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  • 特許-二重活性カソード材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】二重活性カソード材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20230614BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230614BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230614BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020500618
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 IB2018054620
(87)【国際公開番号】W WO2019008465
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】2017/04582
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(73)【特許権者】
【識別番号】506257272
【氏名又は名称】シーエスアイアール
【氏名又は名称原語表記】CSIR
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ホンヅー
(72)【発明者】
【氏名】セテニ,ボナニ
(72)【発明者】
【氏名】ラプレニアン,ノマソント
(72)【発明者】
【氏名】マセ,ムフル
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-197091(JP,A)
【文献】特表2015-522921(JP,A)
【文献】特開2008-078139(JP,A)
【文献】特開2014-221690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0050522(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103117385(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/58
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Liリッチ二重活性カソード材料を生成するための方法であって、前記方法が、
Liリッチ二重活性カソード材料前駆体を得るために燃焼合成によってLiリッチ層状酸化物中にLi含有オリビン材料を吸蔵させることと、
Liリッチ二重活性カソード材料を提供するために前記Liリッチ二重活性カソード材料前駆体をアニールすることであって、粉末を第1の温度まで加熱し、前記粉末を第1の期間にわたって前記第1の温度に維持し、前記粉末を第2の温度まで加熱し、前記粉末を第2の期間に前記第2の温度に維持し、
前記第1の温度は100℃~700℃であり、前記第1の期間は30分~1200分であり、第2の温度は550℃~1000℃であり、前記第2の期間は2時間~24時間である、方法。
【請求項2】
前記Li含有オリビン材料が、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、Li(PO、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Liリッチ層状酸化物がLiリッチ二層酸化物であるか、または前記Liリッチ層状酸化物がLiリッチMn系層状酸化物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記Liリッチ層状酸化物が、一般式Li[Li1-x]Oを有し、式中、MはMn、Ni、Co及びAlで構成される群から選択され、0<x<1である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記Liリッチ層状酸化物が、Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13、Li[LiMnNi]O、式中、MはCo、Fe及びAlで構成される群から選択され、0<x、x+y+z+k=1、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Liリッチ層状酸化物中に吸蔵されたLi含有オリビン材料を含むLiリッチ二重活性カソード材料前駆体またはLiリッチ層状酸化物中に吸蔵されたLi含有オリビン材料を含むLiリッチ二重活性カソード材料であって、Liリッチ二重活性カソード材料前駆体は燃焼合成によって得られ、Liリッチ二重活性カソード材料は燃焼合成によって得られる、Liリッチ二重活性カソード材料前駆体またはLiリッチ二重活性カソード材料。
