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特許7295805ポリマー可塑剤で可塑化したコポリエステル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ポリマー可塑剤で可塑化したコポリエステル
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230614BHJP
   B32B 27/22 20060101ALI20230614BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230614BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230614BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230614BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/22
B32B27/30 102
B32B27/36
C08L67/02
G02B5/30
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019555473
(86)(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018025826
(87)【国際公開番号】W WO2018194829
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】62/486,138
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/866,922
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】シー,ウェイン・ケン
(72)【発明者】
【氏名】キャリコ,キンバリー・カルメニア
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-073570(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029919(WO,A1)
【文献】特表2016-500389(JP,A)
【文献】特開2017-156662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00-55/30
B29C 61/00-61/10
B32B 27/36
B32B 27/22
B32B 27/30
C08J 3/00-3/28;
C08J 5/00-5/02;
C08J 5/12-5/22
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)コポリエステル;及び
(B)900~12,000g/モルの重量平均分子量(M)を有するポリエステル可塑剤;
を含むブレンドから製造されるポリエステルベースのフィルムの製造方法であって、
前記ポリエステルベースのフィルム水中で延伸されることで形成され
前記コポリエステル(A)は、
(a)少なくとも80モル%の、テレフタル酸残基を含む二酸成分;及び
(b)少なくとも80モル%の、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びジエチレングリコールの残基を含むジオール成分;
を含み;
前記二酸成分は前記コポリエステル中の全二酸残基の100モル%を基準とし、前記ジオール成分は前記コポリエステル中の全ジオール残基の100モル%を基準としており;
前記コポリエステル(A)フィルムを、空気中、前記コポリエステル(A)のガラス転移温度よりも10~15℃高い温度において縦方向に延伸する場合に、前記コポリエステル(A)単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力は200%未満増加し;そして
前記ポリエステル可塑剤(B)は、
(a)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び
(b)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;
を含む上記ポリエステルベースのフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記コポリエステル(A)が、少なくとも8.6分の最小半結晶化時間(t1/2分)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリエステルベースのフィルムが、前記ポリエステルベースのフィルムの全重量を基準として0.2~0.3重量%の湿分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ブレンドが70℃以下のガラス転移温度(T)を有するか、又は前記ブレンドが60℃以下のガラス転移温度(T)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水中での延伸が、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中で延伸する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水中での延伸が、60℃以下の温度において縦方向に少なくとも5倍延伸する、又は60℃以下の温度において縦方向に少なくとも7倍延伸する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ブレンドが、前記ブレンドの全重量を基準として3~8重量%のポリエステル可塑剤(B)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(I)ポリビニルアルコールベースのフィルム;及び
(II)ポリエステルベースのフィルム;
を含む積層体であって、
前記ポリエステルベースのフィルム(II)は、
(A)コポリエステル;及び
(B)900~12,000g/モルの重量平均分子量(M)を有するポリエステル可塑剤;
を含むブレンドを含み;
前記コポリエステル(A)は、
(a)少なくとも80モル%の、テレフタル酸残基を含む二酸成分;及び
(b)少なくとも80モル%の、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びジエチレングリコールの残基を含むジオール成分;
を含み;
前記二酸成分は前記コポリエステル中の全二酸残基の100モル%を基準とし、前記ジオール成分は前記コポリエステル中の全ジオール残基の100モル%を基準としており;
前記コポリエステル(A)フィルムを、空気中、前記コポリエステル(A)のガラス転移温度よりも10~15℃高い温度において縦方向に延伸する場合に、前記コポリエステル(A)単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力は200%未満増加し;;そして
前記ポリエステル可塑剤(B)は、
(a)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び
(b)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;
を含む上記積層体。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)と前記ポリエステルベースのフィルム(II)の間に接着剤層を更に含む、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
薄膜偏光子を製造する方法であって、
(i)ポリエステルベースのフィルム(II)を含む基材上にポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を形成して、積層体を得ること;
(ii)前記積層体を染色液と接触させて、前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を染色すること;
(iii)前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)が延伸後に10μm以下の厚さを有するように、前記積層体を延伸すること;及び
(iv)前記基材から前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を分離して、薄膜偏光子を得ること;
を含み;
前記ポリエステルベースのフィルム(II)は、
(A)コポリエステル;及び
(B)900~12,000g/モルの重量平均分子量(M)を有するポリエステル可塑剤;
を含むブレンドから製造され;
前記コポリエステル(A)は、
(a)少なくとも80モル%の、テレフタル酸残基を含む二酸成分;及び
(b)少なくとも80モル%の、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びジエチレングリコールの残基を含むジオール成分;
を含み;
前記二酸成分は前記コポリエステル中の全二酸残基の100モル%を基準とし、前記ジオール成分は前記コポリエステル中の全ジオール残基の100モル%を基準としており;
前記コポリエステル(A)フィルムを、空気中、前記コポリエステル(A)のガラス転移温度よりも10~15℃高い温度において縦方向に延伸する場合に、前記コポリエステル(A)単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力は200%未満増加し;そして
前記ポリエステル可塑剤(B)は、
(a)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び
(b)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;
を含む上記方法。
【請求項11】
前記延伸工程(iii)を、空気中、70℃以下の温度において、縦方向に少なくとも5倍の延伸比で行うか;又は、前記延伸工程(iii)を、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、60℃以下の温度において、縦方向に少なくとも6倍の延伸比で行うか;又は、前記延伸工程(iii)を、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、60℃以下の温度において、縦方向に少なくとも7倍の延伸比で行う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記積層体が、前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)と前記ポリエステルベースのフィルム(II)の間に接着剤層を更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、35USC§119(e)(1)に基づく、2017年4月17日に出願された仮出願62/486,138(この仮出願の全ての内容を参照として本明細書中に包含する)の利益を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、コポリエステルをポリマー可塑剤と共に含み、超薄型LCD及びOLED偏光子フィルムを製造するために特に有用なフィルム、並びにそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]超薄型の高性能偏光子は、スマートホン、タブレット、PC、及びTVのようなますます薄くなる電子デバイスのための需要がある。
[0004]偏光機能を有する光学フィルム(偏光子)は、種々の光学用途において用いられている。例えば、それらは、液晶ディスプレイ(LCD)及び有機発光ダイオード(OLED)の用途並びにデバイスにおいて用いられている。一般に、偏光子は自然光を偏光に変換するように機能する。かかる偏光機能は、しばしばヨウ素及び/又はヨウ化物で染色された高配向ポリビニルアルコール(PVA)を用いて達成される。LCDに関しては、偏光子はしばしば偏光材料としてヨウ素/ヨウ化物で染色される。偏光子フィルムは、しばしば、透明で高均一のPVAフィルムから、まず染料で染色し、次に高温空気乾式プロセスで一軸延伸してポリマー分子を配向させてダイクロイックフィルムを製造することによって製造される。しかしながら、乾式プロセスで延伸されたPVA偏光子は、厚く、且つ厚さがあまり均一でない傾向がある。
【0004】
[0005]薄型偏光子フィルムを製造する他の方法は、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような熱可塑性基材(キャリアフィルム)の上にPVA層をキャスト又は積層して積層体を形成すること、積層体のPVA層をヨウ素/ヨウ化物で染色すること、積層体を湿式プロセスで延伸すること、及びキャリアフィルムからPVA層を分離して偏光子を得ることを含む。一般に、湿式プロセスにおいては、PVA偏光子フィルムは、積層体をロールタイプの移送装置に通し、約65℃以上の温度の溶液を用いてそれを湿式延伸工程にかけることによって製造される。しかしながら、PVAフィルムは高い温度においては溶液中に溶解する可能性があり、或いはPETキャリアフィルムは、高い延伸比を試みると結晶化及び破断する可能性がある。したがって、高いガラス転移温度(Tg)のPETキャリアフィルムを用いる場合には、高性能の超薄型偏光子を製造することは困難であった。
【0005】
[0006]現在は、薄型PVA偏光子を製造するためのキャリアフィルムとして、PET又はAPET(アモルファスポリエチレンテレフタレート)がしばしば用いられる。PET又はAPETは、高い頻度で湿式延伸プロセスにおいて用いられる。一般に、APETは、約80℃のその高いTgのために、乾式延伸プロセスにおいては用いられない。同様に、APETは、その固有のひずみ誘起結晶化(これによって破断前のその伸びが制限される)のために、湿式延伸プロセスにおいて超薄型PVAを製造するためには理想的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0007]したがって、乾式及び湿式プロセスにおいて薄型偏光子フィルムを製造するためのキャリアフィルムとしてPET又はAPETを用いる場合に経験する両方の課題を解決する必要性が存在する。また、加工を容易にするために向上した強度及び安定性を有する超薄型偏光子を製造するためのキャリアフィルム及び方法に対する必要性も存在する。
【0007】
[0008]本発明はこれらの必要性及び他の必要性に対処するものであり、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0009]概してコポリエステル及びポリエステル可塑剤を含む本発明のキャリアフィルムは、予期しなかったことに超薄型偏光子フィルムを製造することができる。
