(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】路面状況監視システム、作業車両、路面状況監視方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20230614BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20230614BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/24 B
H04N7/18 J
(21)【出願番号】P 2019210857
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 友哉
(72)【発明者】
【氏名】小野 将範
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-192157(JP,A)
【文献】特開2016-203836(JP,A)
【文献】特開2016-170598(JP,A)
【文献】特開2002-197588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/24
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが装着された作業車両の走行機構の駆動により前記作業車両が進行する方向の路面が含まれる範囲に存在する監視対象について前記監視対象の少なくとも形状または大きさに関する監視対象情報を取得する路面状況取得部と、
前記タイヤが損傷を受けるかどうかの判断を行うための基準情報を保存する記憶部と、
前記走行機構の駆動により前記タイヤが前記監視対象に接触した場合
に前記タイヤが損傷を受けるかどうか
を、前記監視対象情報と前記基準情報に基づき、
前記タイヤが前記監視対象に実際に接触する前の段階で判断する損傷判断部と、
前記損傷判断部が判断した結果を出力する出力部と
を備える路面状況監視システム。
【請求項2】
前記監視対象情報は、前記タイヤに対する前記監視対象の相対位置と相対向きに関する情報をさらに含む
請求項1に記載の路面状況監視システム。
【請求項3】
前記損傷判断部は、前記タイヤのブロックパターンの形状または前記ブロックパターンの大きさに関するタイヤ情報も用いて前記タイヤが損傷を受けるかどうかについての判断を行う
請求項1または2に記載の路面状況監視システム。
【請求項4】
前記タイヤが複数であり、
前記出力部が出力する前記結果は、いずれの前記タイヤが損傷を受けるかどうかについて示す情報も含む
請求項1から3のいずれか1項に記載の路面状況監視システム。
【請求項5】
走行機構と、
前記走行機構に装着されるタイヤと、
前記走行機構の駆動により前記作業車両が進行する方向の路面が含まれる範囲に存在する監視対象について前記監視対象の少なくとも形状または大きさに関する監視対象情報を取得する路面状況取得部と、
前記タイヤが損傷を受けるかどうかの判断を行うための基準情報とを保存する記憶部と、
前記走行機構の駆動により前記タイヤが前記監視対象に接触した場合
に前記タイヤが損傷を受けるかどうか
を、前記監視対象情報と前記基準情報に基づき、
前記タイヤが前記監視対象に実際に接触する前の段階で判断する損傷判断部と、
前記損傷判断部が判断した結果を出力する出力部と
を備える作業車両。
【請求項6】
作業車両の走行機構に装着されるタイヤが接する路面の状況を監視する方法であって、
前記走行機構の駆動により前記作業車両が進行する方向の前記路面が含まれる範囲に存在する監視対象について前記監視対象の少なくとも形状または大きさに関する監視対象情報を取得するステップと、
前記走行機構の駆動により前記タイヤが前記監視対象に接触した場合
に前記タイヤが損傷を受けるかどうか
を、前記監視対象情報と前記タイヤが損傷を受けるかどうかの判断を行うための基準情報とに基づき
、前記タイヤが前記監視対象に実際に接触する前の段階で判断するステップと、
前記判断した結果を出力するステップと
を含む路面状況監視方法。
【請求項7】
作業車両の走行機構に装着されるタイヤが接する路面の状況を監視するためのコンピュータに、
前記走行機構の駆動により前記作業車両が進行する方向の前記路面が含まれる範囲に存在する監視対象について前記監視対象の少なくとも形状または大きさに関する監視対象情報を取得するステップと、
前記走行機構の駆動により前記タイヤが前記監視対象に接触した場合
に前記タイヤが損傷を受けるかどうか
を、前記監視対象情報と前記タイヤが損傷を受けるかどうかの判断を行うための基準情報とに基づき
、前記タイヤが前記監視対象に実際に接触する前の段階で判断するステップと、
前記判断した結果を出力するステップと
