(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】成長を改善するための光合成生物の遺伝子調節方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20230614BHJP
C12N 1/13 20060101ALI20230614BHJP
C12N 1/12 20060101ALI20230614BHJP
C12N 15/01 20060101ALI20230614BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230614BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230614BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20230614BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20230614BHJP
C12P 7/64 20220101ALI20230614BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20230614BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230614BHJP
C12N 5/04 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
C12N1/13
C12N1/12 C
C12N15/01 Z
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
C12N15/55
C12P1/00 Z
C12P7/64
A01H5/00 A
C12N5/10
C12N5/04
(21)【出願番号】P 2020536187
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 US2018067712
(87)【国際公開番号】W WO2019133726
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509262736
【氏名又は名称】シンセティック ジェノミクス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アジャウィ イマド
(72)【発明者】
【氏名】クズミノフ フェダー アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラダコビッツ ランダー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルト ジョン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ポッツ サラ
(72)【発明者】
【氏名】スプレアフィコ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ランバート ウィリアム エフ.
(72)【発明者】
【氏名】グレイナー ジェシカ ニコル
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0304896(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0185030(US,A1)
【文献】国際公開第2014/089533(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/049243(WO,A1)
【文献】特開2017-099327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00- 41/00
A01H 1/00- 17/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有する有意な成長改善遺伝子2(SGI2)
をコードする遺伝子のノックアウト
を含む、変異体
トレボウクシア藻綱(Trebouxiophyte)の生物。
【請求項2】
配列番号68と少なくとも90%の配列同一性を有する葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)をコードする遺伝子
のノックアウト
をさらに含む、請求項1に記載の変異体
トレボウクシア藻綱の生物。
【請求項3】
配列番号68と少なくとも90%の配列同一性を有する葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)をコードす
る遺伝子
のノックアウトと;
配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する有意な成長改善遺伝子1(SGI1)
のノックアウトと
を含む、変異体
トレボウクシア藻綱の生物。
【請求項4】
配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する有意な成長改善遺伝子1(SGI1)
のノックアウト
をさらに含む、請求項2に記載の変異体
トレボウクシア藻綱の生物。
【請求項5】
(i)前記変異体が、同じ種の対
照生物
と比較して、弱光条件下での
全有機炭素(TOC)あたりの総クロロフィルの減少と、100μEm
-2s
-1を超えるすべての生理学的に適切な放射照度で、光化学系IIにおける光化学のより高い最大量子収率(F
v/F
M)とを呈する
か、または
前記変異体
トレボウクシア藻綱の生物が、同じ種の対
照生物に対して少なくとも20
%のTOCあたりの総クロロフィルの減少を呈する
か、または
前記
TOCあたりの総クロロフィルの減少が、同じ種の対
照生物に対して少なくとも30%の減少である
、
請求項1~4のいずれか一項に記載の変異体
トレボウクシア藻綱の生物。
【請求項6】
前記変異体が、同じ種の対照生物よりも高い、クロロフィル当たりの炭素固定率を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の変異体トレボウクシア藻綱の生物。
【請求項7】
前記変異体の培養物が、同じ種の対照生物の培養物と比較して大きいバイオマス生産性を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の変異体トレボウクシア藻綱の生物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の変異体
トレボウクシア藻綱の生物を含
む、バイオマス。
【請求項9】
生物学的産物を産生する方法であって、請求項1~
7のいずれか一項に記載の変異体
トレボウクシア藻綱の生物を培養する工程と、前記培養物から少なくとも1つの産物を単離する工程とを含
む、前記方法。
【請求項10】
前記変異
体生物の培養物が、同じ種の対
照生物の培養物よりも大きい脂質生産性を示す、請求項1~
4のいずれか一項に記載の変異体
トレボウクシア藻綱の生物。
【請求項11】
脂質を産生する方法であって、請求項1~
4および10のいずれか一項に記載の
トレボウクシア藻綱の変異体を培養する工程と、前記培養物から少なくとも1種類の脂質を単離する工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)定めにより、2017年12月29日に出願された米国特許出願シリアル番号62/612,251号および2018年6月26日に出願された米国特許出願シリアル番号62/690,205号の優先権の利益を主張するものであり、これらの全内容が、参照により本明細書にその全体に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
添付の配列表の内容は、参照により本出願に組み込まれる。添付の配列表テキストファイル、名称SGI2140_2WO_Sequence_Listing.txtは、2018年12月18日に作成されており、419kbである。このファイルには、Windows OSを使用するコンピューターでMicrosoft Wordを使用してアクセスすることができる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
光合成生物のバイオマス生産性の向上は、バイオ燃料から高価値製品に至る、様々な商業的応用に関連している。バイオマスの総タンパク質含有量を増加させるための遺伝子操作は非常に望ましいが、そうするための戦略は当技術分野においては明らかではない。
【0004】
より高い生産性のために光合成効率を高めるために光合成生物を操作することは、植物および藻類生物学者の長年の目標である。US2014/0220638(特許文献1)およびUS2016/030489(特許文献2)(どちらも参照により本明細書に組み込まれる)は、弱光順化へのそれらの能力が損なわれている低減したクロロフィルを有する、すなわち、弱光下でも強光順応細胞の低クロロフィル状態を保持する、藻類変異体を得るための変異体スクリーニングについて説明している。US2014/0220638(特許文献1)は、光順化調節因子のLAR1、LAR2、およびLAR3遺伝子中に変異を有する藻類変異体を記載しており、US2016/0304896(特許文献2)は、葉緑体SRP54遺伝子中に変異を有する藻類変異体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US2014/0220638
【文献】US2016/0304896
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、増加した光合成効率および生産性を有する、改変された遺伝子を含む光合成生物、光独立栄養的な条件下での生成物産生におけるそれらの使用、およびそのような光合成生物の産生方法、ならびにそのような遺伝子を改変するための核酸分子および構築物が開示される。
【0007】
一態様では、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)をコードする、変異または減弱化された遺伝子、を含む、変異体光合成生物が提供される。
【0008】
一態様では、葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)と、を含む、変異体光合成生物が提供される。
【0009】
一態様では、葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)をコードする、変異または弱化された遺伝子と;変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)と、を含む変異体光合成生物が提供される。
【0010】
一態様では、葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)と;変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)と、を含む、変異体光合成生物が提供される。
【0011】
一態様では、細胞質ゾルシグナル認識タンパク質54(cytoSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)と、を含む、変異体光合成生物が提供される。
【0012】
一態様では、細胞質シグナル認識タンパク質54(cytoSRP54)をコードする、変異または弱化された遺伝子と;変異または弱化された、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)と、を含む、変異体光合成生物が提供される。
【0013】
一態様では、細胞質ゾルシグナル認識タンパク質54(cytoSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)と;変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)と、を含む、変異体光合成生物が提供される。
【0014】
一態様では、葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)、および/または、変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)と、を含む、変異体光合成生物を含む、バイオマスが提供される。
【0015】
一態様では、生物学的産物を産生する方法が提供される。この方法は、変異体光合成生物が、葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)、および/または、変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)と、を含む、変異体光合成生物を培養する工程と、少なくとも1つの産物を培養物から単離する工程と、を含む。
【0016】
一態様では、CRISPR遺伝子の単一のコピーを微生物の選択された遺伝子座に挿入する方法が提供される。いくつかの実施形態では、CRISPR遺伝子は、微生物での発現のためにコドン最適化されている。いくつかの実施形態では、挿入されたCRISPR遺伝子は、複数の異種イントロンを含む。いくつかの実施形態では、異種イントロンの数は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40個、またはそれ以上であり得る。CRISPR遺伝子の非限定的な例には、Cas9およびCpf1が挙げられる。いくつかの実施形態では、CRISPR遺伝子は、微生物に固有のプロモーターに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態では、プロモーターは誘導性である。いくつかの実施形態では、CRISPR遺伝子は、微生物に異種のプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、生物学的産物は、脂質、タンパク質、ペプチド、1種類以上のアミノ酸、1種類のアミノ酸、1種類以上のヌクレオチド、ビタミン、補助因子、ホルモン、抗酸化物質、または色素または着色剤である。いくつかの実施形態では、生物学的産物は、バイオマスである。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は藻類であり、バイオマスは藻類バイオマスである。
【0018】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、脂質の産生に関与するポリペプチドをコードする少なくとも1つの外因性遺伝子を含むように操作される。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、光栄養的に培養される。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は藻類であり、藻類は、池または導水路で培養される。
【0019】
一態様では、天然に存在するSGI2タンパク質をコードする光合成生物遺伝子に由来するかまたはそれに隣接するヌクレオチド配列を含む、相同組換えのための核酸分子構築物が提供され、SGI2タンパク質は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、および配列番号56からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0020】
一態様では、cpSRP54タンパク質をコードするタンパク質をコードする天然に存在する光合成生物遺伝子およびSGI1タンパク質をコードする光合成生物遺伝子に由来するかまたはそれらに隣接するヌクレオチド配列を含む、相同組換えのための複数の核酸分子構築物が提供され、cpSRP54タンパク質は遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、および配列番号85と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、SGI1遺伝子は、SGI1遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、および配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0021】
一態様では、天然に存在するcpSRP54タンパク質をコードする光合成生物遺伝子およびSGI2タンパク質をコードする光合成生物遺伝子に由来するかまたはそれらに隣接するヌクレオチド配列を含む、相同組換えのための複数の核酸分子構築物が提供され、cpSRP54タンパク質は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、SGI2タンパク質は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、または配列番号56と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
一態様では、天然に存在するSGI2タンパク質をコードする光合成生物遺伝子の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む、アンチセンスRNA、shRNA、マイクロRNA、またはリボザイムの発現のための核酸分子構築物が提供され、SGI2タンパク質は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、または配列番号56と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0023】
一態様では、cpSRP54タンパク質をコードする天然に存在する光合成生物遺伝子およびSGI1タンパク質をコードする光合成生物遺伝子の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む、アンチセンスRNA、shRNA、マイクロRNA、またはリボザイムの発現のための複数の核酸分子構築物が提供され、cpSRP54タンパク質は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、SGI1遺伝子は、SGI1遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、または配列番号39と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、構築物は、cpSRP54、SGI1、SGI2、またはこれらの遺伝子のうちの2つ以上の組み合わせの5’UTRの少なくとも一部、cpSRP54、SGI1、SGI2、またはこれらの遺伝子のうちの2つ以上の組み合わせのプロモーター領域の少なくとも一部、および/またはcpSRP54、SGI1、SGI2、またはこれらの遺伝子のうちの2つ以上の組み合わせの3’UTRの少なくとも一部を含む。いくつかの例では、構築物は、RNAi、リボザイム、またはアンチセンス構築物であることができ、cpSRP54、SGI1、SGI2、またはこれらの遺伝子のうちの2つ以上の、センスまたはアンチセンス方向のいずれかの組み合わせの転写領域に由来する配列を含むことができる。さらなる例では、構築物は、cpSRP54、SGI1、SGI2、またはこれらの遺伝子のうちの2つ以上の組み合わせを標的とするように設計したガイドRNAのインビトロまたはインビボ発現のために設計することができ、例えば、遺伝子のイントロン、5’UTR、プロモーター領域、および/または3’UTRが含まれる、遺伝子のいずれかの一部に相同な配列を含むことができる。なおさらなる例では、cpSRP54、SGI1、またはSGI2ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を減弱させるための構築物は、ガイドRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドであることができ、ここでは、配列は、cpSRP54、SGI1、SGI2、またはアンチセンス方向の2つ以上の遺伝子の組み合わせの転写領域に相同性を有する。
【0025】
一態様では、天然に存在するcpSRP54タンパク質をコードする光合成生物遺伝子およびSGI2タンパク質をコードする光合成生物遺伝子の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む、アンチセンスRNA、shRNA、マイクロRNA、またはリボザイムの発現のための複数の核酸分子構築物が提供され、cpSRP54タンパク質は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードし、SGI2遺伝子は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、または配列番号56と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする。
【0026】
一態様では、ガイドRNAをコードする複数の核酸分子が提供され、このガイドRNAは、天然に存在する光合成生物遺伝子SGI2の少なくとも一部を含み、SGI2遺伝子は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、または配列番号56と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする。
【0027】
一態様では、少なくとも2つのガイドRNAをコードする複数の核酸分子が提供され、このガイドRNAは、天然に存在するcpSRP54をコードする光合成生物遺伝子およびSGI1をコードする光合成生物遺伝子の少なくとも一部を含み、cpSRP54は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードし、SGI1遺伝子は、SGI1遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、または配列番号39と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0028】
一態様では、少なくとも2つのガイドRNAをコードする複数の核酸分子が提供され、このガイドRNAは、天然に存在する光合成生物cpSRP54遺伝子および光合成生物遺伝子SGI2遺伝子の少なくとも一部を含み、cpSRP54遺伝子は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードし、SGI2遺伝子は、遺伝子の変異または減弱化の前に、少なくとも配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、または配列番号56を有するアミノ酸配列を含む。
【0029】
一態様では、SGI2遺伝子を調節することを含む、光合成生物のバイオマスを増加させる方法が提供される。
【0030】
一態様では、葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)および有意な成長改善遺伝子1(SGI1)を調節することを含む、光合成生物のバイオマスを増加させる方法が提供され、cpSRP54遺伝子は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードし、SGI1遺伝子は、SGI1遺伝子の変異または減弱化の前に、少なくとも配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、または配列番号39を有するアミノ酸配列を含む。
【0031】
一態様では、葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)および有意な成長改善遺伝子2(SGI2)を調節することを含む、光合成生物のバイオマスを増加させる方法が提供され、cpSRP54遺伝子は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85と少なくとも55%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードし、SGI2遺伝子は、遺伝子の変異または減弱化の前に、少なくとも配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、または配列番号56を有するアミノ酸配列を含む。
【0032】
一態様では、細胞質ゾルシグナル認識タンパク質54(cytoSRP54)および有意な成長改善遺伝子2(SGI2)を調節することを含む、光合成生物のバイオマスを増加させる方法が提供され、SGI2遺伝子は、遺伝子の変異または減弱化の前に、少なくとも配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、または配列番号56を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする。
【0033】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物の培養物は、同じ種の対照光合成生物の培養物よりも大きなバイオマス生産性を呈する。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、光独立栄養培養においてより大きなバイオマス生産性を示す。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、連続光条件下で、同じ種の対照光合成生物の培養物よりも高いバイオマス生産性を呈する。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、日周サイクル条件下で、同じ種の対照光合成生物の培養物よりも高いバイオマス生産性を呈する。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、光プロファイルが自然な昼光プロファイルを模倣する日周サイクル条件下で、同じ種の対照光合成生物の培養物よりも高いバイオマス生産性を呈する。
【0034】
いくつかの実施形態では、光合成生物のバイオマスの増加は、総有機炭素の増加を含む。いくつかの実施形態では、光合成生物のバイオマスの増加は、総脂質含有量の増加を含む。いくつかの実施形態では、光合成生物のバイオマスの増加は、総窒素含有量の増加を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物に対して、弱光条件下でのクロロフィルの減少と、100、125、150、200、または250μEm-2s-1を超えるすべての生理学的に適切な放射照度において、光系IIにおける光化学のより高い最大量子収率(Fv/FM)とを呈する。いくつかの実施形態では、クロロフィルの減少は、同じ種の対照光合成生物に対して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、または70%の減少である。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物に対して、125、150、200、または250μEm-2s-1を超える生理学的に適切なすべての放射照度において、より低い非光化学的消光(NPQ)を呈する。
【0036】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物よりも高い、クロロフィル当たりの炭素固定率を呈する。いくつかの実施形態では、炭素固定率は、同じ種の対照光合成生物よりも、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%高い。
【0037】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物よりも、少なくとも100%、150%、200%、300%、400%またはそれ以上高い、クロロフィル1mg当たりの酸素発生率を呈する。いくつかの実施形態において、変異体光合成生物は、少なくとも100%、150%、200%、300%、400%またはそれ以上高い、全有機炭素(TOC)1g当たりの酸素発生率を呈する。
【0038】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物の培養物よりも大きな脂質生産性を呈する。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、光独立栄養培養においてより大きな脂質生産性を呈する。いくつかの実施形態では、変異光合成生物は、藻類である。
【0039】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、生物のSGI2遺伝子を改変することによって生成される。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、生物のcpSRP54遺伝子を、SGI1遺伝子またはSGI2遺伝子遺伝子と共に改変することによって生成される。いくつかの実施形態では、遺伝子を改変することは、紫外線、ガンマ線、または化学的変異誘発を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子を改変することは、cpSRP54遺伝子、SGI1遺伝子、SGI2遺伝子、もしくはこれらの遺伝子の組み合わせにおける、塩基置換変異、挿入変異誘発、遺伝子置換、RNAi、アンチセンスRNA、メガヌクレアーゼゲノム編集、1つ以上のリボザイム、および/またはCRISPR/Cas系を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするcpSRP54遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85からなる群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも30、35、40、45、50、60、70、80、100、150、200、250、300個のアミノ酸と、またはアミノ酸配列の全長と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするcpSRP54遺伝子を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、cpSRP54 GTPaseドメインの最初の169個のアミノ酸をコードする配列の外側で発生する、cpSRP54遺伝子における変異を含む。いくつかの実施形態では、SRP54タンパク質をコードするcpSRP54遺伝子における変異は、cpSRP54 GTPaseドメインをコードする配列の外側で生じる。いくつかの実施形態では、cpSRP54遺伝子における変異は、cpSRP54 GTPaseドメインにおける遺伝子破壊変異を含まない。
【0042】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物のSGI2遺伝子は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、または配列番号56のアミノ酸配列と少なくとも50%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物のSGI2遺伝子は、遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、または配列番号56のアミノ酸配列の少なくとも30、35、40、45、50、60、70、80、100、150、200、250、300個のアミノ酸と、またはアミノ酸配列の全長と少なくとも50%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。
