(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
B65D1/02 230
(21)【出願番号】P 2020505052
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2019008679
(87)【国際公開番号】W WO2019172267
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2018039065
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 要一
(72)【発明者】
【氏名】上原 幸洋
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-506895(JP,A)
【文献】特公平03-014618(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/121890(WO,A1)
【文献】特表2010-535137(JP,A)
【文献】特開昭55-064039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口するネック部と、筒状の胴部と、該胴部の一端側を封止する底部と、を有する樹脂製の容器であって、
前記底部は、前記胴部の外周部に設けられる接地部と、前記接地部の内側に設けられ内圧の変化に応じて変形する上げ底部と、を有し、
前記上げ底部は、中央部に設けられる上面部と、該上面部と前記接地部とを繋ぐ連結部とを備え、
前記底部の少なくとも前記連結部には、前記底部の径方向に延びて当該底部を補強する補強部が設けられており、
前記補強部は、前記底部の内面に突出するリブであり、
前記連結部の外壁面は、面一であり、
前記連結部の内壁面のうち前記補強部が設けられている部分は凸面であり、前記内壁面のうち前記補強部が設けられていない部分は凹面であ
り、
前記補強部は、前記連結部に設けられ、かつ前記上面部に向かうにつれて前記接地部の接地面から徐々に離れるように連続的に湾曲している本体部と、前記本体部から連続して前記上面部まで延びる第1の延設部と、前記本体部から連続して前記接地部まで延びる第2の延設部と、を有する
ことを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器であって、
前記連結部は、内圧が常圧である状態で、前記上面部側の端部が前記接地部側の端部よりも前記ネック部側に位置するように形成されている
ことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の容器であって、
前記底部には、複数本の前記補強部が中心部から外周部に向かって放射状に設けられている
ことを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項
1~3の何れか一項に記載の容器であって、
前記第1の延設部及び前記第2の延設部の厚さが、前記本体部の厚さよりも薄い
ことを特徴とする容器。
【請求項5】
請求項
1~4の何れか一項に記載の容器であって、
前記第1の延設部及び前記第2の延設部の幅が、前記本体部の幅よりも狭い
ことを特徴とする容器。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか一項に記載の容器であって、
前記連結部の厚さは0.4mm~0.5mmであり、
前記補強部の厚さは0.5mm~1.0mmであり、かつ前記補強部の幅は1.5mm~2.0mmである
ことを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性を有する樹脂製の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いてブロー成形された容器が知られている。PET製の容器は、透明度、強靭性、衛生面等に優れ、種々の内容物の容器として用いられている。特に、飲料等の液状物を収容する容器として、現在は広く普及している。昨今、その用途は更なる広がりを見せており、ジャムやパスタソースといった半固形物を収容する広口容器も登場し始めている。またPET製の容器の一つである耐熱容器は、殺菌のために高温にされたこれらの食品や飲料を充填することができる。
【0003】
