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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/493 20060101AFI20230614BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20230614BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61F13/493
A61F13/49 410
A61F13/56 210
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019174929
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021049217
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 悠人
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-179070(JP,A)
【文献】特開2004-173855(JP,A)
【文献】特開2005-073897(JP,A)
【文献】特開2003-339413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/493
A61F 13/49
A61F 13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に吸収体を設け、
前記吸収体の幅方向の両側に、サイドフラップ部を形成し、
前記サイドフラップ部における背側部位の両側部にファスニングテープを設け、
前記バックシートの反身体側に不織布からなる外装シートを設け、
前記外装シートにおける腹側部位に、前記ファスニングテープが係合する前後方向に所定の長さを有して左右方向に延在する透気性の不織布から形成された矩形状のターゲットシートを設け、
平面視において、前記外装シートとターゲットシートの間に、前記ターゲットシートと同一形状、または、前記ターゲットシートよりも大型形状に形成された吸音シートを設け
前記外装シートの反身体側面と吸音シートの身体側面を、第1接着剤を介して部分的に固定し、前記吸音シートの反身体側面とターゲットシートの身体側面を、第2接着剤を介して部分的に固定したことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記吸音シートを多孔性材料で形成した請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記多孔性材料を、目付け10~50g/mの不織布、又は、目付け700~850g/mのフラッフパルプとした請求項2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
平面視において、前記第1接着剤と第2接着剤を同一位置に設けた請求項記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に吸収体を設け、
前記吸収体の幅方向の両側に、サイドフラップ部を形成し、
前記サイドフラップ部における背側部位の両側部にファスニングテープを設け、
前記バックシートの反身体側に不織布からなる外装シートを設け、
前記外装シートにおける腹側部位に、前記ファスニングテープが係合する前後方向に所定の長さを有して左右方向に延在する透気性の不織布から形成された矩形状のターゲットシートを設け、
平面視において、前記外装シートとターゲットシートの間に、前記ターゲットシートと同一形状、または、前記ターゲットシートよりも大型形状に形成された吸音シートを設け、
前記吸音シートにターゲットシートの外周縁から前後方向と左右方向に延在する延在部を形成し、
前記外装シートの反身体側面と吸音シートの延在部の身体側面を、第3接着剤を介して固定し、前記吸音シートの反身体側面とターゲットシートの身体側面を、第2接着剤を介して部分的に固定したことを特徴とする使い捨ておむつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関するものであり、特に、使い捨ておむつのターゲットシートからファスニングテープの剥離時に発生する剥離音を低減した使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターゲットシートに係合する係止部に対向するファスニングテープの基材の部位に、剥離音の伝達を抑制するために、貫通孔を形成する技術が知られている。(特許文献1)
【0003】
ファスニングテープを基部がサイドフラップ部に固定される主シートと、先端部がターゲットシートに係合する副シートで形成し、剥離音の発生を防止するために、主シートと副シートの間に粘着層を形成して、主シートを副シートから剥離させる技術が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-173855号公報
【文献】特開2012-179070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、ファスニングテープの基材に所定の張力を加えてターゲットシートに係合する場合に、基材の貫通孔を起点として基材が破断する恐れがあった。
【0006】
特許文献2の技術では、ファスニングテープの部品点数が多く、また、粘着層を介して主シートと副シートの位置ズレが発生して使い捨ておむつのフィット性が低下する恐れがあった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ファスニングテープの破断を防止し、ターゲットシートからファスニングテープの剥離時に発生する剥離音を低減することができる使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