【0043】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物のSGI1遺伝子は、SGI1遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、または配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも50%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、変異体光合成生物のSGI1遺伝子は、SGI1遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、または配列番号39のアミノ酸配列の少なくとも30、35、40、45、50、60、70、80、100、150、200、250、300個のアミノ酸と、またはアミノ酸配列の全長と少なくとも50%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。
【0044】
上記の態様のいくつかの実施形態では、光合成生物は、倍数体、例えば、二倍体、三倍体、四倍体である。いくつかの実施形態では、遺伝子:cpSRP54、SGI1、またはSGI2のうちの1つ以上のコピーを変異または減弱化して、遺伝子の他のコピーを変化させずに、または減弱化させずに、変異体光合成生物を生成する。いくつかの実施形態では、このように生成された変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物に対して、弱光条件下でのクロロフィルの減少と、100、125、150、200、または250μEm-2s-1を超えるすべての生理学的に適切な放射照度において、光系IIにおける光化学のより高い最大量子収率(Fv/FM)とを呈する。いくつかの実施形態では、このようにして生成された変異光合成生物は、同じ種の対照光合成生物よりも大きなバイオマス生産性を呈する。いくつかの実施形態では、このようにして生成された変異光合成生物は、同じ種の対照光合成生物よりも大きな脂質生産性を呈する。
【0045】
上記の態様のいくつかの実施形態では、変異体光合成生物は藻類である。いくつかの実施形態では、藻類は、アクナンテス(Achnanthes)、アンフィプロラ(Amphiprora)、アンフォラ(Amphora)、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)、アステロモナス(Asteromonas)、ベケロビア(Boekelovia)、ボリドモナス(Bolidomonas)、ボロディネラ(Borodinella)、ボトリディウム(Botrydium)、ボトリオコッカス(Botryococcus)、ブラクテオコッカス(Bracteococcus)、キートケロス(Chaetoceros)、カルテリア(Carteria)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クロロコックム(Chlorococcum)、クロロゴニウム(Chlorogonium)、クロレラ(Chlorella)、クロオモナス(Chroomonas)、クリソスファエラ(Chrysosphaera)、クリコスファエラ(Cricosphaera)、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)、クリプトモナス(Cryptomonas)、シクロテラ(Cyclotella)、ドナリエラ(Dunaliella)、エリプソイドン(Ellipsoidon)、エミリアニア(Emiliania)、エレモスファエラ(Eremosphaera)、エルノデスミウス(Ernodesmius)、ユーグレナ(Euglena)、ユースティグマトス(Eustigmatos)、フランケイア(Franceia)、フラギラリア(Fragilaria)、グロエオサムニオン(Gloeothamnion)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、ハロカフェテリア(Halocafeteria)、ヘテロシグマ(Heterosigma)、ハイメノモナス(Hymenomonas)、イソクリシス(Isochrysis)、レポシンクリス(Lepocinclis)、ミクラクチニウム(Micractinium)、モノダス(Monodus)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナノクロリス(Nannochloris)、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)、ナビキュラ(Navicula)、ネオクロリス(Neochloris)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、ニッチア(Nitzschia)、オクロモナス(Ochromonas)、オエドゴニウム(Oedogonium)、オオキスティス(Oocystis)、オストレオコッカス(Ostreococcus)、パブロバ(Pavlova)、パラクロレラ(Parachlorella)、パスケリア(Pascheria)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、フェオダクチラム(Phaeodactylum)、ファグス(Phagus)、ピコクロラム(Picochlorum)、プラチモナス(Platymonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、プレウロコッカス(Pleurococcus)、プロトテカ(Prototheca)、シュードクロレラ(Pseudochlorella)、シュードネオクロリス(Pseudoneochloris)、シュードスタウラストラム(Pseudostaurastrum)、ピラミモナス(Pyramimonas)、ピロボトリス(Pyrobotrys)、セネデスムス(Scenedesmus)、スケレトネマ(Skeletonema)、アオミドロ(Spyrogyra)、スチココッカス(Stichococcus)、テトラセルミス(Tetraselmis)、タラシオシーラ(Thalassiosira)、トリボネマ(Tribonema)、フシナシミドロ(Vaucheria)、ビリジエラ(Viridiella)、ビスケリア(Vischeria)、およびボルボックス(Volvox)の属に属する。いくつかの実施形態では、変異光合成生物は、緑藻類(Chlorophytes)または車軸藻類(charophytes)のメンバーであり、例えば、Chlorophyteの綱である、緑藻綱(Chlorophyceae)、トレボウクシア藻綱(Trebouxiophyceae)、クロロデンドロン藻綱(Chlorodendrophyceae)、アオサ藻綱(Ulvophyceae)、ペディノ藻綱(Pedinophyceae)、またはプラシノ藻綱(Prasinophyceae)であってもよい。例えば、藻類変異体は、Chlorophyceae、Trebouxiophyceae、またはChlorodendrophyceaeに属する種であってもよい。いくつかの実施形態では、変異体藻類細胞は、Chlorophyte藻類細胞であり、Trebouxiophyceae綱のChlorophyte藻類細胞、例えば、クラスの緑藻類藻類細胞、例えば、Botryococcus、Chlorella、オウキセノクロレラ(Auxenochlorella)、ヘベオクロレラ(Heveochlorella)、マリニクロレラ(Marinichlorella)、Parachlorella、Pseudochlorella、テトラクロレラ(Tetrachlorella)、Eremosphaera、Franceia、Micractinium、Nannochloris、Oocystis、Picochlorum、またはProtothecaなどの属の種の藻類細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、変異体藻類は、Auxenochlorella、Chlorella、Heveochlorella、Marinichlorella、Parachlorella、Pseudochlorella、またはTetrachlorellaの種に属する種であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、変異体光合成微生物は、シアノバクテリア(cyanobacterium)である。いくつかの実施形態では、cyanobacteriumは、アカリオクロリス(Acaryochloris)、アグメネラム(Agmenellum)、アナベナ(Anabaena)、アナベノプシス(Anabaenopsis)、アナシスティス(Anacystis)、アファニゾメノン(Aphanizomenon)、アルスロスピラ(Arthrospira)、アステロカプサ(Asterocapsa)、ボルジア(Borzia)、カロスリクス(Calothrix)、カマエシフォン(Chamaesiphon)、クロログロエオプシス(Chlorogloeopsis)、クロロコクシディオプシス(Chroococcidiopsis)、クロオコッカス(Chroococcus)、クリナリウム(Crinalium)、Cyanobacterium、シアノビウム(Cyanobium)、シアノシスティス(Cyanocystis)、シアノスピラ(Cyanospira)、シアノセイス(Cyanothece)、シリンドロスペルモプシス(Cylindrospermopsis)、シリンドロスペルマム(Cylindrospermum)、ダクチロコッコプシス(Dactylococcopsis)、デルモカルペラ(Dermocarpella)、フィスケレラ(Fischerella)、フレミエラ(Fremyella)、ゲイトレリア(Geitleria)、ゲイトレリネマ(Geitlerinema)、グロエオバクター(Gloeobacter)、グロエオカプサ(Gloeocapsa)、グロエオセイス(Gloeothece)、ハロスピルリナ(Halospirulina)、イエンガリエラ(Iyengariella)、レプトリングビヤ(Leptolyngbya)、リムノスリクス(Limnothrix)、リングビヤ(Lyngbya)、ミクロコレウス(Microcoleus)、ミクロシスティス(Microcystis)、ミクソサルシナ(Myxosarcina)、ノデュラリア(Nodularia)、ノストック(Nostoc)、ノストコプシス(Nostochopsis)、オシラトリア(Oscillatoria)、フォルミディウム(Phormidium)、プランクトスリックス(Planktothrix)、プレウロカプサ(Pleurocapsa)、プロクロロコッカス(Prochlorococcus)、プロクロロン(Prochloron)、プロクロロスリクス(Prochlorothrix)、シュードアナベナ(Pseudanabaena)、リブラリア(Rivularia)、シゾスリクス(Schizothrix)、サイトネマ(Scytonema)、スピルリナ(Spirulina)、スタニエリア(Stanieria)、スタリア(Starria)、スティゴネマ(Stigonema)、シンプロカ(Symploca)、シネココッカス(Synechococcus)、シネコシスティス(Synechocystis)、サーモシネコシスティス(thermosynechocystis)、トリポスリクス(Tolypothrix)、トリコデスミウム(Trichodesmium)、チコネマ(Tychonema)、またはキセノコッカス(Xenococcus)種である。
【0047】
いくつかの実施形態では、変異体光合成微生物は、植物である。植物の非限定的な例としては、単子葉植物および双子葉植物、例えば、穀物作物(例えば、小麦、トウモロコシ、米、キビ、大麦)、果実作物(例えば、トマト、リンゴ、ナシ、イチゴ、オレンジ)、飼料作物 (例えば、アルファルファ)、根菜類作物(例えば、ニンジン、ジャガイモ、佐藤ビート、ヤムイモ)、葉物野菜作物(例、レタス、ホウレンソウ)、顕花植物(例えば、ペチュニア、バラ、キク)、針葉樹ならびに松(例えば、マツモミ、エゾマツ)、ファイトレメディエーションで使用される植物(例えば、重金属蓄積植物)、油料作物(例えば、ヒマワリ、ナタネ)、および実験目的で使用される植物(例えば、シロイヌナズナ)が挙げられる。
【0048】
変異した双子葉植物の非限定的な例としては、以下の目:モクレン目(Magniolales)、ミシアレス目(Miciales)、クスノキ目(Laurales)、コショウ目(Piperales)、ウマノスズクサ目(Aristochiales)、スイレン目(Nymphaeales)、キンポウゲ目(Ranunculales)、ケシ目(Papeverales)、サラセニア科(Sarraceniaceae)、ヤマグルマ目(Trochodendrales)、マンサク目(Hamamelidales)、トチュウ目(Eucomiales)、レイトネリア目(Leitneriales)、ヤマモモ目(Myricales)、ブナ目(Fagales)、モクマオウ目(Casuarinales)、ナデシコ目(Caryophyllales)、バティス目(Batales)、タデ目(Polygonales)、イソマツ目(Plumbaginales)、ビワモドキ目(Dilleniales)、ツバキ目(Theales)、アオイ目(Malvales)、イラクサ目(Urticales)、サガリバナ目(Lecythidales)、スミレ目(Violales)、ヤナギ目(Salicales)、フウチョウソウ目(Capparales)、ツツジ目(Ericales)、イワウメ目(Diapensales)、カキノキ目(Ebenales)、サクラソウ目(Primulales)、バラ目(Rosales)、マメ目(Fabales)、カワゴケソウ目(Podostemales)、アリノトウグサ目(Haloragales)、フトモモ目(Myrtales)、ミズキ目(Cornales)、ヤマモガシ目(Proteales)、ビャクダン目(San tales)、ラフレシア目(Rafflesiales)、ニシキギ目(Celastrales)、トウダイグサ目(Euphorbiales)、クロウメモドキ目(Rhamnales)、ムクロジ目(Sapindales)、クルミ目(Juglandales)、フウロソウ目(Geraniales)、ヒメハギ目(Polygalales)、セリ目(Umbellales)、リンドウ目(Gentianales)、ハナシノブ目(Polemoniales)、シソ目(Lamiales)、オオバコ目(Plantaginales)、ゴマノハグサ目(Scrophulariales)、キキョウ目(Campanulales)、アカネ目(Rubiales)、マツムシソウ目(Dipsacales)、およびキク目(Asterales)、に属する植物が挙げられる。
【0049】
変異した単子葉植物の非限定的な例しては、以下の目:オモダカ目(Alismatales)、トチカガミ目(Hydrocharitales)、イバラモ目(Najadales)、ホンゴウソウ目(Triuridales)、ツユクサ目(Commelinales)、ホシクサ目(Eriocaulales)、サンアソウ目(Restionales)、イネ目(Poales)、イグサ目(Juncales)、カヤツリグサ目(Cyperales)、ガマ目(Typhales)、パイナップル目(Bromeliales)、ショウガ目(Zingiberales)、ヤシ目(Arecales)、パナマソウ目(Cyclanthales)、タコノキ目(Pandanales)、サトイモ目(Arales)、ユリ目(Lilliales)、およびラン目(Orchid ales)、に属する植物が挙げられ、または裸子植物(Gymnospermae)に属する植物、例えば、以下の目:マツ目(Pinales)、イチョウ目(Ginkgoales)、ソテツ目(Cycadales)、ナンヨウスギ目(Araucariales)、ヒノキ目(Cupressales)、およびグネツム目(Gnetales)、に属するものも挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、変異した植物は、アラビドプシス・アレニコラ(Arabidopsis arenicola)、アラビドプシス・アレノサ(Arabidopsis arenosa)、アラビドプシス・セベネンシス(Arabidopsis cebennensis)、アラビドプシス・クロアティカ(Arabidopsis croatica)、アラビドプシス・ハレリ(Arabidopsis halleri)、アラビドプシス・リラタ(Arabidopsis lyrata)、アラビドプシス・ネグレクタ(Arabidopsis neglecta)、アラビドプシス・ペデモンタナ(Arabidopsis pedemontana)、アラビドプシス・スエシカ(Arabidopsis suecica)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、トウモロコシ(Zea mays)、イネ(Oryza sativa)、パンコムギ(Triticum aestivum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、タマネギ(Allium cepa)、ニンニク(Allium sativum)、ダイズ(Glycine max)、トマト(Solanum lycopersicum)、アプランドワタ(Gossypium hirsutum)、シロバナワタ(Gossypium herbaceum)、インドワタ(Gossypium arboreum)、ハワイアンコットン(Gossypium tomentosum)、クロガラシ(Brassica nigra)、またはアブラナ属の種(Brassica sp)であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、植物におけるSRP54、SGI1、SGI2、またはこれらの遺伝子のうちの1つ以上の組み合わせの改変は、組織特異的であり得る。いくつかの実施形態では、植物組織は、葉、茎、または根であり得る。いくつかの実施形態では、組織特異的遺伝子の改変は、遺伝子の組織特異的非コード領域、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、3’-または5’-非翻訳領域を改変することにより達成することができる。いくつかの実施形態では、植物におけるSRP54、SGI1、SGI2、またはこれらの遺伝子のうちの1つ以上の組み合わせの改変は、植物の異なる発達段階で行うことができる。
【0052】
[本発明1001]
葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;
変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)と
を含む、変異体光合成生物。
[本発明1002]
葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;
変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)と
を含む、変異体光合成生物。
[本発明1003]
変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)
を含む、変異体光合成生物。
[本発明1004]
葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;
変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)と;
変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)と
を含む、変異体光合成生物。
[本発明1005]
前記変異体が、同じ種の対照光合成生物に対して、弱光条件下でのクロロフィルの減少と、100μEm
-2
s
-1
を超えるすべての生理学的に適切な放射照度で、光化学系IIにおける光化学のより高い最大量子収率(F
v
/F
M
)とを呈する、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1006]
同じ種の対照光合成生物に対して少なくとも20%減のクロロフィルの減少を呈する、本発明1005の変異体光合成生物。
[本発明1007]
前記クロロフィルの減少が、同じ種の対照光合成生物に対して少なくとも30%の減少である、本発明1006の変異体光合成生物。
[本発明1008]
前記クロロフィルの減少が、同じ種の対照光合成生物に対して少なくとも40%の減少である、本発明1007の変異体光合成生物。
[本発明1009]
前記クロロフィルの減少が、同じ種の対照光合成生物に対して少なくとも50%の減少である、本発明1007の変異体光合成生物。
[本発明1010]
前記クロロフィルの減少が、同じ種の対照光合成生物に対して少なくとも60%の減少である、本発明1009の変異体光合成生物。
[本発明1011]
前記クロロフィルの減少が、同じ種の対照光合成生物に対して少なくとも70%の減少である、本発明1010の変異体光合成生物。
[本発明1012]
前記変異体が、同じ種の対照光合成生物に対して、100μEm
-2
s
-1
を超えるすべての生理学的に適切な放射照度で、より低い非光化学的消光(NPQ)を呈する、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1013]
前記変異体が、250μEm
-2
s
-1
を超えるすべての生理学的放射照度で、同じ種の対照光合成生物よりも低いNPQを呈する、本発明1012の変異体光合成生物。
[本発明1014]
前記変異体が、同じ種の対照光合成生物よりも高い、クロロフィル当たりの炭素固定率を示す、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1015]
前記炭素固定率が、同じ種の対照光合成生物よりも少なくとも50%高い、本発明1014の変異体光合成生物。
[本発明1016]
前記炭素固定率が、同じ種の対照光合成生物よりも少なくとも100%高い、本発明1015の変異体光合成生物。
[本発明1017]
酸素発生率が、同じ種の対照光合成生物よりも少なくとも100%高い、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1018]
前記酸素発生率が、同じ種の対照光合成生物よりも少なくとも200%高い、本発明1017の変異体光合成生物。
[本発明1019]
前記変異体の培養物が、同じ種の対照光合成生物の培養物よりも大きいバイオマス生産性を示す、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1020]
前記変異体が、光合成独立栄養培養においてより大きなバイオマス生産性を示す、本発明1019の変異体光合成生物。
[本発明1021]
前記変異体が、連続光条件下で、より大きなバイオマス活性を示す、本発明1020の変異体光合成生物。
[本発明1022]
前記変異体が、日周条件下で、より大きなバイオマス活性を示す、本発明1020の変異体光合成生物。
[本発明1023]
前記変異体が、光プロファイルが自然の日光プロファイルを模倣する日周条件下で、より大きなバイオマス活性を示す、本発明1020の変異体光合成生物。
[本発明1024]
前記変異体が、UV照射、ガンマ線照射、または化学的変異誘発によって生成された、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1025]
前記変異体が、遺伝子操作された変異体である、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1026]
前記変異体が、挿入変異誘発、遺伝子置換、RNAi、アンチセンスRNA、メガヌクレアーゼゲノム編集、1つ以上のリボザイム、および/またはCRISPR/Cas系によって遺伝子操作された、本発明1025の変異体光合成生物。
[本発明1027]
前記変異体が、CRISPR/Cas系によって遺伝子操作された、本発明1026の変異体光合成生物。
[本発明1028]
前記cpSRP54が、該遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号68、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、および配列番号85からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも65%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1001または1002の変異体光合成生物。
[本発明1029]
前記cpSRP54遺伝子が、該遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号8の核酸配列と少なくとも50%の同一性を有する、本発明1026の変異体光合成生物。
[本発明1030]
前記cpSRP54が、該遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも65%を有する、本発明1028の変異体光合成生物。
[本発明1031]
前記SGI1ポリペプチドが、該遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、および配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する、本発明1001または1002の変異体光合成生物。
[本発明1032]
前記SRP54タンパク質をコードする遺伝子が、cpSRP54 GTPaseドメインの最初の169個のアミノ酸をコードする配列の外側で発生する変異を含む、本発明1001または1002の変異体光合成生物。
[本発明1033]
前記SRP54タンパク質をコードする遺伝子における前記変異が、cpSRP54 GTPaseドメインをコードする配列の外側で発生する、本発明1032の変異体光合成生物。
[本発明1034]
前記SRP54タンパク質をコードする遺伝子が、cpSRP54 GTPaseドメインに遺伝子破壊変異を含まない、本発明1033の変異体光合成生物。
[本発明1035]
前記SGI2遺伝子が、該遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、および配列番号56からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも65%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、本発明1001、1003、または1004の変異体光合成生物。
[本発明1036]
前記SGI2遺伝子が、該遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号7、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、および配列番号66からなる群から選択される核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む、本発明1035の変異体光合成生物。
[本発明1037]
前記SGI2遺伝子が、該遺伝子の変異または減弱化の前に、配列番号5、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、および配列番号56からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、本発明1035の変異体光合成生物。
[本発明1038]
前記光合成生物が、藻類であり、前記変異体藻類が、アクナンテス(Achnanthes)、アンフィプロラ(Amphiprora)、アンフォラ(Amphora)、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)、アステロモナス(Asteromonas)、ベケロビア(Boekelovia)、ボリドモナス(Bolidomonas)、ボロディネラ(Borodinella)、ボトリディウム(Botrydium)、ボトリオコッカス(Botryococcus)、ブラクテオコッカス(Bracteococcus)、キートケロス(Chaetoceros)、カルテリア(Carteria)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クロロコックム(Chlorococcum)、クロロゴニウム(Chlorogonium)、クロレラ(Chlorella)、クロオモナス(Chroomonas)、クリソスファエラ(Chrysosphaera)、クリコスファエラ(Cricosphaera)、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)、クリプトモナス(Cryptomonas)、シクロテラ(Cyclotella)、ドナリエラ(Dunaliella)、エリプソイドン(Ellipsoidon)、エミリアニア(Emiliania)、エレモスファエラ(Eremosphaera)、エルノデスミウス(Ernodesmius)、ユーグレナ(Euglena)、ユースティグマトス(Eustigmatos)、フランケイア(Franceia)、フラギラリア(Fragilaria)、グロエオサムニオン(Gloeothamnion)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、ハロカフェテリア(Halocafeteria)、ヘテロシグマ(Heterosigma)、ハイメノモナス(Hymenomonas)、イソクリシス(Isochrysis)、レポシンクリス(Lepocinclis)、ミクラクチニウム(Micractinium)、モノダス(Monodus)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナノクロリス(Nannochloris)、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)、ナビキュラ(Navicula)、ネオクロリス(Neochloris)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、ニッチア(Nitzschia)、オクロモナス(Ochromonas)、オエドゴニウム(Oedogonium)、オオキスティス(Oocystis)、オストレオコッカス(Ostreococcus)、パブロバ(Pavlova)、パラクロレラ(Parachlorella)、パスケリア(Pascheria)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、フェオダクチラム(Phaeodactylum)、ファグス(Phagus)、ピコクロラム(Picochlorum)、プラチモナス(Platymonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、プレウロコッカス(Pleurococcus)、プロトテカ(Prototheca)、シュードクロレラ(Pseudochlorella)、シュードネオクロリス(Pseudoneochloris)、シュードスタウラストラム(Pseudostaurastrum)、ピラミモナス(Pyramimonas)、ピロボトリス(Pyrobotrys)、セネデスムス(Scenedesmus)、スケレトネマ(Skeletonema)、アオミドロ(Spyrogyra)、スチココッカス(Stichococcus)、テトラセルミス(Tetraselmis)、タラシオシーラ(Thalassiosira)、トリボネマ(Tribonema)、フシナシミドロ(Vaucheria)、ビリジエラ(Viridiella)、ビスケリア(Vischeria)、およびボルボックス(Volvox)からなる群から選択される属に属する、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1039]