[0010]一形態においては、本発明は、(A)コポリエステル、及び(B)900~12,000g/モルの重量平均分子量(M)を有するポリエステル可塑剤を含むブレンドから製造されるポリエステルベースのフィルムを提供する。このフィルムは水中で延伸されている。コポリエステル(A)は、少なくとも50モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、又はこれらの混合物の残基を含む二酸成分;及び(b)少なくとも80モル%の、2~10個の炭素原子を含むジオールの残基を含むジオール成分;を含み;二酸成分はコポリエステル中の全二酸残基の100モル%を基準とし、ジオール成分はコポリエステル中の全ジオール残基の100モル%を基準としている。ポリエステル可塑剤(B)は、(a)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び(b)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;を含む。望ましくは、コポリエステル(A)フィルムを、空気中、コポリエステル(A)のガラス転移温度よりも10~15℃高い温度において縦方向に延伸する場合に、コポリエステル(A)単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力は200%未満増加する。
【0009】
[0011]他の形態においては、本発明は、(I)ポリビニルアルコールベースのフィルム及び(II)ポリエステルベースのフィルムを含む積層体を提供する。
[0012]更に他の形態においては、本発明は、超薄膜偏光子を製造する方法を提供する。この方法は、(i)ポリエステルベースのフィルム(II)を含む基材上にポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を形成して、積層体を得ること;(ii)積層体を染色液と接触させて、ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を染色すること;(iii)ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)が延伸後に10μm以下の厚さを有するように、積層体を延伸すること;及び(iv)基材からポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を分離して、超薄膜偏光子を得ること;を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0013]図1は、乾燥APET及び湿潤APETフィルムの延伸特性を示す。
図2】[0014]図2は、結晶性APETフィルムと比較した、コポリエステル(COPE)フィルムの改良された延伸特性を示す。
図3】[0015]図3は、COPE及び7重量%のポリエステル可塑剤を有するCOPEの延伸特性を示す。
図4】[0016]図4は、湿分吸収によるAPETのTgの低下を示す。
図5】[0017]図5は、湿分吸収によるCOPEのTgの低下を示す。
図6】[0018]図6は、ポリエステル可塑剤を加えることによるCOPEのTgの低下を示す。
図7】[0019]図7は、ポリエステル可塑剤の添加及び湿分吸収の複合効果によるCOPEのTgの低下を示す。
図8】[0020]図8は、COPEを60℃及び0%の相対湿度(RH)において4時間乾燥することによる重量損失を示す。
図9】[0021]図9は、異なる温度及び90%RHにおけるCOPEによる水吸収による重量利得を示す。
図10】[0022]図10は、異なる温度及び90%RHにおいて2.5時間後のCOPEにおける湿分吸収を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0023]本発明は、本教示と合致する幾つかの態様の以下の詳細な説明、及び実施例を参照することによって、より容易に理解することができる。
[0024]本発明は、乾式及び湿式プロセスで薄型/超薄型偏光子フィルムを製造するためのキャリアフィルムとしてPET又はAPETを用いる場合に経験する課題を解決する。驚くべきことに、本明細書に記載する特定のコポリエステル(COPE)及び場合によってはポリエステル可塑剤(PZ)を含むキャリアフィルムを用いて超薄型偏光子を製造することができることが見出された。超薄型偏光子は、本発明にしたがって低Tgのキャリアフィルム上にPVAの薄層を形成することによって製造することができる。得られるPVA/キャリア積層体は、約65℃以下の温度で延伸することができる。キャリアフィルムは、あったとしても最小の結晶化しか起こさず、非常に高い延伸比を用いても延伸中に破断しないので、増大した偏光効率を有する超薄型偏光子を製造することができる。
【0012】
[0025]本発明のキャリアフィルムの製造において有用なコポリエステル(1種類又は複数のCOPE)は、延伸プロセス中にあったとしても最小のひずみ誘起結晶化(SIC)しか示さない。したがって、COPEを含むキャリアフィルムは、結晶性APETから製造されるキャリアフィルムと比較して、より低い延伸力を用いてより高い延伸比に延伸又は伸長させることができる。而して、COPEキャリアフィルムを用いて、結晶性APETから製造されるキャリアフィルムよりも遙かに薄いPVAフィルムを製造することができる。
【0013】
[0026]また、本発明によるCOPEのガラス転移温度(Tg)は、APETのTgよりも少なくとも10℃低くすることができる。したがって、本発明のキャリアフィルムは、可塑剤を加えない場合であっても、より低い温度で延伸することができる。COPEキャリアフィルム中に可塑剤を導入することによって、乾式又は湿式プロセスにおける延伸温度を更に低下させることができる。
【0014】
[0027]本発明のCOPEは良好な湿分吸収を有するので、それらのTgは、特にポリエステル可塑剤と組み合わせて、湿式延伸プロセスにおいて大きく低下させることができる。コポリエステルのTgに対する水及び可塑剤の複合効果によって、COPEから製造されるフィルムを、湿式プロセスにおいて低温で低い延伸力を用いて高い延伸比に延伸することが可能になる。かかるフィルムは、キャリア層として、超薄型で、均一で、高性能のPVA偏光子フィルムを製造するために特に有用である。
【0015】
[0028]記載が他に明確に示唆していない限りにおいては、「ポリエステル」及び「コポリエステル」という用語は、本明細書においては互換的に用いられる。「ポリエステル」という用語は、「コポリエステル」を包含するように意図され、1種類以上の二官能性カルボン酸(又は二酸)と1種類以上の二官能性ヒドロキシル化合物(又はジオール)の重縮合によって製造される合成ポリマーを意味すると理解される。種々の態様においては、二官能性カルボン酸はジカルボン酸であり、二官能性ヒドロキシル化合物は、例えばグリコール及びジオールのような二価アルコールである。
【0016】
[0029]「残基」という用語は、対応するモノマーが関与する重縮合反応によってポリマー中に導入される任意の有機構造を意味する。「繰り返し単位」という用語は、カルボニルオキシ基によって結合しているジカルボン酸残基(又は二酸成分)及びジオール残基(又はジオール成分)を有する有機構造を意味する。而して、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー、又はその関連する酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物、又はこれらの混合物から誘導することができる。
【0017】
[0030]「ベースフィルム」という用語は、押出された未延伸のフィルムを意味する。
コポリエステル(COPE):
[0031]本発明において有用なCOPEは、延伸中に最小のひずみ誘起結晶化(時には応力誘起結晶化と呼ばれる)を示す傾向がある。この最小のひずみ誘起結晶化は、1以上の方法で特徴付けることができる。
【0018】
[0032]例えば、COPEのフィルムは、Tg+10℃の温度(TgはCOPEのガラス転移温度である)及び100%のひずみ速度において縦方向に5倍まで延伸した際に、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、又は1%以下の結晶化度を有し得る。種々の態様においては、COPEのフィルムは、これらの条件において延伸した際に15%以下の結晶化度を有する。種々の他の態様においては、COPEのフィルムは、これらの条件において延伸した際に10%以下の結晶化度を有する。更なる種々の他の態様においては、COPEのフィルムは、これらの条件において延伸した際に5%以下の結晶化度を有する。ポリマーの結晶化度は、当該技術において公知の方法を用いて測定することができる。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0019】
[0033]ひずみ誘起結晶化(SIC)は、延伸を行うのに必要な力をモニターすることによって間接的に測定することができる。例えば、厚さ500μmのフィルムをTg+10℃の温度又はTg+15℃の温度において縦方向に2倍から5倍に乾式延伸するのに必要な力が35Nより多く増加する場合、或いはフィルムが破断する場合には、ポリマーは、延伸中に最小ではなく相当なSICを示す。而して、本発明の種々の態様においては、COPEの厚さ200μmのフィルムをTg+10℃の温度の温度において縦方向に2倍から5倍に乾式延伸するのに必要な力は、30N以下増加する。種々の他の態様においては、必要な力は20N以下増加する。更なる種々の他の態様においては、必要な力は10N以下増加する。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0020】
[0034]同様に、COPEは、COPEフィルムを、空気中、COPEのTgよりも10~15℃高い温度において縦方向に延伸する場合に、COPE単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力が200%未満増加する場合には、最小のSICを示す。種々の態様においては、この力は150%以下増加する。種々の他の態様においては、この力は100%以下増加する。更なる種々の他の態様においては、この力は50%以下増加する。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0021】
[0035]延伸中に最小のSICを示すコポリエステルは、延伸前に少なくとも実質的にアモルファスである傾向を有する。例えば、COPEは、延伸前に20%以下の結晶化度を有し得る。COPEは、延伸前に15%以下の結晶化度を有し得る。COPEは、延伸前に10%以下の結晶化度を有し得る。COPEは、延伸前に5%以下の結晶化度を有し得る。COPEは、延伸前に3%以下の結晶化度を有し得る。或いは、COPEは延伸前に1%以下の結晶化度を有し得る。好ましくは、COPEはまた、延伸後に少なくとも実質的にアモルファスである。即ち、好ましくはCOPEは、延伸中において、APETとは異なり、あったとしても最小にしか結晶化しない。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0022】
[0036]本発明において用いるのに好適なコポリエステルは、それぞれ100モル%のジカルボン酸残基及び100モル%のジオール残基を基準として、ジカルボン酸及びジオールからの繰り返し単位を含む。
【0023】
[0037]種々の態様においては、二酸成分は、少なくとも50モル%の、8~14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸の残基を含む。コポリエステルは、場合によっては、100モル%のジカルボン酸残基を基準として50モル%以下の、4~12個の炭素原子を有する飽和脂肪族ジカルボン酸及び8~12個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸以外の1種類以上の異なるジカルボン酸の残基によって変性されていてよい。ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。コポリエステルは、上記のジカルボン酸の1以上から製造することができる。これらの酸の対応する酸無水物、エステル、及び酸塩化物の使用は、「ジカルボン酸」の用語に包含されることを理解すべきである。
【0024】
[0038]種々の態様においては、ジオール成分は、少なくとも80モル%の、2~10個の炭素原子を含むジオールの残基を含む。ジオール成分は、場合によっては、100モル%のジオール残基を基準として20モル%以下の1種類以上の他のジオールの残基によって変性されていてよい。ジオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチルペンタンジオール-(2,4)、2-メチルペンタンジオール-(1,4)、2,2,4-トリメチルペンタンジオール-(1,3)、2-エチルヘキサンジオール-(1,3)、2,2-ジエチルプロパンジオール-(1,3)、ヘキサンジオール-(1,3)、1,4-ジ(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(3-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。コポリエステルは、上記のジオールの1以上から製造することができる。
【0025】
[0039]コポリエステルはまた、少量(例えば<5モル%)の、無水トリメリット酸、トリメチロールプロパン、ピロメリット酸二無水物、ペンタエリトリトール、及び当該技術において一般的に知られているポリ酸又はポリオールを形成する他のポリエステルのような三官能性又は四官能性のコモノマーの残基も含み得る。
【0026】
[0040]種々の態様においては、コポリエステルは、(i)少なくとも50モル%のテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、又はこれらの混合物の残基を含む二酸成分;及び(ii)少なくとも80モル%の2~10個の炭素原子を含むジオールの残基を含むジオール成分;を含む。
【0027】
[0041]種々の態様においては、コポリエステルの二酸成分は、少なくとも約80モル%のテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、又はこれらの混合物の残基を含む。
【0028】
[0042]種々の態様においては、コポリエステルのジオール成分は、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、又はこれらの混合物の残基を含む。
【0029】
[0043]種々の態様においては、コポリエステルは、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)少なくとも80モル%のエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分;を含む。
【0030】
[0044]種々の態様においては、コポリエステルは、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)17~70モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基及び30~83モル%のエチレングリコールの残基を含むジオール成分;を含む。
【0031】
