(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】波長変換部材、および、波長変換装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
G02B5/20
(21)【出願番号】P 2019198155
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】八谷 洋介
(72)【発明者】
【氏名】桜井 利之
(72)【発明者】
【氏名】高久 翔平
(72)【発明者】
【氏名】田中 智雄
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕貴
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174572(JP,A)
【文献】特開2015-119046(JP,A)
【文献】特開2016-192295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換部材であって、
光が入射する入射面と、前記入射面の反対側に位置する裏面とを有し、前記裏面に凹み部が形成されているセラミック蛍光体と、
前記凹み部に配置される反射膜と、
前記セラミック蛍光体の前記裏面に接触し、前記反射膜に対向して配置される保護膜と、を備える、
ことを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
請求項1に記載の波長変換部材であって、
前記凹み部の外周は、前記セラミック蛍光体の前記裏面の平面視において、前記セラミック蛍光体の外周の内側にあり、
前記凹み部は、外周全体に、前記裏面に接続する内壁部を有しており、
前記反射膜は、全周において、少なくとも一部が前記内壁部に対向している、
ことを特徴とする波長変換部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の波長変換部材であって、
前記反射膜は、全体が前記凹み部の内部に配置されている、
ことを特徴とする波長変換部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の波長変換部材であって、
前記凹み部は、底面部を有しており、
前記反射膜は、前記底面部に対向する側に光を反射する反射面を有しており、
前記波長変換部材は、さらに、
前記底面部と前記反射面との間に配置され、光透過性を有する密着膜を備える、
ことを特徴とする波長変換部材。
【請求項5】
請求項4に記載の波長変換部材であって、
前記凹み部は、前記底面部と前記裏面との間に内壁部を有しており、
前記密着膜は、さらに、前記内壁部と前記反射膜との間に形成されている、
ことを特徴とする波長変換部材。
【請求項6】
波長変換装置であって、
請求項1から請求項5のいずれか一項の記載の波長変換部材と、
前記波長変換部材の熱を外部に放出する放熱部材と、
前記波長変換部材と前記放熱部材を接合する接合層と、を備える、
波長変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材、および、波長変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光源が発した光の波長を変換する波長変換部材が知られている。波長変換部材は、一般的に、入射する光の波長を変換する蛍光体と、蛍光体に入射した光を入射方向に向けて反射する反射層とを備える。例えば、特許文献1には、蛍光体の入射面とは反対側の裏面に設けられる反射層と、反射層を保護する保護膜を備える波長変換部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の波長変換部材では、保護膜は、蛍光体の裏面の一部に配置される反射層とともに蛍光体の裏面も覆うように形成されるため、保護膜には、応力によってクラックが発生しやすい段差が形成される。保護膜にクラックが発生すると、クラックを介して反射膜と大気とが接触し、反射膜が酸化または腐食するおそれがある。反射膜の酸化または腐食によって反射膜が劣化すると、波長変換部材の発光強度が低下するおそれがある。また、保護膜では、クラックが発生している部分での放熱性は、他のクラックが発生していない部分と比べると悪化するため、波長変換部材の熱分布に偏りが生じる。波長変換部材の熱分布に偏りが生じると、発光にばらつきが生じるおそれがある。このように、保護膜にクラックが発生すると、波長変換部材の発光特性が変化するおそれがある。
【0005】
本発明は、波長変換部材において、発光特性の変化を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、波長変換部材が提供される。この波長変換部材は、光が入射する入射面と、前記入射面の反対側に位置する裏面とを有し、前記裏面に凹み部が形成されているセラミック蛍光体と、前記凹み部に配置される反射膜と、前記セラミック蛍光体の前記裏面に接触し、前記反射膜に対向して配置される保護膜と、を備える。
【0008】
この構成によれば、反射膜は、セラミック蛍光体の凹み部に配置されるため、セラミック蛍光体の裏面に接触しつつ反射膜に対向して配置される保護膜には、段差が形成されにくくなる。これにより、段差に形成されやすいクラックが発生しにくくなるため、クラックを介して大気と反射膜とが接触しにくくなる。したがって、大気に含まれるガスによる反射膜の酸化や腐食を抑制することができるため、反射膜の劣化による発光強度の低下を抑制することができる。また、保護膜にクラックが発生しにくくなるとクラックによる保護膜での放熱性のばらつきが発生しにくくなるため、波長変換部材の熱分布に偏りが生じにくくなる。これにより、発光のばらつきを抑制することができる。このように、保護膜でのクラックによる波長変換部材の発光特性の変化を抑制することができる。