第1手段は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に吸収体を設け、前記吸収体の幅方向の両側に、サイドフラップ部を形成し、前記サイドフラップ部における背側部位の両側部にファスニングテープを設け、前記バックシートの反身体側に不織布からなる外装シートを設け、前記外装シートにおける腹側部位に、前記ファスニングテープが係合する前後方向に所定の長さを有して左右方向に延在する透気性の不織布から形成された矩形状のターゲットシートを設け、平面視において、前記外装シートとターゲットシートの間に、前記ターゲットシートと同一形状、または、前記ターゲットシートよりも大型形状に形成された吸音シートを設け、前記外装シートの反身体側面と吸音シートの身体側面を、第1接着剤を介して部分的に固定し、前記吸音シートの反身体側面とターゲットシートの身体側面を、第2接着剤を介して部分的に固定したことを特徴とする。
【0009】
第2手段は、第1手段の構成において、前記吸音シートを多孔性材料で形成したことを特徴とする。
【0010】
第3手段は、第2手段の構成において、前記多孔性材料を、目付け10~50g/mの不織布、又は、目付け700~850g/mのフラッフパルプとしたことを特徴とする。
【0011】
【0012】
手段は、第手段の構成において、平面視において、前記第1接着剤と第2接着剤を同一位置に設けたことを特徴とする。
【0013】
手段は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に吸収体を設け、前記吸収体の幅方向の両側に、サイドフラップ部を形成し、前記サイドフラップ部における背側部位の両側部にファスニングテープを設け、前記バックシートの反身体側に不織布からなる外装シートを設け、前記外装シートにおける腹側部位に、前記ファスニングテープが係合する前後方向に所定の長さを有して左右方向に延在する透気性の不織布から形成された矩形状のターゲットシートを設け、平面視において、前記外装シートとターゲットシートの間に、前記ターゲットシートと同一形状、または、前記ターゲットシートよりも大型形状に形成された吸音シートを設け、前記吸音シートにターゲットシートの外周縁から前後方向と左右方向に延在する延在部を形成し、前記外装シートの反身体側面と吸音シートの延在部の身体側面を、第3接着剤を介して固定し、前記吸音シートの反身体側面とターゲットシートの身体側面を、第2接着剤を介して部分的に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1手段によれば、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に吸収体を設け、吸収体の幅方向の両側に、サイドフラップ部を形成し、サイドフラップ部における背側部位の両側部にファスニングテープを設け、バックシートの反身体側に不織布からなる外装シートを設け、外装シートにおける腹側部位に、ファスニングテープが係合する前後方向に所定の長さを有して左右方向に延在する透気性の不織布から形成された矩形状のターゲットシートを設け、平面視において、外装シートとターゲットシートの間に、ターゲットシートと同一形状、または、ターゲットシートよりも大型形状に形成された吸音シートを設け、外装シートの反身体側面と吸音シートの身体側面を、第1接着剤を介して部分的に固定し、吸音シートの反身体側面とターゲットシートの身体側面を、第2接着剤を介して部分的に固定したので、ファスニングテープをターゲットシートから剥離する場合に発生する剥離音の音圧を低減することができる。また、ファスニングテープに所定の引張を加えた場合に発生する破断も防止することができる。また、剥離音が第1接着剤と第2接着剤で反射して外部に向かって伝播するのを抑制することができる。
【0015】
第2手段によれば、第1手段による効果に加えて、第1手段の構成において、吸音シートを多孔性材料で形成したので、ファスニングテープをターゲットシートから剥離する場合に発生する剥離音の音圧をより低減することができる。
【0016】
第3手段によれば、第2手段による効果に加えて、多孔性材料を、目付け10~50g/mの不織布、又は、目付け700~850g/mのフラッフパルプとしたので、ファスニングテープをターゲットシートから剥離する場合に発生する剥離音の音圧を略半分の音圧まで低減することができる。
【0017】
【0018】
手段によれば、第手段による効果に加えて、平面視において、第1接着剤と第2接着剤を同一位置に設けたので、剥離音が第1接着剤と第2接着剤で反射して外部に向かって伝播するのをより抑制することができる。
【0019】
手段によれば、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に吸収体を設け、吸収体の幅方向の両側に、サイドフラップ部を形成し、サイドフラップ部における背側部位の両側部にファスニングテープを設け、バックシートの反身体側に不織布からなる外装シートを設け、外装シートにおける腹側部位に、ファスニングテープが係合する前後方向に所定の長さを有して左右方向に延在する透気性の不織布から形成された矩形状のターゲットシートを設け、平面視において、外装シートとターゲットシートの間に、ターゲットシートと同一形状、または、ターゲットシートよりも大型形状に形成された吸音シートを設け、吸音シートにターゲットシートの外周縁から前後方向と左右方向に延在する延在部を形成し、外装シートの反身体側面と吸音シートの延在部の身体側面を、第3接着剤を介して固定し、吸音シートの反身体側面とターゲットシートの身体側面を、第2接着剤を介して部分的に固定したので、吸音シート内に伝播された剥離音を外装シートに効率良く伝播させることができる。また、吸音シートを強固に外装シートの反身体面側に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】使い捨ておむつの身体側の平面図である。
