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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】多糖類を含むラテックス組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 5/00 20060101AFI20230614BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230614BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230614BHJP
   C09D 109/04 20060101ALI20230614BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20230614BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20230614BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230614BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230614BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230614BHJP
   C09D 103/00 20060101ALI20230614BHJP
   C09J 103/00 20060101ALI20230614BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230614BHJP
   D06M 15/03 20060101ALI20230614BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C08L5/00
C08L101/00
C09D5/02
C09D109/04
C09D133/00
C09D163/00
C09D175/04
C09D201/00
C09D7/65
C09D103/00
C09J103/00
C09J201/00
D06M15/03
D06M15/693
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020512593
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2018047940
(87)【国際公開番号】W WO2019046123
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/553,210
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520346620
【氏名又は名称】ニュートリション・アンド・バイオサイエンシーズ・ユーエスエー・フォー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ピーター・レンジェス
(72)【発明者】
【氏名】ティザズゥ・エイチ・メコーネン
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/074862(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/123644(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/074859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C09D201/00
C09J201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含む水性ラテックス組成物であって、前記多糖粒子は
i)構造1:
【化1】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり;
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-Cx-COOHを含む第1の基であり、ここで、前記第1の基の-Cx-部分は、2~6個の炭素原子の鎖を含み;及び
(C)前記化合物は、0.001~3の、前記第1の基での置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物;
ii)構造2:
【化2】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(i)nは、少なくとも6であり、
(ii)各Rは、独立して、-H又はアシル基であり、及び
(iii)前記化合物は、0.001~3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物;
iii)構造3:
【化3】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(C)前記化合物は、0.001~3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物;
iv)構造4:
【化4】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は正電荷を有する有機基であり、及び
(C)前記化合物は、0.001~3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物;又は
それらの組み合わせ
を含む少なくとも1種の多糖を含む、水性ラテックス組成物。
【請求項2】
前記多糖粒子は、20nm~5000ミクロンの範囲の少なくとも1つの次元における平均粒径を有する、請求項1に記載のラテックス組成物。
【請求項3】
前記多糖粒子は、多糖とポリマー固形分との総重量を基準として0.01重量パーセントの多糖固形分~75重量パーセントの多糖固形分の範囲の量で存在する、請求項1又は2に記載のラテックス組成物。
【請求項4】
前記多糖粒子は、
構造1:
【化5】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり;
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C x -COOHを含む第1の基であり、ここ
で、前記第1の基の-C x -部分は、2~6個の炭素原子の鎖を含み;及び
(C)前記化合物は、0.001~3の、前記第1の基での置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物;
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性ラテックス組成物。
【請求項5】
前記多糖粒子は、
構造2:
【化6】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(i)nは、少なくとも6であり、
(ii)各Rは、独立して、-H又はアシル基であり、及び
(iii)前記化合物は、0.001~3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物;
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性ラテックス組成物。
【請求項6】
前記多糖粒子は、
構造3:
【化7】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(C)前記化合物は、0.001~3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グ
ルカンエーテル化合物;
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性ラテックス組成物。
【請求項7】
前記多糖粒子は、
構造4:
【化8】
によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は正電荷を有する有機基であり、及び
(C)前記化合物は、0.001~3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物;
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性ラテックス組成物。
【請求項8】
前記ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、少なくとも1種の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーから重合されたポリマー;ポリウレタン;エポキシ;ゴムエラストマー;又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項9】
前記ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、少なくとも1種の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーから重合されたポリマーを含み、及び前記モノマーは、ビニルモノマー、アクリルモノマー、アリルモノマー、アクリルアミドモノマー、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸又はそれらの混合物を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項10】
前記ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ポリウレタン又はエポキシを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項11】
前記ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ゴムエラストマーを含み、及び前記ゴムエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、スチレンブタジエンコポリマーゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン又はネオプレンを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項12】
前記ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、10nm~2500nmの範囲の少なくとも1つの次元における平均粒径を有する粒子を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項13】
前記ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンの前記ポリマーは、多糖とポリマー固形分との総重量を基準として0.5重量パーセントのポリマー固形分~90重量パーセントのポリマー固形分の範囲の量で存在する、請求項1~12のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項14】
1種以上の添加剤を更に含み、前記添加剤は、分散剤、レオロジー助剤、消泡剤、発泡剤、接着促進剤、難燃剤、殺菌剤、殺真菌剤、防腐剤、蛍光増白剤、顔料、充填材、沈降防止剤、合体剤、保湿剤、緩衝材、着色剤、粘度調整剤、不凍剤、界面活性剤、バインダー、架橋剤、防食剤、硬化剤、pH調整剤、塩、増粘剤、可塑剤、安定剤、増量剤、艶消剤又はそれらの組み合わせである、請求項1~13のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のラテックス組成物を含むペイント調合物。
【請求項16】
乾燥形態における、請求項1~14のいずれか1項に記載のラテックス組成物を含む接着剤、フィルム、コーティング又はバインダー。
【請求項17】
請求項16に記載の接着剤、フィルム、コーティング又はバインダーを含む物品。
【請求項18】
紙、皮革、木材、金属、ポリマー、繊維基材又は建築表面である、請求項17に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月1日に出願された「Latex Compositions Comprising Polysaccharides」という名称の米国仮特許出願第62/553,210号明細書に対する優先権及びその利益を主張するものであり、その開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含むラテックス組成物並びにラテックス組成物を製造する方法に関する。ラテックス組成物は、ペイント、接着剤、フィルム、コーティング及びバインダーにおいて有用である。
【背景技術】
【0003】
ペイント、接着剤及びコーティングに使用されるものなど、ラテックス組成物が再生可能及び/又は生分解性材料を含有することへの高まる要求が存在する。現在、成分の少なくとも一部が再生可能及び/又は生分解性材料で置き換えられ、且つラテックス組成物から製造されたコーティングの硬度、手触り及び光沢又は艶消などの特性の改善を付与することができるテックス組成物が一層必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含む水性ラテックス組成物が本明細書に開示される。一実施形態において、多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含む水性ラテックス組成物であって、多糖粒子は、
i)ポリアルファ-1,3-グルカン;
ii)ポリアルファ-1,3-1,6-グルカン;
iii)構造1:
【化1】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり;
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、ここで、前記第1の基の-C-部分は、2~6個の炭素原子の鎖を含み;及び
(C)この化合物は、約0.001~約3の、第1の基での置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物;
iv)構造2:
【化2】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(i)nは、少なくとも6であり、
(ii)各Rは、独立して、H又はアシル基であり、及び
(iii)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物;
v)構造3:
【化3】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(C)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物;
vi)構造4:
【化4】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は正電荷を有する有機基であり、及び
(C)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物;又は
それらの組み合わせ
を含む少なくとも1種の多糖を含む、水性ラテックス組成物が開示される。
【0005】
一実施形態において、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンを含む。更なる実施形態において、多糖粒子は、約20nm~約5000ミクロンの範囲の少なくとも1つの次元における平均粒径を有する。追加の実施形態において、多糖粒子は、多糖とポリマー固形分との総重量を基準として約0.01重量パーセントの多糖固形分~約75重量パーセントの多糖固形分の範囲の量で存在する。
【0006】
一実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、約10nm~約2,500nmの範囲の少なくとも1つの次元における平均粒径を有する粒子を含む。別の実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、少なくとも1種の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーから重合されたポリマー;ポリウレタン;エポキシ;ゴムエラストマー;又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、少なくとも1種の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーから重合されたポリマーを含み、及びモノマーは、ビニルモノマー、アクリルモノマー、アリルモノマー、アクリルアミドモノマー、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸又はそれらの混合物を含む。別の実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ポリウレタン又はエポキシを含む。更なる実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ゴムエラストマーを含み、及びゴムエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、スチレンブタジエンコポリマーゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン又はネオプレンを含む。
【0007】
更なる実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンのポリマーは、多糖とポリマー固形分との総重量を基準として約0.5重量パーセントのポリマー固形分~約90重量パーセントのポリマー固形分の範囲の量でラテックス組成物中に存在する。
【0008】
更に別の実施形態において、ラテックス組成物は、1種以上の添加剤を更に含み、添加剤は、分散剤、レオロジー助剤、消泡剤、発泡剤、接着促進剤、難燃剤、殺菌剤、殺真菌剤、防腐剤、蛍光増白剤、顔料、充填材、沈降防止剤、合体剤、保湿剤、緩衝材、着色剤、粘度調整剤、不凍剤、界面活性剤、バインダー、架橋剤、硬化剤、pH調整剤、塩、増粘剤、可塑剤、安定剤、増量剤、艶消剤又はそれらの組み合わせである。
【0009】
ラテックス組成物を含むペイント調合物も本明細書に開示される。乾燥形態におけるラテックス組成物を含む接着剤、フィルム、コーティング及びバインダー並びに接着剤、フィルム、コーティング又はバインダーを含む物品が本明細書で更に開示される。いくつかの実施例において、物品は、紙、皮革、木材、金属、ポリマー、繊維基材又は建築表面である。
【0010】
本開示は、例として説明されるが、添付の図に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】長期間のUV光露光にわたる比較例A及び実施例の水性エポキシ調合物の光沢の喪失のグラフ表示である。
図2】長期間のUV光露光にわたる比較例A及び実施例の水性エポキシ調合物の白色度の安定性のグラフ表示である。
図3】長期間のUV光露光にわたる比較例A及び実施例の水性エポキシ調合物の黄変度のグラフ表示である。
図4】長期間のUV光露光にわたる比較例A及び実施例の水性エポキシ調合物の色の全体変化のグラフ表示である。
図5】ASTM D-905標準方法に従って測定される、実施例6A、6B、7、8A、8B及び9並びに比較例B、C、D及びEの木材ビレットについての平均最大せん断応力のグラフ表示である。
図6】APS試験方法D-4に従って測定される、実施例6A、6B、7、8A、8B及び9並びに比較例B、C、D及びEの木材ビレットについての水分サイクリング後の平均最大せん断応力のグラフ表示である。
図7】実施例14及び比較例Gの調合EVA艶消ペイントのせん断粘度のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0013】
本明細書で用いられる場合、用語「実施形態」又は「開示」は、限定的であることを意味するものではなく、特許請求の範囲で定義されるか又は本明細書に記載される実施形態のいずれにも一般に適用される。これらの用語は、本明細書において互換的に用いられる。
【0014】
本開示において、多数の用語及び略語が用いられる。特に明記しない限り、以下の定義が当てはまる。
【0015】
1つの要素又は成分に先行する冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、その要素又は成分の事例(すなわち出現)の数に関して非限定的であることを意図する。そのため、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、1つ又は少なくとも1つを含むと解釈されるべきであり、要素又は成分の単数語形は、その数が明らかに単数であることを意味しない限り複数形も含む。
【0016】
用語「含む」は、特許請求の範囲で言及されるような述べられる特徴、整数、工程又は成分の存在を意味するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、成分又はそれらの群の存在又は追加をそれが排除しないことを意味する。用語「含む」は、用語「から本質的になる」及び「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図する。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図する。
【0017】
存在する場合、全ての範囲は、包括的であり且つ結合可能である。例えば、「1~5」の範囲が列挙される場合、列挙された範囲は、範囲「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」等を含むと解釈されるべきである。
【0018】
数値と結び付けて本明細書で用いられる場合、用語「約」は、その用語が関連して特に具体的に定義されていない限り、数値の±0.5の範囲を指す。例えば、語句「約6のpH値」は、pH値が特に具体的に定義されていない限り、5.5~6.5のpH値を指す。
【0019】
本明細書の全体にわたって与えられるあらゆる最高数値限度は、あらゆるより低い数値限度を、そのようなより低い数値限度が本明細書に明示的に記されているかのように含むことが意図される。本明細書の全体にわたって与えられるあらゆる最低数値限度は、あらゆるより高い数値限度を、そのようなより高い数値限度が本明細書に明示的に記されているかのように含むであろう。本明細書の全体にわたって与えられるあらゆる数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に入るあらゆるより狭い数値範囲を、そのようなより狭い数値範囲が本明細書に全て明示的に記されているかのように含むであろう。