【請求項7】
前記Li含有オリビン材料が、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、Li(PO、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群より選択される、請求項6に記載のLiリッチ二重活性カソード材料前駆体またはLiリッチ二重活性カソード材料。
【請求項8】
前記Liリッチ層状酸化物がLiリッチ二層酸化物であるか、または前記Liリッチ層状酸化物がLiリッチMn系層状酸化物である、請求項6または7に記載のLiリッチ二重活性カソード材料前駆体またはLiリッチ二重活性カソード材料。
【請求項9】
前記Liリッチ層状酸化物が、一般式Li[Li1-x]Oを有し、式中、MはMn、Ni、Co及びAlで構成される群から選択され、、0<x<1である、請求項6から8のいずれか一項に記載のLiリッチ二重活性カソード材料前駆体またはLiリッチ二重活性カソード材料。
【請求項10】
前記Liリッチ層状酸化物が、Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13、Li[LiMnNi]O、式中、MはCo、Fe及びAlで構成される群から選択され、0<x、x+y+z+k=1、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群より選択される、請求項6から9のいずれか一項に記載のLiリッチ二重活性カソード材料前駆体またはLiリッチ二重活性カソード材料。
【請求項11】
セルハウジングと、
前記セルハウジング内のカソードと、アノードと、電解質と
を含み、前記カソードが前記アノードから電子的に絶縁されているが、前記電解質によって前記アノードに電気化学的に結合されており、前記カソードが請求項6から10のいずれか一項に記載のLiリッチ二重活性カソード材料を含む、電気化学セル。
【請求項12】
セルハウジングに、電解質と、アノードと、カソードとを装填することであって、前記カソードが請求項6から10のいずれか一項に記載のLiリッチ二重活性カソード材料を含むことを含む電気化学セルを製造する方法。
【請求項13】
前記Liリッチ二重活性カソード材料が、4.7ボルトから2ボルトの電圧範囲にわたって、少なくとも180mA h g-1または少なくとも200mA h g-1または少なくとも250mA h g-1の放電能力を有する、請求項12に記載の電気化学セルを製造する方法。
【請求項14】
請求項11に記載の、ただし前記Liリッチ二重活性カソード材料がマンガンを含み、それによって前記カソードからリチウムに前記アノードの少なくとも一部を形成させる、前記電気化学セルに充電電位を印加することと、
前記セルの放電電位がリチウム金属に対して2.0~3.5Vに達することを可能にし、前記セルの充電および放電中の平均マンガン原子価状態が3.5+以上であることと
を含む、電気化学セルを動作させる方法。
【請求項15】
前記セルの前記充電電位が、リチウム金属に対して4.5~5.1Vに達することが可能とされ、かつ/または前記平均マンガン原子価状態が、前記セルの充電および放電中に3.8+以上である、請求項14に記載の電気化学セルを動作させる方法。
【請求項16】
Liリッチ二重活性カソード材料前駆体を生成するための方法であって、前記方法が、
Liリッチ二重活性カソード材料前駆体を提供するために、燃焼合成によってLiリッチ層状酸化物中にLi含有オリビン材料を吸蔵させること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重活性カソード材料に関する。特に、本発明は、Liリッチ二重活性カソード材料またはLiリッチ二重活性カソード材料前駆体を生成するための方法と、該方法で生成された場合のLiリッチ二重活性カソード材料またはLiリッチ二重活性カソード材料前駆体と、Liリッチ二重活性カソード材料と、電気化学セルと、電気化学セルを製造する方法と、電気化学セルを動作させる方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
充電式リチウムイオン電池(rechargeable lithium ion battery(RLIB))は、電気自動車や携帯型電子機器にとって最も魅力的な高度な電池技術であることが証明されている。そのような電池やセルで使用するための、xLiMnO(1-x)LiMO(M=Mn、Ni、CoまたはAl)という一般式を有するリチウム-マンガンリッチカソード材料は、200mA h g-1を超える実用放電能力を提供することができ、4.8V~2.0Vの範囲の高電圧ウインドウを有し得る。しかし、リチウム-マンガンリッチカソード材料は、不十分な電子伝達と関連付けられる容量の急速な損失と不十分なサイクル性で知られている。これらの材料と関連付けられるさらなる問題には、調製の困難さ、連続充電/放電の不良、出力特性の不良、高電圧での電解質との高反応性、および高コストが含まれる。さらに、市販製品でよく使用される代替のカソード材料であるLiCoOは、高価で毒性があり、放電能力が140mA h g-1と低い。よって、強化された充放電出力を有し、より安価で、より環境に優しい材料を使用し、簡単な調製方法を使用して製造できるリチウム系カソード材料が必要である。より環境に優しい材料が国内で入手できれば、さらに有利になるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一態様によれば、Liリッチ二重活性カソード材料またはLiリッチ二重活性カソード材料前駆体を生成するための方法が提供され、本方法は、
