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特許7295767位置管理システム、位置管理方法及び位置管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】位置管理システム、位置管理方法及び位置管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20230614BHJP
   G06Q 10/08 20230101ALI20230614BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G06Q10/08
B65G61/00 520
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019182123
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2021056185
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 征典
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151190(JP,A)
【文献】特開2017-201473(JP,A)
【文献】特開2016-110358(JP,A)
【文献】特開2003-346107(JP,A)
【文献】特開2016-212049(JP,A)
【文献】特表2011-511931(JP,A)
【文献】特開2013-015495(JP,A)
【文献】米国特許第08660578(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
19/00 - 19/55
B65G 1/137
B65G 61/00
G06Q 10/00 - 10/10
30/00 - 30/08
50/00 - 50/20
50/26 - 99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に取り付けられ、移動状態であるか静止状態であるかを示す状態信号を含む電波を周期的に発信する無線通信タグと、
前記無線通信タグが周期的に発信する前記電波を取得して、当該無線通信タグの位置情報を検出すると共に、前記無線通信タグが移動状態であるか静止状態であるかを示す情報を取得する位置検出装置と、
前記位置検出装置が検出した前記無線通信タグの位置情報に基づいて、前記無線通信タグの所在エリアを算出する位置情報算出部と、前記位置情報算出部が算出した所在エリアに基づいて、前記物品の保管エリアを管理する保管場所管理部と、を有する管理サーバと、
を備え、
前記保管場所管理部は、前記位置検出装置が取得した前記情報に基づいて、前記無線通信タグが静止状態であり、静止状態となる直前の周期に移動状態であった場合は、少なくとも静止状態となる直前の周期で算出された所在エリアに基づいて前記物品の保管エリアを設定する
位置管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の位置管理システムであって、
前記保管場所管理部は、前記無線通信タグが静止状態であり、静止状態となる直前の周期に移動状態であった場合は、静止状態となる直前の複数の周期で算出された複数の所在エリアが同一である場合に、当該所在エリアを、当該無線通信タグが静止状態になった後の前記物品の保管エリアとして設定する
位置管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の位置管理システムであって、
前記保管場所管理部は、前記無線通信タグが静止状態である場合は、前記無線通信タグが移動状態となるまで、静止状態となった後に最初に設定された前記保管エリアを、継続して前記物品の保管場所として設定する
位置管理システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の位置管理システムであって、
前記無線通信タグは、静止状態が所定時間継続した後に、静止状態である状態信号を前記電波として発信する
位置管理システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の位置管理システムであって、
前記無線通信タグは、静止状態である場合は、移動状態と比較して前記電波の発信の周期を長くする
位置管理システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の位置管理システムであって、
前記無線通信タグは、静止状態である場合は、所定のタイミングで前記電波の発信を停止する
位置管理システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の位置管理システムであって、
前記保管場所管理部は、前記無線通信タグが移動状態であり、移動状態となる直前の周期に静止状態であった場合は、前記無線通信タグが発信する前記電波に基づいて算出された前記無線通信タグの所在エリアを、前記物品の保管エリアとして設定する