この種の容器においては、例えば90℃程度の高温にて加熱殺菌した内容物を、高温のままで充填し、蓋で封止した後に冷却することがある。この冷却時には、内容物の体積減少に伴い、容器の内部が減圧雰囲気となり、胴部に不規則な変形が生じる虞がある。容器の胴部の一部に減圧に伴って変形する凹凸部位を意図的に設けることで、この胴部の不規則な変形を抑制することはできる。しかしながら、商品ラベルの添付面が凹凸状になってしまうため、あまり好ましくない。
【0004】
また、胴部の不規則な変形を抑制するために、容器の底面に、容器内部の減圧による変形を吸収するための構造を設けたものがある。例えば、合成樹脂製壜体の底部の底面に、減圧時における壜体の内部方向への陥没変形が可能に底面壁を壜体の内部方向に陥没させて形成した陥没部を有するものがある(特許文献1参照)。このように、容器内の減圧を吸収するための構造を胴部以外に設けることで、胴部に凹凸部位を設ける必要がなくなるため、商品ラベルの形状や添付位置等の選択肢が増え、更には容器デザインの融通性(フレキシビリティ)が向上する。
【0005】
ところで、容器に充填する内容物には、上述のような高温での充填が適さないものもある。例えば、内容物がピクルス等の食品である場合、充填前にそれ自体を高温殺菌してしまうと、内容物の品質が低下してしまう虞がある。
【0006】
この場合、例えば、高温殺菌前に内容物を容器に充填して容器を封止し、その後、容器と共に内容物を所定条件下で高温殺菌することで、内容物の品質低下を抑制することができる。
【0007】
ただし、このように容器と共に内容物を高温殺菌する場合、内容物の温度上昇に伴って容器の内圧が上昇して容器が変形してしまう虞がある。例えば、特許文献1に記載の容器(壜体)は、あくまで壜体(容器)の内圧が常圧状態から減圧状態(負圧)へと移る際に、壜体の内部方向への陥没変形を可能としたものであり、内圧が常圧状態から加圧状態(陽圧)へと移る際の壜体(底部)の変形は考慮されていない。
【0008】
また容器の内圧が上昇した際に、容器底部を変形させて胴部の変形を抑制するために、例えば、容器底部の肉厚を薄くして、容器底部を変形させ易くすることが考えられる。ただし、容器底部の肉厚を薄くして底部の剛性が低くなり過ぎると、容器の内圧の上昇により容器底部が必要以上に変形してしまう虞がある。
【0009】
このため、容器底部の剛性は適切に調整する必要がある。しかしながら、容器底部の全体の肉厚を変更することのみで容器底部の剛性を適切に調整するのは難しい。さらに、容器底部の形状は、強度を考慮しつつ内圧変動の大小(内容物の体積変化の大小)を見積もって設計する必要性があるが、当初より容器底部の形状を適切に設計するのは非常に難しい。
【0010】
ここで、容器底部の剛性を高めるため、容器底部にリブを設け、このリブによって底部を補強するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第5316940号公報
【文献】特公平3-14618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に記載のように容器の底部にリブ(補強部)を設けることで、底部の剛性を高めることができ、容器底部の剛性を調整し易くなる。
【0013】
しかしながら、単純に容器底部に補強部(リブ)を設けただけでは、容器内の圧力変動が生じた際、例えば、容器の内圧が常圧状態から加圧状態(陽圧)へと移る際、容器底部の剛性を適切に調整することはできない。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、内部の圧力変動に伴って発生する底部の変形を抑制して良好な美観の維持を図ることができる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、開口するネック部と、筒状の胴部と、該胴部の一端側を封止する底部と、を有する樹脂製の容器であって、前記底部は、前記胴部の外周部に設けられる接地部と、前記接地部の内側に設けられ内圧の変化に応じて変形する上げ底部と、を有し、前記上げ底部は、中央部に設けられる上面部と、該上面部と前記接地部とを繋ぐ連結部とを備え、前記底部の少なくとも前記連結部には、前記底部の径方向に延びて当該底部を補強する補強部が設けられていることを特徴とする容器にある。
【0016】
かかる本発明によれば、補強部によって上げ底部、特に、連結部の剛性が高められる。したがって、補強部を所定の形状で設けることで、容器内の圧力変動が生じた場合でも、上げ底部を含む底部の形状が適切に維持される。
【0017】
ここで、前記連結部は、内圧が常圧である状態で、前記上面部側の端部が前記接地部側の端部よりも前記ネック部側に位置するように形成されていることが好ましい。これにより、容器の内圧が上昇した場合でも、上げ底部を含む底部の形状がより適切に維持される。
【0018】
