IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 福島工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-把手 図1
  • 特許-把手 図2
  • 特許-把手 図3
  • 特許-把手 図4
  • 特許-把手 図5
  • 特許-把手 図6
  • 特許-把手 図7
  • 特許-把手 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】把手
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/02 20060101AFI20230614BHJP
   E05B 1/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
F25D23/02 A
E05B1/00 311E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019183917
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021060148
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊野 真二
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-58371(JP,U)
【文献】特開平9-178333(JP,A)
【文献】実開昭49-66074(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
F25D 23/08
E05B 1/00
E05B 1/04
A47B 95/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉(3)の前面に締結体(19)で固定される締結壁(15)を有する裏部材(11)と、裏部材(11)に対して外嵌装着される表部材(12)とを備える把手であって、
表部材(12)と裏部材(11)の間に、係合突起(30・33)と係合凹部(31・34)の組からなる複数個の係合構造(32・35)が設けられて、該係合構造(32・35)により両部材(11・12)の連結状態が維持されており、
締結壁(15)とその周囲を把手の固定部(100)と規定し、該固定部(100)を除く部分を握り操作用のグリップ部(101)と規定するとき、
係合強度が相対的に高い強係合構造(32A・32H・35A・35B)が固定部(100)に配置され、係合強度が相対的に低い弱係合構造(32B~32G)がグリップ部(101)に配置されていることを特徴とする把手。
【請求項2】
表部材(12)に係合突起(30・33)が設けられ、裏部材(11)に係合凹部(31・34)が設けられており、
各係合凹部(31・34)の前側の壁面が、開口縁の側が前方へ傾斜した傾斜面になっている請求項1に記載の把手。
【請求項3】
固定部(100)を構成する表部材(12)の後端部が、締結壁(15)を三方から囲んで扉(3)の前面に密接しており、
強係合構造(32A・32H・35A・35B)を構成する係合突起(30A・30H・33A・33B)が、対になる係合凹部(31A・31H・34A・34B)の前側の壁面で受け止められている請求項2に記載の把手。
【請求項4】
裏部材(11)は、所定の隙間を介して扉(3)の前面に臨む背面壁(14)と、背面壁(14)の長手方向の縁から扉(3)の前面に沿って延出される締結壁(15)と、背面壁(14)および締結壁(15)の幅方向の両縁から前方へ突出する一対の裏側壁(16)とを備えており、
表部材(12)は、裏部材(11)の背面壁(14)と前後に対向する正面壁(27)と、正面壁(27)の幅方向の両縁から後方へ突出して裏側壁(16)の外面に密接する一対の表側壁(28)とを備えており、
固定部(100)に2個の強係合構造(32A・32H・35A・35B)が配置されており、
固定部(100)の一方の強係合構造(32A・32H)が、表側壁(28)および裏側壁(16)の長手方向の端部に設けられて、該固定部(100)の一側に配置されており、
