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▶ アルフローマ アイピー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】紙の白質化のための光学的光沢剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/52 20060101AFI20230614BHJP
   C07D 251/70 20060101ALI20230614BHJP
   D21H 21/30 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C07D251/52 A CSP
C07D251/70 A
C07D251/70 B
C07D251/70 C
C07D251/70 E
D21H21/30
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020529288
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018085029
(87)【国際公開番号】W WO2019121411
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】17210363.2
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515225895
【氏名又は名称】アルフローマ アイピー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】クリスティナ ドミンゲス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アトキンソン
(72)【発明者】
【氏名】メラル イルハン
(72)【発明者】
【氏名】マルク ブコブスキ
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特公昭37-010187(JP,B1)
【文献】特公昭38-021634(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 251/00 - 253/10
C09B 1/00 - 69/10
D06M 13/00 - 15/715
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)の化合物:
【化1】
(式中、
及びZは、互いに独立してOR若しくはOR10を表し、
及びR10は、互いに独立して直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状Cアルキルを表し、又は
及びZは、互いに独立してNR若しくはNRを表し、
及びRは、互いに独立して、水素、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキル、直鎖状C,Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状Cヒドロキシアルキル、CHCOM、CHCHCONH若しくはCHCHCNを表し、
及びRは、互いに独立して直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキル、直鎖状C,Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状Cヒドロキシアルキル、CHCHSOM CHCOM、CH(COM)CHCOM若しくはCH(COM)CHCHCOM、ベンジルを表し、若しくは
及びR並びに/若しくはR及びRは、それらの隣接する窒素原子と共にモルホリン環を表し、且つ
及びRは、互いに独立して、水素、他の直鎖状C~Cアルキル又は分岐鎖状C,Cアルキル、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル又は分岐鎖状Cヒドロキシアルキル、CHCHCONH又はCHCHCNを表し、
及び/又はRが、水素、メチル又はエチルを表し、かつR及びRの1つ又は両方が、それぞれR、R保有窒素原子に対してパラ位にあり、但し、R又はRの少なくとも1つがメチル又はエチルである、
但し、それぞれR、R保有窒素原子に対してパラ位にあるR及びRが、Cアルキルを表し、X及びYがR、R保有窒素原子に対してメタ位にあるSOMを表す場合に、ZがNR(Rが水素であり、RがCヒドロキシアルキルである)を表さない、及び、
但し、それぞれR、R保有窒素原子に対してパラ位にあるR及びRが、Cアルキルを表し、X及びYがR、R保有窒素原子に対してメタ位にあるSOMを表す場合に、ZがNR(Rが水素であり、RがCヒドロキシアルキルである)を表さない、
X及びYは、互いに独立してCOM又はSOMを表し、
m及びnは、0、1又は2であり、但し、m又はnの少なくとも1つは少なくとも1であり、且つ
Mは、陰イオン電荷との均衡を取るための陽イオンを表し、前記陽イオンは、水素、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン、アンモニウム、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカルにより一、二、三若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルにより一、二、三若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカル若しくは直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルの組合せにより二、三若しくは四置換されているアンモニウム又は前記陽イオンの組合せを含む又は本質的にからなる群から選択され、
が直鎖状C~Cアルキルである場合、nは少なくとも1であり、且つ/又は、Rが直鎖状C~Cアルキルである場合、mは少なくとも1である)。
【請求項2】
及びR10が、互いに独立して、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びR10が、互いに独立してメチルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
及び/又はRがメチルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
及びRの1つ又は両方が、それぞれR、R保有窒素原子に対してパラ位にある、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
X及びYがSOMを表し、且つ
Mが、陰イオン電荷との均衡を取るための陽イオンを表し、前記陽イオンが、Li、Na、K、1/2Ca2+、1/2Mg2+、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカルにより一、二、三若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルにより一、二、三若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカル若しくは直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルの組合せにより二、三若しくは四置換されているアンモニウムの群から選択され、且つ
m及びnが1であり、
又は、
X及びYがSOMを表し、且つ
MがNaを表し、且つ
m及びnが1である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
XがR保有窒素原子に対してメタ位にあり、且つ、YがR保有窒素原子に対してメタ位にある、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
及び/又はRが水素を表す、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
及びR並びに/又はR及びRが、互いに独立して、ヒドロキシエチル及び/又はヒドロキシイソプロピルを表す、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
及びR並びに/又はR及びRが、互いに独立して、ヒドロキシエチルを表す、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
5~60重量%の請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つの式(2)の化合物を含む、濃縮水性組成物。