位置管理システム。
【請求項8】
物品に取り付けられ、移動状態であるか静止状態であるかを示す状態信号を含む電波を周期的に発信する無線通信タグと、前記無線通信タグが周期的に発信する前記電波を取得して、当該無線通信タグの位置情報を検出すると共に、前記無線通信タグが移動状態であるか静止状態であるかを示す情報を取得する位置検出装置と、前記位置検出装置が検出した前記無線通信タグの位置情報に基づいて前記物品の保管エリアを管理する管理サーバと、を備える位置管理システムにおける位置管理方法であって、
前記位置検出装置が検出した前記無線通信タグの位置情報に基づいて、前記無線通信タグの所在エリアを算出し、
前記無線通信タグが静止状態であり、静止状態となる直前の周期に移動状態であった場合は、少なくとも静止状態となる直前の周期で算出された所在エリアに基づいて前記物品の保管エリアを設定する
位置管理方法。
【請求項9】
物品に取り付けられ、移動状態であるか静止状態であるかを示す状態信号を含む電波を周期的に発信する無線通信タグと、前記無線通信タグが周期的に発信する前記電波を取得して、当該無線通信タグの位置情報を検出すると共に、前記無線通信タグが移動状態であるか静止状態であるかを示す情報を取得する位置検出装置と、前記位置検出装置が検出した前記無線通信タグの位置情報に基づいて前記物品の保管エリアを管理する管理サーバと、を備える位置管理システムのコンピュータが実行する位置管理プログラムであって、
前記位置検出装置が検出した前記無線通信タグの位置情報に基づいて、前記無線通信タグの所在エリアを算出する手順と、
前記無線通信タグが静止状態であり、静止状態となる直前の周期に移動状態であった場合は、少なくとも静止状態となる直前の周期で算出された所在エリアに基づいて前記物品の保管エリアを設定する手順と、
を前記コンピュータに実行させる
位置管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置管理システム、位置管理方法及び位置管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の荷物にそれぞれ取り付けられた荷物用無線通信タグの位置情報を自動的に取得し記憶媒体に記憶する移動経路管理システムが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/068950号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のシステムでは、無線通信タグから発信された電波に基づき位置情報を取得している。このようなシステムにおいて、無線通信タグが移動している場合は比較的正確に位置情報を管理することができる。一方で、無線通信タグが移動していない(静止している)場合は、実際の無線通信タグの位置と取得した位置情報との間でズレが生じる場合があり、無線通信タグの位置管理に問題が発生する場合があった。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、無線通信タグを用いた物品の位置管理において、位置管理の精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
物品に取り付けられ、移動状態であるか静止状態であるかを示す状態信号を含む電波を周期的に発信する無線通信タグと、無線通信タグが周期的に発信する電波を取得して、当該無線通信タグの位置情報を検出すると共に、無線通信タグが移動状態であるか静止状態であるかを示す情報を取得する位置検出装置と、前記位置検出装置が検出した前記無線通信タグの位置情報に基づいて、無線通信タグの所在エリアを算出する位置情報算出部と、位置情報算出部が算出した所在エリアに基づいて、物品の保管エリアを管理する保管場所管理部と、を有する管理サーバと、を備え、保管場所管理部は、前記位置検出装置が取得した前記情報に基づいて、前記無線通信タグが静止状態であり、静止状態となる直前の周期に移動状態であった場合は、少なくとも静止状態となる直前の周期で算出された所在エリアに基づいて物品の保管エリアを設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
これによれば、位置情報の精度が低下する無線通信タグの静止状態では、静止状態となるよりも前の周期で算出された所在エリアに基づいて保管エリアを設定することにより、物品の位置管理の精度を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る位置管理システムの概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る管理サーバの構成ブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る管理サーバの機能ブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る無線通信タグの機能ブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係る無線通信タグの状態遷移図である。