また、前記補強部が、前記底部の内面に突出するリブであることが好ましい。これにより、底部の剛性を適切に高めることができ、且つ良好な外観を維持することができる。
【0019】
また前記底部には、複数本の前記補強部が中心部から外周部に向かって放射状に設けられていることが好ましい。
【0020】
また前記補強部は、前記連結部に設けられる本体部と、前記本体部から連続して前記上面部まで延びる第1の延設部と、前記本体部から連続して前記接地部まで延びる第2の延設部と、を有することが好ましい。
【0021】
また前記第1の延設部及び前記第2の延設部の厚さが、前記本体部の厚さよりも薄いことが好ましい。
【0022】
また第1の延設部及び前記第2の延設部の幅が、前記本体部の幅よりも狭いことが好ましい。
【0023】
このように補強部を所定形状に形成することで、容器内の圧力変動が生じた際に、上げ底部を含む底部の形状をより適切に維持させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明に係る容器によれば、内部の圧力変動(例えば、圧力上昇)が生じた場合でも、上げ底部を含む底部の剛性度が高められているため、底部の変形が抑止される。例えば、容器と共に内容物を高温殺菌する際にも、内容物の温度変化に伴って容器内の圧力変動が生じるが、その際にも、内圧の変動に起因する底部の変形を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態1に係る容器の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る容器の底部を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る容器の底部を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る容器の底部を示す拡大図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る補強部を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る容器の底部の変形を説明する図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る容器の底部を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係る補強部を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る容器の底部の変形例を示す図である。
【
図10】本発明に係る容器を成形するためのプリフォームの一例を示す図である。
【
図11】本発明に係る容器を成形するためのプリフォームの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る容器の正面図であり、
図2は、容器の底面を示す図であり、
図1のA-A′断面図である。また
図3及び
図4は、容器の底部の形状を示す図であり、
図3は
図2のB-B′断面図であり、
図4はその一部を拡大した断面図である。
図5は、本発明の実施形態1に係る補強部を示す断面図であり、
図2のC-C′断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る容器(耐熱容器)10は、一端側(上端側)に広口の開口11を有する筒状のネック部12と、ネック部12に繋がる筒状の胴部13と、胴部13から連続する底部14と、を備えている。容器10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製の容器であり、例えば、ピクルス(液体含む)等の食品が内容物として充填される。容器10の大きさは、特に限定されないが、本実施形態では胴部13の直径が70mm程度に形成されている。
【0029】
ネック部12には、図示しないキャップが螺合するネジ部15が形成されている。胴部13には、その周方向に亘って連続する凹状リブ16が、胴部13の高さ方向に複数本(例えば、5本)設けられ、これにより胴部13の剛性が高められている。
【0030】
なお容器10は、プリフォームを二軸延伸ブローすることによって形成されたものである。つまり容器10は、ネック部12以外の部分を二軸延伸ブローすることによって形成されている。そして容器10のネック部12以外の部分は、ヒートセットによる結晶化及び内部応力の除去作用により、高い耐熱性が付与されている。またネック部12も白色結晶化させ、耐熱性を付与することが望ましい。