【0020】
本開示の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者によってより容易に理解されるであろう。明確にするために、別個の実施形態との関連で上記及び下記に記載される本開示の特定の特徴は、単一の要素における組み合わせでも提供され得ることが十分に理解されるべきである。反対に、簡潔にするために、単一の実施形態との関連で記載される本開示の様々な特徴は、別個に又は任意の副次的組み合わせでも提供され得る。加えて、文脈が特に明記しない限り、単数形への言及は、複数形も含み得る(例えば、「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つ以上を意味し得る)。
【0021】
本出願に明記される様々な範囲での数値の使用は、特に明確に示さない限り、述べられた範囲内の最小値及び最大値が両方とも語「約」によって先行されるかのように近似値として述べられる。このように、述べられた範囲の上下のわずかな変動を用いて、この範囲内の数値と実質的に同じ結果を達成することができる。同様に、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間の各値及びあらゆる値を含む連続範囲を意図している。
【0022】
本明細書で用いられる場合、用語「体積によるパーセント」、「体積パーセント」、「体積%」及び「体積/体積%」は、本明細書において互換的に用いられる。溶液中の溶質の体積によるパーセントは、式:[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%を用いて求めることができる。
【0023】
用語「重量によるパーセント」、「重量百分率(重量%)」及び「重量-重量百分率(%w/w)」は、本明細書において互換的に用いられる。重量によるパーセントは、組成物、混合物又は溶液中に物質が含まれるときに質量基準での物質の百分率を指す。
【0024】
本明細書で用いられるような用語「重量パーセント多糖固形分」は、本明細書に開示されるラテックス組成物の全固形分中の多糖粒子の重量百分率を指す。本明細書で用いられるような用語「重量パーセントポリマー固形分」は、本明細書に開示されるラテックス組成物の全固形分中のポリマーの重量百分率を指す。本明細書で用いられるような「全固形分」は、多糖粒子及びポリマー分散系又はエマルジョンの重量を指す。ラテックス組成物中の水性溶媒の量は、重量パーセント固形分を計算する際に排除される。
【0025】
重量パーセント多糖固形分は、式
【数1】

(式中、SCPSは、「多糖固形分」を表し、Wt(PS)及びWt(ポリマー)は、ラテックス組成物中に存在する多糖及びポリマーのそれぞれの重量である)
から計算される。用語「多糖固形分」は、固形分の総重量に対する多糖粒子の重量による濃度と同義である。
【0026】
重量パーセントポリマー固形分は、式
【数2】

(式中、SCポリマーは、「ポリマー固形分」を表し、Wt(ポリマー)及びWt(PS)は、ラテックス組成物中に存在するポリマー及び多糖粒子のそれぞれの重量である)
から計算される。用語「ポリマー固形分」は、固形分の総重量に対するポリマーの重量による濃度と同義である。
【0027】
用語「増加した」、「高められた」及び「改善された」は、本明細書において互換的に用いられる。これらの用語は、例えば、増加した量又は活性が比較される量又は活性よりも少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%若しくは200%(又は1%~200%の任意の整数)多い量又は活性を指し得る。
【0028】
語句「非水溶性」は、物質、例えばアルファ-(1,3-グルカン)ポリマーの5グラム未満が23℃の100ミリリットルの水に溶解することを意味する。他の実施形態において、非水溶性は、4g、又は3g、又は2g、又は1g未満の物質が23℃の水に溶解することを意味する。
【0029】
本明細書で用いられる場合、用語「多糖」は、グリコシド結合によって一体に結合した単糖単位の長い鎖からなり、加水分解すると構成単糖又はオリゴ糖を与える高分子炭水化物分子を意味する。本明細書で用いられる場合、用語多糖には、ヒドロキシル基の少なくとも一部がエステル結合(「多糖エステル」)又はエーテル結合(「多糖エーテル」)に変換されている誘導体化多糖類が含まれる。
【0030】
本明細書で用いられる場合、用語「ラテックス」は、水中のポリマー粒子の分散系又はポリマーエマルジョンを意味する。本明細書に開示されるラテックス組成物は、水溶液中に多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含む。
【0031】
本明細書で用いられる場合、用語「分散系」は、1つの物質の別々の小さい固体粒子が、別の物質、例えば水の連続相中に分散している系を意味する。
【0032】
本明細書で用いられる場合、用語「エマルジョン」は、通常、コロイドサイズよりも大きいサイズの小滴で非混和性液体中に乳化剤あり又はなしで分散した液体からなる系を意味する。本明細書で用いられる場合、用語エマルジョンは、2つの非混和性液体の一様な混合物を包含する。
【0033】
本明細書で用いられるような用語「布地」は、天然及び/又は人造繊維又は糸の網状構造を有する織又は編材料を指す。
【0034】
本明細書で用いられるような用語「織物」は、製品が元の布地の特徴的な柔軟性及び風合いを保持する場合の繊維、糸又は布地から製造された衣服及び他の物品を指す。
【0035】
本明細書で用いられるような用語「繊維」は、その長さ寸法が幅及び厚さの横断寸法よりもはるかに大きい細長い物体を指す。したがって、用語繊維には、規則的な又は不規則な横断面を有するモノフィラメント繊維、マルチフィラメント繊維、リボン、ストリップ、それらの複数の任意の1つ又は組み合わせ等が含まれる。
【0036】
本明細書で用いられるような用語「糸」は、繊維の連続ストランドを指す。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「重量平均分子量」又は「M」は、M=ΣN /ΣN(式中、Mは、鎖の分子量であり、Nは、その分子量の鎖の数である)として計算される。重量平均分子量は、静的光散乱、ガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、小角中性子散乱、X線散乱及び沈降速度などの技術によって測定することができる。
【0038】
本明細書で用いられる場合、「数平均分子量」又は「M」は、試料中のポリマー鎖の全ての統計的平均分子量を指す。数平均分子量は、M=ΣN/ΣN(式中、Mは、鎖の分子量であり、Nは、その分子量の鎖の数である)として計算される。ポリマーの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー、(Mark-Houwink方程式)による粘度測定法及び蒸気圧オスモメトリー、末端基測定又はプロトンNMRなどの束一的な方法などの技術によって測定することができる。
【0039】
本開示は、水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含むラテックス組成物に関する。ラテックス組成物並びにラテックス組成物を含むペイント調合物及び乾燥形態におけるラテックス組成物を含む接着剤、フィルム、コーティング(ペイントを含む)又はバインダーを製造する方法も開示される。ペイント、接着剤、フィルム、コーティング又はバインダーを含む物品が更に開示される。物品は、紙、皮革、木材、金属、ポリマー、繊維基材又は建築表面であり得る。乾燥形態におけるラテックス調合物を含むペイント、接着剤、フィルム、コーティング又はバインダーは、増加したコーティング硬度、改善された乾燥時間、改善された耐退色性、より低いブリスタリング及び改善された手触り(すなわちより少ない粘着性感触又はねばねば感)などの利益を提供することができる。
【0040】
多糖粒子は、
i)ポリアルファ-1,3-グルカン;
ii)ポリアルファ-1,3-1,6-グルカン;
iii)構造1:
【化5】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり;
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、ここで、前記第1の基の-C-部分は、2~6個の炭素原子の鎖を含み;及び
(C)この化合物は、約0.001~約3の、第1の基での置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物;
iv)構造2:
【化6】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(i)nは、少なくとも6であり、
(ii)各Rは、独立して、H又はアシル基であり、及び
(iii)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物;
v)構造3:
【化7】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(C)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物;
vi)構造4:
【化8】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は正電荷を有する有機基であり、及び
(C)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物
を含むことができる。
【0041】
そのような多糖粒子の組み合わせも使用することができる。本明細書で用いられる場合、用語「組み合わせ」は、多糖タイプ内の組み合わせ及び多糖タイプ間の組み合わせ、例えばポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物内(すなわち、例えばポリアルファ-1,3-グルカンサクシネート及びポリアルファ-1,3-グルカンマレエート)の組み合わせ並びにまた例えば多糖タイプ間(すなわち、例えばポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物及びポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物)の組み合わせの両方を包含する。
【0042】
本明細書に開示されるラテックス組成物において、多糖粒子は、粒子が分散している水溶液に不溶性である。したがって、分子量(重合度)、置換度、特有の置換基及びエステル又はエーテル誘導体化などの多糖の特性は、水溶液に不溶性である多糖粒子を提供するように選択される。
【0043】
一実施形態において、多糖粒子は、約20nm~約5000ミクロン(5,000,000nm)の範囲の少なくとも1つの次元における平均粒径を有する。例えば、少なくとも1つ次元における平均粒径は、20;30;40;50;60;70;80;90;100;150;200;250;300;350;400;450;500;550;600;700;800;900;1000;1500;2000;2500;5000;7500;10,000;15,000;20,000;30,000;40,000;50,000;60,000;70,000;80,000;90,000;100,000;125,000;150,000;175,000;200,000;500,000;1,000,000;1,500,000;2,000,000;2,500,000;3,000,000;3,500,000;4,000,000;4,500;000若しくは5,000,000(又は20~200,000の任意の値)nmであり得る。いくつかの実施例において、有用な多糖粒子は、約5000ミクロン超である、少なくとも1つの次元における平均粒径を有する。別の実施形態において、多糖粒子は、約20nm~約200μm(200,000nm)の範囲の少なくとも1つの次元における平均粒径を有する。更に別の実施形態において、多糖粒子の少なくとも一部は、約1のアスペクト比を有する。追加の実施形態において、多糖粒子の大半は、約1のアスペクト比を有する。粒径及びアスペクト比は、当技術分野において公知の方法によって測定することができる。
【0044】
ラテックス組成物において、多糖粒子は、コロイド分散系、ウェットケーキ、乾燥粉末又はそれらの組み合わせの形態で使用することができる。一実施形態において、多糖粒子は、コロイド分散系の形態で使用することができる。本明細書で用いられる場合、用語「コロイド分散系」は、分散相と分散媒体とを有する、すなわち微視的に分散した不溶性粒子が別の物質、例えば水又は水溶液の全体にわたって懸濁されている不均一系を指す。水中のコロイド分散系の例は、ヒドロコロイドである。コロイド分散系は、安定なコロイド分散系又は不安定なコロイド分散系であり得る。安定なコロイド分散系は、室温及び/又は高温、例えば40~50℃で少なくとも1か月の期間、目に見える沈降なしに安定である。不安定な分散系は、同じ条件下において、分散系から沈降した多糖の少なくとも一部を見る場合がある。沈降した物質の撹拌は、一般に、コロイド分散系を再形成するであろう。いくつかの実施形態において、コロイド分散系は、安定な分散系である。他の実施形態において、コロイド分散系は、不安定な分散系である。ポリアルファ-1,3-グルカン又はポリアルファ-1,3-1,6-グルカンなどの多糖類のコロイド分散系は、例えば、その全体が本明細書に援用される公開特許出願国際公開第2016/126685号パンフレットに開示されているように、ウェットケーキを水中に分散させて多糖コロイド分散系を形成することによって調製することができる。
【0045】
別の実施形態において、多糖粒子は、例えば、5重量%超の水を含有するウェットケーキの形態であり得る。グルカンウェットケーキは、濾過により水を除去することによってグルカンコロイド分散系から形成される。水は、グルカン固体粒子の表面上に残り、粒子間に捕捉されている。グルカンコロイド分散系は、注ぎ込み可能な液体であるのに対して、ウェットケーキは、軟らかい固体様の稠度を有する。本明細書での用語「ポリアルファ-1,3-グルカンウェットケーキ」は、スラリーから分離され、水又は水溶液で洗浄されたポリアルファ-1,3-グルカンを指す。ポリアルファ-1,3-グルカン又は他の多糖は、ウェットケーキを調製する場合に乾燥されない。
【0046】
更に別の実施形態において、多糖粒子は、乾燥粉末の形態で使用することができる。乾燥粉末は、例えば、ウェットケーキを真空下で乾燥させ、次に乾燥した材料を任意選択的にすり潰して所望の粒径にすることによって得ることができる。
【0047】
一実施形態において、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンを含む。本明細書での用語「グルカン」は、グリコシド結合によって結合しているD-グルコースモノマーの多糖を指す。ポリアルファ-1,3-グルカンは、少なくとも50%のグリコシド結合がアルファ-1,3-グリコシド結合である、グリコシド結合によって一体に結合したグルコースモノマー単位を含むポリマーである。ポリアルファ-1,3-グルカンは、一種の多糖である。ポリアルファ-1,3-グルカンの構造は、以下のように例示することができる。
【化9】
【0048】
ポリアルファ-1,3-グルカンは、例えば、米国特許第7,000,000号明細書;同第8,642,757号明細書;及び同第9,080195号明細書に記載されているように、1種以上のグルコシルトランスフェラーゼ(gtf)酵素を用いてスクロースから酵素的に産生することができる。
【0049】
例えば、グルコシルトランスフェラーゼ酵素を用いてスクロースからポリアルファ-1,3-グルカンを産生するプロセスは、水中のポリアルファ-1,3-グルカンのスラリーをもたらすことができる。スラリーを濾過して水の一部を除去し、30~50重量パーセントの範囲のポリアルファ-1,3-グルカンを含有する、残りが水であるウェットケーキとして、固体のポリアルファ-1,3-グルカンを得ることができる。いくつかの実施形態において、ウェットケーキは、35~45重量パーセントの範囲のポリアルファ-1,3-グルカンを含む。ウェットケーキは、水で洗浄してあらゆる水溶性不純物、例えばスクロース、フルクトース又はリン酸緩衝液を除去することができる。いくつかの実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカンを含むウェットケーキは、そのまま使用することができる。他の実施形態において、ウェットケーキは、減圧下において、高温において、凍結乾燥により、又はそれらの組み合わせにより更に乾燥させて、50重量%以上のポリアルファ-1,3-グルカンを含む粉末を得ることができる。いくつかの実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカンは、20重量%以下の水を含む粉末であり得る。他の実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカンは、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1重量パーセント以下の水を含む乾燥粉末であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、アルファ-1,3である、ポリアルファ-1,3-グルカンのグルコースモノマー単位間のグリコシド結合の百分率は、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上若しくは100%(又は50%~100%の任意の整数値)である。したがって、そのような実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカンは、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%以下若しくは0%(又は0%~50%の任意の整数値)の、アルファ-1,3ではないグリコシド結合を有する。
【0051】
用語「グリコシド結合(linkage)」及び「グリコシド結合(bond)」は、本明細書において互換的に用いられ、炭水化物(糖)分子を別の炭水化物などの別の基に結合させる共有結合のタイプを指す。本明細書で用いられるような用語「アルファ-1,3-グリコシド結合」は、隣り合ったアルファ-D-グルコース環の炭素1及び3を介してアルファ-D-グルコース分子を互いに結合する共有結合のタイプを指す。この結合は、上に提供されたポリアルファ-1,3-グルカンの構造において例示されている。本明細書では、「アルファ-D-グルコース」は、「グルコース」と呼ばれる。本明細書に開示される全てのグリコシド結合は、特に記載される場合を除き、アルファ-グリコシド結合である。
【0052】
ポリアルファ-1,3-グルカンの「分子量」は、数平均分子量(M)又は重量平均分子量(M)として表すことができる。代わりに、分子量は、ダルトン(Dalton)、グラム/モル、DPw(重量平均重合度)又はDPn(数平均重合度)として表すことができる。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)などの様々な手段が、これらの分子量測定結果を計算するために当技術分野において公知である。
【0053】
ポリアルファ-1,3-グルカンは、少なくとも約400の重量平均重合度(DPw)を有し得る。いくつかの実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカンは、約400~約1400、又は約400~約1000、又は約500~約900のDPwを有する。
【0054】
一実施形態において、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンを含む。一実施形態において、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンを含み、ここで、(i)ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%は、アルファ-1,3-結合であり、(ii)ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%は、アルファ-1,6結合であり、(iii)ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、少なくとも1000の重量平均重合度(DP)を有し、及び(iv)ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンのアルファ-1,3結合及びアルファ-1,6結合は、互いに連続して交互になっていない。別の実施形態において、ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも60%は、アルファ-1,6結合である。本明細書で用いられるような用語「アルファ-1,6-グリコシド結合」は、隣り合ったアルファ-D-グルコース環の炭素1及び6を介してアルファ-D-グルコース分子を互いに結合する共有結合を指す。
【0055】
ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、その全体が本明細書に援用される米国特許出願公開第2015/0232785 A1号明細書及び公開特許出願国際公開第2015/123323号パンフレットに開示されているように、グルコシルトランスフェラーゼ酵素の産物である。
【0056】
グルカン又は置換グルカンのグリコシド結合プロフィルは、当技術分野において公知の任意の方法を用いて決定することができる。例えば、結合プロフィルは、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば、13C NMR又はH NMR)を使用する方法を用いて決定することができる。用いることができるこれらの方法及び他の方法は、参照により本明細書に援用されるFood Carbohydrates:Chemistry,Physical Properties,and Applications(S.W.Cui,Ed,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor&Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に開示されている。
【0057】
