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特許7295841インスリン&インスリン類似体の配列の同定のためのペプチドマッピング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】インスリン&インスリン類似体の配列の同定のためのペプチドマッピング方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20230614BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N30/72 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020503871
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 IB2018055420
(87)【国際公開番号】W WO2019021133
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】201741026454
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】506292941
【氏名又は名称】バイオコン・リミテッド
【住所又は居所原語表記】20th KM,Hosur Road,Electronic City,Karnataka Bangalore 560 100,India
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】コダリ,ファニチャンド
(72)【発明者】
【氏名】マネ,クリシュナッパ
(72)【発明者】
【氏名】コドゥル,スリヴァッツァ
(72)【発明者】
【氏名】ナイク,アシュトシュ スディール
(72)【発明者】
【氏名】アディカリ,ラックスミー
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105301125(CN,A)
【文献】特開2015-156821(JP,A)
【文献】In-Gel Alkylation And Digestion With Endoproteinase Glu-C (Protease V8),[online],Bioch.Eu,2003年06月20日,[2022年12月15日 検索]、インターネット<URL:https://www.bioch.eu/methods/protocols/gel-alkylation-and-digestion-endoproteinase-glu-c-protease-v8>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 27/92
G01N 30/00 - G01N 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドまたはポリペプチドの混合物のアミノ酸配列および質量を決定するための方法であって、以下:
a)ポリペプチドをHCl中に溶解すること、およびトリスでpHを調整することによってポリペプチド試料を調製するステップ;
b)ポリペプチド試料をエンドプロテアーゼGlu Cの添加によって消化するステップ、ここでポリペプチド試料対エンドプロテアーゼGlu Cの比率が25:1である;
c)ステップ(b)の消化された試料を1Mジチオスレイトールの添加によって還元するステップ、ここで消化された試料対1Mジチオスレイトールの比率が10:1である;
d)ステップ(c)のポリペプチドのHPLC分析、それに続く質量分析を実施するステップ;
e)ポリペプチドの分子量と対応する既知のポリペプチドの分子量とを比較し、それによってポリペプチドの同一性を決定するステップ;
ここで、ステップ(d)において使用される有機溶媒は無塩バッファーであり、方法は、同時に複数のフラグメントの配列の確認を可能にする、
を含む、前記方法。
【請求項2】
ステップ(c)が、ステップ(b)の消化された試料を1Mジチオスレイトールの添加によって還元し、1時間インキュベートするステップであり、ここで消化された試料対1Mジチオスレイトールの比率が10:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)において、pHが7.5~8.5に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
無塩ベースのバッファーが、アセトニトリル、ギ酸、TFA、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(d)および(e)のために必要とされる時間が約40分である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリペプチドが、インスリンまたはインスリン類似体である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリペプチドが、アスパルト、リスプロおよびグラルギンからなる群より選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