前記光合成生物が藻類であり、前記変異体藻類が、緑藻類(chlorophyte)、珪藻類(bacillarophyte)、プラシノ藻類(prasinophyte)、灰色藻類(glaucophyte)、ハプト藻類(haptophyte)、クロララクニオン藻類(chlorarachniophyte)、ユーグレナ藻類(euglenophyte)、有色植物類(chromophytes)、および渦鞭毛藻類(dinoflagellate)変異体からなる群から選択される、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1040]
前記光合成生物が、藻類であり、前記藻類変異体が、緑藻類(chlorophyte)である、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1041]
前記変異体が、ボトリオコッカス(Botryococcus)、ブラクテオコッカス(Bracteococcus)、カルテリア(Carteria)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クロロコックム(Chlorococcum)、クロロゴニウム(Chlorogonium)、クロレラ(Chlorella)、クロオモナス(Chroomonas)、クリソスファエラ(Chrysosphaera)、クリコスファエラ(Cricosphaera)、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)、クリプトモナス(Cryptomonas)、ドナリエラ(Dunaliella)、エミリアニア(Emiliania)、エレモスファエラ(Eremosphaera)、エルノデスミウス(Ernodesmius)、フランケイア(Franceia)、グロエオサムニオン(Gloeothamnion)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、ヘテロシグマ(Heterosigma)、ハイメノモナス(Hymenomonas)、イソクリシス(Isochrysis)、レポシンクリス(Lepocinclis)、ミクラクチニウム(Micractinium)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナノクロリス(Nannochloris)、ネオクロリス(Neochloris)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、オクロモナス(Ochromonas)、オエドゴニウム(Oedogonium)、オオキスティス(Oocystis)、オストレオコッカス(Ostreococcus)、パラクロレラ(Parachlorella)、パスケリア(Pascheria)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、ファグス(Phagus)、ピコクロラム(Picochlorum)、プラチモナス(Platymonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、プレウロコッカス(Pleurococcus)、プロトテカ(Prototheca)、シュードクロレラ(Pseudochlorella)、シュードネオクロリス(Pseudoneochloris)、シュードスタウラストラム(Pseudostaurastrum)、ピラミモナス(Pyramimonas)、ピロボトリス(Pyrobotrys)、セネデスムス(Scenedesmus)、スケレトネマ(Skeletonema)、アオミドロ(Spyrogyra)、スチココッカス(Stichococcus)、テトラセルミス(Tetraselmis)、トリボネマ(Tribonema)、ビリジエラ(Viridiella)、およびボルボックス(Volvox)からなる群から選択される属に属する、本発明1037の藻類変異体。
[本発明1042]
本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物を含む、バイオマス。
[本発明1043]
前記光合成生物が、藻類である、本発明1042のバイオマス。
[本発明1044]
生物学的産物を産生する方法であって、本発明1001~1004のいずれかの変異体光合成生物を培養する工程と、前記培養物から少なくとも1つの産物を単離する工程とを含む、方法。
[本発明1045]
前記光合成生物が藻類であり、前記生物学的産物が藻類バイオマスである、本発明1044の方法。
[本発明1046]
前記生物学的産物が、脂質、タンパク質、ペプチド、1種類以上のアミノ酸、1種類のアミノ酸、1種類以上のヌクレオチド、ビタミン、補助因子、ホルモン、抗酸化物質、または色素または着色剤である、本発明1044の方法。
[本発明1047]
前記生物学的産物が脂質である、本発明1046の方法。
[本発明1048]
前記変異体光合成生物が、脂質の産生に関与するポリペプチドをコードする少なくとも1つの外因性遺伝子を含むように操作されている、本発明1047の方法。
[本発明1049]
前記変異体光合成生物が、光栄養的に培養される、本発明1044の方法。
[本発明1050]
前記変異体光合成生物が藻類であり、前記藻類が池または導水路で培養される、本発明1049の方法。
[本発明1051]
細胞質ゾルシグナル認識タンパク質54(cytoSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;
変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)と
を有する、変異体光合成生物。
[本発明1052]
細胞質ゾルシグナル認識タンパク質54(cytoSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;
変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)と
を有する、変異体光合成生物。
[本発明1053]
細胞質ゾルシグナル認識タンパク質54(cytoSRP54)をコードする、変異または減弱化された遺伝子と;
変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)と;
変異または減弱化された、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)と
を有する、変異体光合成生物。
[本発明1054]
前記変異体光合成生物の培養物が、同じ種の対照光合成生物の培養物よりも大きい脂質生産性を示す、本発明1001~1053のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1055]
前記変異体が、光合成独立栄養培養においてより大きな脂質生産性を示す、本発明1051~1053のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1056]
前記変異体光合成生物が、藻類であり、前記変異体藻類が、日周条件下で、より大きなバイオマス活性を示す、本発明1055の変異体光合成生物。
[本発明1057]
前記変異体藻類が、光プロファイルが自然の日光プロファイルを模倣する日周条件下で、より大きなバイオマス活性を示す、本発明1056の変異体藻類。
[本発明1058]
UV照射、ガンマ線照射、または化学的変異誘発によって生成された、本発明1051~1053のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1059]
遺伝子操作された変異体である、本発明1051~1053のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1060]
挿入変異誘発、遺伝子置換、RNAi、アンチセンスRNA、メガヌクレアーゼゲノム編集、1つ以上のリボザイム、および/またはCRISPR/Cas系によって遺伝子操作された、本発明1058の変異体光合成生物。
[本発明1061]
前記変異体が、CRISPR/Cas系によって遺伝子操作された、本発明1059の変異体光合成生物。
[本発明1062]
前記変異体光合成生物が、藻類であり、前記変異体藻類が、アクナンテス(Achnanthes)、アンフィプロラ(Amphiprora)、アンフォラ(Amphora)、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)、アステロモナス(Asteromonas)、ベケロビア(Boekelovia)、ボリドモナス(Bolidomonas)、ボロディネラ(Borodinella)、ボトリディウム(Botrydium)、ボトリオコッカス(Botryococcus)、ブラクテオコッカス(Bracteococcus)、キートケロス(Chaetoceros)、カルテリア(Carteria)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クロロコックム(Chlorococcum)、クロロゴニウム(Chlorogonium)、クロレラ(Chlorella)、クロオモナス(Chroomonas)、クリソスファエラ(Chrysosphaera)、クリコスファエラ(Cricosphaera)、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)、クリプトモナス(Cryptomonas)、シクロテラ(Cyclotella)、ドナリエラ(Dunaliella)、エリプソイドン(Ellipsoidon)、エミリアニア(Emiliania)、エレモスファエラ(Eremosphaera)、エルノデスミウス(Ernodesmius)、ユーグレナ(Euglena)、ユースティグマトス(Eustigmatos)、フランケイア(Franceia)、フラギラリア(Fragilaria)、グロエオサムニオン(Gloeothamnion)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、ハロカフェテリア(Halocafeteria)、ヘテロシグマ(Heterosigma)、ハイメノモナス(Hymenomonas)、イソクリシス(Isochrysis)、レポシンクリス(Lepocinclis)、ミクラクチニウム(Micractinium)、モノダス(Monodus)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナノクロリス(Nannochloris)、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)、ナビキュラ(Navicula)、ネオクロリス(Neochloris)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、ニッチア(Nitzschia)、オクロモナス(Ochromonas)、オエドゴニウム(Oedogonium)、オオキスティス(Oocystis)、オストレオコッカス(Ostreococcus)、パブロバ(Pavlova)、パラクロレラ(Parachlorella)、パスケリア(Pascheria)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、フェオダクチラム(Phaeodactylum)、ファグス(Phagus)、ピコクロラム(Picochlorum)、プラチモナス(Platymonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、プレウロコッカス(Pleurococcus)、プロトテカ(Prototheca)、シュードクロレラ(Pseudochlorella)、シュードネオクロリス(Pseudoneochloris)、シュードスタウラストラム(Pseudostaurastrum)、ピラミモナス(Pyramimonas)、ピロボトリス(Pyrobotrys)、セネデスムス(Scenedesmus)、スケレトネマ(Skeletonema)、アオミドロ(Spyrogyra)、スチココッカス(Stichococcus)、テトラセルミス(Tetraselmis)、タラシオシーラ(Thalassiosira)、トリボネマ(Tribonema)、フシナシミドロ(Vaucheria)、ビリジエラ(Viridiella)、ビスケリア(Vischeria)、およびボルボックス(Volvox)からなる群から選択される属に属する、本発明1051~1060のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1063]
前記変異体光合成生物が藻類であり、前記変異体藻類が、珪藻類(Bacillariophyte)、ユースティグマトファイト(eustigmatophyte)、および有色植物類(chromophytes)変異体からなる群から選択される、本発明1051~1060のいずれかの変異体光合成生物。
[本発明1064]
前記変異体が、ユースティグマトファイト(eustigmatophyte)である、本発明1063の変異体藻類。
[本発明1065]
前記変異体藻類が、エリプソイドン(Ellipsoidion)、ユースティグマトス(Eustigmatos)、ビスケリア(Vischeria)、モノダス(Monodus)、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)、およびシュードスタウラストラム(Pseudostaurastrum)からなる群から選択される属に属する、本発明1064の変異体藻類。
[本発明1066]
脂質を産生する方法であって、本発明1001~1065のいずれかの藻類変異体を培養する工程と、前記培養物から少なくとも1種類の脂質を単離する工程とを含む、方法。
[本発明1067]
光合成生物のバイオマスを増加させる方法であって、葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54)および有意な成長改善遺伝子2(SGI2)を調節する工程を含む、方法。
[本発明1068]
光合成生物のバイオマスを増加させる方法であって、遺伝子:葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54);および有意な成長改善遺伝子1(SGI1)、を調節する工程を含む、方法。
[本発明1069]
光合成生物のバイオマスを増加させる方法であって、遺伝子:葉緑体シグナル認識タンパク質54(cpSRP54);有意な成長改善遺伝子1(SGI1);および有意な成長改善遺伝子2(SGI2)、を調節する工程を含む、方法。
[本発明1070]
前記遺伝子を調節する工程が、前記cpSRP54遺伝子および前記SGI2遺伝子における、塩基置換変異、挿入変異誘発、遺伝子置換、RNAi、アンチセンスRNA、メガヌクレアーゼゲノム編集、1つ以上のリボザイム、および/またはCRISPR/Cas系を含む、本発明1067の方法。
[本発明1071]
前記遺伝子を調節する工程が、前記cpSRP54遺伝子および前記SGI1遺伝子における、塩基置換変異、挿入変異誘発、遺伝子置換、RNAi、アンチセンスRNA、メガヌクレアーゼゲノム編集、1つ以上のリボザイム、および/またはCRISPR/Cas系を含む、本発明1068の方法。
[本発明1072]
前記遺伝子を調節する工程が、前記cpSRP54遺伝子、前記SGI1遺伝子、および前記SGI2遺伝子における、塩基置換変異、挿入変異誘発、遺伝子置換、RNAi、アンチセンスRNA、メガヌクレアーゼゲノム編集、1つ以上のリボザイム、および/またはCRISPR/Cas系を含む、本発明1069の方法。
[本発明1073]
光合成生物の前記バイオマスを増加させることが、総有機炭素の増加を含む、本発明1067~1072のいずれかの方法。
[本発明1074]
光合成生物の前記バイオマスを増加させることが、総脂質含有量の増加を含む、本発明1067~1072のいずれかの方法。
[本発明1075]
光合成生物の前記バイオマスを増加させることが、総窒素含有量の増加を含む、本発明1067~1072のいずれかの方法。
[本発明1076]
前記変異体光合成生物が、藻類であり、前記変異体藻類が、アクナンテス(Achnanthes)、アンフィプロラ(Amphiprora)、アンフォラ(Amphora)、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)、アステロモナス(Asteromonas)、ベケロビア(Boekelovia)、ボリドモナス(Bolidomonas)、ボロディネラ(Borodinella)、ボトリディウム(Botrydium)、ボトリオコッカス(Botryococcus)、ブラクテオコッカス(Bracteococcus)、キートケロス(Chaetoceros)、カルテリア(Carteria)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クロロコックム(Chlorococcum)、クロロゴニウム(Chlorogonium)、クロレラ(Chlorella)、クロオモナス(Chroomonas)、クリソスファエラ(Chrysosphaera)、クリコスファエラ(Cricosphaera)、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)、クリプトモナス(Cryptomonas)、シクロテラ(Cyclotella)、ドナリエラ(Dunaliella)、エリプソイドン(Ellipsoidon)、エミリアニア(Emiliania)、エレモスファエラ(Eremosphaera)、エルノデスミウス(Ernodesmius)、ユーグレナ(Euglena)、ユースティグマトス(Eustigmatos)、フランケイア(Franceia)、フラギラリア(Fragilaria)、グロエオサムニオン(Gloeothamnion)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、ハロカフェテリア(Halocafeteria)、ヘテロシグマ(Heterosigma)、ハイメノモナス(Hymenomonas)、イソクリシス(Isochrysis)、レポシンクリス(Lepocinclis)、ミクラクチニウム(Micractinium)、モノダス(Monodus)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナノクロリス(Nannochloris)、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)、ナビキュラ(Navicula)、ネオクロリス(Neochloris)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、ニッチア(Nitzschia)、オクロモナス(Ochromonas)、オエドゴニウム(Oedogonium)、オオキスティス(Oocystis)、オストレオコッカス(Ostreococcus)、パブロバ(Pavlova)、パラクロレラ(Parachlorella)、パスケリア(Pascheria)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、フェオダクチラム(Phaeodactylum)、ファグス(Phagus)、ピコクロラム(Picochlorum)、プラチモナス(Platymonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、プレウロコッカス(Pleurococcus)、プロトテカ(Prototheca)、シュードクロレラ(Pseudochlorella)、シュードネオクロリス(Pseudoneochloris)、シュードスタウラストラム(Pseudostaurastrum)、ピラミモナス(Pyramimonas)、ピロボトリス(Pyrobotrys)、セネデスムス(Scenedesmus)、スケレトネマ(Skeletonema)、アオミドロ(Spyrogyra)、スチココッカス(Stichococcus)、テトラセルミス(Tetraselmis)、タラシオシーラ(Thalassiosira)、トリボネマ(Tribonema)、フシナシミドロ(Vaucheria)、ビリジエラ(Viridiella)、ビスケリア(Vischeria)、およびボルボックス(Volvox)からなる群から選択される属に属する、本発明1067~1075のいずれかの方法。
[本発明1077]
前記変異体光合成生物が、植物である、本発明1067~1076のいずれかの方法。
本発明のこれらおよび他の目的ならびに特徴は、本発明の以下の発明を実施するための形態を添付の図面と併せて読み取ると、より完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1Aは、SGI1遺伝子の概略図を示す。SGI1遺伝子(CRISPR標的)を破壊するように設計されたgRNAの推定位置が示されている。
図1Bは、SPR54遺伝子の概略図を示す。SPR54遺伝子(CRISPR標的)を破壊するように設計されたgRNAの推定位置が示されている。
【
図2】
図2Aは、SGI1遺伝子の概略図を示す。SGI1遺伝子(CRISPR標的)を破壊するように設計されたgRNAの推定位置が示されている。
図2Bは、SGI1タンパク質の概略図を示す。
図2Cは、SPR54遺伝子の概略図を示す。SPR54遺伝子(CRISPR標的)を破壊するように設計されたgRNAの推定位置が示されている。
【
図3】Parachlorella種のSgI2タンパク質の例示的なドメインアーキテクチャ分析を示す。
【
図4】Oocystis種のSgI2タンパク質の例示的なドメインアーキテクチャ分析を示す。
【
図5】Tetraselmis種のSgI2タンパク質の例示的なドメインアーキテクチャ分析を示す。
【
図6】Arabidopsis thalianaのSgI2タンパク質の例示的なドメインアーキテクチャ分析を示す。
【
図7】Arabidopsis thalianaのSgI2タンパク質の例示的なドメインアーキテクチャ分析を示す。
【
図8】Arabidopsis thalianaのSgI2タンパク質の例示的なドメインアーキテクチャ分析を示す。
【
図9】Arabidopsis thalianaSgI2タンパク質の例示的なドメインアーキテクチャ分析を示す。
【
図10】
図10Aは、亜硝酸レダクターゼプロモーターとターミネーターとが隣接したコドン最適化Cre遺伝子を含有するDNAカセットの概略図を示す。
図10Bは、bleRおよびGFP配列を含むDNAカセットの概略図を示す。
【
図11】Parachlorella野生型株、SRP54ノックアウト株、SGI2ノックアウト株、SGI2およびSRP54のダブルノックアウト株の、生産性アッセイの結果を示す。
【
図12】
図12Aは、Parachlorella野生型株(STR00010)、SRP54ノックアウト変異体(STR00625)、SGI1ノックアウト変異体(STR24183)、SGI1/SRP54ダブルノックアウト変異体(STR24538およびSTR24550)の、半連続領域TOC生産性アッセイの結果を示す。
図12Bは、Parachlorella野生型株(STR00010)、SRP54ノックアウト変異体(STR00625)、SGI1ノックアウト変異体(STR24183)、SGI1/SRP54ダブルノックアウト変異体(STR24538およびSTR24550)の、バッチTOC生産性アッセイの結果を示す。
【
図13】Parachlorella野生型株(STR00010)、SRP54ノックアウト変異体(STR00625)、SGI1ノックアウト変異体(STR00012)、SGI2/SRP54ダブルノックアウト変異体(STR25761)、およびSGI1/SGI2/SRP54トリプルノックアウト変異体(STR25761およびSTR25762)の、半連続領域TOC生産性を示すアッセイの結果を示す。
図13Bは、Parachlorella野生型株(STR00010)、SRP54ノックアウト変異体(STR00625)、SGI1ノックアウト変異体(STR00012)、SGI2/SRP54ダブルノックアウト変異体(STR25761)、およびSGI1/SGI2/SRP54トリプルノックアウト変異体(STR25761およびSTR25762)の、バッチTOC生産性を示すアッセイの結果を示す。
【
図14】Parachlorella野生型株(STR00010)、SRP54ノックアウト変異体(STR00625)、SGI1ノックアウト変異体(STR24183)、SGI1/SRP54ダブルノックアウト変異体(STR24538およびSTR24540)の、バッチFAME生産性アッセイの結果を示す。
【
図15】Parachlorella野生型株(STR00010)、SGI1ノックアウト変異体(STR00012)、SGI2/SRP54ダブルノックアウト変異体(STR00516)、およびSGI1/SGI2/SRP54トリプルノックアウト変異体(STR25761およびSTR25762)の、バッチFAME生産性アッセイの結果を示す。
【
図16】
図16Aは、ParachlorellaのSPR54をノックアウトするための選択カセットの概略図を示す。
図16Bは、ParachlorellaのSGI2をノックアウトするための選択カセットの概略図を示す。
【
図17】Cas9、GFP、BleR、Cre遺伝子、およびlox部位を含む組換えpCC1BACベクターの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
発明の詳細な説明
本出願の発明者らは、驚くべきことに、かつ予期せぬことに、光合成生物におけるSGI1およびSGI2遺伝子の調節が、弱光条件下でのクロロフィルの減少と、すべての生理学的に放射照度における光化学系IIのより高い最大量子収率(Fv/FM)とをもたらすことを見出した。いくつかの実施形態では、変異または減弱化されたSGI1またはSGI2遺伝子を含む変異体光合成生物は、すべての生理学的に関連する放射照度でより低い非光化学消光(NPQ)を呈する。いくつかの実施形態では、変異または減弱化されたSGI1またはSGI2遺伝子を含む変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物のものよりも、増加したバイオマスを呈する。いくつかの実施形態では、変異または減弱化されたSGI1またはSGI2遺伝子を含む変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物のものよりも、クロロフィルに基づく高い炭素固定率を呈する。いくつかの実施形態では、変異または減弱化されたSGI1またはSGI2遺伝子を含む変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物のものよりも高い、TOC当たりの炭素固定率を呈する。いくつかの実施形態では、変異または減弱化されたSGI1またはSGI2遺伝子を含む変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物よりも、より高い、クロロフィル1mg当たりの酸素発生率を呈する。いくつかの実施形態では、変異または減弱化されたSGI1またはSGI2遺伝子を含む変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物のものよりも高い、TOC当たりの酸素発生率を呈する。いくつかの実施形態では、変異または減弱化されたSGI1またはSGI2遺伝子を含む変異体光合成生物は、同じ種の対照光合成生物の培養物のものよりも、大きな脂質生産性を呈する。いくつかの実施形態では、変異または減弱化されたSGI1またはSGI2遺伝子を含む変異体光合成生物は、光独立栄養培地においてより大きな脂質生産性を呈する。
【0055】
本出願の発明者らはまた、驚くべきことに、光合成生物におけるSGI1またはSGI2遺伝子の調節と共に、SRP54遺伝子の調節に対する相乗効果を見出した。いくつかの実施形態では、SRP54およびSGI1またはSGI2遺伝子が調節されている変異体光合成生物においては、SGI1またはSGI2遺伝子のみが調節される変異体光合成生物と比べて、クロロフィルはさらに減少し、バイオマスはさらに増加し、クロロフィルに基づく炭素固定が大きくなり、TOC当たりの炭素固定が大きくなる。
【0056】
SGI1遺伝子
本明細書に記載されているように、有意な成長改善遺伝子1(SGI1)ポリペプチドは、2つのドメイン:応答レシーバーまたは「RR」ドメイン(Pfam PF00072)およびMybドメイン(Pfam PF00249)、を含むポリペプチドであり、RRドメインは、MybドメインのN末端側に位置付けられている。本明細書では2つのドメイン間のリンカーと称されることもある、SGI1ポリペプチド間で保存性が低いかまたは保存されていないことがわかっているアミノ酸配列によって、RRドメインおよびMybドメインは隔てられており、このリンカーは、例えば、1~300個のアミノ酸、または10~200個のアミノ酸の長さの範囲であってもよい。リンカー領域は、任意で核局在化配列(NLS)を含むことができる。
【0057】
応答レシーバー「RR」ドメイン(Pfam PF00072)の存在は、CheY様ポリペプチドとして、そのバイオインフォマティクスアノテーションに関与する。このRRドメインは、ParachlorellaのSGI1ポリペプチド(配列番号3)のおよそアミノ酸36からアミノ酸148までにわたっており、保存ドメインデータベース(CDD)において、およそアミノ酸37からアミノ酸154までにわたる「シグナルレシーバードメイン」:cd00156、として特徴付けられる。これはまた、オルソログ遺伝子データベース(Clusters of Orthologous Groups of proteins database)において「CheY様レシーバー(REC)ドメイン」:COG0784、として、かつInterpro「CheY様スーパーファミリー」ドメイン:IPR011006、としても特徴付けられ、これらの特徴付けられたドメインの両方とも、配列番号3のParachlorellaのSGI1ポリペプチドのおよそアミノ酸33からおよそアミノ酸161までにわたっている。RRドメインは、センサーパートナーから信号を受信する細菌の二成分調節系(CheYとして知られるポリペプチドを含む細菌の走化性二成分系のような)で見出されている。このような系のRRドメインは、多くの場合、DNA結合ドメインに対してN末端側にあることが判明しており、その活性化または不活性化に関与する可能性がある、リン酸化され得るリン酸アクセプター部位を含む。
【0058】
SGI1タンパク質内のRRドメインは、例えば、Pfam PF00072として、または「シグナルレシーバードメイン」または単に「レシーバードメイン」として特徴付けることができ、および/または保存ドメインデータベース(CDD)においてcd00156として、オルソログ遺伝子データベース(Clusters of Orthologous Groups of proteins database)においてCOG0784として、またはInterpro「CheY様スーパーファミリー」ドメイン:IPR011006、として分類することができる。RRドメインは、センサーパートナーから信号を受信する細菌の二成分調節系(CheYとして知られるポリペプチドを含む細菌の走化性二成分系のような)で見出されている。このような系のRRドメインは、多くの場合、DNA結合ドメインに対してN末端側にあることが判明しており、その活性化または不活性化に関与する可能性がある、リン酸化され得るリン酸アクセプター部位を含む。
【0059】
SGI1タンパク質内のmybドメインは、例えば、pfamPF00249:「Myb様DNA結合ドメイン」と特徴付けることができ、および/または保存ドメインTIGR01557「myb様DNA結合ドメイン、SHAQKYFクラス(配列番号102として開示されたSHAQKYF)」として、またはInterproホメオボックス様ドメインスーパーファミリードメイン(IPR009057)ならびに/もしくはInterproMybドメイン(IPR017930)として特定することができる。