図2】使い捨ておむつの反身体側の平面図である。
図3図1のX1-X1断面図である。
図4図1のX2-X2断面図である。
図5】(a)は外装シートと吸音材、(b)は吸音材とターゲットシートの接着パターンの説明図である。
図6】(a)は外装シートと吸音材、(b)は吸音材とターゲットシートの他の接着パターンの説明図である。
図7】ターゲットシートからファスニングテープを剥離した時に発生する剥離音の測定方法の説明図である。
図8】吸音材としてエアスルーを使用した場合の剥離音の測定結果である。
図9】吸音材としてフラッフパルプを使用した場合の剥離音の測定結果である。
図10】吸音材としてウレタンフォームを使用した場合の剥離音の測定結果である。
【0021】
図1~4に示すように、使い捨ておむつは、身体側に設けられた液透過性のトップシート10と、反身体側に設けられた液不透過性のバックシート11と、トップシート10とバックシート11の間に設けられた吸収要素20から形成されている。また、吸収要素20は、吸収体21と、吸収体21を覆う包装シート22とから形成されている。
【0022】
バックシート11の反身体側には、外装シート12が設けられている。また、トップシート10と吸収要素20の間には、トップシート10を透過した排泄物を吸収要素20に移動させ、排泄物の逆戻りを防止する中間シート15を設けるのが好ましい。
【0023】
吸収要素20の幅方向の両側には、所定の間隔を隔てて排泄物の外部への漏れを防止する立体ギャザー30が設けられている。立体ギャザー30は、実質的に幅方向に連続するギャザーシート31と、ギャザーシート31の前後方向に沿って伸長状態で固定された細長状の弾性伸縮部材32から形成されている。
【0024】
立体ギャザー30の基部の外側には、所定の間隔を隔てて排尿の外部への漏れを防止する平面ギャザー40が形成されている。平面ギャザー40は、バックシート11と、ギャザーシート31と、外装シート12と、バックシート11と、ギャザーシート31の間に前後方向に沿って伸長状態で固定された細長状の弾性伸縮部材41から形成されている。
【0025】
吸収要素20の前後方向の両側には、エンドフラップ部EFがそれぞれ形成され、吸収要素20の幅方向の両側には、サイドフラップ部SFがそれぞれ形成されている。
【0026】
サイドフラップ部SFにおける背側部の幅方向の両側には、ファスニングテープ50が設けられている。ファスニングテープ50は、サイドフラップSFに固定される基材51と、基材51の身体側に設けられた係止部52から形成されている。
【0027】
外装シート12の反身体側の腹側部には、ファスニングテープ50の係止部52が係止される前後方向に所定の間隔を有して幅方向に延在する矩形状のターゲットシート55が設けられている。
【0028】
外装シート12とターゲットシート55の間には、前後方向に所定の間隔を有して幅方向に延在する矩形状の吸音シート60が設けられている。これにより、ファスニングテープ50をターゲットシート55から剥離する場合に発生する剥離音を吸音してターゲットシート55の反身体側面から外部に伝播される剥離音のレベルを低減することができる。 なお、本実施形態においては、吸音シート60を外装シート12の反身体側面とターゲットシート55の身体側面の間に配置しているが、吸音シート60をターゲットシート55に対向するバックシート11の反身体側面と外装シート12の身体側面の間に配置することもできる。
【0029】
次に、外装シート12の反身体面側に、ターゲットシート55と吸音シート60の固定する第1形態について説明する。
【0030】
図5(a)に示すように、ターゲットシート55の身体側面は、吸音シート60の反身体側面にスパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤(請求項における「第2接着剤」)65を介して固定されている。これにより、ホットメルト接着剤65によって反射する剥離音の割合を低減して、多くの剥離音を吸音シート60内に伝播させることができ、吸音シート60の吸音効果を効率良く利用することができる。
【0031】
図5(a)には、吸音シート60の反身体側面にホットメルト接着剤65をスパイラル状に塗布した形態を図示しているが、ホットメルト接着剤65を前後方向に所定の間隔を隔てて左右方向に延在するストライプ状、左右方向に所定の間隔を隔てて上下方向に延在するストライプ状、前後・左右方向に所定の間隔を隔ててドッド状に塗布することができる。
【0032】
図5(b)に示すように、吸音シート60の身体側面は、外装シート12の反身体側面にスパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤(請求項における「第1接着剤」)66を介して固定されている。これにより、ホットメルト接着剤66によって反射する剥離音の割合を低減して、吸音シート60内を伝播した剥離音を引続いて外装シート12内に伝播させることができる。
【0033】
外装シート12内を伝播した剥離音は、バックシート12の反身体側面で反射される。反射された剥離音は、再び外装シート12、吸音シート60、ターゲットシート55を伝播した後に、ターゲットシート55の反身体側面から外部に伝播される。
【0034】
図5(b)には、吸音シート60の反身体側面にホットメルト接着剤66をスパイラル状に塗布した形態を図示しているが、ホットメルト接着剤66を前後方向に所定の間隔を隔てて左右方向に延在するストライプ状、左右方向に所定の間隔を隔てて上下方向に延在するストライプ状、前後・左右方向に所定の間隔を隔ててドッド状に塗布することができる。また、平面視において、ホットメルト接着剤65とホットメルト接着剤66の塗布を同一パターンにして、同一位置に塗布するのが好ましい。これにより、ホットメルト接着剤65とホットメルト接着剤66によって反射される剥離音の割合をより低減することができ、吸音シート60の吸音効果をより効率良く利用することができる。