【請求項12】
殺傷剤、増粘剤、シェーディング着色剤、可溶化剤、ポリマー、例えば、ポリ(ビニルアルコール)及びポリエチレングリコール、又は無機塩、例えば、塩化ナトリウムの1つ又は複数の添加物を含む、請求項11に記載の濃縮水性組成物。
【請求項13】
スラリーである、請求項11又12に記載の濃縮水性組成物。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の式(2)の化合物の調製方法であって、シアヌル酸ハロゲン化物を第1のステップにおいて式(4)の化合物及び/若しくは式(5)の化合物:
【化2】
(式中、R、R、X、Y、m及びnは、請求項1~10のいずれか一項において定義される通りの意味を有する)と反応させ、且つ、前記第1のステップの反応生成物を第2のステップにおいて式(6)の化合物:
【化3】
(式中、Mは、請求項1~10のいずれか一項において定義される通りの意味を有する)と反応させ、
又は、シアヌル酸ハロゲン化物を第1のステップにおいて式(6)の化合物と反応させ、且つ、前記第1のステップの反応生成物を第2のステップにおいて式(4)及び/若しくは式(5)の化合物と反応させ、
且つ、前記第2のステップの反応生成物を第3のステップにおいて式(7)の化合物及び/若しくは式(8)の化合物:
【化4】
(式中、R、R、R、Rは、請求項1、9及び10のいずれか一項において定義される通りの意味を有する)と反応させ、若しくは
前記第2のステップの反応生成物を第3のステップにおいて式(9)の化合物及び/若しくは式(10)の化合物:
【化5】
(式中、R及びR10は、請求項1又は2において定義される通りの意味を有する)と反応させる、
方法。
【請求項15】
前記反応が水性媒体中で実行され、且つ、前記第1のステップが、0℃~20℃の範囲内の温度及びpH=4~6の範囲内のpH値において実行され、前記第2のステップが、20~80℃の範囲内の温度及びpH=6~7.5の範囲内のpH値において実行され、且つ、前記第3のステップが、60℃~102℃の範囲内の温度及びpH=7.5~9の範囲内のpH値において実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
紙を白質化する方法であって、
パルプの懸濁液を提供するステップ、
前記パルプの乾燥繊維に基づいて0.01~5重量%の請求項11~13のいずれか一項に記載の濃縮水性組成物を加えて光沢化されたパルプを得るステップ、
ブレンド物の水を排出するステップ、
前記ブレンド物をプレス成形し及び乾燥させて紙シートとするステップ
を含む、方法。
【請求項17】
織物、紙、ボード及び不織布の光学的光沢化のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の式(2)の化合物又は請求項11~13のいずれか一項に記載の濃縮水性組成物の使用。
【請求項18】
前記式(2)の化合物がパルプに加えられる、請求項17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、紙、ボード、織物及び不織布の白質化及び光沢化のための光学的光沢剤、前記光学的光沢剤を製造する方法、製紙方法における前記光沢剤の使用並びに紙を白質化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベルの白色度(通常CIE白色度と称される)及び明度(例えば、ISO明度)は、セルロース基材、特に、エンドユーザーのための紙製品の品質を評価するための重要なパラメーターである。そのような製品のための最も重要な原材料は、セルロース、パルプ及びリグニンである。しかしながら、これらの原材料は青色光を自然に吸収し、したがって、黄ばんだ色であり、製品に暗い見た目を与える。
【0003】
原材料による青色光の自然吸収を相殺するために、光学的光沢剤(optical brightener)(光学的光沢剤(optical brightening agent)若しくはOBA、又は蛍光増白剤若しくはFWAとも称される)が使用される。OBAは、典型的には、350nm~360nmの最大波長を有するUV光を吸収し、この吸収した光を440nmの最大波長を有する可視青色光に変換する。
【0004】
セルロース基材から形成される製品の光学的特徴は、CIE白色度及びISO明度測定の公知の標準手順にしたがって評価される。CIE白色度値は、可視光スペクトルの全体にわたり紙により反射された光の測定に由来する。明度は、青色光の反射率の量の測定値である。
【0005】
紙、ボード、織物及び不織製品に対して異なる手順により光学的光沢剤(OBA)を塗布してこれらの製品の白色度、明度及びしたがって魅力を増進することが当該技術分野の現状において公知である。これらの産業において最も広く使用される光学的光沢剤は、4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸のアニリノ置換ビストリアジニル誘導体である。
【0006】
紙産業において最も広く使用されるOBAは、式(1)のものである。式(1)のOBAは、ウェットエンド(紙料への塗布)において又はサイジング技術若しくはコーティング技術のいずれかを使用して紙の面に対して、製紙機械中の任意の点において塗布の柔軟性を与える。アニリノ置換基が2つのスルホン酸基を含有する他のOBAは、紙の面に塗布される場合に特に高い白色度を付与する。
【0007】
【化1】
【0008】
欧州特許出願公開第0884312(A1)号明細書は、30重量%より多くの活性物質濃度を有する蛍光増白剤を含む配合物を開示する。活性物質は、末端アニリノ置換基において置換基を有しない4,4’-ジ-トリアジニルアミノ-2,2’-ジ-スルホスチルベンの水和物である。
【0009】
国際公開第2010/060570(A1)号パンフレットは、末端アニリノ置換基において2つのスルホ基を含有するビス(トリアジニルアミノ)スチルベン種のOBAを含む光学的光沢化組成物を開示する。この増白剤は、二価金属塩を含有するサイジング組成物との良好な適合性を可能とする。
【0010】
改善されたOBA及びOBA組成物を提供する継続的な需要が紙産業において存在する。したがって、紙及びボードのようなセルロース基材に対する良好な親和性を維持しながら、改善された持続可能性及び低減されたコストという結果的な利益を有する、より高い効率において白色度及び明度を与えることができるOBAを提供することが目的であった。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様では、目的は、式(2)の化合物:
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、
及びZは、互いから独立してOR若しくはOR10を表し、
及びR10は、互いから独立して直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状Cアルキルを表し、又は
及びZは、互いから独立してNR若しくはNRを表し、
及びRは、互いから独立して、水素、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキル、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状Cヒドロキシアルキル、CHCOM、CHCHCONH若しくはCHCHCNを表し、
及びRは、互いから独立して、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキル、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状Cヒドロキシアルキル、CHCHSOM CHCOM、CH(COM)CHCOM若しくはCH(COM)CHCHCOM、ベンジルを表し、若しくは
及びR並びに/若しくはR及びRは、それらの隣接する窒素原子と共にモルホリン環を表し、且つ
及びRは、互いから独立して、水素、直鎖状C~Cアルキル又は分岐鎖状C,Cアルキル、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状Cヒドロキシアルキル、CHCHCONH又はCHCHCNを表し、
及びRは、互いから独立して、水素、直鎖状C~Cアルキル(alykl)又は分岐鎖状C,Cアルキルを表し、但し、R又はRの少なくとも1つは、直鎖状C~Cアルキル又は分岐鎖状C,Cアルキルであり、
X及びYは、互いから独立してCOM又はSOMを表し、
m及びnは、0、1又は2であり、但し、m又はnの少なくとも1つは少なくとも1であり、且つ