本明細書でのポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、グリコシド結合(すなわちグルコシド結合)によって一体に結合したグルコースモノマー単位を含むポリマーであり、ここで、グリコシド結合の少なくとも約30%は、アルファ-1,3-グリコシド結合であり、グリコシド結合の少なくとも約30%は、アルファ-1,6-グリコシド結合である。ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、混合グリコシド結合分を含有するタイプの多糖である。本明細書での特定の実施形態における用語ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンの意味は、「アルテルナン」を除外し、アルテルナンは、互いに連続的に交互するアルファ-1,3結合とアルファ-1,6結合とを含有するグルカンである(米国特許第5702942号明細書、米国特許出願公開第2006/0127328号明細書)。互いに「連続的に交互する」アルファ-1,3結合及びアルファ-1,6結合は、例えば、...G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-...と視覚的に表すことができ、ここで、Gは、グルコースを表す。
【0058】
本明細書でのポリアルファ-1,3-1,6-グルカンの「分子量」は、数平均分子量(M)又は重量平均分子量(M)として表すことができる。代わりに、分子量は、ダルトン、グラム/モル、DP(重量平均重合度)又はDP(数平均重合度)として表すことができる。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によるものなどの様々な手段が、これらの分子量測定結果を計算するために当技術分野において公知である。
【0059】
ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%は、アルファ-1,3結合であり、ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%は、アルファ-1,6結合である。代わりに、本明細書でのポリアルファ-1,3-1,6-グルカン中のアルファ-1,3結合の百分率は、少なくとも31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%又は64%であり得る。更に代わりに、本明細書でのポリアルファ-1,3-1,6-グルカン中のアルファ-1,6結合の百分率は、少なくとも31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%又は69%であり得る。
【0060】
ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、まさに百分率の合計が100%以下である限り、アルファ-1,3結合の前述の百分率のいずれか1つと、アルファ-1,6結合の前述の百分率のいずれか1つとを有することができる。例えば、本明細書でのポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、まさに百分率の合計が100%以下である限り、(i)30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%又は40%(30%~40%)のいずれか1つのアルファ-1,3結合と、(ii)60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%又は69%(60%~69%)のいずれか1つのアルファ-1,6結合とを有することができる。非限定的な例としては、31%のアルファ-1,3結合と67%のアルファ-1,6結合とを有するポリアルファ-1,3-1,6-グルカンが挙げられる。特定の実施形態において、ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも60%は、アルファ-1,6結合である。
【0061】
ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の、アルファ-1,3及びアルファ-1,6以外のグリコシド結合を有することができる。別の実施形態において、ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、アルファ-1,3結合及びアルファ-1,6結合のみを有する。
【0062】
アルファ-1,3及びアルファ-1,6結合プロフィル並びにそれらの産物のための方法の他の例は、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2015/0232785号明細書に開示されている。
【0063】
ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンの主鎖は、線状/非分岐であり得る。代わりに、ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンに分岐が存在することができる。特定の実施形態におけるポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、したがって、分岐点を全く有さないか、又は約30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の分岐点をポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして有することができる。
【0064】
ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンのアルファ-1,3結合及びアルファ-1,6結合は、連続して互いに交互になっていない。以下の議論に関して、...G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-...(ここで、Gは、グルコースを表す)は、連続的に交互のアルファ-1,3結合及びアルファ-1,6結合によって結合した一筋の6個のグルコースモノマー単位を表すことを考慮されたい。本明細書での特定の実施形態におけるポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、交互のアルファ-1,3結合及びアルファ-1,6結合で連続的に結合している2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超えるもの未満のグルコースモノマー単位を含む。
【0065】
ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンの分子量は、DP(重量平均重合度)又はDP(数平均重合度)として測定することができる。代わりに、分子量は、ダルトン又はグラム/モル単位で測定することができる。ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンの数平均分子量(M)又は重量平均分子量(M)に言及することも有用であり得る。
【0066】
本明細書でのポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、少なくとも約1000のDPを有することができる。例えば、ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンのDPは、少なくとも約10000であり得る。代わりに、DPは、少なくとも約1000~約15000であり得る。更に代わりに、DPは、例えば、少なくとも約1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000若しくは15000(又は1000~15000の任意の整数)であり得る。本明細書でのポリアルファ-1,3-1,6-グルカンが少なくとも約1000のDPを有することができることを考慮すると、そのようなグルカンポリマーは、典型的には非水溶性である。
【0067】
本明細書でのポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、例えば、少なくとも約50000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、1100000、1200000、1300000、1400000、1500000若しくは1600000(又は50000~1600000の任意の整数)のMを有することができる。特定の実施形態におけるMは、少なくとも約1000000である。代わりに、ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、例えば、少なくとも約4000、5000、10000、20000、30000又は40000のMを有することができる。
【0068】
本明細書でのポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、例えば、少なくとも20個のグルコースモノマー単位を含むことができる。代わりに、グルコースモノマー単位の数は、例えば、少なくとも25、50、100、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000若しくは9000(又は10~9000の任意の整数)であり得る。
【0069】
本明細書でのポリアルファ-1,3-1,6-グルカンは、例えば、乾燥時に粉末の形態又は湿潤時にペースト、コロイド若しくは他の分散系の形態で提供することができる。
【0070】
別の実施形態において、多糖粒子は、構造1:
【化10】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(i)nは、少なくとも6であり;
(ii)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、ここで、前記第1の基の-C-部分は、2~6個の炭素原子の鎖を含み;及び
(iii)この化合物は、約0.001~約3の第1の基での置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物を含む。
【0071】
そのようなポリアルファ-1,3-グルカンエステル及びそれらの調製は、その全体が参照により本明細書に援用される公開特許出願国際公開第2017/003808号パンフレットに開示されている。好適な反応条件(例えば、時間、温度、pH)下において、環状有機酸無水物によって提供される第1の基でのポリアルファ-1,3-グルカンのグルコース単位の1個以上のヒドロキシル基のエステル化が起こり、構造1のポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物をもたらすことができる。
【0072】
構造1のポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、部分構造-C-O-CO-C-を含むという理由のため、本明細書では「エステル」と称され、ここで、「-C-」は、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の炭素2、4又は6を表し、ここで、「-CO-C-」は、第1の基に含まれる。
【0073】
本明細書での「第1の基」は、-CO-C-COOHを含む。用語「-C-」は、各炭素原子が好ましくは4つの共有結合を有する、典型的には2~6個の炭素原子の鎖を含む第1の基の部分を指す。
ポリアルファ-1,3-グルカンモノエステルは、1つのタイプの第1の基を含有する。用語「ポリアルファ-1,3-グルカン混合エステル」及び「混合エステル」は、本明細書において互換的に用いられる。ポリアルファ-1,3-グルカン混合エステルは、2つ以上のタイプの第1の基を含有する。
【0074】
本明細書での環状有機酸無水物は、下に示される構造5によって表される式:
【化11】

を有することができる。構造5の-C-部分は、典型的には、2~6個の炭素原子の鎖を含み;この鎖中の各炭素原子は、好ましくは、4つの共有結合を有する。いくつかの実施形態において、-C-部分は、2~16個、2~17個又は2~18個の炭素原子の鎖を含むことができると考えられる。本明細書でのエステル化反応中、環状有機酸無水物の無水物基(-CO-O-CO-)が壊れ、その結果、壊れた無水物の一方の端が-COOH基になり、他方の端がポリアルファ-1,3-グルカンのヒドロキシル基にエステル化され、それによってエステル化された第1の基(-CO-C-COOH)をもたらす。使用される環状有機酸無水物に応じて、典型的には、そのようなエステル化反応の1種又は2種の可能な生成物が存在することができる。
【0075】
構造1によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物の式中の各R基は、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり得る。一般に、鎖中の各炭素は、鎖中の隣り合った炭素原子又は隣接するC=O及びCOOH基の炭素原子と共有結合していることは別として、水素にも、有機基などの置換基にも結合することができ、且つ/又は炭素-炭素二重結合にも関与することができる。例えば、-C-鎖中の炭素原子は、飽和(すなわち-CH-)であり、-C-鎖中の隣り合った炭素原子と二重結合(例えば、-CH=CH-)し、且つ/又は水素及び有機基に結合(すなわち1個の水素が有機基で置換される)することができる。
【0076】
特定の実施形態において、第1の基(-CO-C-COOH)の-C-部分は、CH基のみを含む。-C-部分がCH基のみを含む第1の基の例は、-CO-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-CH-COOH及び-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH-COOHである。これらの第1の基は、それぞれコハク酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物、ピメリン酸無水物又はスベリン酸無水物をポリアルファ-1,3-グルカンと反応させることによって誘導することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、第1の基(-CO-C-COOH)の-C-部分は、(i)炭素原子鎖中に少なくとも1個の二重結合及び/又は(ii)有機基を含む少なくとも1つの分岐を含むことができる。例えば、第1の基の-C-部分は、炭素原子鎖中に少なくとも1個の二重結合を有することができる。-C-部分が炭素-炭素二重結合を含む第1の基の例としては、-CO-CH=CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-CH-COOH及び-CO-CH-CH-CH-CH-CH=CH-COOHが挙げられる。
【0078】
少なくとも1つの有機基分岐を有する-C-部分を含むこれらの第1の基のそれぞれは、適切な環状有機酸無水物をポリアルファ-1,3-グルカンと反応させることによって誘導することができる。説明に役立つ例としては、メチルコハク酸無水物を使用してポリアルファ-1,3-グルカンをエステル誘導体化することが挙げられ、ここで、結果として得られる第1の基は、-CO-CH-CH(CH)-COOH又は-CO-CH(CH)-CH-COOHである。別の例として、-CO-CH=CH-COOHを含む第1の基を生成するために無水マレイン酸をポリアルファ-1,3-グルカンと反応させることができる。このように、上に列記された第1の基のいずれかにおいて表される-C-部分を含む環状有機酸無水物(ここで、環状有機酸無水物の対応する-C-部分は、酸無水物基[-CO-O-CO-]の各側に共に結合して環を形成するその部分である)は、ポリアルファ-1,3-グルカンと反応して、対応する第1の基(-CO-C-COOH)を有するそのエステルを生成することができる。
【0079】
特定の実施形態におけるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、-CO-C-COOHを含む1タイプの第1の基を含有することができる。例えば、上式においてグルコース基にエステル結合した1種以上のR基は、-CO-CH-CH-COOHであり得;この特定の例におけるR基は、したがって、独立して、水素及び-CO-CH-CH-COOH基であろう(そのようなエステル化合物は、ポリアルファ-1,3-グルカンサクシネートと呼ばれ得る)。
【0080】
本明細書でのいくつかの態様における第1の基(-CO-C-COOH)の-C-部分は、有機基を含む少なくとも1つの分岐を含むことができる。-C-部分が少なくとも1つの有機基分岐を含む第1の基の例としては、
【化12】

が挙げられる。これらの2つの第1の基のそれぞれは、2-ノネン-1-イルコハク酸無水物をポリアルファ-1,3-グルカンと反応させることによって誘導することができる。両方のこれらの例における有機基分岐(本明細書では「R」と総称される)は、-CH-CH=CH-CH-CH-CH-CH-CH-CHであることを理解することができる。R基が-C-炭素鎖中の水素と置き換わっていることも理解することができる。
【0081】
このように、例えば、本明細書での第1の基(-CO-C-COOH)は、-CO-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-CH-COOH又はCO-CH-CH-CH-CH-CH-CH-COOHのいずれかであり得るが、それらの少なくとも1個、2個、3個又はそれを超える水素がR基で置換されている。同様に、例えば、本明細書での第1の基(-CO-C-COOH)は、-CO-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-CH-COOH又はCO-CH-CH-CH-CH-CH=CH-COOHのいずれかであり得るが、それらの少なくとも1個、2個、3個又はそれを超える水素がR基で置換されている(そのような第1の基は、-C-部分が炭素原子鎖に少なくとも1個の二重結合を含み、且つ有機基を含む少なくとも1つの分岐を含む例である)。本明細書でのR基の好適な例としては、アルキル基及びアルケニル基が挙げられる。本明細書でのアルキル基は、例えば、1~18個の炭素(線状又は分岐)(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル又はデシル基)を含むことができる。本明細書でのアルケニル基は、例えば、1~18個の炭素(線状又は分岐)(例えば、メチレン、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル[例えば、2-オクテニル]、ノネニル[例えば、2-ノネニル]又はデセニル基)を含むことができる。当業者は、構造5によって表される環状有機酸無水物の式及び国際公開第2017/003808号パンフレットに開示されているような本明細書での構造1のポリアルファ-1,3-グルカンエステルを調製するためのエステル化プロセスにおけるその関与に基づいて、いずれの特定の環状有機酸無水物がこれらの第1の基のいずれかを誘導するために好適であるかを理解するであろう。
【0082】
構造1によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物を形成するためのポリアルファ-1,3-グルカンとの反応に含まれ得る名称による環状有機酸無水物の例としては、無水マレイン酸、メチルコハク酸無水物、メチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、2-エチル-3-メチルマレイン酸無水物、2-ヘキシル-3-メチルマレイン酸無水物、2-エチル-3-メチル-2-ペンテン二酸無水物、イタコン酸無水物(2-メチレンコハク酸無水物)、2-ノネン-1-イルコハク酸無水物及び2-オクテン-1-イルコハク酸無水物が挙げられる。アルケニルコハク酸無水物及びアルキルケテン二量体、例えばパルミチン酸又は他の長鎖カルボン酸から誘導されたものも使用することができる。特に、例えば、無水マレイン酸を使用して第1の基としての-CO-CH=CH-COOHをポリアルファ-1,3-グルカンにエステル化することができ;メチルコハク酸無水物を使用して第1の基としての-CO-CH-CH(CH)-COOH及び/又は-CO-CH(CH)-CH-COOHをポリアルファ-1,3-グルカンにエステル化することができ;メチルマレイン酸無水物を使用して第1の基としての-CO-CH=C(CH)-COOH及び/又は-CO-C(CH)=CH-COOHをポリアルファ-1,3-グルカンにエステル化することができ;ジメチルマレイン酸無水物を使用して第1の基としての-CO-C(CH)=C(CH)-COOHをポリアルファ-1,3-グルカンにエステル化することができ;2-エチル-3-メチルマレイン酸無水物を使用して第1の基としての-CO-C(CHCH)=C(CH)-COOH及び/又は-CO-C(CH)=C(CHCH)-COOHをポリアルファ-1,3-グルカンにエステル化することができ;2-ヘキシル-3-メチルマレイン酸無水物を使用して第1の基としての-CO-C(CHCHCHCHCHCH)=C(CH)-COOH及び/又は-CO-C(CH)=C(CHCHCHCHCHCH)-COOHをポリアルファ-1,3-グルカンにエステル化することができ;イタコン酸無水物を使用して第1の基としての-CO-CH-C(CH)-COOH及び/又は-CO-C(CH)-CH-COOHをポリアルファ-1,3-グルカンにエステル化することができ;2-ノネン-1-イルコハク酸無水物を使用して第1の基としての-CO-CH-CH(CHCH=CHCHCHCHCHCHCH)-COOH及び/又は-CO-CH(CHCH=CHCHCHCHCHCHCH)-CH-COOHをポリアルファ-1,3-グルカンにエステル化することができる。
【0083】
国際公開第2017/003808号パンフレットに開示されているように、少なくとも1つの有機基分岐を有する-C-部分を含むこれらの第1の基のそれぞれは、適切な環状有機酸無水物をポリアルファ-1,3-グルカンと反応させることによって誘導することができる。2-ノネン-1-イルコハク酸無水物を使用する例は、上に記載されている。別の説明に役立つ例としては、メチルマレイン酸無水物を使用してポリアルファ-1,3-グルカンをエステル誘導体化することが挙げられ、その場合、結果として得られる第1の基は、-CO-CH=C(CH)-COOH又は-CO-C(CH)=CH-COOHである。更に別の説明に役立つ例としては、イタコン酸無水物(2-メチレンコハク酸無水物)を使用してポリアルファ-1,3-グルカンをエステル誘導体化することが挙げられ、その場合、結果として得られる第1の基は、-CO-CH-C(CH)-COOH又は-CO-C(CH)-CH-COOHである。このように、上に列記された第1の基のいずれかにおいて表される-C-部分を含む環状有機酸無水物(ここで、環状有機酸無水物の対応する-C-部分は、酸無水物基[-CO-O-CO-]の各側に共に結合して環を形成するその部分である)は、ポリアルファ-1,3-グルカンと反応して、対応する第1の基(-CO-C-COOH)を有するそのエステルを生成することができる。