ポリペプチドが、少なくとも1個のアミノ酸で異なり得る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(e)のポリペプチドの分析されたフラグメントが、0.4kDaから8kDaまで及ぶ質量を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、プロテオミクスおよび分析化学の分野に関する。より具体的に、本発明は、同一性および質量の同時決定のためのタンパク質についてのペプチドマスフィンガープリントの方法であって、さらにペプチドの配列の確認を可能とする方法の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
高感度の機器を用いる、ゲル電気泳動および質量分析法を使用する方法は、タンパク質の迅速な定量分析で知られている。これらの方法は、タンパク質を抽出すること、少なくとも一部のタンパク質を消化すること、および試料を作製することを包含し、電気泳動し、標識されたペプチドの試料中のペプチドに基づく質量分析法によって試料中のタンパク質の発現レベルの違いを検出する。この分析方法は、タンパク質の発現プロファイルの定性および定量分析について使用され得る。しかしながら、該方法は、多くの化学物質およびいくつかのステップを包含し、その莫大な費用に上乗せする。よって、費用および時間を低減させる方法を開発する必要がある。
【0003】
組み換えDNA技術によって得られるタンパク質は、ペプチドマッピング方法によって同定される。ペプチドマッピングは、点突然変異におけるエラーなどの事象に起因する単一アミノ酸変化を同定する能力のある有力な試験である。ペプチドマッピング方法は、組み換えDNA産物のために使用される細胞の発現コンストラクトの安定性を評価し、および産物の安定性を査定し、ならびにタンパク質産物の同一性を保証するか、またはタンパク質バリアントの存在を検出するために使用され得る。ペプチドマッピングは、商業上のインスリン製品の品質を評価し、ヒトインスリンおよびインスリン類似体などのタンパク質のスクリーニングに好適なペプチドマッピング方法を提起するためにもまた使用され得る。
【0004】
米国特許第7,622,273号は、タンパク質が、タンパク質マイクロアレイ(タンパク質チップ)に直接結合し、化学処理/酵素消化/化学消化が続く、段階的な方法を記載している。化学処理ステップによる消化は、タンパク質の変性、還元およびアルキル化を包含する。酵素消化ステップは、脱グリコシル化タンパク質または脱リン酸化および酵素加水分解またはタンパク質の化学的なタンパク質分解を包含する。タンパク質マイクロアレイ上のすべての反応は、迅速なタンパク質の同定および構造上の特徴付けについて段階的に実施される。この方法は、約24時間費やすものである、従来の方法よりもより短い期間しか要しないが、いまだに不十分なものである。より重要なことには、複合試料(血漿、尿、脳脊髄液、等々)は、この方法を実行して標的タンパク質の単離を得る前に分画を必要とし、したがって全体の処理および期間が増加するだろう。ゆえに、試料の調製および期待される結果のために余分な費用および時間が必要とされることにつながる。
【0005】
米国特許第9,581,601号は、2以上のスルホニル基を含む化合物によるペプチド/タンパク質の誘導体化の方法および質量分析計のネガティブモードの操作における誘導体化されたアナライトの分析を記載する。この方法は、長鎖のペプチド/タンパク質のアミノ酸配列の分析を可能にする。それはまた、誘導体化化合物として5-ホルミル-ベンゼン-1,3-ジスルホン酸の合成手順に関する。新しい試薬の誘導体化は、時間のかかるものであり、それと関連して追加の費用がかかるものである。
従来の脱塩処理は、一度に単一のフラグメントのみ検出することができ、複数のクロマトグラフィーの実行とこれに続く収集された単一のピークの脱塩処理を必要とする。該方法は、最大で2作業日を要する。
【0006】
文献からこれまでのところ入手可能なインスリンおよびその類似体についてのペプチドマッピングの手順は、塩ベースの方法に適切であり、LC-MSの使用とは両立できない。よって、より短い実行時間を有し、LC-MSと両立ができる新たなペプチドマッピングフィンガープリンティング方法を開発する必要がある。インスリン類似体が、1~3個のアミノ酸を変更しているために、とくにこのようなペプチドのタンパク質マッピングを時間的に効率よく実施することは困難である。
よって、かかる時間および費用を低減するだけでなく、信頼性のある結果を提供する方法についての必要性が残存している。