【0035】
次に、外装シート12の反身体面側に、ターゲットシート55と吸音シート60を固定する第2形態について説明する。なお、第1形態と同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図6(a)に示すように、ターゲットシート55の身体側面は、第1形態と同様に吸音シート60の反身体側面にスパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤65を介して固定されている。これにより、ホットメルト接着剤65によって反射する剥離音の割合を低減して、多くの剥離音を吸音シート60内に伝播させることができ、吸音シート60の吸音効果を効率良く利用することができる。
【0037】
吸音シート61は、ターゲットシート62よりも大きな矩形状に形成されている。吸音シート61の前後方向の端部には、ターゲットシート62の端部からそれぞれ前後方向に延在する前後延在部62Aが形成され、吸音シート61の左右方向の端部は、ターゲットシート62の端部からそれぞれ左右方向に延在する左右延在部62Bが形成されている。なお、本明細書では、前後延在部62Aと左右延在62Bを総称して延在部62と言う。
【0038】
図6(b)に示すように、吸音シート60の延在部の身体側面は、外装シート12の反身体側面に塗布されたホットメルト接着剤(請求項における「第3接着剤」)67を介して固定されている。これにより、ターゲットシート55に対向する吸音シート60の身体側面にホットメルト接着剤67を設ける必要がなくなりホットメルト接着剤67によって反射する剥離音を防止して、吸音シート60内を伝播した剥離音を引続いて外装シート12内に伝播させることができる。
【0039】
次に、トップシート10等の素材および特徴部分について順に説明する。
(トップシート)
トップシート10は、不織布、多孔性プラスチックシート等で形成されている。不織布は、原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維等を例示することができる。また、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0040】
(バックシート)
バックシート11は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とでバックシートが構成される。)等で形成されている。また、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、バックシート11として用いることができる。
【0041】
(外装シート)
外装シート12は、吸収要素20を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を囲む部位となる。
【0042】
外装シート12は、不織布で形成するのが好適である。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互を接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10~50g/m、特に15~30g/mのものが好ましい。これにより、外装シート12内で外装シート12に伝播してきた剥離音の反射を抑制して、外装シート12の吸音性能を高めることができる。
【0043】
(中間シート)
中間シート15は、トップシート10と同様の素材で形成されている。中間シート15は、トップシート10に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート15の素材は、トップシート10と同程度の融点をもつものが好ましい。中間シート15に不織布を用いる場合、その不織布の繊維の繊度は2.0~5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0044】
(吸収体)
吸収体21は、繊維の集合体により形成されている。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0045】
吸収体21は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが好ましい。
【0046】
吸収体21の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート22上にある形態も排除されるものではない。
【0047】
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150~400μmのものが好ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系等のものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体等のものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0048】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体21内に供給された液が吸収体21外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0049】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体21の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/mとすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/mを超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0050】