[0045]種々の態様においては、コポリエステルは、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)17~35モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基及び65~83モル%のエチレングリコールの残基を含むジオール成分;を含む。
【0032】
[0046]種々の態様においては、コポリエステルは、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)少なくとも80モル%のエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びジエチレングリコールの残基を含むジオール成分;を含む。
【0033】
[0047]種々の態様においては、コポリエステルは、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)少なくとも80モル%のエチレングリコール及びネオペンチルグリコールの残基を含むジオール成分;を含む。
【0034】
[0048]種々の態様においては、コポリエステルは、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)少なくとも80モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールの残基を含むジオール成分;を含む。
【0035】
[0049]上記で言及した種々のコポリエステル、並びに二酸及びジオール成分は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
[0050]本発明において有用なコポリエステルは、60重量%のフェノール及び40重量%のテトラクロロエタンから構成される溶媒100mLあたり0.50グラムのポリマーを用いて25℃において測定して0.5~1.2dL/gのインヘレント粘度を有し得る。例えば、種々の態様においては、コポリエステルは0.6~0.9dL/gのインヘレント粘度を有する。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0036】
[0051]本発明において有用なコポリエステルは、30℃~120℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し得る。例えば、種々の態様においては、コポリエステルは、40℃~90℃、40℃~80℃、40℃~70℃、40℃~60℃、50℃~70℃、50℃~65℃、又は50℃~60℃の範囲のTgを有し得る。種々の他の態様においては、コポリエステルは、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下、又は50℃以下のTgを有し得る。更なる種々の他の態様においては、コポリエステルは、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも45℃、又は少なくとも50℃、並びにそれぞれの場合において55℃以下、60℃以下、65℃以下、又は70℃以下のTgを有し得る。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴(それぞれの温度範囲を含む)は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0037】
[0052]或いは、又は上記で言及した1つ又は複数の任意の特徴の組合せと組み合わせて、本発明において用いるのに好適なコポリエステル(COPE)は、それらの最小半結晶化時間(minimum crystallization half-time)によって規定することができる。例えば、種々の態様においては、COPEは、少なくとも5分、少なくとも7分、少なくとも8.6分、少なくとも10分、少なくとも12分、少なくとも30分、又は無限の最小半結晶化時間を有し得る。種々の他の態様においては、COPEは少なくとも5分の最小半結晶化時間を有する。更なる種々の他の態様においては、COPEは少なくとも8.6分の最小半結晶化時間を有する。明確にするために、このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0038】
[0053]半結晶化時間は、次の手順にしたがって示差走査熱量計を用いて測定することができる。10.0mgのCOPEの試料をアルミニウム皿内に密封し、ヘリウム雰囲気中において320℃/分の速度で290℃に加熱して2分間保持する。次に、試料を直ちに、320℃/分の速度で、10℃の間隔で140℃~200℃の範囲の等温結晶化温度に冷却する。次に、それぞれの温度における半結晶化時間を、発熱曲線上のピークに到達するのに必要な時間として求める。最小半結晶化時間は、結晶化速度が最も速い(即ち半結晶化時間が最も短い)温度である。
【0039】
[0054]COPEと他のポリマー(他のポリエステル及びコポリエステルを含む)のブレンドを用いることができる。種々の態様においては、このブレンドは、例えば少なくとも5分又は少なくとも8.6分の最小半結晶化時間、及び/又は例えば20%以下又は15%以下の結晶化度を有する。種々の態様においては、PET及び/又はアモルファスPETとCOPEのブレンドを用いることができる。種々の他の態様においては、フィルムが光学的に透明のままである限りにおいては任意の混和性ブレンドを用いることができる。
【0040】
[0055]「透明」という用語は、本発明においては、肉眼で見ることができる曇り、霞み、又は濁りが存在しない(或いは非常に低いレベルで存在する)ものと定義される。
[0056]「混和性」という用語は、分子レベルで均一であり、単一相の混合物として挙動し、ただ1つのガラス転移温度を示す2種類以上のポリマーのブレンドを指す。
【0041】
[0057]コポリエステルは、当該技術において周知の通常の重縮合手順によって製造することができる。かかるプロセスとしては、1種類又は複数のジカルボン酸と1種類又は複数のジオールの直接縮合、或いはジアルキルジカルボキシレートを用いるエステル交換が挙げられる。例えば、ジメチルテレフタレートのようなジアルキルテレフタレートを、触媒の存在下、昇温温度において1種類又は複数のジオールとエステル交換する。ポリエステルはまた、固相重合法にかけることもできる。好適な方法は、1種類以上のジカルボン酸を、100℃~315℃の温度、0.1~760mmHgの圧力において、ポリエステルを形成するのに十分な時間、1種類以上のグリコールと反応させる工程を含む。例えば、ポリエステルを製造する方法に関する米国特許3,772,405を参照。かかる方法の開示事項は参照として本明細書中に包含する。
【0042】
[0058]本発明において有用なコポリエステルはまた、Eastman Chemical Companyから商業的に入手することもできる。
[0059](下記により詳細に記載するように)ポリエステル可塑剤を含むか又は含まないCOPEは、通常のフィルム形成技術を用いてフィルムに成形することができる。例えば、COPEは、それぞれ押出又は共押出技術を用いて単層又は多層フィルムに成形することができる。COPEから製造されるフィルムは、PVAベースの偏光子を製造するためのキャリアフィルムとして用いることができる。
【0043】
ポリエステル可塑剤:
[0060]一形態においては、本発明は、本明細書に記載のCOPE及び混和性ポリエステル可塑剤を含むポリエステルベースのフィルムを提供する。可塑剤は、COPEの可撓性、伸び、及び加工し易さを増加させることができる。可塑剤の物理的効果は、溶融粘度、弾性率、及びガラス転移温度によって測定することができる。
【0044】
[0061]本発明において有用なポリエステル可塑剤(PZ)は、望ましくはコポリエステルと混和性であって、得られるフィルムは乾式又は湿式延伸プロセスのいずれにおいても光学的に透明なままである。
【0045】
[0062]本発明において有用なポリエステル可塑剤は、通常は900~12,000g/モルの重量平均分子量(M)を有する。種々の態様においては、可塑剤は900~6,000g/モルのMを有する。種々の態様においては、可塑剤は900~5,000g/モルのMを有する。種々の態様においては、可塑剤は900~4,000g/モルのMを有する。種々の態様においては、可塑剤は1,000~12,000g/モルのMを有する。種々の態様においては、可塑剤は1,000~6,000g/モルのMを有する。種々の態様においては、可塑剤は1,000~5,000g/モルのMを有する。種々の態様においては、可塑剤は1,000~4,000g/モルのMを有する。種々の態様においては、可塑剤は2,000~12,000g/モルのMを有する。種々の態様においては、可塑剤は2,000~6,000g/モルのMを有する。種々の態様においては、可塑剤は2,000~5,000g/モルのMを有する。種々の態様においては、可塑剤は2,000~4,000g/モルのMを有する。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0046】
[0063]ポリエステル可塑剤は、通常は、(i)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び(ii)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;を含む。
【0047】
[0064]2~8個の炭素原子を含む好適なジオールとしては、エチレングリコール、1,2-又は1,3-プロパンジオール;1,2-又は1,3-或いは1,4-ブタンジオール;ジエチレングリコール;及びジプロピレングリコール;が挙げられる。
【0048】
[0065]好適なジカルボン酸は、式:HO(O)CRC(O)OH(式中、Rは、2~10個の炭素原子を含む線状及び分岐アルキレン基、及びフェニレンからなる群から選択される)によって表すことができる。かかるジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、テレフタル酸、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸、ベンゼン-1,4-ジカルボン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。コスト及び入手容易性に応じて、これらの二酸の無水物を容易に用いることができる。
【0049】
[0066]種々の態様においては、ポリエステル可塑剤は、フタル酸、アジピン酸、又はこれらの混合物の残基;並びに1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、又はこれらの混合物の残基;を含む。
【0050】
[0067]種々の態様においては、ポリエステル可塑剤は、フタル酸の残基;並びに1,2-プロパンジオール及び1,4-ブタンジオールの残基;を含む。
[0068]種々の態様においては、ポリエステル可塑剤は、フタル酸及びアジピン酸の残基;並びに1,2-プロパンジオール及び1,3-ブタンジオールの残基;を含む。
【0051】
[0069]種々の態様においては、ポリエステル可塑剤は、アジピン酸の残基;並びに1,2-プロパンジオール及び1,4-ブタンジオールの残基;を含む。
[0070]種々の態様においては、ポリエステル可塑剤は、アジピン酸の残基;及び1,3-ブタンジオールの残基;を含む。
【0052】
[0071]種々の態様においては、ポリエステル可塑剤は、1,500以上の数平均分子量を有するポリ乳酸セグメントを含まない。種々の他の態様においては、ポリエステル可塑剤はポリ乳酸セグメントを含まない。
【0053】
[0072]上記で言及した種々のポリエステル可塑剤、並びにそれらの二酸及びジオール成分は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0054】
[0073]本発明による可塑剤は、粘度測定又は任意の他の一般的に許容しうる方法によって求められる所望の分子量が得られるまで、1種類以上のジオール又はグリコールを、2以上の酸官能基を含む1種類以上の環式又は脂肪族有機酸と反応させることによって製造することができる。ポリマーの分子量は、単官能性アルコール又は一価カルボン酸のいずれかを用いて、生成物の所望のヒドロキシル価及び/又は酸価に到達するまで、ポリエステル鎖の末端における未反応の酸又はアルコール官能基をキャップすることによって制御することができる。ポリエステル可塑剤のヒドロキシル価は0~40mg-KOH/gの範囲であってよく、酸価又は酸値は0~50mg-KOH/g;例えば1~5mg-KOH/gの範囲であってよい。
【0055】
[0074]キャッピング剤は、任意の数の容易に入手しうるアルコール又は酸から選択することができる。好適なキャッピングアルコールは、2~18個の炭素原子を含んでいてよく、線状又は分岐であってよい。好適な一塩基酸キャッピング剤としては、2~22個の炭素原子を含むものが挙げられ、C~C22炭素を含む任意の数の脂肪酸、或いは酢酸又は2-エチルヘキサン酸のような他の通常の酸であってよい。無水酢酸のような無水物を酸に代えて用いることができる。
【0056】
[0075]本発明において用いるのに好適なポリエステル可塑剤の例としては、Eastman Chemical CompanyからAdmex(登録商標)の名称で商業的に入手できるものが挙げられる。
ポリエステルベースのフィルム/キャリアフィルム:
[0076]上述したように、本発明の一形態は、本明細書に記載するコポリエステル(A)から製造されるポリエステルベースのフィルムに関する。
【0057】
[0077]本発明の他の形態は、(A)本明細書に記載するコポリエステル、及び(B)本明細書に記載するポリエステル可塑剤を含むブレンドから製造されるポリエステルベースのフィルムに関する。
【0058】
[0078]例えば、本発明によるフィルムには、
(A)コポリエステル(A)フィルムを、空気中、コポリエステル(A)のガラス転移温度よりも10~15℃高い温度において縦方向に延伸する場合に、コポリエステル(A)単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力が200%未満増加するコポリエステル;
(B)900~12,000g/モルの重量平均分子量(M)を有するポリエステル可塑剤;
を含ませることができる。種々の態様においては、コポリエステル(A)単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力は150%以下増加する。種々の他の態様においては、この力は100%以下増加する。更なる種々の他の態様においては、この力は50%以下増加する。
【0059】
[0079]上述したように、コポリエステル(A)には、例えば
(a)少なくとも50モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、又はこれらの混合物の残基を含む二酸成分;及び
(b)少なくとも80モル%の、2~10個の炭素原子を含むジオールの残基を含むジオール成分;
を含ませることができ;
二酸成分はコポリエステル中の全二酸残基の100モル%を基準とし、ジオール成分はコポリエステル中の全ジオール残基の100モル%を基準とする。
【0060】