【0009】
(2)上記形態の波長変換部材において、前記凹み部の外周は、前記セラミック蛍光体の前記裏面の平面視において、前記セラミック蛍光体の外周の内側にあり、前記凹み部は、外周全体に、前記裏面に接続する内壁部を有しており、前記反射膜は、全周において、少なくとも一部が前記内壁部に対向していてもよい。この構成によれば、凹み部の外周は、セラミック蛍光体の裏面の平面視において、セラミック蛍光体の外周の内側にあり、反射膜は、全周において、少なくとも一部が、凹み部の内壁部に対向している。これにより、反射膜の外周は、セラミック蛍光体の裏面に囲まれているため、セラミック蛍光体の裏面に接触しつつ、反射膜に対向して配置される保護膜の段差は、さらに小さくなる。したがって、段差に形成されやすいクラックがさらに発生しにくくなる。また、反射膜は、保護膜によって全体が封止されるため、クラックが発生しない限り大気と反射膜とは接触しなくなる。これらによって、反射膜の劣化による発光強度の低下をさらに抑制することができるため、波長変換部材の発光特性の変化をさらに抑制することができる。
【0010】
(3)上記形態の波長変換部材において、前記反射膜は、全体が前記凹み部の内部に配置されていてもよい。この構成によれば、反射膜は、全体が凹み部の内部に配置されているため、反射膜が熱膨張するとき、膨張する反射膜は、凹み部を形成するセラミック蛍光体によって拘束される。これにより、一部が凹み部の外側に配置されているために熱膨張するときセラミック蛍光体によって拘束される部分と拘束されない部分とがある反射膜に比べ、せん断力が発生しにくい。したがって、反射膜が熱膨張によって破損しにくくなるため、波長変換部材の破損を抑制することができる。
【0011】
(4)上記形態の波長変換部材において、前記凹み部は、底面部を有しており、前記反射膜は、前記底面部に対向する側に光を反射する反射面を有しており、前記波長変換部材は、さらに、前記底面部と前記反射面との間に配置され、光透過性を有する密着膜を備えていてもよい。この構成によれば、セラミック蛍光体の凹み部が有する底面部と反射膜の反射面との間に配置される透光性の密着膜は、光を透過しつつ、セラミック蛍光体と反射膜とを密着させる。これにより、反射膜によって反射される光の減衰を抑制しつつ、反射膜のはがれを抑制できるため、波長変換部材における反射率の低下を抑制することができる。
【0012】
(5)上記形態の波長変換部材において、前記凹み部は、前記底面部と前記裏面との間に内壁部を有しており、前記密着膜は、さらに、前記内壁部と前記反射膜との間に形成されていてもよい。この構成によれば、密着膜は、さらに、セラミック蛍光体の内壁部と、反射膜との間に形成されている。これにより、セラミック蛍光体と反射膜とは、さらに密着するため、波長変換部材における反射率の低下をさらに抑制することができる。
【0013】
(6)本発明の別の形態によれば、波長変換装置が提供される。この波長変換装置は、上記形態の波長変換部材と、前記波長変換部材の熱を外部に放出する放熱部材と、前記波長変換部材と前記放熱部材を接合する接合層と、を備える。この構成によれば、波長変換部材が備える保護膜には、クラックが発生しやすい段差が形成されにくいため、反射膜の酸化や腐食を抑制することができるとともに、保護膜での放熱性のばらつきを抑制することができる。これらにより、波長変換部材の発光特性の変化を抑制することができる。また、波長変換部材で発生する熱を放熱部材によって外部に放出することができる。このように、波長変換部材の発光特性の変化を抑制しつつ、熱による波長変換装置の発光強度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の波長変換部材および波長変換装置の断面図である。
【
図2】第1実施形態の波長変換部材が備えるセラミック蛍光体の模式図である。
【
図3】第1実施形態の波長変換部材の製造方法を説明する図である。
【
図5】第2実施形態の波長変換部材の断面図である。
【
図6】第3実施形態の波長変換部材の断面図である。
【
図7】第4実施形態の波長変換部材の断面図である。
【
図8】第5実施形態の波長変換部材の断面図である。
【
図9】第6実施形態の波長変換部材の模式図である。
【
図10】第7実施形態の波長変換部材のセラミック蛍光体の斜視図である。
【
図11】第8実施形態の波長変換部材のセラミック蛍光体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の波長変換部材1および波長変換装置80の断面図である。
図2は、本実施形態の波長変換部材1が備えるセラミック蛍光体10の模式図である。本実施形態の波長変換部材1は、外部の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザー(LD:Laser Diode)などの光源が発した光L1が照射されると、光L1とは異なる波長の光L2を発生する。この波長変換部材1は、例えば、ヘッドランプ、照明、プロジェクタなどの各種光学機器において使用される。波長変換部材1は、セラミック蛍光体10と、反射膜20と、保護層30と、酸化防止膜35とを備える。波長変換装置80は、セラミック蛍光体10と、反射膜20と、保護層30と、放熱部材81と、接合層82を備える。なお、
図1から
図3における、セラミック蛍光体10と、反射膜20と、保護層30と、酸化防止膜35と、放熱部材81と、接合層82とのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0016】