(包装シート)
包装シート22は、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等で形成されている。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが好ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン等を使用できる。繊維目付けは、5~40g/m、特に10~30g/mのものが好ましい。
【0051】
(立体ギャザー)
立体ギャザー30のギャザーシート31としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材32としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0052】
ギャザーシート31の反身体側面は、トップシート10の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、バックシート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤等により固着されている。
【0053】
脚周りにおいては、立体ギャザー30の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート10上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性伸縮部材32の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして弾性伸縮部材32の収縮力が作用するので、弾性伸縮部材32の収縮力により立体ギャザー30が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0054】
(平面ギャザー)
ギャザーシート31とバックシート11との間に、糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材41が前後方向に沿って伸長された状態で固定されている。脚周り弾性伸縮部材41は、複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0055】
(ファスニングテープ)
ファスニングテープ50の基材51の基部は、ホットメルト接着剤等によってギャザーシート31と外装シート12の間に固定されている。また、基材51は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材から形成されている。
【0056】
係止部52は、メカニカルファスナーのフック材から形成されている。フック材は、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。もちろん、ファスニングテープ50の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0057】
(ターゲットシート)
ターゲットシート55は、外装シート12と同様の不織布で形成されている。繊維目付けは10~50g/m、特に15~30g/mで透気性のものが好ましい。これにより、ターゲットシート55内でターゲットシート55に伝播してきた剥離音の反射を抑制して、ターゲットシート55内の吸音性能を高めることができる。
【0058】
(吸音シート)
吸音シート60等は、剥離音が伝播する連続する連通孔を有する多孔質な材料で形成することができ、不織布、フラッフパルプ、ウレタンフォームで形成するのが好ましい。不織布で形成する場合には、繊維目付けを10~50g/m、特に15~25g/mのものが好ましい。また、フラッフパルプで形成する場合には、パルプ目付けを700~850g/m、特に750~800g/mのものが好ましい。さらに、ウレタンフォームで形成する場合には、ウレタン目付けを200~400g/m、特に250~350g/mのものが好ましい。これにより、吸音シート60内に多く連通孔を形成することができるので、ターゲットシート55に伝播してきた剥離音を多くの連通孔長さが長い連通孔内に沿って伝播させて吸音することができる。なお、吸音シート60は、ターゲットシート55と同一形状、または、ターゲットシート55よりも大型に形成することができる。この場合、吸音シート6の形状は、矩形形状の他、中央部に窪みがある砂時計形状等に形成することができる。
【0059】
次に、剥離音の吸音効果を評価した評価試験について説明する。
【0060】
図7に示すように、無響室内に、試験片と、試験片から発生する剥離音を集音するマイク(1/2インチ自由音場型、B&K製)と、マイクが集音した剥離音を周波数分析器(3560BPLUSE、B&K製)を設置して評価試験を行った。
【0061】
(試験片)
試験片1は、外装シートとターゲットシートの間に、厚み0.662mmで目付け20g/mのエアスルー不織布で形成した吸音シートを設けた。また、外装シートとターゲットシートは、20g/mのスパンボンド不織布で形成し、外装シートの反身体側面と吸音シートの身体側面と、吸音シートの反身体側面とターゲットシートの身体側面は、スパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤で固定した。
【0062】
試験片2は、外装シートとターゲットシートの間に、厚み1.35mmで目付け765g/mのフラフパルプで形成した吸音シートを設けた。また、外装シートとターゲットシートは、35g/mのスパンボンド不織布で形成し、外装シートの反身体側面と吸音シートの身体側面と、吸音シートの反身体側面とターゲットシートの身体側面は、スパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤で固定した。