図6】本発明の実施形態に係る管理サーバの処理のフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る保管場所リストの一例を示す説明図である。
図8】本発明の実施形態の変形例に係る管理サーバの処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態の位置管理システム1について詳説する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る位置管理システム1の説明図である。
【0011】
本実施形態の位置管理システム1は、管理サーバ10、位置検出装置20、物品60に固定された無線通信タグ50からなる。これらは倉庫100内に備えられる。
【0012】
本実施形態における倉庫100は、搬入口から搬入される物品60を保管エリアに一時的に保管し、必要に応じて搬出口から物品60を搬出する。倉庫100には、物品60を搬送するための搬送装置200が備えられる。
【0013】
本実施形態の物品60は、一例として、長さ1m、直径50cmの円筒状の製品を用いる。物品60の形状はこれに限定されるものではない。また、物品60は必ずしも製品に限られるものではなく、製品を梱包する箱やケース等であってもよい。
【0014】
倉庫100は、物品60が載置される複数の所在エリアが設定されている。所在エリアは、例えば2m四方の矩形形状とする。このように設定された所在エリアに物品60が載置されることで、物品60が保管される。
【0015】
所在エリアは、倉庫100の床面に格子状に設定されている。図1に示す例では、倉庫100の床面に、A、B、C、D、Eからなる複数の列が設定されると共に、各列にそれぞれ01~07の複数の行が設定され、これら行及び列からなる複数の所在エリアが設定される。これら所在エリアのうち、C列と04行に相当する位置は、搬送装置200が通過可能なエリア(通路)として設定されている。
【0016】
なお、所在エリアの床面に物品60を直接載置するのではなく、棚等を設置して、棚の上に物品60を載置してもよいし、棚を複数段として、同一の所在エリアに複数の物品60が棚の各段にそれぞれ保管されていてもよい。
【0017】
物品60には、それぞれ無線通信タグ50が取り付けられている。無線通信タグ50が所定周期で所定の周波数の位置検出用電波を発信することで、位置検出装置20によって無線通信タグ50の位置が検出される。また、無線通信タグ50は、自身が移動状態であるか静止状態であるかを判別する機能を有し、位置検出装置20によってその状態が取得される。
【0018】
管理サーバ10は、倉庫100での物品60の保管エリアを管理する。管理サーバ10は、位置検出装置20が取得した無線通信タグ50の位置情報に基づいて当該無線通信タグ50が取り付けられている物品60の所在エリアを算出することで、物品60が移動中である場合はその所在エリアを、物品60が保管中である場合はその保管エリアを管理する。
【0019】
なお、管理サーバ10は単一のサーバ装置で構成されていてもよいし、一又は複数のサーバ装置により仮想的に構成されるものであってもよい。また、管理サーバ10は、クラウドサーバとして構成されていてもよい。
【0020】
また、管理サーバ10は、空きの所在エリアを作業者に提供することで、新たに搬入された物品60を保管すべき保管エリアを、作業者に示唆することができる。さらに、物品60の搬出を行なう場合は、作業者に搬出すべき物品60が保管されている保管エリアを提供することもできる。
【0021】
位置検出装置20は、無線通信タグ50から発信される位置検出用電波を取得し、取得した位置検出用電波に基づいて、当該無線通信タグ50の位置情報を検出する。より具体的には、位置検出装置20は、内蔵された指向性アンテナにより無線通信タグ50が発信する位置検出用電波を取得することで、位置検出装置20に対する無線通信タグ50の方向及び距離を検出して、無線通信タグ50の位置情報を検出する。検出された位置情報は管理サーバ10に送られる。位置情報は、倉庫100の床面を二次元平面とした場合の二次元座標として検出される。なお、位置情報は、二次元平面ではなく高さ方向の情報を有してもよい。
【0022】
また、位置検出装置20は、無線通信タグ50が発信する電波に含まれる無線通信タグ50が移動状態であるか静止状態であるかを示す情報、無線通信タグ50のバッテリ残容量情報等を、検出された無線通信タグ50の位置情報と合わせて情報セットとして管理サーバ10に送る。
【0023】
搬送装置200は、倉庫100内で物品60を搬送する。搬送装置200は、作業者の操作により、搬入口に搬入された物品60を空きの所在エリアへと搬送する。また搬送装置200は、所在エリアに保管された物品60を搬出口へと搬送する。なお、搬送装置200に限らず、作業者が人力によって保管場所へと物品60を搬送してもよい。