【0060】
本明細書で提供されるSGI1タンパク質は、mybドメインに対してN末端側のRRドメインを有することに加えて、藻類のSGI1ホモログの領域の保存されたアミノ酸とどの程度一致するかに基づいてタンパク質をスコアリングするように設計された、隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model)(HMM)でスキャンされる場合に(ここでは、スコアに達するために、高度に保存されたアミノ酸の位置が、ポリペプチドの比較領域内の保存性が低いアミノ酸位置よりも重く重み付けされる)、300以上、320以上、340以上、350以上、360以上、または370以上のスコアを有することできる。RRドメイン、リンカー、およびmybドメインを含む単一の連続配列を含む藻類SGI1ポリペプチドのタンパク質配列に基づくHMMモデルでスキャンするとき、350以上、例えば370以上のスコアを有するポリペプチドは、限定されないが、藻類および植物種のポリペプチドParachlorella種1185(配列番号3)、コッコミクサ・サブエリプソイディア(Coccomyxa subellipsoidea)(配列番号9)、オストレアコッカス・ルシマリヌス(Ostreococcus lucimarinus)(配列番号10)、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)(配列番号11)、ボルボックス・カルテリ(Volvox carteri)(配列番号13)、Tetraselmis種105(配列番号14、15および16)、Oocystis種(配列番号17)、ミクロモナス(Micromonas)種RCC299(配列番号18)、ミクロモナス・プシラ(Micromonas pusilla)(配列番号19)、サンカクミズゴケ(Sphagnum fallax)(配列番号20)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(配列番号21)、Arabidopsis thaliana((配列番号22)、Arabidopsis halleri(配列番号23)、Arabidopsis lyrata(配列番号24)、ヒマワリ(Helianthus annuus)(配列番号25)、ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)(配列番号26)、アンボレラ・トリコポダ(Amborella trichopoda)(配列番号27)、トウゴマ(Ricinus communis)(配列番号28)、Solanum lycopersicum(配列番号29)、Solanum tuberosum(配列番号30)、Gossypium hirsutum(配列番号31)、カカオ(Theobroma cacao)(配列番号32)、フェオリス・ブルガリス(Phaeolis vulgaris)(配列番号33)、Glycine max(配列番号34)、キヌア(Chenopodium quinoa)(配列番号35)、リンゴ(Malus domesticus)(配列番号36)、Zea mays(配列番号37)、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)(配列番号38)、およびOryza sativa(配列番号39)、ならびに前述のいずれかと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するポリペプチドが挙げられるポリペプチドを使用して開発し、このポリペプチドは、RRドメインとmybドメインとを有し、RRドメインは、mybドメインに対してN末端側にある。様々な実施形態では、SGI1ポリペプチドは、植物または藻類種に由来する。本明細書で提供されるSGI1ポリペプチドをコードする遺伝子、例えば、本明細書で提供される変異体において破壊されるかまたはその発現が減弱される遺伝子は、様々な実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドをコードする植物または藻類種の、天然に存在する遺伝子であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるSGI1ポリペプチドは、例えば、天然に存在する藻類SGI1ポリペプチドの配列を有する藻類SGI1ポリペプチドであり、藻類ポリペプチドは、RRドメインとmybドメインとを含み、RRドメインは、mybドメインに対してN末端側にある。藻類ポリペプチドは、任意で、本明細書に開示される藻類SGI1ポリペプチドのいずれかと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、SGI1遺伝子は、藻類SGI1ポリペプチド、例えば、天然に存在する藻類SGI1ポリペプチドの配列を有するポリペプチドなどをコードする遺伝子であり得る。天然に存在する藻類SGIポリペプチドの配列を有するポリペプチドをコードするSGI1遺伝子は、遺伝子をコードする配列の天然に存在する遺伝子配列を有する遺伝子であり得るか、または天然に存在する遺伝子の配列とは異なる配列を有し得る。様々な実施形態では、本明細書に開示される変異体光合成生物において減弱化、変異、または破壊されているSGI1遺伝子は、例えば、本明細書に開示される配列を使用するBLASTを通して、および/またはHMMスキャンによって特定される遺伝子であり得、HMMは、例えば、少なくとも6つのSGIポリペプチドの比較によって得られる隣接するアミノ酸配列に基づいており、隣接するアミノ酸配列はRRドメインとmybドメインとを含み、RRドメインはmybドメインに対してN末端側にあり、RRドメインとmybドメインとの間に、どちらのドメインにも属さないリンカー配列がある。
【0062】
いくつかの実施形態では、SGIポリペプチドは、藻類SGI1ポリペプチドの配列を有するか、または天然に存在する藻類SGI1ポリペプチドと少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有する天然に存在する藻類SGI1ポリペプチドの変異体であり、および/または、配列番号3、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、または配列番号19のうちのいずれかと、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、SGIポリペプチドは、植物SGI1ポリペプチドの配列を有するか、または天然に存在する藻類SGIポリペプチドと少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有する天然に存在する植物SGI1ポリペプチドの変異体であり、および/または、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、または配列番号39のうちのいずれかと、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する。
【0064】
配列番号1が、ParachlorellaのSGI1遺伝子配列として提供され、これは、その両方とも619アミノ酸タンパク質のN末端の半分に存在する2つの主要な機能ドメインを含むポリペプチド(配列番号3)をコードすることが見いだされた。例示的なParachlorellaのSGI1 cDNA配列は、配列番号2として提供される。
【0065】
保存されたタンパク質ドメインは、mybドメインに対してC末端側のSGI1ポリペプチドの領域、すなわちタンパク質のC末端側の(およそ)半分には見出すことができなかった。一方、RRドメインおよびMybドメインは、mybドメインがRRドメインに対してC末端側に配置されている場合、緑色植物(Viridiplantae)(緑色植物(green plant)、藻類を包含する)ゲノムでコードされている多くのタンパク質に見出すことができる。バイオインフォマティクス分析を使用して、追加の植物および藻類の種におけるSGI1のオルソログの可能性を特定した。
【0066】
追加の光合成生物のSGI1タンパク質のクラスを同定するために、ParachlorellaのSGI1で見出されたmybドメインアーキテクチャであるRRドメイン用の隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model)(HMM)を構築した。最初の工程として、ParachlorellaのSGI1ポリペプチド配列(配列番号3)を使用して、植物および藻類のゲノムを含むJGI Phytozomeのデータベースv.12をBLAST検索した。4つの独自の藻類ゲノム(Parachlorella、Nannochloropsis、Tetraselmis、およびOocystis種)もまた、検索されたデータベースに追加した。検索は、約2,000ヒットに達したときに停止した。次いで、これらの結果を、InterProScan(EMBL-EBI[European Molecular Biology Laboratories-European Bioinformatics Institute、例えば、at ebi.ac.uk]から入手可能)により分析し、選択された結果が、Interpro CheY様スーパーファミリードメイン(IPR011006)と、Interproホメオボックス様ドメインもしくはMybドメイン(IPR009057またはIPR017930)の両方を有していることを確認した。この工程は、選択されたヒット数を、藻類および高等植物の両方のポリペプチドで明確に同定された2つのドメインアーキテクチャ(RRドメインのN末端からmybドメイン)を有するポリペプチドを備える、900~1,000まで減少させた。得られた配列を使用して、配列相同性に基づいて系統樹を組み立てた。系統樹は、Parachlorella、Tetraselmis、Oocystis、Chlamydomonas、Volvox、Ostreococcus、Micromonas、およびコッコミクサ(Coccomyxa)のSGI1ホモログを含む、藻類種由来の関連ポリペプチドの明確なグループ化を示した。
【0067】
【0068】
次いで、他の光合成生物における可能性のあるSGI1オルソログについての基準を確立するために、SGI1ポリペプチド配列の藻類クラスターに基づいて、隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model)(HMM)を開発した。HMMは、2つの保存されたドメイン間のリンカー領域を含む、RRおよびmybドメインの両方を包含するSGI1ポリペプチドのN末端部分に基づいて開発した。いかなる認識可能な保存された構造も含まない、mybドメインに対してC末端側のポリペプチドの配列は、モデル構築から除外された。HMMER 3.1b2を、Parachlorella、Oocystis、およびTetraselmisの独自の配列、ならびにChlamydomonas reinhardtii、Volvox Carteri、クロモクロリス・ゾフィンジエンシス(Chromochloris zofingiensis)、Coccomyxa subellipsoidea、Micromonas種のRCC299、およびオストレオコッカス・ルミナリナス(Ostreococcus luminarinus)のポリペプチドの公開データベースの配列から多重配列アラインメント(Multiple Sequence Alignments(MSA)を使用するHMMを構築するために使用した。タンパク質のN末端側半分の多重配列アラインメント(Multiple Sequence Alignments(MSA)を、ETE3ツールキットおよびeggnog41ワークフローを使用して生成した。このプログラムは、アラインメントにはMuscle、MAFFT、Clustal Omega、M-coffee、アラインメントトリミングにはtrimAI、系統発生干渉にはPhyMLプログラムを内部的に使用している。例えば、相同性比較に使用される単一のタンパク質配列とは異なり、HMMは多数のタンパク質配列から情報を得るため、高度に保存された残基を高度に多岐にわたる残基から区別し、配列の関連性を判定するときにそれを考慮に入れることができる。HMMを使用して配列をスコアリングする場合、高度に保存された残基は、高度に多岐にわたる残基よりも多くの重みを受け取るため、単純なPSAよりも優れた感度および精度を提供する。
【0069】
SGI1のHHMを使用して、BLAST検索で特定された2つの保存されたドメイン(RRおよびmyb)を有することが確認されたポリペプチドにスコアを割り当てた。バイオインフォマティクス検索において藻類種および単一の植物ポリペプチドのほとんどで見出された最高のスコアにより、他の藻類種で対象とするタンパク質の同定を可能にした(表1)。これらは、他の生物に高生産性変異体を提供するために遺伝子が減弱化またはノックアウトされ得る可能性のあるオルソログを表している。
【0070】
【0071】
【0072】
いくつかの実施形態では、藻類種におけるSGI1遺伝子の変異、減弱化、またはノックアウトなどのSGI1遺伝子の調節は、それらが由来した野生型株と比較して、減少されたアンテナサイズ(すなわち、機能的吸収断面積)を呈しながら、例えば、光化学系IIの光化学の最大量子収率(Fv/FM)を(約10~14%分)増加させる。
【0073】
いくつかの実施形態では、SGI1遺伝子の調節はまた、光化学系II(PSII)および光化学系I(PSI)のアンテナサイズ(すなわち、機能的吸収断面積)の減少(野生型に対して40~50%減少)、飽和光下でのPSIIのアクセプター側の高電子輸送率(1/τ’Qa)(操作された変異体において、野生型に対して約35%~約130%、および少なくとも約100%分の増加)、および高炭素固定率(Pmax)(野生型に対して少なくとも30~40%)を引き起こすことができ、一方では、多重反応モニタリングタンパク質定量法(Multiple Reaction Monitoring protein determination)によって決定されるように、TOCごとの光化学系の数は維持される。
【0074】
SGI2遺伝子
本願の発明者らは、有意な成長改善遺伝子2(SGI2)を、光合成生物、例えば、藻類、植物中に存在する、二成分系(TCS)と呼ばれるある部類の制御遺伝子のオルソログとして特定した。なぜなら、これらは、細菌細胞周期の進行ならびに発達(Skerker et al.2015;Two-component signal transduction pathways regulating growth and cell cycle progression in a bacterium:a system-level analysis,PLoS Biology.3(10):e334)、窒素感知(Sanders et al.,1992;Phosphorylation site of NtrC,a protein phosphatase whose covalent intermediate activates transcription.Journal of Bacteriology.174 (15):5117-22)、および細菌の走化性(Sanders et al.1989;Identification of the site of phosphorylation of the chemotaxis response regulator protein,CheY;The Journal of Biological Chemistry.264(36):21770-8)を含む、重要な細胞過程を制御することが知られているためである。細菌では、これらのタンパク質は通常、特定の環境刺激を感知するヒスチジンキナーゼと;主に標的遺伝子の異なる発現を通じて細胞応答を仲介する対応する応答レギュレータードメイン(PF00072)と、からなる。しかしながら、光合成生物では、SGI2遺伝子は対応する応答レギュレータードメイン(PF00072)を含むが、二成分系の他のドメインを欠いている。
【0075】
SGI1遺伝子の概略図を
図2Aに示し、対応するタンパク質の概略図を
図2Bに示す。
【0076】
例示的なParachlorellaのSGI2遺伝子配列は、配列番号4として提供され、応答レギュレータードメイン(配列番号6)を含むポリペプチド(配列番号5)をコードすることが判明した。
【0077】
様々な光合成生物における例示的なオルソロガスポリペプチド配列を、下表3に以下に示す。
【0078】
(表3)様々な光合成生物におけるオルソロガスSGI2配列
【0079】
例示的なParachlorellaのSGI2 cDNA配列は、配列番号7として提供される。他の光合成生物におけるSGI2遺伝子のオルソロガスcDNA配列を以下の表4に示す。
【0080】
(表4)他の光合成生物におけるSGI2遺伝子のオルソロガスcDNA配列
【0081】
いくつかの実施形態では、光合成生物のSGI2ポリペプチドは、配列番号6と少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95パーセント同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、光合成生物のSGI2ポリペプチドは、配列番号5、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、または56の少なくとも100、150、200、250個のアミノ酸と、またはこれらの全長と少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95パーセント同一であるアミノ酸配列を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、光合成生物は、ポリヌクレオチドの核酸配列が、配列番号4、7、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、または67の少なくとも100、150、200、250個のヌクレオチドと、またはこれらの全長と少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95パーセント同一である、SGI2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、藻類種などの光合成生物におけるSGI2遺伝子の変異、減弱化、またはノックアウトなどのSGI2遺伝子の調節が、光化学系IIの光化学の最大量子収率(Fv/FM)を(約10~14%分)増加させ、全有機炭素(TOC)あたりのクロロフィルを減少させ、バイオマスを増加させた。
【0084】
SPR54遺伝子
SPR54遺伝子の調節は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0304896号に記載されている。例示的なParachlorella葉緑体SRP54(cpSRP54)cDNA配列は、配列番号68を有するポリペプチドをコードする配列番号8として提供される。
【0085】
他の非限定的な例示的cpSRP54オルソログポリペプチドとしては、GenBank受託番号:Chlamydomonas reinhardtii(配列番号75)ではEDP00260;Micromonas pusilla(配列番号76)ではEEH59526;Micromonas種(配列番号77)ではEEH59526;ビンカムリ(Paulinella chromatophora)(配列番号78)ではACB42577;Ostreococcus lucimarinus(配列番号79)ではABO94038;オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号80)ではQ01H03;Volvox carteri(配列番号81)ではEFJ41797;フェオダクチラム・トリコルヌタム(Phaeodactylum tricornutum)(配列番号82)ではEEC48599;タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号83)ではEED94755;オーレオコッカス・アノファージフェレンス(Aureococcus anophagefferens)(配列番号84)ではEGB12501;シオミドロ(Ectocarpus siliculosus)(配列番号85)ではCBN76263が挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、光合成生物のcpSRP54遺伝子は、上記に開示されたcpSRP54と少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性であるポリペプチドをコードする。
【0087】
光合成生物のSGI2の調節、SGI1とSRP54との組み合わせ、SGI2とSRP54遺伝子との組み合わせ、または光合成生物のSGI1、SGI2、およびSRP54遺伝子の組み合わせ。
【0088】
光合成生物のSGI2の調節、SGI1とSRP54との組み合わせ、SGI2とSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI1、SGI2、およびSRP54遺伝子の組み合わせは、変異体光合成生物をもたらす。SGI1、SGI2、SRP54遺伝子は、UV変異誘発、ガンマ線照射、または遺伝子編集技術によって調節することができる。遺伝子配列を変更することができ、遺伝子配列を部分的または完全に欠失することができ、遺伝子の発現を変更することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、SGI1、SGI2、および/またはSRP54遺伝子は、その全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第2017/0058303号に記載されるように、藻類プロモーターおよびターミネーター配列に作動可能に連結され得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物、例えば植物、藻類は、対照細胞に対して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%の総クロロフィルの減少を有し、任意でさらに、変異体は、少なくとも対照細胞に対して増加したクロロフィルbに対するクロロフィルaの比率を有し、さらに任意で、クロロフィルbに対するクロロフィルaの比は、少なくとも約2.8:1、少なくとも約3:1、少なくとも約3.2:1、約3.3:1、少なくとも約3.5:1、少なくとも約3.7:1、少なくとも約3.9:1、少なくとも約4:1、または少なくとも約4.3:1である。
【0091】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物、例えば、植物または藻類は、以下を呈する:
(a)約100~約2800μmol光子m-2秒-1、約150~約2800μmol光子m-2秒-1、約75~約2800μmol光子m-2秒-1、約40~約2800μmol光子m-2秒-1、または約10~約2800μmol光子m-2秒-1の全ての放射照度において、同じ種の対照光合成生物に対して、より高いqP;
(b)約100~約2800μmol光子m-2秒-1、約150~約2800μmol光子m-2秒-1、約75~約2800μmol光子m-2秒-1、約40~約2800μmol光子m-2秒-1、または約10~約2800μmol光子m-2秒-1の全ての放射照度において、対照藻類に対して、より低いNPQ;
(c)約100~約2800μmol光子m-2秒-1、約150~約2800μmol光子m-2秒-1、約75~約2800μmol光子m-2秒-1、約40~約2800μmol光子m-2秒-1、または約10~約2800μmol光子m-2秒-1の全ての放射照度において、光合成生物、例えば藻類に対して、より高いY(II);
(d)約100~約2800μmol光子m-2秒-1、約150~約2800μmol光子m-2秒-1、約75~約2800μmol光子m-2秒-1、約40~約2800μmol光子m-2秒-1、または約10~約2800μmol光子m-2秒-1の対照藻類に対するより高いFv/FM;
(e)約250~約2800μmol光子m-2秒-1、約150~約2800μmol光子m-2秒-1、約75~約2800μmol光子m-2秒-1、約40~約2800μmol光子m-2秒-1、または約10~約2800μmol光子m-2秒-1の対照藻類に対するより高いESR(II);
(f)対照藻類に対して、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%分増加した、クロロフィルに基づく酸素発生;および
(g)同じ種の対照光合成生物に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%分増加した、クロロフィルに基づく炭素固定。
【0092】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物は、同一条件下で培養された対照藻類よりも、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも8%、または少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、または少なくとも30%大きいバイオマス生産性を示す。
【0093】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物、例えば、植物、藻類は、自然光を模倣する可変光強度を有する日周サイクル培養において、対照の藻類に対してより高い生産性を示し、任意で、光強度は、約1900~約2000μmol光子m-2秒-1でピークに達する。
【0094】
いくつかの実施形態では、変異体光合成生物、例えば植物または藻類は、より高い脂質生産性、例えば、変更または減弱された遺伝子(複数可)を有さない同じ種の対照光合成生物に対して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%高い脂質生産性を有する。
【0095】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本出願が優先する。文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、およびその他の参考文献は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、あらゆる目的でその全体が参照により組み込まれる。
【0096】
本開示および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」はまた、文脈が明らかに他に指示しない限り、複数形も含む。
【0097】
本出願内で提供されるすべての範囲には、範囲の上限値および下限値が含まれる。
【0098】
本明細書で「Aおよび/またはB」などの句で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」、および「B」を含むことが意図される。
【0099】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドをコードする核酸分子(典型的には、DNAであるが、任意でRNA)または発現されたRNAの任意のセグメントを指すために広く使用される。したがって、遺伝子は、発現されたRNAをコードする配列を含む(これは、ポリペプチドコード配列または、例えば、リボソームRNA、tRNA、アンチセンスRNA、マイクロRNA、ショートヘアピンRNA、リボザイムなどの機能的RNAを含み得る)。遺伝子は、それらの発現に必要なまたは影響を与える制御配列、ならびに例えば、イントロン配列、5’または3’非翻訳配列などの、天然の状態のタンパク質またはRNAコード配列に関連する配列をさらに含み得る。いくつかの例では、「遺伝子」は、イントロンを含んでも含まなくてもよい、DNAまたはRNA分子のタンパク質をコードする部分のみを指してもよい。遺伝子は、好ましくは50ヌクレオチド超の長さ、より好ましくは100ヌクレオチド超の長さであり、例えば、50ヌクレオチド~500,000ヌクレオチドの長さ、例えば100ヌクレオチド~100,000ヌクレオチドの長さ、または約200ヌクレオチド~約50,000ヌクレオチドの長さ、または約200ヌクレオチド~約20,000ヌクレオチドの長さとすることができる。遺伝子は、対象とする供給源からのクローニング、または既知もしくは予測された配列情報からの合成など、様々な供給源から得ることができる。
【0100】
「核酸」または「核酸分子」という用語は、DNAまたはRNA(例えば、mRNA)のセグメントを指し、修飾された骨格鎖(例えば、ペプチド核酸、ロックド(locked)核酸)、または修飾された、もしくは天然に存在しない核酸塩基を有する核酸も含む。核酸分子は、二本鎖、部分的二本鎖、または一本鎖であり得、遺伝子またはその一部を含む一本鎖核酸は、コード(センス)鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る。
【0101】
核酸分子は、示された供給源「に由来する」ことができ、これには、示された供給源からの核酸セグメントの(全体的または部分的な)単離物が含まれる。核酸分子はまた、例えば、示されたポリヌクレオチド源からの、または示されたポリヌクレオチド源に関連する配列に基づく、直接クローニング、PCR増幅、または人工合成によって、示された供給源に由来し得る。特定の供給源または種に由来する遺伝子または核酸分子は、供給源の核酸分子に対して配列修飾を有する遺伝子または核酸分子も含む。例えば、供給源(例えば、特定の参照遺伝子)に由来する遺伝子または核酸分子は、意図しない、または意図的に導入された、供給源遺伝子または核酸分子に対して1つ以上の変異を含むことができ、置換、欠失、または挿入を含む、1つ以上の変異が意図的に導入される場合、配列の変更は、細胞もしくは核酸のランダムなもしくは標的化された変異によって、増幅もしくは他の遺伝子合成もしくは分子生物学技術によって、または化学合成によって、またはこれらの組み合わせによって導入することができる。機能的RNAもしくはポリペプチドをコードする参照遺伝子または核酸分子に由来する遺伝子または核酸分子は、参照された、または供給源の機能的RNAもしくはポリペプチドと、またはその機能的断片と、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を有する機能的RNAもしくはポリペプチドをコードすることができる。例えば、機能的RNAもしくはポリペプチドをコードする参照遺伝子または核酸分子に由来する遺伝子または核酸分子は、参照された、または供給源の機能的RNAもしくはポリペプチドと、またはその機能的断片と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する機能的RNAもしくはポリペプチドをコードすることができる。
【0102】
本明細書で使用される場合、「単離された」核酸またはタンパク質は、その天然の環境または核酸もしくはタンパク質が自然界に存在する状況から取り出されている。例えば、単離されたタンパク質または核酸分子は、それがその天然または自然環境で関連している細胞または生物から取り出されている。単離された核酸またはタンパク質は、場合によっては、部分的にまたは実質的に精製され得るが、単離のために特定のレベルの精製は必要とされない。したがって、例えば、単離された核酸分子は、染色体、ゲノム、またはエピソームから切り出された、自然界では組み込まれている核酸配列であり得る。
【0103】
「精製された」核酸分子もしくはヌクレオチド配列、またはタンパク質もしくはポリペプチド配列は、細胞物質および細胞成分を実質的に含まない。精製された核酸分子またはタンパク質は、例えば、緩衝液または溶媒以外の化学物質を実質的に含まなくてもよい。「実質的に含まない」は、新規の核酸分子以外の他の成分が検出不可能であることを意味することを意図しない。