【0084】
当業者は、本明細書での特定の実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物が水性条件下においてアニオン形態で存在できることを理解するであろう。このアニオン挙動は、エステル化された第1の基(-CO-C-COOH)にカルボキシル基(COOH)が存在するためである。本明細書でのポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物のカルボキシル(COOH)基は、水性条件でカルボキシレート(COO)基に変換することができる。これらのアニオン基は、存在する場合、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン又はリチウムカチオンなどの塩カチオンと相互作用することができる。
【0085】
一実施形態において、本明細書に開示されるような構造1によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、ポリアルファ-1,3-グルカンサクシネート、ポリアルファ-1,3-グルカンメチルサクシネート、ポリアルファ-1,3-グルカン2-メチレンサクシネート、ポリアルファ-1,3-グルカンマレエート、ポリアルファ-1,3-グルカンメチルマレエート、ポリアルファ-1,3-グルカンジメチルマレエート、ポリアルファ-1,3-グルカン2-エチル-3-メチルマレエート、ポリアルファ-1,3-グルカン2-ヘキシル-3-メチルマレエート、ポリアルファ-1,3-グルカン2-エチル-3-メチルグルタコネート、ポリアルファ-1,3-グルカン2-ノネン-1-イル-サクシネート、ポリアルファ-1,3-グルカン2-オクテン-1-イルサクシネート又はそれらの混合物を含む。別の実施形態において、構造1によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、ポリアルファ-1,3-グルカンサクシネートを含む。
【0086】
本明細書で用いられるような用語「置換度」(DoS)は、誘導体化されたポリアルファ-1,3-グルカン化合物の各モノマー単位(グルコース)中の置換されたヒドロキシル基の平均数を指す。本明細書に開示されるラテックス組成物において有用である、構造1によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、約0.001~約3の、1つ以上の第1の基(-CO-C-COOH)での置換度(DoS)を有する。一実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、約0.001~約0.3又は約0.001~約0.2の範囲のDoSを有する。代わりに、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物のDoSは、少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9又は3.0であり得る。ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、約0.001~約3の置換度を有するため、化合物のR基が水素のみではあり得ないことが当業者によって理解されるであろう。-CO-C-COOHを含む第1の基及びグルカンポリマーの置換度の適切な選択により、アルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、ラテックス組成物の水溶液に不溶性であり得る。ポリアルファ-1,3-グルカンエステル生成物の構造、分子量及びDoSは、NMR分光法及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)などの当技術分野において公知の様々な生理化学的分析を用いて確認することができる。
【0087】
本明細書でのポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%(又は50%~100%の任意の整数)の、アルファ-1,3であるグリコシド結合を有することができる。したがって、そのような実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、約50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%未満若しくは0%(又は0%~50%の任意の整数値)の、アルファ-1,3ではないグリコシド結合を有する。ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、好ましくは、少なくとも約98%、99%又は100%の、アルファ-1,3であるグリコシド結合を有する。
【0088】
本明細書でのポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物の主鎖は、好ましくは、線状/非分岐である。特定の実施形態において、本化合物は、分岐点を全く有さないか、又はポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の分岐点を有する。分岐点の例としては、アルファ-1,6分岐点が挙げられる。
【0089】
特定の実施形態におけるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物の式は、少なくとも6のn値を有することができる。代わりに、nは、例えば、少なくとも10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900若しくは4000(又は10~4000の任意の整数)の値を有することができる。更に他の例におけるnの値は、25~250、50~250、75~250、100~250、150~250、200~250、25~200、50~200、75~200、100~200、150~200、25~150、50~150、75~150、100~150、25~100、50~100、75~100、25~75、50~75、又は25~50の範囲であり得る。
【0090】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物の分子量は、数平均分子量(M)又は重量平均分子量(M)として測定することができる。代わりに、分子量は、ダルトン又はグラム/モル単位で測定することができる。化合物のポリアルファ-1,3-グルカンポリマー成分のDP(重量平均重合度)又はDP(数平均重合度)に言及することも有用であり得る。本明細書でのポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物のM又はMは、例えば、少なくとも約1000であり得る。代わりに、M又はMは、少なくとも約1000~約600000であり得る。更に代わりに、M又はMは、例えば、少なくとも約10000、25000、50000、75000、100000、125000、150000、175000、200000、225000、250000、275000若しくは300000(又は10000~300000の任意の整数)であり得る。
【0091】
一実施形態において、ラテックス組成物は、水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含み、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンサクシネートを含むポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物を含む。一実施形態において、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカングルタレートを含むポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物を含む。別の実施形態において、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンマレエートを含むポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物を含む。追加の実施形態において、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンアルケニルサクシネートを含むポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物を含む。更なる実施形態において、多糖粒子は、アルキルケテン二量体でのポリアルファ-1,3-グルカンの変性から誘導されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物を含む。
【0092】
追加の実施形態において、多糖粒子は、構造2:
【化13】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(i)nは、少なくとも6であり、
(ii)各Rは、独立して、H又はアシル基であり、及び
(iii)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物を含む。
【0093】
好適なポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物としては、米国特許第9,278,988号明細書に開示されているものを挙げることができ、その特許は、そのようなエステル化合物の調製方法も開示しおり、その全体が参照により本明細書に援用される。エステル化合物を含む多糖誘導体の混合物も使用することができる。2つ以上のタイプのアシル基を含有するポリアルファ-1,3-グルカン混合エステルも使用することができる。そのような混合エステルの例は、ポリアルファ-1,3-グルカンアセテートプロピオネート(アセチル基及びプロピオニル基を含む)並びにポリアルファ-1,3-グルカンアセテートブチレート(アセチル基及びブチリル基を含む)である。
【0094】
本明細書に開示されるラテックス組成物に有用であり、且つ構造2によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、構造1によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物のものと同じ範囲のパーセントのグリコシド結合、ポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして同じ範囲の分岐点、同じ範囲のn値、同じ分子量M範囲、同じ分子量M範囲及び同じDP範囲を有することができる。
【0095】
構造2によって表され、且つ本明細書に開示されるラテックス組成物に有用なポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、約0.001~約3の置換度を有することができる。一実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、約0.001~約0.3又は約0.001~約0.2の範囲のDoSを有する。代わりに、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物のDoSは、少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9又は3.0であり得る。グルカンポリマーのアシル基及び置換度の適切な選択により、アルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、ラテックス組成物の水溶液に不溶性であり得る。
【0096】
本明細書に開示されるラテックス組成物に有用であり、且つ構造2によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物には、アシル基が例えばアセチル基(-CO-CH)、プロピオニル基(-CO-CH-CH)、ブチリル基(-CO-CH-CH-CH)、ペンタノイル基(-CO-CH-CH-CH-CH)、ヘキサノイル基(-CO-CH-CH-CH-CH-CH)、ヘプタノイル基(-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH)又はオクタノイル基(-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH)を含むものが含まれる。好適なポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物は、より長い鎖のエステル基、例えばパルミテート又はラウリルエステル基を有するものも含み得るであろうと考えられる。アシル基のカルボニル基(-CO-)は、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の炭素2、4又は6にエステル結合している。
【0097】
別の実施形態において、多糖粒子は、構造3:
【化14】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエ-テル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(C)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエ-テル化合物を含む。エーテル化合物を含む多糖誘導体の混合物も使用することができる。nが少なくとも800であり、各Rが、独立して、H又は有機基であり、エーテル化合物が約0.05~約3.0の置換度を有するポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物及びそのようなエーテル化合物の調製方法は、その全体が参照によりを本明細書に援用される米国特許出願公開第2014/0179913 A1号明細書(現在、米国特許第9,139,718号明細書)に開示されている。構造3によって表され、且つ約0.001~約0.2又は約0.2~約3のDoSを有するポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物は、グルカンとエーテル化剤との比率を調節することによって調製することができる。
【0098】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物の置換度(DoS)は、代わりに、約0.2~約2.0であり得る。更に代わりに、DoSは、少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3.0であり得る。ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物は、約0.05~約3.0の置換度を有するため、且つエーテルであるという理由のため、化合物のR基が水素のみではあり得ないことが当業者によって理解されるであろう。
【0099】
アルファ-1,3である、本明細書でのポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物のグルコースモノマー単位間のグリコシド結合の百分率は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%(又は50%~100%の任意の整数)である。したがって、そのような実施形態において、化合物は、約50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%未満若しくは0%(又は0%~50%の任意の整数値)の、アルファ-1,3ではないグリコシド結合を有する。
【0100】
ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物の主鎖は、好ましくは、線状/非分岐である。特定の実施形態において、化合物は、分岐点を全く有さないか、又はポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の分岐点を有する。分岐点の例としては、アルファ-1,6分岐点が挙げられる。
【0101】
特定の実施形態におけるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物の式は、少なくとも6のn値を有することができる。代わりに、nは、例えば、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900若しくは4000(又は25~4000の任意の整数)の値を有することができる。更に他の例におけるnの値は、25~250、50~250、75~250、100~250、150~250、200~250、25~200、50~200、75~200、100~200、150~200、25~150、50~150、75~150、100~150、25~100、50~100、75~100、25~75、50~75又は25~50の範囲であり得る。
【0102】
ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物の分子量は、数平均分子量(M)又は重量平均分子量(M)として測定することができる。代わりに、分子量は、ダルトン又はグラム/モル単位で測定することができる。化合物のポリアルファ-1,3-グルカンポリマー成分のDP(重量平均重合度)又はDP(数平均重合度)に言及することも有用であり得る。
【0103】
ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物のM又はMは、少なくとも約1000であり得る。代わりに、M又はMは、少なくとも約1000~約600000であり得る。更に代わりに、M又はMは、例えば、少なくとも約2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、15000、20000、25000、30000、35000、40000、45000、50000、75000、100000、150000、200000、250000、300000、350000、400000、450000、500000、550000若しくは600000(又は2000~600000の任意の整数)であり得る。
【0104】
ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物の式中の各R基は、独立して、H又は有機基であり得る。有機基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル又はデシル基などのアルキル基であり得る。
【0105】
代わりに、有機基は、アルキル基の1個以上の炭素上に置換がある置換アルキル基であり得る。置換は、1個以上のヒドロキシル、アルデヒド、ケトン及び/又はカルボキシル基であり得る。例えば、置換アルキル基は、ヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基であり得る。
【0106】
好適なヒドロキシアルキル基の例は、ヒドロキシメチル(-CHOH)、ヒドロキシエチル(例えば、-CHCHOH、-CH(OH)CH)、ヒドロキシプロピル(例えば、-CHCHCHOH、-CHCH(OH)CH、-CH(OH)CHCH)、ヒドロキシブチル及びヒドロキシペンチル基である。他の例としては、ジヒドロキシメチル、ジヒドロキシエチル(例えば、-CH(OH)CHOH)、ジヒドロキシプロピル(例えば、-CHCH(OH)CHOH、-CH(OH)CH(OH)CH)、ジヒドロキシブチル及びジヒドロキシペンチル基などのジヒドロキシアルキル基(ジオール)が挙げられる。
【0107】
好適なカルボキシアルキル基の例は、カルボキシメチル(-CHCOOH)、カルボキシエチル(例えば、-CHCHCOOH、-CH(COOH)CH)、カルボキシプロピル(例えば、-CHCHCHCOOH、-CHCH(COOH)CH、-CH(COOH)CHCH)、カルボキシブチル及びカルボキシペンチル基である。
【0108】
更に代わりに、アルキル基の1個以上の炭素は、別のアルキル基での置換を有することができる。そのような置換基アルキル基の例は、メチル、エチル及びプロピル基である。実例で説明すると、R基は、例えば、-CH(CH)CHCH又は-CHCH(CH)CHであり得、それらは、両方ともメチル置換を有するプロピル基である。
【0109】
様々な置換アルキル基の上記の例から明らかであるべきであるように、特定の実施形態におけるアルキル基上の置換(例えば、ヒドロキシ又はカルボキシ基)は、アルキル基の末端炭素原子に結合し得、ここで、この末端炭素基は、上式においてグルコース基にエーテル結合している末端の反対側にある。この末端置換の例は、ヒドロキシプロピル基-CHCHCHOHである。代わりに、置換は、アルキル基の内部炭素原子上にあり得る。内部置換に関する例は、ヒドロキシプロピル基-CHCH(OH)CHである。アルキル基は、同じもの(例えば、2つのヒドロキシル基[ジヒドロキシル])であるか、又は異なるもの(例えば、ヒドロキシル基及びカルボキシル基)であり得る1つ以上の置換を有することができる。
【0110】
特定の実施形態におけるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物は、1つのタイプの有機基を含有し得る。例えば、上式においてグルコース基にエーテル結合した1つ以上のR基は、メチル基であり得;この特定の例におけるR基は、したがって、独立して、水素及びメチル基であろう。1つのみのタイプの有機基を含有するポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物の特定の実施形態は、有機基としてカルボキシアルキル基(例えば、カルボキシメチル基)を有さない。
【0111】
代わりに、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物は、2つ以上の異なるタイプの有機基を含有することができる。そのような化合物の例は、(i)R基としての2つの異なるアルキル基、(ii)R基としてのアルキル基及びヒドロキシアルキル基(一般的に言えば、アルキルヒドロキシアルキルポリアルファ-1,3-グルカン)、(iii)R基としてのアルキル基及びカルボキシアルキル基(一般的に言えば、アルキルカルボキシアルキルポリアルファ-1,3-グルカン)、(iv)R基としてのヒドロキシアルキル基及びカルボキシアルキル基(一般的に言えば、ヒドロキシアルキルカルボキシアルキルポリアルファ-1,3-グルカン)、(v)R基としての2つの異なるヒドロキシアルキル基、又は(vi)R基としての2つの異なるカルボキシアルキル基を含有する。そのような化合物の具体的な非限定的な例としては、エチルヒドロキシエチルポリアルファ-1,3-グルカン(すなわち、ここで、R基は、独立して、H、エチル又はヒドロキシエチルである)、ヒドロキシアルキルメチルポリアルファ-1,3-グルカン(すなわち、ここで、R基は、独立して、H、ヒドロキシアルキル又はメチルである)、カルボキシメチルヒドロキシエチルポリアルファ-1,3-グルカン(すなわち、ここで、R基は、独立して、H、カルボキシメチル又はヒドロキシエチルである)及びカルボキシメチルヒドロキシプロピルポリアルファ-1,3-グルカン(すなわち、ここで、R基は、独立して、H、カルボキシメチル又はヒドロキシプロピルである)が挙げられる。2つ以上の異なるタイプの有機基を含有するポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物の特定の実施形態は、有機基の1つとしてカルボキシアルキル基(例えば、カルボキシメチル基)を有さない。