【0024】
図1に示す例では、所在エリアA01、A05、A06、D01、D02、D03にそれぞれ物品60が保管されていることが示されている。このうち所在エリアD03には棚が設置され、3つの物品60が保管されていることが示されている。また、搬送装置200により、新たに物品60が搬送されていることが示されている。
【0025】
図2は、本実施形態の管理サーバ10の構成ブロック図である。
【0026】
管理サーバ10は、CPU(central processing unit:中央演算装置)11、ROM(read only memory)12、RAM(random access memory)13、通信部14、入力部15及び表示部16を備えて構成される。これらはバス17を介して相互に各種データの送受信が行なえるように構成されている。
【0027】
CPU11は、ROM12に記憶されているプログラムを実行することによって、管理サーバ10を統括的に制御すると共に、各部に所要の処理や制御を実行させるコンピュータである。CPU11は、ROM12に記憶されているプログラムを実行することによって、図3で説明する各部の機能を実現する。CPU11が実行する各種プログラムは、例えばCD-ROMや不揮発性メモリ等の非一過性の記録媒体に記憶されたものを用いてもよい。
【0028】
ROM12には、CPU11が読み出して実行するプログラムが記憶される。RAM13には、CPU11が実行する処理に必要なプログラム(スクリプト)や各種情報が記憶される。
【0029】
通信部14は、位置検出装置20との間でデータを送受信する機能を有する。通信部14は、位置検出装置20から送信される情報セット受信し、これをCPU11に送る。また、通信部14は、ネットワークを介して他のコンピュータやサーバ等と通信可能に構成される。
【0030】
入力部15は、例えばマウス及びキーボードからなる入力装置により構成され、管理者の操作に対応した操作信号をCPU11に送る。表示部16は、例えば液晶ディスプレイからなる表示装置により構成され、CPU11から供給される表示データを出力する。
【0031】
図3は、本実施形態の管理サーバ10の機能ブロック図である。
【0032】
管理サーバ10、CPU11がプログラムを実行することにより各種アプリケーションが実行されることで、次に説明する機能を実現する。
【0033】
図3に示す位置情報受信部110と、位置情報算出部120と、保管場所管理部130とは、管理サーバ10においてCPU11により実行される各機能を仮想的なブロックとして示したものである。
【0034】
位置情報受信部110は、位置検出装置20から送信される無線通信タグ50の情報セットを受信し、受信した情報セットを位置情報算出部120に送る。位置検出装置20は、倉庫100内に存在する無線通信タグ50毎に、所定の周期で情報セットを送信する。
【0035】
位置情報算出部120は、位置情報受信部110が受信した情報に基づいて、倉庫100内における無線通信タグ50の所在エリアを算出する。
【0036】
保管場所管理部130は、倉庫100内に存在する無線通信タグ50の所在エリアに基づいて、物品60が移動中である場合はその所在エリアを、物品60が保管されている場合はその保管エリアを、それぞれ管理する。
【0037】
図4は、本実施形態の無線通信タグ50の機能ブロック図である。
【0038】
無線通信タグ50は、電波発信部510、制御部520、動き検出部530及びバッテリ540を備える。
【0039】
電波発信部510は、制御部520による制御により、所定の周期で、所定の周波数の位置検出用電波を発信する。一例として、所定の周期は1秒間に5回(0.2秒間隔)であり、所定の周波数は2GHz帯の電波である。位置検出用電波には、無線通信タグ50それぞれに設定された固有の識別情報が含まれるほか、動き検出部530により検出された移動状態であるか静止状態であるかの情報、及びバッテリ540の残容量の情報が含まれる。電波発信部510は、制御部520の制御に基づき、これらの情報を位置検出用電波として発信する。
【0040】
制御部520は、動き検出部530の状態及びバッテリ540の残容量を取得し、電波発信部510の動作を制御する。
【0041】
動き検出部530は、例えばジャイロスコープ等からなるモーションセンサにより構成され、無線通信タグ50が移動状態であるか静止状態であるかを検出する。
【0042】
バッテリ540は、電波発信部510、制御部520及び動き検出部530に電力を供給する。バッテリ540の残容量は、制御部520によって取得される。
【0043】
無線通信タグ50は、動き検出部530の検出結果により、自身が静止状態である場合は、位置検出用電波の発信の周期を移動状態である場合よりも長くする(発信の頻度を小さくする)ことができる(例えば1秒間に1回)。
【0044】
