(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】有機ELデバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 50/17 20230101AFI20230614BHJP
H10K 50/155 20230101ALI20230614BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230614BHJP
【FI】
H10K50/17
H10K50/155
H10K50/10
(21)【出願番号】P 2020062851
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513325269
【氏名又は名称】双葉モバイルディスプレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 裕二
(72)【発明者】
【氏名】大友 豊
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-196140(JP,A)
【文献】国際公開第2006/085615(WO,A1)
【文献】特表2016-500917(JP,A)
【文献】国際公開第2020/027262(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H05B 44/00
H05B 45/60
H10K 50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、陽極、有機EL材料層及び陰極を有する有機EL素子が配置された有機ELデバイスであって、
前記有機EL材料層が、前記陽極から近い方から順に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層が並んだ積層構造を有し、
前記ホール注入層が、pドーパントを含むホール注入材料で構成された第1のホール注入層と、該第1のホール注入層と前記陽極との間に介在するとともにノンドープのホール注入材料で構成された第2のホール注入層とを含み、
前記第1のホール注入層は、前記第2のホール注入層を構成する前記ホール注入材料にpドーパントがドープされた材料で構成されており、
前記第2のホール注入層の厚さが、前記第1のホール注入層の厚さより薄い、有機ELデバイス。
【請求項2】
前記第2のホール注入層の厚さが20nm以下である、請求項
1に記載の有機ELデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に、陽極、有機EL材料層及び陰極を有する有機EL素子が配置された有機ELデバイスが知られている。下記特許文献1には、有機EL素子の駆動電圧を低下させるために、ホール注入層にアクセプタ材料をドープする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-243044号公報
【文献】特開2019-083086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホール注入層にアクセプタ材料をドープした場合、駆動電圧が低下すると同時にリーク耐性も低下してしまい、高い絶縁耐性を有する有機ELデバイスを実現することが難しかった。
【0005】
発明者らは、鋭意研究の末、駆動電圧を低減しつつ、リーク耐性の向上を図ることができる技術を新たに見出した。
【0006】
本発明は、駆動電圧の低減およびリーク耐性の向上が図られた有機ELデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る有機ELデバイスは、基板上に、陽極、有機EL材料層及び陰極を有する有機EL素子が配置された有機ELデバイスであって、有機EL材料層が、陽極から近い方から順に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層が並んだ積層構造を有し、ホール注入層が、pドーパントを含むホール注入材料で構成された第1のホール注入層と、該第1のホール注入層と陽極との間に介在するとともにノンドープのホール注入材料で構成された第2のホール注入層とを含む。
【0008】
発明者らは、pドーパントを含むホール注入材料で構成された第1のホール注入層と陽極との間に、ノンドープのホール注入材料で構成された第2のホール注入層を介在させることで、有機ELデバイスの駆動電圧を低減しつつリーク耐性を向上させることができることを新たに見出した。
【0009】
他の形態に係る有機ELデバイスは、第2のホール注入層の厚さが、第1のホール注入層の厚さより薄い。
【0010】
他の形態に係る有機ELデバイスは、第2のホール注入層の厚さが20nm以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動電圧の低減およびリーク耐性の向上が図られた有機ELデバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る有機ELデバイスを示す模式平面図である。