固定部(100)の他方の強係合構造(35A・35B)が、正面壁(27)の長手方向の端部および締結壁(15)の延出端部に設けられて、該固定部(100)の他側に寄せて配置されている請求項1から3のいずれかひとつに記載の把手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却庫等の扉を開閉操作するための把手に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る把手の先行技術文献としては、例えば特許文献1を挙げることができる。特許文献1の把手は、扉の外面にビスで固定される裏部材(ハンドルボディ)と、裏部材に対して着脱自在に外嵌装着される表部材(ボディカバー)とを備える。表部材は、後方へ延びる左右一対の側壁(以下、表側壁という)を備えており、裏部材を三方から包み込んでいる。表側壁には複数個の係合突起(嵌合突起)が内向きに突設されており、表側壁に密接する裏部材の各側壁(以下、裏側壁という)には、係合突起と対になる複数個の係合凹部(嵌合溝)が凹設されている。係合突起と係合凹部の組で構成される係合構造は、正面視で千鳥状に配置されている。特許文献1の把手を扉に取り付けるには、まず裏部材を扉の前面にビスで固定する。次いで、裏部材に対して表部材を前方から押し込んで外嵌装着すると、扉に対する把手の取付が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-178333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように特許文献1の把手では、表側壁と裏側壁の間に設けられた複数個の係合構造を介して、表部材が裏部材に外嵌装着されている。これら係合構造の係合強度を十分に高く設定しておくことにより、表部材が裏部材から不用意に分離することを防止して、両部材の連結状態を良好に維持することができる。しかし、各係合構造の係合強度が高すぎると、裏部材に対して表部材を前方から押し込んで外嵌装着する際に、押し込みに要する力が過剰に大きくなってしまい、当該装着作業をスムーズに行うことができなくなる。
【0005】
本発明は、上記の見識に基づいてなされたものであり、表部材の裏部材に対する装着作業の容易化と、両部材の連結状態を良好に維持するという相反する2つの課題を同時に解決し得る把手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る把手10は、扉3の前面に締結体19で固定される締結壁15を有する裏部材11と、裏部材11に対して外嵌装着される表部材12とを備える。表部材12と裏部材11の間に、係合突起30・33と係合凹部31・34の組からなる複数個の係合構造32・35が設けられて、該係合構造32・35により両部材11・12の連結状態が維持されている。そして、締結壁15とその周囲を把手の固定部100と規定し、該固定部100を除く部分を握り操作用のグリップ部101と規定するとき、係合強度が相対的に高い強係合構造32A・32H・35A・35Bが固定部100に配置され、係合強度が相対的に低い弱係合構造32B~32Gがグリップ部101に配置されていることを特徴とする。
【0007】
表部材12に係合突起30・33が設けられ、裏部材11に係合凹部31・34が設けられており、各係合凹部31・34の前側の壁面が、開口縁の側が前方へ傾斜した傾斜面になっている。
【0008】
固定部100を構成する表部材12の後端部が、締結壁15を三方から囲んで扉3の前面に密接しており、強係合構造32A・32H・35A・35Bを構成する係合突起30A・30H・33A・33Bが、対になる係合凹部31A・31H・34A・34Bの前側の壁面で受け止められている。
【0009】
裏部材11は、所定の隙間を介して扉3の前面に臨む背面壁14と、背面壁14の長手方向の縁から扉3の前面に沿って延出される締結壁15と、背面壁14および締結壁15の幅方向の両縁から前方へ突出する一対の裏側壁16とを備える。表部材12は、裏部材11の背面壁14と前後に対向する正面壁27と、正面壁27の幅方向の両縁から後方へ突出して裏側壁16の外面に密接する一対の表側壁28とを備える。固定部100に2個の強係合構造32A・32H・35A・35Bが配置されており、固定部100の一方の強係合構造32A・32Hは、表側壁28および裏側壁16の長手方向の端部に設けられて、該固定部100の一側に配置されており、固定部100の他方の強係合構造35A・35Bは、正面壁27の長手方向の端部および締結壁15の延出端部に設けられて、該固定部100の他側に寄せて配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る把手10は、扉3の前面に固定される裏部材11と、裏部材11に対して外嵌装着される表部材12とを備える。表部材12と裏部材11の間に、係合突起30・33と係合凹部31・34の組からなる複数個の係合構造32・35が設けられて、該係合構造32・35により両部材11・12の連結状態が維持されている。この把手10に大きな衝撃が加わった場合、握り操作用のグリップ部101では、裏部材11と表部材12が同じ方向にしなるため、両部材11・12が互いに分離する方向に力が作用するおそれは小さい。一方、裏部材11の締結壁15とその周囲すなわち固定部100では、締結壁15が扉3に締結体19で確りと固定されているため、衝撃を受けた表部材12に対して、裏部材11から離れる向きの力が作用しやすい。換言すれば、グリップ部101に比べて表部材12が裏部材11から分離しやすい。