【0007】
発明の目的
結果的に、本発明の目的は、タンパク質/ペプチドの同一性および質量の決定のためのペプチドマッピングフィンガープリンティングの時間および費用効果のある方法を提供することである。
本発明の別の目的は、従来の方法との比較において実行時間の徹底的な低減をもたらす無塩バッファー中にタンパク質が溶解している方法を提供することである。
本発明の別の目的は、複数のフラグメントの同時検出もまた可能とする方法を提供することである。
本発明の別の目的は、脱塩処理ステップを除去することによる配列の確認を提供し、試料を分析するために必要とされる時間を低減することである。
【0008】
発明の概要
本発明の側面は、インスリンまたはインスリン類似体(アスパルト、リスプロまたはグラルギン)などの0.4kDaから8kDaまでの範囲をとるポリペプチド(単数または複数)のアミノ酸配列および質量を決定するための方法であって、ここでポリペプチドは、少なくとも1個のアミノ酸が異なり、還元条件において、以下のステップを含む:エンドプロテアーゼGlu Cの添加によるポリペプチド試料の消化、消化された試料の還元;HPLC分析とこれに続く質量分析を実施し、該ポリペプチドの分子量と対応する既知のポリペプチドの分子量を比較すること。本発明は、ポリペプチドの同一性の決定およびペプチドの配列の確認を可能とし、ここで本発明の方法の実行時間は、ほぼ40分である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、標準試薬(自社内のもの)および商業上の製品の酵素消化のフローチャートを表す。
図2図2は、標準試薬(自社内のもの)および商業上の製品の還元条件下の酵素消化のフローチャートを表す。
図3図3は、ヒトインスリン上のエンドヌクレアーゼGlu-CおよびDTTの作用点を表す。
図4図4は、消化および還元後のインスリン-ペプチドフラグメントを表す。
【0010】
図5図5は、消化条件下でのインスリン試料の重ね合わせを表す。
図6図6は、消化および還元条件下でのインスリン試料の重ね合わせを表す。
図7図7は、ヒトインスリン、インスリングラルギン、インスリンアスパルトおよびインスリンリスプロの消化プロファイルを表す。
図8図8は、ヒトインスリン、インスリングラルギン、インスリンアスパルトおよびインスリンリスプロの消化-還元プロファイルを表す。
【0011】
図9図9は、フラグメントの質量を確認する消化後のヒトインスリンの4個のフラグメントを表す。
図10図10は、フラグメントの質量を確認する消化後のインスリングラルギンの4個のフラグメントを表す。
図11図11は、フラグメントの質量を確認する消化後のインスリンアスパルトの4個のフラグメントを表す。
図12図12は、フラグメントの質量を確認する消化後のインスリンリスプロの4個のフラグメントを表す。
【0012】
図13図13は、フラグメントの質量を確認する消化とこれに続く還元後のヒトインスリンの6個のフラグメントを表す。
図14図14は、フラグメントの質量を確認する消化とこれに続く還元後のインスリングラルギンの6個のフラグメントを表す。
図15図15は、フラグメントの質量を確認する消化とこれに続く還元後のインスリンアスパルトの6個のフラグメントを表す。
図16図16は、フラグメントの質量を確認する消化とこれに続く還元後のインスリンリスプロの6個のフラグメントを表す。
【0013】
発明の説明
定義
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」は、天然に存在するかまたは、化学的にまたは他の手段によって産生されるかまたは修飾される組換え体であって、天然のタンパク質と本質的に同じように、翻訳後にプロセシングされるだろうタンパク質の三次元構造を推測するだろう、ペプチドおよびポリペプチドの両方を指す。
用語「ペプチドマップ」は、所与のポリペプチドの断片化によって得られる、よって、前記ポリペプチドに特異的なポリペプチドのセットを指す。
用語「タンパク質試料」は、自社内の標準試薬およびインスリンおよびインスリン類似体、すなわちインスリンアスパルト(ノボログ)、インスリンリスプロ(ヒューマログ)、インスリングラルギン(ランタス)の商業上の製品を指す。
【0014】
用語「消化」は、アスパラギン酸残基で切断するエンドプロテアーゼGluCによるペプチドの切断を指す。
用語「還元」は、分子内および分子間ジスルフィド結合がタンパク質のシステイン残基間で形成されることを防ぐために、タンパク質のジスルフィド結合を還元することを指す。