Mは、陰イオン電荷との均衡を取るための陽イオンを表し、前記陽イオンは、水素、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン、アンモニウム、直鎖状C~Cアルキル(alykla)若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカルにより一、二、三若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状ヒドロキシアルキルラジカルにより一、二、三若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカル若しくは直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルの組合せにより二、三若しくは四置換されているアンモニウム又は前記陽イオンの組合せを含む又は本質的にからなる群から選択され、
が直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルである場合、nは少なくとも1であり、且つ/又は、Rが直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルである場合、mは少なくとも1である)
により解決される。
【0014】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、R及び/又はRは、水素、メチル又はエチルを表し、好ましくは、R及びRの1つ又は両方は、それぞれR又はR保有窒素原子(R1 or respectively R6 carrying nitrogen atom)に対してパラ位にあり、但し、R又はRの少なくとも1つはメチル又はエチルである。
【0015】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、R及び/又はRはメチルを表し、好ましくは、R及びRの1つ又は両方は、それぞれR、R保有窒素原子(R1 respectively R6 carrying nitrogen atom)に対してパラ位にある。
【0016】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、
X及びYはSOMを表し、且つ
Mは、陰イオン電荷との均衡を取るための陽イオンを表し、前記陽イオンは、Li、Na、K、1/2Ca2+、1/2Mg2+、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルにより一、二、三、若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカルと直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルとの組合せにより二、三若しくは四置換されているアンモニウム若しくは前記陽イオンの組合せの群から選択され、且つ
m及びnは1であり、
又は、
X及びYはSOMを表し、且つ
MはNaを表し、且つ
m及びnは1である。
【0017】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、XはR保有窒素原子に対してメタ位にあり、且つ、YはR保有窒素原子に対してメタ位にある。
【0018】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、R及びR10は、互いから独立して、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピル、好ましくはメチルを表す。
【0019】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、R及び/又はRは水素を表す。
【0020】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、
及びR並びに/又はR及びRは、互いから独立して、ヒドロキシエチル及び/又はヒドロキシイソプロピル、好ましくはヒドロキシエチルを表す。
【0021】
第2の態様では、本発明は、5~60重量%の本発明の第1の態様の少なくとも実施形態による式(2)の少なくとも1つの化合物を含む濃縮水性組成物に関する。
【0022】
好ましくは、本発明の第2の態様によれば、濃縮水性組成物は、殺傷剤、増粘剤、シェーディング着色剤(shading colorants)、可溶化剤、ポリマー、例えば、ポリ(ビニルアルコール)及びポリエチレングリコール、又は無機塩、例えば、塩化ナトリウムの1つ又は複数の添加物を含む。
【0023】
好ましくは、本発明の第2の態様によれば、濃縮水性組成物はスラリーの形態である。
【0024】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による少なくとも1つの実施形態による式(2)の化合物の調製方法であって、シアヌル酸ハロゲン化物を第1のステップにおいて式(4)の化合物及び/若しくは式(5)の化合物:
【0025】
【化3】
【0026】
(式中、R、R、X、Y、m及びnは、本発明の第1の態様による少なくとも1つの実施形態において定義される通りの意味を有する)と反応させ、且つ、第1のステップの反応生成物を第2のステップにおいて式(6)の化合物:
【0027】
【化4】
【0028】
(式中、Mは、上記に定義される実施形態の少なくともにおいて定義される通りの意味を有する)と反応させ、
又は、シアヌル酸ハロゲン化物を第1のステップにおいて式(6)の化合物と反応させ、且つ、第1のステップの結果物を第2のステップにおいて式(4)及び/若しくは式(5)の化合物と反応させ、
且つ、第2のステップの反応生成物を第3のステップにおいて式(7)の化合物及び/若しくは式(8)の化合物:
【0029】
【化5】
【0030】
(式中、R、R、R、Rは、以前に定義される通りの意味を有する)と反応させ、若しくは
第2のステップの反応生成物を第3のステップにおいて式(9)の化合物及び/若しくは式(10)の化合物:
【0031】
【化6】
【0032】
(式中、R及びR10は、上記に定義される通りの意味を有する)と反応させる、
方法に関する。
【0033】
好ましくは、本発明の第3の態様によれば、反応は水性媒体中で実行され、且つ、第1のステップは、0℃~20℃の範囲内の温度及びpH=4~6の範囲内のpH値において実行され、第2のステップは、20~80℃の範囲内の温度及びpH=6~7.5の範囲内のpH値において実行され、且つ、第3のステップは、60℃~102℃の範囲内の温度及びpH=7.5~9の範囲内のpH値において実行される。
【0034】
第4の態様では、本発明は、紙を白質化する方法であって、
パルプの懸濁液を提供するステップ、
パルプの乾燥繊維に基づいて0.01~5重量%の本発明の第2の態様の少なくとも1つの実施形態による水性組成物を加えて、光沢化されたパルプを得るステップ、
ブレンド物の水を排出するステップ、
ブレンド物をプレス成形し及び乾燥させて紙シートとするステップ
を含む、方法に関する。
【0035】
第5の態様では、本発明は、紙面光沢化用の組成物であって、少なくとも1つの面サイジング剤、及び本発明の第1の態様の実施形態の少なくとも1つによる少なくとも1つの式(2)の化合物及び水を含む、組成物に関する。
【0036】
好ましくは、本発明の第5の態様によれば、面サイジング剤は1つ又は複数のデンプン材料を含む。
【0037】
好ましくは、本発明の第5の態様によれば、1つ又は複数のデンプン材料は、酵素的、化学的若しくは熱的に改質されたデンプン、酸化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン、アセチル化デンプン、天然デンプン、アニオン性デンプン、カチオン性デンプン又は両親媒性デンプンからなる群から選択される。
【0038】
好ましくは、本発明の第5の態様によれば、面光沢化組成物中の面サイジング剤の量は、1重量%~30重量%、好ましくは2~20重量%、より好ましくは5~15重量%であり、重量%は面光沢化組成物の総重量に基づく。
【0039】
好ましくは、本発明の第5の態様によれば、面光沢化組成物のpH値は、4~13、好ましくは6~11の範囲内である。
【0040】
第6の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の少なくとも1つの実施形態による式(2)の化合物を光学的光沢剤として面サイジング剤の予め形成された水性溶液に20℃~90℃の温度において加えることによる、面光沢化組成物の調製に関する。
【0041】
