナーカバー10を貫通している。
【0017】
インナーカバー10の凹部16の底面におけるステー挿通部12Rとステー挿通部12Lの間には、後述する表皮20の突出部22Bの内面に固定された図示省略のプレートに設けられた嵌合ツメと嵌合する嵌合孔(符号は省略)を有する領域14と、後述する表皮20の突出部22Fの内面に固定された図示省略のプレートに設けられた嵌合ツメと嵌合する嵌合孔(符号は省略)を有する領域15と、が形成されている。なお、表皮20の突出部22Bの内面に固定された上記のプレートに嵌合孔が設けられ、領域14には、この嵌合孔と嵌合する嵌合ツメが形成される構成であってもよい。同様に、表皮20の突出部22Fの内面に固定された上記のプレートに嵌合孔が設けられ、領域15には、この嵌合孔と嵌合する嵌合ツメが形成される構成であってもよい。
【0018】
図2及び
図3に示すように、インナーカバー10のステー挿通部12Rの右端部の略中央には、凹部16に向けて延びる突起部12rが形成されている。インナーカバー10のステー挿通部12Lの左端部の略中央には、凹部16に向けて延びる突起部12lが形成されている。
【0019】
図2に示すように、表皮20はインナーカバー10の底部にて凹部16内部に折り返されて、凹部16の内側面と凹部16の底面の一部とを覆っている。表皮20のうち凹部16内にある部分は、表皮20の端部を構成している。表皮20の端部のうち、凹部16の底面と内側面との境界付近を覆っている環状の部分を環状部21と記載する。
【0020】
図3に示すように、表皮20は、環状部21から突出して設けられた凸状の4つの突出部(突出部22F、突出部22B、突出部24R、突出部24L)を有している。
【0021】
突出部22Fは、環状部21における後ろ側の部分から突出している。突出部22Bは、環状部21における前側の部分から突出している。突出部24Rは、環状部21における右側の部分から突出している。突出部24Lは、環状部21における左側の部分から突出している。
【0022】
突出部22Bには、インナーカバー10の挿通孔13と対応する位置に、後述する注入ノズル50を挿入するための挿入部23が形成されている。
図5に示すように、挿入部23は、直交する2本のスリット(第一スリット23Aと第二スリット23B)を含む。第一スリット23Aは、前後方向に延びる直線状のスリットである。第二スリット23Bは、左右方向に延びる直線状のスリットである。第一スリット23Aの長さと、第二スリット23Bの長さは同じとなっている。
【0023】
挿入部23は、更に、上下方向に移動自在な4つの領域を有している。この4つの領域は、第一スリット23Aと第二スリット23Bを対角線とする四角形(
図5中の二点鎖線で示した正方形)を第一スリット23Aと第二スリット23Bによって区画して得られる領域AR1~AR4である。
【0024】
上下方向に見た状態にて、挿入部23は、
図3に示したインナーカバー10の挿通孔13と重なっている。この挿入部23を通して、インナーカバー10の挿通孔13に、後述の注入ノズル50を挿入可能となっている。
【0025】
突出部22Bの内面には、前述したプレートが固定されており、このプレートには、インナーカバー10の領域14の嵌合孔と嵌合される嵌合ツメ(図示省略)が形成されている。突出部22Fの内面にも同様に前述したプレートが固定されており、このプレートには、インナーカバー10の領域15の嵌合孔と嵌合される嵌合ツメ(図示省略)が形成されている。突出部24Rと突出部24Lには、それぞれ、
図3の例では矩形状の孔部HRと孔部HLが形成されている。
【0026】
図2及び
図5に示すように、表皮20の突出部22Bは、その内面に固定されたプレートの嵌合ツメが、
図3に示したインナーカバー10の領域14の嵌合孔に嵌合されることで、インナーカバー10の底部に係止されている。表皮20の突出部22Fは、その内面に固定されたプレートの嵌合ツメが、
図3に示したインナーカバー10の領域15の嵌合孔に嵌合されることで、インナーカバー10の底部に係止されている。
【0027】
図2に示すように、表皮20の突出部24Rは、ステー挿通部12R内に折り返された状態となっている。そして、突出部24Rの孔部HRがインナーカバー10の突起部12rに通されることで、突出部24Rはインナーカバー10の底部に係止されている。
【0028】
表皮20の突出部24Lは、ステー挿通部12L内に折り返された状態となっている。そして、突出部24Lの孔部HLがインナーカバー10の突起部12lに通されることで、突出部24Lはインナーカバー10の底部に係止されている。
【0029】
図2に示すように、アウターカバー40は、ステー11を通すための一対の筒部41R,41Lを有する。筒部41Rはインナーカバー10のステー挿通部12Rに挿入され、筒部41Lはインナーカバー10のステー挿通部12Lに挿入される。アウターカバー40が装着された状態では、表皮20の端部の少なくとも一部、具体的には、凹部16の内側面を覆う部分の一部が、インナーカバー10とアウターカバー40によって挟持される。