【0104】
「天然に存在する」および「野生型」という用語は、自然に見られる形態を指す。例えば、天然に存在する、または野生型の核酸分子、ヌクレオチド配列またはタンパク質は、天然源からの単離物中に存在する可能性があり、ヒトの操作によって意図的に改変されていない。
【0105】
本明細書で使用される「減弱化された」とは、量、程度、強度、または強さの低下を意味する。減弱化された遺伝子発現は、問題になっている遺伝子の転写、またはコードされたタンパク質の翻訳、折りたたみ、またはアセンブリの大幅に減少した量および/または速度を指すことができる。非限定的な例として、減弱化遺伝子は、遺伝子調節配列の変更または破壊により発現が低下した、変異または破壊された遺伝子(例えば、部分的もしくは完全な欠失、切断、フレームシフト、または挿入変異により破壊された遺伝子)であり得るか、または例えば、アンチセンスRNA、マイクロRNA、RNAi分子、またはリボザイムなどの、遺伝子の発現を低下させる構築物によって標的とされる遺伝子であり得る。
【0106】
「外因性核酸分子」または「外因性遺伝子」は、細胞に導入された(「形質転換を起こす」)核酸分子または遺伝子を指す。形質転換細胞は、組換え細胞と呼ばれてもよく、その中に追加の外因性遺伝子(複数可)が導入され得る。核酸分子で形質転換された細胞の子孫は、それが外因性核酸分子を受け継いでいる場合、「形質転換された」とも称される。外因性遺伝子は、形質転換される細胞と比較して、異なる種から(したがって「異種」)、または同じ種から(したがって「相同」)であってもよい。「内因性」核酸分子、遺伝子またはタンパク質は、それが宿主で発生するか、または宿主によって天然に産生されるため、天然の核酸分子、遺伝子またはタンパク質である。
【0107】
「天然の」という用語は、本明細書では、宿主で自然に発生する核酸配列またはアミノ酸配列を指すために使用される。「非天然の」という用語は、本明細書では、宿主で自然に発生しない核酸配列またはアミノ酸配列を指すために使用される。細胞から取り出され、実験室で操作され、宿主細胞に導入または再導入された核酸配列またはアミノ酸配列は、「非天然」と見なされる。宿主細胞に導入される合成または部分的合成遺伝子は「非天然」である。非天然の遺伝子はさらに、宿主ゲノムに組換えられている1つ以上の異種制御配列に作動可能に連結された、宿主微生物に対して内因性の遺伝子を含む。
【0108】
「組換え」または「操作された」核酸分子は、ヒトの操作によって変更された核酸分子である。非限定的な例として、組換え核酸分子は、以下のいずれかの核酸分子を含む:(1)例えば、化学的または酵素的手法を使用して(例えば、核酸分子の化学的核酸合成の使用により、またはインビトロで部分的もしくは完全に合成または修飾されている、または核酸の複製、重合、消化(エキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼによる)、ライゲーション、逆転写、転写、塩基修飾(例えば、メチル化を含む)、組込み、組換え(相同組換えおよび部位特異的組換えを含む)の使用により)、インビトロで部分的もしくは完全に合成もしくは修飾された核酸分子;(2)本来結合していない結合ヌクレオチド配列を含む核酸分子;(3)天然に存在する核酸分子配列に対して1つ以上のヌクレオチドを欠くように分子クローニング手法を使用して操作された核酸分子;および/または(4)天然に存在する核酸配列に対して1つ以上の配列変化または再構成を有するように分子クローニング手法を使用して操作された核酸分子。非限定的な例として、cDNAは、インビトロポリメラーゼ反応(複数可)によって生成された、またはリンカーが結合された、またはクローニングベクターもしくは発現ベクターなどのベクターに組み込まれた任意の核酸分子と同様に、組換えDNA分子である。
【0109】
本明細書で使用される「組換えタンパク質」という用語は、遺伝子編集によって生成されたタンパク質を指す。
【0110】
生物に適用される場合、組換え、操作された、または遺伝子操作された、という用語は、異種または外因性の組換え核酸配列の生物への導入によって操作された生物を指し、遺伝子ノックアウト、標的変異、遺伝子置換、およびプロモーター置換、欠失、または挿入、ならびに生物への導入遺伝子または合成遺伝子の導入が挙げられる。組換えまたは遺伝子操作された生物はまた、遺伝子「ノックダウン」のための構築物が導入された生物であり得る。このような構築物には、RNAi、マイクロRNA、shRNA、siRNA、アンチセンス、およびリボザイム構築物が挙げられるが、これらに限定されない。また、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、またはCas/CRISPR系の活性によって、それらのゲノムが変更された生物も挙げられる。外因性または組換え核酸分子は、組換え/遺伝子操作された生物のゲノムに組み込むことができ、または他の例では、宿主ゲノムに組み込まれなくてもよい。本明細書で使用される場合、「組換え微生物」または「組換え宿主細胞」は、本発明の組換え微生物の子孫または派生物を含む。変異または環境の影響により後継世代で特定の変更が発生する可能性があるため、このような子孫または派生物は、実際には親細胞と同一ではない場合があるが、本明細書で使用される用語の範囲内になお含まれる。
【0111】
「プロモーター」という用語は、細胞内でRNAポリメラーゼに結合し、下流(3’方向)のコード配列の転写を開始することができる核酸配列を指す。プロモーターには、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで転写を開始するために必要な最小数の塩基またはエレメントが含まれている。プロモーターは、転写開始部位、ならびにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)を含み得る。真核生物のプロモーターは、多くの場合、いつもそうとは限らないが、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含有する。原核生物プロモーターは、-10および-35の原核生物プロモーターコンセンサス配列を含み得る。様々な異なる供給源からの構成的、誘導性および抑制性プロモーターを含む多数のプロモーターが当技術分野において周知である。代表的な供給源には、例えば、藻類、ウイルス、哺乳動物、昆虫、植物、酵母、および細菌の細胞型が含まれ、これらの供給源からの適切なプロモーターは、容易に入手可能であるか、またはオンラインで公開されている配列に基づいて、または例えば、ATCCなどの受託機関ならびにその他の商業的もしくは個別の供給源から合成的に作製することができる。プロモーターは、単方向性(一方向に転写を開始する)または双方向性(いずれかの方向に転写を開始する)であり得る。プロモーターは、構成的プロモーター、抑制性プロモーター、または誘導性プロモーターであり得る。プロモーター領域は、RNAポリメラーゼが結合して転写を開始する遺伝子近位プロモーターに加えて、遺伝子の転写開始部位の1kb、2kb、3kb、4kb、5kb以上の範囲内にあり得る遺伝子の上流の追加の配列を含むことができ、この追加の配列は、下流遺伝子の転写の速度に影響を及ぼし得、任意で、発生的、環境的、または生化学的(例えば、代謝)条件に対するプロモーターの応答性に影響を及ぼし得る。
【0112】
「異種」という用語は、ポリヌクレオチド、遺伝子、核酸、ポリペプチド、または酵素に関して使用される場合、宿主生物種以外の供給源からであるかまたはそれに由来する、ポリヌクレオチド、遺伝子、核酸、ポリペプチド、または酵素を指す。対照的に、「相同な」ポリヌクレオチド、遺伝子、核酸、ポリペプチド、または酵素は、宿主生物種に由来する、ポリヌクレオチド、遺伝子、核酸、ポリペプチド、または酵素を表すために本明細書で使用される。遺伝子制御配列または遺伝子配列の維持もしくは操作に使用される補助核酸配列(例えば、プロモーター、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、ポリA付加配列、イントロン配列、スプライス部位、リボソーム結合部位、内部リボソーム進入配列、ゲノム相同領域、組換え部位など)に言及する場合、「異種」とは、制御または補助核酸配列が、構築物、ゲノム、染色体、またはエピソーム中に並置されている遺伝子と、制御配列または補助配列が自然に関連していないことを意味する。したがって、その天然の状態で(すなわち、非遺伝子操作生物のゲノムで)作動可能に連結されていない遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターは、本明細書では、プロモーターが、それが連結されている遺伝子と同じ種に(または、場合によっては、同じ生物に)由来する場合であっても、「異種プロモーター」と称される。
【0113】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を包含することを意図し、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結されたモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖(単数または複数)を指し、産物の特定の長さを指すものではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つ以上のアミノ酸の鎖(単数または複数)を指すために使用される何らかの他の用語は、「ポリペプチド」の定義に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはこれらの用語のいずれかと互換的に使用することができる。
【0114】
本明細書において遺伝子または種の名称の後ろの括弧内に一般的に提供される遺伝子またはタンパク質の受託番号は、合衆国国立衛生研究所によって維持される国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information )(NCBI)のウェブサイト(ncbi.nlm.nih.gov)で公開されている配列レコードの独自の識別子である。「GenInfo識別子」(GI)配列同定番号は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列に特有である。配列が何らかの形で変更されると、新しいGI番号が割り当てられる。配列改訂履歴ツールは、特定のGenBankレコードに表示される配列の様々なGI番号、バージョン番号、および更新日を追跡するために利用可能である。受託番号およびGI番号に基づく核酸もしくは遺伝子配列またはタンパク質配列の検索および取得は、例えば、細胞生物学、生化学、分子生物学、および分子遺伝学の技術分野において周知である。
【0115】
本明細書で使用される場合、核酸またはポリペプチド配列に関する「同一性パーセント」または「相同性」という用語は、最大相同性パーセントを達成するために、配列を最大同一性パーセントに整列させ、必要に応じてギャップを導入した後の、既知のポリペプチドと同一である候補配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセントとして定義される。N末端またはC末端の挿入または欠失は、相同性に影響を与えると解釈されるべきではなく、ポリペプチド配列に対する約30個未満、約20個未満、または約10個未満のアミノ酸残基の内部欠失および/または挿入は、相同性に影響を与えると解釈されるべきではない。ヌクレオチドまたはアミノ酸配列レベルでの相同性もしくは同一性は、配列類似性検索用に適合された、プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxによって利用されるアルゴリズムを使用したBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)分析(Altschul(1997),Nucleic Acids Res.25,3389-3402,and Karlin(1990),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,2264-2268)分析によって決定することができる。BLASTプログラムによって使用されるアプローチは、まず類似しているセグメントについて、クエリ配列とデータベース配列の間のギャップの有無を検討し、その後、特定されたすべての一致の統計的有意性を評価し、最後に予め選択された有意性の閾値に適合するそうした一致のみを集計することである。配列データベースの類似性検索における基本的な問題の解説に関しては、Altschul(1994),Nature Genetics6,119-129を参照されたい。ヒストグラム、説明、アライメント、期待値(すなわち、データベース配列に対する一致を報告するための統計的有意性の閾値)、カットオフ、マトリックス、およびフィルター(低複雑性)の検索パラメータは、デフォルト設定にすることができる。blastp、blastx、tblastn、およびtblastxによって利用されるデフォルトのスコア行列は、BLOSUM62行列(Henikoff(1992),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,10915-10919)であり、長さが85を超えるクエリ配列(ヌクレオチド塩基またはアミノ酸)において推奨される。
【0116】
ヌクレオチド配列を比較するために設計されたblastnの場合、スコア行列は、M(すなわち、一致する残基のペアのリワードスコア)とN(すなわち、一致しない残基のペナルティスコア)との比によって設定され、MおよびNのデフォルト値は、それぞれ+5および-4であり得る。4つのblastnパラメータは、以下のように調整することができる:Q=10(ギャップ作成ペナルティ);R=10(ギャップ伸長ペナルティ);wink=1(クエリに沿ってwink番目の位置ごとにワードヒットを生成する);およびgapw=16(ギャップを含むアライメントを生成する範囲内のウィンドウ幅を設定する)。アミノ酸配列を比較するための同等のBlastpパラメータ設定は、Q=9、R=2、wink=1、およびgapw=32であり得る。GCGパッケージバージョン10.0で利用可能な配列間のBestfit比較では、DNAパラメータGAP=50(ギャップ作成ペナルティ)およびLEN=3(ギャップ伸長ペナルティ)を使用することができ、タンパク質比較での同等の設定は、GAP=8およびLEN=2である。
【0117】
したがって、本発明のポリペプチドまたは核酸配列に言及する場合、完全長ポリペプチドもしくは核酸配列との、または全タンパク質のうち少なくとも50個、少なくとも75個少なくとも100個、少なくとも125個、少なくとも150個以上のアミノ酸残基の連続配列を含むその断片との、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の配列同一性が含まれ;例えば、挿入および置換を含む開示された配列(複数可)に対してN末端側におよび/もしくはC末端側にならびに/またはその中に少なくとも1つのアミノ酸残基が挿入されている、そのような配列の変異体が含まれる。企図される変異体としては、追加的にまたは代替的に、例えば、相同組換えまたは部位特異的もしくはPCR変異誘発による所定の変異を含有するもの、および本明細書に記載されているものを含むがこれらに限定されない他の種の対応するポリペプチドもしくは核酸、または挿入および置換を含有するポリペプチドもしくは核酸のファミリーの対立遺伝子または他の天然に存在する変異体、および/または挿入および置換を含む天然アミノ酸以外の部分(例えば、酵素などの検出可能な部分)で、ポリペプチドが置換、化学的、酵素的、または他の適切な手段によって、共有結合的に修飾されている誘導体を挙げることができる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」または「保存的変異」という語句は、1つのアミノ酸の、共通の特性を有する別のアミノ酸による置き換えを指す。個々のアミノ酸間の共通の特性を定義する機能的な方法は、相同生物の対応するタンパク質間のアミノ酸変化の正規化された頻度を分析することである(Schulz(1979)Principles of Protein Structure,Springer-Verlag)。このような分析に従って、群内のアミノ酸が互いに優先的に交換され、従って、全体的なタンパク質構造に対する影響において互いに最も似ているアミノ酸の群が、定義され得る(Schulz(1979)Principles of Protein Structure,Springer-Verlag)。この方法で定義されたアミノ酸群の例として、Glu、Asp、Asn、Gln、Lys、ArgおよびHisを含む「荷電/極性群」;Pro、Phe、TyrおよびTrpを含む「芳香族または環状群」ならびにGly、Ala、Val、Leu、Ile、Met、Ser、ThrおよびCysを含む「脂肪族群」を挙げることができる。各群内に、亜群も同定され得る。例えば、荷電/極性アミノ酸の群は、Lys、ArgおよびHisを含む「正電荷を有する亜群」;GluおよびAspを含む「負電荷を有する亜群」およびAsnおよびGlnを含む「極性亜群」を含む亜群に細分され得る。別の例では、芳香族または環状群は、Pro、HisおよびTrpを含む「窒素環亜群」ならびにPheおよびTyrを含む「フェニル亜群」を含む亜群に細分され得る。別のさらなる例では、脂肪族群は、Val、LeuおよびIleを含む「大きな脂肪族の非極性亜群」;Met、Ser、ThrおよびCysを含む「脂肪族のわずかに極性の亜群」ならびにGlyおよびAlaを含む「小さい残基の亜群」を含む亜群に細分され得る。保存的な突然変異の例として、それだけには限らないが:正電荷が維持され得るようなLysのArgとの、または逆も同様;負電荷が維持され得るようなGluのAspとの、または逆も同様;遊離-OHが維持され得るようなSerのThrとの、または逆も同様;および遊離-NH2が維持され得るようなGlnのAsnとの、または逆も同様といった上記の亜群内のアミノ酸のアミノ酸置換が挙げられる。「保存的変異体」とは、参照ポリペプチド(例えば、配列が刊行物または配列データベースにおいて開示されているか、または配列が核酸シークエンシングによって決定されているポリペプチド)の1個または複数のアミノ酸を、共通の特性を有する、例えば、上記で描写されたような同一アミノ酸群または亜群に属するアミノ酸と置き換えるよう置換されている1つ以上のアミノ酸を含むポリペプチドである。
【0119】
本明細書で使用される場合、遺伝子を「調節する」または遺伝子の「調節」という用語は、遺伝子の核酸配列を変更し、遺伝子を完全にまたは部分的に欠失させ、遺伝子の断片化を引き起こし、遺伝子の発現を変更し、遺伝子の発現を阻害またはサイレンシングすることを指す。いくつかの実施形態では、遺伝子の配列の変更は、1つ以上のヌクレオチドの挿入、1つ以上のヌクレオチドの欠失、ヌクレオチドの置換による。配列の変更は、紫外線、ガンマ線、遺伝子編集によって達成することができる。
【0120】
本明細書で使用される場合、「遺伝子の発現を減弱化する」とは、完全に機能的なタンパク質の産生を減少させる任意の方法で、遺伝子の発現を減少または排除することを意味する。
【0121】
本明細書中で使用される場合、「発現」は、少なくともRNA産生のレベルでの遺伝子の発現を含み、「発現産物」は、得られた産物、例えば、発現された遺伝子の、ポリペプチドまたは機能的RNA(例えば、リボソームRNA、tRNA、アンチセンスRNA、マイクロRNA、shRNA、リボザイムなど)を含む。「発現の増加」という用語は、mRNA産生の増加および/またはポリペプチド発現の増加を促進するための遺伝子発現における変更を含む。「生産の増加」は、ポリペプチドの天然の生産または酵素活性と比較した場合の、ポリペプチド発現の量、ポリペプチドの酵素活性のレベル、または両方の組み合わせの増加を含む。
【0122】
本発明のいくつかの態様は、特定のポリヌクレオチド配列の発現の部分的、実質的、もしくは完全な欠失、サイレンシング、不活性化、またはダウンレギュレーションを含む。遺伝子は、酵素の活性など、それらがコードするポリペプチドによって行われる活性に影響を与えるために、遺伝子は、部分的、実質的、または完全に欠失され、サイレンシングされ、不活性化されるか、またはそれらの発現はダウンレギュレートされ得る。遺伝子は、遺伝子の機能および/または発現を破壊する核酸配列の挿入(例えば、ウイルス挿入、トランスポゾン変異誘発、メガヌクレアーゼエンジニアリング、相同組換え、または当技術分野において既知の他の方法)により、部分的、実質的、もしくは完全に欠失され、サイレンシングされ、不活性化され、またはダウンレギュレートされ得る。「排除する」、「排除する」、および「ノックアウト」という用語は、「欠失」、「部分的な欠失」、「実質的な欠失」、または「完全な欠失」という用語と互換的に使用することができる。ある特定の実施形態では、対象とする微生物は、特定の対象とする遺伝子をノックアウトするための部位特異的相同組換えによって操作され得る。さらに他の実施形態では、RNAiまたはアンチセンスDNA(asDNA)構築物を使用して、対象とする特定の遺伝子を部分的、実質的、または完全にサイレンシングし、不活性化し、またはダウンレギュレートすることができる。
【0123】
ある特定の核酸分子または特定のポリヌクレオチド配列のこれらの挿入、欠失、または他の改変は、「遺伝子改変(複数可)」または「形質転換(複数可)」を包含すると理解され得るので、得られた微生物または宿主細胞の株が、「遺伝子改変された」、「遺伝子操作された」または「形質転換された」と理解することができる。
【0124】
本明細書で使用される場合、「アップレギュレートされた」または「アップレギュレーション」は、アップレギュレートされていない、他の点では同一の遺伝子または酵素における発現または活性と比べた、対象とする遺伝子もしくは核酸分子の発現、または酵素活性の増加、例えば、遺伝子発現または酵素の活性の増加を含む。
【0125】
本明細書で使用される場合、「ダウンレギュレートされた」または「ダウンレギュレーション」は、ダウンレギュレートされていない、他の点では同一の遺伝子または酵素における発現または活性と比べた、対象とする遺伝子もしくは核酸分子の発現、または酵素活性の減少、例えば、遺伝子発現または酵素活性の減少を含む。
【0126】
本明細書で使用される場合、「変異体」は、天然に存在せず、例えば、ガンマ線照射、UV、または化学変異原を使用した古典的な変異誘発の結果として生じた、遺伝子に変異を有する生物を指す。本明細書で使用される「変異体」はまた、非限定的な例として、異なる時間的、生物学的、もしくは環境的制御下での、および/もしくは天然に生じるものとは異なる程度までの、遺伝子の発現、ならびに/または組換え細胞における天然には発現されない遺伝子の発現、を含む過剰発現;ノックアウトおよびノックインを含む相同組換え(例えば、野生型ポリペプチドよりも大きいまたは小さい活性を有するポリペプチドおよび/またはドミナントネガティブポリペプチドをコードする遺伝子による遺伝子置換);RNAi、アンチセンスRNA、またはリボザイムなどによる遺伝子減弱化;およびメガヌクレアーゼ、TALEN、および/またはCRISPR手法などを使用したゲノム編集、を挙げることができる、遺伝子編集の結果として遺伝子の構造または発現が変化した組換え細胞を指す。対象とする変異体生物は通常、変異を欠く対応する野生型または前駆株のものとは異なる表現型を有し、この表現型は、成長アッセイ、産物分析、光合成特性、生化学的アッセイなどによって評価することができる。遺伝子に言及する場合、「変異体」とは、その遺伝子が、天然のまたは野生型遺伝子に対して、少なくとも1つの塩基(ヌクレオチド)の変化、欠失、または挿入を有することを意味する。変異(1つ以上のヌクレオチドの変化、欠失、および/または挿入)は、遺伝子のコード領域にあり得るか、またはイントロン、3’UTR、5’UTR、もしくはプロモーター領域、例えば、転写開始部位の2kb以内、または翻訳開始部位の3kb以内にあり得る。非限定的な例として、変異体遺伝子は、遺伝子の発現を増加または減少させることができるプロモーター領域内に挿入を有する遺伝子とすることができ;欠失を有し、その結果、機能しないタンパク質、短縮型タンパク質、ドミナントネガティブタンパク質の産生、タンパク質の非産生をもたらす遺伝子とすることができ;コードされたタンパク質のアミノ酸の変化をもたらすか、または遺伝子転写物の異常なスプライシングなどを引き起こす1つ以上の点突然変異を有する遺伝子とすることができる。本明細書で使用される場合、「変異体」は、天然に存在せず、例えば、ガンマ線照射、UV、または化学変異原を使用した古典的な変異誘発の結果として生じた、遺伝子に変異を有する生物を指す。本明細書で使用される「変異体」はまた、非限定的な例として、異なる時間的、生物学的、または環境的制御下での、および/もしくは、天然に生じるものとは異なる程度までの、遺伝子の発現、ならびに/または組換え細胞における天然には発現されない遺伝子の発現、を含む過剰発現、を挙げることができる、遺伝子編集の結果として遺伝子の構造または発現が変化した組換え細胞を指す。
【0127】
「Pfam」という用語は、Pfamコンソーシアムによって維持され、Welcome Trust、Sanger Institute);pfam.sbc.su.se(Stockholm Bioinformatics Center;Janelia Farm,Howard Hughes Medical Institute;Institut national de la Recherche Agronomique)で利用可能なタンパク質ドメインおよびタンパク質ファミリーの多くの収集物を指す。Pfamの最新リリースは、UniProtタンパク質データベースリリース2012.06をベースとするPfam 27.0(2013年3月)である。Pfamドメインおよびファミリーは、多重配列アラインメントおよび隠れマルコフモデル(HMM)を使用して同定される。Pfam-Aファミリーまたはドメイン割り当ては、タンパク質ファミリーの代表的なメンバーを使用する精選されたシードアラインメントによって作製される高品質割り当てであり、シードアラインメントに基づいて隠れマルコフモデルをプロファイルする。(特に断りのない限り、Pfamドメインまたはファミリーに対するクエリされたタンパク質の一致は、Pfam-Aの一致である)。次いで、ファミリーに属するすべての同定された配列を使用して、ファミリーの全アラインメントを自動的に作製する(Sonnhammer(1998)Nucleic Acids Research26,320-322;Bateman(2000)Nucleic Acids Research26,263-266;Bateman(2004)Nucleic Acids Research32,Database Issue,D138-D141;Finn(2006)Nucleic Acids Research Database Issue34,D247-251;Finn(2010)Nucleic Acids Research Database Issue 38,D211-222)。例えば、上記の参考ウェブサイトのいずれかを使用してPfamデータベースにアクセスすることによって、HMMER相同性検索ソフトウェア(例えば、HMMER2、HMMER3、またはより高いバージョン)を使用して、タンパク質配列をHMMに対してクエリできる。クエリされたタンパク質を、pfamファミリーにあると(または特定のPfamドメインを有すると)同定する有意な一致は、ビットスコアがPfamドメインの収集閾値以上であるものである。期待値(e値)も、クエリされたタンパク質をPfam中に含めるための、またはクエリされたタンパク質が特定のPfamドメインを有するかどうかを決定するための基準として使用され得、低いe値(1.0よりもかなり低い、例えば、0.1未満または0.01以下)は、一致が偶然に起因する確率が低いことを表す。
【0128】
本明細書で使用される場合、「光合成生物」という用語は、光エネルギーを化学エネルギーに変換することができる生物を指す。いくつかの実施形態では、化学エネルギーは、後に放出されて、生物の活動を促進することができる(エネルギー変換)。いくつかの実施形態では、この化学エネルギーは、二酸化炭素と水とから合成される、糖などの炭水化物分子に貯蔵される。
【0129】
光合成生物の非限定的な例には、植物、藻類、およびシアノバクテリアが挙げられる。藻類の非限定的な例は、Achnanthes、Amphiprora、Amphora、Ankistrodesmus、Asteromonas、Boekelovia、Bolidomonas、Borodinella、Botrydium、Botryococcus、Bracteococcus、Chaetoceros、Carteria、Chlamydomonas、Chlorococcum、Chlorogonium、Chlorella、Chroomonas、Chrysosphaera、Cricosphaera、Crypthecodinium、Cryptomonas、Cyclotella、Dunaliella、Ellipsoidon、Emiliania、Eremosphaera、Ernodesmius、Euglena、Eustigmatos、Franceia、Fragilaria、Gloeothamnion、Haematococcus、Halocafeteria、Heterosigma、Hymenomonas、Isochrysis、Lepocinclis、Micractinium、Monodus、Monoraphidium、Nannochloris、Nannochloropsis、Navicula、Neochloris、Nephrochloris、Nephroselmis、Nitzschia、Ochromonas、Oedogonium、Oocystis、Ostreococcus、Pavlova、Parachlorella、Pascheria、Pelagomonas、Phaeodactylum、Phagus、Picochlorum、Platymonas、Pleurochrysis、Pleurococcus、Prototheca、Pseudochlorella、Pseudoneochloris、Pseudostaurastrum、Pyramimonas、Pyrobotrys、Scenedesmus、Skeletonema、Spyrogyra、Stichococcus、Tetraselmis、Thalassiosira、Tribonema、Vaucheria、Viridiella、Vischeria、およびVolvoxの属に属する。
【0130】
植物の非限定的な例としては、Arabidopsis arenicola、Arabidopsis arenosa、Arabidopsis cebennensis、Arabidopsis croatica、Arabidopsis halleri、Arabidopsis lyrata、Arabidopsis neglecta、Arabidopsis pedemontana、Arabidopsis suecica、Arabidopsis thaliana、Zea mays、Oryza sativa、Triticum aestivum、Solanum tuberosum、Allium cepa、Allium sativum、Glycine max、Solanum lycopersicum、Gossypium hirsutum、Gossypium herbaceum、Gossypium arboreum、Gossypium tomentosum、カラシナ(Brassica nigra)、およびアブラナ属(Brassica)の種が挙げられる。
【0131】
本明細書で使用される場合、「変異体光合成生物」または「変異体藻類」という用語は、少なくともSGI1、SGI2、SGI1とSRP54との組み合わせ、SGI2とSRP54との組み合わせ、またはSGI1、SGI2、およびSRP54の組み合わせ、が調節されている光合成生物または藻類を指す。このような調節には、核酸配列の変化または遺伝子(複数可)の発現の変更が挙げられる。