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面状況監視システム、作業車両、路面状況監視方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山や砕石場で稼働するホイールローダは、爆落石などの掘削作業を行う。そのような作業の際、例えば、タイヤが鋭利な岩に接触してタイヤ破損を引き起こす場合がある。タイヤ破損とは、例えば、タイヤに傷を与えたりパンクさせたりするものである。オペレータはタイヤ破損の原因となるような岩が路面にないか確認しながらホイールローダを走行させているが、オペレータ席からは路面の状況を視認しづらい場合もある。そこで、特許文献1に記載されている作業車両は、フロントタイヤ前方の路面状況をフロントアクセル前方に設置したカメラで撮影し、キャブ内に設けられたモニタで当該路面状況をオペレータが確認できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている作業車両によれば、オペレータはモニタを見ることで、タイヤ破損の原因となるような岩が進行方向に存在するかどうかを視認することができる。ただし、この構成では、タイヤ破損に留意すべき岩の存否に関わらず、オペレータがモニタでタイヤ破損の原因となるような岩を視認することが最初に必要であり、視認した岩がタイヤ破損を引き起こしそうか否かをオペレータが判断できた場合にだけ、タイヤ破損を回避することができる。掘削作業の際は、オペレータの視線は前方にあり、常時、オペレータがモニタを見続けることは難しいという課題がある。また、モニタを見る頻度を上げると作業車両の動作が緩慢となり生産性が低下するという課題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、オペレータが容易に路面状況を監視することができる路面状況監視システム、作業車両、路面状況監視方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、タイヤが装着された作業車両の走行機構の駆動により前記作業車両が進行する方向の路面が含まれる範囲に存在する監視対象について前記監視対象の少なくとも形状または大きさに関する監視対象情報を取得する路面状況取得部と、前記タイヤが損傷を受けるかどうかの判断を行うための基準情報を保存する記憶部と、前記走行機構の駆動により前記タイヤが前記監視対象に接触した場合、前記タイヤが損傷を受けるかどうかについての判断を前記監視対象情報と前記基準情報に基づき判断する損傷判断部と、前記損傷判断部が判断した結果を出力する出力部とを備える路面状況監視システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、オペレータが容易に路面状況を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る作業車両の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すホイールローダ1の側面図である。
【
図3】
図1に示すホイールローダ1の側面図である。
【
図4】
図3に示すホイールローダ1の正面図である。
【
図5】
図3に示すホイールローダ1を斜め下から見た図である。
【
図7】本実施形態に係るカメラの撮影領域を説明するための模式図である。
【
図8】本実施形態に係る路面状況監視システムの一例を示すブロック図である。
【
図9】
図8に示す路面状況監視システム100の動作例を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態に係る学習用画像の例を示す模式図である。
【
図11】本実施形態に係るカメラ画像の例を示す模式図である。
【
図12】本発明の実施形態の基本的構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0010】
[ホイールローダ(作業車両)]
図1は、本実施形態に係る作業車両の一例としてのホイールローダ1を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すホイールローダ1の側面図である。
図3は、
図1に示すホイールローダ1(バケット12を上方向に移動した場合)の側面図である。
図4は、
図3に示すホイールローダ1の正面図である。
図5は、
図3に示すホイールローダ1を斜め下から見た図である。
図6は、
図1に示すタイヤ6の斜視図である。
図7は、本実施形態に係るカメラの撮影領域を説明するための模式図である。
【0011】
図1等に示すように、ホイールローダ1は、車両本体2と、車両本体2に支持される作業機10とを備える。なお、
図1は、ホイールローダ1の作業対象である岩山201と、岩山201から離れて位置し、かつタイヤ6を破損する可能性がある岩石202を模式的に示している。
【0012】
車両本体2は、運転室3と、走行機構4と、走行機構4を駆動するための動力を発生するエンジン(不図示)とを有する。運転室3には、運転席(不図示)が備えられている。ホイールローダ1は、運転室3に搭乗し運転席に着座したオペレータによって操作される。運転席の周囲には、オペレータによって操作される運転操作装置が配置される。運転操作装置は、例えば、シフトレバー、アクセルペダル、ブレーキペダル、および作業機10を操作するための作業機レバーを含む。オペレータは、運転操作装置を操作して、ホイールローダ1の走行速度の調整、前進または後進の切替え、および作業機10の操作を実施する。
【0013】
走行機構4は、回転軸DXを中心に回転可能な車輪5を有する。車輪5にタイヤ6が装着される。車輪5は、2つの前輪5Fと、2つの後輪5Rとを含む。タイヤ6は、前輪5Fに装着される右前タイヤ6FRおよび左前タイヤ6FLと、後輪5Rに装着される右後タイヤ6RRおよび左後タイヤ6RLとを含む。なお、以下では、右前タイヤ6FRと左前タイヤ6FLを総称して前タイヤ6Fと言い、右後タイヤ6RRと左後タイヤ6RLを総称して後タイヤ6Rと言う場合がある。走行機構4は、路面RSを走行可能である。