【0030】
図7は、
図2に示すA-A線での断面を後ろ方向に見た(前側から後ろ側へ見た)模式図である。A-A線は、インナーカバー10の突起部12r,12lを通る線である。
【0031】
図7に示すように、アウターカバー40の上面には、筒部41Lの左隣に、上方向に延びる嵌合ツメ42Lが形成されている。また、アウターカバー40の上面には、筒部41Rの右隣に、上方向に延びる嵌合ツメ42Rが形成されている。
【0032】
嵌合ツメ42Rは、凹部16よりもインナーカバー10の内側において、インナーカバー10の突起部12rの上端部と嵌合している。嵌合ツメ42Lは、凹部16よりもインナーカバー10の内側において、インナーカバー10の突起部12lの上端部と嵌合している。これらの嵌合によって、アウターカバー40がインナーカバー10によって支持される。そして、アウターカバー40が、インナーカバー10との間にて、表皮20の端部を挟持する構成となっている。
【0033】
以上の構成のヘッドレスト100は、次のようにして製造される。
まず、
図3に示したインナーカバー10に、
図3に示した表皮20を被せる。次に、表皮20の端部における突出部22Bに固定されたプレートの嵌合ツメをインナーカバー10の領域14の嵌合孔に嵌合させ、表皮20の端部における突出部22Fに固定されたプレートの嵌合ツメをインナーカバー10の領域15の嵌合孔に嵌合させて、突出部22Bと突出部22Fをインナーカバー10に係止する。
【0034】
更に、表皮20の端部における突出部24Rをステー挿通部12R内に折り曲げ、インナーカバー10の突起部12rに孔部HRを通して、突出部24Rを突起部12rに係止する。また、表皮20の端部における突出部24Lをステー挿通部12L内に折り曲げ、インナーカバー10の突起部12lに孔部HLを通して、突出部24Lを突起部12lに係止する。ここまでの工程により、外観上は、
図2の上段に示した状態が得られる。
【0035】
この状態から、注入ノズルを突出部22Bの挿入部23(2本のスリット)を通してインナーカバー10の挿通孔13に挿入し、注入ノズルの先端を、インナーカバー10と表皮20の間の空間に配置する。そして、注入ノズルから発泡液を送出した後、この発泡液を発泡させてパッド30を発泡成形する。パッド30を形成した後、注入ノズルを引き抜き、アウターカバー40をインナーカバー10に装着して、ヘッドレスト100を完成させる。
【0036】
図8及び
図9は、パッド30の発泡成形時における
図6に示す矩形枠Wの拡大模式図である。
図8は、注入ノズルを挿入部23及び挿通孔13に挿入する際の状態を示している。
図9は、注入ノズルを挿入部23及び挿通孔13から引き抜く際の状態を示している。
【0037】
図8及び
図9に示すように、注入ノズル50は柱状となっている。注入ノズル50の一部には、径方向に突出する突起51が設けられている。インナーカバー10の挿通孔13の内径は、注入ノズル50の突起51が挿通孔13の内部に挿入可能な大きさとされている。
【0038】
図8に示すように、注入ノズル50が挿入部23及び挿通孔13に挿入されるときには、注入ノズル50の突起51が挿通孔13内部に入るまで、注入ノズル50の挿入が行われる。また、このとき、挿入部23の領域AR1~AR4は、
図8に示すように、注入ノズル50の突起51と共に挿通孔13に押し込まれ、上方向に移動した状態となる。
図8に示すように注入ノズル50を挿入した状態にて、注入ノズル50から発泡液を送出させる。この発泡液は、挿通孔13における注入ノズル50以外の部分にも充填される。また、この発泡液は、挿通孔13に押し込まれた挿入部23にも含浸される。
【0039】
パッド30の成形後は、注入ノズル50を引き抜く工程に移る。注入ノズル50を引き抜くときには、
図9に示すように、挿入部23の領域AR1~AR4が、注入ノズル50の突起51によって挿通孔13の外に押し出され、下方向に移動した状態となる。
【0040】
以上のように、ヘッドレスト100によれば、表皮20における注入ノズル50を挿入するための挿入部23が、注入ノズル50の挿抜方向に大きく変形可能な領域AR1~AR4を含む。パッド30の成形時には、領域AR1~AR4に発泡液が含浸されることになる。また、注入ノズル50の発泡液の噴出口には、注入ノズル50を引き抜く際に、挿通孔13に充填された発泡体が圧縮されて詰まり、注入ノズル50の外径が太くなる。しかし、領域AR1~AR4が引き抜き方向に容易に移動可能となっていることで、注入ノズル50の外径が太くなった部分や突起51の移動が容易となり、注入ノズル50を容易に引き抜くことができる。
【0041】