【0112】
一実施形態において、ラテックス組成物は、水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含み、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物を含み、ここで、少なくとも1つの有機基は、カルボキシアルキル基を含む。一実施形態において、有機基は、カルボキシメチル基を含む。別の実施形態において、有機基は、カルボキシエチル基を含む。別の実施形態において、有機基は、カルボキシプロピル基を含む。更なる実施形態において、少なくとも1つの有機基は、アルキル基を含む。一実施形態において、有機基は、メチル基である。別の実施形態において、有機基は、エチル基である。追加の実施形態において、有機基は、プロピル基である。
【0113】
特定の実施形態において、有機基は、正電荷を有する有機基であり得、構造3によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル中の各R基は、独立して、H又は正電荷を有する有機基であり得る。これらの実施形態において、多糖は、構造4:
【化15】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエ-テル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり;
(B)各Rは、独立して、H又は正電荷を有する有機基であり、及び
(C)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエ-テル化合物を含む。
【0114】
そのようなアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物を含む組成物及びそれらの調製方法は、その全体が参照により本明細書に援用される公開特許出願国際公開第2015/095358号パンフレットに開示されている。構造4によって表され、且つ約0.001~約3のDoSを有するポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物は、当業者によって理解されるであろうように、所望のDoS値を達成するためにグルカンとエーテル化剤との比を調節して、国際公開第2015/095358号パンフレットに記載されているように調製することができる。正電荷を有する有機基及びグルカンポリマーの置換度の適切な選択により、アルファ-1,3-グルカンエーテル化合物は、特定の条件下で不溶性又は水溶性であり得る。
【0115】
正電荷を有する有機基は、1個以上の水素が別の原子又は官能基で置換されている1個以上の炭素の鎖を含み、ここで、置換の1つ以上は、正電荷を有する基での置換である。一実施形態において、少なくとも1つの正電荷を有する有機基は、置換アンモニウム基を含む。別の実施形態において、少なくとも1つの正電荷を有する有機基は、トリメチルアンモニウム基を含む。一実施形態において、正電荷を有する有機基は、第四級アンモニウム基であり得る。更に別の実施形態において、少なくとも1つの正電荷を有する有機基は、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を含む。この実施形態における化合物は、1種類の正電荷を有する有機基又は2種類以上の正電荷を有する有機基を含有し得る。少なくとも1つの正電荷を有する有機基は、例えば、第四級アンモニウムヒドロキシプロピル基であり得る。
【0116】
本明細書での「第四級アンモニウムポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物」は、例えば、トリアルキルアンモニウム基を有する正電荷を有する有機基を含むことができる。第四級アンモニウムポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物の例は、要するに、トリアルキルアンモニウムポリアルファ-1,3-グルカンエーテル(例えば、トリメチル-、トリエチル-、トリプロピル-、トリブチル-、トリペンチル-、トリヘキシル-、トリヘプチル-、トリオクチル-、トリノニル-又はトリデシル-アンモニウムポリアルファ-1,3-グルカンエーテル)と表すことができる。用語「第四級」によって意味される第4のメンバーは、ポリアルファ-1,3-グルカンのグルコースモノマーにエーテル結合している正電荷を有する有機基の1個以上の炭素の鎖であることが理解されるであろう。
【0117】
正電荷を有する基は、例えば、置換アンモニウム基であり得る。置換アンモニウム基の例は、第一級、第二級、第三級及び第四級アンモニウム基である。用語「置換アンモニウム基」、「置換アンモニウムイオン」及び「置換アンモニウムカチオン」は、本明細書において互換的に用いられる。本明細書での「置換アンモニウム基」は、構造6:
【化16】

を含む。構造6中のR、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル、アリール、シクロアルキル、アラルキル若しくはアルカリール基を表す。構造6中の炭素原子(C)は、正電荷を有する有機基の1個以上の炭素の鎖(「炭素鎖」)の一部である。炭素原子は、ポリアルファ-1,3-グルカンのグルコースモノマーに直接エーテル結合しているか、又はポリアルファ-1,3-グルカンのグルコースモノマーにエーテル結合した2個以上の炭素原子の鎖の一部であるかのいずれかである。構造6中の炭素原子は、-CH-、-CH-(ここで、1個のHがヒドロキシ基などの別の基で置換されている)又は-C-(ここで、両方のHが置換されている)であり得る。
【0118】
構造6によって表される置換アンモニウム基中の窒素原子は、正電荷を有する有機基に含まれるような1個以上の炭素の鎖に結合している。1個以上の炭素のこの鎖(「炭素鎖」)は、ポリアルファ-1,3-グルカンのグルコースモノマーにエーテル結合しており、置換アンモニウム基の窒素原子での置換に加えて1つ以上の置換を有し得る。本明細書での炭素鎖中には、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素が存在することができる。
【0119】
正電荷を有する有機基での置換に加えて置換を有さない正電荷を有する有機基の炭素鎖の例としては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-及び-CHCHCHCHCH-が挙げられる。これらの例のそれぞれにおいて、鎖の最初の炭素原子は、ポリアルファ-1,3-グルカンのグルコースモノマーにエーテル結合しており、鎖の最後の炭素原子は、正電荷を有する基に結合している。正電荷を有する基が置換アンモニウム基である場合、これらの例のそれぞれにおける鎖の最後の炭素原子は、構造6中のCによって表される。
【0120】
正電荷を有する有機基の炭素鎖が、正電荷を有する基での置換に加えて置換を有する場合、そのような追加の置換は、1個以上のヒドロキシル基、酸素原子(それによってアルデヒド若しくはケトン基を形成する)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)及び/又は追加の正電荷を有する基での置換であり得る。正電荷を有する基は、典型的には、炭素鎖の末端炭素原子に結合している。
【0121】
ヒドロキシル基での1つ以上の置換を有する炭素鎖の例としては、ヒドロキシアルキル(例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル)基及びジヒドロキシアルキル(例えば、ジヒドロキシエチル、ジヒドロキシプロピル、ジヒドロキシブチル、ジヒドロキシペンチル)基が挙げられる。ヒドロキシアルキル及びジヒドロキシアルキル(ジオール)炭素鎖の例としては、-CH(OH)-、-CH(OH)CH-、-C(OH)CH-、-CHCH(OH)CH-、-CH(OH)CHCH-、-CH(OH)CH(OH)CH-、-CHCHCH(OH)CH-、-CHCH(OH)CHCH-、-CH(OH)CHCHCH-、-CHCH(OH)CH(OH)CH-、-CH(OH)CH(OH)CHCH及び-CH(OH)CHCH(OH)CH-が挙げられる。これらの例のそれぞれにおいて、鎖の最初の炭素原子は、ポリアルファ-1,3-グルカンのグルコースモノマーにエーテル結合しており、鎖の最後の炭素原子は、正電荷を有する基に結合している。正電荷を有する基が置換アンモニウム基である場合、これらの例のそれぞれにおける鎖の最後の炭素原子は、構造6中のCによって表される。
【0122】
アルキル基での1つ以上の置換を有する炭素鎖の例としては、1つ以上の置換基メチル、エチル及び/又はプロピル基を有する鎖が挙げられる。メチルアルキル基の例としては、-CH(CH)CHCH-及び-CHCH(CH)CH-が挙げられ、それらは、両方ともメチル置換を有するプロピル基である。これらの例のそれぞれにおいて、鎖の最初の炭素原子は、ポリアルファ-1,3-グルカンのグルコースモノマーにエーテル結合しており、鎖の最後の炭素原子は、正電荷を有する基に結合している。正電荷を有する基が置換アンモニウム基である場合、これらの例のそれぞれにおける鎖の最後の炭素原子は、構造6中のCによって表される。
【0123】
特定の実施形態におけるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物は、1つのタイプの正電荷を有する有機基をR基として含有し得る。例えば、ポリアルファ-1,3-グルカンのグルコースモノマーにエーテル結合した1つ以上の正電荷を有する有機基は、トリメチルアンモニウムヒドロキシプロピル基であり得;この特定の例におけるR基は、したがって、独立して、水素及びトリメチルアンモニウムヒドロキシプロピル基であろう。代わりに、本明細書に開示されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物は、2つ以上の異なるタイプの正電荷を有する有機基をR基として含有することができる。
【0124】
一実施形態において、ラテックス組成物は、水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含み、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物を含み、ここで、少なくとも1つの正電荷を有する有機基は、置換アンモニウム基を含む。一実施形態において、正電荷を有する有機基は、トリメチルアンモニウム基を含む。別の実施形態において、正電荷を有する有機基は、第四級アンモニウム基である。更なる実施形態において、少なくとも1つの正電荷を有する有機基は、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を含む。更に別の実施形態において、少なくとも1つの正電荷を有する有機基は、第四級アンモニウムヒドロキシプロピル基である。
【0125】
ラテックス組成物中の多糖粒子は、任意の有用な量、例えば多糖とポリマー固形分との総重量を基準として約0.01重量パーセント(重量%)の多糖固形分~約75重量%の多糖固形分の量で存在することができる。いくつかの実施形態において、多糖粒子は、多糖固形分とポリマー固形分との総重量を基準として約0.01重量%の多糖固形分~約5重量%の多糖固形分、又は約5重量%の多糖固形分~約20重量%の多糖固形分、又は約20重量%の多糖固形分~約50重量%の多糖固形分、又は約50重量%の多糖固形分~約75重量%の多糖固形分の量でラテックス組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、多糖粒子は、多糖固形分とポリマー固形分との総重量を基準として約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、45、50、55、60、65、70若しくは75重量%の多糖固形分(又は0.01重量%~75重量%の任意の値)の量で存在することができる。
【0126】
ラテックス組成物は、水溶液中に分散したポリマー分散系又はポリマーエマルジョンを含む。ポリマー分散系又はエマルジョンは、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから重合されたポリマー;ポリウレタン;エポキシ、ゴムエラストマー;又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0127】
一実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、1種以上の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーから重合されたポリマーを含む。一実施形態において、ポリマー分散系又はエマルジョンは、水中の1種以上の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーから重合されたポリマーを含む。一実施形態において、1種以上のモノエチレン性不飽和モノマーは、ビニルモノマー、アクリルモノマー、アリルモノマー、アクリルアミドモノマー、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸又はそれらの混合物を含む。一実施形態において、ポリマー粒子は、ビニルモノマー、アクリルモノマー又はそれらの混合物から重合されたポリマーを含む。別の実施形態において、ポリマー分散系又はエマルジョンは、ビニルモノマー及びアクリルモノマーから重合されたポリマーを含む。更なる実施形態において、ポリマー分散系又はエマルジョンは、ビニルコポリマー及びアクリルモノマーから重合されたポリマーを含む。更に別の実施形態において、ポリマー分散系又はエマルジョンは、ビニルモノマー及びアクリルコポリマーから重合されたポリマーを含む。更なる実施形態において、ポリマー分散系又はエマルジョンは、ビニルコポリマー及びアクリルコポリマーから重合されたポリマーを含む。
【0128】
本明細書に開示されるラテックス組成物のポリマー分散系又はポリマーエマルジョンの調製に使用するのに好適なビニルモノマーには、アクリル官能性を有する化合物、例えばアクリル酸、メタクリル酸、そのような酸のエステル、アクリロニトリル及びアクリルアミドを除外して、ビニル官能性、すなわちエチレン性不飽和を有する任意の化合物が含まれる。一実施形態において、ビニルモノマーは、ビニルエステル、ビニル芳香族炭化水素、ビニル脂肪族炭化水素、ビニルアルキルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0129】
好適なビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ピバル酸ビニル、ノナン酸ビニル、デカン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、イソプロピル酢酸ビニル及び類似のビニルエステルなどのビニルエステル;例えば、スチレン、メチルスチレン及び類似の低級アルキルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン並びにジビニルベンゼンなどのビニル芳香族炭化水素;例えば、塩化ビニル及び塩化ビニリデンなどのビニル脂肪族炭化水素モノマー並びに例えばエチレン、プロピレン、イソブチレンなどのアルファオレフィン並びに1,3-ブタジエン、メチル-2-ブタジエン、1,3-ピペリレン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン及びジシクロペンタジエンなどの共役ジエン;並びに例えばメチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル,n-ブチルビニルエーテル及びイソブチルビニルエーテルなどのビニルアルキルエーテルを挙げることができる。
【0130】
一実施形態において、ラテックス組成物のポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、酢酸ビニル-エチレンコポリマー分散系を含む。別の実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、カルボキシル化酢酸ビニル-エチレンコポリマー分散系を含む。更に別の実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ポリ酢酸ビニルを含む。
【0131】
本明細書に開示されるラテックス組成物のポリマー分散系又はエマルジョンの調製に使用するのに好適なアクリルモノマーには、アクリル官能性を有する任意の化合物が含まれる。一実施形態において、アクリルモノマーは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸並びにアクリル酸及びメタクリル酸の芳香族誘導体、アクリルアミド並びにアクリロニトリルからなる群から選択される。典型的には、アルキルアクリレート及びメタクリレートモノマー(アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルとも呼ばれる)は、1分子当たり1~約18個の炭素原子又は1分子当たり1~約8個の炭素原子を含有するアルキルエステル部分を有する。
【0132】
好適なアクリルモノマーには、例えば、メチルアクリレート及びメタクリレート、エチルアクリレート及びメタクリレート、ブチルアクリレート及びメタクリレート、プロピルアクリレート及びメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及びメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート及びメタクリレート、デシルアクリレート及びメタクリレート、イソデシルアクリレート及びメタクリレート、ベンジルアクリレート及びメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びメタクリレート、ネオペンチルアクリレート及びメタクリレート並びに1-アダマンチルメタクリレートが含まれる。酸官能性が望まれる場合、アクリル酸又はメタクリル酸などの酸も使用することができる。
【0133】
上に列記された特定のモノマーに加えて、アリルモノマー又は第三級アミン、エチレンウレイド若しくはN-複素環基を有するモノマーなど、湿潤接着性を付与するモノマーなどの他のモノマーを、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンの調製において、具体的に列記されたモノマーの代わりに又はそれらに加えて使用することができる。代表的な湿潤接着促進モノマーには、メタクリルアミドエチルエチレンウレア、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルイミダゾール及び2-エチレンウレイド-エチルメタクリレートが含まれる。そのような他のモノマーの量は、当業者により決定することができる特定のモノマー及びそれらの意図される機能に依存する。
【0134】
一実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、選択された重合可能なモノマーを単一の反応混合物に混合することによって典型的に得られる「単一段階」ポリマーを含み得る。別の実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、付加の様々な段階で異なるモノマー組成又は濃度を有する多段階でモノマーを混合することによって得られるポリマーを含み得る。更なる実施形態において、ポリマー分散系は、最終ポリマーが、別の事前に形成されたポリマーの存在下で本質的に形成される「2段階」ポリマーを含み得る。
【0135】
例えば、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第5,486,576号明細書に開示されているような公知のフリーラジカル乳化重合技術のいずれかを用いてラテックスポリマーを調合することができる。そのような手順には、例えば、単一供給手順、コア-シェル手順及び均一又は構造化粒子を生成する逆コア-シェル手順が含まれる。いくつかの用途向けには、いかなる自己架橋官能性又は酸化硬化官能性も含有しないポリマー粒子を使用することが有用である。
【0136】
小さい粒径の又は大きい粒子のラテックスを調製するためのポリマー分散系又はポリマーエマルジョンの処理は、当技術分野において公知の方法によって制御することができる。典型的には、より小さい粒径のポリマー分散系及びポリマーエマルジョンは、より小さいミセルを得るために重合プロセスにおいてとりわけ早期に比較的より高いレベルの界面活性剤を使用することによって調製される。界面活性剤レベルは、小さい粒径のポリマー分散系又はポリマーエマルジョンを調製するために、モノマーの重量の約3%~約7%の範囲であり得る。より大きい粒径のポリマー分散系又はポリマーエマルジョンを調製するために、界面活性剤レベルは、モノマーの総重量の約0.5~約2.5%の範囲であり得る。
【0137】
別の実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ポリウレタンを含む。多糖類を含むポリウレタンポリマーは、公開特許出願国際公開第2018/017789号パンフレットに開示されている。ポリウレタン分散系は、例えば、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2016/0347978号明細書に開示されているような当技術分野において公知の方法によって調製することができ、1種以上のポリイソシアネートと1種以上のポリオールとの反応生成物を含む。有用なポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール又はそれらの組み合わせを挙げることができる。ポリウレタン分散系又はエマルジョンは、2種以上のポリウレタン分散系を含有することができる。例えば、1種以上のポリエステルポリウレタン分散系又はエマルジョンは、1種以上のポリカーボネートポリウレタン分散系又はエマルジョンと組み合わせることができる。ポリカーボネートポリウレタン分散系は、ポリオール、例えば1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール又はテトラエチレングリコールと、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート又はホスゲンとの反応生成物として形成することができる。