第7の態様では、本発明は、顔料コーティング組成物であって、少なくとも1つの顔料、少なくとも1つのバインダー、本発明の第1の態様の少なくとも1つの実施形態による少なくとも1つの式(2)の化合物及び水を含む、顔料コーティング組成物に関する。
【0042】
好ましくは、本発明の第7の態様によれば、顔料コーティング組成物は、10~70重量%、好ましくは40~60重量%の少なくとも1つの白色顔料を含み、重量%は顔料コーティング組成物の総重量に基づく。
【0043】
好ましくは、本発明の第7の態様によれば、顔料コーティング組成物は、0.01~1重量%、好ましくは0.05~0.5重量%の本発明の第1の態様の少なくとも1つの実施形態による式(2)の化合物を含み、重量%は顔料コーティング組成物中の乾燥重量白色顔料の総重量に基づく。
【0044】
好ましくは、本発明の第7の態様によれば、白色顔料は、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム及び硫酸カルシウム又はその混合物からなる群から選択される。
【0045】
好ましくは、本発明の第7の態様によれば、バインダーは、合成ラテックス、スチレン-ブタジエン、酢酸ビニル、スチレンアクリル、ビニルアクリル、又はエチレン酢酸ビニルポリマーの1つ又は複数を含む一次バインダー及び任意選択的にデンプン、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、大豆ポリマー、ポリビニルアルコールの1つ又は複数を含む二次バインダーから選択される。
【0046】
第8の態様では、本発明は、洗浄剤組成物であって、1つ又は複数の界面活性剤及び本発明の第1の態様による一実施形態による少なくとも1つの式(2)の化合物を含む、洗浄剤組成物に関する。
【0047】
好ましくは、本発明の第8の態様によれば、洗浄剤組成物は液体形態であり、且つ、式(2)の化合物の量は、0.005~1重量%、好ましくは0.01~0.5重量%、最も好ましくは0.02~0.25重量%である。重量%は洗浄剤組成物の総重量に基づく。
【0048】
好ましくは、本発明の第8の態様によれば、洗浄剤組成物は、アルカリ金属ポリリン酸塩、炭酸ナトリウム及びゼオライトからなる群から選択されるさらなるビルダー、カルボキシメチルセルロース及びポリ(ビニルピロリドン)から選択される再付着防止剤、並びにプロテアーゼ、アミラーゼ及びリパーゼから選択される酵素を含む。
【0049】
第9の態様では、本発明は、織物、紙、ボード及び不織布の光学的光沢化のための、本発明の第1の態様の少なくとも1つの実施形態による式(2)の化合物の使用又は本発明の第2の態様の少なくとも1つの実施形態による水性組成物の使用に関する。
【0050】
好ましくは、第9の態様によれば、本発明は、製紙方法における本発明の第1の態様の少なくとも1つの実施形態による式(2)の化合物の使用であって、式(2)の化合物がパルプに加えられる、使用に関する。
【0051】
好ましくは、第9の態様によれば、本発明は、本発明の第5の態様による少なくとも1つの実施形態による紙面光沢化用の組成物における、又は本発明の第7の態様の少なくとも1つの実施形態による顔料コーティング組成物における、又は本発明の第8の態様による少なくとも1つの実施形態による洗浄剤組成物における、本発明の第1の態様の少なくとも1つの実施形態による式(2)の化合物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
第1の態様では、本発明は、式(2)の化合物:
【0053】
【化7】
【0054】
(式中、
及びZは、互いから独立してOR若しくはOR10を表し、
及びR10は、互いから独立して直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状Cアルキルを表し、又は
及びZは、互いから独立してNR若しくはNRを表し、
及びRは、互いから独立して、水素、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキル、直鎖状C,Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状Cヒドロキシアルキル、CHCOM、CHCHCONH若しくはCHCHCNを表し、
及びRは、互いから独立して直鎖状若しくは分岐鎖状C~Cアルキル、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状Cヒドロキシアルキル、CHCHSOM CHCOM、CH(COM)CHCOM若しくはCH(COM)CHCHCOM、ベンジルを表し、若しくは
及びR並びに/若しくはR及びRは、それらの隣接する窒素原子と共にモルホリン環を表し、且つ
及びRは、互いから独立して、水素、直鎖状C~Cアルキル又は分岐鎖状C,Cアルキル、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル又は分岐鎖状Cヒドロキシアルキル、CHCHCONH又はCHCHCNを表し、
及びRは、互いから独立して、水素、直鎖状C~Cアルキル又は分岐鎖状C,Cアルキルを表し、但し、R又はRの少なくとも1つは、直鎖状C~Cアルキル又は分岐鎖状C,Cアルキルであり、
X及びYは、互いから独立してCOM又はSOMを表し、
m及びnは、0、1又は2であり、但し、m又はnの少なくとも1つは少なくとも1であり、且つ
Mは、陰イオン電荷との均衡を取るための陽イオンを表し、前記陽イオンは、水素、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン、アンモニウム、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカルにより一、二、三若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルにより一、二、三若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカル若しくは直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルの組合せにより二、三若しくは四置換されているアンモニウム又は前記陽イオンの組合せを含む又は本質的にからなる群から選択され、
が直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルである場合、nは少なくとも1であり、且つ/又は、Rが直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルである場合、mは少なくとも1である)に関する。
【0055】
式(2)の化合物は、驚くべきことに、セルロース繊維に対する良好な親和性を維持しながら良好な白質化及び光沢化効果を有する。したがって、改善された持続可能性及び低減されたコストという結果的な利益と共に紙又はボードに対する必要とされる白質化効果を達成するためにより小量の式(2)の化合物が必要とされる。
【0056】
本出願において、式(2)の化合物は光学的光沢剤(OBA)と称される。
【0057】
これに関して、本発明者らは、式(2)の化合物中の少なくとも1つの末端アニリノ置換基が直鎖状又は分岐鎖状C~Cアルキル基及び少なくとも1つのSOM又はCOM基を同時に有する場合、白質化及び光沢化性能に関するOBAの品質は改善されることを見出した。
【0058】
式(2)の化合物は、紙料への添加、又はサイジング若しくはコーティング組成物中での紙面の処理のいずれかによりセルロース繊維に塗布されてもよい。
【0059】
ある特定の実施形態では、式(2)の化合物は、R又はR10が、互いから独立して、メチル、エチル、プロピル、分岐鎖状プロピル、ブチル又は分岐鎖状ブチルを表すことを特徴とする。さらなる実施形態では、R及びR10は同じであり、好ましくは、R及びR10の両方はメチルを表し、すなわち、Z及びZはO-CHを表す。
【0060】
好ましくは、式(2)の化合物は、R及び/又はRが、水素、メチル又はエチルであり、好ましくは、R及びRの1つ又は両方が、それぞれR、R保有窒素原子に対してパラ位にあり、但し、R又はRの少なくとも1つがメチル又はエチルであることを特徴とする。
【0061】
好ましくは、式(2)の化合物は、R及び/又はRがメチルを表し、且つ好ましくは、R及びRの1つ又は両方が、それぞれR、R保有窒素原子に対してパラ位にあることを特徴とする。驚くべきことに、セルロース繊維に対する親和性及び持続可能性は、R及びRがメチルである場合に改善されることが見出された。
【0062】
本発明の第1の態様の一実施形態によれば、m及びnの和は、2、3又は4である。一実施形態では、m=n=2は除外される。m=n=1が好ましい。