[0080]及び上述したように、ポリエステル可塑剤(B)には、例えば
(a)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び
(b)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;
を含ませることができる。
【0061】
[0081]本発明によるフィルムは、当該産業において公知の任意の方法によって製造することができる。例えば、ポリエステル可塑剤を、バッチ混合、一軸若しくは二軸押出のような任意の好適な溶融ブレンドプロセスによってコポリエステルと混合することができる。種々の態様においては、可塑剤は、液又は固体ポンプ移送システムを用いてコポリエステルの溶融体中に注入する。種々の他の態様においては、コポリエステル/可塑剤混合物は、コポリエステルの重合が実質的に完了した後に可塑剤をコポリエステルに加えることによって製造することができる。溶融配合が完了した後、押出機から排出されたら、押出物をフィルムに成形することができる。或いは、押出物をストランド形態で排出してペレットに切断するか、又は直接ペレットに成形することができる。
【0062】
[0082]ペレットは濃縮物として用いることができ、これをフィルム形成の前に更なる量のコポリエステルと混合することができる。濃縮物のペレットをコポリエステルのペレットと混合する方法は、添加物フィーダーによって濃縮物のペレットを供給すること、及びコポリエステルを濃縮物ペレットと機械的に混合することを含む。コポリエステル/濃縮物のブレンドは、次に乾燥し、溶融ブレンドし、フィルムに押出すことができる。このフィルムは、通常は延伸の前及び後において視覚的に透明である。
【0063】
[0083]或いは、コポリエステル/濃縮物のブレンドを、例えばUS-6,068,910に開示されているようにカレンダリングによってフィルムに成形することができる。更に、コポリエステル/濃縮物のブレンドは、任意の公知のカレンダリング法によってフィルムに成形することができる。
【0064】
[0084]本発明の種々の態様においては、それからフィルムを製造するブレンドに、ブレンドの全重量を基準として0.01~10重量%のポリエステル可塑剤を含ませることができる。種々の他の態様においては、ブレンドに、ブレンドの全重量を基準として少なくとも0.1重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%;及びこの場合において10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、又は5重量%以下のポリエステル可塑剤を含ませることができる。例えば、ブレンドに、ブレンドの全重量を基準として3~8重量%のポリエステル可塑剤を含ませることができる。これらのブレンドの残りは、COPE、又はCOPE及び任意の添加剤であってよい。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0065】
[0085]種々の態様においては、最終ブレンド/フィルムには、ブレンド/フィルムの全重量を基準として90~99.99重量%のコポリエステルを含ませることができる。種々の他の態様においては、最終ブレンド/フィルムには、ブレンド/フィルムの全重量を基準として95~99.9重量%のコポリエステルを含ませることができる。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0066】
[0086]本発明のブレンド/フィルムには、フィルムの得られる特性に悪影響を与えない量の1種類以上の添加剤を更に含ませることができる。添加剤の例としては、酸化防止剤、溶融強度促進剤、連鎖延長剤、難燃剤、フィラー、酸スキャベンジャー、染料、着色剤、顔料、アンチブロッキング剤、流動向上剤、耐衝撃性改良剤、静電防止剤、加工助剤、離型添加剤、スリップ剤、安定剤、ワックス、UV吸収剤、光学増白剤、滑剤、ピニング剤(pinning additives)などが挙げられる。フィラーの代表例としては、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、マイカ、ゼオライト、珪灰石、カオリン、珪藻土、TiO、NHCl、シリカ、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、及びリン酸カルシウムが挙げられる。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0067】
[0087]種々の態様においては、本発明のフィルムは、延伸する前に25~500μm、又は100~250μmの厚さを有し得る。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0068】
[0088]種々の態様においては、本発明のポリエステルベースのフィルムは、水中で有利に延伸される(水中延伸又は湿式延伸プロセスとしても知られる)。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0069】
[0089]湿式延伸法は、フィルムを、より高い延伸比及び/又はより低い温度において引裂又は破断することなく延伸することを可能にすることができる。例えば、本発明のポリエステルベースのフィルムは、60℃以下の温度において、破断することなく、縦方向にそれらの元の長さの少なくとも5倍、少なくとも6倍、又は少なくとも7倍延伸することができる。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0070】
[0090]任意の適当な方法を用いてポリエステルベースのフィルムを延伸することができる。例えば、ロール延伸法、長ギャップ延伸法(long-gap stretching method)、又はテンター延伸法を用いることができる。延伸は1以上の段階で行うことができる。
【0071】
[0091]水中延伸は、好ましくは、ポリエステルベースのフィルムを、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中に浸漬することによって行う。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0072】
[0092]ホウ酸水溶液は、水中に、ホウ酸及び/又はホウ酸塩を溶解することによるか、又はホウ砂のようなホウ酸を生成するホウ素化合物を溶解することによって得ることができる。ホウ酸の濃度は、重量基準で水100部あたり1~10部の範囲であってよい。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0073】
[0093]種々の態様においては、ポリエステルベースのフィルムを、フィルムのガラス転移温度(Tg)よりも5℃~30℃高い温度で延伸する。種々の他の態様においては、フィルムは、そのTgよりも10℃~20℃高い温度で延伸する。種々の他の態様においては、フィルムは、そのTgよりも10℃~15℃高い温度で延伸する。種々の他の態様においては、フィルムは、そのTgよりも10℃高い温度で延伸する。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0074】
[0094]種々の態様においては、延伸温度は40℃~85℃の範囲である。種々の他の態様においては、延伸温度は50℃~70℃の範囲である。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0075】
[0095]種々の態様においては、ポリエステルベースのフィルムを、延伸溶液浴中に5秒~5分の範囲浸漬する。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0076】
[0096]ポリエステルベースのフィルムの延伸方向は、いかなるようにも限定されない。例えば、フィルムは、縦方向又は横方向のいずれか、又は両方に延伸することができる。種々の態様においては、ポリエステルベースのフィルムは、縦方向に一軸延伸する。フィルムは、元のフィルムの測定値の2~7倍延伸することができる。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0077】
[0097]種々の態様においては、ポリエステルベースのフィルムは、水中延伸した後、フィルムの全重量を基準として0.2重量%より多い吸水量を有する。種々の他の態様においては、ポリエステルベースのフィルムは、ポリエステルベースのフィルムの全重量を基準として0.1~0.3重量%、0.1重量%より多く0.3重量%まで、1.5~0.3重量%、1.5重量%より多く0.3重量%まで、0.2~0.3重量%、又は0.2重量%より多く0.3重量%までの湿分を含む。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0078】
[0098]本発明のポリエステルベースのフィルムは、特にPVAのような他のフィルムのための基材として用いられる場合には、時にはキャリアフィルムと呼ばれる。本発明のキャリアフィルムは、超薄型フィルム偏光子を製造するための積層体における基材として特に有用である。
【0079】
[0099]本発明のキャリアフィルムは、APETから製造されるフィルムと比べてより低い温度で延伸することができる。本発明におけるCOPEの初期Tgは比較的低い。例えば種々の態様においては、COPEのTgは50~70℃である。種々の他の態様においては、COPEのTgは70℃未満又は60℃未満である。しかしながら、本発明におけるCOPEのTgは、異なる量の混和性ポリエステル可塑剤を加えて所望のTg値を得ることによって更に低下させることができ、これによりキャリアフィルムを更により低い温度で延伸することができる。
【0080】
[0100]種々の態様においては、COPEのTgは、ポリエステル可塑剤の含量を増加させることによって40℃以下に低下させることができる。したがって、本発明のキャリアフィルムは、可塑剤の量を調節することによって所望のより低い温度で延伸することができる。
【0081】
[0101]例えば、幾つかの態様においては、乾式プロセスにおいて、本発明のキャリアフィルムを、80℃以下、又は更には70℃以下の温度で延伸することができる。及び幾つかの他の態様においては、乾式プロセスにおいて、キャリアフィルム及び乾燥積層体を、65℃以下、又は60℃以下の温度で延伸することができる。幾つかの態様においては、乾式プロセスにおいて、延伸温度は、フィルムのTgよりも5~30℃、又は10~20℃高い。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0082】
[0102]本発明においては、COPEは湿分を吸収することができるので、湿式プロセスにおいては、水はTgを更に有効に低下させて更により低い延伸温度を可能にする第2の可塑剤として機能する。したがって、本発明においては、キャリアフィルムの「真の」Tgは湿分吸収又は湿分取込みの後のTgであり、真のTgはキャリアフィルムの延伸温度を決定するのに用いられる。例えば、例えば70℃以下、60℃以下、55℃以下、又は50℃以下のような湿式プロセスにおける低い延伸温度を得ることができる。低い延伸温度は、PVAの結晶化度を最小にし、延伸比を向上させ、偏光子の全体的な偏光効率を向上させる。更に、低い温度の延伸は湿式プロセスにおいてPVAの溶解速度を減少させる。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0083】
[0103]而して、湿式プロセスにおいては、本発明におけるCOPEのTgは、異なる量の混和性ポリエステル可塑剤を加えて所望のTg値を得ることによって調節及び低下させることができ、それによってキャリアフィルムをより低い温度で延伸することができる。
【0084】
[0104]種々の態様においては、湿式プロセスにおいて、延伸温度はフィルムの「真の」Tgよりも5~30℃高い。種々の他の態様においては、延伸温度は、フィルムの「真の」Tgよりも10~20℃高い。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0085】
積層体、PVAフィルム、及び偏光子:
[0105]本発明の他の形態は、(I)ポリビニルアルコールベースのフィルム、及び(II)本明細書に記載するポリエステルベースのフィルムを含む積層体に関する。ポリエステルベースのフィルム(II)は、COPE(A)から、可塑剤(B)を用いるか又は用いないで製造することができる。
【0086】
[0106]種々の態様においては、積層体は透明な光学積層体である。
[0107]任意のポリビニルアルコールベースの樹脂(PVA)を用いて本発明のPVAフィルム(I)を形成することができる。例えば、種々の態様においては、PVAベースの樹脂は、完全に加水分解されているポリ(ビニルアルコール)である。種々の他の態様においては、PVAベースの樹脂としては、PVA及びエチレン-ビニルアルコールコポリマーを挙げることができる。
【0087】
[0108]PVAベースの樹脂の平均重合度は、所期の用途に基づいて選択することができる。例えば、種々の態様においては、平均重合度は1,000~5,000の範囲であってよい。
【0088】
[0109]本発明による積層体は、キャリアフィルム上にPVA層を形成することによって製造することができる。PVA層は、任意の好適なキャスト又は被覆法を用いてキャリアフィルム上に形成することができる。或いは、積層体は、予め形成したPVAフィルムをキャリアフィルム上に接着させることによって製造することができる。接着剤層を用いて、PVAフィルムをキャリアフィルムに接着させることができる。
【0089】
[0110]任意の好適な方法を用いて、PVA層をキャリアフィルム上にキャスト又は被覆することができる。好適な方法としては、例えばロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、浸漬コート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、及びナイフコート法等が挙げられる。
【0090】
[0111]キャスト又は被覆法は、通常は、まず好適な溶媒中にPVAベースの樹脂を溶解することを含む。好適な溶媒としては、例えば、水;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;N-メチルピロリドン;種々のグリコール類;トリメチロールプロパンのような多価アルコール;並びにエチレンジアミン及びジエチレントリアミンのようなアミン;が挙げられる。これらの溶媒は、単独か又は他の溶媒と組み合わせて用いることができる。キャスト又は被覆溶液中のPVAベースの樹脂の通常の濃度としては、例えば重量基準で溶媒100部あたり3~20部が挙げられる。
【0091】
[0112]キャスト又は被覆溶液に添加剤を加えることができる。例えば、可能な添加剤としては界面活性剤及び更なる可塑剤が挙げられる。界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤が挙げられる。更なる可塑剤の例としては、エチレングリコール及びグリセリンのような多価アルコールが挙げられる。これらの添加剤は、PVAベースの層又はフィルムの均一性、染色性、及び/又は延伸性を更に向上させるために用いることができる。