【0063】
試験片3は、外装シートとターゲットシートの間に、厚み10mmで目付け288g/mのウレタンフォームで形成した吸音シートを設けた。また、外装シートとターゲットシートは、35g/mのスパンボンド不織布で形成し、外装シートの反身体側面と吸音シートの身体側面と、吸音シートの反身体側面とターゲットシートの身体側面は、スパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤で固定した。
【0064】
(比較片)
比較片は、外装シートとターゲットシートの間に、吸音シートを設けず、外装シートの反身体側面にターゲットシートの身体側面を固定した。また、外装シートとターゲットシートは、35g/mのスパンボンド不織布で形成し、外装シートの反身体側面とターゲットシートの身体側面は、スパイラル状に塗布されたホットメルト接着剤で固定した。
【0065】
(評価試験の方法)
試験片は、評価者の移動に伴って発生する異音の影響を防止するために高さ1100mmに評価者が手で把持し、マイクは、試験片から使い捨ておむつを装着された新生児の耳と使い捨ておむつのターゲットシートの距離に相当する130mm離間した位置に配置した。また、評価試験は、周囲の異音の影響を遮断するために無響室内で行なった。
【0066】
試験片は、目視においてターゲットシートにシワが入るのを防止するために前後方向と左右方向にわずかに張力を加えて評価台に固定する。次に、ターゲットシートの反身体側面に左右のファスニングテープを仮載せた後に、ターゲットシートとファスニングテープの係合強度を一定にするために、ファスニングテープの反身体側面に2kgのローラを一往復させて係合させる。
【0067】
試験片のファスニングテープの先端部を左右方向の内側上方に向かって30度傾斜させた後に、先端部を把持し左右方向の外側に100mm/secで移動させながらターゲットシートの反身体側面からファスニングテープを剥離させる。
【0068】
(評価試験の結果)
図8に示すように、試験片1では、人間の可聴域である20~15000Hzの内、20~10000Hzの周波数領域において音圧(dB)の低減が確認された。特に、低音域である20~500Hzにおいては、音圧(dB)が10dB以上低下していることから、吸音シートによって約50%程度の剥離音が吸音されていることが判った。なお、図8のア(青線)は、試験片1の評価結果であり、イ(黒線)は、比較片の評価結果である。
【0069】
図9に示すように、試験片2では、人間の可聴域である20~15000Hzの内、20~10000Hzの周波数領域において音圧(dB)の低減が確認された。特に、低音域である20~500Hzにおいては、音圧(dB)が2~3dB以上低下していることから、吸音シートによって剥離音が吸音されていることが判った。なお、図9のア(緑線)は、試験片2の評価結果であり、イ(黒線)は、比較片の評価結果である。
【0070】
図10に示すように、試験片3では、人間の可聴域である20~15000Hzの内、高音域の5000~10000Hzの周波数領域において音圧(dB)の低減が確認されたが、低音域の1000~2000Hzでは音圧(dB)の増加が確認された。なお、図10のア(オレンジ線)は、試験片3の評価結果であり、イ(黒線)は、比較片の評価結果である。
【0071】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0072】
・「前後(縦)方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
・「表側」とは装着者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは装着者の肌から遠い方を意味する。「表面」とは部材の、装着者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは装着者の肌から遠い方の面を意味する。
・「MD方向」及び「CD方向」とは、製造設備における流れ方向(MD方向)及びこれと直交する横方向(CD方向)を意味し、いずれか一方が製品の前後方向となるものであり、他方が製品の幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T471の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
・「展開」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
・「人工尿」は、尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したものであり、特に記載の無い限り、温度40度で使用される。
・「目付け量」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm、及び加圧面積:2cmの条件下で自動測定する。
・「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・試験や測定における環境条件についての記載がない場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に利用可能なものである。
【符号の説明】
【0074】
10 トップシート
11 バックシート
12 外装シート
21 吸収体
50 ファスニングテープ
55 ターゲットシート
60 吸音シート
65 ホットメルト接着剤(第2接着剤)
66 ホットメルト接着剤(第1接着剤)
67 ホットメルト接着剤(第3接着剤)
SF サイドフラップ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10