【
図2】
図1に示す有機ELデバイスのII-II線断面図である。
【
図3】
図1に示す有機ELデバイスのIII-III線断面図である。
【
図4】有機EL素子の部分を拡大した模式断面図である。
【
図5】
図4の有機EL素子の積層構造を説明するための図である。
【
図6】素子破壊電圧とホール注入層膜厚との関係を示したグラフである。
【
図7】第2のホール注入層の膜厚と色度との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
実施形態では、パッシブマトリックス型有機ELディスプレイパネルに用いられる有機ELデバイス1を例に説明する。パッシブマトリックス型有機ELディスプレイの画素数としては、例えば256×16ドットとすることができる。
【0015】
図1~3に示すように、本実施形態の有機ELデバイス1は、基板2と、有機EL素子3と、構造体5と、絶縁層6と、無機層7と、保護樹脂8と、保護フィルム9と、配線部10とを備えて構成されている。なお、
図1では、保護樹脂8及び保護フィルム9の図示を省略している。
【0016】
基板2は、有機EL素子3、配線部10等が設けられる素子基板である。基板2は、例えば、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、又は可撓性を有する基板(例えば、プラスチック基板等)である。基板2は、例えば、透光性を有している。基板2は、例えば、矩形の板状に形成されている。
【0017】
有機EL素子3は、電流が供給されることによって光を発生する素子である。本実施形態では、有機EL素子3は、基板2に直接接するように、基板2上に配置されている。
【0018】
有機EL素子3は、
図4に示すように、基板2側から順に積層された陽極11、有機EL材料層12、及び陰極13を有している。
【0019】
陽極11は、透明導電層で構成されている。陽極11を構成する材料としては、例えばITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛:登録商標)等の透光性を有する導電材料が用いられる。陽極11は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法等のPVD法(物理気相成長法)によって基板2上に成膜した透明導電膜をパターニングすることによって形成され得る。
【0020】
有機EL材料層12は、複数層で構成された積層構造を有する。有機EL材料層12は、具体的には、
図5に示すように、陽極11から近い方から順に、ホール注入層21、ホール輸送層22、発光層23、ホールブロック層24、電子輸送層25、電子注入層26が並ぶ積層構造を有する。ホールブロック層24は、電子輸送層25の一部として取り扱うこともできる。有機EL材料層12の各層は、例えば、PVD法によって形成され得る。
【0021】
陰極13は、例えば、アルミニウム、銀等の金属で構成された金属電極膜である。陰極13を構成する金属材料には、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)が含まれてもよく、IZO、ITO等の透光性を有する材料が含まれてもよい。また、陰極13は、これらの材料が積層されたものであってもよい。陰極13は、例えば、抵抗加熱蒸着法、誘導加熱蒸着法、電子ビーム加熱蒸着法、PVD法によって形成され得る。
【0022】
構造体5は、隣り合う有機EL素子3の間に配置されて、基板2に垂直な方向Dに延びている。構造体5は、隣り合う有機EL素子3の陰極13同士を分離するカソードセパレータとしても機能する。構造体5は、隣り合う有機EL素子3の陰極13同士を分離するカソードセパレータとしても機能する。構造体5は、頂面5aが底面5bよりも大きい。頂面5aは、構造体5の基板2とは反対側の面であり、底面5bは、構造体5の基板2側の面である。具体的には、構造体5は、頂面5aから底面5bに向けて徐々に細くなる断面逆テーパ状に形成されている。構造体5は、例えば、フォトリソグラフィー法によって形成される。
【0023】
絶縁層6は、基板2と構造体5との間に配置されている。絶縁層6は、無機絶縁膜または有機絶縁膜で構成されている。絶縁層6が無機絶縁膜で構成されている場合、絶縁層6は、例えば、主成分として、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素又はアルミナ等を含む。この場合、絶縁層6は、例えば、スパッタ法、原子層堆積(Atomic Layer Deposition)法、又はプラズマCVD(PlasmaEnhanced Chemical Vapor Deposition)法によって形成することができる。絶縁層6が有機絶縁膜で構成されている場合、絶縁層6は、例えば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等で構成され得る。この場合、絶縁層6は、例えば、フォトリソグラフィー法によって形成することができる。絶縁層6を構成する材料は、基板2を構成する材料と同じであってもよい。
【0024】