【0092】
[0113]PVAベースの樹脂を好適な溶媒中に溶解した後、次に得られる溶液を通常はキャリアフィルム上に施す。次に、積層体を、通常は50℃以上のような昇温温度で乾燥することができる。
【0093】
[0114]或いは、PVAベースのフィルムは、溶媒キャストのような従来の方法によって予め形成して、次にキャリアフィルム上に積層することができる。
[0115]被覆/キャスト溶液又は予め形成されたフィルムのいずれかとしてPVAと接触させる前に、キャリアフィルムを表面処理にかけて、キャリアフィルムとPVAベースの樹脂との間の接着を向上させることができる。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、NaOH又はKOHのような強アルカリ水溶液を用いる表面変性処理などのような任意の一般的に知られている方法を挙げることができる。
【0094】
[0116]種々の態様においては、積層体に、PVAベースのフィルムとキャリアフィルムとの間に接着剤層を含ませることができる。通常は、接着剤層は、PVA層を施す前にキャリアフィルム上に施す。接着剤層の材料は限定されず、任意の一般に知られている接着剤を制限なしに用いることができる。例えば、接着剤層は、水性接着剤又は溶剤型接着剤を用いて形成することができる。
【0095】
[0117]水性接着剤の例としては、ポリビニルアルコール系接着剤、アクリル系接着剤、及び酢酸ビニル系接着剤が挙げられる。他の水性接着剤の例としては、アセトアセチル基又はアクリル基を含むもの、及びヒドロキシル基含有ポリビニルアルコール系の樹脂が挙げられる。
【0096】
[0118]接着剤層は、カレンダリング及び押出しなど(しかしながらこれらに限定されない)の、キャリアフィルム及びPVAフィルムに関して上記で議論したもののような任意の公知の方法を用いて施すことができる。
【0097】
[0119]種々の態様においては、PVAベースのフィルムは、延伸する前に、40μm以下、30μm以下、又は20μm以下の厚さを有し得る。通常は、PVAベースのフィルムは、延伸する前に、10μm以上、15μm以上、又は20μm以上、及びそれぞれの場合において20μm以下、30μm以下、又は40μm以下の範囲の厚さを有する。
【0098】
[0120]種々の態様においては、本発明の積層体は、望ましくは延伸してより薄いPVAベースのフィルムを形成する。
[0121]PVA/キャリア積層体の延伸方向は、いかなるようにも限定されない。例えば、積層体は、縦方向又は横方向のいずれか、或いは両方に延伸することができる。
【0099】
[0122]種々の態様においては、積層体は縦方向に一軸延伸する。
[0123]積層体は、それらの元の測定値の2~7倍延伸することができる。例えば、積層体は、5倍以上、5.5倍以上、6倍以上、又は7倍の延伸比で延伸することができる。
【0100】
[0124]本発明の積層体は、任意の好適な延伸法を用いて延伸することができる。例えば、種々の態様においては、延伸法は、固定端延伸であってよく、又は自由端延伸(或いは、積層体を、異なる周速度を有する2つのロールの間に通しながら一軸延伸にかける方法)であってよい。積層体の延伸は、単一段階の方法で行うことができ、或いは多段階方法で行うことができる。
【0101】
[0125]積層体は、空気中又は水中で延伸することができる。
[0126]種々の態様においては、積層体は、キャリアフィルムのガラス転移温度(Tg)よりも5℃~30℃高い温度で延伸する。種々の他の態様においては、積層体は、キャリアフィルムのTgよりも10℃~20℃、又は10℃~15℃高い温度で延伸する。
【0102】
[0127]種々の態様においては、延伸に関するひずみ速度は、100%などの5%~500%の範囲であってよい。このパラグラフにおいて言及する1つ又は複数の特徴は、本発明における任意の態様及び複数の態様の任意の組合せに適用することができる。
【0103】
[0128]種々の態様においては、積層体は、空気中、70℃以下の温度において縦方向に少なくとも5倍延伸されている。
[0129]乾式プロセスにおいては、積層体は、通常は、PVA層がキャリアフィルム層と一緒に延伸されるように加熱オーブン内の延伸装置を用いて延伸する。
【0104】
[0130]種々の態様においては、本発明の積層体は水中で延伸する(水中延伸又は湿式延伸プロセスとしても知られる)。水中延伸は、好ましくは積層体をホウ酸水溶液中に浸漬することによって行う。ホウ酸を用いることによって、延伸中に与えられる張力に耐えるための若干の剛性がPVA層に与えられ、PVAの水中への溶解を阻止するための若干の耐水性が与えられる。
【0105】
[0131]ホウ酸水溶液は、水中に、ホウ酸及び/又はホウ酸塩を溶解するか、又はホウ砂のようなホウ酸を生成するホウ素化合物を溶解することによって得ることができる。溶液は、通常は、重量基準で水100部あたり1~10部のホウ酸を含む。
【0106】
[0132]種々の態様においては、延伸温度は40℃~85℃の範囲である。種々の他の態様においては、延伸温度は50℃~70℃の範囲である。これらの範囲内の温度によって、PVA層の溶解を抑止しながらPVA層を高い延伸比で延伸することが可能になる。
【0107】
[0133]種々の態様においては、積層体は、5秒~5分、又は15秒~5分の間、延伸溶液浴中に浸漬する。
[0134]湿式プロセスによって、延伸をより低い温度及びより高い延伸比で行って、優れた光学特性を有する超薄型偏光子を形成することが可能になる。例えば、湿式延伸プロセスを用いると、積層体の元の寸法に対して5.0倍以上の最大延伸比を得ることが可能である。「最大延伸比」とは、積層体が破断する直前の延伸比を意味する。例えば、これは、積層体を破断させる延伸比よりも約0.2低い値である(積層体が5.2倍の延伸比で破断する場合には、最大延伸比は5倍である)。
【0108】
[0135]種々の態様においては、積層体は、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中において、60℃以下の温度で縦方向に少なくとも6倍延伸されている。
[0136]種々の他の態様においては、積層体は、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中において、60℃以下の温度で縦方向に少なくとも7倍延伸されている。
【0109】
[0137]延伸した後、PVAフィルムは、10μm以下、7μm以下、又は更には5μm以下の厚さを有し得る。
[0138]本発明の他の形態は、薄膜偏光子を製造する方法を提供する。
【0110】
[0139]種々の態様においては、この方法は、
(i)ポリエステルベースのフィルム(II)を含む基材上にポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を形成して積層体を得る工程;
(ii)積層体を染色液と接触させて、ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を染色する工程;
(iii)ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)が延伸後に10μm以下の厚さを有するように積層体を延伸する工程;及び
(iv)基材からポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を分離して薄膜偏光子を得る工程;
を含む。
【0111】
[0140]PVAベースのフィルム(I)及びポリエステルベースのフィルム(II)の両方、及び延伸工程(iii)は、本明細書に記載する通りである。
[0141]種々の態様においては、延伸工程(iii)は、空気中、縦方向に少なくとも5倍の延伸比で、及び70℃以下の温度において行う。
【0112】
[0142]種々の態様においては、延伸工程(iii)は、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、縦方向に少なくとも6倍の延伸比で、及び60℃以下の温度において行う。
【0113】
[0143]種々の態様においては、延伸工程(iii)は、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、縦方向に少なくとも7倍の延伸比で、及び60℃以下の温度において行う。
【0114】
[0144]上述したように、種々の態様においては、積層体には、ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)とポリエステルベースのフィルム(II)の間に接着剤層を更に含ませることができる。
【0115】
[0145]種々の態様においては、この方法は、
(i)PVA層をキャリアフィルム上にキャストして積層体を形成する工程;
(ii)ダイクロイック染料、ヨウ素、及び/又はヨウ化物によってPVAフィルムを染色する工程;
(iii)ホウ酸を含む水溶液中で積層体を延伸する工程;及び
(iv)延伸の後にキャリアフィルムからPVA層を分離して偏光子を得る工程;
を含む。
【0116】
[0146]種々の態様においては、この方法は、
(i)PVAフィルムをキャリアフィルム上に積層して積層体を形成する工程;
(ii)ダイクロイック染料、ヨウ素、及び/又はヨウ化物によってPVAフィルムを染色する工程;
(iii)ホウ酸を含む水溶液中で積層体を延伸する工程;及び
(iv)延伸の後にキャリアフィルムからPVAフィルムを分離して偏光子を得る工程;
を含む。
【0117】
[0147]種々の態様においては、この方法は、
(i)キャリアフィルム上にPVAフィルムを積層するか又はPVA層をキャストして積層体を形成する工程;
(ii)ダイクロイック染料、ヨウ素、及び/又はヨウ化物によってPVAフィルム又は層を染色する工程;
(iii)積層体を空気中で延伸する工程;及び
(iv)延伸の後にキャリアフィルムからPVAフィルム又は層を分離して偏光子を得る工程;
を含む。
【0118】
[0148]これらの種々の方法の態様において、PVA層/フィルム及びキャリアフィルム、並びにキャスト/積層(i)及び延伸(ii)工程は、本明細書に記載する通りである。
【0119】
[0149]これらの種々の態様においては、PVAフィルムをヨウ素及び/又はダイクロイック染料で染色する。PVAフィルムが染料を吸着及び/又は吸収する限りにおいて、任意の染色方法を用いることができる。例えば、PVAフィルムを染色溶液中に浸漬又は沈積させることができる。或いは、染色溶液をPVAフィルム上に適用又はコートすることができる。染色溶液はまた、PVAフィルム上に噴霧することもできる。
【0120】
[0150]ヨウ素の溶解度を向上させるために、ヨウ化物をヨウ素水溶液とブレンドすることができる。好適なヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、ヨウ化チタン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0121】
[0151]種々の態様においては、染色溶液はヨウ素水溶液及び/又はダイクロイック溶液である。染色溶液における溶媒としては水が通常的に用いられるが、水との相溶性を有する任意の有機溶媒を水と混合することもできる。例えば、ヨウ素/ヨウ化物を、重量基準で水100部あたり0.1~10部の量で水とブレンドすることができる。
【0122】
[0152]染色プロセス中の染色溶液の温度は、通常は20℃~50℃の範囲である。PVAフィルム又は層を染色溶液中に浸漬する場合には、通常は5秒~5分の浸漬時間で十分である。
【0123】
[0153]種々の態様においては、PVAフィルムを染色した後、積層体を水中延伸にかける。例えば、積層体をホウ酸水溶液中で延伸することができる。
[0154]水中延伸は、基材及びPVAベースの樹脂層のガラス転移温度(約80℃である)より低い温度で行うことができる。この延伸は、結晶化を抑止しながら高い延伸比で行うことができる。而して、優れた光学特性を有する超薄型偏光フィルムを形成することが可能になる。
【0124】
[0155]種々の態様においては、PVAベースのフィルムは、延伸の後に、少なくとも42%の単軸透過率(single axis transmittance)、少なくとも99.95%の偏光度、及び/又は少なくとも2000:1のコントラスト比を有し得る。
【0125】
[0156]これらの延伸したPVAベースのフィルムは、LCD及びOLEDディスプレイのようなディスプレイデバイスにおける偏光子として特に有用である。
[0157]而して、本発明はまた、本明細書に記載する1以上の方法にしたがって製造される超薄型フィルム偏光子を含む偏光板も提供する。
【0126】
[0158]本発明はまた、本明細書に記載する偏光板を含むディスプレイデバイスも提供する。
[0159]要約すると、本発明は、乾式(空気中)プロセス及び湿式(水中)プロセスの両方でのPVAの製造を改良する。水自体もCOPEのために有効な可塑剤であるので、湿式プロセスは、乾式プロセスを凌ぐ幾つかの更なる有利性を与えることができる。
【0127】
[0160]乾式プロセスに関しては、約80℃のTgを有するAPETキャリアフィルムを用いる場合には、70℃より低い温度で延伸することは一般に可能でない。延伸中のAPETにおけるひずみ誘起結晶化によって、破断しないで高い伸びを与えることが阻まれる。しかしながら、これは本発明のCOPEフィルムを用いると達成可能である。これは、ポリエステル可塑剤はTgを約70℃の元のTgから60℃以下に低下させることができるからである。また、延伸中のCOPEフィルムにおけるひずみ誘起結晶化はあったとしても最小であり、これによってフィルムを破断することなく更に延伸及び伸長させることが可能である。
【0128】
[0161]湿式プロセスに関しては、可塑剤として水を用いてAPETのTgを60℃より低い温度に低下させることは困難である。これは、その元のTgが非常に高いからである。また、ひずみ誘起結晶化はなお問題であるので、APETフィルムの伸びは非常に抑制される。他方において、可塑剤として機能する水を加えると、本発明のCOPEにおいて必要なポリエステル可塑剤の量を減少させることができ、これにより最終のTgは、水及び可塑剤が一緒になって影響を与えて、低温延伸のための60℃以下に容易に到達させることができる。更に、可塑化COPEの伸びを妨げるひずみ誘起結晶化は、あったとしても最小である。したがって、より高い延伸比を用いて、超薄型で均一な高性能PVAフィルムを製造することができる。
【0129】
[0162]全ての疑問を取り除くために、本発明は、明確且つ疑いなく、本明細書において言及する態様、特徴、特性、パラメーター、及び/又は範囲のありとあらゆる組合せを包含し、明らかに意図し且つ開示する。即ち、本発明の主題は、本明細書において言及する態様、特徴、特性、パラメーター、及び/又は範囲の任意の組合せによって規定することができる。
【0130】
[0163]本発明の一部として具体的に指定又は特定されていない任意の成分、構成要素、又は工程は、明確に排除することができると意図される。
[0164]本発明の任意のプロセス/方法、装置、化合物、組成物、態様、又は成分は、「含む」、「~から実質的に構成される」、又は「~から構成される」の移行語、或いはこれらの用語の変形体によって修飾することができる。