【0063】
好ましくは、式(2)の化合物は、
X及びYがSOMを表し、且つ
Mが、陰イオン電荷との均衡を取るための陽イオンを表し、前記陽イオンが、Li、Na、K、1/2Ca2+、1/2Mg2+、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカルにより一、二、三若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルにより一、二、三若しくは四置換されているアンモニウム、直鎖状C~Cアルキル若しくは分岐鎖状C,Cアルキルラジカル若しくは直鎖状C~Cヒドロキシアルキル若しくは分岐鎖状C,Cヒドロキシアルキルラジカルの組合せにより二、三若しくは四置換されているアンモニウムの群から選択され、且つ
m及びnが1であり、
又は、
X及びYがSOMを表し、且つ
Mが、Na、K、Li、トリメチルアンモニウム及びジメチルエタノールアンモニウムを表し、且つ
m及びnが1である
ことを特徴とする。
【0064】
本出願において、「1/2Ca2+」及び「1/2Mg2+」という用語は、式(2)の化合物内の陽イオン電荷及び陰イオン電荷の均衡が取れた化学量論を表すための形式的表記を表す。1つの二価カルシウム又はマグネシウム陽イオンは、1つ又は2つの式(2)の化合物を起源とする2つの陰イオン電荷を効果的に相殺する。
【0065】
好ましくは、式(2)の化合物は、XがR保有窒素原子に対してメタ位にあり、且つ、YがR保有窒素原子に対してメタ位にあることを特徴とする。
【0066】
好ましくは、式(2)の化合物は、R及び/又はRが水素を表すことを特徴とする。
【0067】
好ましくは、式(2)の化合物は、R及びR並びに/又はR及びRが、互いから独立して、ヒドロキシエチル及び/又はヒドロキシイソプロピル、好ましくはヒドロキシエチルを表すことを特徴とする。
【0068】
第2の態様では、本発明は、水性組成物の総重量に対して5~60重量%の少なくとも1つの式(2)の化合物を含む又はからなる水性組成物に関する。
【0069】
好ましくは、水性組成物中の式(2)の化合物の量は、少なくとも7.5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも12.5重量%又は少なくとも15重量%であり、且つ、最大で55重量%、又は最大で50重量%、又は最大で45重量%、又は最大で40重量%、好ましくは7.5~55重量%、又は10~50重量%、又は12.5~45重量%、又は15~40重量%であり、重量%は水性組成物の総重量に基づく。
【0070】
本発明による水性組成物は、殺傷剤、増粘剤、シェーディング着色剤、可溶化剤、ポリマー、例えば、ポリ(ビニルアルコール)及びポリエチレングリコール、又は無機塩、例えば、塩化ナトリウムから選択される1つ又は複数の添加物を含有し得る。
【0071】
本出願の文脈内で使用される「水性組成物」という用語は水ベースの組成物を指し、すなわち、組成物は水を含む。
【0072】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による任意の実施形態による式(2)の化合物の調製方法に関する。方法は、シアヌル酸ハロゲン化物を第1のステップにおいて式(4)の化合物及び/若しくは式(5)の化合物:
【0073】
【化8】
【0074】
(式中、R、R、X、Y、m及びnは、以前に定義される通りの意味を有する)と反応させ、且つ、第1のステップの反応生成物を第2のステップにおいて式(6)のジアミン化合物:
【0075】
【化9】
【0076】
(式中、Mは、以前に定義された通りの意味を有する)と反応させ、
又は、シアヌル酸ハロゲン化物を第1のステップにおいて式(6)の化合物と反応させ、且つ、第1のステップの反応生成物を第2のステップにおいて式(4)の化合物及び/若しくは式(5)の化合物と反応させ、
且つ、第2のステップの反応生成物を第3のステップにおいて式(7)の化合物及び/若しくは式(8)の化合物:
【0077】
【化10】
【0078】
(式中、R、R、R、Rは、以前に定義される通りの意味を有する)と反応させ、若しくは
第2のステップの反応生成物を第3のステップにおいて式(9)の化合物及び/若しくは式(10)の化合物:
【0079】
【化11】
【0080】
(式中、R及びR10は、以前に定義される通りの意味を有する)と反応させる
ことを特徴とする。
【0081】
シアヌル酸ハロゲン化物として、フッ化物、塩化物又は臭化物が用いられてもよい。シアヌル酸塩化物が好ましい。反応は水性媒体中で実行されてもよく、シアヌル酸ハロゲン化物が水若しくは水性/有機媒体中に懸濁され、又は、シアヌル酸ハロゲン化物がアセトンなどの溶媒中に溶解される。
【0082】
式(4)及び(5)の化合物は、調製方法の第1又は第2のステップの1つにおいて希釈なしで又は水性若しくは有機溶媒溶液の形態で又は水性懸濁液の形態で加えられてもよい。式(4)及び(5)の化合物は同じ化合物であってもよいが、異なる置換基R、R、X、Y並びに異なる置換度m及びnに起因して互いに異なっていてもよい。特定の実施形態では、式(4)及び(5)の化合物は異なる。例えば、式(4)の化合物はアニリン-4-スルホン酸であり得、且つ、式(5)の化合物は4-アミノトルエン-2-スルホン酸であり得る。式(4)及び(5)のアミンが異なる場合、それらはシアヌル酸ハロゲン化物と同時に反応し得る。それらはまた、シアヌル酸ハロゲン化物と逐次的に反応し得る。式(4)及び(5)のアミンが異なる場合、それらはシアヌル酸ハロゲン化物と同時に反応し得る。それらはまた、シアヌル酸ハロゲン化物と逐次的に反応し得る。
【0083】
好ましくは、式(4)及び(5)の化合物は同じであり、例えば、4-アミノトルエン-2-スルホン酸又は3-スルホン酸-4-エチルアニリンである。好ましくは、式(4)及び(5)の化合物は4-アミノトルエン-2-スルホン酸である。
【0084】
式(4)及び/若しくは(5)の化合物が第2のステップにおいて加えられる場合、式(6)の化合物が第1のステップにおいて加えられてもよく、又は、式(4)及び/若しくは(5)の化合物が調製方法の第1のステップにおいて加えられる場合、式(6)の化合物が第2のステップにおいて加えられてもよい。式(6)の化合物は、その遊離酸形態又はその塩形態又は混合塩形態で使用され得る。「遊離酸」形態は、式(6)のジアミンのMが水素を表すことを意味する。
【0085】
第2の反応ステップの反応生成物を第3の反応ステップにおいて式(7)及び(8)のアミン又は式(9)及び(10)のアルコールと反応させる。式(7)及び(8)のアミン又は式(9)及び(10)のアルコールは、希釈なしで又は水性若しくは有機溶液中で又は水性懸濁液の形態で加えられてもよい。式(7)及び(8)の化合物は同じ化合物であってもよいが、異なる置換基R、R、R、Rに起因して互いに異なっていてもよい。例えば、式(7)の化合物はイミノ二酢酸であり、且つ、式(8)の化合物はジエタノールアミンである。別の実施形態では、式(7)の化合物はジイソプロパノールアミンであり、且つ、式(8)の化合物はジエタノールアミンである。式(9)及び(10)の化合物は同じ化合物であってもよいが、異なる置換基R及びR10に起因して互いに異なっていてもよい。例えば、式(9)の化合物はプロパノールであり、且つ、式(10)の化合物はメタノールである。式(7)及び(8)又は(9)及び(10)の化合物が異なる場合、それらは、第2の反応ステップの反応生成物と同時に反応し得る。それらはまた、逐次的に反応し得る。
【0086】
好ましくは、式(7)及び(8)の化合物は同じであり、例えば、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン又はモルホリンである。
【0087】
別の好ましい実施形態では、式(9)及び(10)の化合物は同じであり、例えば、エタノール、好ましくはメタノールである。
【0088】
本発明による方法の一実施形態では、反応ステップは水性媒体中で実行され、且つ、第1のステップにおいてシアヌル酸ハロゲン化物の第1のハロゲンは式(4)及び/又は式(5)のアミンにより置換され、温度は0℃~20℃の範囲内に維持され、且つ、pH値はpH=4~6の範囲内に維持される。第2のステップにおいて、式(6)の化合物のアミンによるシアヌル酸ハロゲン化物の第2のハロゲンの置換は20~80℃の範囲内の温度において実行され、且つ、pH値はpH=6~7.5の範囲内に維持される。第3のステップにおいて、式(7)及び/又は式(8)のアミンによるシアヌル酸ハロゲン化物の第3のハロゲンの置換は60℃~102℃の範囲内の温度において実行され、且つ、pH値はpH=7.5~9の範囲内に維持される。