Liリッチ二重活性カソード材料またはLiリッチ二重活性カソード材料前駆体を提供するためにLiリッチ層状酸化物中にLi含有オリビン材料を吸蔵すること
を含む。
【0004】
本方法は通常、Liリッチ二重活性カソード材料を得るためにLiリッチ二重活性カソード材料前駆体をアニールすることを含む。
【0005】
Li含有オリビン材料は、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、Li(POなど、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群より選択され得る。
【0006】
本発明の一実施形態では、Li含有オリビン材料はLiFePOである。
【0007】
Liリッチ層状酸化物は、Liリッチ二層酸化物またはスピネルであってもよい。
【0008】
Liリッチ層状酸化物は、LiリッチMn系層状酸化物、特にLiリッチMn系固溶系であってもよい。言い換えれば、Liリッチ層状酸化物は、Li-Mnリッチ層状酸化物であってもよい。
【0009】
Liリッチ層状酸化物は、一般式Li[Li1-x]Oを有していてもよく、式中、M=Mn、Ni、Co、Al、0<x<1である。
【0010】
Liリッチ層状酸化物は、Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13、Li[LiMnNi]O、式中、M=Co、Fe、Alなど、0<x、x+y+z+k=1、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群より選択され得る。
【0011】
本発明の一実施形態では、Liリッチ層状酸化物は、Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13である。
【0012】
Li含有オリビン材料とLiリッチ層状酸化物とのモル比は、約1:0.01~約1:1、好ましくは約1:0.01~約1:0.2、より好ましくは約1:0.02~約1:0.1、例えば約1:0.05であり得る。
【0013】
Liリッチ二重活性カソード材料前駆体は通常、粉末または顆粒の形状である。Liリッチ二重活性カソード材料前駆体では、Li含有オリビン材料は通常、Liリッチ層状酸化物内にナノ吸蔵される。これにより、例えばLi1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13と比較して強化された放電能力、レート性能およびサイクル性を有するLiリッチ二重活性カソード材料前駆体から得られたLiリッチ二重活性カソード材料が提供される。
【0014】
Liリッチ二重活性カソード材料前駆体のアニーリングは、材料を結晶化させるのに十分な高さの温度で実施され得る。アニーリングは、所望の程度のアニーリングを達成するのに、すなわち、所望の程度の結晶化度を達成するのに十分な長さの期間にわたって実施され得る。
【0015】
Liリッチ二重活性カソード材料前駆体をアニールすることは、不活性雰囲気下で粉末または顆粒を加熱することを含み得る。不活性雰囲気はアルゴン雰囲気であり得る。
【0016】
粉末を加熱することは、粉末を第1の温度まで加熱し、粉末を第1の期間にわたって第1の温度に維持することと、粉末を第2の温度まで加熱し、粉末を第2の期間に第2の温度に維持することとを含み得る。
【0017】
第1の温度は、約100℃~約700℃、好ましくは約200℃~約600℃、より好ましくは約250℃~約500℃、例えば約300℃であり得る。
【0018】
第1の期間は、約30分~約1200分、好ましくは約60分~約1000分、より好ましくは約120分~約600分、例えば約180分であり得る。
【0019】
第2の温度は、約550℃~約1000℃、好ましくは約600℃~約950℃、より好ましくは約700℃~約900℃、例えば約800℃であり得る。
【0020】
第2の期間は、約2時間~約24時間、好ましくは約4時間~約20時間、より好ましくは約6時間~約16時間、例えば約12時間であり得る。
【0021】
アニーリング中、粉末の温度は、毎分約0.1℃~毎分約20℃、好ましくは毎分約0.5℃~毎分約15℃、より好ましくは毎分約1℃~毎分約10℃、例えば毎分約5℃の速度で上昇し得る。