【0011】
そこで本発明では、把手10の固定部100に、係合強度が相対的に高い強係合構造32A・32H・35A・35Bを配置した。これにより、把手10に大きな衝撃が加わった場合に、グリップ部101に比べて表部材12が裏部材11から分離しやすい固定部100において、表部材12の不用意な分離を確実に防止することができる。その一方で、固定部100を除くグリップ部101には、係合強度が相対的に低い弱係合構造32B~32Gを配置した。換言すれば、固定部100に限って強係合構造32A・32H・35A・35Bを配置した。これにより、裏部材11に対して表部材12を押し込んで外嵌装着する際に、押し込みに要する力が過剰に大きくなるのを避けることができる。以上のように本発明によれば、表部材12の裏部材11に対する装着作業の容易化と、両部材11・12の連結状態を良好に維持するという相反する2つの課題を同時に解決することができる。
【0012】
裏部材11に設けられる各係合凹部31・34の前側の壁面が、開口縁の側が前方へ傾斜した傾斜面になっていると、裏部材11に対して表部材12を押し込んで外嵌装着する際に、各係合突起30・33を係合凹部31・34へスムーズに落とし込んで、これらを確実に係合させることができる。また、把手10のメンテナンスなどの際に、各係合突起30・33を係合凹部31・34から比較的容易に係脱させて、表部材12を裏部材11から分離することができる。
【0013】
固定部100を構成する表部材12の後端部が、締結壁15を三方から囲んで扉3の前面に密接していると、扉3に把手10を取り付けたときの固定部100の見栄えを良くして、扉3のデザイン性の向上に寄与することができる。また、強係合構造32A・32H・35A・35Bを構成する係合突起30A・30H・33A・33Bが、対になる係合凹部31A・31H・34A・34Bの前側の壁面(傾斜面)で受け止められていると、表部材12の後端部が扉3の前面から離れて隙間が生じることを防止して、固定部100の見栄えが良い状態を維持することができる。
【0014】
固定部100に2個の強係合構造32A・32H・35A・35Bを配置し、そのうち一方の強係合構造32A・32Hを、表側壁28および裏側壁16の長手方向の端部に設けて、該固定部100の一側に配置するとともに、他方の強係合構造35A・35Bを、正面壁27の長手方向の端部および締結壁15の延出端部に設けて、該固定部100の他側に寄せて配置することができる。このように2個の強係合構造32A・32H・35A・35Bを配置すると、締結壁15の幅方向の両端および延出端の三方で、表部材12と裏部材11の連結強度を十分に確保することができるので、強係合構造32A・32H・35A・35Bの個数を徒に増やすことなく(表部材12を裏部材11に装着する際の抵抗を大きくすることなく)、固定部100における両部材11・12の連結状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る把手の正面図である。
図2】同把手が扉に固定された冷却庫の正面図である。
図3】同把手の扉に対する固定構造を示す縦断側面図である。
図4】同把手の分解斜視図である。
図5】同把手の分解側面図である。
図6図1におけるA-A線断面図である。
図7図1におけるB-B線断面図である。
図8図1におけるC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例) 本発明を冷却庫の扉の把手に適用した実施例を図1ないし図8に示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図2および図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図1ないし図3において冷却庫1は、前面に開口を有する縦長直方体状の断熱箱体2と、該開口を揺動開閉する上下一対の扉3とを備える。扉3は、外板4および内板と、その間に充填される断熱材5などで構成されて、断熱箱体2と同様に断熱性を有しており、断熱箱体2と扉3で囲まれる保冷室が冷凍温度あるいは冷蔵温度に保冷される。