これにより、無線通信タグ50が移動状態である場合には、位置検出用電波が高頻度で発信されるため、位置検出装置20が無線通信タグ50の位置をより細かく(より精細に)検出することができる。一方で、無線通信タグ50が静止状態である場合は、位置検出用電波の周期を長くすることで、無線通信タグ50の消費電力を少なくして、バッテリの寿命を延ばすことができる。
【0045】
無線通信タグ50の制御部520は、動き検出部530が静止状態であることを検出した場合は、検出してから所定時間(例えば5秒)経過後に、移動状態から静止状態となったと検出するように制御する。これは、動き検出部530のセンサ自体のチャタリングを防止したり、物品60を保管エリアに載置した後に細かい位置合わせを行なうことで静止状態と移動状態とが頻繁に入れ替わることを考慮してヒステリシスを設けるためである。
【0046】
なお、無線通信タグ50は、静止状態になってから所定のタイミング(例えば10秒後)に、位置検出用電波の出力を停止する「スリープ状態」としてもよい。無線通信タグ50が静止状態となった場合は、次に移動状態となるまでは無線通信タグ50の位置を検出する必要がないためである。無線通信タグ50がスリープ状態を有することにより、無線通信タグ50のバッテリの消費電力を抑えることができる。
【0047】
図5は、本実施形態の無線通信タグ50の状態遷移図である。
【0048】
無線通信タグ50の制御部520は、動き検出部530の検出結果に基づいて、無線通信タグ50が移動状態であるか静止状態であるかを検出する。無線通信タグ50の初期状態は移動状態である。移動状態である場合は、静止状態と比較して短い周期で(高い頻度で)電波を発信する。
【0049】
動き検出部530が静止状態であることを検出した場合は、制御部520は、無線通信タグ50を静止状態に遷移する。静止状態である場合は、移動状態と比較して長い周期で(少ない頻度で)電波を発信する。このように、無線通信タグ50が静止状態である場合は、電波を発信する頻度を少なくするので、無線通信タグ50のバッテリ540の電力消費を抑えることができる。無線通信タグ50が静止状態である場合は、管理サーバ10が電波を受信する頻度が少なくなるので、管理サーバ10が所在エリアを算出する演算を行なう頻度も減少する。これにより、管理サーバ10の処理負荷を低減することができる。
【0050】
さらに、制御部520は、動き検出部530が静止状態であることを検出してから所定時間が経過した場合に、無線通信タグ50をスリープ状態に遷移させる。スリープ状態である場合は、電波の発信を停止する。このように、無線通信タグ50がスリープ状態である場合は、電波の発信を停止するので、無線通信タグ50のバッテリ540の電力消費をさらに抑えることができる。なお、動き検出部530が静止状態であることを検出した場合は、直ちに無線通信タグ50をスリープ状態としてもよい。
【0051】
無線通信タグ50が静止状態又はスリープ状態である場合に、動き検出部530が動きを検出した場合は、制御部520は、無線通信タグ50を直ちに移動状態に遷移させる。
【0052】
次に、以上のように構成された本実施形態の位置管理システム1の動作を説明する。
【0053】
倉庫100に搬入された物品60に取り付けられた無線通信タグ50は、前述のように所定周期で位置検出用電波を発信する。
【0054】
位置検出装置20は、無線通信タグ50から発信された位置検出用電波を受信し、位置検出用電波の方向及び距離を検出することで、倉庫100における無線通信タグ50の二次元座標を位置情報として検出する。位置検出装置20は、無線通信タグ50固有の識別情報、無線通信タグ50が移動状態であるか静止状態であるかの情報、無線通信タグ50のバッテリ540の残容量の情報を位置情報とセットとして、所定の周期(無線通信タグ50から位置検出用電波を受信した周期)で管理サーバ10に送信する。
【0055】
管理サーバ10において、位置情報受信部110が、位置検出装置20から送信された情報セットを受信する。位置情報受信部110は、受信した情報セットを位置情報算出部120に送る。
【0056】
位置情報算出部120は、送られた情報セットに基づいて、無線通信タグ50の所在エリアを算出する。より具体的には、位置情報算出部120は、送られた情報セットに含まれる位置情報から、倉庫100に設定されている所在エリアを特定し、特定された所在エリアを無線通信タグ50が存在する所在エリアとして算出する。位置情報算出部120は、算出された所在エリアを、送られた情報セットと共に保管場所管理部130に送る。
【0057】
保管場所管理部130は、RAM13内に構成された記憶領域内に、無線通信タグ50の識別情報毎に、位置検出用電波の取得時間、算出された所在エリア、移動状態であるか静止状態であるかを示す情報、を組とした時系列のリストである保管場所リスト300を作成してこれらを記録する(図7参照)。既に当該識別情報の保管場所リスト300が存在する場合は、これらの情報を保管場所リストに追記して記録する。なお、保管場所リストにバッテリ残容量の情報を記録してもよい。
【0058】