用語「インスリン」は、51アミノ酸残基のポリペプチド(5808ダルトン)であって、多くの極めて重要な細胞のプロセスにおいて重要な役割を担うホルモンを指す。それは、細胞の増殖および分化の刺激に関わる。それは、そのモノマー形態におけるホルモンのそのダイマーの、チロシン-キナーゼ型膜受容体への結合によって開始されるシグナル経路を通して、その調節性機能(例として、細胞内へのグルコースの取り込み)もまた発揮する。ヒトインスリンの成熟した形態は、合計分子量が5808Daの、A-鎖(GlyA1-AsnA21)およびB-鎖(PheB1-ThrB30)に配列された51個のアミノ酸からなる。該分子は、2つの鎖間(A20-B19、A7-B7)および1つの鎖内ジスルフィド結合(A6-A11)によって安定化されている。
【0015】
インスリン類似体「リスプロ」は、一次構造においてインスリンヒトと同一であり、B28の位置のリシンおよびB29の位置のプロリンを変更していることでインスリンと異なる。それは、短時間作用性のインスリンモノマー類似体である。溶液製剤において、リスプロは、本質的に不安定なヘキサマーとして存在するが、注入されるときには、自然にモノマー形態へと分離する。B鎖C末端の修飾は、インスリンモノマー間の非極性接触およびb-シート相互作用を減少させ、より少ない自己会合をもたらす。
インスリン類似体「アスパルト」は、リスプロと同様に作用する。即効性のある類似体であるアスパルトは、B28の位置でのプロリンについてのアスパラギン酸の単一置換でヒトインスリンと異なる。この置換は、モノマー間での電荷の反発およびB鎖のカルボキシル末端の局所構造の変化に起因した立体障害をもたらし、ヘキサマーおよびダイマーの両方の形成を低減し、それによってモノマーのアスパルトインスリンの吸収速度を増加する。
【0016】
インスリン類似体「グラルギン」は、A21でのグリシンについてのアスパラギンの置換、およびB-鎖のC末端への2個のアルギニン残基の付加でヒトインスリンと異なる。インスリングラルギン溶液は、pH4.0で処方され、注入される。これらの修飾は、等電点をより中性のpHへと増加させ、生理学的条件下での可溶性を低減し、および注入部位でのグラルギンの沈殿を引き起こし、よって吸収を遅らせる。グラルギンは、ウルトラレンテインスリンのように20~24時間持続する延長した作用の類似体であり、中間型プロタミンハーゲドン(NPH)インスリンよりもよく、1型および2型糖尿病患者において夜間低血糖症を低減する。
【0017】
発明の詳細な記載
本発明は、以下のステップを含む、ポリペプチドまたはポリペプチド(単数または複数)の混合物のアミノ酸配列および質量を決定するための方法を提供する:
a)強酸であるHCl中にポリペプチドを溶解し、トリスでpHを調整することによってポリペプチド試料を調製するステップ;
b)1:25の酵素-タンパク質の比率でのエンドプロテアーゼGlu Cの添加によって、ステップ(a)のポリペプチド試料を消化するステップ;
c)1Mジチオスレイトールの添加によって、ステップ(b)の消化されたポリペプチドを還元するステップ;
d)有機溶媒を含むステップ(c)のポリペプチドのHPLC分析とこれに続く質量分析を実施するステップ;
e)消化されたポリペプチドの分子量を対応する既知のポリペプチドの分子量と比較し、それによってポリペプチドの同一性を決定するステップ、
ここで、有機溶媒は、無塩バッファーである;および
該方法は、同時に複数のフラグメントの配列の確認を可能とする。
【0018】
無塩バッファーは、アセトニトリル、ギ酸、TFA、またはその組み合わせからなる群より選択され得る。
従来の方法において、LC-MS検出のために塩ベースのバッファーが使用されていたが、しかしながら、本発明者らは、LCMSと両立できる無塩ベースのバッファーの使用が、ステップ(d)および(e)に費やされる時間を有意に低減することにつながり、よって本プロセスを時間および費用効果のあるものにすることを見出した。
驚くべきことに、従来の方法が1~2日要する一方で、質量および配列を同定するための消化および還元のステップ後である、ステップ(d)および(e)は、約40分要するということを見出した。
【0019】
本方法は、50kDaまでのポリペプチドの質量および配列を分析し、同定することに適用され得る。
ペプチドまたはタンパク質の消化は、増加した荷電およびイオン化基(ionisable group)の露出の結果として、質量分析法の検出を改善し得る。本発明において、タンパク質の還元は、ペプチドまたはタンパク質中のジスルフィド架橋を切断することに関わる。ジスルフィド結合の再形成を低減し、防ぐためのアルキル化剤の添加がこれに続き、ジスルフィド結合スクランブリングにつながり、よってアモルファスの凝集物を促進し得る。
【0020】
I.25:1(タンパク質対酵素)の比率でのエンドプロテアーゼGlu-Cによるタンパク質の酵素消化。
II.比率25:1(タンパク質対酵素)でのエンドプロテアーゼGlu-Cを用いた消化手順後の1M DTTを添加することによる酵素消化および還元。
III.HPLCとしてLC-MS(ESI)を使用する分析。
IV.タンパク質のマスフィンガープリンティング(PMF)のプロファイルを使用する分析。
V.複数のフラグメントの検出およびペプチドの配列確認。