【0138】
少なくとも1種のポリイソシアネートは、公知のポリイソシアネートのいずれかであり得る。例えば、ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート又は芳香族基及び脂肪族基の両方を有するポリイソシアネートであり得る。ポリイソシアネートの例としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネートの混合物、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジイソシアナトトルエン、ビス(3-イソシアナトフェニル)メタン、1,4-ジイソシアナトベンゼン、1,3-ジイソシアナト-o-キシレン、1,3-ジイソシアナト-p-キシレン、1,3-ジイソシアナト-m-キシレン、2,4-ジイソシアナト-1-クロロベンゼン、2,4-ジイソシアナト-1-ニトロベンゼン、2,5-ジイソシアナト-1-ニトロベンゼン、m-フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1-メトキシ-2,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート又はそれらの組み合わせを挙げることができる。ポリイソシアネート、例えばアロファネート、ビウレット、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン又はカルボジイミド基を含むポリイソシアネートのホモポリマーも有用である。
【0139】
少なくとも1種のポリオールは、2個以上のヒドロキシ基を含む任意のポリオール、例えばC~C12アルカンジオール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ブタンジオールの異性体、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,2,3-プロパントリオール(グリセロール)、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパノール(トリメチロールエタン)、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トリメチロールプロパン)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(ペンタエリスリトール)、1,4,6-オクタントリオール;クロロペンタンジオール;グリセロールモノアルキルエーテル;グリセロールモノエチルエーテル;ジエチレングリコール;1,3,6-ヘキサントリオール;2-メチルプロパンジオール;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール;ポリマーポリオール、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール又はそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、ポリオールは、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、ポリ1,3-プロパンジオールであり得る。ポリエステルポリオールも使用することができる。ポリエステルポリオールは、当技術分野において周知であり、典型的には、脂肪族二酸と脂肪族ジオールとのエステル交換によって製造される。好適な脂肪族二酸としては、例えば、C~C10二酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸を挙げることができる。いくつかの実施形態において、ポリエステルポリオールを形成するために芳香族及び/又は不飽和二酸も使用することができる。二酸が具体的に挙げられているが、所望のポリエステルポリオールを形成するために二酸のエステル又は二ハロゲン化物を使用することが一般的である。ポリエステルポリオールを形成するために、上述したポリオールのいずれか、とりわけジオールを使用することができる。上記のポリオールのいずれかの組み合わせも使用することができる。
【0140】
一実施形態において、ポリウレタン分散系又はポリマーエマルジョンは、線状(非分岐)であり得る。別の実施形態において、ポリウレタン分散系又はポリマーエマルジョンは、約1%~約10%、例えば約1%~約7%、又は約1%~約5%、又は例えば約2%~約4%の分岐度を有し得る。分岐は、1種以上の分岐剤、例えばトリメチロールエタンの選択的な組み込み及び使用によって達成され得る。
【0141】
追加の実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、エポキシを含む。ポリエポキシドとしても知られるエポキシ樹脂は、エポキシド基を含有するクラスの反応性プレポリマー及びポリマーである。エポキシ樹脂は、触媒的単独重合によってそれら自体と、又は多官能性アミン、酸(及び酸無水物)、フェノール類、アルコール及びチオールなどの広範囲の共反応剤とのいずれかと反応(架橋)し得る。これらの共反応剤は、多くの場合、硬化剤(hardener)又は硬化剤(curative)と呼ばれ、架橋反応は、一般に硬化と呼ばれる。ポリエポキシドのそれら自体との又は多官能性硬化剤との反応は、多くの場合、高い機械的性能、耐温度性及び耐化学薬品性を有する熱硬化性ポリマーを形成する。本明細書に開示される組成物に有用なエポキシドには、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂及びグリシジルアミンエポキシ樹脂が含まれる。そのようなエポキシ樹脂は、商業的に入手することができるか、又は当技術分野において公知の方法を用いて調製することができる。一実施形態において、エポキシ系は、プレ分散された水性エポキシ樹脂と水性硬化剤とからなる。別の実施形態において、エポキシ系は、ニートの液体エポキシと水性硬化剤とからなる。追加の実施形態において、エポキシ系は、ニートのエポキシ及びプレ分散された水性エポキシと水性硬化剤とのハイブリッドからなる。
【0142】
更なる実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ゴムエラストマーを含む。一実施形態において、ゴムエラストマーとしては、例えば、動的機械分析によって測定されるような、-30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する1種以上のジエン系の硫黄加硫可能なエラストマーを挙げることができる。
【0143】
別の実施形態において、ゴムエラストマーは、例えば、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレン/ブタジエンコポリマーゴム(水性乳化重合又は有機溶媒重合によって調製される)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ネオプレン、スチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーゴム、ブタジエン/アクリロニトリルゴム、ポリイソプレンゴム、イソプレン/ブタジエンコポリマーゴム、ニトリルゴム、エチレン-アクリルゴム、ブチル及びハロブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フルオロエラストマー、炭化水素ゴム、ポリブタジエン、シリコーンゴム及びそれらの組み合わせなどの任意の好適なエラストマー又はエラストマーの組み合わせであり得る。本明細書で用いられる場合、用語「ネオプレン」は、ポリクロロプレンと同義であり、硫黄変性クロロプレンなどのクロロプレンの重合により製造される合成ゴムを指す。一実施形態において、ゴム成分は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、スチレンブタジエンコポリマーゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、水素化ニトリルゴム、ポリブタジエン又はネオプレンを含む。一実施形態において、ゴム成分は、天然ゴムを含む。一実施形態において、ゴム成分は、スチレンブタジエンコポリマーゴムを含む。一実施形態において、ゴム成分は、エチレンプロピレンジエンモノマーゴムを含む。一実施形態において、ゴム成分は、水素化ニトリルブタジエンゴムを含む。一実施形態において、ゴム成分は、ネオプレンを含む。一実施形態において、ゴム成分は、シリコーンゴムを含む。ゴムエラストマー分散系は、商業的に入手することができるか、又は例えば米国特許3281386 A号明細書に開示されているような当技術分野において公知の方法によって調製することができる。
【0144】
いくつかの実施例において、ゴムエラストマーは、1種以上の充填材、例えばシリカ、カーボンブラック又はそれらの混合物を含むことができる。任意選択的に、ゴムエラストマーは、少なくとも1種の添加剤、例えば酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、相溶化剤、結合剤、粘着性付与剤、硬化剤、加硫促進剤又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0145】
ラテックス組成物中のポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、約10~約2500nmの範囲、例えば約40nm~約700nm、又は約80nm~約400nm、又は約40nm~約1000nm、又は約80nm~約2000nm、又は約80nm~約2500nmの範囲の少なくとも1つの次元における平均粒径を有することができる。粒径は、当技術分野において公知の方法によって測定することができる。
【0146】
ラテックス組成物中に存在するポリマーの量は、任意の有用な量、例えば多糖とポリマー固形分との総重量を基準として約0.5重量パーセント(重量%)のポリマー固形分~約90重量%のポリマー固形分の量にあることができる。いくつかの実施例において、ポリマーは、多糖固形分とポリマーとの総重量を基準として約0.5重量%のポリマー固形分~約5重量%のポリマー固形分、又は約5重量%のポリマー固形分~約20重量%のポリマー固形分、又は約5重量%のポリマー固形分~約50重量%のポリマー固形分、又は約5重量%のポリマー固形分~約75重量%のポリマー固形分の量でラテックス組成物中にポリマー分散系又はポリマーエマルジョンの形態で存在する。いくつかの実施例において、ポリマーは、多糖固形分とポリマーとの総重量を基準として約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85若しくは90重量%のポリマー固形分(又は0.5重量%~90重量%の任意の値)の量で存在することができる。
【0147】
本明細書に開示されるラテックス組成物は、多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含み、多糖粒子及びポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、両方とも水溶液中に分散している。一実施形態において、水溶液は、水である。別の実施形態において、水溶液は、有機溶媒を更に含む。有機溶媒は、水と混和性であるか又は水と非混和性であり得る。有用な有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、グリセロールエーテル、ヘキサン、トルエン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドを挙げることができる。一実施形態において、水溶液は、有機溶媒を更に含み、有機溶媒は、メタノールである。別の実施形態において、水溶液は、有機溶媒を更に含み、有機溶媒は、テトラヒドロフランである。更に別の実施形態において、水溶液は、有機溶媒を更に含み、有機溶媒は、メタノールである。
【0148】
一実施形態において、本明細書に開示されるラテックス組成物は、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン又は加工デンプンを本質的に含まない。一実施形態において、ラテックス組成物は、セルロース又は加工セルロースを本質的に含まない。本明細書で用いられる場合、語句「本質的に含まない」は、ラテックス組成物が1重量%未満のその成分又は0.5重量%未満、若しくは0.1重量%未満、若しくは0.01重量%未満のその成分を含有することを意味する。
【0149】
本明細書に開示されるラテックス組成物は、1種以上の添加剤を更に含み得る。有用な添加剤としては、分散剤、レオロジー助剤、消泡剤、発泡剤、接着促進剤、難燃剤、殺菌剤、殺真菌剤、防腐剤、蛍光増白剤、顔料、充填材、沈降防止剤、合体剤、保湿剤、緩衝材、着色剤、粘度調整剤、不凍剤、界面活性剤、バインダー、架橋剤、防食剤、硬化剤、pH調整剤、塩、増粘剤、可塑剤、安定剤、増量剤、艶消剤又はそれらの組み合わせなどの添加剤を挙げることができる。有用な顔料の例としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、珪藻土、雲母、水和酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、霞石閃長岩及びそれらの混合物が挙げられる。
【0150】
一実施形態において、ラテックス組成物は、水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含み、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンを含み、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ビニルモノマー、アクリルモノマー又はそれらの混合物から重合されたポリマーを含む。一実施形態において、ラテックス組成物は、水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含み、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンを含み、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ポリウレタンを含む。更なる実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカン粒子は、多糖とポリマー固形分との総重量を基準として約0.1重量パーセントの多糖固形分~約3重量パーセントの多糖固形分の範囲の量で存在する。
【0151】
一実施形態において、ラテックス組成物は、水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含み、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンを含み、ポリマー分散系又はエマルジョンは、ポリウレタンを含む。更なる実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカン粒子は、多糖とポリマー固形分との総重量を基準として約5重量パーセントの多糖固形分~約35重量パーセントの多糖固形分の範囲の量で存在する。
【0152】
一実施形態において、ラテックス組成物は、水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー分散系又はエマルジョンとを含み、多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンを含み、ポリマー分散系又はエマルジョンは、ポリウレタンを含む。更なる実施形態において、ポリアルファ-1,3-グルカン粒子は、多糖とポリマー固形分との総重量を基準として約70重量パーセントの多糖固形分~約80重量パーセントの多糖固形分の範囲の量で存在する。
【0153】
水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー分散系又はエマルジョンとを含むラテックス組成物を製造する方法であって、
a)多糖粒子を提供する工程と、
b)ポリマー分散系又はエマルジョンを提供する工程と、
c)多糖粒子とポリマー分散系又はエマルジョンとを水溶液中で組み合わせる工程と、
d)組み合わされた粒子を高せん断分散にかけることによって分散系を形成する工程と
含む方法も本明細書に開示される。
【0154】
多糖粒子は、上で本明細書に開示されたような少なくとも1種の多糖を含み、固体又は水溶液中の多糖粒子の分散系として提供することができる。ポリマーは、上で本明細書に開示されたようなポリマーを含み、固体又は水溶液中のポリマー粒子の分散系若しくはポリマーエマルジョンとして提供することができる。一実施形態において、多糖粒子又は多糖粒子の分散系を任意選択的に水溶液と共にミキサーに装入することができ、次にポリマー分散系又はポリマーエマルジョンが十分に混合しながら多糖粒子にゆっくり添加され、水溶液中の多糖粒子とポリマーとの良好な分散系を提供し、ラテックス組成物を形成する。別の実施形態において、ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンをミキサーに装入することができ、次に多糖粒子又は多糖粒子の分散系が十分に混合しながらポリマー分散系又はエマルジョンにゆっくり添加され、水溶液中のポリマーと多糖粒子との良好な分散系を提供し、ラテックス組成物を形成する。ラテックス組成物は、多糖粒子とポリマー分散系又はエマルジョンとを、当技術分野において公知の方法を用いる高せん断分散にかけることによって形成することができる。
【0155】
本明細書に開示されるラテックス組成物は、プライマーを含めて、ペイント調合物に有用であり得る。プライマーは、コートされる基材上の第1の層として使用され、基材とその後のペイント又はコーティング層との間の接着を提供する。
【0156】
一実施形態において、本明細書に開示されるようなラテックス組成物は、ペイントを調製するために使用することができる。典型的には、ペイントは、顔料、シックナー、分散剤、界面活性剤、沈降防止剤、殺生物剤/防腐剤、合体剤、可塑剤、安定剤、増粘剤、レベリング助剤、消泡剤、皮張り防止剤、増量剤、架橋剤、腐食防止剤及び艶消剤などの他の一般的なペイント添加剤も含み得る。代表的な顔料としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、珪藻土、雲母、水和酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム及びそれらの混合物が挙げられる。着色ペイントのために、所望の着色剤が水性コーティング組成物に添加される。有用な着色剤の例としては、金属酸化物、合成有機顔料及びカーボンブラックが挙げられる。
【0157】
本明細書に開示されるようなラテックス組成物を含むペイントは、当技術分野において公知の技術を用いて調製することができる。水性組成物は、典型的には、4段階で調製され、その第1段階は、一般にプレ-シン(pre-thin)段階と一般に呼ばれる。本明細書に開示されるようなラテックス組成物は、プレ-シン段階で調製し、プレ-シン混合物を形成するために必要に応じて二次バインダー、チェース水及び消泡剤と組み合わせることができる。次に、本明細書に開示されるようなラテックス組成物を含むプレ-シン混合物を、すり潰し段階、洗浄段階及びシンダウン(thindown)段階を通して処理してペイントを調製することができる。
【0158】
本明細書に開示されるラテックス組成物は、接着剤、フィルム、コーティング及びバインダーにも有用であり得る。これらの用途において、ラテックス組成物は、接着剤、フィルム、コーティング又はバインダー中に乾燥形態で存在する。本明細書で用いられる場合、用語「乾燥形態における」は、水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー固形分又はポリマーエマルジョンとを含むラテックス組成物であって、水溶液の少なくとも一部が例えば水溶液の蒸発(すなわち乾燥)によって除去されている組成物を指す。一実施形態において、乾燥形態におけるラテックス組成物は、元々存在した水溶液を本質的に含まない、例えば乾燥前の多糖固形分と、ポリマー固形分と、水溶液との総重量を基準として約5重量%未満の水溶液を含有する。別の実施形態において、乾燥形態におけるラテックス組成物は、乾燥前の多糖固形分と、ポリマー固形分と、水溶液との総重量を基準として、乾燥前よりも少なくとも5重量パーセント少ない水溶液を含有する。例えば、乾燥形態におけるラテックス組成物は、乾燥前の多糖固形分と、ポリマー固形分と、水溶液との総重量を基準として少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99若しくは100重量パーセント(又は5重量%~100重量%の任意の値)より少ない重量による水溶液を含有することができる。乾燥形態において、多糖粒子及びポリマー粒子は、水溶液が除去されるときに形成される固体のフィルム、コーティング又は接着剤中に分散している。一実施形態において、乾燥形態のラテックス組成物は、乾燥前のラテックス組成物中に含まれていた任意の添加剤を更に含む。水溶液の少なくとも一部の除去(乾燥)は、周囲温度、周囲温度よりも下の温度又は周囲温度よりも上の温度で行うことができる。水溶液の少なくとも一部の除去は、周囲条件下又は空気若しくはガス流下で行うことができる。
【0159】
本明細書に開示されるような乾燥形態におけるラテックス組成物を含む接着剤、フィルム、コーティング又はバインダーを含む物品も本明細書に開示される。本明細書ではコートされた物品とも呼ばれるそのような物品は、コートされた物品の所望の最終用途に応じて、実質的に連続的に又は不連続的にコーティング、接着剤、フィルム又はバインダーがその上に配置されている少なくとも1つの表面を有する基材を含む。
【0160】