無機層7は、有機EL素子3及び構造体5を覆う。無機層7は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。無機層7は、例えば、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、チタニア、又は酸化ジルコニウムを主成分とする無機材料を含む。無機層7は、例えば、スパッタ法、プラズマCVD法、光CVD(PhotoChemical Vapor Deposition)法、触媒化学気相成長(Cat-CVD:Catalytic ChemicalVapor Deposition)法、又は原子層堆積法によって形成される。
【0025】
保護樹脂8は、無機層7上に配置されて、機械的なダメージに対する耐性を向上させるための樹脂である。保護樹脂8としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂を用いることができる。この中でも、シリコーン樹脂は、特に衝撃機能に優れ、機械的なダメージに対する耐性が高いため、好ましい。保護樹脂8は、例えば、インクジェット法、ディスペンス法によって形成される。
【0026】
保護フィルム9は、無機層7又は保護樹脂8上に配置されて、機械的なダメージに対する耐性を向上させるためのフィルムである。保護フィルム9としては、例えば、PETフィルム等の樹脂フィルム、アルミ箔、銅箔、ステンレススチール箔等の金属箔などを用いることができる。
【0027】
配線部10は、有機EL素子3から引き出された引き出し配線である。配線部10は、例えば、モリブデン合金、アルミニウム合金、及びモリブデン合金がこの順に積層された積層膜により形成される。
【0028】
ここで、有機EL材料層12のホール注入層21は、
図5に示すように、第1のホール注入層21Aと第2のホール注入層21Bとにより構成されている。第2のホール注入層21Bは、第1のホール注入層と陽極11との間に介在し、かつ、陽極11に直接接している。
【0029】
第1のホール注入層21Aは、アミン系化合物からなるホール注入材料で構成されている。ホール注入材料のアミン系化合物は、たとえば、スターバースト型トリフェニルアミン誘導体(m-MTDADA、NATA、1-TNATA、2-TNATA)、または、銅フタロシアニン(CuPc)である。ホール注入材料のアミン系化合物は、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)ベンジジン(NPB)、トリフェニルアミン誘導体(TPD、β-NPD、MeO-TPD、TAPC)、フェニルアミン4量体(TPTE)、スターバースト型トリフェニルアミン誘導体(m-MTDADA、NATA、1-TNATA、2-TNATA)、スピロ型トリフェニルアミン誘導体(Spiro-TPD、Spiro-NPD、Spiro-TAD)、ルブレン、ペンタセン、銅フタロシアニン(CuPc)、チタニウムオキサイドフタロシアニン(TiOPc)及びアルファ-セキシチオフェン(α-6T)からなる群より選ばれる少なくとも一つで構成され得る。
【0030】
第1のホール注入層21Aを構成するホール注入材料は、ホール輸送層に用いられるホール輸送材料であってもよい。この場合、第1のホール注入層21Aは、たとえば、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)ベンジジン(NPB)、または、トリフェニルアミン誘導体(TPD、βNPD、MeOTPD、TAPC)等のアミン系化合物で構成される。
【0031】
第1のホール注入層21Aを構成するホール注入材料には、pドーパントのアクセプタ材料がドープされている。アクセプタ材料は、例えば、F4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)、F4DCNQI(N,N’-ジシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-キノンジイミン)、Cl2DCNQI(N,N’-ジシアノ-2,5-ジクロロ-1,4-キノンジイミン)、Cl2F2DCNQI(N,N’-ジシアノ-2,5-ジクロロ-3,6-ジフルオロ-1,4-キノンジイミン)、F6DCNNQI(N,N’-ジシアノ-2,3,5,6,7,8-ヘキサフルオロ-1,4-ナフトキノンジイミン)、CN4TTAQ(1,4,5,8-テトラヒドロ-1,4,5,8-テトラチア-2,3,6,7-テトラシアノアントラキノン)などを含む。
【0032】
第1のホール注入層21Aは、一例として、ホール注入材料98wt%に、アクセプタ材料2wt%を添加(共蒸着)して得られる。第1のホール注入層21Aの膜厚は、40~100nmであってもよく、50~65nmであってもよい。
【0033】
第2のホール注入層21Bは、第1のホール注入層21Aと同様のアミン系化合物からなるホール注入材料で構成され得る。第2のホール注入層21Bを構成するホール注入材料は、第1のホール注入層21Aを構成するホール注入材料と同じであってもよく、異なってもよい。
【0034】