VI.消化段階の後に、本発明の時間は、最大40~60分である。
【0021】
例に記載されるように、以下の材料および試薬が本発明に使用された。
1.0.01N HClがタンパク質/ペプチド試料を調製するために使用され、一方でトリス-HClバッファーがpHを調整するために使用された。
2.提示された例において、無塩ベースのバッファーである有機溶媒は、分光光度法用のギ酸(FA)(Sigma-Aldrich社より入手した)を0.1%含有するJ.T Baker社のアセトニトリル(ACN)が使用されたが、メタノール(MeOH)、イソプロパノール(IPA)、またはACN、MeOHおよびIPAの混合物などの他の有機溶媒もまた使用され得る。
3.提示された例において、溶液は、ジチオール還元剤である1Mジチオスレイトール(DTT)を含む還元剤を含む。しかしながら、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、2-メルカプトエタノール(BME)、および2-メルカプトエタノールアミン(2-MEA)もまた使用され得る。
【0022】
4.自社内ならびに商業上の製品のフラグメントを調製するために使用される、エンドプロテアーゼGlu-C(1mg/ml)シーケンシンググレード(Roche、Cat# 11047817001)。
5.例に提示されるように、ヒトインスリン、インスリングラルギン、インスリンアスパルトおよびインスリンリスプロの自社内の標準試薬と、一方で商業上の製品-ノボリン-R(Novo-Nordisk社のインスリン)、ランタス(Aventis社により製造されたインスリングラルギン)、ノボログ(Novo-Nordisk社により製造されたインスリンアスパルト)およびヒューマログ(Eli-Lilly社により製造されたインスリンリスプロ)が使用された。
【0023】
本発明において2つの個別の実験が行われた。第一の実験において、インスリンおよびインスリン類似体のタンパク質/ペプチド試料は、消化についてのみ処理された。第二の実験において、インスリンおよびインスリン類似体のタンパク質/ペプチド試料は、消化ならびに還元について処理された。
両方の試料は、HPLCとしてLC-MS(ESI)を使用して、およびタンパク質のマスフィンガープリンティング(PMF)のプロファイルを使用して、分析された。
記載はさらに、ベストモードの手順を記載する。
【0024】
ステップ1 自社内の標準試薬および商業上の製品の酵素消化
段階的な手順は、図1に表示されるように続けられ、ここで、タンパク質試料(1mg/mL)は、0.01N HCl中に溶解され、pHは、トリス-HClバッファーを用いて7.5~8.5に調整される。エンドプロテアーゼGlu-Cは、比率25:1(タンパク質対酵素)で添加された。試料は、37℃で3時間インキュベートされ、次いで最終の試料は、HPLCとしてLC-MS(ESI)およびタンパク質のマスフィンガープリンティング(PMF)のプロファイルを使用して分析された。試料はまた、さらに使用されるまで-20℃で保管された。
インスリン分子について消化後に得られたペプチドフラグメントが、表1中に列挙される。4個のペプチドフラグメントは、プロテアーゼV8の消化後に、インスリンヒトから生成され、フラグメントI、II、III、およびIVと表示を付けられた。
【0025】
【表1】
【0026】
フラグメントIVは、アミノ酸A5~A17およびB1~B13を含有し、フラグメントIIIは、A18~A21およびB14~B21、フラグメントIIは、B22~B30、およびフラグメントIは、A1~A4であった。これらの4個のペプチドフラグメントは、より迅速に溶離するより小さなペプチドフラグメントと共に順次溶離した。4個のアミノ酸のフラグメントIは、10分以内に最初に溶離し、最も低いUV吸光度を示した。9個のアミノ酸のフラグメントIIは、約16分に溶離し、これに続き12個のアミノ酸を含有するフラグメントIIIが、フラグメントIIよりも約2.7分遅れてカラムから溶離した。26個のアミノ酸を含有しているフラグメントIVは、約26分に溶離し、最も高いレベルのUV吸収を示した。
【0027】
フラグメントIおよびIVは、インスリンと比較したときに(アミノ酸の数に関して)配列中に変化がないために、残りの類似体(アスパルト、グラルギン&リスプロ)についてほぼ同じ保持時間で溶離した。アスパルト&リスプロについてのフラグメントIIは(配列中に以下の変化があるにもかかわらず:アスパルト-AspB28によって置換されたProB28;リスプロ-LysB29→ProB29の変更)、インスリンのものと同じ保持時間で溶離した。アスパルト&リスプロについてのフラグメントIIIは、(アミノ酸の数に関して)配列中に変化がないために、インスリンのものと同じ保持時間で溶離した。インスリングラルギンは、インスリンヒトのそれらと比較して、フラグメントIIおよびIIIの保持時間において有意なシフトを示した。インスリングラルギン上のAsnA21とGlyの置換は、フラグメントIIIの保持時間を遅らせた。その上、インスリングラルギンのフラグメントII上の2個のアルギニンの付加(ArgB31~32)は、インスリンヒトのそれよりも前の溶離をもたらした。