【0014】
以下の説明においては、ホイールローダ1が直進状態で走行するときの回転軸DXと平行な方向を適宜、車両本体2の車幅方向、と称し、路面RSと直交する鉛直軸と平行な方向を適宜、車両本体2の上下方向、と称し、回転軸DXおよび鉛直軸の両方と直交する方向を適宜、車両本体2の前後方向、と称する。
【0015】
なお、タイヤ6は、例えば、
図6に示すようなブロックパターン(トレッドパターンとも呼ばれる)6Pを有している。ブロックパターン6Pは、タイヤ6が路面RSと接する部分であるトレッド6Sに刻まれる溝6G等で形成される模様である。
図6に示す例では、ブロックパターン6Pは、タイヤ6の周方向に対してほぼ直角に複数の溝6Gを左右互い違いに刻んだパターン(ラグ型パターン)である。
【0016】
本実施形態においては、運転室3の運転席に着座したオペレータを基準として作業機10が存在する方向が前方であり、前方の逆方向が後方である。車幅方向の一方が右方であり、右方の逆方向が左方である。前輪5Fは、後輪5Rよりも前方に配置される。前輪5Fは、車両本体2の車幅方向両側に配置される。後輪5Rは、車両本体2の車幅方向両側に配置される。
【0017】
作業機10は、車両本体2に移動可能に連結されるアーム11と、アーム11に移動可能にリンク16を介して連結される掘削部材であるバケット12と、ベルクランク15とを有する。
【0018】
アーム11は、リフトシリンダ13(
図3)が発生する動力によって作動する。リフトシリンダ13は、アーム11を移動するための動力を発生する油圧シリンダである。リフトシリンダ13の一端部は車両本体2に連結され、リフトシリンダ13の他端部はアーム11に連結される。リフトシリンダ13は、2つ設けられる。一方のリフトシリンダ13は、車幅方向中心よりも右方に設けられ、他方のリフトシリンダ13は、車幅方向中心よりも左方に設けられる。オペレータが作業機レバーを操作するとリフトシリンダ13が伸縮する。これにより、アーム11は上下方向に移動する。
【0019】
バケット12は、刃先12Bを有する掘削部材である。なお、掘削部材は、刃先を有するブレードでもよい。バケット12は、アーム11の先端部と連結され、アーム11を介して車両本体2に連結される。バケット12は、バケットシリンダ14が発生する動力によって作動する。バケットシリンダ14は、バケット12を移動するための動力を発生する油圧シリンダである。ベルクランク15の中央部がアーム11に回転可能に連結される。バケットシリンダ14の一端部は車両本体2に連結され、バケットシリンダ14の他端部はベルクランク15の一端部に連結される。ベルクランク15の他端部は、リンク16(
図3)を介してバケット12に連結される。バケットシリンダ14は、1つ設けられる。バケットシリンダ14は、車幅方向の中央部に配置される。オペレータが作業機レバーを操作するとバケットシリンダ14が伸縮する。これにより、バケット12は揺動する。バケット12は、車両本体2の前方において揺動する。
【0020】
図4および
図5に示すように、車幅方向におけるバケット12の両側の端部12Eは、車幅方向においてタイヤ6よりも外側に配置される。すなわち、バケット12の右側の端部12Eと左側の端部12Eとの車幅方向の距離は、右側のタイヤ6の外側面と左側のタイヤ6の外側面との車幅方向の距離よりも大きい。
【0021】
図4は、本実施形態に係るホイールローダ1を示す正面図であって、バケット12を上方に移動させた状態を示す。本実施形態において、走行機構4は、エンジンで発生した動力を前輪5Fに伝達する動力伝達機構7と、動力伝達機構7の少なくとも一部を収容するハウジング8(アクスルケースとも呼ばれる)とを有する。エンジンは、車両本体2の後部に配置される。エンジンで発生した動力は、動力伝達機構7のデファレンシャルギアを介して、左右の前輪5Fに伝達される。デファレンシャルギアは、ハウジング8の球状部分8Bに収容される。以下の説明においては、デファレンシャルギアを収容するハウジング8の球状部分8Bを適宜、アクスルボール8B、と称する。アクスルボール8Bは、車幅方向の中央部に配置される。また、アクスルボール8Bは、バケットシリンダ14よりも下方に配置される。アクスルボール8Bの上方にはアクスルボール8B(ハウジング8)のカバーであるアクスルハウジング8Cが設けられている。ハウジング8は、前輪5F用のハウジング8Fと後輪5R用のハウジング8Rを含む(
図5)。
【0022】
[路面状況監視システムの設置位置]
図1に示すように、本実施形態に係る路面状況監視システム100は、カメラ20と、計算機(コンピュータ)30と、ブザー40と、モニタ50を備える。カメラ20は、例えば、
図4および
図5に示すように、アクスルハウジング8Cに設置されている。計算機30と、ブザー40と、モニタ50は、運転室3に設置されている。
【0023】
[カメラの撮影領域]
カメラ20は、
図7に示すように、バケット12と前タイヤ6Fとの間の領域401の画像データを取得する。本実施形態において、カメラ20の撮影領域は、路面RSに接触した接地状態のバケット12と前タイヤ6Fとの間の路面RSの領域401である。なお、カメラ20の設置については、アクスルハウジング8Cに設置することに限定されず、例えば
図5に示すブームコネクタ17に設置してもよい。ブームコネクタ17は、左右のアーム11の間を溶接によって連結する部材である。また、カメラ20の個数は、1個に限定されず、複数個としてもよい。例えば、