【0017】
各扉3の前面の隅部(具体的には、上側の扉3の左下隅部と、下側の扉3の左上隅部)には、正面視で角丸長方形状の凹部6が形成されており、該凹部6を上下に跨ぐように、扉3を開閉操作するための縦長の把手10が固定されている。凹部6は把手10よりも左右幅広に形成されている。この凹部6を設けることにより、把手10を前方へ大きく突出させなくても、把手10と扉3の間の前後隙間が十分に確保されて、ユーザーが把手10を握りやすくなる。
【0018】
図4および図5において把手10は、扉3の前面に固定される裏部材11と、裏部材11を三方から包み込むように外嵌装着される表部材12とで構成されて、側面視で縦長C字状に形成されている。裏部材11は、所定の隙間を介して扉3の前面に臨む背面壁14と、背面壁14の上下縁から扉3の前面に沿って延出される上下一対の締結壁15と、背面壁14および締結壁15の左右縁に連続する左右一対の裏側壁16と、背面壁14および裏側壁16に囲まれる一群の補強壁17とを一体に備えるプラスチック成形品である。各裏側壁16は縦長C字板状に形成されて、背面壁14および締結壁15の左右縁から前方へ突出している。一群の補強壁17は、正面視でジグザグのトラス状に配置されて、背面壁14および左右の裏側壁16の内面どうしを繋いでおり、これにより背面壁14と裏側壁16の変形に対する強度が高められている。
【0019】
裏部材11の各締結壁15の中央には、ビス19用の挿通孔20が形成されている。扉3の外板4にも同目的の挿通孔21が形成されており、その内側ではナット22が断熱材5に埋設されている。ビス19が各締結壁15の前面側から両挿通孔20・21を介してナット22にねじ込まれて、各締結壁15が扉3に締結されており、これにより裏部材11が扉3に固定されている。また、各締結壁15における外板4との対向面には、挿通孔20を囲む水抜き溝23と、該対向面から突出する2個の断面円形のピン24とが形成されており、外板4における各挿通孔21の周囲には、ピン24を隙間無く受け入れる2個のピン穴25が形成されている。
【0020】
水抜き溝23は、把手10に水がかかって扉3との間に浸入した場合に、水がビス19まで到達すること、ひいては、水が外板4の挿通孔21を介して断熱材5の内部へ浸入することを防止する。ピン24とピン穴25の組は、把手10に対して扉3の前面に沿う方向の外力が作用した場合に、該外力の一部を受け止めることにより、ビス19に対してせん断方向の大きな外力が作用することを防止して、ビス19の破損ひいては把手10の脱落を防止する。なお、ピン24とピン穴25の個数は任意に選択し得る。
【0021】
図4および図5において表部材12は、裏部材11の背面壁14と前後に対向する正面壁27と、正面壁27の左右縁に連続する左右一対の表側壁28とを一体に備えるプラスチック成形品であって、裏部材11よりも一回り大きく形成されている。各表側壁28は縦長C字板状に形成されて、正面壁27の左右縁から後方へ突出している。各表側壁28の内面には、上下4個の係合突起30が内向きに突設されており、これと対になる上下4個の係合凹部31が、裏部材11の各裏側壁16の外面に凹設されている。これら係合突起30(30A~30H)と係合凹部31(31A~31H)の組が係合構造32(32A~32H)を構成する(図1参照)。正面壁27の内面の上下端部にも、それぞれ係合突起33が内向きに突設されており、これと対になる係合凹部34が、裏部材11の上側の締結壁15の上端面と、下側の締結壁15の下端面とに、それぞれ凹設されている。これら係合突起33(33A・33B)と係合凹部34(34A・34B)の組が係合構造35(35A・35B)を構成する(図1参照)。
【0022】
扉3に固定された裏部材11に対して、表部材12を前面側から被せて後方へ押し込むことにより、各係合突起30・33を係合凹部31・34に係合させて、表部材12を裏部材11に外嵌装着することができる。このとき、左右の係合突起30を係合凹部31へスムーズに案内するため、裏側壁16の前縁から各係合凹部31にかけて、同凹部31よりも十分に浅いガイド溝37が凹設されている。ガイド溝37は、前方すなわち裏側壁16の前縁へ向かって上下幅が徐々に拡がるテーパー状に形成されている。また、各係合突起30・33を係合凹部31・34へスムーズに落とし込んで確実に係合させるため、係合凹部31・34の前側の壁面は底面と垂直ではなく、開口縁の側が前方へやや傾斜した傾斜面になっている(図6ないし図8参照)。表部材12を裏部材11に装着した状態では、表側壁28の内面と裏側壁16の外面とが互いに密接する。
【0023】