第2のホール注入層21Bを構成するホール注入材料には、上述のpドーパントはドープされておらず、いわゆるノンドープ層である。第2のホール注入層21Bは、例えば、真空蒸着法により成膜され得る。
【0035】
第2のホール注入層21Bの膜厚は、第1のホール注入層21Aの膜厚より薄くなるように設計され得る。第2のホール注入層21Bの膜厚は、5~20nmであってもよく、5~10nmであってもよい。
【0036】
ホール輸送層22は、アミン系化合物からなるホール輸送材料で構成されている。ホール注入層21がホール輸送材料で構成されている場合、ホール輸送層22を構成するホール輸送材料とホール注入層21を構成するホール輸送材料とは同じであってもよく、異なってもよい。
【0037】
発光層23は、陰極13側に位置する青色発光層23Aと、陽極11側に位置する黄色発光層23Bの2層で構成されている。青色発光層23Aは、電子輸送ホスト材またはホール輸送ホスト材と、青色発光材とを含んで構成されている。黄色発光層23Bは、電子輸送ホスト材またはホール輸送ホスト材と、黄色発光材とを含んで構成されている。発光層23は、複数層構造であってもよく、単層構造であってもよい。
【0038】
上述したとおり、有機ELデバイス1には、基板2上に、陽極11、有機EL材料層12及び陰極13を有する有機EL素子3が複数配置されている。各有機EL素子3の有機EL材料層12は、陽極11から近い方から順に、ホール注入層21、ホール輸送層22、発光層23、電子輸送層25、電子注入層26が並んだ積層構造を有する。ホール注入層21は、pドーパントを含むホール注入材料で構成された第1のホール注入層21Aと、第1のホール注入層21Aと陽極11との間に介在するとともにノンドープのホール注入材料で構成された第2のホール注入層21Bとを含んでいる。
【0039】
発明者らは、有機ELデバイスの駆動電圧とリーク耐性について研究を重ね、第1のホール注入層21Aと陽極11との間に第2のホール注入層21Bを介在させることで、駆動電圧を低減しつつリーク耐性を向上させることができるとの知見を得た。
【0040】
そこで、発明者らは、第1のホール注入層21Aと陽極11との間に第2のホール注入層21Bが介在したときの駆動電圧およびリーク耐性を確認するため、以下に示す実験をおこなった。
【0041】
(逆バイアス印加試験)
逆バイアス印加試験として、実装する前の有機ELデバイスに逆バイアス電圧を印加して、素子破壊が生じる電圧を測定した。より具体的には、有機ELデバイスの陽極配線および陰極配線をAgペーストで共通化して、逆バイアス回路で接続した。実験の結果は、以下の表1、2および
図6に示すとおりであった。
【0042】
表1は、第1のホール注入層のみで構成されたホール注入層の膜厚に関し、各膜厚における素子破壊電圧を示している。表2は、第1のホール注入層および第2のホール注入層を含むホール注入層の膜厚に関し、各膜厚における素子破壊電圧を示している。
図6は、表1および表2の結果をプロットしたグラフである。
図6のグラフにおいて、表1の結果は四角マークで示し、表2の結果は△マークで示している。
【0043】
【0044】
表1、2および
図6から、ホール注入層が第2のホール注入層を含まない試料1~7では素子破壊電圧が30V未満となったが、ホール注入層が第2のホール注入層を含む試料8~11では素子破壊電圧が30Vを超え、実用上十分に高い素子破壊電圧が得られることが確認された。特に、試料9~11では、35V近くまで素子破壊電圧が高まることが確認された。
【0045】
(色度測定)
また、分光放射計SR3AR(トプコン製)を用い、パネル点灯時の色度を測定するとともに、電流値が17mAのときの駆動電圧を測定した。測定結果は、以下の表3および
図7に示すとおりであった。表3は、第2のホール注入層の膜厚に関し、各膜厚における色度を示している。
図7は、表3の結果をプロットしたグラフである。
【0046】
【0047】
表3および
図7から、ホール注入層が第2のホール注入層を含まない試料12およびホール注入層が第2のホール注入層を含む試料13~15のいずれにおいても、パネル点灯が確認された。特に、第2のホール注入層の膜厚が薄い(20nm以下)試料13、14では、陰極側の青色発光層での発光が優勢である青みがかった発光となり、第2のホール注入層の膜厚が厚い(20nm超)試料15では、陽極側の黄色発光層での発光が優勢である黄ばみのある発光となった。このことから、第2のホール注入層の膜厚に応じてホールと電子とが再結合する箇所がズレることがわかり、第2のホール注入層の膜厚を調整することで発光の色味を調整できることがわかった。たとえば、青みがかった発光に調整する場合には、第2のホール注入層の膜厚は20nm以下に設計される。また、第2のホール注入層の膜厚が薄い試料13、14では、ホール注入層が第2のホール注入層を含まない試料12と同程度の駆動電圧であり、低電圧化が十分に図られていることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1…有機ELデバイス、2…基板、3…有機EL素子、11…陽極、12…有機EL材料層、13…陰極、21A…第1のホール注入層、21B…第2のホール注入層。