セラミック蛍光体10は、セラミック焼結体から構成されており、入射面11から入射する光の波長を変換する。セラミック焼結体は、蛍光性を有する結晶粒子を主体とする蛍光相と、透光性を有する結晶粒子を主体とする透光相を有する。透光相の結晶粒子は、化学式Al2O3で表される組成を有し、蛍光相の結晶粒子は、化学式A3B5O12:Ceで表される組成(いわゆる、ガーネット構造)を有することが好ましい。「A3B5O12:Ce」とは、A3B5O12の中にCeが固溶し、元素Aの一部がCeに置換されていることを示す。
【0017】
化学式A3B5O12:Ce中の元素Aおよび元素Bは、それぞれ下記の元素群から選択される少なくとも1種類の元素から構成されている。
元素A:Sc、Y、Ceを除くランタノイド(ただし、元素AとしてさらにGdを含んでいてもよい)
元素B:Al(ただし、元素BとしてさらにGdを含んでいてもよい)
セラミック蛍光体10として、セラミック焼結体を使用することで、蛍光相と透光相との界面で光が散乱し、光の色の角度依存性を減らすことができる。これにより、色の均質性を向上することができる。なお、セラミック蛍光体10の材料は、上述の材料に限定されない。
【0018】
本実施形態では、セラミック蛍光体10は、厚みが100~500μm程度であり、幅が1mm程度となるように形成されている。セラミック蛍光体10の入射面11の反対側に位置する裏面12には、凹み部13が形成される。本実施形態では、凹み部13は、深さD13が、150nm程度であり、幅W13が0.7mm程度となるように形成される。凹み部13の外周14は、
図2(b)に示すセラミック蛍光体10の裏面12の平面視において、矩形形状となるように形成され、セラミック蛍光体10の外周15の内側にあり、セラミック蛍光体10の裏面12と隣接している。凹み部13には、4つの内壁部13aと、底面部13bとが形成されている。4つの内壁部13aは、隣り合う内壁部13a同士で直交するように配置され、凹み部13の外周14の全体において、セラミック蛍光体10の裏面12に接続する。底面部13bは、4つの内壁部13aの裏面12に接続する側とは反対側に接続するように配置される。すなわち、セラミック蛍光体10では、裏面12と底面部13bとの間に、凹み部13の段差となる4つの内壁部13aが形成されている。なお、凹み部13の深さD13、および、幅W13は、上述した数値に限定されない。
【0019】
反射膜20は、銀(Ag)から形成される矩形形状の薄膜であって、全体が凹み部13に配置されている(
図1(a)参照)。本実施形態では、反射膜20の厚みD20は、150nm程度であって、凹み部13の深さD13と略同じである。また、反射膜20の幅W20は、0.7mm程度であって、凹み部13の幅W13と略同じである。反射膜20の側壁部20aは、全周において、全部が凹み部13の内壁部13aに対向しており、内壁部13aに接触している。反射膜20には、セラミック蛍光体10の底面部13bに対向する側に、セラミック蛍光体10を透過した光やセラミック蛍光体10で発生した光を反射する反射面20bが形成されている。反射面20bは、凹み部13の底面部13bに接触している。これにより、反射膜20の反射面20bとは反対側の裏面20cは、セラミック蛍光体10の裏面12と略同一平面上に位置する。なお、反射膜20は、銀合金やアルミニウム(Al)など反射率が高い材料から形成されていてもよい。
【0020】
保護層30は、第1保護膜31と、第2保護膜32を有する。保護層30は、セラミック蛍光体10の裏面12に接触しつつ、反射膜20の裏面20cに対向して配置される。本実施形態では、保護層30は、反射膜20の裏面20cに接触している。第1保護膜31は、厚みが、10~500nm程度のチタン(Ti)から形成される薄膜であって、セラミック蛍光体10の裏面12と反射膜20の裏面20cに接触して配置される。第1保護膜31は、第2保護膜32とセラミック蛍光体10との密着性を高める。第2保護膜32は、第1保護膜31のセラミック蛍光体10とは反対側に配置されており、ニッケル(Ni)から形成される。第2保護膜32は、厚みが、50~500nm程度となるように形成され、第1保護膜31とともに、反射膜20を封止し、大気に含まれるガスと反射膜20との接触を抑制する封止膜として機能する。なお、保護層30を構成する膜は、第1保護膜31と、第2保護膜32とに限定されない。第2保護膜32だけであってもよく、第2保護膜32を形成する材料もニッケルに限定されない。第2保護膜32を形成する材料は、反射膜20の大気中のガスとの接触を抑制することができる材料であればよく、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などであってもよい。また、第1保護膜31を形成する材料は、ニッケル、クロム(Cr)、アルミニウム、シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)であってもよい。第1保護膜31および第2保護膜32は、特許請求の範囲の「保護膜」に相当する。
【0021】
酸化防止膜35は、第2保護膜32のセラミック蛍光体10とは反対側に配置されており、厚みが、10~500nm程度の金から形成される薄膜である。酸化防止膜35は、ニッケルから形成される第2保護膜32の酸化を防止する。酸化防止膜35は、後述する放熱部材81と波長変換部材1とを接合層82によって接合するとき、接合層82に拡散し、セラミック蛍光体10と放熱部材81との接合力を向上する。
【0022】