以上のような処理によって、管理サーバ10が、所定の周期で無線通信タグ50の所在エリアを算出し、保管場所リストとして管理する。これにより、無線通信タグ50が取り付けられた物品60が所在する場所を管理することができる。
【0059】
このように構成された位置管理システム1において、次のような懸念がある。
【0060】
無線通信タグ50すなわち物品60が移動している場合(搬送されている場合)は、位置検出用電波は比較的高い頻度で送信されるため、位置検出装置20が実際の無線通信タグ50の位置情報とは異なる位置情報を検出する可能性は低く、また、仮に異なった位置情報を検出したとしても、無線通信タグ50はすぐに移動するため、問題とはならない。
【0061】
一方で、無線通信タグ50すなわち物品60が保管エリアに保管された場合は、物品60は移動することがない(静止状態)。この場合は、実際の無線通信タグ50が存在する位置と位置検出装置20が取得した位置情報との間でズレが生じる場合がある。これにより、管理サーバ10において、異なった位置情報に基づいた異なった所在エリアが算出される場合がある。
【0062】
これは、無線通信タグ50が発信する位置検出用電波が壁面や床、棚等に反射し、反射した電波が位置検出装置20に到達することで、実際の位置と異なる位置情報が検出される場合があるためである。物品60が静止状態である場合は、反射した電波の状態も変化しないため、位置検出装置20が無線通信タグ50の実際の位置とは異なった位置情報を検出し続ける場合がある。
【0063】
さらに、無線通信タグ50は、静止状態である場合には消費電力を低減させる目的で位置検出用電波の頻度を小さくするため、静止状態である限り、位置検出装置20が、実際の位置とは異なった位置情報を検出する状態が継続する場合がある。
【0064】
なお、位置検出装置20が実際の位置とは異なった位置情報を検出する場合は、上記のような位置検出用電波の反射に限られず、位置検出用電波の状態や位置検出装置20のアンテナの検出精度の問題など、様々な要因によって発生し得る。
【0065】
これにより、管理サーバ10において、実際の無線通信タグ50がある所在エリアとは異なる所在エリアを算出してしまう場合があり、異なった所在エリアに基づく保管エリアを管理してしまうことにより、物品60の位置管理の精度が低下するおそれがあった。
【0066】
そこで、本実施形態では、特に無線通信タグ50が静止状態であって保管状態にある場合に、実際の無線通信タグ50の位置に対応する保管エリアとは異なった保管エリアを管理してしまうことを防止するために、次のような制御を行なう。
【0067】
図6は、本実施形態の管理サーバ10の処理のフローチャートである。
【0068】
まず、管理サーバ10において、位置情報受信部110は、位置検出装置20から無線通信タグ50の情報のセットが送信されるまで待機する(ステップS110)。位置検出装置20は、無線通信タグ50毎に所定の周期で送られる位置検出用電波を受信し、この周期に対応して、前述の情報セットを管理サーバ10に送る。
【0069】
位置検出装置20から無線通信タグ50の情報セットを受信した場合は、位置情報受信部110は、受信した情報セットを位置情報算出部120に送る(ステップS120)。
【0070】
位置情報算出部120は、送られた情報セットに基づいて、無線通信タグ50の位情報が倉庫100内のいずれの所在エリアに対応するかを算出する(ステップS130)。倉庫100の所在エリアは、その床面を二次元平面とした場合の二次元座標に対応しており、位置情報算出部120は、無線通信タグ50の位置情報を二次元座標に照合して対応する所在エリアを算出する。そして、保管場所管理部130は、算出された所在エリアを記録する。
【0071】
次に、位置情報算出部120は、送られた情報セットから、無線通信タグ50が静止状態であるか否かを判断する(ステップS140)。無線通信タグ50が静止状態であると判断した場合は、ステップS150に移行し、位置情報算出部120は、無線通信タグ50が静止状態となる直前の周期で位置検出装置20が取得した位置情報、すなわち、無線通信タグ50が静止状態となる直前に移動状態であったときの位置情報に対応する所在エリアを取得する(ステップS150)。その後、ステップS160に移行する。
【0072】
ステップS140において、無線通信タグ50が静止状態でない場合は、ステップS160に移行する。
【0073】
ステップS160では、保管場所管理部130は、ステップS140で無線通信タグ50が静止状態でないと判断された場合は、ステップS130で算出された所在エリアを保管エリアとして設定する。一方、保管場所管理部130は、ステップS140で無線通信タグ50が静止状態であると判断された場合は、ステップS150で算出された無線通信タグ50が静止状態となる直前に移動状態であったときの位置情報に対応する所在エリアを保管エリアとして設定する。保管場所管理部130は、設定した保管エリアを、保管場所リストに記録する。ステップS160の処理の後、ステップS110に戻る。
【0074】