【0089】
各々の反応ステップにおける温度範囲は、反応混合物を冷却又は加熱することにより維持される。pHは、必要に応じて好適な酸又は塩基の添加により制御されてもよく、好ましい酸は、塩酸、硫酸、ギ酸、又は酢酸であり、好ましい塩基は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム)水酸化物、炭酸塩若しくは重炭酸塩又は脂肪族第三級アミン、例えば、トリエタノールアミン若しくはトリイソプロパノールアミンである。pH値は、反応プロセスを通じてモニターされ得、酸又は塩基の適切な量が反応配合物に加えられ得る。
【0090】
反応生成物は、直接的に、若しくは膜濾過プロセスを使用する脱塩後に使用され得、又は、本発明による式(2)の化合物は、例えば沈殿若しくは相分離により、単離され得る。
【0091】
式(2)の化合物中のZ及びZがNR及びNRである場合、式(7)及び(8)の化合物の脂肪族アミンは、概しては、反応物の所望の変換を促進するためにわずかに過剰に用いられる。式(2)の化合物中のZ及びZがOR及びOR10である場合、大過剰の式(9)及び(10)の化合物が必要とされる。
【0092】
概しては、本発明による式(2)の化合物は、4,4’-ジアミノ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸ベースのOBAを製造する一般的に公知の方法により製造され得る。
【0093】
第4の態様では、本発明は、紙を白質化する方法であって、パルプの懸濁液を提供するステップ、パルプの乾燥繊維に基づいて0.01~5重量%の本発明による水性組成物を加えて光沢化されたパルプを得るステップ、パルプから水を排出するステップ、並びにパルプをプレス成形し及び乾燥させて紙シートとするステップを含む、方法に関する。
【0094】
第5の態様では、本発明は、紙面光沢化用の組成物であって、少なくとも1つの面サイジング剤、光学的光沢剤としての少なくとも1つの本発明による式(2)の化合物、及び水を含む又はからなる、組成物に関する。
【0095】
面光沢化組成物は、面光沢化組成物の総容量に基づいて、0.2~30g/l、好ましくは1~15g/l、最も好ましくは2~12g/lであってもよい。
【0096】
面サイジング剤は1つ又は複数のデンプン材料を含む。面サイジング剤は、典型的には、酵素的、化学的又は熱的に改質されたデンプン、例えば、酸化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン又はアセチル化デンプンである。デンプンはまた、実施されている特定の実施形態に依存して、天然デンプン、アニオン性デンプン、カチオン性デンプン、又は両親媒性デンプンであってもよい。デンプン供給源は任意であってよいが、デンプン供給源の例としては、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ、コメ、タピオカ、及びサゴが挙げられる。
【0097】
面光沢化組成物中に存在する面サイジング剤の量は、1重量%~30重量%、好ましくは2~20重量%、より好ましくは5~15重量%であり、重量%は面光沢化組成物の総重量に基づく。
【0098】
面光沢化組成物のpH値は、典型的には4~13、好ましくは6~11の範囲内である。
【0099】
面サイジング剤、式(2)の化合物及び水に加えて、面光沢化組成物は、本発明による式(2)の化合物の調製の間に形成される副生成物の他に、他の従来の紙添加物を含有してもよい。そのような添加物の例は、担体、例えば、ポリビニルアルコール、消泡剤、ワックスエマルション、色素、顔料、一価金属塩、例えば、塩化ナトリウム、二価金属塩、例えば、塩化カルシウム、可溶化助剤、防腐剤、錯化剤、クロスリンカー、特殊樹脂などである。
【0100】
面光沢化組成物は、当該技術分野において公知の任意の面処理方法により紙基材の面に塗布されてもよい。塗布方法の例としては、サイズプレス塗布、カレンダーサイズ塗布(calendar-size applications)、タブサイジング、コーティング塗布及びスプレー塗布が挙げられる(例えば、Handbook for Pulp & Paper Technologists by G. A. Smook、2nd Edition Angus Wilde Publications、1992の第283~286頁及び米国特許出願公開第2007/0277950号明細書を参照)。塗布の好ましい方法は、パドルサイズプレス又はロッド計量サイズプレス(rod-metered size-press)などのサイズプレスである。紙の予め形成されたシートを、サイジング組成物で満たした2ロールニップに通過させる。紙は組成物の一部を吸収し、残余はニップ中に除去される。
【0101】
紙基材は、合成であってもよい又は木材及び非木材供給源を含む任意の繊維状植物を供給源とするものであってもよいセルロース繊維のウェブを含有する。好ましくは、セルロース繊維は、硬材及び/又は軟材を供給源とする。繊維は、天然繊維若しくは再利用された繊維のいずれか、又は天然繊維と再利用された繊維との任意の組合せであってもよい。
【0102】
紙基材中に含有されるセルロース繊維は、例えば、Handbook for Pulp & Paper Technologists、G. A. Smook、2nd Edition Angus Wilde Publications、1992の第13章及び第15章にそれぞれ記載されるような物理的及び/又は化学的方法により改変されてもよい。セルロース繊維の化学修飾の一例は、例えば、欧州特許出願公開第0884312(A1)号明細書、欧州特許出願公開第0899373(A1)号明細書、国際公開第02/055646(A1)号パンフレット、国際公開第2006/061399(A2)号パンフレット、国際公開第2007/017336(A1)号パンフレット、国際公開第2007/143182(A2)号パンフレット、米国特許出願公開第2006/0185808号明細書、及び米国特許出願公開第2007/0193707号明細書に記載されるような光学的光沢剤の添加である。
【0103】
第6の態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明による式(2)の化合物を光学的光沢剤として少なくとも1つの面サイジング剤の予め形成された水性溶液に20℃~90℃の温度において加えることによる面光沢化組成物の調製に関する。
【0104】
本発明による面光沢化組成物を含有する紙基材は、少なくとも80、少なくとも90、又は少なくとも95のISO明度を含む、任意のISO明度を有してもよい。
【0105】
本発明による面光沢化組成物を含有する紙基材は、少なくとも110、少なくとも115、少なくとも120、少なくとも125、少なくとも130、少なくとも135、少なくとも140、少なくとも145を含む、任意のCIE白色度を有してもよい。本発明による面光沢化組成物は、類似のレベルの光学的光沢剤を含有する従来の面光沢化組成物と比較して紙シートのCIE白色度を増進する傾向を有する。
【0106】
本発明による面光沢化組成物は、同等の量の光学的光沢剤を含有する従来の面光沢化組成物と比較して、それが塗布された紙シートを緑化する減少した傾向を有する。緑化は、光学的光沢剤の量が増加しても紙シートがCIE白色度を増加しないような紙シートの飽和に関する現象である。緑化する傾向は、a*-b*図により指し示され、a*及びb*は、CIE Lab系における色座標である。したがって、本発明による面光沢化組成物は、より高いCIE白色度及びISO明度に到達する能力を製紙業者に付与する。
【0107】
第7の態様では、本発明は、紙面光沢化用の顔料コーティング組成物であって、少なくとも1つの顔料、少なくとも1つのバインダー及び光学的光沢剤としての少なくとも1つの本発明による式(2)の化合物、及び水を含む又はからなる顔料コーティング組成物に関する。
【0108】
顔料コーティング組成物は、10~70重量%、好ましくは40~60重量%の白色顔料(複数可)を含み、重量%は顔料コーティング組成物の総重量に基づく。白色顔料を含まないコーティング組成物を製造することができるが、印刷用の最良の白色基材は、上記の量の白色顔料を含む不透明なコーティング組成物を使用して作成される。
【0109】
白色顔料は、無機顔料から選択され、好ましくは、例えば、ケイ酸アルミニウム(カオリン、それ以外にチャイナクレイとして公知)、炭酸カルシウム(チョーク)、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、又は硫酸カルシウム(石膏)又はその混合物からなる群から選択される。好ましくは、10~20重量%のクレイ及び30~40重量%のチョークの混合物が白色顔料として使用され、重量%は顔料コーティング組成物の総重量に基づく。本出願の文脈内で使用される「顔料」という用語は、水不溶性の化合物を指す。