【0028】
ステップ2 自社内の標準試薬および商業上の製品の還元を伴う酵素消化
段階的な手順は、図2に表示されるように続けられ、ここで、タンパク質試料(1mg/mL)は、0.01N HCl中に溶解され、pHは、トリス-HClバッファーを用いて7.5~8.5に調整される。
エンドプロテアーゼGlu-Cは、比率25:1(タンパク質対酵素)で添加された。試料は、37℃で3時間インキュベートされた。還元についてのステップは、1M DTTを添加し、37℃で1時間インキュベートを続ける。次いで最終の試料は、HPLCとしてLC-MS(ESI)およびタンパク質のマスフィンガープリンティング(PMF)のプロファイルを使用して分析された。試料はまた、さらに使用されるまでー20℃で保管された。
【0029】
図3および4は、Glu-CおよびDTTの作用点、およびインスリンまたはインスリン類似体のタンパク質試料が、還元条件下で消化されるときに生成されるフラグメントを描く。
6個のペプチドフラグメントは、還元条件下でのGlu-C消化後に、ヒトインスリン分子から生成された。4個のアミノ酸のフラグメントIは、5.2分以内に最初に溶離した;4個のアミノ酸のフラグメントIIは、約9.7分で溶離して、最も低いUV吸光度を示し、これに続き13個のアミノ酸を含有するフラグメントIIIは、フラグメントIIよりも約5.0分遅れてカラムから溶離した。9個のアミノ酸を含有しているフラグメントIVは、約15.5分で溶離した;8個のアミノ酸のフラグメントVは、約23.8分で溶離し、最終的に13個のアミノ酸のフラグメントVIが、約28.5分で溶離した。
【0030】
【表2】
【0031】
インスリンリスプロにおいて、ヒトインスリンのフラグメントIVの溶離のほぼ1分前である14.4分にはっきりと溶離したフラグメントIVを除いて、フラグメントについての溶離パターンにおいて変化がなかった。
インスリングラルギンは、配列中に変化がないために、フラグメントII、III、VおよびVIについての溶離パターンにおいて変化はなかった。フラグメントIは、配列中に変化(AsnA21のGlyとの置換)があるために、5.8分に溶離した。フラグメントIVは、2個のアルギニン(ArgB31~32)の付加があるという配列中の変化のために、ヒトインスリンおよびインスリンリスプロと比較すると、11.4分の前に溶離した。
【0032】
インスリンアスパルトは、溶離液Bとして80%ACNを使用してペプチドマスフィンガープリンティングが実行された。4個のアミノ酸のフラグメントIは、5.3分以内に最初に溶離した;4個のアミノ酸のフラグメントIIは、約10.4分に溶離して、最も低いUV吸光度を示し、これに続き13個のアミノ酸を含有するフラグメントIIIは、フラグメントIIよりも約5.5分遅れてカラムから溶離した。9個のアミノ酸を含有するフラグメントIVは、約16.2分に溶離した;8個のアミノ酸のフラグメントVは、約26.9分に溶離し、最終的に13個のアミノ酸のフラグメントVIは、約30.5分に溶離した。
【0033】
ステップ3:逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)
RP-HPLCを、質量分析計(Bruker HCT)に接続されたダイオードアレイ検出器(USA)を備えたAgilent 1200HPLCシステム上で実施した。勾配システムを、1.0mL/minの流速で用いた。
表3に示すように、移動相は、溶離液Aとして0.1%FAを伴う100%水および溶離液Bとして90%アセトニトリルを包含した[インスリンおよびインスリン類似体(消化)について&インスリン、グラルギン、リスプロ(消化&還元)について]。アスパルト(消化&還元)のケースにおいて、80%ACNが、溶離液Bとして使用された。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
初期条件は、5%の溶離液Bであり、次いで0から12分までで5-20%の溶離液B、12から18分までで20-21%の溶離液B、18から25分までで21-30%の溶離液B、および25から34分までで30-70%の溶離液Bおよび34から34.10分までで70-5%の溶離液Bおよびさらに6.0分間再平衡化させた(表4)。
5マイクロリットルの消化された試料の溶液が、40℃のカラム温度に維持されたACE C18-300カラム(4.6×250mm、粒径5μm;アバディーン、スコットランド)に注入され、分析された。分画されたインスリンおよびインスリン類似体ペプチドは、220nmのUV吸光度で検出された。
【0037】
ステップ4:質量分析法