図7に示すように、バケット12の裏側(バケットの上面であって運転室3に対向する面)に取り付けたり(カメラ20a)、フロントフェンダー18の上(カメラ20b)や後(カメラ20e)に取り付けたり、照明19の上、下または横に取り付けたり(カメラ20c)、運転室3の天井の上3aに取り付けたり(カメラ20d)、ハウジング8Rのカバーに取り付けたり(カメラ20f)することができる。カメラ20、20a~20fは、例えばブラケットを介してホイールローダ1に搭載することができ、ブラケットは撮影方向を調整することができる調整機構を備えていてもよい。なお、
図7に示すカメラ20、20a~20fは2個の矩形で表され、各カメラの撮影方向は大きい矩形から小さい矩形への方向である。
【0024】
また、撮影領域は、領域401に限定されず、例えば、領域402、領域403、および領域404の一部または全部を撮影領域としてもよい。領域402は、前タイヤ6Fの後方の一定の領域である。領域403は、後タイヤ6Rの前方の一定の領域である。領域404は、後タイヤ6Rの後方の一定の領域である。なお、各領域401~404は、タイヤ6の一部と路面RSの一部とを含む領域とすることができる。また、左右のタイヤ6毎にカメラの撮影領域を設けてもよい。
【0025】
[路面状況監視システムの構成]
次に、
図8~
図11を参照して、
図1に示す路面状況監視システム100について説明する。
図8は、本実施形態に係る路面状況監視システム100の一例を示すブロック図である。
図9は、
図8に示す路面状況監視システム100の動作例を示すフローチャートである。
図10は、本実施形態に係る学習用画像の例を示す模式図である。
図11は、本実施形態に係るカメラ画像の例を示す模式図である。
【0026】
図8に示すように、路面状況監視システム100は、
図1等を参照して設置位置について説明した、カメラ20と、計算機30と、ブザー40と、モニタ50を備える。
【0027】
計算機30は、処理装置31と、記憶装置32と、入出力装置33を有する。処理装置31は、内部にCPU(中央処理装置)、記憶装置、入出力装置等のハードウェアを備え、例えば内部の記憶装置に記憶したプログラムを実行することで動作する。処理装置31は、ハードウェアとプログラム等のソフトウェアとの組み合わせで構成される機能的構成要素として、画像処理部311と画像認識部312を有する。記憶装置32は、画像認識部312が画像認識処理で用いる学習済みモデル321等を記憶する。入出力装置33は、カメラ20が撮影した画像信号を入力するとともに、入力した画像信号を所定の記憶装置へ記憶したり、あるいは画像処理部311へ出力したり、入力した画像信号に例えば画像認識部312の所定の判断結果を示す画像信号を重畳させてモニタ50へ出力したり、画像認識部312の所定の判断結果を示す信号をブザー40へ出力したりする。つまり、入出力装置33は、画像信号の伝送制御、画像信号に基づいてモニタ50に表示される表示内容の制御、画像信号に基づいてブザー40に出力される音声内容の制御を実行する装置である。
【0028】
画像処理部311は、カメラ20が撮影した画像信号を受信する。画像信号は、入出力装置33を介して画像処理部311に入力され、所定の画像処理(例えば、解像度変換、画質調整等)を施し、画像処理した画像信号を所定の記憶装置に記憶する。画像認識部312には、画像処理部311が画像処理した画像信号が入力され、カメラ20が撮影した画像にタイヤ6を破損するおそれがあるような留意すべき岩石等が含まれているか否かを判断し、判断した結果に基づいて、ブザー40やモニタ50から出力する情報を決定する。
【0029】
カメラ20は、撮影領域401の動画データを取得するビデオカメラ機能を有する。カメラ20で取得された画像データ(動画データ)は、入出力装置33へ入力される。
【0030】
音声出力装置としてのブザー40は、入出力装置33から出力された制御信号に応じて情報を出力する。ブザー40は、例えば運転室3内のオペレータが可聴できる警報音を発生する。なお、ブザー40に代えてスピーカーを用いてもよく、スピーカーから情報としての警報音に変えて音声を出力するようにしてもよい。
【0031】
モニタ50は、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の表示装置であり、入出力装置33から出力された画像信号に応じて、例えば運転室3内のオペレータが視認できる画像(動画あるいは静止画)を表示する。なお、モニタ50は、運転室3のフロントガラスに画像や情報を表示できるヘッドアップディスプレイといった表示装置を用いてもよい。モニタ50は、単一の表示装置でもよく、複数の表示装置により構成されてもよい。また、表示装置と音声出力装置は、一体のものを用いてもよい。例えば、液晶ディスプレイとスピーカーを一体化したものを用いてもよい。
【0032】
なお、
図1に示すように、モニタ50は、車両本体2の運転室3に配置される。モニタ50は、例えば、カメラ20で取得された動画データをリアルタイムに表示したり、画像認識部312の判断結果に応じた情報を表示したりする。運転室3のオペレータは、フロントガラス53を介して、バケット12、アーム11およびバケットシリンダ14などを視認可能であるものの、路面RSの状況を視認することは困難である。特に、前タイヤ6Fの前方の路面RSの状況を直接的に目視することは困難である。また、バケット12を接地させた状態では、バケット12の下面にある路面RSの状況やバケット12の前方の路面RSの状況も運転室3のオペレータからは視認しづらい。いずれにしても、前タイヤ6の前方の状況は、前タイヤ6に近くなるほど視認しづらくなる。一方、モニタ50がカメラ20で取得された動画データをリアルタイムに表示する場合、運転室3のオペレータは、運転室3に設けられているモニタ50を見て、例えば、バケット12と前タイヤ6Fとの間の路面RS(領域401)の状況を視認することができる。