【0131】
[0165]本明細書において用いる「a」及び「an」の不定冠詞は、記載が他に明確に示唆していない限りにおいては1以上を意味する。同様に、名詞の単数形は、記載が他に明確に示唆していない限りにおいてはそれらの複数形を包含し、逆もまた成り立つ。
【0132】
[0166]正確であるように試みたが、本明細書に記載する数値及び範囲は概算とみなすべきである。これらの値及び範囲は本発明によって得ようとする所望の特性、及び測定技術において見られる標準偏差に起因する変動に応じてそれらの規定値から変動する可能性がある。更に、本明細書に記載する範囲は、規定範囲内の全ての下位範囲及び値を包含すると意図され且つ具体的に企図される。例えば、50~100の範囲は、60~90、70~80等のような下位範囲を含むその範囲内の全ての値を包含すると意図される。
【0133】
[0167]実施例において報告される同じ特性又はパラメーターの任意の2つの数値は、範囲を確定することができる。これらの数値は、最も近い1000の位、100の位、10の位、整数、10、100、又は1000に丸めて範囲を規定することができる。
【0134】
[0168]特許及び非特許文献を含む本明細書において引用する全ての文献の内容は、それらの全部を参照として本明細書中に包含する。包含される主題が本明細書における開示事項と矛盾している限りにおいては、本明細書における開示事項が包含される内容に優先する。
【0135】
[0169]本発明は、本教示と合致する複数の態様の以下の実施例によって更に示すことができるが、これらの実施例は単に例示の目的で含めるものであり、発明の範囲を限定することは意図しないことが理解される。他に示していない限りにおいて、全てのパーセントは重量基準である。
【実施例
【0136】
材料:
[0170]以下の実施例において用いたアモルファスポリ(エチレンテレフタレート)(APET)は、Nitto Denko Coop.から入手した。APETは80℃のTgを有する。
【0137】
[0171]以下の実施例において用いたコポリエステル(COPE)は、Eastman Chemical CompanyからEmbrace(登録商標)LVの名称で商業的に入手できるものである。COPEは、二酸成分として100モル%のテレフタル酸残基、並びにジオール成分として65モル%のエチレングリコール残基、23モル%のシクロヘキサンジメタノール残基、及び12モル%のジエチレングリコール残基を含む。COPEは69℃のTgを有する。
【0138】
[0172]以下の実施例において用いた混和性ポリエステル可塑剤(PZ)は、Eastman Chemical CompanyからAdmex(登録商標)6995の名称で商業的に入手できるものである。PZは、二酸成分として100モル%のアジピン酸残基、並びにジオール成分として100モル%の1,2-プロパンジオール及び1,4-ブタンジオール残基を含む(M=3,217g/モル)。
【0139】
分析:
[0173]APET含有試料に関する全てのTgは、DSCにおいて、試料を20℃/分で300℃に加熱し、-20℃に急冷し、次に再び300℃に加熱することによって測定した。Tgは、窒素雰囲気中における2番目の加熱サイクルからとった。
【0140】
[0174]COPE含有試料に関する全てのTgは、DSCにおいて、試料を20℃/分で280℃に加熱し、-20℃に急冷し、次に再び280℃に加熱することによって測定した。Tgは、窒素雰囲気中における2番目の加熱サイクルからとった。
【0141】
[0175]上述したように、APETフィルムはアモルファスであり、押出中に冷却ロール上で速い急冷速度を示す。しかしながら、APETは、延伸中にひずみ誘起結晶化(時には応力誘起結晶化と呼ばれる)によって結晶化する傾向がある。このひずみ誘起結晶化により、フィルムのひずみ硬化によって延伸のために必要な力が急激に上昇し、そのためにフィルムが比較的低い延伸比において突然破断することがある。この効果を比較例1において示す。
【0142】
比較例1:
[0176]4×4インチの厚さ500μmのフィルム試料をAPETから製造した。試料を、室温(RT)において水浴中に72時間浸漬した(湿潤試料)。
【0143】
[0177]同じAPETから別の4×4インチの厚さ500μmのフィルム試料を製造した。試料を、真空下60℃において72時間乾燥した(乾燥試料)。
[0178]次に、両方の試料を、空気中、実験用フィルム延伸機(Bruckner Maschinenbau GmbH & Co. KGから)内で、APETのTgよりも15℃高い95℃において、100%のひずみ速度で縦方向に延伸した。
【0144】
[0179]図1は、湿潤フィルム試料及び乾燥フィルム試料の両方の延伸特性を示す。
[0180]図1から分かるように、乾燥APET試料は約3倍の延伸比において結晶化し始めた。ひずみ誘起結晶化のために、延伸力は劇的に増加し、試料は約4倍の延伸比において破断した。同じ温度において湿潤試料を延伸するのにはより少ない力しか要さず、湿潤試料は4倍の延伸比において破断しなかった。しかしながら、延伸のために必要な力の大きな増加によって示されるように、湿潤試料はひずみ誘起結晶化の硬化効果を回避することはできなかった。
【0145】
[0181]水によって可塑化された湿潤試料の真のTgは、実際には80℃より低い。これは、理論的には、湿潤試料はより低い温度で延伸することができることを意味する。しかしながら、湿潤APET試料の延伸温度を低下させると、乾燥APETのものと同様の力-伸び曲線が得られる。而して、ひずみ誘起結晶化は、それらの湿分含量に関係なくAPET試料の破断点伸びに悪影響を与える。
【0146】
[0182]ひずみ誘起結晶化のために、APETを5倍を超えて延伸することは不可能ではないにしても非常に困難である。超薄型PVA偏光子を製造するためには高い延伸比が必要であるので、APETはこの目的のためのキャリアフィルムとして用いるのにはあまり好適ではない材料である。
【0147】
実施例1:
[0183]4×4インチの厚さ200μmのフィルム試料をCOPEから製造した。比較例1と同じ装置及びひずみ速度を用いて、COPE試料を、そのTgよりも約10℃高い80℃において縦方向に延伸した。
【0148】
[0184]図2は、COPEフィルムの延伸特性を、比較例1からの乾燥APET試料のものと一緒に示す。
[0185]図2において見られるように、APET試料(95℃において延伸した)とは異なり、このCOPE試料は、厚さの差を考慮するために力を応力に変換した場合であっても、はるかに少ない力を用いてより低い温度で延伸することができた。COPE試料は、更に破断することなく6倍の延伸比に到達した。
【0149】
[0186]而して、本発明によって規定される組成及びTgを有する実質的にアモルファスのコポリエステルフィルムは、APETと比べてより少ない力及び最小のひずみ誘起結晶化又はひずみ硬化で、より大きな延伸比に延伸することができる。
【0150】
[0187]しかしながら、COPEフィルムを70℃以下の温度において高い延伸比に延伸することは、湿式プロセスにおいても未だ課題である。
[0188]より低い温度における延伸の困難性を解決するために、本発明は、混和性ポリエステル可塑剤(PZ)を用いてCOPEのTgを低下させており、それにより乾式プロセスにおいて70℃より低く、又は更には65℃より低い温度で延伸することができる。湿式プロセスにおけるPZと湿分の複合効果によって、本発明によるフィルムは60℃より低い温度で延伸することができる。実施例2及び図3はこの概念を示している。
【0151】
実施例2:
[0189]4×4インチの厚さ200μmのフィルム試料をCOPE単独から製造した。
[0190]4×4インチの厚さ200μmのフィルム試料を、COPE及び7重量%のPZから製造した。
【0152】
[0191]比較例1と同じ装置及びひずみ速度を用いて、両方のフィルム試料を、空気中、80℃において縦方向に延伸した。
[0192]図3は、両方のフィルムの延伸特性を示す。
【0153】
[0193]図3において見られるように、両方の試料は破断することなく6倍の延伸比まで延伸することができた。COPEの曲線は、曲線の終了部において力の小さな上昇を有する。この上昇は、応力誘起結晶化からのものではないが、高い分子配向による自己レベリング効果からのものであると断定された。延伸後、COPEフィルムを溶融し、示差走査熱量測定(DSC)によって結晶化度を測定した。COPEフィルム試料は0%の結晶化度を有していた。
【0154】
[0194]可塑化された試料はより低い延伸力しか必要でなかった。これは、更により低い温度において延伸することができることを示している。
比較例2:
APETにおける湿分吸収によるTgの低下:
[0195]APETフィルムの試料(100×100mm;厚さ200μm)を、23℃の水中に種々の長さの時間浸漬し、それらのTgを測定した。
【0155】
[0196]重量基準で0%(乾燥)から0.8%(飽和)までの湿分吸収量、及びAPET試料のそれぞれのTgを表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
[0197]図4は、表1におけるデータのx-yプロットである。
[0198]式(1)は、図4からの線形回帰である:
Tg=-20*X%+78 (1)
(式中、Tgはガラス転移温度(℃)であり、X%はポリマー中の湿分の正味の重量%である)
[0199]一般に、水はポリマーマトリクス中に非常にゆっくりと拡散し、拡散速度は試料の温度に依存する。ポリエステルマトリクス中の全湿分飽和量は、通常は1重量%より低い。フィルム製造中においては、浸漬時間は一般に用いる水浴の長さ及びライン速度によって限定される。延伸温度は、通常はフィルムの真のTgよりも約10℃高い。
【0158】
[0200]表1において見られるように、水はAPETのTgを低下させるのに有効であった。しかしながら、それを湿分で飽和した際には、フィルムの真のTgは62.5℃に過ぎなかった。而して、APETフィルムの最も低い延伸温度は、最良でも約70℃である。
【0159】
実施例3:
COPEにおける湿分吸収によるTgの低下:
[0201]COPEフィルムの試料(100×100mm;厚さ200μm)を、23℃の水中に種々の長さの時間浸漬し、それらのTgを測定した。
【0160】
[0202]重量基準で0%(乾燥)から0.84%(飽和)までの湿分吸収量、及びCOPE試料のそれぞれのTgを表2に示す。
【0161】
【表2】
【0162】
[0203]図5は、表2におけるデータのx-yプロットである。
[0204]式(2)は、図5からの線形回帰である:
Tg=-23*X%+68 (2)
(式中、Tgはガラス転移温度(℃)であり、X%はポリマー中の湿分の正味の重量%である)
[0205]表1及び2から分かるように、COPEはAPETよりも僅かにより多くの水を吸収した。湿分は、COPEのTgを低下させる(式2において約-23の傾き)のに、APETのもの(式1において約-20の傾き)よりも有効であった。それを湿分で飽和した際には、COPEのTgは50℃より低かった。したがって、COPEフィルムは、高い湿分吸収量を有している場合には60℃より低い温度で延伸することができる。
【0163】
実施例4:
COPEにおける可塑剤によるTgの低下:
[0206]COPEを10重量%までのPZとブレンドし、それらのTgを測定した。
【0164】
[0207]COPE試料中のPZの量、及びそれらのそれぞれのTgを表3に示す。
【0165】
【表3】
【0166】
[0208]表3から分かるように、10重量%のPZを装填した際には、COPEのTgは40℃より低かった。したがって、COPEは、十分な可塑剤を含む場合には60℃より低い温度で延伸することができる。
【0167】
[0209]図6は、表3におけるデータのx-yプロットである。
[0210]式(3)は、図6からの線形回帰である:
Tg=-3*PZ%+68 (3)
(式中、Tgはガラス転移温度(℃)であり、PZ%はポリマー中の可塑剤の正味の重量%である)
[0211]COPE中に可塑剤(PZ)を加えることによるTgの低下は、式(3)を用いて概算することができる。
【0168】
[0212]湿式延伸プロセスにおける可塑化COPEフィルムに関しては、式(2)及び(3)組み合わせて式(4)にしてCOPEフィルムのTgを制御することができる。
Tg=(-23*X%)+(-3*PZ%)+68 (4)
[0213]図7は、式(4)を用いた計算結果のグラフである。これは、その湿分含量及び可塑剤の量に基づくCOPEフィルムのTgを示している。これは、COPE中の湿分含量が測定されている場合に所望のTgを達成するための指針を与えるので、これにしたがってキャリアフィルム製造中の可塑剤含量を調節することができる。
【0169】
[0214]一般に、COPEフィルムは吸湿性であり;それらは室温において周囲環境から湿分を吸収する傾向がある。したがって、フィルムは一定の温度及び相対湿度(RH%)を有する制御環境中に貯蔵して、初期湿分含量を一定にすることが望ましい場合がある。初期フィルム湿分含量が一定でない場合には、図7を用いて、その特定の湿分及び可塑剤含量で安定したPVA製品を製造するために最良の延伸温度を決定することができる。
【0170】
[0215]図8~10は上記の概念を示す。図8は、室温及び約50%RHにおいて貯蔵したCOPEフィルム(PZなし)の、60℃及び0%RHにおいて4時間乾燥した際の重量損失を示す。フィルムは、当初は約0.18重量%の湿分を含んでいた。図7から、4重量%の可塑剤を有するCOPEフィルムの真のTgは約51.4℃であるので、乾式プロセスにおいて60℃の延伸温度を用いることができる。
【0171】
[0216]この決定は、湿式延伸プロセスに関してはより困難である可能性がある。
[0217]図9は、3つの異なる温度(25℃、40℃、及び60℃)並びに90%RHにおける乾燥COPEフィルムの湿分吸収速度を示す。
【0172】
[0218]図10は、図9からの3つの異なる温度において2.5時間後の乾燥COPEフィルムの湿分吸収量を示す。
[0219]図9によれば、25℃及び90%RHにおいて、COPEフィルムは2時間で約0.3重量%の湿分を獲得する。しかしながら、製造においては、実際の水への暴露時間は遙かにより短く;水浴の長さ及びライン速度によって制約される。幸いなことに、図9及び10は、水温を上昇させることによって水吸収を加速させることができることを示している。
【0173】
[0220]湿式プロセスのために最適なCOPEキャリアフィルムを開発することは、貯蔵中の平衡湿分及び製造ライン中の更なる湿分吸収を求めるために、図9におけるデータを用いる幾つかの反復法を伴う。例えば、制御環境中に貯蔵した場合のCOPEフィルム中の平衡含水量は0.2重量%であり、60℃の所望の延伸温度及びライン速度下での製造ラインからの更なる湿分吸収量は0.1重量%であった。COPEフィルム中の全湿分は0.3重量%になる。図5又は式(2)から、0.3重量%の湿分含量を有するCOPEのTgは約60℃である。このTgは、60℃において延伸するためには十分には低くない。通常は、キャリアフィルムはそれらのTgよりも10℃高い温度で延伸するので、COPEの真のTgは、60℃で延伸するためには50℃以下であることが必要であろう。図7において見られるように、0.3重量%の湿分含量及び50℃のTgを有するフィルムのためには、COPEは約4重量%の可塑剤を必要とするであろう。