【0132】
本明細書中で使用される場合、SGI1とSRP54遺伝子との組み合わせの調節は、同じ光合成生物におけるSGI1の調節およびSRP54遺伝子の調節を指す。同様に、SGI2とSRP54遺伝子との組み合わせの調節は、同じ光合成生物におけるSGI2の調節およびSRP54遺伝子の調節を指す。同様に、SGI1、SGI2、およびSRP54遺伝子の組み合わせの調節は、同じ光合成生物におけるSGI1の調節、SGI2の調節、およびSRP54遺伝子の調節を指す。
【0133】
本明細書で使用する場合、対照光合成生物という用語は、対照光合成生物が、変異または減弱化されたSRP54、SGI1、SGI2、またはこれらの遺伝子の2つ以上の組み合わせを有さないことを除いては、変異体光合成生物に対して全ての関連する点で遺伝学的に実質的に同一である光合成生物を指す。例えば、対照光合成生物は、変異体に存在するcpSRP54、細胞質ゾルSRP54、SGI1、またはSGI2遺伝子を減弱化するための、cpSRP54、細胞質ゾルSRP54、SGI1、またはSGI2遺伝子もしくは構築物への変更を除いて同じ種のものであり、正常な繁殖による変異誘発の際に発生し得る細胞生理機能に影響を与えない小さなゲノム変化(例えば、「SNP」)を除いて、遺伝的に同一である。様々な実施形態では、対照光合成生物は、細胞質ゾルSRP54、cpSRP54、SGI1、SGI2、または少なくとも2つの遺伝子の組み合わせの、減弱化した発現を有する変異体光合成生物が由来する株である。
【0134】
藻類などの光合成生物に言及する場合、「弱光に順化する」という用語は、弱光条件において安定化するために、クロロフィルおよび光合成特性における変化に十分な時間、弱光強度に曝された後、光合成生物の増加したクロロフィルおよび光合成特性を有することを意味する。弱光は、例えば、200μE・m-2・秒-1未満、および好ましくは約100μE・m-2・秒-1以下または50μE・m-2・秒-1以下とすることができ、および順化のための期間は、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、または少なくとも約12時間、少なくとも24時間、または少なくとも48時間とすることができ、2、3、4、または5日程度に長くなってもよい。
【0135】
「cDNA」は、DNA分子が、mRNA配列に存在するウリジンすなわちUの代わりに、核酸塩基チミンすなわちTを置換することを除いて、mRNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部を含むDNA分子である。cDNAは、二本鎖または一本鎖であり得、例えば、mRNA配列の相補体であり得る。好ましい例では、cDNAは、cDNAが相応する天然に存在する遺伝子(すなわち、生物のゲノムに存在する遺伝子)に存在する1つ以上のイントロン配列を含まない。例えば、cDNAは、天然に存在する遺伝子のイントロンの下流の配列に並置される、天然に存在する遺伝子のイントロンの上流からの配列を有することができ、上流および下流配列は、自然界ではDNA分子内に並置されない(すなわち、天然に存在する遺伝子では、配列は並置されない)。cDNAは、mRNA分子の逆転写によって生成することができるか、または、例えば、化学合成によって、および/またはcDNA配列の知識に基づいて、化学的合成によって、および/もしくは、1つ以上の制限酵素、1つ以上のリガーゼ、1つ以上のポリメラーゼ(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で使用され得る高温耐性ポリメラーゼを含むが、これらに限定されない)、1つ以上のリコンビナーゼなどを使用することによって、合成することができ、cDNA配列の知識は、任意で、ゲノム配列からのコード領域の識別に基づくか、または多数の部分的cDNAの配列からコンパイルされ得る。
【0136】
「弱光順化で制限緩和された」藻類変異体(または「強光順化でロックされた」またはLIHLA変異体)は、クロロフィルの実質的な増加および集光性複合体タンパク質(LHCP)遺伝子の大部分の発現における実質的な増加を含む、弱光順化野生型藻細胞に特徴的な表現型および遺伝子発現における変化を示さない変異体である。弱光順化で調節緩和された藻類変異体は、弱光に順化すると、野生型細胞の弱光順化中にアップレギュレートされている多数の遺伝子(例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、または少なくとも50個の遺伝子)について、弱光順化された野生型細胞に対して、発現の減少を有する。さらに、弱光順化で制御緩和された藻類変異体は、野生型細胞の弱光順化中にダウンレギュレートされている遺伝子(例えば、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個の遺伝子)の、弱光順化された野生型細胞に対して、発現の増加を有する。さらに、本明細書に開示されるように、弱光順化で制御緩和された藻類変異体は、変異体および野生型細胞の両方が弱光に順化されるとき、野生型細胞の光合成特性とは著しく異なる光合成特性を有する可能性がある。
【0137】
「光合成特性」、「光合成特性」、「光生理学的特性」、または「光生理学的パラメータ」には、最大光合成速度、Pmax(細胞あたりまたはクロロフルに基づいて計算)、光合成が飽和する強度、酸素発生によって測定されるようなEk、およびα(「アルファ」)、光合成(酸素の発生)対放射照度(P/I)曲線の初期勾配が挙げられるが、これらに限定されない。追加の光合成特性は、例えば、光化学系IIにおける光化学の最大量子収率、FV/FM;光化学系II(PSII)の光合成量子収率、φPSII;光化学的消光、または開いたPSII中心の比率、qP;非光化学的消光、NPQ;PSII電子輸送速度、ETRPSII;PSI電子輸送速度、ETRPSI;PSIの機能的吸収断面サイズ(σPSI)、およびPSIIの機能的吸収断面積(σPSII)が挙げられる、蛍光検出を使用して測定され得る様々なパラメータが含まれる。ここでの列挙は完全に網羅しているわけではなく、用語は光合成の様々な態様を測定する他のパラメータを除外するものではない。
【0138】
「実質的に同じ」である特性への言及は、特性が基準値の10%以内、好ましくは5%以内であることを意味することを意図している。
【0139】
本明細書に記載のものと同様もしくは同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。材料、方法、および例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【0140】
遺伝子の減弱化
変異体光合成生物は、UV照射、ガンマ線照射、または化学的変異誘発を含むがこれらに限定されない任意の実行可能な方法によって、および本明細書に開示された光合成特性を有する低クロロフィル変異体をスクリーニングすることによって生成された変異体であり得る。微生物株の変異体を生成する方法は、周知である。変異体は、例えば、ゲノム配列決定、PCR、cpSRP54またはcytoSRP54タンパク質の免疫検出、および発現分析(例えば、逆転写/PCR)を含む、当該分野において既知の公知の方法によって同定され得る。
【0141】
本明細書で提供される変異体光合成生物は、例えば、ノックアウトまたは遺伝子置き換えのために相同組換えによって標的とされた(例えば、野生型ポリペプチドに対して低下した活性を有するポリペプチドをコードし得る遺伝子の変異型を用いて)、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54との組み合わせにおいて、遺伝子操作されることもできる。さらなる例では、対象とする藻類株を部位特異的相同組換えによって操作して、プロモーターなどの発現制御配列と共に、またはプロモーターを伴わずに、特定の対象とする遺伝子を特定のゲノム遺伝子座に挿入するか、あるいはプロモーターを宿主微生物の遺伝子座に挿入して、遺伝子座での特定の遺伝子または遺伝子セットの発現に影響を与えることができる。
【0142】
例えば、相同組換えによる遺伝子ノックアウトまたは置き換えは、変更されるべきゲノムの領域に相同な配列を含む核酸(例えば、DNA)断片による形質転換によるものであり得、ここで、相同配列は外来配列、典型的には、組み込まれた構築物の選択を可能にする選択可能マーカー遺伝子により中断されている。外来配列または変異遺伝子配列のいずれかの側のゲノム相同フランキング配列は、例えば、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000、少なくとも1,200、少なくとも1,500、少なくとも1,750、または2,000ヌクレオチドの長さとすることができる。外来配列が標的遺伝子配列に隣接している遺伝子ノックアウトまたは遺伝子「ノックイン」構築物は、例えば相同組換えを受ける領域の外側に、任意で線状化することができるベクターで提供することができるか、または、ベクターに関連しない線状断片として提供されることができ、例えば、ノックアウトまたはノックイン構築物は、PCR産物を含むがこれに限定されない、単離または合成された断片であり得る。場合によっては、スプリットマーカーシステムを使用して、相同組換えによって遺伝子ノックアウトを生成することができ、ここでは、選択可能マーカーを再生成し、かつ3つのクロスオーバーイベントを介して対象とする遺伝子座を破壊することができる2つのDNA断片が導入される(Jeong et al.(2007)FEMS Microbiol Lett273:157-163)。
【0143】
一態様では、本発明は、遺伝子改変生物、例えば、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせの発現を減弱化するための1つ以上の遺伝子改変を有する微生物を提供する。本明細書で使用される場合、「SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせの発現を減弱化する」とは、1つ以上の上記の遺伝子の発現を、完全に機能的なタンパク質の産生を低減させる任意の方法で低下または排除することを意味する。
【0144】
例えば、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせの、減弱化された発現を有するように操作された組換え光合成生物は、破壊されたSGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせを有することができ、ここでは、組換え微生物は、完全に機能的なSGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子、もしくはcytoSRP54遺伝子との組み合わせが産生されないか、または同じ種の対照光合成生物によって産生されるものよりも低い量で産生されるように、遺伝子の発現を低減または無効にし、少なくとも1つの挿入、変異、または欠失を含む、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせを有することができる。破壊されたSGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、SGI2とcpSRP54、もしくはcyとSRP54遺伝子との組み合わせは、例えば、相同組換えによって、および/またはメガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Perez-Pinera et al.(2012)Curr.Opin.Chem.Biol.16:268-277)、TALEN(WO2014/207043;WO 2014/076571)、またはCRISPR系のcasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)などのRNAガイドエンドヌクレアーゼの活性によって媒介される挿入または遺伝子置き換えよって破壊することができる。
【0145】
Hsuらによって最近検討されたCRISPR系(Cell157:1262-1278,2014)は、Casヌクレアーゼポリペプチドまたは複合体に加えて、標的部位配列との相補性によってゲノム標的部位と相互作用する、(しばしば「crRNA」と呼ばれる)標的指向RNA;Casポリペプチドと複合体を形成し、かつ標的指向crRNAと(相補性によって)結合する領域もまた含む、トランス活性化(「tracr」)RNAを含む。
【0146】
本発明は、ゲノム編集のためにcasタンパク質を発現するか、またはcasタンパク質をトランスフェクトされる宿主株を同時形質転換し得る(または宿主株において発現され得る)2つのRNA分子(「crRNA」および「tracrRNA」)の使用、または標的配列に相補的な配列ならびにcasタンパク質と相互作用する配列を含む単一のガイドRNAの使用を企図する。すなわち、一部の戦略では、本明細書で使用されるCRISPR系は、2つの別々のRNA分子(RNAポリヌクレオチド:「tracr-RNA」;および「標的指向型(targeter)RNA」または「crRNA」。以下を参照されたい。)を含み、本明細書では、「二重分子DNA標的指向RNA」または「二分子DNA標的指向RNA」と称することができる。あるいは、実施例に示されているように、DNA標的指向RNAは、(標的に対して相同な(「cr」)配列に加えて)Casタンパク質との相互作用のためのトランス活性化配列も含めることができ、すなわち、DNA標的指向RNAは、単一RNA分子(単一RNAポリヌクレオチド)とすることができ、本明細書中で「キメラガイドRNA」、「単一ガイドRNA」または「sgRNA」として称される。「DNA標的指向RNA」および「gRNA」という用語は包括的であり、二重分子DNA標的指向RNAおよび単一分子DNA標的指向RNA(すなわちsgRNA)の両方を指す。単一分子ガイドRNAおよび2つのRNAシステムの両方は、文献に、および例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第US 2014/0068797号に詳細に記載されている。
【0147】
本明細書の方法では、任意のCasタンパク質、例えば、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらの相同体、またはそれらの修飾されたバージョンを使用することができる。いくつかの実施形態では、Casタンパク質はクラスII Casタンパク質である。Casタンパク質は、非限定的な例として、スタフィロコッカス・ピオゲネス(Staphylococcus pyogenes)、S.サーモフィラス(S.thermophilus)、S.ニューモニエ(S.pneumonia)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、または髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)のCas9タンパク質などのCas9タンパク質であり得る。他の対象とするCasタンパク質としては、Cpf1 RNA誘導エンドヌクレアーゼ(Zetsche et al.(2015)Cell 163:1-13)ならびにC2c1、C2c2、C2c3 RNA誘導ヌクレアーゼ(Shmakov et al.(2015)Molecular Cell60:1-13)が挙げられる。米国特許出願公開第US2014/0068797号において配列番号1~256および795~1346として提供されるCas9タンパク質、ならびに複数のCas9タンパク質からのドメインを組み合わせることができるキメラCas9タンパク質、ならびに識別されたcas9タンパク質のバリアントおよび変異体もまた考慮される。(例えば、宿主細胞に導入された核酸分子によってコードされるCas9タンパク質は、野生型Cas9タンパク質に関して少なくとも1つの変異を含むことができ;例えば、Cas9タンパク質は、タンパク質の切断ドメインの1つで不活性化され、「ニッカーゼ」バリアントをもたらす。変異の非限定的な例には、D10A、H840A、N854A、およびN863Aが挙げられる。Casタンパク質をコードする核酸配列は、対象とする宿主細胞用にコドン最適化され得る。
【0148】
Casヌクレアーゼ活性は、標的DNAを切断して二本鎖切断を生成する。これらの切断は、2つの方法:非相同末端結合または相同組換え修復のうちの1つで細胞によって修復される。非相同末端結合(NHEJ)では、二重鎖切断は、切断末端を互いに直接ライゲーションすることによって修復される。この場合、一部の核酸物質が失われるが、新しい核酸物質がその部位に挿入されることはなく、欠失または変更がもたらされ、多くの場合変異が生じる。相同組換え修復では、切断された標的DNA配列と相同性を有し得るドナーポリヌクレオチド(「ドナーDNA」または「編集DNA」として称されることもある)は、切断された標的DNA配列を修復するためのテンプレートとして使用され、ドナーポリヌクレオチドから標的DNAへの遺伝情報の伝達をもたらす。そのため、新しい核酸物質を部位に挿入/コピーすることができる。NHEJおよび/または相同組換え修復による標的DNAの改変(例えば、ドナーDNA分子を使用して)は、例えば、遺伝子修正、遺伝子置き換え、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、遺伝子変異などをもたらし得る。
【0149】
場合によっては、部位特異的修飾ポリペプチド(例えば、Casヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、またはTALEN)によるDNAの切断は、標的DNA配列を切断し、外因的に提供されたドナーポリヌクレオチドの非存在下で細胞が配列を修復できるようにすることにより、標的DNA配列から核酸物質を欠失させるために使用され得る。このようなNHHEJ事象は、切断された末端の再結合の部位での変異(「誤修復」)を引き起こす可能性があり、それが遺伝子破壊を引き起こす可能性がある。
【0150】
あるいは、DNA標的指向RNAが、ドナーDNAと共にcasヌクレアーゼを発現する細胞に同時に施与される場合、主題の方法は、核酸物質を標的DNA配列に付加、すなわち挿入または置き換えることができる(例えば、挿入変異誘発による「ノックアウト」、またはタンパク質(例えば、選択可能マーカーおよび/または対象とする任意のタンパク質)をコードする核酸、siRNA、miRNAなどの「ノックイン」により、核酸配列を改変する(例えば、変異を導入する)など)。
【0151】
特定の実施形態では、ドナーDNAは、CRISPR標的指向を使用して、遺伝子のコード領域の上流および遺伝子の推定される近位プロモーター領域の上流、例えば、cpSRP54遺伝子のコード領域の開始ATGの少なくとも50bp、少なくとも100bp、少なくとも120bp、少なくとも150bp、少なくとも200bp、少なくとも250bp、少なくとも300bp、少なくとも350bp、少なくとも400bp、少なくとも450bp、または少なくとも500bpの上流に挿入され得る、遺伝子制御配列(例えば、プロモーター)を含み得る。ドナーDNAは、例えば、選択可能マーカーまたは任意の好都合な配列などの、天然のプロモーターを妨害し得る配列を含み得る。SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、cytoSRP54、これらの遺伝子の組み合わせ、またはオープンリーディングフレームの組み合わせ(例えば、cpSRP54遺伝子の5’UTRまたは転写開始部位の上流)の開始ATGの上流に挿入された追加の配列は、内因性SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、これらの遺伝子の組み合わせの発現を、減少、またはさらには排除することさえできる。代替的または追加的に、天然のSGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、またはこれらの遺伝子の組み合わせは、その内因性プロモーターを全体的または部分的に、弱いまたは異なって制御されたプロモーター、または非プロモーター配列に置き換えることができる。
【0152】
いくつかの例では、高効率ゲノム編集細胞株を生成するために宿主細胞に導入された核酸分子は、変異したCas9酵素が、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方の鎖または両方の鎖を切断する能力を欠くように、対応する野生型酵素に対して変異したCas9酵素をコードする。例えば、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)のCas9のRuvC I触媒ドメインのアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)は、Cas9を両方の鎖を切断するヌクレアーゼからニッカーゼ(一本鎖を切断する酵素)に変換する。Cas9をニッカーゼにする変異の他の例としては、H840A、N854A、およびN863Aが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Cas9ニッカーゼは、DNA標的のそれぞれセンス鎖およびアンチセンス鎖を標的とするガイド配列(複数可)、例えば、2つのガイド配列と組み合わせて使用され得る。この組み合わせにより、両方の鎖にニックを入れ、NHEJを誘導するために使用することができる。2つのニッカーゼ標的(ごく近接しているが、DNAの異なる鎖を標的とする)を使用して、変異誘発性NHEJを誘導することができる。ゲノム変異を達成するために両方の鎖を正確かつ特異的に切断する必要があるため、対向する鎖を、ずれた位置(staggered position)で切断する酵素を使用した遺伝子座のこのような標的化は、非標的切断も低減させることができる。
【0153】
追加の実施例では、DNAを切断する能力が損なわれた変異体Cas9酵素を細胞内で発現させることができ、ここでは、標的遺伝子の転写または翻訳開始部位の上流の配列を標的とする1つ以上のガイドRNAも導入される。この場合、Cas酵素は標的配列に結合し、標的遺伝子の転写をブロックし得る(Qi et al.(2013)Cell152:1173-1183)。
【0154】
場合によっては、Cas9ポリペプチドなどのCasポリペプチドは、例えば、(i)Cas9ポリペプチド(任意で、上記の変異形Cas9ポリペプチドとすることができる);および(b)共有結合した異種ポリペプチド(「融合パートナー」とも称される)を含む融合ポリペプチドである。異種核酸配列は、別の核酸配列に(例えば、遺伝子編集によって)連結されて、キメラポリペプチドをコードするキメラヌクレオチド配列を生成し得る。いくつかの実施形態では、Cas9融合ポリペプチドは、細胞内局在化を提供する異種配列とCas9ポリペプチドを融合することによって生成される(すなわち、異種配列は、細胞内局在化配列、例えば:核を標的とするための核局在化シグナル(NLS);ミトコンドリアを標的とするミトコンドリア局在シグナル;葉緑体を標的とする葉緑体局在化シグナル;ER保持シグナル、などである)。いくつかの実施形態では、異種配列は、追跡および/または精製を容易にするためのタグ(例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCherry、tdTomatoなど;血球凝集素(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグ;など)を提供することができる(すなわち、異種配列は検出可能な標識である)。
【0155】
宿主細胞は、例えば、宿主細胞のSGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子座の組み合わせ、もしくはそれらに隣接する領域に相同な核酸配列を含む相同組換えのためのベクターとすることができるか、またはCasタンパク質(例えば、クラスII Casタンパク質)、CRISPRキメラガイドRNA、crRNA、および/またはtracrRNA、RNAi構築物(例えば、shRNA)、アンチセンスRNA、またはリボザイムのいずれかまたは組み合わせの発現のための発現ベクターとすることができる、ベクター構築物を用いて、遺伝子操作する(例えば、形質導入または形質転換もしくはトランスフェクトする)ことができる。ベクターは、例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であり得る。ゲノム編集のためのポリペプチドまたはRNAの発現用のベクターはまた、例えば、相同組換えによって、宿主への組み込みのために設計され得る。本明細書に記載のポリヌクレオチド配列、例えば、宿主SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子配列との組み合わせ(cpSRP54またはcytoSRP54をコードする配列の上流および下流の配列を含む)と相同性を有する配列、ならびに、任意で、選択可能マーカーまたはレポーター遺伝子を含有するベクターは、適切な宿主を形質転換し、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせの減弱化を引き起こすために利用することができる。
【0156】
いくつかの例における組換え光合成生物は、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせの発現を低減させることはできるが、無効にすることはできず、組換え光合成生物は、約10%から約90%まで低減したクロロフィル、例えば、約20%から約80%まで低減した総クロロフィルを有し得る。本明細書で提供される遺伝子改変微生物は、いくつかの例では、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせの発現を減弱化するための核酸構築物を含み得る。例えば、宿主微生物は、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせの発現を低減させる、RNAi分子、リボザイム、またはアンチセンス分子を発現するための構築物を含み得る。いくつかの例では、本明細書で提供される遺伝子改変微生物は、いくつかの例では、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせの発現を低減させるための、少なくともの1つの導入された(外因性または非天然の)構築物を含み得る。
【0157】
操作された株は、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子発現との組み合わせを減弱化するための遺伝子改変を含まない対照細胞に対して減少されているが、無効にされてはいないSGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせの発現のために、例えば、RNA-Seqまたは逆転写-PCR(RT-PCR)などの当該技術分野において既知の方法を使用して、選択することができる。
【0158】
本明細書で提供される遺伝子操作された株は、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせをコードする遺伝子のmRNAの量、安定性、または翻訳能力を低減させることにより、遺伝子発現を減弱化するための構築物を含むように操作され得る。例えば、植物もしくは藻類、または不等毛類(heterokont)株などの光合成生物は、当該技術分野において既知の方法を使用して、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせのmRNAを標的とするアンチセンスRNA、RNAi、またはリボザイム構築物で形質転換することができる。例えば、遺伝子の転写領域の全部または一部を含むアンチセンスRNA構築物を微生物に導入して、遺伝子発現を減少させることができる(Shroda et al.(1999)The Plant Cell11:1165-78;Ngiam et al.(2000)Appl.Environ.Microbiol.66:775-782;Ohnuma et al.(2009)Protoplasma236:107-112;Lavaud et al.(2012)PLoS One7:e36806)。あるいはまたはさらに、cpSRP54またはcytoSRP54遺伝子を標的とするRNAi構築物(例えば、短いヘアピンRNAをコードする構築物)を、cpSRP54またはcytoSRP54遺伝子の発現を低減させるために藻類または不等毛類などの微生物に導入することができる(例えば、Cerruti et al.(2011)Eukaryotic Cell(2011)10:1164-1172;Shroda et al.(2006)Curr.Genet.49:69-84を参照されたい)。
【0159】
リボザイムは、核酸を部位特異的に切断するRNA-タンパク質複合体である。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を保有する特異的触媒ドメインを有する。例えば、米国特許第5,354,855号は、ある特定のリボザイムが既知のリボヌクレアーゼよりも配列特異性が高く、DNA制限酵素に近いエンドヌクレアーゼとして機能することができることを報告している。触媒RNA構築物(リボザイム)は、mRNA標的を切断するために、本明細書に提供されるような遺伝子をコードするmRNAと塩基対を形成するように設計され得る。いくつかの例では、リボザイム配列をアンチセンスRNA構築物内に組み込んで、標的の切断を媒介することができる。様々なタイプのリボザイムを検討することができ、それらの設計および使用は当技術分野において既知であり、例えば、Haseloff et al.(1988)Nature334:585-591に記載されている。
【0160】
リボザイムは、相補的な塩基対相互作用による部位へのアニーリングにより、所定の配列を標的とする。この標的化は、2つの相同性ストレッチを必要とする。相同配列のこれらのストレッチは、上で定義された触媒リボザイム構造に隣接する。相同配列の各ストレッチの長さは7から15ヌクレオチドまで変化することができる。相同配列を定義するための唯一の要件は、標的RNA上で、それらが切断部位である特異的な配列によって分離されていることである。ハンマーヘッドリボザイムの場合、切断部位は標的RNA上のジヌクレオチド配列であり、ウラシル(U)の後にアデニン、シトシン、またはウラシル(A、C、またはU)のいずれかが続くThompson et al.,(1995)Nucl Acids Res23:2250-68)。いかなるRNAでも発生するこのジヌクレオチドの頻度は、統計的には、16のうち3である。したがって、1,000個の塩基の所与の標的のメッセンジャーRNAでは、187個のジヌクレオチド切断部位が統計的には可能である。
【0161】
リボザイム特異的RNA切断活性の一般的な設計および最適化は詳細に議論されている(Haseloff and Gerlach (1988)Nature 334:585-591;Symons(1992)Ann Rev Biochem 61:641-71;Chowrira et al.(1994)J Biol Chem 269:25856-64;上記のThompson et al.(1995))。標的RNAの効率的な切断のためのリボザイムの設計および試験は、当業者に周知のプロセスである。リボザイムを設計および試験するための科学的方法の例は、上記のChowrira et al.,(1994)およびLieber and Strauss(1995)Mol Cell Biol.15:540-51に記載されている(それぞれが参照により組み込まれる)。所与の遺伝子をダウンレギュレートする際に使用するための有効かつ好ましい配列の同定は、所与の配列を調製および試験することであり、当業者に既知の日常的に実施される「スクリーニング」方法である。
【0162】