【0031】
図2~
図5に示すように、胴部13の底を塞ぐ底部14は、胴部13の中央部を内側に窪ませた上げ底部17と、上げ底部17の外周部に設けられる接地部18とを備えている。上げ底部17とは、接地部18の内側の面を構成する立ち上がり部19よりも胴部13の中央側を塞いで設けられている部分をいう。また接地部18とは、開口11を上向きとして容器10を、例えば、台上に載置した際に台に接地する接地面18aが形成された部位であり、本実施形態では、立ち上がり部19から外側の部分である。
【0032】
また、立ち上がり部19は、容器10が台上に載置された状態で台の表面に対して内側向けて若干傾斜するように構成されている。すなわち立ち上がり部19は、接地部18の接地面18aに対して内側に向けて若干傾斜するように構成されており、接地面18aに対して垂直に起立していない。
【0033】
また上げ底部17は、底部14の中央部に設けられた上面部20と、この上面部20と立ち上がり部19とを繋ぐ連結部21とを備えている。なお上面部20は、上げ底部17の上面を構成する部分であり、本実施形態では、その中央部に若干窪んだ凹状部20aが形成されている。
【0034】
ここで、連結部21は、内圧が常圧(略大気圧)である状態で、容器10の外側が凸となる曲面に形成されている。さらに連結部21は、容器10の内圧が常圧である状態で、上面部20側の端部が、接地部18側の端部よりもネック部12側(胴部13の内側:
図3中上側)に位置するように形成されている。
【0035】
言い換えれば、容器10の内部が常圧である状態で、連結部21と上面部20とで形成される第2の角部23が、連結部21と立ち上がり部19とで形成される第1の角部22よりもネック部12側(胴部13の内側:
図3中上側)に位置している。このため、第1の角部22と第2の角部23とを繋ぐ直線L1は、接地部18の接地面18aから延長された直線L2に対して所定角度θaで傾斜している。
【0036】
また
図4に示すように、連結部21と立ち上がり部19とで形成される第1の角部22の角度θ1は、連結部21と上面部20とで形成される第2の角部23の角度θ2よりも小さくなっている。本実施形態では、第1の角部22には、その一部(主に連結部21)を容器10の内側に窪ませた窪み部22aが形成されており、その結果、第1の角部22の角度θ1が、第2の角部23の角度θ2よりも小さくなっている。これにより、第1の角部22は、さらに第2の角部23よりも屈曲し易くなっている。なお窪み部22aは、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0037】
また、直線L1の直線L2に対する角度θaと、第1の角部22の角度θ1と、第2の角部23の角度θ2とは、容器10の内圧が常圧である状態ではθa<θ1<θ2の関係を満たしていることが好ましい。
【0038】
また底部14を構成する上げ底部17の少なくとも連結部21には、底部14の径方向に延びて底部14を補強する補強部24が形成されている。この補強部24は、底部14の内面に突出するリブからなり、底部14の剛性を高めている。
【0039】
補強部24の形状や配置は、特に限定されないが、例えば、底部14には、内面に突出するリブである補強部24が、底部14の中心部から放射状に複数本(本実施形態では、45度間隔で8本)設けられている。勿論、補強部24の数は、特に限定されず、7本以下でも9本以上であってもよい。
【0040】
そして上げ底部17は、補強部24を除いて略同程度の厚さd1に形成されており(
図5参照)、この補強部24が設けられていることで、上げ底部17の各部位が適切な剛性となるように所定形状に形成されている。
【0041】
図5に示すように、補強部24の伸長方向と直交する断面(C-C′断面)で見たとき、上げ底部17を構成する連結部21の外壁面21aは面一となる。一方、連結部21の内壁面21bは、複数の補強部24が設けられているため、凹凸面となっている。すなわち補強部24が設けられている部分が凸となり、補強部24が設けられていない部分が凹となっている。言い換えれば、連結部21の補強部24が設けられた部位は、補強部24がない部位より肉厚となっている。
【0042】
このような各補強部24は、連結部21が適切な剛性となるように、予め設定された所定厚さd2及び所定幅w1に形成されている。例えば、本実施形態では、連結部21(上げ底部17)の厚さd1が0.4mm~0.5mm程度であるのに対し、各補強部24の厚さd2は、0.5mm~1.0mm程度であり、幅w1は、1.5mm~2.0mm程度に形成されている。
【0043】