裏部材11と表部材12の左側の側壁16・28の係合構造32A~32Dは、右側の側壁16・28の係合構造32E~32Hに対して、半ピッチほど上方に位置をずらして配置されている。このように、左右の係合構造32A~32Hを正面視で千鳥状(図1参照)に配置すると、これらを左右対称に配置する場合に比べて、両側壁16・28の間の係合構造の個数を半減させて、表部材12の押し込みに要する力を軽減することができ、さらに表部材12の装着後は、側壁16・28どうしの係合状態を、その上下方向の全長にわたって良好に維持することができる。
【0024】
左右の係合構造32A~32Hのうち、左側の一番上の係合構造32Aが、裏部材11を固定する上側のビス19の最も近くに位置し、右側の一番下の係合構造32Hが、下側のビス19の最も近くに位置する。ビス19に近いこれらの係合構造32A・32Hは、他の係合構造32B~32Gに比べて高い係合強度に設定されている(その理由は後述する)。以下では、係合強度が相対的に高い係合構造32A・32Hのことを強係合構造といい、係合強度が相対的に低い係合構造32B~32Gのことを弱係合構造という。
【0025】
具体的には、図7に示す強係合構造32A・32Hの係合深さ(係合凹部31A・31Hの開口縁から係合突起30A・30Hの突端までの距離)D2が、図6に示す弱係合構造32B~32Gの係合深さ(係合凹部31B~31Gの開口縁から係合突起30B~30Gの突端までの距離)D1よりも大きく設定されている(D2>D1)。なお、弱係合構造32B~32Gの係合深さD1は全て同一とは限らず、例えば把手10の上下中央に近付くほど、係合深さD1が小さくなるように設定してもよい。
【0026】
表部材12の正面壁27の上端部の係合突起33Aと、裏部材11の上側の締結壁15の係合凹部34Aとで構成される上側の係合構造35Aは、上側のビス19の真上のやや右寄りに配置されている。これは、上側のビス19の左方に上述の強係合構造32Aが配置されているのに対し、右方には係合構造が配置されていないことに起因する。つまり、上側の係合構造35Aを右側に寄せて配置することで、上側のビス19の右方において、表部材12と裏部材11の連結強度の不足を防止することができる。正面壁27の下端部の係合突起33Bと、裏部材11の下側の締結壁15の係合凹部34Bとで構成される下側の係合構造35Bが、下側のビス19の真下のやや左寄りに配置されているのも、上述の強係合構造32Hの配置に起因する。
【0027】
これら上下の係合構造35A・35Bも、上述の強係合構造32A・32Hと同等の高い係合強度を有する(以下、係合構造35A・35Bのことも強係合構造という)。すなわち、図8に示す強係合構造35A・35Bの係合深さ(係合凹部34A・34Bの開口縁から係合突起33A・33Bの突端までの距離)D3は、図6に示す弱係合構造32B~32Gの係合深さD1よりも大きく設定されている(D3>D1)。以上のように本実施例では、締結壁15とその周囲を把手10の固定部100と規定し、該固定部100を除く部分を握り操作用のグリップ部101と規定するとき、係合強度が相対的に高い(係合深さD2・D3が相対的に大きい)強係合構造32A・32H・35A・35Bが固定部100に配置され、係合強度が相対的に低い(係合深さD1が相対的に小さい)弱係合構造32B~32Gがグリップ部101に配置されている。
【0028】
把手10に大きな衝撃が加わった場合、グリップ部101では裏部材11と表部材12が同じ方向にしなるため、両部材11・12が互いに分離する方向に力が作用するおそれは小さい。一方、ビス19の周囲の固定部100では、裏部材11の締結壁15が扉3に確りと締結固定されているため、衝撃を受けた表部材12に対して、裏部材11から離れる向きの力が作用しやすい。換言すれば、グリップ部101に比べて表部材12が裏部材11から分離しやすい。この分離を防止するため、本実施例では把手10の固定部100に強係合構造32A・32H・35A・35Bを配置している。また、強係合構造32A・32H・35A・35Bを固定部100に限って配置することで(グリップ部101には弱係合構造32B~32Gを配置することで)、裏部材11に対して表部材12を押し込んで外嵌装着する際に、押し込みに要する力が過剰に大きくならないようにしている。以上のように本実施例によれば、表部材12の裏部材11に対する装着作業の容易化と、両部材11・12の連結状態を良好に維持するという相反する2つの課題を同時に解決することができる。
【0029】