一実施形態において、物品は、紙、皮革、木材、金属、ポリマー、繊維基材又は建築表面を含む。「建築表面」とは、家屋、商用ビル、医療ビル又は教育、若しくは娯楽、若しくはスポーツ場を含むが、それらに限定されない、ビルディングの外面又は内面を意味する。いくつかの実施形態において、物品は、紙、織物又は皮革などの多孔性基材を含むことができる。いくつかの実施形態において、物品は、紙、ボール紙、板紙、段ボール、セルロース基材、織物又は皮革を含む。他の実施形態において、物品は、木材、金属、石造り建造物、乾式壁、しっくい又は建築表面などの硬質材料を含むことができる。追加の実施形態において、物品は、ポリマーを含むことができる。一実施形態において、物品は、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、アラミド、ポリエチレンスルフィド(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(環状オレフィン)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)(PTF)及びセロファンなどのポリマーを含むことができる。一実施形態において、物品は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリアミド又はポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)を含むポリマーを含む。
【0161】
いくつかの実施例において、物品は、布地又は衣服などの繊維基材を含む。一実施形態において、コートされた物品は、表面を有する繊維基材を含み、ここで、表面は、表面の少なくとも一部上に乾燥形態における、本明細書に開示されるようなラテックス組成物を含むコーティングを含む。
【0162】
繊維基材としては、繊維、糸、布地、布地ブレンド、織物、不織布、紙、皮革及びカーペットを挙げることができる。一実施形態において、繊維基材は、繊維、糸、布地、織物又は不織布である。繊維基材は、綿、セルロース、羊毛、絹、レーヨン、ナイロン、アラミド、アセテート、ポリウレタンウレア、アクリル、ジュート、サイザル、海藻、コイア、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリアラミド又はそれらのブレンドなどの天然又は合成繊維を含有することができる。「布地ブレンド」とは、2種類以上の繊維から製造された布地を意味する。典型的には、これらのブレンドは、少なくとも1種の天然繊維と少なくとも1種の合成繊維との組み合わせであるが、2種以上の天然繊維又は2種以上の合成繊維のブレンドも含むことができる。不織基材には、例えば、DuPontから入手可能なSONTARA(登録商標)などのスパンレース不織布及びスパンボンド-メルトブローン-スパンボンド不織布が含まれる。
【0163】
一実施形態において、乾燥形態におけるラテックス組成物を含む接着剤、コーティング、フィルム又はバインダーは、基材の少なくとも1つの表面上に実質的に連続の層で配置される。別の実施形態において、接着剤、コーティング、フィルム又はバインダーは、基材の2つ以上の表面上に実質的に連続の層で配置される。語句「実質的に連続の層」は、基材の少なくとも一部分に塗布された組成物の層であって、組成物の乾燥層が、それが塗布されている表面の99%以上を被覆し、基材表面を露出させる1%未満の空隙を層中に有する層を意味する。層が塗布されている表面の99%以上は、層が塗布されていない基材のいかなるエリアも排除する。例えば、連続層は、基材の一部分にのみ塗布することができ、それでもなお、その層が塗布されているエリアにとって連続層と見なすことができる。
【0164】
接着剤、コーティング、フィルム又はバインダーは、約0.1マイクロメートル(μm)~約100μm、又は約0.5μm~約80μm、又は約0.5μm~約60μm、又は約0.5μm~約40μm、又は約1μm~約30μm、又は約1μm~約20μmの範囲の厚さを有する乾燥コーティング層として基材上に存在することができる。代わりに、乾燥コーティング層の厚さは、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100μmであり得る。必要に応じて、接着剤、フィルム、コーティング又はバインダーは、100μm超の厚さを有することができる。
【0165】
任意選択的に1種以上の添加剤を含有する、水溶液中に分散した多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含むラテックス組成物は、当技術分野において公知の方法を用いて物品の基材に塗布することができる。ラテックス組成物の塗布後、水溶液の少なくとも一部は、例えば、乾燥によって除去されて乾燥形態におけるラテックス組成物を含む接着剤、フィルム、コーティング又はバインダーを提供する。塗布方法には、エアナイフコーティング、ロッドコーティング、バーコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、キャストコーティング、可撓ブレードコーティング、グラビアコーティング、ジェットアプリケータコーティング、ショートドエルコーティング、スライドホッパーコーティング、カーテンコーティング、フレキソ印刷コーティング、サイズ-プレスコーティング、リバース・ロールコーティング及び転写ロールコーティングが含まれる。ラテックス組成物は、基材の少なくとも一部上、例えば基材の片側若しくは両側上、片側の一部又は平坦な基材の両側の一部に塗布することができる。コーティング組成物の溶液は、基材に一回又は基材に複数回塗布することができる。
【0166】
本明細書に開示されるような乾燥形態におけるラテックス組成物を含むフィルム、コーティング(ペイントなど)、接着剤又はバインダーは、多糖粒子を欠くことを除いて匹敵する厚さ及び類似の組成のフィルム、コーティング、接着剤又はバインダーのそれと比較して、
a)増加した硬度;
b)低下した粘着性;
c)減少した光沢(すなわち艶消効果を提供する);
d)増加したせん断強度(接着剤のための);又は
e)増加した不透明性
の少なくとも1つの特性を含むことができ、ここで、少なくとも1つの特性は、同じ方法、例えば本明細書での実施例に開示される方法を用いて評価される。本明細書に開示されるような乾燥形態におけるラテックス組成物を含むフィルム又はコーティングは、増加したコーティング硬度、改善された乾燥時間、改善された耐退色性、より低いブリスタリング及び改善された手触り(より少ない粘着性感触)などの利益を提供することができる。
【0167】
ラテックス組成物、ラテックス組成物を含む物品及び本明細書に開示される方法の非限定的な例としては、下記が挙げられる:
1.多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを含む水性ラテックス組成物。
【0168】
2.多糖粒子は、
i)ポリアルファ-1,3-グルカン;
ii)ポリアルファ-1,3-1,6-グルカン;
iii)構造1:
【化17】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり;
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、ここで、前記第1の基の-C-部分は、2~6個の炭素原子の鎖を含み;及び
(C)この化合物は、約0.001~約3の、第1の基での置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物;
iv)構造2:
【化18】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(i)nは、少なくとも6であり、
(ii)各Rは、独立して、H又はアシル基であり、及び
(iii)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物;
v)構造3:
【化19】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(C)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物;
vi)構造4:
【化20】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は正電荷を有する有機基であり、及び
(C)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物;又は
それらの組み合わせ
を含む少なくとも1種の多糖を含む、実施形態1に記載のラテックス組成物。
【0169】
3.多糖粒子は、約20nm~約5000ミクロンの範囲の少なくとも1つの次元における平均粒径を有する、実施形態1又は2に記載のラテックス組成物。
【0170】
4.多糖粒子は、多糖とポリマー固形分との総重量を基準として約0.01重量パーセントの多糖固形分~約75重量パーセントの多糖固形分の範囲の量で存在する、実施形態1、2又は3に記載のラテックス組成物。
【0171】
5.多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-グルカンを含む、実施形態1、2、3又は4に記載のラテックス組成物。
【0172】
6.多糖粒子は、ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンを含む、実施形態1、2、3又は4に記載のラテックス組成物。
【0173】
7.多糖粒子は、構造1:
【化21】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり;
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、ここで、前記第1の基の-C-部分は、2~6個の炭素原子の鎖を含み;及び
(C)この化合物は、約0.001~約3の、第1の基での置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物を含む、実施形態1、2、3又は4に記載のラテックス組成物。
【0174】
8.多糖粒子は、構造2:
【化22】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物であって、式中、
(i)nは、少なくとも6であり、
(ii)各Rは、独立して、H又はアシル基であり、及び
(iii)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエステル化合物を含む、実施形態1、2、3又は4に記載のラテックス組成物。
【0175】
9.多糖粒子は、構造3:
【化23】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(C)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物を含む、実施形態1、2、3又は4に記載のラテックス組成物。
【0176】
10.多糖粒子は、構造4:
【化24】

によって表されるポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、H又は正電荷を有する有機基であり、及び
(C)この化合物は、約0.001~約3.0の置換度を有する、ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物を含む、実施形態1、2、3又は4に記載のラテックス組成物。
【0177】
11.ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、少なくとも1種の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーから重合されたポリマー;ポリウレタン;エポキシ;ゴムエラストマー;又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10に記載のラテックス組成物。
【0178】
12.ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、1種以上の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーから重合されたポリマーを含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11に記載のラテックス組成物。
【0179】
13.1種以上の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーは、ビニルモノマー、アクリルモノマー、アリルモノマー、アクリルアミドモノマー、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸又はそれらの混合物を含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12に記載のラテックス組成物。
【0180】
14.1種以上の共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーは、ビニルモノマー、アクリルモノマー又はそれらの混合物を含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13に記載のラテックス組成物。
【0181】
15.ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ポリウレタンを含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14に記載のラテックス組成物。
【0182】
16.ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、エポキシを含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15に記載のラテックス組成物。
【0183】
17.ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、ゴムエラストマーを含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16に記載のラテックス組成物。
【0184】
18.ゴムエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、スチレンブタジエンコポリマーゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン又はネオプレンを含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17に記載のラテックス組成物。
【0185】
19.ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンは、約10nm~約2500nmの範囲の少なくとも1つの次元における平均粒径を有する粒子を含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18に記載のラテックス組成物。
【0186】
20.ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンのポリマーは、多糖とポリマー固形分との総重量を基準として約0.5重量パーセントのポリマー固形分~約90重量パーセントのポリマー固形分の範囲の量で存在する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19に記載のラテックス組成物。
【0187】
21.有機溶媒を更に含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20に記載のラテックス組成物。
【0188】
22.1種以上の添加剤を更に含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21に記載のラテックス組成物。
【0189】
23.添加剤は、分散剤、レオロジー助剤、消泡剤、発泡剤、接着促進剤、難燃剤、殺菌剤、殺真菌剤、防腐剤、蛍光増白剤、顔料、充填材、沈降防止剤、合体剤、保湿剤、緩衝材、着色剤、粘度調整剤、粘度調整剤、不凍剤、界面活性剤、バインダー、架橋剤、防食剤、硬化剤、pH調整剤、塩、増粘剤、可塑剤、安定剤、増量剤、艶消剤又はそれらの組み合わせである、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22に記載のラテックス組成物。
【0190】
24.実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22又は23に記載のラテックス組成物を含むペイント調合物。
【0191】
25.乾燥形態における、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22又は23に記載のラテックス組成物を含む接着剤、フィルム、コーティング又はバインダー。
【0192】
26.多糖粒子を欠くことを除いて匹敵する厚さ及び類似の組成のフィルム、コーティング、接着剤又はバインダーのそれと比較して、a)増加した硬度;b)低下した粘着性;c)減少した光沢;d)増加したせん断強度;又はe)増加した不透明性の少なくとも1つの特性を含み、ここで、少なくとも1つの特性は、同じ方法を用いて評価される、実施形態25に記載のフィルム、コーティング、接着剤又はバインダー。
【0193】
27.実施形態25又は26に記載の接着剤、フィルム、コーティング又はバインダーを含む物品。
【0194】
28.紙、皮革、木材、金属、ポリマー、繊維基材又は建築表面である、実施形態27に記載の物品。
【0195】
29.ラテックス組成物を製造する方法であって、a)多糖粒子を提供する工程と;b)ポリマー分散系又はポリマーエマルジョンを提供する工程と;c)水溶液で多糖粒子とポリマー分散系又はポリマーエマルジョンとを組み合わせる工程と;d)工程c)の組み合わせを高せん断分散にかける工程とを含む方法。
【0196】
30.ラテックス組成物は、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22又は23に記載のラテックス組成物である、実施形態29に記載の方法。
【実施例
【0197】
特に記載しない限り、全ての材料は、受け取ったまま使用した。
【0198】
本明細書で用いられる場合、「Comp.Ex.」は、比較例を意味し;「Ex.」は、実施例を意味し;「g」は、グラムを意味し;「eq」は、当量を意味し;「rpm」は、1分当たりの回転数を意味し;「min」は、分を意味し;「μm」は、ミクロンを意味し;「cm」は、センチメートルを意味し;「kg」は、キログラムを意味し;「lb」は、ポンドを意味する。
【0199】
表のいくつかにおいて、ポリアルファ-1,3-グルカンは、多糖と呼ばれ、PSと略記される。
【0200】
ポリアルファ-1,3-グルカンの代表的な調製
ポリアルファ-1,3-グルカンは、米国特許第7,000,000号明細書;米国特許出願公開第2013/0244288号明細書、現在米国特許第9,080,195号明細書;及び米国特許出願公開第2013/0244287号明細書、現在米国特許第8,642,757号明細書(それらの全ては、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されているようなgtfJ酵素調製物を用いて調製することができる。
【0201】
ポリアルファ-1,3-グルカンポリマーは、両方ともその全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2014/0179913号明細書、現在米国特許第9,139,718号明細書(例えば、その中の実施例12を参照されたい)に開示されている手順に従って合成することができ、そのウェットケーキを調製することができる。
【0202】
その全体が参照により本明細書に援用される例えば公開特許出願国際公開第2016/126685号パンフレットに開示されているように、ウェットケーキポリアルファ-1,3-グルカンを高せん断混合にかけてコロイド分散系を形成することができる。
【0203】
原材料
炭酸カルシウム(Huber 3G)は、Huber Engineered Materialsから入手した。非イオン水性エポキシ分散系(EpirezTM7520-WD-52)、水希釈性ポリアミン硬化剤(EpikureTM8530-W-75)及びベルサチン酸(Versatic acid 10、ネオデカン酸)は、Hexionから入手した。エポキシ分散系は、52%固形分、約525g/eqのエポキシ当量及び1000~6000cPの粘度を含有する変性EponTM樹脂1001固体エポキシ樹脂の非イオン水性分散系である。様々な揮発性のグリセロールエーテル溶媒、DowanolTMDPM及びDowanolTMDPnBは、Dow Chemical Companyから購入した。分散剤(Disperbyk(登録商標)194N)及びレオロジー調整剤(BYK(登録商標)-7420 ES及びOptiflo(登録商標)H600VF)は、BYK Additives and Instrumentsから購入した。泡制御剤(DrewplusTML-475)及びTiO(TiOR706)は、それぞれAshland Inc.及びThe Chemours Companyから購入した。
【0204】
実施例1~5
ポリアルファ-1,3-グルカン/エポキシ調合物
比較例A
調合物
水性エポキシ、硬化剤、消泡剤、レオロジー調整剤及び溶媒を、表1に示される量で容器中に正確に量り取り、次に650rpmでのCowlesブレード付き高速分散機下に置いた。次に、顔料及び/又は充填材のような粒状物質(TiO、CaCO及びポリアルファ-1,3-グルカン)並びに水を混合しながら添加した(表1に示される量)。成分を全て組み合わせたら直ちに分散機の速度を3000rpmまで増加させ、10分間混合物を分散させた。
【0205】
比較例Aは、TiO及びCaCOを唯一の粒状充填材として使用して調合した。実施例1A及び1Bは、それぞれ5%及び10%のCaCO充填材を、それぞれレーザー回折技術(Beckman Coulter LS13320)によって測定されるように200μmの平均粒径を有するポリアルファ-1,3-グルカン粉末で置き換えることによって調製した。実施例2A、2B及び2Cでは、レーザー回折技術を用いて測定される5μmの粒径を有するポリアルファ-1,3-グルカン粉末を使用して5%、10%及び15%のCaCOを置き換えた。水性エポキシ調合物の残りの成分は、各実施例にわたって同様に維持した。
【0206】
【表1】
【0207】
実施例3、4A、4B、5A及び5Bの調合物を調製するために使用される原材料及び量を表2に示す。量は、乾燥重量ベースでのグラム単位で示す。実施例3、4A及び4Bの調合物は、ウェットケーキとしてのポリアルファ-1,3-グルカンを調合物に直接分散させることによって調製した。実施例5A及び5Bでは、高速分散機を用いて(5分間3000rpm)ウェットケーキポリアルファ-1,3-グルカンを水及びベルサチン酸中にプレ分散させた。次に、そのようなプレ分散ポリアルファ-1,3-グルカンを成分の残りと混合してCaCOの4.4%置き換えを提供した。低速混合方法を、プレ分散ポリアルファ-1,3-グルカンを実施例5Aのコーティング調合物の残りとブレンドするために用いる一方、高速混合を、実施例5Bの調合物を調製するために用いた。
【0208】
【表2】