また本実施形態では、各補強部24は、連結部21から第1の角部22及び第2の角部23に亘って連続的に設けられている。つまり各補強部24は、連結部21から上面部20及び接地部18(立ち上がり部19)の一部にまで連続的に形成されている。
【0044】
言い換えれば、補強部24は、連結部21に設けられる本体部25と、本体部25から連続して上面部20まで延びる第1の延設部26と、本体部25から連続して接地部18(立ち上がり部19)まで延びる第2の延設部27と、で構成されている。
【0045】
このように容器10の底部14に所定形状の補強部24が設けられていることで、上げ底部17の剛性が適切に調整されている。したがって、本実施形態に係る容器10では、例えば、容器10内の圧力変動が生じた際(例えば、内圧が上昇した際)、上げ底部17の膨出変形(反転変形)や不規則変形等が抑えられ、容器10の底部14が適切に変形する。したがって、容器10の良好な美観の維持を図ることができる。
【0046】
具体的には、各補強部24は、連結部21から上面部20及び接地部18(立ち上がり部19)の一部にまで連続的に形成されている。すなわち各補強部24が、本体部25と、本体部25から連続する第1の延設部26及び第2の延設部27とで構成されている。
【0047】
これにより、第1の角部22の剛性は高められているものの、連結部21の剛性よりも相対的に若干低くなっている。補強部24は、中央部から放射状に設けられているため、容器10の外側ほどその間隔が広くなる。このため、連結部21よりも外側に位置する第1の角部22の剛性は、連結部21の剛性よりも相対的に若干低くなっている。さらに、第1の角部22は、上述のように第2の角部23より屈曲し易くなっている。
【0048】
このため、容器10内の圧力変動が生じた際(内圧が上昇した際)、上げ底部17は、第1の角部22が主に変形し、第2の角部23の変形量は極めて少ない。すなわち連結部21及び上面部20の変形量は極めて少ない(実質的に変形しない)。したがって、容器10の良好な美観の維持を図ることができる。
【0049】
なお本実施形態では、補強部24は、その長さ方向に亘って略同一厚さで形成されているが、補強部24の厚さは特に限定されるものではない。例えば、第1の延設部26及び第2の延設部27の厚さは、本体部25の厚さより薄くてもよい。
【0050】
また、この補強部24を構成するリブは、容器10(底部14)の内面に設けられていることが好ましい。つまり容器10の外面には補強部24が設けられていないことが好ましい。これにより、容器10の美的外観をより向上することができる。さらに容器10の成形性も向上することができる。
【0051】
仮に、容器10の外面に補強部(リブ)24を設けようとすると、成形時に、金型(底型)との接触状態によっては横方向に延伸され辛くなる箇所が生じてしまう可能性がある。この結果、補強部24の形成領域が小さくなったり、長さが不均一に形成されてしまったりする虞がある。
【0052】
ここで、
図6を参照して、容器10の内圧の変化に伴う上げ底部17の変形状態についてより詳細に説明する。
【0053】
例えば、ピクルス(液体含む)等の食品である内容物を容器10に充填する際には、品質低下を抑制するために、10℃~40℃程度に温度管理された内容物を容器10に充填し開口11をキャップ(図示なし)で封止する。その後、容器10を、例えば、85℃~95℃程度の高温媒体で所定時間(30分程度)加熱し、容器10の内部(キャップの内面領域を含む)と共に内容物の殺菌処理を行うことがある。このような高温での殺菌処理を行う際にも、温度上昇に伴って内容物等の体積が増加し、容器10内の圧力が変動(上昇)することがある。
【0054】
上述のように補強部24が設けられていることで、第1の角部22の剛性は、連結部21の剛性よりも相対的に若干低くなっている。このため、容器10の内圧が上昇すると、例えば、
図6に示すように、上げ底部17は、主に第1の角部22を基点として容器10の外側(図中下側)に変位するが、連結部21及び上面部20の変形量は少ない。
【0055】
このように容器10の内圧の上昇に伴って上げ底部17が若干変形することで、容器10の内圧の上昇が抑制される(好ましくは吸収される)。ただし、その際の連結部21及び上面部20の変形量は少ないため、容器10の美観を良好に維持することができる。
【0056】
また本実施形態では、上述のように容器10の内部が常圧である状態では、第2の角部23が第1の角部22よりも容器10の内側(ネック部12側)に位置している。つまり上げ底部17を構成する連結部21が、接地面18aに対して所定角度θで傾斜して設けられている。このため、上げ底部17は、より第1の角部22を基点として変形し易くなる。