【0033】
[路面状況監視システムの動作]
次に、
図9を参照して、
図8に示す路面状況監視システム100の動作例について説明する。
図9に示す処理は、計算機30が所定の周期で繰り返し実行する。
図9に示す処理が開始されると、入出力装置33はカメラ20が出力した画像信号を1または複数フレーム分取得し、所定の記憶装置に記憶する(ステップS11)。なお、ステップS11において入出力装置33は、例えば画像認識部312からの指示に応じて、カメラ20から入力した画像信号をそのままモニタ50へ出力する処理を行ってもよい。この場合、画像認識部312からの指示に応じて、モニタ50にカメラ20が撮影した画像をリアルタイムで表示することができる。
【0034】
次に、画像処理部311は、ステップS11で所定の記憶装置に記憶された画像信号を入力し、所定の画像処理を行った後、再び所定の記憶装置に記憶する(ステップS12)。
【0035】
次に、画像認識部312は、所定の記憶装置に記憶されている1または複数フレームの画像信号に対し画像認識処理を実行し、領域401にタイヤ6に損傷を与える可能性があるような留意すべき岩石202を含んでいるか否かを判断する(ステップS13)。ステップS13において画像認識部312は、留意すべき岩石202を含んでいると判断した場合(ステップS13で「YES」の場合)、判断結果を示す情報(警報音)をブザー40から発報したり、判断結果を示す情報(警報画像)をモニタ50で表示したりする指示を入出力装置33へ出力し(ステップS14)、オペレータに注意喚起を図り、
図9に示す処理を終了する。一方、ステップS13において画像認識部312は、留意すべき岩石202を含んでいると判断しなかった場合(ステップS13で「NO」の場合)、
図9に示す処理を終了する。
【0036】
ここで、ステップS13における判断処理(画像認識処理)の一例について説明する。画像認識部312に判断処理は、記憶装置32に記憶されている学習済みモデル321を用いて、判断の対象とする画像信号が、留意すべき岩石を含む画像または留意すべき岩石を含まない画像のどちらに分類されるのかを判断する処理とすることができる。学習済みモデル321は、例えばCNN(Convolution Neural Network)等のニューラルネットワークを要素とする学習済みモデルであり、入力される多数のデータに対して求める解が出力されるよう、機械学習によりニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化されている。学習済みモデル321は、例えば、入力から出力までの演算を行うプログラムと当該演算に用いられる重み付け係数(パラメータ)の組合せで構成される。
【0037】
[学習済みモデルの生成]
なお、学習済みモデル321は例えば次のように生成することができる。すなわち、例えば、
図10に示すように、岩山201と留意すべき岩石202を含む複数の画像データ301と、留意すべき岩石202を含まず岩山201を含む複数の画像データ302と、岩山201も留意すべき岩石202も含まない複数の画像データ303とを用意する。そして、複数の画像データ301を、留意すべき岩石202と岩山201を含むデータであると定義する。また、複数の画像データ302を、留意すべき岩石202を含まず岩山201を含むデータであると定義する。また、複数の画像データ303を、留意すべき岩石202も岩山201も含まないデータであると定義する。そして、定義された複数の画像データ301、302および303を学習用データセット310として用意する。学習用データセット310は、上記のように各画像データについて留意すべき岩石202の有無といった分類(ラベリング)を付帯情報として紐づけて持たせる。学習用データセット310を用い、教師あり学習による機械学習によって学習済みモデル321を生成する。
図10に示す例では、画像データ311~313は、いずれもタイヤ6(ブロックパターン6P)の一部を含む画像である。この場合、タイヤ6(ブロックパターン6P)の一部を含まない場合と比較すると、タイヤ6(ブロックパターン6P)を基準として岩石202の大きさや向きの把握が容易になると考えられ、学習精度の向上を図ることができる。なお、学習用データセット310に含まれる画像データの当初の分類(ラベリング)は、後述する条件に基づいて例えば手作業で行ったり、パターンマッチング等の画像認識処理で行ったりすることができる。
【0038】
なお、留意すべき岩石202は、例えば、一定以上の大きさの岩石やエッジ角度の鋭い岩石であって、かつ、タイヤ6に対する相対位置と相対向きからすると、その岩石に向かって走行した場合にタイヤ6が破損する可能性が高いと想定される場合と定義することができる。また、留意すべき岩石202は、一定以上の大きさの岩石やエッジ角度の鋭い岩石であって、かつ、岩石202の存在位置が、岩山201の斜面上に存在しない場合(あるいは平面上に存在する場合)であると定義することができる。
【0039】