放熱部材81は、例えば、銅、銅モリブデン合金、銅タングステン合金、アルミニウム、窒化アルミニウムなど、セラミック蛍光体10よりも高い熱伝導性を有する材料から形成されている平板部材である。放熱部材81は、接合層82を通して伝わるセラミック蛍光体10の熱を外部に放出する。なお、放熱部材81は、上述した材料からなる単層構造の部材であってもよいし、同種または異なる材料から形成されている多層構造の部材であってもよい。また、放熱部材81のセラミック蛍光体10側の面には、接合層82との密着性を高める金属膜が配置されていてもよい。
【0023】
接合層82は、セラミック蛍光体10と放熱部材81の間に配置され、金(Au)と錫(Sn)から形成されている。接合層82は、セラミック蛍光体10と放熱部材81とを接合するとともに、セラミック蛍光体10と放熱部材81との間で熱のやり取りを行う。なお、接合層82は、金と錫から形成されるほかに、他の材料から形成される半田であってもよい。また、接合層82は、銀や銅(Cu)などの微細粉末を焼結したものであってもよい。
【0024】
図3は、本実施形態の波長変換部材1の製造方法を説明する図である。ここで、波長変換部材1の製造方法について説明する。最初に、凹み部13を形成する前のブロック状のセラミック蛍光体10a(
図3(a)参照)の表面10bにマスク(
図3(a)の符号18)し、エッチング、イオンミリングなどによってセラミック蛍光体10aの露出部分を削る。これにより、セラミック蛍光体に凹み部13が形成される(
図3(b)参照)。次に、マスクされたセラミック蛍光体10に対して、銀M1を蒸着またはスパッタリングし(
図3(c)参照)、反射膜20を成膜する。その後、銀M1ごとマスク18を除去し(
図3(d)参照)、第1保護膜31、第2保護膜32、酸化防止膜35を、この順番で、セラミック蛍光体10の裏面12および反射膜20の裏面20c上に製膜し、波長変換部材1を製造する(
図3(e)参照)。
【0025】
さらに、波長変換部材1を用いて波長変換装置80を製造する場合、波長変換部材1と放熱部材81の間に金錫半田箔を挟みこんだ状態で、窒素雰囲気中または水素雰囲気中のリフロー炉において加熱する。これにより、セラミック蛍光体10と放熱部材81とが接合し、波長変換装置80が完成する。また、金錫半田箔を使用する代わりに、金錫半田ペーストを塗布して波長変換部材1と放熱部材81とを接合してもよい。
【0026】
図4は、比較例の波長変換部材90の断面図である。比較例の波長変換部材90は、セラミック蛍光体91と、反射膜92と、第1保護膜93aおよび第2保護膜93bを有する保護層93と、酸化防止膜94を備える。比較例の波長変換部材90では、反射膜92は、セラミック蛍光体91の入射面91aとは反対側の裏面91bに配置されている。このため、保護層93および酸化防止膜94をセラミック蛍光体91の裏面91bと反射膜92の裏面92aとに対向して配置すると、セラミック蛍光体91の裏面91b上の部位と、反射膜92の裏面92a上の部位との間に段差S0が形成される。段差S0では、応力によってクラックが発生しやすいため、波長変換部材90では、クラックを介して大気に含まれるガスと反射膜92とが接触しやすい。反射膜92が大気に含まれるガスによって酸化したり腐食したりすると、波長変換部材90の発光強度が低下するおそれがある。また、保護層93では、クラックが発生している部分での放熱性は、他のクラックが発生していない部分と比べると悪化するため、波長変換部材90の熱分布に偏りが生じる。波長変換部材90の熱分布に偏りが生じると、発光にばらつきが生じるおそれがある。
【0027】
以上説明した、本実施形態の波長変換部材1によれば、反射膜20は、セラミック蛍光体10の凹み部13に配置される。反射膜20の裏面20cは、セラミック蛍光体10の裏面12と略同一平面上に位置しているため、セラミック蛍光体10の裏面12に接触しつつ反射膜20に対向して配置される第1保護膜31および第2保護膜32には、段差がほぼ形成されない。これにより、段差に形成されやすいクラックが発生しにくくなるため、クラックを介して大気と反射膜20とが接触しにくくなり、大気に含まれるガスによる反射膜20の酸化や腐食を抑制することができる。したがって、反射膜20の劣化による発光強度の低下を抑制することができるため、反射膜20の劣化による発光強度の低下を抑制することができる。また、第1保護膜31および第2保護膜32にクラックが発生しにくくなると第1保護膜31および第2保護膜32での放熱性のばらつきが発生しにくくなるため、波長変換部材1の熱分布に偏りが生じにくくなる。これにより、発光のばらつきを抑制することができる。このように、第1保護膜31および第2保護膜32でのクラックによる波長変換部材1の発光特性の変化を抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態の波長変換部材1によれば、凹み部13の外周14は、セラミック蛍光体10の裏面12の平面視において、セラミック蛍光体10の外周15の内側にある。これにより、反射膜20の外周14は、セラミック蛍光体10の裏面12に囲まれているため、セラミック蛍光体10の裏面12に接触しつつ反射膜20に対向して配置される第1保護膜31および第2保護膜32に形成される段差はさらに小さくなる。したがって、段差に形成されやすいクラックがさらに発生しにくくなる。また、反射膜20は、第1保護膜31および第2保護膜32によって全体が封止されるため、クラックが発生しない限り大気と反射膜20とは接触しなくなる。これらによって、反射膜20の劣化による発光強度の低下をさらに抑制することができるため、波長変換部材1の発光特性の変化をさらに抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態の波長変換部材1によれば、反射膜20は、全体が凹み部13の内部に配置されている。