【0057】
また連結部21は、内圧が常圧である状態で、容器10の外側が凸となる曲面に形成されている。これにより、上げ底部17が変形し辛くなり、容器10の内圧が上昇した際にも、上げ底部17の変形が抑制される。したがって、容器10の美観を良好に維持することができる。
【0058】
その後、容器10及び内容物の高温殺菌が終了すると、容器10を常温まで冷却する。内容物の温度低下に伴い容器10の内圧は減圧されて常圧(略大気圧)まで下降する。そして、この内圧の下降時に、上げ底部17は
図6中に点線で示す元の位置まで変位する。
【0059】
以上のように、本発明に係る容器10の底部14は、封止後の高温殺菌処理で生ずる容器10の内圧変動(具体的には、常圧から圧力上昇してピーク圧を所定時間維持し、次いで圧力下降するような内圧の遷移)に好適に形状を維持して耐えることができる機能を備えている。
【0060】
ところで、底部14に設けられる補強部24の形状や大きさは、特に限定されるものではなく、底部14の各部位(特に、連結部21、第1の角部22及び第2の角部23)が所望の剛性となるように適宜決定されればよい。例えば、補強部24は、連結部21のみに設けられていてもよい。つまり補強部24は本体部25のみで構成されていてもよい。
【0061】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係る容器の底部を示す図であり、
図8は、実施形態2に係る補強部を示す断面図であり、
図8(a)は
図7のD-D′断面図であり、
図8(b)は
図7のE-E′断面図である。
【0062】
図7及び
図8に示すように、本実施形態では、各補強部24を構成する本体部25が、連結部21が適切な剛性となるように、予め設定された所定幅w2に形成されている。
【0063】
第1の延設部26は、本体部25よりも狭い幅(予め設定された所定幅w3)で、本体部25から連続して第1の角部22に対応する部分に設けられている。すなわち第1の延設部26は、連結部21から立ち上がり部19に達する長さで設けられている。
【0064】
第2の延設部27は、第1の延設部26と同様に、本体部25よりも狭い幅(予め設定された所定幅w3)で、本体部25から連続して第2の角部23に対応する部分に設けられている。すなわち第2の延設部27は、連結部21から上面部20に達する長さで設けられている。
【0065】
言い換えれば、補強部24の本体部25は、第1の角部22及び第2の角部23には達しない長さで設けられている。すなわち第1の角部22及び第2の角部23には、第1の延設部26及び第2の延設部27に比べて幅の広い本体部25は設けられていない。
【0066】
本実施形態では、第1の延設部26及び第2の延設部27は、本体部25の1/2程度の幅w3で形成されている。なお第1の延設部26と第2の延設部27とは同一幅w3で形成されているが、これら第1の延設部26及び第2の延設部27の幅は、必ずしも一致していなくてもよい。またこれら第1の延設部26及び第2の延設部27は、必要に応じて設けられればよく、何れか一方のみが設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。
【0067】
また本実施形態では、本体部25は、予め設定された所定厚さd3で形成されており、第1の延設部26及び第2の延設部27の厚さ(高さ)は、本体部25と同じ厚さd3で形成されている。これら第1の延設部26及び第2の延設部27の厚さは、適宜決定されればよく、本体部25の厚さd3よりも薄くするようにしてもよい。
【0068】
なお本実施形態では、上げ底部17の補強部24を除く部分は、接地部18と略均一な厚さで形成されているが、補強部24を除く上げ底部17の厚さは特に限定されるものではない。例えば、上げ底部17は、接地部18よりも若干肉薄に形成されていてもよい。
【0069】
以上のように本実施形態では、容器10の底部14に、所定幅w2の本体部25と、本体部25よりも狭い幅w3の第1の延設部26及び第2の延設部27とを含む補強部24が設けられていることで、上げ底部17の剛性を適切に調整することができる。具体的には、所定幅w2(>w3)の本体部25が設けられていることで連結部21の剛性は十分に高められる。一方、第1の角部22及び第2の角部23には、所定幅w3(<w2)が設けられていることで、これら第1の角部22及び第2の角部23は、剛性が過度に高められることがなく、適切な剛性となる。
【0070】