一定未満の大きさの岩石ではタイヤ6の柔軟性によって損傷を回避できる可能性が高く留意すべき岩石ではないが、一定以上の大きさの岩石では岩石を乗り越えたときにホイールローダ1の重量によって損傷が発生する可能性が高い。また、丸い形状の岩石についてタイヤ6を破損する可能性をみたとき、丸い形状の岩石は、タイヤ6に突き刺さったりタイヤ6を切断したりする可能性が低く、留意すべき岩石とはならない。
【0040】
岩山201は、複数の岩石や土砂等が集積した物体であり、作業機10が作業対象とするエリアなので、通常はタイヤ6が踏み入ることはない。したがって、岩山201の斜面に位置している岩石は、路面RSに転がっているわけではないので留意すべき岩石202から除外することができる。ただし、「岩山」は「作業車両のタイヤが踏み入ることはないエリア」の一態様にすぎない。例えば、「ダンプに積み込み済みの岩」等も「岩山」と同等に「作業車両のタイヤが踏み入ることはないエリア」であると定義してもよい。岩山201の斜面上に存在しないことを、留意すべき岩石202と判断する条件とする。こうすることで、例えば、鉱山において、あたり一面に岩石が散在する場合、それら岩石を留意すべき岩石202であると判断してしまうことを回避することができ、その結果、不要な警報を発することを抑止することができる。
【0041】
以上のように、学習済みモデル321を機械学習によって構築する際に用いる学習用データセット310において、留意すべき岩石202を含む画像データであるか否かを定義する情報に、岩石(監視対象)の大きさや岩石の形状(エッジ角度が鋭い形状)に関する条件を含ませることで、画像認識部312(損傷判断部)は、カメラ20が撮影した画像に含まれる岩石(監視対象)の形状または大きさに関する情報を判断の要素とすることが可能となる。
【0042】
また、学習済みモデル321を機械学習によって構築する際に用いるデータセットに対して、留意すべき岩石202を含む画像データであるか否かを定義する情報に、タイヤ6に対する岩石(監視対象)の監視対象情報(相対位置と相対向き、あるいは岩山201の斜面上にあるか否かの位置)に関する条件を含ませることで、画像認識部312(損傷判断部)は、カメラ20が撮影した画像に含まれるタイヤ6に対する岩石(監視対象)の相対位置と相対向き、斜面上にあるか否かに関する情報を判断の要素とすることが可能となる。
【0043】
また、学習済みモデル321を機械学習によって構築する際に用いるデータセットにおいて、タイヤ6(ブロックパターン6P)の一部を含ませておくことで、画像認識部312(損傷判断部)は、タイヤ6のブロックパターン6Pの形状またはブロックパターン6Pの大きさに関するタイヤ情報を判断の要素とすることが可能となる。
【0044】
なお、学習用データセット310については、夜間作業時、作業車両に搭載したライトの光源により岩が照らされた画像が取得されても判断処理ができるように、夜間時の学習用データセット310を用意しておくことが望ましい。この場合、夜間作業においても本システムが有効に機能する。また、夜間時の学習用データセット310は、昼間に取得した画像を基に色調補正などの画像処理を行って夜間時の見え方を再現した画像を基に作成してもよい。
【0045】
また、タイヤの材料特性上、雨天時のほうが晴天時よりもタイヤの損傷を受けやすい。例えば、雨天時の学習用データセット310による第1の学習済みモデル321と、雨天時以外の学習用データセット310による第2の学習済みモデル321を用意し、雨天時(例えば雨滴センサ)に、第2の学習済みモデル321から第1の学習済みモデル321へ切り替えたりしてもよい。例えば、雨滴センサを運転室3の外部に設置し、雨滴センサが降雨を検知した場合、検知信号を計算機30に出力し、検知信号の入力に応じて入出力装置33が第2の学習済みモデルから第1の学習済みモデルに切り替えるようにしてもよい。
【0046】
また、学習用データセット310になる画像は、コンピュータグラフィック作成用のソフトウェア等を用い人工的に作成されたものでもよい。また、学習用データセット310になる画像にはタイヤが映り込んでいなくてもよい。
【0047】
なお、画像認識技術としては、CNN等の学習済みモデル以外にも、パターンマッチング等の任意の画像認識技術を用いることができる。また、学習用データセットにおいては、例えば、ACGAN(Auxiliary Classifier Generative Adversarial Network)等の画像生成技術を用いて生成した画像を用いることができる。
【0048】
[カメラの撮影画像]
図11は、本実施形態に係るカメラ20の撮影画像の例を示す模式図である。
図11(a)に示す画像501は、鎖線の枠で囲んで示す岩山201と破線の枠で囲んで示す1個の岩石202を含む。この撮影画像の例に示された岩山202は、タイヤ6の破損に留意すべき岩石であって平面(路面RS)に存在する岩石である。画像認識部312は、学習済みモデル321に画像501(画像処理後)を入力することで、学習済みモデル321を用いて、留意すべき岩石202を含む画像であるとの判断結果を得ることができる。また、
図11(b)に示す画像502は、鎖線の枠で囲んで示す岩山201と破線の枠で囲んで示す4個の岩石202を含む。この撮影画像の例に示された岩石202は、タイヤ6の破損に留意すべき岩石であって平面(路面RS)に存在する岩石である。画像認識部312は、学習済みモデル321に画像502(画像処理後)を入力することで、学習済みモデル321を用いて、留意すべき岩石202を含む画像であるとの判断結果を得ることができる。