【0022】
Liリッチ層状酸化物中にLi含有オリビン材料を吸蔵することは、燃焼合成によるものであり得る。
【0023】
「燃焼合成」とは、反応物の混合物を初期高温にさらして、混合物全体で反応物の発熱反応を開始させることを含む自己伝播高温合成を意味する。よって反応は自己持続反応であり、生成物として通常は粉末状または顆粒状の生成物が得られる。生成物の顆粒または粒子は、ナノメートルスケール範囲にあり得る、すなわち、1~100nmの直径または断面寸法を有し得る。燃焼合成は溶液の使用を含んでいてもよく、燃焼合成は、いわゆる溶液燃焼合成(「SCS(solution combustion synthesis)」)の一実施形態であり得る。
【0024】
よって燃焼合成は、反応物(すなわち金属化合物)と溶媒中のLi含有オリビン材料の均一溶液を形成すること、および溶媒の全部または大部分を除去して、通常は固形またはゲル状の反応混合物を形成することを含み得る。燃焼合成は通常、次いで、発熱反応で反応混合物を燃焼させて、Liリッチ二重活性カソード材料前駆体を提供することを含む。このようにして生成されたLiリッチ二重活性カソード材料前駆体は、粉末状または顆粒状の生成物である。
【0025】
通常、本方法は、反応混合物を加熱して反応混合物の燃焼を開始させることを含む。発熱燃焼反応は、Liリッチ二重活性カソード材料前駆体が完全に形成されるまで、すなわち、発熱燃焼反応に関与する反応物(特に燃料)がなくなるまで持続する。通常、反応時間は1~10分の範囲内である。よってSCSは、粉末状/顆粒状生成物を迅速、簡単かつ効果的に生成するための技術である。
【0026】
発熱燃焼反応は大気圧で実施され得る。
【0027】
溶媒を除去して反応混合物を形成することは、溶媒を蒸発させることを含み得る。均一溶液を加熱する間に溶媒は大気圧で蒸発し得る。
【0028】
好ましくは、均一溶液を加熱して溶媒を除去する間に均一溶液は撹拌される。
【0029】
本発明の一実施形態では、溶媒を除去するために均一溶液を約100℃の温度まで加熱する。
【0030】
均一溶液を用いた燃焼合成が使用される場合、反応物は、発熱燃焼反応のための酸化剤として機能できなければならず、しかも当然ながら、均一溶液を形成するために使用される溶媒に溶解しなければならない。よって、リチウムその他の金属の硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩および炭酸塩を使用することができる。よって反応物は、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属硫酸塩および/または金属炭酸塩の形態であり得る。本発明の一実施形態では、反応物は、金属酢酸塩、例えば、Li(COOCH・2HO、Mn(COOCH・4HO、Ni(COOCH・4HOおよびCo(COOCH・4HOの形態である。
【0031】
Li含有オリビン材料は、粉末の形状、例えば、粉末状または顆粒状のLiFePOであり得る。
【0032】
溶媒は水、例えば水、脱イオン水であり得る。よって本方法は、反応物とLi含有オリビン材料を水に溶解して均一溶液を形成することを含み得る。
【0033】
均一溶液は、発熱燃焼反応のための燃焼助剤または燃料を含み得る。燃料は有機燃料であってもよく、尿素、グリシン、ヒドラジド、スクロース、またはクエン酸などの有機酸であってもよい。しかしながら、クエン酸などの有機酸が好ましい。
【0034】
燃焼合成は、均一溶液が酸性であることを確実にすることを含み得る。好ましくは、均一溶液のpHは、約0~約6、より好ましくは約0.1~約5、最も好ましくは約1~約3、例えば約2である。燃料が有機酸の場合、燃料の添加によってpHが調整され得る。
【0035】
本発明は、前述の方法により生成された場合の、Liリッチ二重活性カソード材料前駆体およびLiリッチ二重活性カソード材料に及ぶ。
【0036】
本発明の別の態様によれば、Liリッチ層状酸化物中に吸蔵されたLi含有オリビン材料を含む、Liリッチ二重活性カソード材料前駆体またはLiリッチ二重活性カソード材料が提供される。
【0037】
Li含有オリビン材料は、前述の通りであり得る。
【0038】
Liリッチ層状酸化物は、前述の通りであり得る。
【0039】
Li含有オリビン材料とLiリッチ層状酸化物とのモル比は、前述の通りであり得る。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、電気化学セルが提供され、本電気化学セルは、
セルハウジングと、
セルハウジング内のカソードと、アノードと、電解質と
を含み、カソードはアノードから電子的に絶縁されているが、電解質によってアノードに電気化学的に結合されており、カソードは前述のようなLiリッチ二重活性カソード材料を含む。
【0041】
本発明の別の態様によれば、セルハウジングに、電解質と、アノードと、カソードとを装填することであって、カソードが前述のようなLiリッチ二重活性カソード材料を含むこと、を含む電気化学セルを製造する方法が提供される。