これにより、反射膜20がセラミック蛍光体10の熱によって膨張するとき、反射膜20は、凹み部13を形成するセラミック蛍光体10によって拘束されるため、反射膜20にせん断力が発生しにくい。したがって、反射膜20が熱膨張によって破損しにくくなるため、波長変換部材1の破損を抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態の波長変換装置80によれば、第1保護膜31および第2保護膜32には、クラックが発生しやすい段差が形成されないため、反射膜20の酸化や腐食を抑制することができる。これにより、反射膜20の劣化による発光強度の低下を抑制することができる。また、波長変換部材1で発生する熱を放熱部材81によって外部に放出することができる。これにより、反射膜20の劣化による発光強度の低下を抑制しつつ、熱による波長変換装置80の発光強度の低下を抑制することができる。
【0031】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の波長変換部材2の断面図である。第2実施形態の波長変換部材2は、第1実施形態の波長変換部材1(
図1)と比較すると、凹み部に密着膜が配置されている点が異なる。
【0032】
第2実施形態の波長変換部材2は、セラミック蛍光体10と、反射膜21と、密着膜27と、保護層30と、酸化防止膜35とを備える。なお、
図5では、セラミック蛍光体10と、反射膜21と、密着膜27と、保護層30と、酸化防止膜35とのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0033】
反射膜21は、第1実施形態と同様に、銀から形成される矩形形状の薄膜であって、全体が凹み部13に配置されている。反射膜21は、第1実施形態の反射膜20の厚みD20に比べ薄くなるように形成されている。また、反射膜21の幅W21は、凹み部13の幅W13と略同じであり、反射膜21の側壁部21aは、全周において、凹み部13の内壁部13aに対向し、内壁部13aに接触している。反射膜21の反射面21bは、セラミック蛍光体10を透過した光やセラミック蛍光体10で発生した光を反射する。
【0034】
密着膜27は、密着膜上部27aと、密着膜下部27bを有する。密着膜上部27aは、光透過性を有する酸化ケイ素(SiO2)から形成されており、反射面21bと凹み部13の底面部13bとの間に配置されている。密着膜上部27aは、セラミック蛍光体10を透過した光やセラミック蛍光体10で発生した光を透過しつつ、反射膜21とセラミック蛍光体10との密着性を向上する。密着膜下部27bは、密着膜上部27aと同じく酸化ケイ素(SiO2)から形成されており、反射膜21の反射面21bとは反対側の裏面21c上に配置されている。密着膜下部27bは、波長変換部材2の製造工程においてマスク18を除去するときに反射膜21が酸化されることを抑制する。本実施形態では、反射膜21と密着膜27は、全体が凹み部13の内部に配置されている。密着膜上部27aと密着膜下部27bは、それぞれ、厚みが数nm~数十nmとなるように形成されており、密着膜下部27bのうちの反射膜21側とは反対側の端面27cと、セラミック蛍光体10の裏面12とは、略同一平面上に位置する。
【0035】
保護層30は、セラミック蛍光体10の裏面12に接触しつつ、反射膜21の裏面21cに対向して配置される。本実施形態では、保護層30の第1保護膜31は、密着膜下部27bを介して反射膜21の裏面21cに対向して配置される。
【0036】
以上説明した、本実施形態の波長変換部材2によれば、反射膜21および密着膜27は、全体が凹み部13に配置されており、密着膜下部27bの端面27cとセラミック蛍光体10の裏面12とは、略同一平面上に位置する。これにより、第1保護膜31および第2保護膜32には段差が形成されないため(
図5参照)、波長変換部材2の発光特性の変化を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の波長変換部材2によれば、光透過性を有する密着膜27は、セラミック蛍光体10を透過した光やセラミック蛍光体10で発生した光を透過しつつ、セラミック蛍光体10と反射膜21とを密着させる。これにより、反射膜21によって反射される光の減衰を抑制しつつ、反射膜21のはがれを抑制できるため、波長変換部材2における反射率の低下を抑制することができる。
【0038】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の波長変換部材3の断面図である。第3実施形態の波長変換部材3は、第2実施形態の波長変換部材2(
図5)と比較すると、密着膜が反射膜の側壁部にも配置されている点が異なる。
【0039】
第3実施形態の波長変換部材3は、セラミック蛍光体10と、反射膜22と、密着膜29と、保護層30と、酸化防止膜35とを備える。なお、
図6では、セラミック蛍光体40と、反射膜22と、密着膜29と、保護層30と、酸化防止膜35とのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0040】
反射膜22は、第1実施形態と同様に、銀から形成される矩形形状の薄膜であって、全体が凹み部13に配置されている。反射膜22は、厚みD22が第1実施形態の反射膜20の厚みD20に比べ薄くなるように形成されている。また、反射膜22は、幅W22が凹み部13の幅W13に比べ狭くなるように形成されている。これにより、反射膜22の側壁部22aは、全周において、凹み部13の内壁部13aに対向しつつ、内壁部13aから離れた位置に配置される。反射膜22の反射面22bは、セラミック蛍光体10を透過した光やセラミック蛍光体10で発生した光を反射する。