【0110】
顔料コーティング組成物は、典型的には0.01~1重量%の範囲内、好ましくは0.05~0.5重量%の範囲内の白色顔料の量で本発明による式(2)の化合物を含み、重量%は顔料コーティング組成物中に存在する乾燥白色顔料の総重量に基づく。
【0111】
バインダーは、コーティング組成物の製造のために紙産業において一般的に使用される任意のものであってもよく、単一のバインダー又は一次バインダーと二次バインダーとの混合物からなるものであってもよい。バインダーは、合成ラテックス、スチレン-ブタジエン、酢酸ビニル、スチレンアクリル、ビニルアクリル、又はエチレン酢酸ビニルポリマーの1つ又は複数を含む一次バインダー及び任意選択的にデンプン、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcelulose)、カゼイン、大豆ポリマー、ポリビニルアルコールの1つ又は複数を含む二次バインダーから選択される。
【0112】
単独又は一次バインダーは、好ましくは、合成ラテックス、典型的には、スチレン-ブタジエン、酢酸ビニル、スチレンアクリル、ビニルアクリル又はエチレン酢酸ビニルポリマーである。好ましい一次バインダーはラテックスバインダーである。
【0113】
単独又は一次バインダーは、典型的には2~25重量%、好ましくは4~20重量%の範囲内の量で使用され、重量%は顔料コーティング組成物中に存在する白色顔料の総重量に基づく。
【0114】
任意選択的に使用されてもよい二次バインダーは、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、大豆ポリマー、ポリビニルアルコール又はその混合物であってもよい。任意選択的に使用されてもよい二次バインダーはポリビニルアルコールバインダーである。
【0115】
二次バインダーとして顔料コーティング組成物において任意選択的に使用されてもよいポリビニルアルコールは、好ましくは、60%より大きい又は60%に等しい加水分解度及び2~80mPa.s(20℃の4%の水性溶液)のブルックフィールド粘度を有する。より好ましくは、ポリビニルアルコールは、80%より大きい又は80%に等しい加水分解度及び2~40mPa.s(20℃の4%の水性溶液)のブルックフィールド粘度を有する。
【0116】
任意選択的に使用される場合、二次バインダーは、典型的には0.1~20重量%、好ましくは0.2~8重量%、より好ましくは0.3~6重量%の範囲内の量で使用され、重量%は顔料コーティング組成物中に存在する白色顔料の総重量に基づく。
【0117】
コーティング組成物のpH値は、典型的には5~13、好ましくは6~11、より好ましくは7~10の範囲内である。顔料コーティング組成物のpHを調整するために必要な場合、酸又は塩基が用いられてもよい。用いられてもよい酸の例としては、塩酸、硫酸、ギ酸及び酢酸が挙げられるがこれらに限定されない。用いられてもよい塩基の例としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物若しくは炭酸塩、アンモニア又はアミンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0118】
1つ又は複数の式(2)の化合物、1つ又は複数の白色顔料、1つ又は複数のバインダー、任意選択的に1つ又は複数の二次バインダー及び水に加えて、コーティング組成物は、式(2)の化合物(複数可)の調製の間に形成される副生成物の他に、他の従来の紙添加物を含有してもよい。そのような添加物の例は、例えば、不凍剤、分散剤、合成又は天然の増粘剤、担体、消泡剤、ワックスエマルション、色素、無機塩、可溶化助剤、防腐剤、錯化剤、殺傷剤、クロスリンカー、顔料、特殊樹脂などである。
【0119】
コーティング組成物は、1つ又は複数のバインダー、任意選択的に1つ又は複数の二次バインダー及び1つ又は複数の白色顔料の予め形成された水性分散液に本発明による式(2)の光学的光沢剤を加えることにより調製されてもよい。
【0120】
第8の態様では、本発明は、織物、カーペット又は天然繊維の光沢化用の洗浄剤組成物であって、少なくとも1つの界面活性剤及び少なくとも1つの本発明による式(2)の化合物を含む又はからなる、洗浄剤組成物に関する。洗浄剤組成物は、液体又は粉末形態であり得る。
【0121】
洗浄剤組成物中に存在する式(2)の化合物(複数可)の量は、0.005~1.0重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%、最も好ましくは0.02~0.25重量%であってもよく、重量%は洗浄剤組成物の総重量に基づく。
【0122】
洗浄剤組成物は以下をさらに含み得る。
・陰イオン性又は非イオン性であってもよい、1つ又は複数の界面活性剤、
・1つ又は複数のビルダー、例えば、それぞれ錯化、沈殿及びイオン交換を通じてカルシウム及びマグネシウムイオンを除去することにより界面活性剤の挙動を促進するアルカリ金属ポリリン酸塩、炭酸ナトリウム及びゼオライト、
・再付着防止剤、例えば、カルボキシメチルセルロース及びポリ(ビニルピロリドン)、並びに
・酵素、例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ及びリパーゼ。
【0123】
加えて、洗浄剤組成物はまた、pH調整剤(典型的には、アルカリ)、香料、シェーディング色素、抗菌剤、漂白剤、防腐剤、衣類用柔軟剤及び腐食阻害剤を含んでもよい。
【0124】
第9の態様では、本発明は、織物、紙、ボード及び不織布の光学的光沢化のための、本発明による式(2)の化合物の使用又は本発明による水性組成物の使用に関する。式(2)の化合物は、紙、ボード及び不織布の白質化及び光沢化のための光学的光沢剤として特に好適である。
【0125】
本発明による式(2)の化合物の好ましい使用は、製紙方法における添加物としてであり、式(2)の化合物がパルプに加えられる。
【0126】
本発明による式(2)の化合物の別の好ましい使用は、本発明による紙面光沢化用の組成物、又は本発明による顔料コーティング組成物、又は本発明による洗浄剤組成物におけるものである。
【実施例
【0127】
以下は、本発明をより詳細に実証するが、本発明はそれに限定されない。
【0128】
方法
光沢化紙の光学的特徴は、軟正したMINOLTA(登録商標)又はAUTOELREPHO(登録商標)分光光度計により測定する。
CIE白色度及びISO明度は、それぞれISO11475及びISO2470にしたがって測定する。
ショッパー-リーグラー濾水度は、ISO5267-1にしたがって決定した。
「部」は、それ以外に指し示さなければ「重量部」を意味する。
「繊維の乾燥重量」は、重量による固体繊維含有量を意味する。
【0129】
調製例1
343部の氷冷水中の37.8部のシアヌル酸塩化物の撹拌した懸濁液に39.3部の4-アミノトルエン-2-スルホン酸を加える。30%の水酸化ナトリウムを滴下で加えることによりpHを5に保つ。混合物を10℃未満で2時間撹拌する。36.5部の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸を反応生成物に加え、50部の水を次に加える。30重量%の水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを6.5及び7.0の範囲に調整する。混合物を75℃で3時間撹拌する。22.5部の水中の22.4部のジエタノールアミンの溶液を加え、混合物を還流下で3時間加熱し、30%の水酸化ナトリウムの添加によりpHを8.0~8.5に保つ。生成物を室温で沈殿させ、濾過により単離する。濾過残留物は、合成の間に生成されるNaClも含有するウェットプレスケーキである。
【0130】
0.3部のキサンタンガム、5.4部の塩化ナトリウム、0.03部のNipacide BIT 20及び196.4部の水を加ることにより濾過残留物を水性組成物に配合して、93.4部の式(3)の化合物を含有する503.9部の薄黄色スラリーを得る。
【0131】
【化12】
【0132】
調製例2~10
実施例2~10の化合物(表1を参照)の調製を以下の通りに行った:
39.3部の4-アミノトルエン-2-スルホン酸を343部の氷冷水中の37.8部のシアヌル酸塩化物の撹拌した懸濁液に加える。30%の水酸化ナトリウムを滴下で加えることによりpHを5に保つ。混合物を10℃未満で2時間撹拌する。36.5部の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸を反応生成物に加え、50部の水を次に加える。30重量%の水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを6.5及び7.0の範囲に調整する。混合物を75℃で3時間撹拌する。NHR及びNHR(0.22mol)を加え、混合物を還流下で3時間加熱し、30%の水酸化ナトリウムの添加によりpHを8.0~8.5に保つ。
【0133】
調製例11
39.3部の4-アミノトルエン-2-スルホン酸を343部の氷冷水中の37.8部のシアヌル酸塩化物の撹拌した懸濁液に加える。30%の水酸化ナトリウムを滴下で加えることによりpHを5に保つ。混合物を10℃未満で2時間撹拌する。36.5部の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸を反応生成物に加え、50部の水を次に加える。30重量%の水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを6.5及び7.0の範囲に調整する。混合物を75℃で3時間撹拌する。10部の水中の189.1部のメタノールの溶液を加え、混合物を還流下で10日間加熱し、30%の水酸化ナトリウムの添加によりpHを8.0~8.5に保つ。
調製例1~11を表1に列記する。例2~11の化合物の置換パターンは、以下に示す式(2a)のスケジュール及び表1のエントリーから得られる。
【0134】
【化13】
【0135】
【表1】
【0136】
適用例1
20~30°SRの濾水度(ショッパー-リーグラー)まで叩解した漂白した軟材及び硬材パルプの50:50混合物の撹拌した2.5%の水性懸濁液に調製例1の水性組成物を乾燥繊維に基づいて0.2重量%(乾燥繊維1トン当たり2kg)の濃度で加える。5分間の撹拌後、パルプ懸濁液を0.5%に希釈し、1リットルの分散した懸濁液をワイヤメッシュに通すことにより紙シートを作成する。プレス成形及び乾燥後、それぞれISO11475及び2470にしたがって軟正したMINOLTA(登録商標)分光光度計によりCIE白色度及びISO明度について光沢化紙を測定する。
【0137】
適用例2
実施例1の水性組成物を乾燥繊維に基づいて0.4重量%(乾燥繊維1トン当たり4kg)の濃度で加えるという差異と共に適用例1の手順を繰り返す。
【0138】
適用例3
実施例1の水性組成物を乾燥繊維に基づいて0.6重量%(乾燥繊維1トン当たり6kg)の濃度で加えるという差異と共に適用例1の手順を繰り返す。
【0139】
適用例4
調製例1による式(3)の化合物の代わりに調製例3による式(12)の化合物を同等の活性剤含有量で木材パルプに加える(すなわち、適用例1~3における式(3)の化合物と比較して同じモル濃度の式(12)の化合物)という唯一の差異と共に適用例1~3の手順を繰り返す。それぞれISO11475及び2470にしたがって軟正したAUTOELREPHO(登録商標)分光光度計によりCIE白色度及びISO明度について光沢化紙を測定する。
【0140】
適用例5
調製例1による式(3)の化合物の代わりに調製例2による式(11)の化合物を同等の活性剤含有量で木材パルプに加える(すなわち、適用例1~3における式(3)の化合物と比較して同じモル濃度の式(11)の化合物)という唯一の差異と共に適用例1、2、3の手順を繰り返す。それぞれISO11475及び2470にしたがって軟正したAUTOELREPHO(登録商標)分光光度計によりCIE白色度及びISO明度について光沢化紙を測定する。
【0141】
適用例6
式(3)の化合物の代わりに調製例11による式(20)の化合物を同等の活性剤含有量で木材パルプに加える(すなわち、適用例1~3における式(3)の化合物と比較して同じモル濃度の式(20)の化合物)という唯一の差異と共に適用例1~3の手順を繰り返す。それぞれISO11475及び2470にしたがって軟正したAUTOELREPHO(登録商標)分光光度計によりCIE白色度及びISO明度について光沢化紙を測定する。
【0142】
比較例1、2、3
調製例1による式(3)の化合物の代わりに式(1)の化合物を同等の活性剤含有量で木材パルプに加える(すなわち、適用例1~3における式(3)の化合物と比較して同じモル濃度の式(1)の化合物)という唯一の差異と共に適用例1~3の手順を繰り返す。
結果を表2に示す。
【0143】
【表2】
【0144】
適用例7
60℃でアニオン性デンプン(7.5%w/w)(Perfectamyl A4692)の撹拌した水性溶液に5、15及び30g/lの濃度の調製例1にしたがって調製した水性溶液を加えることによりサイジング組成物を調製する。サイジング溶液を冷却させた後、試験室サイズプレスの移動するローラーの間に注ぎ、商用の75g/m2のAKD(アルキルケテンダイマー)のサイズの漂白した紙基材シートに塗布する。処理した紙を平台乾燥機において70℃で5分間乾燥させる。乾燥した紙のコンディショニングを行った後、それぞれISO11475及び2470にしたがって軟正したAUTOELREPHO(登録商標)分光光度計によりCIE白色度及びISO明度について測定する。
【0145】
比較例4
調製例1による式(3)の化合物の代わりに式(1)の化合物を同等の活性剤含有量でデンプンの水性溶液に加える(すなわち、適用例6における式(3)の化合物と比較して同じモル濃度の式(1)の化合物)という唯一の差異と共に適用例6の手順を繰り返す。
【0146】
適用例8
調製例1による式(3)の化合物の代わりに調製例3による式(12)の化合物を同等の活性剤含有量でデンプンの水性溶液に加える(すなわち、適用例7における式(3)の化合物と比較して同じモル濃度の式(12)の化合物)という唯一の差異と共に適用例7の手順を繰り返す。
【0147】
適用例9
調製例1による式(3)の化合物の代わりに調製例4による式(13)の化合物を同等の活性剤含有量でデンプンの水性溶液に加える(すなわち、適用例7における式(3)の化合物と比較して同じモル濃度の式(13)の化合物)という唯一の差異と共に適用例7の手順を繰り返す。
結果を表3に示す。
【0148】
【表3】
【0149】
適用例10
70部のチョーク(商標名Hydrocarb 55の下でOMYAより市販されている)、30部のクレイ(商標名Polygloss 90の下でKaMinより市販されている)、49.5部の水、0.6部の分散剤(商標名Topsperse GX-Nの下でCoatexより市販されている)、20部の50%ラテックス(商標名Cartacoat B631の下でArchromaより市販されているスチレンアクリレートコポリマー)、80部の10%ポリビニルアルコール(商標名Mowiol 4-98の下で市販されている)並びに0.6、1.2及び1.8%の濃度で調製例2にしたがって調製した水性溶液を含有するコーティング組成物を調製した。水の添加によりコーティング組成物の固体含有量を約67%に調整し、水酸化ナトリウムを用いてpHを8~9に調整した。コーティング組成物を次に、標準的な速度設定及びバーへの標準的な投入を用いて自動巻線型バーアプリケーター(automatic wire-wound bar applicator)を使用して商用の75gsm中型白色紙基材シートに塗布した。コーティングされた紙を次に、ホットエアフロ―中で5分間乾燥させた。その後、紙をコンディショニングさせ、それぞれISO11475及び2470にしたがって軟正したAUTOELREPHO(登録商標)分光光度計によりCIE白色度及びISO明度について測定した。
【0150】
適用例11
調製例2による式(11)の化合物の代わりに調製例1による式(3)の化合物を同等の活性剤含有量でカラーコーティングに加える(すなわち、適用例10における式(11)の化合物と比較して同じモル濃度の式(3)の化合物)という唯一の差異と共に適用例10の手順を繰り返す。
【0151】
適用例12
調製例2による式(11)の化合物の代わりに調製例3による式(12)の化合物を同等の活性剤含有量でカラーコーティングに加える(すなわち、適用例10における式(11)の化合物と比較して同じモル濃度の式(12)の化合物)という唯一の差異と共に適用例10の手順を繰り返す。
【0152】
比較例5
調製例2による式(11)の化合物の代わりに式(1)の化合物を同等の活性剤含有量でカラーコーティングに加える(すなわち、適用例9における式(11)の化合物と比較して同じモル濃度の式(1)の化合物)という唯一の差異と共に適用例9の手順を繰り返す。
結果を表4に示す。
【0153】
【表4】
【0154】
本発明の光学的光沢剤は、同等の塗布レベルにおいて有意により高いCIE白色度及びISO明度の値を提供する。