【0174】
比較例3及び実施例5:
[0221]比較例3は、150μmの厚さを有する4×4インチのAPETフィルムを用いた。
【0175】
[0222]実施例5は、200μmの厚さを有する4×4インチのCOPEフィルムを用いた。
[0223]両方のフィルム試料を、Brucknerフィルム延伸機及び100%のひずみ速度を用いて、空気中で縦方向に延伸した。両方のフィルムの延伸温度、延伸比、及び結果を表5に報告する。
【0176】
【表5】
【0177】
[0224]表5において見られるように、APETフィルム試料は、それぞれの延伸比において60℃及び70℃の延伸温度で不合格であった。APET試料は、80℃及び4.5倍以下の延伸比においては限られた成功しか収めなかった。COPEフィルム試料は、70℃及び4.5倍以下の延伸比において限られた成功しか収めなかったが、80℃において6倍の延伸比で合格した。
【0178】
[0225]キャリアフィルムは通常はそれらの真のTgよりも10℃高い温度で延伸するので、空気中における不安のない延伸温度は、APETに関しては約90℃、COPEに関しては約80℃である。しかしながら、APETフィルムに関する最大延伸比は、図2及び表5において示されるように、ひずみ誘起結晶化のために低い。他方においてCOPEフィルムは、図2及び表5において示されるように、空気中80℃において6倍まで、ひずみ誘起結晶化があったとしても最小で延伸することができる。
【0179】
実施例6~8:
可塑剤を有するCOPEフィルム:
[0226]実施例6は、4重量%のPZを含む4×4インチのCOPEフィルム(厚さ200μm)(Tg=54℃)を用いた。
【0180】
[0227]実施例7は、5.5重量%のPZを含む4×4インチのCOPEフィルム(厚さ200μm)(Tg=49℃)を用いた。
[0228]実施例8は、7重量%のPZを含む4×4インチのCOPEフィルム(厚さ200μm)(Tg=46℃)を用いた。
【0181】
[0229]全てのフィルム試料を、Brucknerフィルム延伸機及び100%のひずみ速度を用いて、空気中、55℃及び60℃において縦方向に延伸した。
[0230]結果を表6に報告する。
【0182】
【表6】
【0183】
[0231]表6において見られるように、全ての試料は、空気中60℃において5倍まで上首尾に延伸された。
[0232]湿式延伸プロセスを用いた場合には、これらのフィルムを60℃において6倍又は7倍のような更により高い延伸比に延伸することが可能である。
【0184】
実施態様の例:
[0233]1.
(A)コポリエステル;及び
(B)900~12,000g/モルの重量平均分子量(M)を有するポリエステル可塑剤;
を含むブレンドから製造されるポリエステルベースのフィルムであって、
前記ポリエステルベースのフィルムは水中で延伸されており;
前記コポリエステル(A)は、
(a)少なくとも50モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、又はこれらの混合物の残基を含む二酸成分;及び
(b)少なくとも80モル%の、2~10個の炭素原子を含むジオールの残基を含むジオール成分;
を含み;
前記二酸成分は前記コポリエステル中の全二酸残基の100モル%を基準とし、前記ジオール成分は前記コポリエステル中の全ジオール残基の100モル%を基準としており;
前記コポリエステル(A)フィルムを、空気中、前記コポリエステル(A)のガラス転移温度よりも10~15℃高い温度において縦方向に延伸する場合に、前記コポリエステル(A)単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力は200%未満増加し;そして
前記ポリエステル可塑剤(B)は、
(a)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び
(b)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;
を含む上記ポリエステルベースのフィルム。
【0185】
[0234]2.前記力が150%未満、又は100%未満、又は50%未満増加する、実施態様1にしたがうポリエステルベースのフィルム。
[0235]3.(I)前記コポリエステル(A)が、(i)少なくとも約80モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、又はこれらの混合物の残基を含む二酸成分;及び(ii)少なくとも80モル%の、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、又はこれらの混合物の残基を含むジオール成分;を含むか;或いは
(II)前記コポリエステル(A)が、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)少なくとも80モル%のエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基を含むジオール成分;を含むか;或いは
(III)前記コポリエステル(A)が、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)17~70モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基及び30~83モル%のエチレングリコールの残基を含むジオール成分;を含むか;或いは
(IV)前記コポリエステル(A)が、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)17~35モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールの残基及び65~83モル%のエチレングリコールの残基を含むジオール成分;を含むか;或いは
(V)前記コポリエステル(A)が、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)少なくとも80モル%のエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びジエチレングリコールの残基を含むジオール成分;を含むか;或いは
(VI)前記コポリエステル(A)が、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)少なくとも80モル%のエチレングリコール及びネオペンチルグリコールの残基を含むジオール成分;を含むか;或いは
(VII)前記コポリエステル(A)が、(i)少なくとも80モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分;並びに(ii)少なくとも80モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールの残基を含むジオール成分;を含む、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
【0186】
[0236]4.(I)前記ポリエステル可塑剤(B)が、フタル酸、アジピン酸、又はこれらの混合物の残基;並びに1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、又はこれらの混合物の残基;を含むか;或いは
(II)前記ポリエステル可塑剤(B)が、フタル酸の残基;並びに1,2-プロパンジオール及び1,4-ブタンジオールの残基;を含むか;或いは
(III)前記ポリエステル可塑剤(B)が、フタル酸及びアジピン酸の残基;並びに1,2-プロパンジオール及び1,3-ブタンジオールの残基;を含むか;或いは
(IV)前記ポリエステル可塑剤(B)が、アジピン酸の残基;並びに1,2-プロパンジオール及び1,4-ブタンジオールの残基;を含むか;或いは
(V)前記ポリエステル可塑剤(B)が、アジピン酸の残基;及び1,3-ブタンジオールの残基;を含む、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
【0187】
[0237]5.前記可塑剤(B)が、900~6,000g/モル、又は900~5,000g/モル、又は900~4,000g/モル、又は1,000~12,000g/モル、又は1,000~6,000g/モル、又は1,000~5,000g/モル、又は1,000~4,000g/モル、又は2,000~12,000g/モル、又は2,000~6,000g/モル、又は2,000~5,000g/モル、又は2,000~4,000g/モルのMを有する、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
【0188】
[0238]6.前記コポリエステル(A)が、少なくとも5分、少なくとも8.6分、少なくとも12分、又は少なくとも30分の最小半結晶化時間(t1/2分)を有する、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
【0189】
[0239]7.前記ポリエステルベースのフィルムの全重量を基準として0.2~0.3重量%の湿分を含む、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
【0190】
[0240]8.前記ブレンドが70℃未満のガラス転移温度(T)を有する、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
[0241]9.前記ブレンドが60℃以下のガラス転移温度(T)を有する、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
【0191】
[0242]10.ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中で延伸されている、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
[0243]11.60℃以下の温度において縦方向に少なくとも5倍延伸されている、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
【0192】
[0244]12.60℃以下の温度において縦方向に少なくとも7倍延伸されている、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
[0245]13.前記ブレンドが、前記ブレンドの全重量を基準として3~8重量%のポリエステル可塑剤(B)を含む、上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム。
【0193】
[0246]14.(I)ポリビニルアルコールベースのフィルム;及び
(II)上記の実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム(但し、前記ポリエステルベースのフィルムは水中で延伸されている);
を含む積層体。
【0194】
[0247]15.空気中、70℃以下の温度において、縦方向に少なくとも5倍延伸されている、実施態様14にしたがう積層体。
[0248]16.ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、60℃以下の温度において、縦方向に少なくとも6倍延伸されている、上記の積層体の実施態様のいずれかにしたがう積層体。
【0195】
[0249]17.ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、60℃以下の温度において、縦方向に少なくとも7倍延伸されている、上記の積層体の実施態様のいずれかにしたがう積層体。
【0196】
[0250]18.前記ポリビニルアルコールベースのフィルムが、延伸後に10μm以下の厚さを有する、上記の積層体の実施態様のいずれかにしたがう積層体。
[0251]19.前記ポリビニルアルコールベースのフィルムが、延伸後に7μm以下の厚さを有する、上記の積層体の実施態様のいずれかにしたがう積層体。
【0197】
[0252]20.前記ポリビニルアルコールベースのフィルムが、延伸後に5μm以下の厚さを有する、上記の積層体の実施態様のいずれかにしたがう積層体。
[0253]21.前記ポリビニルアルコールベースのフィルムが、延伸後に、少なくとも42%の単軸透過率、少なくとも99.95%の偏光度、及び少なくとも2000:1のコントラスト比を有する、上記の積層体の実施態様のいずれかにしたがう積層体。
【0198】
[0254]22.前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)と前記ポリエステルベースのフィルム(II)の間に接着剤層を更に含む、上記の積層体の実施態様のいずれかにしたがう積層体。
【0199】
[0255]23.薄膜偏光子を製造する方法であって、
(i)上記のポリエステルベースのフィルムの実施態様のいずれかにしたがうポリエステルベースのフィルム(II)を含む基材上にポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を形成して、積層体を得ること;
(ii)前記積層体を染色液と接触させて、前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を染色すること;
(iii)前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)が延伸後に10μm以下の厚さを有するように、前記積層体を延伸すること;及び
(iv)前記基材から前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を分離して、薄膜偏光子を得ること;
を含む上記方法。
【0200】
[0256]24.前記延伸工程(iii)を、空気中、70℃以下の温度において、縦方向に少なくとも5倍の延伸比で行う、実施態様23にしたがう方法。
[0257]25.前記延伸工程(iii)を、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、60℃以下の温度において、縦方向に少なくとも6倍の延伸比で行う、上記の方法の実施態様のいずれかにしたがう方法。
【0201】
[0258]26.前記延伸工程(iii)を、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、60℃以下の温度において、縦方向に少なくとも7倍の延伸比で行う、上記の方法の実施態様のいずれかにしたがう方法。
【0202】
[0259]27.前記積層体が、前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)と前記ポリエステルベースのフィルム(II)の間に接着剤層を更に含む、上記の方法の実施態様のいずれにしたがう方法。
【0203】
[0260]28.上記の方法の実施態様のいずれかにしたがって製造される薄膜偏光子を含む偏光板。
[0261]29.実施態様28の偏光板を含むディスプレイ装置。
【0204】
[0262]30.