【0042】
Liリッチ二重活性カソード材料は、少なくとも約180mA h g-1、好ましくは少なくとも約200mA h g-1、より好ましくは少なくとも約250mA h g-1、例えば約280mA h g-1の放電能力を有し得る。
【0043】
本発明のさらに別の態様によれば、電気化学セルを動作させる方法が提供され、本方法は、
前述のような、ただしLiリッチ二重活性カソード材料がマンガンを含み、それによってカソードからリチウムにアノードの少なくとも一部を形成させる、電気化学セルに充電電位を印加することと、
セルの放電電位がリチウム金属に対して2.0~3.5Vに達することを可能にし、セルの充電および放電中の平均マンガン原子価状態が約3.5+以上であることと
を含む。
【0044】
セルの充電電位は、リチウム金属に対して4.5~5.1Vに達することが可能とされ得る。平均マンガン原子価状態は、セルの充電および放電中に約3.8+以上であり得る。
【0045】
次に本発明を、以下の実施例と、本発明によるLi1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13/LiFePOナノ吸蔵カソード材料の容量を示す添付の図面とを参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明によるLi1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13/LiFePOナノ吸蔵カソード材料の容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0047】
二重活性Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13/LiFePOナノ吸蔵カソード材料を、燃焼合成経路を介して得た。化学量論的質量の酢酸塩Li(COOCH・2HO、Mn(COOCH・4HO、Ni(COOCH・4HO、およびCo(COOCH・4HOの各々を、脱イオン水に溶解して溶液を形成した。燃料として溶液にクエン酸(C)を添加し、クエン酸の加により溶液のpHを2に調整した。その後、LiFePO粉末を、約1:0.05のLi1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13:LiFePO4のモル比で溶液に添加した。LiFePOは、Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13の結合よりも強い結合を有する酸素原子を提供する。
【0048】
溶液を1時間撹拌し、加熱板上で100℃まで加熱して、溶液から水を蒸発させた。得られた固体の反応混合物は、加熱板上で100℃で得られたときに、煙として発火して、褐色微粉末の形状のLiリッチ二重活性カソード材料前駆体を形成するピンク色の物質であった。その後、Liリッチ二重活性カソード材料前駆体を、粉末をアルゴン吹き炉(blown furnace)において300℃で3時間加熱(1回目の加熱)し、続いて粉末を800℃で12時間加熱(2回目の加熱)することによってアニールして、二重活性Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13/LiFePOナノ吸蔵カソード材料を生成した。加熱速度は5℃/分であった。
【0049】
LiFePOナノ粒子(5~100nm)は、アニールされたLi1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13/LiFePOナノ吸蔵カソード材料内にランダムに分布し、吸蔵された。
【0050】
生成されたLi1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13/LiFePOナノ吸蔵カソード材料の容量が図に示されている。分かるように、本発明のカソード材料は、例示されるように、200mA h g-1を超える大容量を有する。これは、LiCoO(140mA h g-1)、LiMnO(120mA h g-1)、LiFePO(150mA h g-1)などの市販のカソード材料と比べて遜色がない。このカソード材料は、Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13と比較して十分なサイクル性とレート性能を有し、簡単な調製方法および比較的低コスト、環境に優しい材料を使用して生成される。Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.13は高比エネルギーを有し、LiFePOは高出力特性を有する。これらのナノ吸蔵カソード材料としての組み合わせにより、容量とサイクル性の損失が軽減され、高容量のデュアルレートエネルギー貯蔵システムが有利に提供される。
図1