Bruker社のHigh Capacity Trapを、分析参照について以下のパラメーターを用いて質量分析に使用した;
1.Ion source type- ESI Positive、
2.Mass Range Mode - Ultra Scan、
3.Ion Polarity - Positive、
4.Scan Range- 50-2200 m/z、Auto MSn- On。
ペプチドマスフィンガープリンティングを、ステップ1およびステップ2のプロトコルについて実施した。
【0038】
消化および消化&還元についてのHPLCクロマトグラムを、分析されたすべての試料について検査した。加えて質量分析データは、獲得されたピークについての質量の確認のためにもまた得られた。ペプチドマッピング技法は、わかりにくい違いを明らかにする能力を保証され、表示されている液体クロマトグラフィーよりも有効にヒトインスリンと様々な型のインスリン類似体との間を識別することができた。
以下の例は、特定の好ましい態様および本発明の側面を説明するために役立つのであり、その範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【0039】
例1:インスリン分子の消化
プロテアーゼV8の消化後に、インスリンヒトからA5~A17およびB1~B13のアミノ酸を含有するフラグメントIV、A18~A21およびB14~B21のフラグメントIII、B22~B30のフラグメントII、およびA1~A4のフラグメントIVの4個のペプチドフラグメントを生成した。これらの4個のペプチドフラグメントは、より迅速に溶離するより小さなペプチドフラグメントと共に順次溶離した。4個のアミノ酸のフラグメントIは、10分以内に最初に溶離し、最も低いUV吸光度を示した。9個のアミノ酸のフラグメントIIは、約16分に溶離し、これに続き12個のアミノ酸を含有するフラグメントIIIが、フラグメントIIよりも約2.7分遅れてカラムから溶離した。26個のアミノ酸を含有しているフラグメントIVは、約26分に溶離し、最も高いレベルのUV吸収を示した。
図5は、消化条件下でのインスリン試料(自社内の製品であるインスゲン(Insugen)および商業上の製品であるノボリン)の重ね合わせを表している。図7は、消化のプロセスによって生成されたフラグメントをUVクロマトグラムとして示し、一方で図9は、フラグメントの質量を確認している。
【0040】
例2:インスリンアスパルトの消化
プロテアーゼV8の消化後に、インスリンヒトからA5~A17およびB1~B13のアミノ酸を含有するフラグメントIV、A18~A21およびB14~B21のフラグメントIII、B22~B30のフラグメントII、およびA1~A4のフラグメントIVの4個のペプチドフラグメントを生成した。フラグメントIおよびIVは、インスリンと比較したときに配列中に変化がないために、インスリン分子のものとほぼ同じ保持時間で溶離した。アスパルトについてのフラグメントIIは(配列中に以下の変化があるにもかかわらず:アスパルト-AspB28によって置換されたProB28の変更)、インスリンのものと同じ保持時間で溶離した。アスパルトについてのフラグメントIIIは、配列中に変化がないために、インスリンのものと同じ保持時間で溶離した。
図7は、消化のプロセスによって生成されたフラグメントをUVクロマトグラムとして表し、ここで図11は、フラグメントの質量を確認している。
【0041】
例3:インスリンリスプロの消化
プロテアーゼV8の消化後に、インスリンヒトからA5~A17およびB1~B13のアミノ酸を含有するフラグメントIV、A18~A21およびB14~B21のフラグメントIII、B22~B30のフラグメントII、およびA1~A4のフラグメントIVの4個のペプチドフラグメントを生成した。フラグメントIおよびIVは、インスリンと比較すると配列中に変化がないため、インスリン分子のものとほぼ同じ保持時間で溶離した。リスプロについてのフラグメントIIは(配列中に以下の変化があるにもかかわらず:リスプロ-LysB29→ProB29の変更)、インスリンのものと同じ保持時間で溶離した。リスプロについてのフラグメントIIIは、配列中に変化がないために、インスリンのものと同じ保持時間で溶離した。
図7は、消化のプロセスによって生成されたフラグメントをUVクロマトグラムとして表し、一方で図12は、フラグメントの質量を確認している。
【0042】
例4:インスリングラルギンの消化
プロテアーゼV8の消化後に、インスリンヒトからA5~A17およびB1~B13のアミノ酸を含有するフラグメントIV、A18~A21およびB14~B21のフラグメントIII、B22~B30のフラグメントII、およびA1~A4のフラグメントIVの4個のペプチドフラグメントを生成した。インスリングラルギンは、インスリンヒトのそれらと比較して、フラグメントIIおよびIIIの保持時間において有意なシフトを示した。インスリングラルギン上のAsnA21とGlyの置換は、フラグメントIIIの保持時間を遅らせた。その上、インスリングラルギンのフラグメントII上の2個のアルギニンの付加(ArgB31~32)は、インスリンヒトのそれよりも前の溶離をもたらした。図7は、消化のプロセスによって生成されたフラグメントをUVクロマトグラムとして示し、一方で図10は、フラグメントの質量を確認している。