【0041】
密着膜29は、密着膜上部29aと、密着膜下部29bと、密着膜側部29cを有する。密着膜上部29aは、光透過性を有する酸化ケイ素(SiO2)から形成されており、反射面22bと凹み部13の底面部13bとの間に配置されている。密着膜上部29aは、セラミック蛍光体10を透過した光やセラミック蛍光体10で発生した光を透過しつつ、反射膜22とセラミック蛍光体10との密着性を向上する。密着膜下部29bは、密着膜上部29aと同じく酸化ケイ素から形成されており、反射膜22の反射面22bとは反対側の裏面22c上に配置されている。密着膜下部29bは、波長変換部材3の製造工程においてマスク18を除去するときに反射膜22が酸化されることを抑制する。密着膜側部29cは、密着膜上部29aと同じく酸化ケイ素から形成されており、反射膜22の側壁部22aと、凹み部13の内壁部13aとの間に配置されている。密着膜側部29cは、反射膜22とセラミック蛍光体10との密着性を向上する。本実施形態では、反射膜22と密着膜29は、全体が凹み部13の内部に配置されており、密着膜下部29bのうちの反射膜22側とは反対側の端面29dと、セラミック蛍光体10の裏面12とは、略同一平面上に位置する。
【0042】
保護層30は、セラミック蛍光体10の裏面12に接触しつつ、反射膜22の裏面22cに対向して配置される。本実施形態では、保護層30の第1保護膜31は、密着膜下部29bを介して反射膜22の裏面22cに対向して配置される。
【0043】
以上説明した、本実施形態の波長変換部材3によれば、反射膜22および密着膜29は、全体が凹み部13に配置されており、密着膜下部29bの端面29dとセラミック蛍光体10の裏面12とは、略同一平面上に位置する。これにより、第1保護膜31および第2保護膜32には段差が形成されないため(
図6参照)、波長変換部材3の発光特性の変化を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態の波長変換部材3によれば、密着膜29は、第2実施形態に比べ、さらに、セラミック蛍光体10の内壁部13aと、反射膜20との間に形成されている。これにより、セラミック蛍光体10と反射膜20とは、さらに密着するため、波長変換部材3における反射率の低下をさらに抑制することができる。
【0045】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の波長変換部材4の断面図である。第4実施形態の波長変換部材4は、第1実施形態の波長変換部材1(
図4)と比較すると、反射膜の厚みが異なる。
【0046】
第4実施形態の波長変換部材4は、セラミック蛍光体10と、反射膜23と、保護層30と、酸化防止膜35とを備える。なお、
図7では、セラミック蛍光体10と、反射膜23と、保護層30と、酸化防止膜35とのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0047】
反射膜23は、第1実施形態と同様に、銀から形成される矩形形状の薄膜であって、全体が凹み部13に配置されている。反射膜23は、厚みD23が130nmであり、凹み部13の深さD13に対して厚みが薄くなるように形成されている。また、反射膜23の幅W23は、凹み部13の幅W13と略同じであり、反射膜23の側壁部23aは、全周において、全部が凹み部13の内壁部13aに対向し、内壁部13aに接触している。反射膜23の反射面23bは、凹み部13の底面部13bに接触しており、セラミック蛍光体10を透過した光やセラミック蛍光体10で発生した光を反射する。反射膜23の反射面23bとは反対側の裏面23cは、凹み部13の内部に位置する(
図7参照)。
【0048】
保護層30は、セラミック蛍光体10の裏面12に接触しつつ反射膜23の裏面23cに対向して配置される。本実施形態では、保護層30は、反射膜23の裏面23cに接触しているため、段差が形成される(
図7の符号S4)。この段差S4の大きさは、反射膜92がセラミック蛍光体91の裏面91bに配置されている比較例の波長変換部材90(
図4参照)の段差S0の大きさに比べ小さい。酸化防止膜35についても同様である。
【0049】
以上説明した、本実施形態の波長変換部材4によれば、反射膜23は、セラミック蛍光体10の凹み部13に配置されるため、第1保護膜31および第2保護膜32に形成される段差は、比較的小さくなる。これにより、段差に形成されやすいクラックが発生しにくくなるため、クラックを介して大気と反射膜23とが接触しにくくなり、大気に含まれるガスによる反射膜23の酸化や腐食を抑制することができる。また、第1保護膜31および第2保護膜32にクラックが発生しにくくなると第1保護膜31および第2保護膜32での放熱性のばらつきが発生しにくくなるため、波長変換部材4の熱分布に偏りが生じにくくなる。これにより、発光のばらつきを抑制することができる。したがって、波長変換部材4の発光特性の変化を抑制することができる。
【0050】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態の波長変換部材5の断面図である。第5実施形態の波長変換部材5は、第1実施形態の波長変換部材1(
図1)と比較すると、反射膜の厚みが異なる。
【0051】
第5実施形態の波長変換部材5は、セラミック蛍光体10と、反射膜24と、保護層30と、酸化防止膜35とを備える。なお、
図8では、セラミック蛍光体10と、反射膜24と、保護層30と、酸化防止膜35とのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0052】