図7および図8に示すように、固定部100を構成する表部材12の後端部は、締結壁15を三方(左右および上方または下方)から囲んで扉3の前面に密接している。これにより、扉3に把手10を取り付けたときの固定部100の見栄えを良くして、扉3のデザイン性の向上に寄与することができる。また、強係合構造32A・32H・35A・35Bを構成する係合突起30A・30H・33A・33Bは、対になる係合凹部31A・31H・34A・34Bの前側の壁面(傾斜面)で受け止められている。これにより、表部材12の後端部が扉3の前面から離れて隙間が生じることを防止して、固定部100の見栄えが良い状態を維持することができる。なお、弱係合構造32B~32Gを構成する係合突起30B~30Gは、対になる係合凹部31B~31Gの前側の壁面で受け止められていてもよく、若干の隙間を介して係合凹部31B~31Gの該壁面に正対していてもよい。
【0030】
図6に示すように、表部材12の各表側壁28の後端面は、表側壁28の内面に面一状に連続する内傾斜面44と、表側壁28の外面に面一状に連続する外傾斜面45とで外突湾曲状に形成されている。表部材12の横断面において外傾斜面45は内傾斜面44よりも十分に長く形成されている。一方、裏部材11の各裏側壁16の外面には、背面壁14の長辺に沿う左右一対の突条47が設けられている。各突条47は、裏側壁16の外面から左右方向外向きに突出しており、その横断面は頂角が丸められた略二等辺三角形状に形成されている。突条47の丸められた突端48の前後には、裏側壁16の外面に連続する前傾斜面49と、背面壁14の外面に面一状に連続する後傾斜面50とがそれぞれ形成されている。突条47の左右方向の突出寸法は、内傾斜面44の左右方向の幅寸法に略等しい。
【0031】
表部材12を裏部材11に装着した状態では、各突条47の前傾斜面49と各表側壁28の内傾斜面44とが互いに突き当たって正対するとともに、後傾斜面50が背面壁14の外面と外傾斜面45との間に位置して、ユーザーにより握り操作されるグリップ部101の外面を構成する。後傾斜面50と外傾斜面45の間が、裏部材11と表部材12の境界部となり、両面50・45はごく小さな略V字状の隙間(ノッチ)を介して略面一状に連続する。表部材12の正面壁27および表側壁28と、裏部材11の背面壁14および突条47とで構成されるグリップ部101の横断面は、前側の角よりも後側の角が大きく面取りされた角丸長方形状を呈する。
【0032】
本実施例に係る突条47によれば、表側壁28の後端面を丸めることで形成される裏部材11と表部材12の間の段差を該突条47で埋めて、両部材11・12の接合部分を略面一状にすることができるので、グリップ部101の握り心地と見栄えに優れた把手10を得ることができる。加えて、突条47の突端48が丸められていると、ユーザーの手が該突端48に触れた場合の手触りを良くして、グリップ部101の握り心地をさらに向上させることができる。
【0033】
また、本実施例に係る把手10は、ユーザーがグリップ部101を強く握った場合でも、裏部材11が表部材12の内側へ沈み込むのを規制するための構造を備えている。当該構造は、表部材12の正面壁27の内面から後向きに突設された左右一対の縦長の規制リブ53と、裏部材11の各裏側壁16の前端部に形成されて、規制リブ53の突端面に正対する受止壁54とで構成される。一対の規制リブ53は、正面壁27の上下両端部を除く個所に平行に形成される。各規制リブ53が受止壁54に突き当たって受け止められることにより、表部材12に対する裏部材11の沈み込みが規制される。
【0034】
上記の実施例では、把手10の裏部材11に係合突起30を設け、これと対になる係合凹部31を表部材12に設けたが、これらの配置は逆であってもよく、各部材11・12に係合突起30と係合凹部31の両方を配置してもよい。表部材12は裏部材11に対して着脱自在であってもよく、裏部材11からの分離は不能もしくは極めて困難な嵌め殺しの構造であってもよい。本発明は、固定部100を1つだけ備える片持ち状の把手にも適用することができる。本発明に係る把手は、縦向き以外に横向きや斜め向きに固定してもよい。本発明に係る把手の適用対象は、冷却庫の揺動扉に限られず、リーチインショーケースや自動製氷機などの揺動扉に加え、スライド扉や引き出し扉などに適用することもできる。
【符号の説明】
【0035】
3 扉
10 把手
11 裏部材
12 表部材
14 背面壁
15 締結壁
16 裏側壁
19 締結体(ビス)
27 正面壁
28 表側壁
30・33 係合突起
31・34 係合凹部
32・35 係合構造
32A・32H・35A・35B 強係合構造
32B~32G 弱係合構造
100 固定部
101 グリップ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8