特に、挿通孔13の貫通方向の長さが大きい場合には、注入ノズル50を引き抜く際の発泡体の噴出口への詰まりが顕著となる。ヘッドレスト100は、インナーカバー10のステー挿通部12R及びステー挿通部12Lの間に挿通孔13を有している。インナーカバー10のステー挿通部12R及びステー挿通部12Lの間は、ある程度の厚みが必要な部分である。そのため、本形態の構成においては、挿通孔13の貫通方向の長さが大きくなる。様々な構成上の制約を考慮すると、挿通孔13の貫通方向の長さは0.5cm以上となる。このように、挿通孔13の貫通方向の長さが0.5cm以上となる構成であっても、挿入部23が挿抜方向に大きく変形可能な領域AR1~AR4を含むことで、パッド30成形後の注入ノズル50の引き抜きを容易とすることができる。
【0042】
また、ヘッドレスト100によれば、表皮20に2本のスリットを形成するだけで、上述した効果を得ることができる。このため、製造コストを減らすことができる。また、スリットは、表皮20に切り込みを入れるだけで作れるため、製造時にごみは発生せず、製造時におけるごみの削減が可能になる。
【0043】
なお、第一スリット23Aと第二スリット23Bの各々の長さは、挿通孔13の内径の0.5倍以上2倍以下とすることが好ましい。この条件を満たしていれば、注入ノズル50の突起51を挿通孔13の内部にまで十分に挿入可能となる。また、この条件を満たしていれば、注入ノズル50から発泡液を噴出させているときの発泡液の挿入部23からの漏れだしを許容量とすることができる。特に、第一スリット23Aと第二スリット23Bの各々の長さを、挿通孔13の内径の0.8倍以上1.4倍以下とすることで、注入ノズル50の挿入性の向上と、発泡液の挿入部23からの漏れだし量の削減の効果を高めることができる。
【0044】
ここまでの説明では、挿入部23が、直交する2本のスリットによって挿抜方向に変形可能に構成されている。しかし、挿入部23を変形可能とするためには、この2本のスリットは交差していればよく、直交していなくてもよい。第一スリット23Aと第二スリット23Bが直交する上記の構成によれば、注入ノズル50の挿抜時における領域AR1~AR4の変形状態を均等化することができる。これにより、注入ノズル50の挿抜をスムーズに行うことができる。
【0045】
また、挿入部23を変形可能とするためには、挿入部23に含まれるスリットの数は2つに限らず、3つ以上であってもよい。例えば、挿入部23に含まれるスリットの全体形状を、3本のスリットが一か所で交わるY字状のスリットとしてもよい。
【0046】
また、以上の説明では、第一スリット23Aと第二スリット23Bの各々の長さを同じとしている。しかし、第一スリット23Aの長さと第二スリット23Bの長さを一致させることは必須ではない。ただし、第一スリット23Aと第二スリット23Bの各々の長さを同じにすることで、製造を容易にすることができると共に、注入ノズル50の挿抜の容易性を高めることができる。
【0047】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0048】
(1)
一対のステー挿通部(ステー挿通部12R,12L)を有するインナーカバー(インナーカバー10)と、袋状の表皮(表皮20)と、上記インナーカバーと上記表皮との間に形成された発泡体からなるパッド(パッド30)と、を有するヘッドレスト(ヘッドレスト100)であって、
上記インナーカバーは、底面における上記表皮に覆われた部分に貫通孔(挿通孔13)を有し、
上記表皮は、上記貫通孔と重なる位置に、交差する複数本のスリット(第一スリット23Aと第二スリット23B)を有するヘッドレスト。
【0049】
(2)
(1)記載のヘッドレストであって、
上記貫通孔は、上記一対のステー挿通部の間に配置されているヘッドレスト。
【0050】
(3)
(1)又は(2)記載のヘッドレストであって、
上記貫通孔の貫通方向の長さは0.5cm以上であるヘッドレスト。
【0051】
(4)
(1)から(3)のいずれか1つに記載のヘッドレストであって、
上記複数本のスリットは、それぞれ同じ長さであるヘッドレスト。
【0052】
(5)
(1)から(4)のいずれか1つに記載のヘッドレストであって、
上記複数本のスリットは、第一スリット(第一スリット23A)と、上記第一スリットに直交する第二スリット(第二スリット23B)であるヘッドレスト。
【0053】
(6)
(1)から(5)のいずれか1つに記載のヘッドレストであって、
上記スリットの長さは、上記貫通孔の内径の0.5倍以上2倍以下であるヘッドレスト。
【符号の説明】
【0054】
100 ヘッドレスト
10 インナーカバー
11 ステー
12L,12R ステー挿通部
12l,12r 突起部
13 挿通孔
14,15 領域
16 凹部
20 表皮
21 環状部
22B,22F,24L,24R 突出部
23A 第一スリット
23B 第二スリット
23 挿入部
30 パッド
40 アウターカバー
41L,41R 筒部
42L,42R 嵌合ツメ
50 注入ノズル
51 突起