反射膜24は、第1実施形態と同様に、銀から形成される矩形形状の薄膜であって、全体が凹み部13に配置されている。反射膜24は、厚みD24が180nmであり、凹み部13の深さD13に対して厚みが厚くなるように形成されている。また、反射膜24の幅W24は、凹み部13の幅W13と略同じであり、反射膜24の側壁部24aは、全周において、一部が凹み部13の内壁部13aに対向し、その一部は、内壁部13aに接触している。反射膜24の反射面24bは、凹み部13の底面部13bに接触しており、セラミック蛍光体10を透過した光やセラミック蛍光体10で発生した光を反射する。反射膜24の反射面24bとは反対側の裏面24cは、凹み部13の外側に位置する。すなわち、反射膜24は、セラミック蛍光体10から突出するように形成されている。
【0053】
保護層30は、セラミック蛍光体10の裏面12に接触しつつ反射膜24の裏面24cに対向して配置される。本実施形態では、保護層30は、反射膜24の裏面24cに接触しているため、段差が形成される(
図8の符号S5)。この段差S5の大きさは、反射膜92がセラミック蛍光体91の裏面91bに配置されている比較例の波長変換部材90(
図4参照)の段差S0の大きさに比べ小さい。酸化防止膜35についても同様である。
【0054】
以上説明した、本実施形態の波長変換部材5によれば、反射膜23は、セラミック蛍光体10の凹み部13に配置されるため、第1保護膜31および第2保護膜32に形成される段差は、比較的小さくなる。これにより、段差に形成されやすいクラックが発生しにくくなるため、クラックを介して大気と反射膜24とが接触しにくくなり、大気に含まれるガスによる反射膜24の酸化や腐食を抑制することができる。また、第1保護膜31および第2保護膜32にクラックが発生しにくくなると第1保護膜31および第2保護膜32での放熱性のばらつきが発生しにくくなるため、クラックによって波長変換部材5の熱分布に偏りが生じにくくなる。これにより、発光のばらつきを抑制することができる。したがって、波長変換部材5の発光特性の変化を抑制することができる。
【0055】
<第6実施形態>
図9は、第6実施形態の波長変換部材6の模式図である。第6実施形態の波長変換部材6は、第1実施形態の波長変換部材1(
図1)と比較すると、凹み部の形状が異なる。
【0056】
第6実施形態の波長変換部材6は、セラミック蛍光体40と、反射膜20と、保護層30と、酸化防止膜35とを備える。なお、
図9では、セラミック蛍光体40と、反射膜20と、保護層30と、酸化防止膜35とのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0057】
セラミック蛍光体40は、第1実施形態のセラミック蛍光体10と同様に、セラミック焼結体から構成されており、入射面41から入射する光の波長を変換する。セラミック蛍光体40の入射面41の反対側に位置する裏面42には、凹み部43が形成される。本実施形態では、凹み部43の外周44は、セラミック蛍光体40の裏面42の平面視において、円形状に形成され、セラミック蛍光体40の外周45の内側にある(
図9(b)参照)。凹み部43の内壁部43aは、
図9(a)に示すように、球面形状の一部分の形状となるように形成されている。本実施形態の反射膜20は、全体が凹み部43に配置されている。反射膜20の反射面20bは、内壁部43aに接触している。反射膜20の裏面20cは、セラミック蛍光体40の裏面42と略同一平面上に位置しており、保護層30と接触している。
【0058】
以上説明した、本実施形態の波長変換部材6によれば、反射膜20は、全体が凹み部43に配置されており、反射膜20の裏面20cとセラミック蛍光体40の裏面42とは、略同一平面上に位置する。これにより、第1保護膜31および第2保護膜32には段差が形成されない(
図9(a)参照)ため、波長変換部材6の発光特性の変化を抑制することができる。
【0059】
<第7実施形態>
図10は、第7実施形態の波長変換部材7の模式図である。第7実施形態の波長変換部材7は、第1実施形態の波長変換部材1(
図1)と比較すると、凹み部の形状が異なる。
【0060】
第7実施形態の波長変換部材7は、セラミック蛍光体50と、アルミニウムから形成される反射膜20と、保護層30と、酸化防止膜35とを備える。なお、
図9では、セラミック蛍光体50と、反射膜20と、保護層30と、酸化防止膜35とのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0061】
セラミック蛍光体50は、第1実施形態のセラミック蛍光体10と同様に、セラミック焼結体から構成されており、入射面51から入射する光の波長を変換する。セラミック蛍光体50の入射面51の反対側に位置する裏面52には、凹み部53が形成される。本実施形態では、凹み部53は、溝部であって、セラミック蛍光体50において、入射面51と裏面52とを接続する一対の側面部54を貫通するように形成されている。本実施形態の反射膜20は、全体が凹み部53に配置されている。反射膜20の反射面20bは、底面部53bに接触している。反射膜20の裏面20cは、セラミック蛍光体50の裏面52と略同一平面上に位置しており、保護層30と接触している。波長変換部材7では、反射膜20の側壁部20aのうち、セラミック蛍光体50の一対の側面部54、55に対応する側壁部20aは、保護層30によって覆われることなく、露出する(
図10(a)参照)。
【0062】
以上説明した、本実施形態の波長変換部材7によれば、反射膜20は、全体が凹み部53に配置されており、反射膜20の裏面20cとセラミック蛍光体50の裏面52とは、略同一平面上に位置する。これにより、第1保護膜31および第2保護膜32には段差が形成されない(