【0049】
[路面状況監視システムの作用効果]
以上のように、路面状況監視システム100は、車載カメラ20に映った画像を計算機30への入力として、画像認識技術によって監視対象が留意すべき岩石かどうかを識別することができる。本実施形態において留意すべき岩石とは一定以上の大きさの岩石、エッジ角度の鋭い岩石、岩山斜面上にない平面上に存在する岩石等とすることができる。本実施形態によれば、留意すべき岩石であれば、ブザー40が発報し、モニタ50に警告が表示され、オペレータに注意喚起を図ることができる。オペレータは、注意喚起を受けた場合、モニタ50に表示される動画データを見て、前タイヤ6Fの破損を抑制するための措置を講じることができる。オペレータは、受けた注意喚起にしたがって、モニタ50に表示される動画データを見て、前タイヤ6Fの前方に岩石202が転がっていることを確認し、その留意すべき岩石202に前タイヤ6Fが乗り上げないように、ブレーキを操作してホイールローダ1を停止させたり、ステアリングを操作してホイールローダ1の進行方向を変更させたりするなど、前タイヤ6Fの破損を抑制するための措置を講じることができる。
【0050】
本実施形態によれば、オペレータは、常時あるいは頻繁にモニタ50を見ていなくても、留意すべき岩石202がタイヤ6の近傍に存在する時にのみ、モニタ50を見るだけでよく、タイヤ6の破損を確実に回避する操作を行うことができる。すなわち、本実施形態によれば、オペレータは、通常はカメラ20の映像に集中することなく掘削作業等を実行でき、留意すべき岩石202がタイヤ6に近づいたときのみ、走行操作を慎重に実行し、タイヤ破損を回避するための必要な措置を講じることができる。本実施形態によれば、オペレータが常時あるいは頻繁にモニタ50を見ていなくても路面状況を監視することができ、作業性や生産性の向上を図ることができる。
【0051】
[路面状況監視システムの基本的構成例]
次に、
図12を参照して、前述の実施形態を含めた実施形態の基本的構成例について説明する。
図12は、前述の実施形態を含めた実施形態の基本的構成例を示すブロック図である。なお、
図1~
図11に示す構成と同一または対応する構成には適宜同一の符号を用いている。以下、前述の実施形態の変形例を含めた実施形態の基本的構成例を説明する。
【0052】
図12に示す路面状況監視システム600は、例えばコンピュータとその周辺装置等のハードウェアとプログラム等のソフトウェアとを用いて構成される機能的構成要素として、路面状況取得部601と、記憶部602と、損傷判断部603と、出力部604を備える。また、記憶部602は、基準情報605を記憶する。
【0053】
路面状況取得部601は、タイヤ6が装着された作業車両1の走行機構4の駆動により作業車両1が進行する方向の路面RSが含まれる範囲に存在する監視対象200について監視対象200の少なくとも形状または大きさに関する監視対象情報を取得する。作業車両1は、ホイールローダ、モータグレーダ、ダンプトラック等、タイヤ系作業車両とすることができる。なお、監視対象情報は、タイヤ6に対する監視対象の相対位置と相対向きに関する情報をさらに含んでいてもよい。監視対象情報は、タイヤ6に対する監視対象の存在位置に関する情報をさらに含んでいてもよい。路面状況取得部601は、カメラ(単眼、ステレオ、赤外線)、レーダスキャナ等とすることができる。監視対象は、例えば、岩(岩石)である。ただし、タイヤ破損の原因になる路面の穴も監視対象とすることができる。また、産業廃棄物処理場でホイールローダが稼働する場合、監視対象たるものは鋭利な金属物となる場合がある。当然ながらそのような金属物でもタイヤ破損のおそれがある。さらに、路面は、土の路面に限らずアスファルトやコンクリートで舗装された路面であってもよい。
【0054】
記憶部602は、タイヤ6が損傷を受ける可能性があるか否かの判断を行うための基準情報605を保存する。基準情報605は、人工知能(AI)による判断を行うのであれば学習済みモデル、画像処理(パターンマッチング)による判断を行うのであればパターンデータ、レーダスキャナであれば波形データ等々である。
【0055】
損傷判断部603は、走行機構4の駆動によりタイヤ6が監視対象200に接触した場合、タイヤ6が損傷を受けるかどうかについての判断を路面状況取得部601が取得した監視対象情報と記憶部602が記憶する基準情報に基づき判断する。なお、損傷判断部603は、タイヤのブロックパターンの形状またはブロックパターンの大きさに関するタイヤ情報も用いてタイヤが損傷を受けるかどうかについての判断を行ってもよい。損傷判断部603は、人工知能(AI)による判断、画像処理によるパターンマッチングによる判断、レーダスキャナの受信信号の解析による判断等々のいずれかよって判断を行う。
【0056】
そして、出力部604は、損傷判断部603が判断した結果を出力する。なお、出力部604は、タイヤ6が複数ある場合、いずれのタイヤ6が損傷を受けるかどうかについて示す情報も損傷判断部603が判断した結果に含ませて出力してもよい。その場合、路面状況取得部601は、タイヤ6の数に応じた個数を備えていてもよい。出力部604は、運転室(キャブ)内のスピーカーによる音声出力、モニタへの画像出力、ヘッドアップディスプレイへの出力、操作レバーの振動による出力等々とすることができる。
【0057】