そして、このような本実施形態の容器10では、内圧の変動に伴う底部14の変形を抑制して、良好な美観の維持を図ることができる。具体的には、内圧変動に伴う上げ底部17の膨出変形(反転変形)や不規則変形を抑止することができる。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る容器10の底部14は、封止後の高温殺菌処理で生ずる容器10の内圧変動(具体的には、常圧から圧力上昇してピーク圧を所定時間維持し、次いで圧力下降するような内圧の遷移)に好適に形状を維持して耐えることができる機能を備えている。
【0072】
なお本実施形態においても、底部14に設けられる補強部24の形状や大きさは、特に限定されるものではなく、底部14の各部位(特に、連結部21、第1の角部22及び第2の角部23)が所望の剛性となるように適宜決定されればよい。
【0073】
例えば、上述の例では、補強部24を構成する本体部25は、一定の幅で形成されていたが、本体部25の幅は一定である必要はない。
図9に示すように、本体部25の第1の延設部26側(接地部18側)の幅w4が、第2の延設部27側(上面部20側)の幅w5よりも広くなるようにしてもよい。この場合、本体部25の幅は、第1の延設部26側ほど徐々に広くなっていることが好ましい。
【0074】
また図示は省略するが、例えば、本体部25の第1の延設部26側(接地部18側)の高さが、第2の延設部27側(上面部20側)の高さよりも高くなるようにしてもよい。この場合にも、本体部25の高さは、第1の延設部26側ほど徐々に高くなっていることが好ましい。
【0075】
本体部25をこのような形状とすることで、連結部21の剛性を適切に高めることができると共により剛性を均一化することができ、容器10の内圧の変動に伴う変形も効果的に抑制することができる。
【0076】
なお接地部18を構成する立ち上がり部19の高さは、特に限定されないが、内圧変動が生じた際の上げ底部17の剛性度を確保するため、極力低く設定することが好ましい。具体的には、容器10の内圧が上昇した際に、第1の角部22が十分に形成できる程度の高さに設定することが好ましい。
【0077】
さらに、上述のような補強部24を備える容器10の製造方法は、特に限定されず、いわゆるコールドパリソン方式又はホットパリソン方式の何れの成形方法も採用することができる。ただし、何れの成形方法を採用するかによってプリフォームの形状を変更することが好ましい。
【0078】
コールドパリソン方式の成形方法を採用する場合、
図10に示すように、プリフォーム100の底部には、補強部24となる部分に、内面から内側に突出する凸部101を設けることが好ましい。プリフォーム100の凸部101に対応する部分は、他の部分に比べて厚くなるため、ブロー成形時には温度が上がり難い。このため、プリフォーム100の凸部101に対応する部分は、二軸延伸ブローした後も他の部分に比べて厚く残り易い。したがって、プリフォーム100を二軸延伸ブロー成形して容器10とすることにより、補強部24を比較的容易に形成することができる。
【0079】
一方、ホットパリソン方式の成形方法を採用する場合、
図11に示すように、プリフォーム100の底部には、補強部24となる部分に、内面の一部を窪ませた凹部102を設けておくことが好ましい。プリフォーム100の凹部102に対応する部分は、他の部分に比べて薄くなるため、保有熱が低くなり易い。このため、プリフォーム100の凹部102に対応する部分は、二軸延伸ブローした後も他の部分に比べて厚く残り易い。したがって、プリフォーム100を二軸延伸ブロー成形して容器10とすることにより、補強部24を比較的容易に形成することができる。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0081】
例えば、上述の実施形態では容器内の圧力変動として、主に、内圧が上昇して陽圧となった場合について説明したが、本発明は、内圧が下降して負圧になった場合にも同様の効果を奏するものである。
【0082】
また例えば、上述の実施形態では、リブである補強部が上げ底部の内面に突出して設けられた構成を例示したが、勿論、補強部は、上げ底部の外面に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 容器
11 開口
12 ネック部
13 胴部
14 底部
15 ネジ部
16 凹状リブ
17 上げ底部
18 接地部
18a 接地面
19 立ち上がり部
20 上面部
20a 凹状部
21 連結部
22 第1の角部
22a 窪み部
23 第2の角部
24 補強部
25 本体部
26 第1の延設部
27 第2の延設部
100 プリフォーム
101 凸部
102 凹部