RNAi構築物の使用は、上に引用した文献、ならびに例えばUS2005/0166289およびWO2013/016267に記載されている。標的遺伝子と相同性を有する二本鎖RNAは、RNAi構築物、例えばRNAiショートヘアピン(sh)構築物の発現により細胞に送達されるか、または細胞内で産生される。この構築物は、標的遺伝子と同一であるか、または標的遺伝子の配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、または95%~100%同一である配列を含むことができる。この構築物は、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、または少なくとも1kbの標的遺伝子と相同な配列を有することができる。発現ベクターは、shRNAを産生する構築物などのRNAi構築物の連続的または誘導可能な発現のために選択されたプロモーターを使用して操作することができる。
【0163】
遺伝子減弱化のための核酸構築物、例えば、リボザイム、RNAi、またはアンチセンス構築物は、操作される微生物の内因性SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせの配列の少なくとも一部と、少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の、または少なくとも99%の同一性もしくは相補性を有する、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、または少なくとも60個のヌクレオチドを含むことができる。遺伝子減弱化のための核酸構築物、例えば、リボザイム、RNAi、またはアンチセンス構築物は、内因性SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせと、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%、少なくとも90%、または95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする遺伝子などの、天然に存在する遺伝子の配列と、少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも95%または約100%の配列同一性もしくは相補性を有する、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、または少なくとも60個のヌクレオチドを含むことができる。遺伝子減弱化のための核酸構築物、例えば、リボザイム、RNAi、またはアンチセンス構築物は、本明細書に提供される任意のものなどの、天然に存在するcpSRP54遺伝子の配列と、少なくとも80%の同一性もしくは相補性を有する、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、または少なくとも60個のヌクレオチドを含むことができる。ヌクレオチド配列は、例えば、約30個のヌクレオチド~約3キロベース以上、例えば、30~50個のヌクレオチドの長さ、50~100個のヌクレオチドの長さ、100~500個ヌクレオチドの長さ、500個のヌクレオチド~1kbの長さ、1kb~2kbの長さ、または2~5kbとすることができる。例えば、アンチセンス配列は、約100個のヌクレオチドから約1kbの長さであり得る。例えば、遺伝子減弱化のための核酸構築物、例えば、リボザイム、RNAi、またはアンチセンス構築物は、内因性SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、もしくはそれらの一部と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%、例えば少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、または少なくとも95%の配列同一性もしくは相補性を有する、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、または少なくとも100個のヌクレオチドを含むことができる。
【0164】
アンチセンス、RNAi、またはリボザイム構築物で使用されるプロモーターは、宿主生物において機能的であり、かつ標的遺伝子の発現を所望の量に低減させるために必要な発現レベルに好適である任意のものであり得る。藻類および不等毛類で機能するプロモーターは、当技術分野において既知であり、かつ本明細書に開示されている。この構築物は、本明細書に開示される任意のものを含む、実行可能な任意の方法を使用して藻類に形質転換することができる。SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子の組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54遺伝子発現の組み合わせを弱めるための核酸分子(これらに限定されないが、アンチセンス、RNAiなど)またはリボザイム構築物で形質転換された組換え生物または微生物は、SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子の組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54変異体の組み合わせについて、弱められた遺伝子発現をもたらす外因性核酸分子を含まない宿主生物または微生物に対して、例えば:クロロフィルの減少;光合成効率の向上;培養における生産性の増加などの特性を持つことができる。
【0165】
核酸分子および構築物
当業者であれば、微生物の遺伝子形質転換のために多くの形質転換法を使用することができ、したがって、本発明の方法のために展開することができることを理解するであろう。「安定した形質転換」とは、生物に導入された核酸構築物が生物のゲノムに組み込まれるか、または安定なエピソーム構築物の一部であり、その子孫に受け継がれることができることを意味することを意図する。「一過性形質転換」とは、ポリヌクレオチドが生物に導入され、ゲノムに組み込まれないか、ないしは別の方法で連続世代によって確立されかつ安定的に受け継がれるようにはならないことを意味することを意図する。
【0166】
遺伝子形質転換は、導入遺伝子、核もしくはプラスミドのいずれかからの構築物の安定した挿入および/または発現をもたらし、場合によっては導入遺伝子の一過性の発現をもたらすことができる。形質転換法は、ガイドRNAの導入またはDNAの編集にも使用することができる。微細藻類の遺伝子形質転換は、少なくとも約22種の緑、赤、茶色の藻類、珪藻類、ユーグレナ、および渦鞭毛藻類に属する、30種類超の微細藻類で成功したと報告されている(例えば、Radakovits et al.,Eukaryotic Cell,2010;and Gong et al.,J.Ind.Microbiol.Biotechnol.,2011を参照されたい)。このような有用な形質転換法の非限定的な例としては、例えば、Dunahay,Biotechniques,15(3):452-460,1993;Kindle,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1990;Michael and Miller,Plant J.,13,427-435,1998によって報告されているガラスビーズまたは炭化ケイ素ウィスカーの存在下での細胞の攪拌が挙げられる。電気穿孔法の手法は、Nannochloropsis種(例えば、Chen et al.,J.Phycol.,44:768-76,2008を参照されたい)、Chlorella種(例えば、Chen et al.,Curr.Genet.,39:365-370,2001;Chow and Tung,Plant Cell Rep.Vol.18,No.9,778-780,1999を参照されたい)、Chlamydomonas(Shimogawara et al.,Genetics,148:1821-1828,1998)、Dunaliella(Sun et al.,Mol.Biotechnol.,30(3):185-192,2005)を含むいくつかの微細藻類種の遺伝子形質転換に成功裏に使用されている。微粒子銃、遺伝子銃変換、または微粒子銃などとも称されるマイクロプロジェクタイルボンバードメント(Micro-projectile bombardment)は、例えば、Phaeodactylum(Apt et al.,Mol.Gen.Genet.,252:572-579,1996)、CyclotellaとNavicula((Dunahay et al.,J.Phycol.,31:1004-1012,1995)、Cylindrotheca (Fischer et al.,J.Phycol.,35:113-120,1999)、およびChaetoceros種(Miyagawa-Yamaguchi et al.,Phycol.Res.59:113-119,2011)などの珪藻種、ならびにChlorella(El-Sheekh,Biologia Plantarum,Vol.42,No.2:209-216,1999)、およびVolvox種(Jakobiak et al.,Protist,155:381-93,2004)などの緑藻類を含む、いくつかの藻類種で成功裏に使用されている。さらに、例えば、Kumar,Plant Sci.,166(3):731-738,2004およびCheney et al.,J.Phycol.,Vol.37,Suppl.11,2001によって報告されているように、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を媒介した遺伝子導入技術も微細藻類の遺伝子形質転換に有用であり得る。
【0167】
本明細書に記載の形質転換ベクターまたは構築物は、典型的には、標的宿主細胞、例えば、藻類細胞に選択可能もしくはスコアリング可能な表現型を付与するマーカー遺伝子を含み、またはマーカーを含む構築物で同時形質転換され得る。藻類の遺伝子形質転換体を効率的に単離するために、多くの選択可能マーカーが開発されている。一般的な選択可能なマーカーとしては、抗生物質耐性、蛍光マーカー、および生化学マーカーが挙げられる。いくつかの異なる抗生物質耐性遺伝子は、ブラストシジン、ブレオマイシン(例えば、上記のApt et al.,1996;上記のFischer et al.,1999;Fuhrmann et al.,Plant J.,19,353-61,1999,Lumbreras et al.,Plant J.,14(4):441-447,1998;Zaslavskaia et al.,J.Phycol.,36:379-386,2000)、スペクチノマイシン(Cerutti et al.,Genetics,145:97-110,1997;Doetsch et al.,Curr.Genet.,39,49-60,2001;Fargo,Mol.Cell.Biol.,19:6980-90,1999)、ストレプトマイシン(Berthold et al.,Protist,153:401-412,2002)、パロモマイシン(上記のJakobiak et al.,Protist;Sizova et al.,Gene,277:221-229,2001)、nourseothricin(上記のZaslavskaia et al.,2000)、G418(上記のDunahay et al.,1995;Poulsen and Kroger,FEBS Lett.,272:3413-3423,2005,上記のZaslavskaia et al.,2000)、ハイグロマイシン(上記のBerthold et al.,2002)、クロラムフェニコール(上記のPoulsen and Kroger,2005)、および他の多くを含む、微細藻類形質転換体の選択に成功裏に使用されてきた。クラミドモナスなどの微細藻類で使用するための追加の選択可能マーカーは、カナマイシンおよびアミカシン耐性(Bateman,Mol.Gen.Genet.263:404-10,2000)、ゼオマイシンおよびフレオマイシン(例えば、ZEOCIN(商標)フェオマイシンD1)耐性(Stevens,Mol.Gen.Genet.251:23-30,1996)、ならびにパラモマイシンおよびネオマイシン耐性(上記のSizova et al.,2001)への耐性を提供するマーカーとすることができる。使用されている他の蛍光または発色マーカーとしては、ルシフェラーゼ(alciatore et al.,J.Mar.Biotechnol.,1:239-251,1999;Fuhrmann et al.,Plant Mol.Biol.,2004;Jarvis and Brown,Curr.Genet.,19:317-322,1991)、β-グルクロニダーゼ(上記のChen et al.,2001;上記のCheney et al.,2001;上記のChow and Tung,1999;上記のEl-Sheekh,1999;上記のFalciatore et al.,1999;Kubler et al.,J.Mar. Biotechnol.,1:165-169,1994)、β-ガラクトシダーゼ(Gan et al.,J.Appl.Phycol.,15:345-349,2003;Jiang et al.,Plant Cell Rep.,21:1211-1216,2003;Qin et al.,High Technol.Lett.,13:87-89,2003)、および、緑色蛍光タンパク質(GFP)(上記のCheney et al.,2001;Ender et al.,Plant Cell,2002,Franklin et al.,Plant J.,2002;56,148,210)が挙げられる。
【0168】
当業者であれば、本発明に従って、微細藻類種の形質転換系のために、様々な既知のプロモーター配列を有効に展開できることを容易に理解するであろう。例えば、微細藻類で導入遺伝子の発現を促進するために一般的に使用されるプロモーターとしては、渦鞭毛藻類と緑藻類の両方で使用されている、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター35S(CaMV35S)の様々なバージョンが挙げられる(Chow et al,Plant Cell Rep.,18:778-780,1999;Jarvis and Brown,Curr.Genet.,317-321,1991;Lohuis and Miller,Plant J.,13:427-435,1998)。シミアンウイルスのSV40プロモーターは、いくつかの藻類でも活性があると報告されている(Gan et al.J.Appl.Phycol.,151 345-349,2003;Qin et al.,Hydrobiologia 398-399,469-472,1999)。RBCS2(リブロース二リン酸カルボキシラーゼ、小サブユニット)のプロモーター(Fuhrmann et al.,Plant J.,19:353-361,1999)およびクラミドモナスのPsaD(光化学系I複合体の豊富なタンパク質;Fischer and Rochaix,FEBS Lett.581:5555-5560,2001)もまた有用である。HSP70A/RBCS2およびHSP70A/β2TUB(チューブリン)の融合プロモーター(Schroda et al.,Plant J.,21:121-131,2000)もまた、HSP70Aプロモーターが他のプロモーターの上流に配置されたときに、転写活性化因子として機能する可能性がある、導入遺伝子の発現の改善に有用であり得る。対象とする遺伝子の高レベルの発現は、珪藻フコキサンチン-クロロフィルa/b結合タンパク質をコードするfcp遺伝子のプロモーターの制御下で(Falciatore et al.,Mar.Biotechnol.,1:239-251,1999;Zaslavskaia et al.,J.Phycol.36:379-386,2000)またユースティグマトファイトビオラキサンチン-クロロフィルa/b結合タンパク質をコードするvcp遺伝子のプロモーターの制御下で(米国特許番号第8,318,482号を参照されたい)、例えば、珪藻種でも達成することができる。必要に応じて、誘導性プロモーターはトランスジェニック微細藻類における遺伝子の迅速かつ厳密に制御された発現を提供することができる。例えば、硝酸レダクターゼをコードするNR遺伝子のプロモーター領域を、そのような誘導性プロモーターとして使用することができる。NRプロモーター活性は通常、アンモニウムによって抑制され、アンモニウムが硝酸塩に置き換えられたときに誘導され(Poulsen and Kroger,FEBS Lett272:3413-3423,2005)、したがって、遺伝子発現は、微細藻類細胞がアンモニウム/硝酸塩の存在下で成長するときにオフまたはオンに切り替えることができる。本明細書に提供される構築物および形質転換系において用途を見出すことができる追加の藻類プロモーターとしては、米国特許第8,883,993号;米国特許出願公開第US2013/0023035号;米国特許出願公開第US2013/0323780号;および米国特許出願公開第US2014/0363892号に開示されているものが挙げられる。
【0169】
宿主細胞は、形質転換されていない細胞、または少なくとも1つの核酸分子で既にトランスフェクトされている細胞のいずれかであり得る。例えば、cpSRP54遺伝子の減弱化された発現を有するように操作された藻類宿主細胞は、さらに、限定されないが、対象とする生物分子、例えば、1つ以上のタンパク質、色素、アルコール、または脂質の増加した産生などの任意の所望の形質を付与し得る1つ以上の遺伝子を含み得る。
【0170】
光合成生物から産物を生産する方法
本明細書では、本明細書に開示されるSGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54変異体との組み合わせなど、向上した光合成効率を有する光合成生物を培養することにより、藻類などの光合成生物から産物を産生する方法も提供される。この方法には、光合成生物の変異体SGI1、SGI2、cpSRP54、cytoSRP54、SGI1とcpSRP54遺伝子との組み合わせ、またはSGI2とcpSRP54との組み合わせを好適な培地で培養して、光合成生物培養物を提供することと、培養物からバイオマスまたは少なくとも1つの産物を回収することと、を含む。いくつかの実施形態では、産物は脂質である。光合成生物を含む培養物は、好ましくは光合成独立栄養培養物であり、培養培地は、好ましくは、相当量の還元炭素を含まない、すなわち、培養物は、藻類が成長のために使用できる形態またはレベルの還元炭素を含まない。
【0171】
いくつかの実施形態では、光合成生物は、フラスコまたはバイオリアクターを含む任意の好適な容器で培養されてもよく、ここで、光合成生物は、人工光または自然光に露光され得る。変異体光合成生物を含む培養物は、例えば、自然のまたはプログラムされた明/暗周期であり得る明/暗周期で培養されてもよく、例示的な例として、12時間の明から12時間の暗、14時間の明から10時間の暗、16時間の明から8時間の暗などを提供してもよい。
【0172】
培養とは、選択および/または制御された条件の使用による、1つ以上の細胞の成長(例えば、細胞サイズ、細胞内容物、ならびに/もしくは細胞活性の増加)および/または繁殖(例えば、有糸分裂を介した細胞数の増加)の意図的な促進を指す。成長と繁殖との両方の組み合わせは、増殖と呼ばれてもよい。本明細書の実施例で実証されるように、弱光強度への調節緩和された適応性を呈する本明細書で提供される変異体は、弱光順応で制限緩和されていない同じ株の野生型藻細胞培養物に対して、培養物のより高い細胞密度を経時的に、例えば、1週間以上の期間にわたって達成することができる。例えば、cpSRP54変異体は、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、または少なくとも15日間、もしくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週間培養され得る。
【0173】
組換え微生物の培養に使用できる選択および/または制御された条件の非限定的な例としては、定義された培地(pH、イオン強度、および/または炭素源などの既知の特性)、規定温度、酸素分圧、二酸化炭素レベル、バイオリアクターでの成長など、またはこれらの組み合わせの使用を挙げることができる。いくつかの実施形態では、微生物または宿主細胞は、光および還元された炭素源の両方を使用して、混合栄養的に成長させることができる。あるいは、微生物または宿主細胞は、光栄養的に培養させることができる。光栄養的に成長するとき、藻類株は、エネルギー源として光を有利に使用することができる。微生物による生体分子の合成には、CO2または重炭酸塩などの無機炭素源を使用することができる。本明細書で使用される「無機炭素」には、生物が持続可能なエネルギー源として使用することができない炭素含有化合物または分子が含まれる。典型的には「無機炭素」は、CO2(二酸化炭素)、炭酸、重炭酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩など、またはこれらの組み合わせの形態であり、持続可能なエネルギーのためにさらに酸化することも、生物による還元力の供給源として使用することもできない。光独立栄養的に成長した微生物は、無機炭素が実質的に唯一の炭素源である培養培地上で成長させることができる。例えば、無機炭素が実質的に唯一の炭素源である培養物では、培養培地中に提供され得るいかなる有機(還元)炭素分子または有機炭素化合物も、細胞によってエネルギーとして取り込まれることも、および/もしくは代謝されることもできず、ならびに/もしくは細胞培養の成長および増殖のための持続可能なエネルギーを提供するのに十分な量で存在していない。
【0174】
本発明の方法に従って有用であり得る微生物および宿主細胞は、世界中の様々な場所および環境において見出すことができる。脂質および/または他の産物の最適な繁殖および生成のための特定の成長培地は変化する可能性があり、バイオマスまたは脂質、タンパク質、色素、抗酸化物質などの産物の成長、繁殖、または産生を促進するために最適化され得る。固体および液体の成長培地は、一般に、多種多様な微生物株に好適な特定の培地の調製に関する説明と同様に、多種多様な供給源から入手可能である。例えば、様々な淡水および塩水培地は、Barsanti(2005)Algae:Anatomy,Biochemistry & Biotechnology,CRC Press for media and methods for culturing algaeに記載されているものを含むことができる。藻類培地のレシピは、非限定的な例として、UTEX Culture Collection of Algae(www.sbs.utexas.edu/utex/media.aspx);Culture Collection of Algae and Protozoa(www.ccap.ac.uk);およびKatedra Botaniky(botany.natur.cuni.cz/algo/caup-media.html)が含まれる、様々な藻類培養コレクションのウェブサイトでも見出すことができる。
【0175】
培養方法は、任意で、限定されないが、脂質、1種類以上のタンパク質、抗酸化物質、または色素の産生に関与するタンパク質などの、産物の産生のための1つ以上の遺伝子の発現を誘導すること、および/または微生物の代謝経路を調節することを含み得る。発現の誘導には、培養物へ栄養素または化合物を添加すること、培養培地からの1つ以上の成分を除去すること、光ならびに/または温度を増加または減少させること、および/もしくは対象とする遺伝子の発現を促進する他の操作を行うことを含み得る。このような操作は、対象とする遺伝子に作動可能に連結された(異種)プロモーターの性質に大きく依存し得る。
【0176】
本発明のいくつかの実施形態では、弱光強度への順化で制限緩和された微生物は、許容可能な微生物成長および増殖を可能にし、促進し、および/または維持するために、人工光源を備えた、かつ/または太陽光を含む光に対して十分に透明な1つ以上の壁を有する、「光バイオリアクター」で培養することができる。脂肪酸産物またはトリグリセリドの産生のために、光合成微生物または宿主細胞は、追加的または代替的に、振盪フラスコ、試験管、バイアル瓶、マイクロタイター皿、ペトリ皿など、またはこれらの組み合わせで培養することができる。
【0177】
追加的または代替的に、組換え光合成微生物または宿主細胞は、池、運河、海上の成長容器、溝、導水路、水路など、またはそれらの組み合わせで成長させることができる。このようなシステムでは、温度は調整されない場合があり、または様々な加熱もしくは冷却方法または装置が使用される場合がある。標準的なバイオリアクターと同様に、空気、CO2富化空気、煙道ガスなど、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない無機炭素源(限定されないが、CO2、重炭酸塩、炭酸塩など)が、培養物に供給することができる。煙道ガスおよび/またはCO2に加えてCOを含有し得る他の無機源を供給するとき、(光)バイオリアクターに導入されたCOレベルが、微生物の成長、増殖、および/または生存に関して危険な量および/または致死量を構成しないように、このような供給源を前処理する必要があり得る。
【0178】
変異体光合成生物は、限定されないが、脂質、着色剤もしくは色素、抗酸化物質、ビタミン、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、ホルモン、サイトカイン、ペプチド、タンパク質、またはポリマーなどの産物の産生のためのポリペプチドをコードする1つ以上の非天然遺伝子を含むことができる。例えば、コードされるポリペプチドは、酵素、代謝調節因子、補助因子、担体タンパク質、またはトランスポーターであり得る。この方法は、産物の産生に関与するポリペプチドをコードする少なくとも1つの非天然遺伝子を含むcpSRP54変異体またはcytoSRP54変異体を培養して、バイオマスまたは少なくとも1つの藻類産物を産生することを含む。脂質およびタンパク質などの産物は、例えば、有機溶媒を使用する全培養物抽出によるなど、当業者に既知の回収手段によって培養物から回収することができる。場合によっては、細胞の均質化によって脂肪酸産物の回収率を向上させることができる。例えば、脂肪酸、脂肪酸誘導体、および/またはトリグリセリドなどの脂質は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、同時係属中の同一出願人による米国特許出願公開第US2013/0225846号に記載されているように、高温および/または高圧で溶媒を使用して藻類を抽出することにより、藻から単離することができる。
【0179】
他の代替の実施形態および方法は、この開示を検討すれば、当業者には明らかであろう。本明細書に提供される一般的な方法の説明は、例示の目的を意図しているにすぎない。以下の非限定的な例を以下に提供する。
【実施例】
【0180】
実施例1
CAS9を過剰発現するParachlorella株の生成
Cas9を過剰発現するParachlorella株の生成は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0304896号に記載されている。
【0181】
簡単に言うと、ベクターpSGE-6709を、Parachlorellaにおける化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)のCas9遺伝子の発現のために遺伝子操作した。ベクターには、次の3つの要素が含まれていた:
(1)Parachlorella用にコドン最適化された操作されたCas9遺伝子を含有し、かつParachlorellaからのイントロンを含有する、Cas9発現カセットであって、ParachlorellaRPS17プロモーターに作動可能に連結された、N末端FLAGタグ、核局在化シグナル、およびペプチドリンカーも含み、ParachlorellaRPS17ターミネーターで終結した、Cas9発現カセット;
選択可能マーカー発現カセットであって、Parachlorella用にコドン最適化されたアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)からのブラストサイジン耐性遺伝子を含み、ParachlorellaRPS4プロモーターに作動可能に連結されたParachlorellaイントロンを含有し、かつParachlorellaRPS4ターミネーターによって終結する、選択可能マーカー発現カセット;
GFPレポーター発現カセットであって、ParachlorellaACP1プロモーターによって駆動されるTurboGFP遺伝子(Evrogen,Moscow,Russia)を含有し、かつParachlorellaACP1ターミネーターによって終結する、GFPレポーター発現カセット。
【0182】
このベクターにより、バイオリスティックでParachlorellaを形質転換した。Parachlorella野生型株WT-1185の形質転換は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許公開第2014/0154806号に本質的に記載されているように、BioRad Helios(登録商標)Gene Gun Systemを使用して達成した。形質転換用のDNAを金粒子上に沈着させた。金粒子がチューブ長の内側に付着し、Gene Gun内に配置されたチューブを通してヘリウムガスのバーストが発射され、DNAでコーティングされた金粒子を、固体非選択培地(PM074藻類成長培地を含有する、2%の寒天平板培地)に接着しているParachlorella株WT-1185細胞中に推進させた。Helios(登録商標)Gene Gunを使用して、プレートから3~6cmの距離から600psiで、細胞サークルあたり2つの弾丸を発射した。翌日、細胞を形質転換コロニーの成長のための選択培地に移した。
【0183】
コロニーは、フローサイトメトリーによって完全GFP浸透度についてスクリーニングし、野生型蛍光ピークよりも高い値にシフトした単一の蛍光ピークを有する形質転換株の同定を行った。非形質転換細胞に対して明らかにシフトした蛍光ピークを示す完全浸透性Cas9株を、Cas9発現の証拠に対する抗Cas9のウエスタンブロッティングによって、Cas9発現について試験した。これらのスクリーニングに基づいて、6709-2の単離を繰り返し、株識別子GE-15699を付与した。
【0184】
実施例2:
完全浸透性ParachlorellaCAS9エディターラインを使用したCPSRP54のノックアウト
完全浸透性ParachlorellaCas9エディターラインを使用するcpSRP54のノックアウトは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0304896号に記載されている。簡単に言うと、キメラgRNA(配列番号103)が設計され、最後の3つのヌクレオチドはPAMであり、Parachlorellaコード配列中の葉緑体SRP54遺伝子を標的にするために、インビトロで合成した。
【0185】
GE-15699を、1~2μgの精製されたキメラガイドRNA、およびParachlorella用にコドン最適化されたブレオマイシン耐性「BleR」遺伝子を含有しかつParachlorellaからのイントロン(配列番号70)を含有している1μgの選択可能マーカーDNA用いて、電気穿孔法によって形質転換した。BleR遺伝子は、ParachlorellaRPS4プロモーター(配列番号71)に作動可能に連結され、かつParachlorellaRPS4ターミネーター(配列番号72)によって終結していた。
【0186】