(A)コポリエステル;及び
(B)900~12,000g/モルの重量平均分子量(M)を有するポリエステル可塑剤;
を含むブレンドから製造されるポリエステルベースのフィルムであって、
前記ポリエステルベースのフィルムは水中で延伸されており;
前記コポリエステル(A)は、
(a)少なくとも50モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、又はこれらの混合物の残基を含む二酸成分;及び
(b)少なくとも80モル%の、2~10個の炭素原子を含むジオールの残基を含むジオール成分;
を含み;
前記二酸成分は前記コポリエステル中の全二酸残基の100モル%を基準とし、前記ジオール成分は前記コポリエステル中の全ジオール残基の100モル%を基準としており;
前記ポリエステル可塑剤(B)は、
(a)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び
(b)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;
を含み;
前記コポリエステル(A)は、次の特徴:
(I)前記コポリエステル(A)単独のフィルムは、Tg+10℃の温度及び100%のひずみ速度において縦方向に5倍まで乾式延伸した際に、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、又は1%以下の結晶化度を有し得、ここでTgは前記コポリエステル(A)のガラス転移温度である;
(II)前記コポリエステル(A)単独の厚さ200μmのフィルムをTg+10℃の温度において縦方向に2倍から5倍に乾式延伸するのに必要な力は、30N以下、20N以下、又は10N以下増加する;
(III)前記コポリエステル(A)単独のフィルムは、延伸後に、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、又は1%以下の結晶化度を有する;
(IV)前記コポリエステル(A)は、少なくとも5分、少なくとも7分、少なくとも8.6分、少なくとも10分、少なくとも12分、少なくとも30分、又は無限の最小半結晶化時間を有する;及び
(V)前記コポリエステル(A)は、40℃~70℃、40℃~60℃、50℃~70℃、50℃~65℃、又は50℃~60℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する;
の1以上によって更に特徴付けることができる、上記ポリエステルベースのフィルム。
【0205】
[0263]31.その中の実施態様1を実施態様30に置き換えた、実施態様2~29のいずれか。
[0264]その特定の態様を参照して本発明の主題を詳細に記載したが、本発明の精神及び範囲内で変更及び修正を行うことができることが理解される。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1](A)コポリエステル;及び
(B)900~12,000g/モルの重量平均分子量(M )を有するポリエステル可塑剤;
を含むブレンドから製造されるポリエステルベースのフィルムであって、
前記ポリエステルベースのフィルムは水中で延伸されており;
前記コポリエステル(A)は、
(a)少なくとも50モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、又はこれらの混合物の残基を含む二酸成分;及び
(b)少なくとも80モル%の、2~10個の炭素原子を含むジオールの残基を含むジオール成分;
を含み;
前記二酸成分は前記コポリエステル中の全二酸残基の100モル%を基準とし、前記ジオール成分は前記コポリエステル中の全ジオール残基の100モル%を基準としており;
前記コポリエステル(A)フィルムを、空気中、前記コポリエステル(A)のガラス転移温度よりも10~15℃高い温度において縦方向に延伸する場合に、前記コポリエステル(A)単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力は200%未満増加し;そして
前記ポリエステル可塑剤(B)は、
(a)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び
(b)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;
を含む上記ポリエステルベースのフィルム。
[2]前記コポリエステル(A)が、少なくとも8.6分の最小半結晶化時間(t 1/2 分)を有する、[1]に記載のポリエステルベースのフィルム。
[3]前記ポリエステルベースのフィルムの全重量を基準として0.2~0.3重量%の湿分を含む、[1]に記載のポリエステルベースのフィルム。
[4]前記ブレンドが70℃以下のガラス転移温度(T )を有するか、又は前記ブレンドが60℃以下のガラス転移温度(T )を有する、[1]に記載のポリエステルベースのフィルム。
[5]ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中で延伸されている、[1]に記載のポリエステルベースのフィルム。
[6]60℃以下の温度において縦方向に少なくとも5倍延伸されているか、又は60℃以下の温度において縦方向に少なくとも7倍延伸されている、[1]に記載のポリエステルベースのフィルム。
[7]前記ブレンドが、前記ブレンドの全重量を基準として3~8重量%のポリエステル可塑剤(B)を含む、[1]に記載のポリエステルベースのフィルム。
[8](I)ポリビニルアルコールベースのフィルム;及び
(II)ポリエステルベースのフィルム;
を含む積層体であって、
前記ポリエステルベースのフィルム(II)は、
(A)コポリエステル;及び
(B)900~12,000g/モルの重量平均分子量(M )を有するポリエステル可塑剤;
を含むブレンドから製造され;
前記コポリエステル(A)は、
(a)少なくとも50モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、又はこれらの混合物の残基を含む二酸成分;及び
(b)少なくとも80モル%の、2~10個の炭素原子を含むジオールの残基を含むジオール成分;
を含み;
前記二酸成分は前記コポリエステル中の全二酸残基の100モル%を基準とし、前記ジオール成分は前記コポリエステル中の全ジオール残基の100モル%を基準としており;
前記コポリエステル(A)フィルムを、空気中、前記コポリエステル(A)のガラス転移温度よりも10~15℃高い温度において縦方向に延伸する場合に、前記コポリエステル(A)単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力は200%未満増加し;;そして
前記ポリエステル可塑剤(B)は、
(a)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び
(b)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;
を含む上記積層体。
[9]空気中、70℃以下の温度において、縦方向に少なくとも5倍延伸されているか;又は、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、60℃以下の温度において、縦方向に少なくとも6倍延伸されているか;又は、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、60℃以下の温度において、縦方向に少なくとも7倍延伸されている、[8]に記載の積層体。
[10]前記ポリビニルアルコールベースのフィルムが、延伸後に10μm以下の厚さを有するか;又は、前記ポリビニルアルコールベースのフィルムが、延伸後に7μm以下の厚さを有するか;又は前記ポリビニルアルコールベースのフィルムが、延伸後に5μm以下の厚さを有する、[8]に記載の積層体。
[11]前記ポリビニルアルコールベースのフィルムが、延伸後に、少なくとも42%の単軸透過率、少なくとも99.95%の偏光度、及び少なくとも2000:1のコントラスト比を有する、[8]に記載の積層体。
[12]前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)と前記ポリエステルベースのフィルム(II)の間に接着剤層を更に含む、[8]に記載の積層体。
[13]薄膜偏光子を製造する方法であって、
(i)ポリエステルベースのフィルム(II)を含む基材上にポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を形成して、積層体を得ること;
(ii)前記積層体を染色液と接触させて、前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を染色すること;
(iii)前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)が延伸後に10μm以下の厚さを有するように、前記積層体を延伸すること;及び
(iv)前記基材から前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)を分離して、薄膜偏光子を得ること;
を含み;
前記ポリエステルベースのフィルム(II)は、
(A)コポリエステル;及び
(B)900~12,000g/モルの重量平均分子量(M )を有するポリエステル可塑剤;
を含むブレンドから製造され;
前記コポリエステル(A)は、
(a)少なくとも50モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、又はこれらの混合物の残基を含む二酸成分;及び
(b)少なくとも80モル%の、2~10個の炭素原子を含むジオールの残基を含むジオール成分;
を含み;
前記二酸成分は前記コポリエステル中の全二酸残基の100モル%を基準とし、前記ジオール成分は前記コポリエステル中の全ジオール残基の100モル%を基準としており;
前記コポリエステル(A)フィルムを、空気中、前記コポリエステル(A)のガラス転移温度よりも10~15℃高い温度において縦方向に延伸する場合に、前記コポリエステル(A)単独のフィルムを2倍から5倍に延伸するのに必要な力は200%未満増加し;そして
前記ポリエステル可塑剤(B)は、
(a)2~8個の炭素原子を有するジオールの残基を含むジオール成分;及び
(b)4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸の残基を含む二酸成分;
を含む上記方法。
[14]前記延伸工程(iii)を、空気中、70℃以下の温度において、縦方向に少なくとも5倍の延伸比で行うか;又は、前記延伸工程(iii)を、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、60℃以下の温度において、縦方向に少なくとも6倍の延伸比で行うか;又は、前記延伸工程(iii)を、ホウ酸及び場合によっては染料を含む水溶液中、60℃以下の温度において、縦方向に少なくとも7倍の延伸比で行う、[13]に記載の方法。
[15]前記積層体が、前記ポリビニルアルコールベースのフィルム(I)と前記ポリエステルベースのフィルム(II)の間に接着剤層を更に含む、[13]に記載の方法。
[16][13]に記載の方法にしたがって製造される薄膜偏光子を含む偏光板。
[17][16]に記載の偏光板を含むディスプレイ装置。
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