以上のような処理により、管理サーバ10が、無線通信タグ50が取り付けられた物品60の保管エリアを精度よく管理することができると共に、無線通信タグ50が静止状態である場合には、位置検出用電波の状態等により位置精度が低下することが防止される。無線通信タグ50が静止状態となったとき、直前の周期で算出された所在エリアを保管エリアとして設定するのは、所在エリアの大きさと物品60のサイズから考慮して、これらの間で物品60の移動がほとんどないと推測できるからである。
【0075】
さらに、無線通信タグ50が静止状態となった後は、無線通信タグ50が移動状態となるまで、直前に演算された所在エリアを用いて保管エリアとするので、周期的に保管エリアを更新する必要がなくなり、管理サーバ10の演算負荷を低減することができる。
【0076】
図7は、本実施形態の保管場所管理部130が管理する保管場所リスト300の一例を示す説明図である。
【0077】
保管場所リスト300は、無線通信タグ50の識別情報毎に、位置検出用電波の取得時間、算出された所在エリア、保管エリア及び無線通信タグ50の状態をリストとしたものである。
【0078】
図7に示す例では、識別情報が「0001」である無線通信タグ50が、取得時間「13:00:00」において、算出された所在エリア及び保管エリアは「C01」であり、移動状態であることが示されている。なお、無線通信タグ50が移動状態である場合は、所在エリアと保管エリアとは一致する。
【0079】
また、取得時間「13:01:00」において、移動状態から静止状態に変化していることが示されている。
【0080】
この場合には、前述のステップS160の制御により、管理サーバ10は、静止状態となる直前の周期での位置情報に基づいて算出された所在エリアを、保管エリアとして設定する。
【0081】
図7に示す例では、取得時間「13:01:00」の直前の周期である「13:00:80」において算出された所在エリア「B02」が、保管エリアとして設定されている。
【0082】
その後、位置検出用電波の状態により、算出された所在エリアが実際の所在エリアと異なる位置となった場合にも、管理サーバ10は、無線通信タグ50が静止状態である限り、設定された保管エリアを、継続して物品60の保管エリアとして管理する。
【0083】
図7に示す例では、取得時間「13:02:00」及び「13:03:00」において、共に所在エリアが「D06」として算出されている。この場合にも保管エリアとして設定された「B02」を当該物品60の保管エリアとして継続して設定する。
【0084】
これにより、位置検出用電波の状態等により管理精度が低下することが防止される。
【0085】
さらに、図7に示す例では、取得時間「13:05:10」において、移動状態となったことが示されている。この場合は、無線通信タグ50は、直ちに位置検出用電波の周期が短くなるように制御され、管理サーバ10において、前述の図6のステップS140及びS160の制御により所在エリアを算出すると共に、算出された所在エリアを保管エリアとして設定する。
【0086】
なお、本実施形態の変形例として、無線通信タグ50が静止状態となる直前の周期における位置情報に基づく所在エリアを保管エリアとして設定するたけではなく、静止状態となる直前の複数の周期(例えば3周期)に渡って同一の所在エリアを算出した場合に、この同一の所在エリアを、保管エリアとして設定してもよい。
【0087】
図8は、本実施形態の変形例のフローチャートであり、図6のステップS150に対応する。
【0088】
図6のステップS140において、無線通信タグ50が静止状態であった場合に、ステップS210に移行する。ステップS210では、保管場所管理部130は、無線通信タグ50が静止状態となる直前の複数周期(3周期)に渡って、位置検出装置20が取得した位置情報に対応して位置情報算出部120が算出した所在エリアが同一であるか否かを判断する。
【0089】
複数周期にわたって同一の所在エリアであると判断した場合は、ステップS220に移行して、保管場所管理部130は、この所在エリアを保管エリアとして設定する。
【0090】
一方、複数周期に渡って同一の所在エリアではないと判断した場合は、ステップS230に移行して、保管場所管理部130は、静止状態となる直前の周期で算出された一の所在エリアを保管エリアとして設定する。その後、図6のステップS160に戻る。
【0091】
このように、静止状態となる直前の複数の周期に渡って同一の所在エリアが算出されている場合は、当該物品60は、所在エリアに載置されている又は載置されようとしていることが推測できるため、その所在エリアを保管エリアとして設定することにより、物品60の保管エリアの位置精度を高くできる。
【0092】
なお、無線通信タグ50が静止状態から移動状態となった場合は、前述のように無線通信タグ50は直ちに移動状態に遷移して、短いで周期で位置検出用電波を発信するようにする。これにより、物品60の移動に伴う所在エリアの検出精度を高くできる。
【0093】