【0209】
金属板(鋼板)上への調製調合物のコーティングを、birdバーを用いて行って3ミルの湿潤厚さを提供した。
【0210】
試験方法
粘度及び粒度測定は、塗布前の調合コーティングに関して行った。他の試験は、鋼板上へのコーティングの塗布後に行った。表3において、多糖は、「乾燥」粉末形態及び表では形態「湿潤」多糖類(ウェットケーキ、コロイド分散系(CDHV)を使用した)で使用した。
【0211】
不透明度測定のためのペイント塗布
調合ペイント(表1及び表2に示される調合物)を、Leneta形式2C不透明度チャート上にBirdバーを用いて3ミル湿潤フィルム厚さで塗布し、一晩乾燥させた。次に、X-Rite RM200QCを用いてチャートの白色部分にわたって色を測定した。
【0212】

ドローダウンチャートの白色部分にわたって色L*a*b*を読み取り、標準からの全体色差(デルタE)を次の通り計算した。
【数3】
【0213】
不透明度(コントラスト比)
コートされた表面のL値をチャートの白色及び黒色部分にわたって測定した。次に、チャートの黒色部分にわたってL値を取り、それをチャートの白色部分にわたるL値で割ることによって不透明度を測定した。より大きい数は、より良好な不透明度又は隠蔽力に等しい。
【0214】
光沢
3グロス光沢計(20、60及び85度)を用いて光沢を測定した。
【0215】
物理的特性
粒度
粉砕物の細粉度は、ASTM D-1210に従って粒度ゲージの細粉度を用いて測定した。この方法では、ゲージの最上部に置かれたペイントを、スクレーパーを用いて引き下ろし、ヘグマン(Hegman)スケールを用いて粒度を報告した。
【0216】
粘度
室温での調合物の粘度は、適切なスピンドルのブルックフィールド粘度計(Brookfield Viscometer)で読み取った。粘度読み取りを0.5、1、2.5、5、10、20、50及び100rpmで取って低及び高せん断でのレオロジープロフィルを評価した。次に、粘度計測定値を乗じたRPM固有のスピンドル係数を用いて粘度を計算した。
【0217】
クロスハッチ接着性
クロスカット接着性試験は、金属基材上のコーティングの接着強度を評価するためのものである。コートされた金属板上のフィルムをASTM D3359に従って正方形のパターンにカットした。次に、感圧テープをカット上に適用し、引き離した。次に、どの程度多くのコーティングフィルム/ペイントがテープによって引き離されるかによってそれを評価した。尺度は、0Bが65%超の引き離されたエリアを有し、5Bが剥離又は除去が全くない状態で0B~5Bである。
【0218】
引き離し接着性
この試験では、コーティングペイントの表面に軽く紙やすりをかけて良好な接着を提供する。エポキシ接着剤を使用して、紙やすりをかけられたペイント表面にドリーを取り付け、24時間硬化させる。油圧を用いて規定の試験径のコーティングをその基材から引き離すのに必要とされる力を、PosiTest(登録商標)Pull-Off Adhesion Testerを用いて測定し、1平方インチ当たりのポンド(PSI)単位で報告する。
【0219】
マンドレル曲げ
コートされた試験パネルを、コートされていない側を上にして、且つ最低2インチの張り出し付きの、パネルの他端が隣接マンドレルを通るための隙間があることを確実にする選択されたマンドレルに接触して置いた。次に、一定の指圧を用いることにより、約1秒でマンドレルの周りにおよそ180度だけパネルを曲げた。次に、コートされたパネルを取り外し、肉眼で見えるコーティングの亀裂について直ちに調べた。亀裂が全く起こらない最小直径を記録する。
【0220】
硬度
塗装されたパネルの表面に対して45°の角度で固定された硬度鉛筆を、パネルの表面を横切って移動させた。次に、フィルムをカットしない最も硬い鉛筆として硬度を報告した。ここで使用された鉛筆の硬度は、9B(最も柔らかい)~9H(最も硬い)の範囲である。
【0221】
裏面衝撃
それによってコーティングが完全に硬化される、コートされた試験検体パネルを逆さまに(コートされた側を下に)置き、PSI単位での衝撃に変換される特定の高さから重りを落下させる。コーティングが破損するまで、高さを一連のトライアルで上げた。コーティングにひびが入ったとき又は接着の喪失があったときに破損を記録する。
【0222】
塩水噴霧(耐食性)
塩水噴霧は、35℃のチャンバー温度の標準塩水噴霧チャンバーを用いて行った(ASTM-B-117)。次に、耐食性を罫引きでの腐食、錆び付き及び罫引きからのクリープによって評価した。
【0223】
QUV(紫外(UV)光への露光)
加速風化は、UVAランプを使用する標準QUVで行った。コートされた検体を60℃で4時間のUV及び50℃で4時間の凝縮風化サイクルに曝した。このサイクルを暴露試験にわたって繰り返した。光学的特性(すなわち色及び光沢)を異なる時点で測定し、試料を暴露キャビネットに戻した。
【0224】
結果を表3及び4に示す。
【0225】
【表3】
【0226】
【表4】
【0227】
表3及び4に報告された結果に基づき、以下の結論を引き出した。
1.分散系
・5μm乾燥多糖粉末は、高速分散ブレードを用いて15%濃度(全固形分基準で)まで水性系に直接、実際に容易に分散した(ヘグマン4)。200μm乾燥ポリアルファ-1,3-グルカン粉末は、水性エポキシ系と同様には分散しなかった。
・標準ウェットケーキポリアルファ-1,3-グルカンは、水性系に直接、不十分に分散した(ヘグマン2)。しかしながら、CDHV(高表面積ポリアルファ-1,3-グルカン)として分散されるウェットケーキは、優れた分散を示した(ヘグマン3.5)。優れた分散は、CDHV多糖類の高い表面積及び良好な剥離による。更に、CDHVは、調合物の独特の粘度展開をもたらし、全固形分濃度を基準として2.5%のみのローディングが良好な特性を提供した。
・ブレンダー又は高速分散ブレードのいずれかでの水(わずかに酸性)へのウェットケーキのプレ分散は、ヘグマンゲージ測定値を変化させなかった。しかしながら、総合的レオロジーは、ゲル様分散系をもたらすプレ分散の結果として著しく変化した。プレ分散材料についての観察される粘度の盛り上がりは、このモルフォロジ変化と一致する。
・分散系は、少なくとも4週間の継続時間にわたって安定であることが分かった。
2.調合物の粘度
・多糖調合水性エポキシコーティングの粘度挙動は、ブラシ、ロール及び噴霧塗布にとって有利であり得るずり流動化効果を示した。
・多糖物質の増粘力は、少ないローディング濃度で実際に著しいように思われる。これは、それが粘度/レオロジー調整剤の低減又はその多糖での置き換えを可能にするために望ましい。これは、コーティング用途に使用される一般的なレオロジー調整剤が環境に優しくないプロセスによる石油資源から誘導され、且つそれらのいくつかが高価でもあり得るからである。
・総合的に、多糖物質は、比較的低い濃度において、水性エポキシ調合物に唯一のレオロジー調整剤(増粘剤)として使用することができると思われる。そのような調整剤は、従来の噴霧又ははけ塗り方法を用いるコーティングとしての塗布中の減少した垂れ、飛び散り及び減少したレベリングをもたらすと予期される。更に、多糖類のそのようなレオロジー性能は、はるかに上回って他の建築用水性コーティング調合物に移転することができるであろう。
3.物理的特性
・乾燥フィルム中の乾燥又はウェットケーキ形態のポリアルファ-1,3-グルカンは、試験された様々な濃度(15%全固形分)でコーティングの物理的性能を低下させなかった。これらの観察は、接着性、硬度、可撓性及び耐衝撃性試験についても当てはまる。
4.光学的特性性能
・20、60及び85度での光沢研究は、乾燥形態又は湿潤形態のいずれかでの多糖類の使用がコーティングの光沢の喪失(より多い艶消外観)をもたらすことを明らかに示した。これは、艶消効果が高く評価される用途において有益であり得る。
・94.3(比較例A)から97(高速分散ウェットケーキ、実施例5B)までのL*の変化は、白色度の著しい増加を表す。更に、82.5(比較例A)から96.1(実施例5B)までの不透明度の変化は、隠蔽力の注目に値する変化を表す。総合的に、表3及び4に示される光学的特性結果は、CaCOをポリアルファ-1,3-グルカンで置き換えると、光学的特性の総合的改善をもたらしたことを明らかに実証している。
・粉末形態又は湿潤コロイド分散系形態のいずれかでのポリアルファ-1,3-グルカンの組み込み(実施例1A、1B、2A、2B及び2C)は、改善された白色度から観察されるように着色力を改善した。これは、多糖類の組み込みが、同じ色を維持しながらTiOローディングの低減を可能にするであろうことを明らかに示す。
・UV露光データ(図1、2、3及び4)は、調合物へのポリアルファ-1,3-グルカンの包含が、白色度を維持しながら、黄変及び発色現象からコーティングを防護するように思われることを実証している。プレ分散ウェットケーキ(実施例5B)は、最大の防護効果を示す。
6.腐食性能
・ASTM ASTM B 117に従った腐食進行研究の目視検査は、腐食防止剤の不在下の水性エポキシ調合物での非変性ポリアルファ-1,3-グルカンの使用がフィルムの耐食性を劣化させることを示した。
・不十分な腐食性能は、腐食防止剤の使用又はその疎水性を増加させるためのポリアルファ-1,3-グルカンの変性によって多分軽減させ得る。
【0228】
実施例6~9
比較例B、C、D及びE
木材接着剤調合物を調製し、評価した。TiteBond-II及びTiteBond-III接着剤をHome Depotから購入した。Vinnapas(登録商標)-323及びVinnapas(登録商標)-EP-6300試料をWacker Chemical Companyから入手した。これらの試料は、それらが木材接着用途で使用されているために選択した。Vinnapas(登録商標)-323は、ポリ(ビニルアルコール)安定化酢酸ビニル-エチレン(VAE)コポリマー分散系である。Vinnapas(登録商標)-EP-6300は、カルボキシル化されたVAEコポリマー分散系である。Titebond IIは、架橋性ポリ酢酸ビニルである。ラテックス接着剤の固形分は、供給業者によって報告されており、2時間100でのオーブン中で試料を乾燥させることによる重量分析によって検証した。Vinnapas(登録商標)323、Vinnapas(登録商標)EP-6300、Titebond II及びTitebond IIIについての対応する固形分は、55%、63%、48%及び52%である。
【0229】
これらの実施例のために、アルファ-1,3-グルカンを乾燥させ、およそ9ミクロンのd50にすり潰した。
【0230】
乾燥ポリアルファ-1,3-グルカン粉末をラテックス試料に添加し、高せん断ミキサー及び1600RPMで回転するCowles Bladeを用いて混合した。必要に応じて、追加の水を試料に添加して、対応するグルカンを含まない対照ラテックス中と同じ全%固形分を保った。具体的には、Vinnapas(登録商標)323を用いた調合物の全てを55%固形分に保ち、Vinnapas(登録商標)EP-6300を用いた調合物の全てを63%固形分に保ち、Titebond IIを用いた調合物の全てを48%固形分に保ち、Titebond IIIを用いた調合物の全てを52%固形分に保った。試料を5分間混合し、金属スパチュラを用いてチェックして集塊がないことを確実にした。
【0231】
接着剤試料を製造し、以下に概説されるASTM D-905標準試験を用いて試験した:
1)きれいで真っ直ぐの木目のある3/4インチ(1.9cm)厚さのサトウカエデ(エイサー・サッカラム(Acer saccharum))板を地元の材木店から購入した。適切な及び同様の密度の板を見出そうとして購入前に板を秤量し、評価した。購入した板を5.5インチ(14cm)幅に切り取り、32インチ(81.3cm)長さにカットした。板の新鮮で平滑な表面及び一様な厚さを確実にするために、板の表面にかんなをかけた。
2)板を2週間順化させた(8~9%の含水率を標的として)。
3)5.5インチ(14cm)幅×32インチ(81.3cm)長さがある2つの3/4インチ(1.9cm)厚さの板を一緒に接着することによってビレットを製造した。接着剤を塗布し、乾式壁ナイフを用いて手動により広げた。各板に塗布された接着剤の量を測定した。
4)ビレットを450トン、34インチ(86.4cm)×34インチ(86.4cm)、PLC制御Dieffenbacher油圧プレスで圧縮した。4つのビレットを90分間にわたって互いに頂上で一度に圧縮した。
5)接着したビレットをプレスから取り出し、7日間70°F/50%相対湿度で順化させた。
6)ビレットのそれぞれを、ASTM D-905方法に記載されているような20ブロックのせん断検体にカットした。
【0232】
試料を、接着剤劣化を加速するための水分サイクリングを用いるAPA試験方法D-4を用いても試験した。
【0233】
表5は、各ビレットに塗布された調合物の量を含めて、実施例6~9並びに比較例B、C、D及びEで調製されたビレットをまとめる。比較例は、いかなるポリアルファ-1,3-グルカンも含有しなかった。ポリアルファ-1,3-グルカンは、表では「多糖」と呼ばれる。
【0234】
【表5】
【0235】
各木材ビレットについての平均最大せん断応力を記録した。データを図5にプロットし、下の表6に示す。
【0236】
【表6】
【0237】
Vinnapas試料(実施例6A、6B及び7)は、平均して、Titebond試料(実施例8A、8B及び9)よりも低い最大せん断応力を有する。
【0238】
ポリアルファ-1,3-グルカンの添加は、Vinnapas樹脂の強度を著しく増加させる。Vinnapas 323における10%ポリアルファ-1,3-グルカン添加で平均最大せん断応力の53%増加があるが、20%ポリアルファ-1,3-グルカン添加では42%増加がある。しかしながら、Vinnapas(登録商標)含有試料は、多糖が添加される場合、D4平均最大せん断応力に有意な差を示さない。
【0239】
Titebond試料へのポリアルファ-1,3-グルカン添加は、Vinnapas試料におけるのと同じ効果を有さない。Titebond III樹脂への10%ポリアルファ-1,3-グルカン添加は、13%だけ平均最大せん断応力を低下させる。Titebond II樹脂への10%ポリアルファ-1,3-グルカン添加は、有意な差を示さないが、20%ポリアルファ-1,3-グルカン添加では、Titebond樹脂について平均最大せん断応力の17%低下がある。
【0240】
各試料についての平均最大せん断応力を水分サイクリング後に記録し、データを図6にプロットする。Vinnapas試料(実施例6A、6B及び7)は、平均して、Titebond試料(実施例8A、8B及び9)よりも低い最大せん断応力を有する。
【0241】
Vinnapas試料は、ポリアルファ-1,3-グルカンが添加された場合、平均最大せん断応力に有意な差を示さない。ポリアルファ-1,3-グルカンがTitebond樹脂に添加された場合、平均最大せん断応力の著しい低下がある。Titebond II試料(実施例8A及び8B)について、それぞれ10及び20%ポリアルファ-1,3-グルカンの添加で平均最大せん断応力の79%及び94%低下がある。
【0242】
実施例10
実施例10のために、アルファ-1,3-グルカンを乾燥させ、およそ9ミクロンのd50にすり潰した。乾燥ポリアルファ-1,3-グルカン粉末を、ポリウレタンプレポリマー中に調合する前に60℃の温度で3日間オーブン中において更に乾燥させた。
【0243】
この実施例に使用されるイソシアネートは、Covestro North America,LLCから入手されたMondur-MLQであった。この実施例に使用されるポリオールは、Huntsmanから入手されたJeffol PPG-2000であった。この実施例に使用される触媒は、Hunstmanから入手されたJeffcat DMDLCであった。
【0244】
プレポリマーを製造するために、300グラムのMondur MLQを、制御された加熱マントル内に含有される反応容器に添加した。乾燥窒素パージを反応の全体にわたって使用した。Mondur MLQを加熱及び撹拌しながら、100グラムのJeffol PPG-2000をゆっくり反応容器に添加した。PPG-2000を全て添加した後、100グラムの乾燥した9ミクロンのポリアルファ-1,3-グルカンを添加した。混合物を2時間連続的に撹拌し、温度を85~100℃に維持した。2時間後、ポリウレタンプレポリマーを70℃に冷却し、2.5グラムのJeffcat DMDLCを添加し、プレポリマーを追加の30分間撹拌した。
【0245】
ポリアルファ-1,3-グルカンを含有するポリウレタンプレポリマー(実施例10)を、ASTM D905及びAPA試験方法D-4を用いて試験した。Gorilla接着剤を、対照試料と同じ方法を用いても試験した(比較例F)。ポリアルファ-1,3-グルカンは、比較例F用のGorilla接着剤に添加しなかった。
【0246】
各バインダー系についての平均最大せん断応力を表7で下に示す。Holm多重比較方法を用いるANOVA分析は、ASTM D905又はAPA D-4から測定された平均最大せん断応力に有意な差がないことを示した。
【0247】
【表7】
【0248】
実施例11~14
ポリアルファ-1,3-グルカンを含有するVAE艶消ペイント調合物
実施例11~14では、ポリアルファ-1,3-グルカンウェットケーキポリマーを、TiO量を低減しながら55%PVC VAE艶消建築ペイント調合物に組み込んだ。重量により、TiOのあらゆる45.4kg(100ポンド)低減に対して、およそ32.2kg(71ポンド)のポリアルファ-1,3-グルカンウェットケーキを代わりに添加した。
【0249】
調合物の成分を、添加の順番に列記される表8に示す。ペイント調合物を製造するために、最初の水及びAMP-95(登録商標)(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、Angusから入手)を混合タンクに添加し、低速で撹拌した。次に、アルファ-1,3-グルカンウェットケーキ、およそ40%固形分を添加し、速度を分散機に関してゆっくり増加させた。5分の混合後、NatrosolTM330増粘剤(Ashland)を添加し、溶解させた。5分後、残りの添加剤及び顔料(Rhodoline(登録商標)226、Igepal(登録商標)CO-630(Solvay)、BYK(登録商標)022(BYK)、TiO(Chemours)、Hubercarb(登録商標)G325(炭酸カルシウム、Huberから入手))を一度に添加した。分散機速度を2800~3000rpmに上げ、調合物を10分間混合させた。次に、速度をゆっくり下げ、EcoVAE(登録商標)樹脂(酢酸ビニルエチレンコポリマーエマルジョン、Celanese)を添加した。最後に、プロピレングリコール(Eastman)、TexanolTM(エステルアルコール、Eastman)及び残りの水をゆっくり添加し、調合物を更に5分間混合した。
【0250】
【表8】
【0251】
粘度測定を塗布前に調合ペイントに関して行った。光学的及び物理的測定を、引かれたコーティングに関して行った。
【0252】
室温での調合物の粘度を適切なスピンドルのブルックフィールド粘度計で読み取った。粘度読み取りを0.5、1、2.5、5、10、20、50及び100rpmで取って低及び高せん断でのレオロジープロフィルを評価した。次に、粘度計測定値を乗じたRPM固有のスピンドル係数を用いて粘度を計算した。せん断粘度結果を図7に示す。
【0253】
アルファ-1,3-グルカンウェットケーキは、ペイントの粘度を著しく増加させたが、またずり流動化した。粘度への影響は、ペイント調合物に有利なレオロジーを付与する。
【0254】
ペイント調合物のフィルムを、birdバーを用いて鋼板上に調製した。フィルムの湿潤厚さは、3ミルであった。これらのフィルムの光学的特性を、下にまとめる方法を用いて試験した。
1.不透明度測定のためのペイント塗布
調合ペイント(表8に示される調合物)を、Leneta形式2C不透明度チャート上にBirdバーを用いて3ミル湿潤フィルム厚さで塗布し、一晩乾燥させた。次に、X-Rite RM200QCを用いてチャートの白色部分にわたって色を測定した。
2.色
ドローダウンチャートの白色部分にわたって色L*a*b*を読み取り、標準からの全体色差(デルタE)を次の通り計算した:
【数4】

3.不透明度(コントラスト比)
コートされた表面のL値をチャートの白色及び黒色部分にわたって測定した。次に、チャートの黒色部分にわたってL値を取り、それをチャートの白色部分にわたるL値で割ることによって不透明度を測定した。より大きい数は、より良好な不透明度又は隠蔽力に等しい。
4.光沢
3グロス光沢計(20、60及び85度)を用いて光沢を測定した。
5.着色力
Colortrend 888 Series Phtalo Blue着色ペーストを、ペイントの各100ガロン(378.5L)に対して1ポンド(0.45kg)の比で表8に示される各調合物に添加した。フィルムを、3ミルbirdバーを用いて引き、一晩乾燥させた。L*、a*及びb*を読み取り、上に言及されたようにデルタEを計算する。より高いL*値は、ペイントがより白いことを示す。
6.スクラブ試験
修正ASTM-D-2486方法Bを用いてスクラブを測定する。3ミルbirdバーを用いてフィルムを引く。比較される2つの調合物を同じシート上に並んで引く。Gardenerスクラブ摩耗試験器を用いて一定数のサイクルについて耐スクラブ性を測定する。次に、フィルム摩耗を目視により比較する。
【0255】
各調合物についての光学的特性のまとめを表9に記載する。TiOの23%ほどの低減で、調合物にアルファ-1,3-グルカンウェットケーキを用いて、白色度(L*)の低下が全くなく、不透明度(Y)が増加する。
【0256】
【表9】
【0257】
着色力は、どの程度多くの白色度及び輝度が着色ペイントの色に追加されるかの尺度である。着色力は、アルファ-1,3-グルカンが組み込まれる場合、17%ほどのTiO低減で対照からほとんど変化しない。TiOの23%低減でL*値のいくらかの低下がある。表10は、調合VAE艶消ペイントについての着色力データを示す。
【0258】
【表10】
【0259】
TiOローディングが減少する及びアルファ-1,3-グルカンローディングが増加するにつれて、耐スクラブ性は、対照試料と比べて低下する。耐スクラブ性は、PVCを変えること及び処方を調整することによって最適化することができる。
【0260】
TiOは、調合ペイントの不透明度、白色度又は着色力を低下させることなしに、かなりの割合で0.71の比でアルファ-1,3-グルカンと置き換えることができる。アルファ-1,3-グルカンは、TiOよりも密度が小さいため、ペイントも等体積で重量がより軽い。ペイント調合物の耐スクラブ性は、TiO含有量が低下し、且つアルファ-1,3-グルカン含有量が増加するにつれて幾分低下する。調合物は、耐スクラブ性の低下を最小限にするために処方を調整することができると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7