【0043】
例5:還元条件下でのインスリン分子の消化
還元条件下でのGlu-Cの消化後に、ヒトインスリン分子から6個のペプチドフラグメントを生成した。4個のアミノ酸のフラグメントIは、5.2分以内に最初に溶離した;4個のアミノ酸のフラグメントIIは、約9.7分に溶離して、最も低いUV吸光度を示し、これに続き13個のアミノ酸を含有するフラグメントIIIが、フラグメントIIよりも約5.0分遅れてカラムから溶離した。9個のアミノ酸を含有するフラグメントIVは、約15.5分に溶離した;8個のアミノ酸のフラグメントVは、約23.8分に溶離し、最終的に13個のアミノ酸のフラグメントVIが、約28.5分に溶離した。
図6は、還元を伴った消化条件下でのインスリン試料(自社内の製品であるインスゲンおよび商業上の製品であるノボリン)の重ね合わせを表す。図8は、消化とこれに続く還元のプロセスによって生成されたフラグメントをUVクロマトグラムとして表し、図13は、フラグメントの質量を確認する。
【0044】
例6:還元条件下でのインスリンアスパルトの消化
インスリンアスパルトについて、80%ACNを溶離液Bとして使用してペプチドマスフィンガープリンティングを実行した。4個のアミノ酸のフラグメントIは、5.3分以内に最初に溶離した;4個のアミノ酸のフラグメントIIは、約10.4分に溶離して、最も低いUV吸光度を示し、これに続き13個のアミノ酸を含有するフラグメントIIIは、フラグメントIIよりも約5.5分遅れてカラムから溶離した。9個のアミノ酸を含有するフラグメントIVは、約16.2分に溶離した;8個のアミノ酸のフラグメントVは、約26.9分に溶離し、最終的に13個のアミノ酸のフラグメントVIは、約30.5分に溶離した。図8は、消化とこれに続く還元のプロセスによって生成されたフラグメントをUVクロマトグラムとして表し、図15は、フラグメントの質量を確認する。
【0045】
例7:還元条件下でのインスリンリスプロの消化
インスリンリスプロは、ヒトインスリンのフラグメントIVの溶離の約1分前である14.4分にはっきりと溶離したフラグメントIVを除いて、フラグメントについての溶離パターンにおいて変化がなかった。図8は、消化とこれに続く還元のプロセスによって生成されたフラグメントをUVクロマトグラムとして表し、ここで図16は、フラグメントの質量を確認する。
【0046】
例8:還元条件下でのインスリングラルギン(Gargine)の消化
インスリングラルギンについて、配列中に変化がないために、フラグメントII、III、VおよびVIについての溶離パターンにおいて変化はない。フラグメントIは、配列中に変化(AsnA21のGlyとの置換)があるために、5.8分に溶離した。フラグメントIVは、配列中の変化;2個のアルギニン(ArgB31~32)の付加のために、ヒトインスリンおよびインスリンリスプロと比較すると、11.4分の前に溶離した。図8は、消化とこれに続く還元のプロセスによって生成されたフラグメントをUVクロマトグラムとして表す。図14は、6個のフラグメントの質量を確認する。
【0047】
例9:ペプチドマップの比較
試験され、分析された自社内の製品のペプチドマッピングは、参照製品と同一であった。その上、様々なインスリン類似体とヒトインスリンについてのPMFの比較は、単一アミノ酸変化でさえ、ペプチドマッピングによって検出され得ることを示した。インスリンヒトとインスリンリスプロに関して、インスリンヒトのそれよりも早く溶離されたインスリンリスプロのフラグメントIVは、アミノ酸の再配列が、構造変化を誘導し、ペプチドフラグメントの保持時間を変えるであろうことを示唆した。
AsnA21のGlyとの置換によって引き起こされるインスリングラルギンのフラグメントIでの低減した極性は、保持時間を遅らせることをもたらす。対照的に、フラグメントIV上の2個のアルギニンの付加が極性を増加させることは、保持時間を短縮させた。ゆえに我々は、インスリン類似体の型が、インスリン類似体とヒトインスリンとの間に最大でも3個のアミノ酸にすぎない違いがあるために、PMFによってのみ有効に同定され得ると結論付けた。図7および8からのクロマトグラムは、そこから結論が生成された、ペプチドマップの比較を表す。
【0048】
質量の検出は、両方のプロセスを用いて達成されたが、しかしながら、ポリペプチドの配列の確認は、ポリペプチド(ここで最大でも3個のアミノ酸にすぎない違いがある)の消化とこれに続く還元のプロセスによって達成された。
図1
図2
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