また、管理サーバ10の保管場所管理部130は、無線通信タグ50からバッテリ540の残容量の情報を取得し、バッテリ残容量が所定値を下回った場合に、表示部16や通信部14を介して作業者の端末等に警告を通知するように構成してもよい。
【0094】
また、管理サーバ10の保管場所管理部130は、物品60が搬送中である場合に、空きの所在エリアを表示部16や通信部14を介して作業者が有する端末等に提示させてもよい。この場合、現在の物品60の所在エリアから最寄りの空きの所在エリアを提示すると共に、その所在エリアまでの最短距離となる通路の情報を提示するように構成してもよい。
【0095】
以上述べたように、本実施形態によれば、物品60に取り付けられ、移動状態であるか静止状態であるかを示す状態信号を含む電波を周期的に発信する無線通信タグ50と、無線通信タグ50が周期的に発信する電波に基づいて、無線通信タグ50の所在エリアを算出する位置情報算出部120と、位置情報算出部120が算出した所在エリアに基づいて、物品60の保管エリアを管理する保管場所管理部130と、を有する管理サーバ10と、を備える。保管場所管理部130は、無線通信タグ50が移動状態から静止状態となった場合は、少なくとも静止状態となる直前の周期で算出された所在エリアに基づいて物品60の保管エリアを設定する。
【0096】
本実施形態は、このような構成により、無線通信タグ50が静止状態となった場合は、静止状態となる直前の周期で算出された所在エリアを、保管エリアとして設定することにより、位置管理の精度を高めることができる。
【0097】
また、本実施形態では、保管場所管理部130は、無線通信タグ50が移動状態から静止状態となった場合は、静止状態となる直前の複数の周期で算出された複数の保管エリアが同一である場合に、当該所在エリアを、当該無線通信タグ50が静止状態になった後の物品60の保管エリアとして設定する。
【0098】
これにより、複数の周期にわたって同一の所在エリアである場合にその所在エリアを保管エリアとすることで、無線通信タグ50が静止状態である場合の位置管理の精度をより高めることができる。
【0099】
また、本実施形態では、保管場所管理部130は、無線通信タグ50が静止状態である場合は、無線通信タグ50が移動状態となるまで、静止状態となった後に最初に設定された保管エリアを、継続して物品60の保管場所として設定する。
【0100】
これにより、無線通信タグ50が静止状態である場合に、静止状態となった後に最初に設定された保管エリアを物品の保管エリアとして継続して設定することで、無線通信タグ50が静止状態である場合の位置管理の精度をより高めることができる。
【0101】
また、本実施形態では、無線通信タグ50は、静止状態が所定時間継続した後に、静止状態である状態信号を電波として発信するので、移動状態と静止状態との間のチャタリング等の影響を排除することができる。
【0102】
また、本実施形態では、無線通信タグ50は、静止状態である場合は、移動状態と比較して電波の発信の周期を長くするので、静止状態における電波の発信頻度を少なくして、無線通信タグ50のバッテリ540の電力消費を抑えることができる。
【0103】
また、本実施形態では、無線通信タグ50は、静止状態である場合は、スリープ状態に遷移して、電波の発信を停止するように制御することもできる。電波の発信を停止することで、無線通信タグ50のバッテリ540の電力消費を抑えることができる。
【0104】
また、本実施形態では、保管場所管理部130は、無線通信タグ50が静止状態から移動状態となった場合は、無線通信タグ50が発信する電波に基づいて算出された無線通信タグ50の所在エリアを、物品60の保管エリアとして設定するので、物品60が移動を開始した場合は直ちに移動状態に対応して所在エリアを算出するので、無線通信タグ50が移動状態である場合の位置管理の精度をより高めることができる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0106】
前述した本発明の実施形態では、物品60に無線通信タグ50を取り付け、この無線通信タグ50の所在エリア及び保管エリアを管理するように構成したが、これに限られない。例えば、物品60を搬送する搬送装置200や、物品60の搬送を補助する作業者に無線通信タグ50を取り付けて、その所在エリアを検出することで、物品60の保管エリアと共に管理するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 位置管理システム
10 管理サーバ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 通信部
15 入力部
16 表示部
17 バス
20 位置検出装置
50 無線通信タグ
60 物品
100 倉庫
110 位置情報受信部
120 位置情報算出部
130 保管場所管理部
200 搬送装置
300 保管場所リスト
510 電波発信部
520 制御部
530 動き検出部
540 バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8