図10(a)参照)ため、反射膜20の一部はセラミック蛍光体50の側面部54から露出するものの、段差に形成されるクラックを通る大気に含まれるガスによって、反射膜20が酸化したり腐食したりすることが一定程度抑制される。したがって、反射膜20の劣化による発光強度の低下を一定程度抑制することができるため、波長変換部材7の発光特性の変化を抑制することができる。
【0063】
<第8実施形態>
図11は、第8実施形態の波長変換部材の模式図である。第8実施形態の波長変換部材は、第1実施形態の波長変換部材1(
図1)と比較すると、凹み部の形状が異なる。
【0064】
第8実施形態の波長変換部材は、セラミック蛍光体60と、アルミニウムから形成される反射膜20と、保護層30と、酸化防止膜35とを備える。セラミック蛍光体60は、第1実施形態のセラミック蛍光体10と同様に、セラミック焼結体から構成されており、入射面から入射する光の波長を変換する。セラミック蛍光体60の入射面の反対側に位置する裏面62には、凹み部63が形成される。本実施形態では、凹み部63は、
図11に示すように、2つの溝部が交差するように形成されている。凹み部63には、セラミック蛍光体60の4つの側面部64のそれぞれに、開口が形成されている。本実施形態の反射膜20は、全体が凹み部63に配置されている。
【0065】
以上説明した、本実施形態の波長変換部材によれば、反射膜20は、全体が凹み部63に配置されているため、第1保護膜31および第2保護膜32には段差が形成されない。これにより、反射膜20の一部は、セラミック蛍光体60の側面部64から露出するものの、段差に形成されるクラックを通る大気に含まれるガスによって、反射膜20が酸化したり腐食したりすることが一定程度抑制される。したがって、反射膜20の劣化による発光強度の低下を一定程度抑制することができるため、本実施形態の波長変換部材の発光特性の変化を抑制することができる。
【0066】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0067】
[変形例1]
上述の実施形態では、凹み部の形状は、セラミック蛍光体の裏面の平面視において、矩形状(第1実施形態)や、円形状(第6実施形態)であるとした。しかしながら、凹み部の形状はこれに限定されない。上述した実施形態のように、凹み部に、底面部とセラミック蛍光体の裏面とを接続する段差が形成されていることが望ましい。
【0068】
[変形例2]
第2実施形態および第3実施形態の波長変換部材が備える密着膜は、第4実施形態から第8実施形態の波長変換部材に適用されてもよい。
【0069】
[変形例3]
第2実施形態および第3実施形態の波長変換部材が備える密着膜は、光透過性を有する酸化ケイ素から形成されているとした。密着膜は、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O3)、酸化錫(SnO2)、IZO(indium-zinc-oxide)、ITO(indium-tin-Oxide)などから形成されていてもよい。
【0070】
[変形例4]
上述の実施形態では、第3実施形態を除いて、反射膜の幅は、凹み部の幅と略同じであるとした。しかしながら、反射膜の幅は、これに限定されない。凹み部の内部に反射膜のみが配置される場合であっても反射膜の幅が凹み部の幅に対して、例えば、90%程度であれば、保護膜に段差ができてもクラックは形成されにくくなるため、反射膜の劣化による発光強度の低下を抑制することができる。
【0071】
[変形例5]
第4実施形態では、反射膜23は、厚みD23が130nmであり、凹み部13の深さD13に対して厚みが薄くなっているとした。また、第5実施形態では、反射膜24は、厚みD24が180nmであり、凹み部13の深さD13に対して厚みが厚くなっているとした。しかしながら、凹み部の深さに対する反射膜の厚みは、これに限定されない。反射膜の厚みは、凹み部の深さに対して、例えば、50%程度であれば、保護膜に段差ができてもクラックは形成されにくくなるため、反射膜の劣化による発光強度の低下を抑制することができる。
【0072】
[変形例6]
第8実施形態および第9実施形態では、反射膜は、アルミニウムから形成されるとした。反射膜は、銀から形成されてもよいが、第8実施形態および第9実施形態では、反射膜の一部が露出するため、内部酸化が起こりにくいアルミニウムの方が好ましい。
【0073】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,2,3,4,5,6,7…波長変換部材
10,10a,40,50,60…セラミック蛍光体
10b…表面
11,41,51…入射面
12,42,52,62…裏面
13,43,53,63…凹み部
13a,43a…内壁部
13b,53b…底面部
14,44…凹み部の外周
15,45…セラミック蛍光体の裏面の外周
20,21,22,23,24…反射膜
20a,21a,22a,23a,24a…側壁部
20b,21b,22b,23b,24b…反射面
20c,21c,22c,23c,24c…裏面
27,29…密着膜
27a,29a…密着膜上部
27a,27b,29a,29b,29c…密着膜下部
29c…密着膜側部
27c,29d…端面
30…保護層
31…第1保護膜
32…第2保護膜
35…酸化防止膜
54,64…側面部
80…波長変換装置
81…放熱部材
82…接合層
D13…凹み部の深さ
D20,D21,D22,D23,D24…反射膜の厚み
L1,L2…光
S4,S5…段差
W13…凹み部の幅
W20,W21,W22,W23,W24…反射膜の幅