作業車両1の遠隔操作においては、作業車両1から離れた場所に、損傷判断部603が判断した結果を出力するようにしてもよい。出力部604が出力する結果は、物体によってタイヤ損傷の恐れがないことを示す結果であってもよい。すなわち、出力部604は、路面RSに物体があることだけでなく路面RSに物体がない(タイヤを破損する恐れがあるような鋭利な岩あるいは、穴、もしくは金属物が無い)ことを出力するものであってもよく、出力部604は「路面状況監視」の結果を出力するものである。
【0058】
図12に示す路面状況監視システム600によれば、オペレータが常時あるいは頻繁にモニタを見ていなくても路面状況を監視することができる。
【0059】
なお、出力部604は、作業車両1のブレーキ制御を行うための信号を出力してもよい。損傷判断部603が、監視対象はタイヤ6を破損させるおそれがあると判断した場合、出力部604からブレーキ装置に送信された信号に基づいて作業車両1のブレーキを自動で動作させることができる。
【0060】
また、出力部604は、作業車両1のステアリング制御を行うための信号を出力してもよい。損傷判断部603が、監視対象はタイヤ6を破損させるおそれがあると判断した場合、出力部604からアクチュエータに送信された信号に基づいて、アクチュエータがステアリングを制御させる。作業車両1のステアリングを制御させ、タイヤ6の破損を回避する方向に自動で作業車両1を旋回動作させることができる。
【0061】
また、出力部604は、作業車両1のエンジン回転数の制御を行うための信号を出力してもよい。損傷判断部603が、監視対象はタイヤ6を破損させるおそれがあると判断した場合、出力部604からエンジン回転数を低下させることを指示する信号を出力する。その信号は、エンジン制御を実行するコントローラに送信され、コントローラはエンジンの出力を低下させ作業車両1の速度を低下させることができる。
【0062】
また、出力部604は、作業車両1のバケット姿勢の制御を行うための信号を出力してもよい。損傷判断部603が、監視対象はタイヤ6を破損させるおそれがあると判断した場合、出力部604から、作業機12の動作を制御する油圧バルブに送信された信号に基づいて、油圧バルブが作業車両1のバケットを自動で降下させる等させて監視対象とタイヤ6との接触を回避させることができる。
【0063】
なお、路面状況監視システム600は、全ての構成が作業車両1に設けられていてもよいが、例えば作業車両1が遠隔操作可能な機器を備え、作業車両1を遠隔操作する場合には、路面状況監視システム600を構成するもののうち、路面状況取得部601を除く出力部604等の一部の構成(例えば、出力部604に接続される表示装置や音声出力装置)が遠隔地に設けられていてもよい。例えば、出力部6が遠隔地にある表示装置(不図示)を含むとする。出力部6から出力される情報を、無線通信などを介して遠隔地の表示装置(不図示)に送信させ、表示装置に留意すべき監視対象についての注意喚起に関する情報(警報)を表示あるいは出力させる。遠隔操作を実行するオペレータが表示装置の表示あるいは出力を認識し、監視対象を確認した場合、作業車両1のタイヤ6が監視対象に接触しないように、遠隔操作で作業車両1のステアリング操作やブレーキ操作を実行することができる。
【0064】
なお、車速センサを設け、車速センサから作業車両の車両速度を示す信号を受けた出力部604は、車両速度に応じて注意喚起の情報を切り替えるようにしてもよい。例えば、作業車両が所定の速度より速い高速で走行している時は、出力部604は高い警報レベルの警告等を出力し、作業車両1が所定の速度より低い低速で走行している時は、出力部604は低いレベルの警告等を出力するようにしてもよい。
【0065】
なお、
図1および
図8等を参照して説明した実施形態の構成と、
図12に示す構成との対応関係は以下のとおりである。
図1および
図8に示す路面状況監視システム100と、
図12に示す路面状況監視システム600が対応する。
図8に示すカメラ20と入出力装置33の一部の組み合わせが、
図12に示す路面状況取得部601に対応する。
図8に示す画像認識部312が、
図12に示す損傷判断部603に対応する。
図8に示す記憶装置32が、
図12に示す記憶部602に対応する。
図8に示す学習済みモデル321が、
図12に示す基準情報605に対応する。
図8に示す入出力装置33の一部とブザー40とモニタ50の組み合わせが、
図12に示す出力部604に対応する。
図1に示す留意すべき岩石202が、
図12に示す監視対象200に対応する。
【0066】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0067】
また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ホイールローダ(作業車両)、2 車両本体、3 運転室、4 走行機構、5 車輪、6 タイヤ、7 動力伝達機構、10 作業機、11 アーム、12 バケット(掘削部材)、12B 刃先、13 リフトシリンダ(油圧シリンダ)、14 バケットシリンダ(油圧シリンダ)、15 ベルクランク、16 リンク、20 カメラ、30 計算機、31 処理装置、311 画像処理部、312 画像認識部、32 記憶装置。321 学習済みモデル、33 入出力装置、40 ブザー、50 モニタ、RS 路面、200 監視対象、100、600 路面状況監視システム、601 路面状況取得部、602 記憶部、603 損傷判断部、604 出力部、605 基準情報