電気穿孔法は、形質転換の6日前に、1×106細胞/mLに接種した100mLの種培養を接種することによって行い、形質転換の2日前に、1Lの培養物を1×106細胞/mLに接種するために用いた。形質転換の当日に、細胞を5000×gで20分間遠心分離することによりペレット化し、0.1umで濾過した385mMのソルビトールで3回洗浄し、385mMのソルビトール中で5×109細胞/mLに再懸濁させた。100μLの濃縮細胞の電気穿孔法は、様々な条件下で、BioRad Gene Pulser Xcell(商標)の0.2cmのキュベットで実施した。電気穿孔法の最適化に使用されたDNAは、bleRおよびTurboGFP発現カセットを含む線状化pSG6640であった。TurboGFPカセットは、TurboGFP遺伝子(配列番号24)に作動可能に連結されたParachlorellaACP1プロモーター(配列番号67)と、ParachlorellaACP1ターミネーター(配列番号68)とを含んでいた。事前に冷却した細胞およびキュベットで電気穿孔した直後に、1mLの冷ソルビトールを添加し、10mLのPM074に細胞を移すために使用した。一晩の回復後、細胞を濃縮し、250mg/Lのゼオシンを含む直径13cmのPM074培地に広げ、バイオリスティックのセクションに記載されている条件下で成長させた。
【0187】
電気穿孔条件は、1.0~1.2kV(5000~6000V/cm)200~300オーム、および25~50μFであった。大量のDNAを使用すると、結果としてゼオシン耐性コロニーの数が増加したが、効果は4μgを超える量で定常に達した。電気穿孔法に続いて、細胞を250μg/mlのゼオシンを含有する寒天培地(PM130)に播種して、bleカセットを組み込んだ形質転換体を選択した。形質転換体を、天然の標的遺伝子座(オリゴ-AE596およびオリゴ-AE597)にわたって増幅するように設計されたプライマーを使用したコロニーPCRによってスクリーニングした。プライマーは、遺伝子座への組み込み(例えば、BleRカセットの「ノックイン」)がない場合に700bpバンド、または単一のbleカセットが標的遺伝子座に組み込まれた場合は4.3kbバンドを生成するように設計された。加えて、コロニーPCRはまた、cpSRP54遺伝子から選択可能マーカーまで伸長する断片を増幅するように設計されたプライマー(オリゴ-AE597)を使用して行われた。組み込まれたbleカセットの配向に応じて、1.2kbのバンドは、bleカセット内からcpSRP54遺伝子に及ぶプライマー405/597またはプライマー406/597によるいずれかの増幅から生じる。結果は、相同性アームがない場合、標的遺伝子座へのBleRカセットの高頻度(この試料では40~45%)のノックインを示した。cpSRP54ノックアウトは、淡い緑色の表現型をもたらした。
【0188】
実施例3
完全浸透性ParachlorellaCAS9エディターラインを使用したSGI2のノックアウト
完全浸透性のParachlorellaCas9エディターラインを使用したSGI2のノックアウトを、本質的に上記のcpSRP54で説明したように行った。簡単に言うと、キメラgRNA(配列番号104)が設計され、最後の3つのヌクレオチドはPAMであり、Parachlorellaコード配列中の葉緑体SGI2遺伝子を標的にするために、インビトロで合成した。
【0189】
GE-15699を、1~2μgの精製されたキメラガイドRNA、およびParachlorella用にコドン最適化されたブレオマイシン耐性「BleR」遺伝子を含有しかつParachlorellaからのイントロン(配列番号70)を含有している1μgの選択可能マーカーDNA用いて、電気穿孔法によって形質転換した。BleR遺伝子は、ParachlorellaRPS4プロモーター(配列番号71)に作動可能に連結され、かつParachlorellaRPS4ターミネーター(配列番号72)によって終結していた。
【0190】
Ble耐性コロニーが選択された。ノックアウトをPCRで確認する。
【0191】
実施例4
完全浸透性ParachlorellaCAS9エディターラインを使用したSGI1のノックアウト
SGI1ノックアウト株24183は、Cas9を発現する母株GE-15699から作製された。GE-15699細胞に、キメラgRNA(配列番号105、配列番号105の最後の3つのヌクレオチドはPAMである)、および亜硝酸レダクターゼプロモーターとターミネーターとに隣接するコドン最適化Cre遺伝子を含有するDNAカセット(
図10Aに示した)を電気穿孔した。このカセットには、以前に使用されたbleおよびGFP遺伝子も含まれていた。BleおよびGFPは、lox2272部位に隣接していた。Creが発現すると、lox部位が再結合し、これらの配列間のDNAをループアウトする。単一コピー組み込みを向上させるために、CRISPRターゲットを取り巻く、SGI1遺伝子に対する相同配列もまた、カセットの端にあった。配列を、SGI1遺伝子座のカセットの存在について、DNA塩基配列決定法によって確認した。ddPCRを使用して、コピー数により、単一のコピー組み込み体であることを確認した。次に、この株をアンモニウム非含有培地で培養し、Creを発現させた。Creが発現すると、lox部位が再結合し、これらの配列間のDNAをループアウトする。
【0192】
実施例5
完全浸透性ParachlorellaCAS9エディターラインを使用したSGI2およびCPSRP54のダブルノックアウト
完全浸透性のParachlorellaCas9エディターラインを使用したSGI2およびSRP54のダブルノックアウトを、本質的に上記のcpSRP54で説明したように行った。簡単に言うと、2つのキメラgRNA:1つはcpSRP54に対するもの(配列番号69);およびもう1つはSGI2に対するもの(配列番号73)、が設計され、最後の3つのヌクレオチドはPAMであり、Parachlorellaコード配列中の葉緑体SGI1遺伝子を標的にするために、インビトロで合成された。
【0193】
GE-15699を、1~2μgの精製されたキメラガイドRNA、およびParachlorella用にコドン最適化されたブレオマイシン耐性「BleR」遺伝子を含有しかつParachlorellaからのイントロン(配列番号70)を含有している1μgの選択可能マーカーDNA用いて、電気穿孔法によって形質転換した。BleR遺伝子は、ParachlorellaRPS4プロモーター(配列番号71)に作動可能に連結され、かつParachlorellaRPS4ターミネーター(配列番号72)によって終結していた。
【0194】
Ble耐性コロニーが選択された。ノックアウトをPCRで確認する。
【0195】
実施例6
完全浸透性ParachlorellaCAS9エディターラインを使用したSGI1およびCPSRP54のダブルノックアウト
cpSRP54を標的とするキメラgRNA(配列番号69)と共に、bleおよびGFP配列を含むDNAカセット(
図10B)を使用して、上記のParachlorellaSGI1ノックアウト株24183に電気穿孔し、SGI1およびcpSRP54のダブルノックアウトを生成した。Ble耐性コロニーが選択された。ノックアウトをPCRで確認する。3つのダブルノックアウト株:STR24538、STR24540、およびSTR24541が生成され、これらの光生理学的特性および物理的表現型は同一であった。
【0196】
実施例7
単一コピーCAS9遺伝子を含むParachlorellaSGI1ノックアウト株の生成
Parachlorella用にコドン最適化されたブレオマイシン耐性「BleR」遺伝子、Parachlorellaからのイントロン(配列番70)、GFP遺伝子、Cre遺伝子、lox部位、およびCas9遺伝子を含むものを、pCC1BACベクターにクローニングした。Cas9遺伝子は、ParachlorellaRPS17プロモーターに作動可能に連結され、29個の天然のPBPイントロンを含み、lox2272部位の外側にあった。Cas9遺伝子は、ParachlorellaRPS17ターミネーターによって終結した。BleR遺伝子は、ParachlorellaRPS4プロモーター(配列番号71)に作動可能に連結され、かつParachlorellaRPS4ターミネーター(配列番号72)によって終結していた。GFP遺伝子は、ParachlorellaACP1プロモーターに作動可能に連結され、かつParachlorellaACP1ターミネーターによって終結していた。Cre遺伝子は、Parachlorella亜硝酸レダクターゼプロモーターおよびParachlorella亜硝酸レダクターゼターミネーターに作動可能に連結されていた。これらの遺伝子は、相同組換え部位として機能するSGI1(CheY)配列の部分に隣接している。組換えpCC1BACベクターの概略図を、
図17に示している。
【0197】
形質転換WTParachlorella宿主株:STR00010
Cas9遺伝子、WTParachlorella宿主株を、SGI1遺伝子を標的とするgRNA(配列番号74)、およびPvuI消化されスピン精製された選択カセット(NAS00460、配列番号86)を用いて同時形質転換した。
【0198】
選択カセット(NAS00460)は、SGI1相同組換え(HR)アップアームの上流には1.7kbのベクターバックボーン(配列番号86の配列1~1761に相当する)を含むがSGI1 HRダウンアームの下流にはベクターの一部を含まない断片、Parachlorella用にコドン最適化されたブレオマイシン耐性「BleR」遺伝子、およびParachlorellaからのイントロン(配列番号70)と、GFP遺伝子(配列番号86の配列8260~8961に相当する)と、Cas9遺伝子とを含む。選択カセットには、Lox部位内にbleおよびGFPを含有する。CRE遺伝子(配列番号86の配列10418~13326に相当する)は、Parachlorellaにコドン最適化した6つの亜硝酸レダクターゼ、イントロンを含み、これは、亜硝酸レダクターゼ誘導性プロモーター下にあった(配列番号86の配列9906~10417に相当する)。Cre遺伝子は、亜硝酸レダクターゼターミネーター(配列番号86の配列13327~15140に相当する)により終結される。29個の天然のPBPイントロンを含むCas9遺伝子は、配列番号86の配列15754~配列25918に相当する。Cas9遺伝子は、ParachlorellaRPS17プロモーター(配列番号86の配列15166~15753に相当する)の下にあり、29個の天然のPBPイントロンを含有しており、lox部位の外側にあった。Cas9遺伝子は、ParachlorellaRPS17ターミネーター(配列番号86の配列25919~26373に相当する)により終結される。
【0199】
BleR遺伝子は、ParachlorellaRPS4プロモーター(配列番号71)に作動可能に連結され、かつParachlorellaRPS4ターミネーター(配列番号72)によって終結していた。GFP遺伝子は、ParachlorellaACP1プロモーター(配列番号86の配列7688~8259に相当する)に作動可能に連結され、かつParachlorellaACP1ターミネーター(配列番号86の配列8692~9830に相当する)によって終結していた。SGI1相同組換え(HR)アップアームは、配列番号86の配列1762~3578に相当する。SGI1相同組換え(HR)ダウンストリームアームは、配列番号86の配列26448~28447に相当する。5’lox2272部位は、配列番号86の配列3831~3864に相当し、3’lox2272は、配列番号86の配列9839~9872に相当する。すべての配列は、SGI1 CRISPR標的の上流および下流の2kb相同領域内にある。
【0200】
SGI1 gRNA(配列番号105)と選択カセット(配列番号86)で同時形質転換すると、SGI1遺伝子がノックアウトされ、Cas9、BleR、およびGFP遺伝子を含む選択カセットが、相同組換えによって、SGI1部位に挿入される。BleR、およびGFP遺伝子はlox2272部位に隣接しており、一方、選択カセットのCas9およびCre遺伝子はlox2272部位の外側にあるが、相同組換え部位として機能するSGI1配列の部分内にある。
【0201】
選択カセットがSGI1遺伝子座に挿入されると、Cre遺伝子は誘導性亜硝酸レダクターゼプロモーターに作動可能に連結される。したがって、微生物が亜硝酸塩を含む成長培地で成長すると、Cre遺伝子発現が誘発される。Cre遺伝子の発現時に、Cre酵素はLox2272部位に作用し、Lox部位内に隣接するBleRおよびGFP配列を除去する。これは、選択可能なマーカー(例えば、GFP、他の抗生物質マーカー、例えば、BleR)が他の配列のサブ配列形質転換中に再導入され得る系をもたらす。
【0202】
Cas9挿入のための形質転換されたParachlorella株のスクリーニング
形質転換されたParachlorella細胞を、アンモニウムを含有する選択プレート上の単一コロニーに播種してCRE発現を抑制し、選択的抑制プレート上でコロニーに再度パッチし、PCRおよびGFPシフトを使用してノックアウトをスクリーニングした。ノックアウトの確認に使用したPCRプライマーを以下に示す。
【0203】
PCR陽性反応を示したものは、ノックアウト(カセットの挿入)および完全なHRを確認するために配列決定に送られた。本出願の発明者らは、驚くべきことに、かつ予期せぬことに、単一のコピーが、SGI1遺伝子座に挿入されたCas9遺伝子であることを見出した。
【0204】
実施例8
完全浸透性Parachlorella単一コピーCAS9エディターラインを使用したSGI1、SGI2、およびCPSRP54のトリプルノックアウト
上記のParachlorellaSGI1ノックアウト株STR24129が作製され、この株は、マーカー(ble/GFP)がSGI1ノックアウトガイド配列:
を使用してフロックアウトされた状態で、SGI1遺伝子座に挿入されたCas9およびCreの単一コピーを有する。
【0205】
SGI1ノックアウト株STR24129は、SGI2およびSRP54遺伝子をノックアウトするための形質転換宿主として使用された。宿主株STR24129を、SGI2およびSRP54遺伝子を標的とするgRNAと、各標的(例えば、SRRP54およびSGI2)に対する相同組換え(HR)アームを含む、Ultramerを含む選択カセット(pSGE06866)と、で同時形質転換した。BleR遺伝子は、ParachlorellaRPS4プロモーター(配列番号71)に作動可能に連結され、かつParachlorellaRPS4ターミネーター(配列番号72)によって終結していた。GFP遺伝子は、ParachlorellaACP1プロモーターに作動可能に連結され、かつParachlorellaACP1ターミネーターによって終結していた。選択カセットは、マーカーリサイクルの可能性があるlox部位に囲まれたbleおよびGFPマーカーを含む。Creが発現すると、lox部位が再結合し、これらの配列間のDNAをループアウトする。
【0206】
形質転換された宿主細胞を選択プレートに播種し、コロニーをパッチし、単一のコロニーを拾い上げ、PCRを使用してノックアウトについてスクリーニングした。PCR陽性反応を示したものは、各標的のノックアウト(カセットの挿入)を確認するために配列決定に送られた。
【0207】
図16Aおよび16Bは、ParachlorellaSRP54およびParachlorellaSGI2をノックアウトするための選択カセットの概略図を示す。gRNA、HRアームを有するUltramerの配列を以下に示す。
【0208】
SRP54-EMRE3EUKT592650
gRNA配列:
【0209】
pSGE06866を増幅するHRアームを有するUltramer:
【0210】
【0211】
スクリーニングに使用される他のプライマー(選択カセット内に位置する):
【0212】
SGI2-EMRE3EUKT590485
gRNA配列:
【0213】
HRアームをPSGE06866に配置するためのUltramer配列
【0214】
【0215】
プライマー配列:
プライマーJV946およびAE608もスクリーニングプライマーとして使用された。
【0216】
実施例9
SGI2タンパク質のドメインアーキテクチャのバイオインフォマティクス分析
Parachlorella種、Oocystis種、Tetraselmis種、Arabidopsis thalianaからの例示的なSGI2タンパク質のドメインアーキテクチャは、オンラインツールInterProScan(EMBL-EBI,Hinxton,Cambridgeshire,CB10 1SD,UKからのツールバージョン5.27、データベースバージョン66.0)を使用して分析した。
【0217】
図3~9に示すように、SGI2タンパク質のN末端に単一の保存された応答レシーバードメインを特定した。
【0218】
実施例10
SGI2タンパク質の応答レシーバードメインのバイオインフォマティクス分析
Parachlorella応答レシーバードメイン(配列番号6)の局所アライメントを、BLOSUM62マトリックス、10のギャップペナルティおよび0.5の伸長(Extend)ペナルティを使用して、他の藻類種および様々な植物からオルソロガスタンパク質で行った。Parachlorella応答レシーバードメイン(配列番号6)と様々な光合成生物の局所アライメントを以下の表5に示す。
【0219】
(表5)Parachlorella応答レシーバードメインと様々なオルソロガスタンパク質の局所アラインメントの結果
【0220】
Parachlorella種の応答レシーバードメインは、他の藻類種との高い同一性割合、および様々な植物種との高い類似度を示した。
【0221】
実施例11
低クロロフィルParachlorella種株WT-1185変異体のためのスクリーニング
上記のような、Parachlorella種遺伝子の、SGI1、SGI2のノックアウト、SGI1とcpSRP54とのダブルノックアウト、またはSGI2とcpSRP54とのダブルノックアウトに続いて、淡色のコロニーから細胞を選択し、弱光(100μmolの光子m-2秒-1)において1~5日間成長させ、その後BD FACSAria IIフローサイトメーター(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用してフローサイトメトリーで選別し、低クロロフィル蛍光を有する細胞を選択した。一般に、細胞の全集団に対しておよそ0.5~2%の、最低のクロロフィル蛍光を有する細胞の部分を選択した。選別された細胞を播種した後、フローサイトメトリーで分離されたアンテナ低減系統のさらなる一次スクリーニングを、淡緑色または黄色のコロニーを目視での選択を通して行った。他の色素低減変異体および偽陽性からの推定アンテナ低減系統をスクリーニングするために、選択したコロニーを中程度スループットの二次培養スクリーニングにかけ、光生理学的測定の前に分離株を弱光条件に順化させた。強光順化状態の、低減されたクロロフィル蛍光特性を保持するクローンを選択するために、弱光順化中にクロロフィル蛍光を監視した。選択されたクローンは、強光から弱光に移されたときに、(野生型細胞と比較して)クロロフィルのわずかな増加のみを示した。
【0222】
75cm2の組織培養フラスコで165mlの培養物を使用して、一定の強光(約1,700μmolの光子m-2秒-1)で半連続培養アッセイを実施し、野生型前駆体株WT-1185に対して、生産性(全有機炭素(TOC)蓄積として測定された、バイオマス産生の増加率)が増加した株を特定した。2つの75cm2のフラスコに、所定の変異株の種培養を接種した。フラスコは、バブリングされたCO2富化空気(1%のCO2)を培養物を通して送達するための、シリンジフィルターに接続されたチューブを有するストッパーを有した。フラスコをLEDライトバンクに対して幅(最も狭い寸法)に揃えた。培養物の深さ(光源に最も近いフラスコの壁からフラスコの後ろの壁までの距離)は、約8.0cmであった。培養物量の65%を取り出して、それを、培養物で発生する蒸発に起因する塩分の増加を調整するために希釈された新鮮なPM119培地(212mlの脱イオン水(diH2O)を1LのPM119培地に加える)と交換することにより、培養物を明期の開始時に毎日希釈した。TOC分析用の試料は、希釈のために取り出した培養物から採取した。
【0223】
実施例12
Parachlorella種変異体の半連続生産性アッセイ
弱光条件下で低減したクロロフィルを有することが判明したParachlorella株ので、生産性の向上を分析した。生産性アッセイでは、変異体の光独立栄養培養物を、一定光の半連続モード(CL-SCPA)で数日間にわたって成長させて、バイオマス測定のために、培養試料を毎日取り出した。光は、一定の1900~2000μmolの光子m-2秒-1で1日24時間維持した。このアッセイでは、225cm2フラスコ内のPM119培養培地に、所定の変異株の種培養を接種した。株ごとに3つの培養を開始した。フラスコは攪拌棒を含み、バブリングされたCO2富化空気(1%のCO2)を培養物を通して送達するための、シリンジフィルターに接続されたチューブを有するストッパーを有した。フラスコをLEDライトバンクに対して幅(最も狭い寸法)に揃えた。光源から後方に延びるフラスコの「深さ」寸法は、13.7cmであった。フラスコの配置を考慮に入れると、光源の表面からフラスコ内の細胞の最も遠い距離は、約15.5cmであった。培養物量の65%を取り出して、それを、培養物で発生する蒸発に起因する塩分の増加を調整するために、希釈された新鮮なPM119培地と交換することにより、培養物を毎日希釈した。TOC分析用の試料は、希釈のために取り出した培養物から採取した。培養が定常状態に達したら、半連続生産性アッセイを、12日間実行した。
【0224】
アッセイの生産性は、毎日取り出された試料からの全有機炭素(TOC)を測定することによって評価した。全有機炭素(TOC)は、2mLの細胞培養物をDI水で20mLの総量に希釈することによって決定した。全炭素(TC)および全無機炭素(TIC)を測定するために、測定ごとに3回の注入を、Shimadzu TOC-Vcsjアナライザーに注入した。燃焼炉を720℃に設定し、TOCを、TCからTICを差し引いて求めた。4点の校正範囲は、非希釈培養の20~2000ppmに相当する2ppm~200ppmであった(相関係数:r2>0.999)。
【0225】
本発明の多数の実施形態が説明されてきた。それでもなお、本明細書に記載の実施形態の要素を組み合わせて追加の実施形態を作製することができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態、代替物および同等物は、本明細書で説明および主張される本発明の範囲内である。
【0226】
実施例13
Parachlorella種変異体の半連続尿素バッチアッセイ
SCUBA(半連続尿素バッチアッセイ)では、変異体の光合成独立栄養培養物を、一昼夜の、窒素が豊富な半連続モードで数日間成長させ、その後、窒素が枯渇したバッチモードで成長させた。光は、暗闇から、正午での2000μmol光子m-2秒-1までの範囲の、Imperial Valley,Caの平均的な5月4日を模倣するようにプログラムされた。試料は、毎日「夕暮れ時」に採取した。このアッセイにおいて、500mlの四角フラスコ中の尿素ベースのPM153培養培地420mlに、所与の変異株の種培養を接種した。
【0227】
PM152は、PM074に基づく栄養素枯渇培地であるが、窒素源として硝酸塩の代わりに尿素を含む。これは、1.3mlのPROLINE(登録商標)F/2藻類供給部分A(Aquatic Eco-Systems)および1.3mlの「溶液C」を、1リットルの最終容量のInstant Ocean塩の溶液(17.5g/L)(Aquatic Eco-Systems、Apopka,FL)に添加することによって作製される。溶液Cは、38.75g/LのNaH2PO4・H2O、758mg/LのチアミンHCl、3.88mg/LのビタミンB12、および3.84mg/Lのビオチンである。
【0228】
株ごとに3つの培養を開始した。フラスコは攪拌棒を含み、バブリングされたCO2富化空気(1%のCO2)を培養物を通して送達するための、シリンジフィルターに接続されたチューブを有するストッパーを有した。フラスコは、0.0875m2の、光に向かう開口部と位置合わせされ、光源から後方に延びるフラスコの「深さ」寸法は、8cmであった。半連続バイオマス測定では、培養物量の40%を取り出して、それを、培養物で発生する蒸発に起因する塩分の増加を調整するために希釈された新鮮なPM153培地と交換することにより、培養物を毎日希釈した。TOC分析用の試料は、希釈のために取り出した培養物から採取した。培養が定常状態に達するまで、半連続生産性アッセイを実行した。半連続的な培養の後、培養物をアッセイから取り出し、遠心分離を使用してペレット化し、420mlの窒素枯渇PM152培地に再懸濁した。半連続モードと同じ成長条件を使用して、培養物を4~5日間バッチで成長させた。バッチモード中に、脂質生産性を決定するためにFAME試料を採取し、FAME/TOCを決定するためにTOC試料を採取した。
【0229】
実施例14
SGI1、SGI2遺伝子のParachlorellaノックアウト変異体、SGI1およびSRP54、ならびにSGI2およびSRP54遺伝子の、ダブルノックアウトのクロロフィル含有量、アンテナサイズ、および光生理学
高生産性変異体のクロロフィル含有量を、メタノールで細胞を抽出し、分光光度法で上清を分析することによって決定した。簡単に言えば、培養物の500μlのアリコートを、2.0mlのツイストトップチューブにピペットで移し、テーブルトップマイクロ遠心機を使用して、15,000rpmで10分間ペレット化した。上清をペレットから吸引し、各ペレットを1.5mlの99.8%メタノール(前もって炭酸マグネシウムで中和した)に再懸濁した。0.2mlのガラスビーズ(0.1mmの直径)を各バイアル瓶に添加し、ビーズを3分間強くかき混ぜた。1.0mlの上清を新しい1.7mlのフリップトップチューブに移し、テーブルトップマイクロ遠心機内で、15,000rpmで10分間遠心分離した。得られたペレットは白色であり、完全な抽出が行われたことを示している。0.8mlの各上清を、ピペットで光学ガラスキュベットに移し、すぐに、720nm、665nmおよび652nmの波長で、吸収波長を読み取った。分光光度測定は、99.8%のメタノールブランクを使用して、デュアルビームモードで実行した。次の等式を使用して、クロロフィルの濃度を計算した:クロロフィルa[gm-3]=16.72(A665-A720)+9.16(A652-A720)およびクロロフィルb[gm-3]=34.09(A652-A720)-15.28(A665-A720)。クロロフィルaおよびbの量は、細胞ごとおよびTOCごとに標準化された。細胞ごとの総クロロフィルの量はSGI1-2261変異体間で多少異なったが、観測されたアンテナサイズの減少と一致して、約30%から約65%の範囲の量で、野生型細胞に対して普遍的に減少した。TOCごとに、野生型細胞に対するSGI1変異体の総クロロフィルの減少は、約30%から約50%まで範囲であった。
【0230】
クロロフィル含有量に加えて、SGI1およびSGI2ノックアウト変異体と、SGI1およびSRP54ならびにSGI2およびSRP54のダブルノックアウトを、PSIIの機能的吸収断面積、PSIの機能的吸収断面積、1/τ’Qa(光飽和における光化学系IIのアクセプター側の電子輸送の飽和速度、線形光合成電子輸送の効率の尺度)、ならびに炭素固定の最大速度、Pmaxについて分析した。野生型および変異株の細胞を、上記の一定光の半連続培養アッセイ(CL-SCPA)で培養した。
【0231】
様々な光合成パラメータの分析を、光合成生物の包括的な一連の光合成および生理学的特性を測定するために開発された蛍光誘導および緩和(FIRe)手法を使用して行った(Gorbunov and Falkowski(2005)“Fluorescence Induction and Relaxation(FIRe)Technique and Instrumentation for Monitoring Photosynthetic Processes and Primary Production in Aquatic Ecosystems”in:Photosynthesis:Fundamental Aspects to Global Perspectives,Proc.13th International Congress of Photosynthesis,Montreal,Aug.29-Sept.3,2004.(Eds:A.van der Est and D.Bruce),Allen Press,V.2,pp.1029-1031)。FIRe手法は、クロロフィルの「可変蛍光」プロファイルの測定および分析に依存し(Falkowski et.al.,2004“Development and Application of Variable Chlorophyll Fluorescence Techniques in Marine Ecosystems”in:Chlorophyll a Fluorescence:A Signature of Photosynthesis(C.Papageorgiou and Govingjee,eds),Springer,pp.757-778により検討)、「可変蛍光」プロファイルは、クロロフィル蛍光と光合成プロセスの効率との間の関係に依存する。この手法は、光合成の集光プロセス、光化学系II(PSII)における光化学、および炭素固定までの光合成電子輸送を特徴付ける一連のパラメータを提供する。ここで実行された測定は、Maxim Gorbunov of Rutgers University,East Brunswick,NJによって製造されたmini-FIReデバイスを使用した。市販のFIReデバイスは、Sea-Bird Scientific(Halifax,Canada,satlantic.com and planet-ocean.co.uk)から入手可能である。FIReデバイスの使用に関するさらなる情報は、会社のマニュアルで利用可能である。すべての測定は、一定の光(2000μmol光子・m-2・秒-1)の半連続培養(CL-SCPA)培養を使用して行われた(実施例3を参照)。FV/FMおよびσPSIIを得るために、蛍光誘導および緩和(FIRe)速度論の測定を暗黒下で行った。表6に提示したFv/FMおよびσPSIIの値は、6つの測定値の平均として計算し(2つの生物的反復のそれぞれの3つの測定値)、これらのパラメータの誤差は、5%を超えなかった。
【0232】
PSI断面積の測定は、特注のシングルターンオーバーフラッシャー(STF)を搭載した、520nmでエレクトロクロミックシフト(ECS)を測定するフィルターセットを備えた改造JTS-10分光計を使用して行った。試料チャンバーのピークパワー密度は、約10μs(マイクロ秒)以内に反応中心を完全に閉じるのに十分な高さであった。結果として生じる励起率は、10μsごとに反応中心あたり約1~3ヒットであった(光化学系の機能的吸収断面積に応じる)。STFは青色光の短い超高輝度パルス(455nm、30nmの半値幅を有する)を生成し、パルスのタイミングはJTS-10分光計からのトリガーによって制御された。パルス持続時間は、STFパルス制御ボックスによって制御され、フロントパネルのポテンショメータを使用して1μs~50μsの範囲で調整可能であった。PSI断面積を測定するために、積分球を備えたPerkin Elmer Lambda 650分光光度計を使用した細胞懸濁液の吸収スペクトルの測定に基づいて、クロロフィルの最大値(約440nm)で培養物を約0.2のODに希釈した。ECSを、DCMUおよびヒドロキシルアミンの存在下で、4000から120,000μmolの光子m-2s-1の範囲の強度の10μsのフラッシュを使用して測定した。実験曲線を、単純な指数関数でフィッティングさせた。
式中、ECS
MECS
Mは、最大ECS信号であり、ItItは、光子/m2の光子密度であり、σ
PSIσ
PSIは、PSIの機能的断面積である。野生型のParachlorella(WT-1185)のPSIの機能的断面積について得られた値は、(4.0±0.5)×10
-18(4.0±0.5)×10
-18m
2であった。これらの値は、同じ条件下で成長させたPSIIの機能的断面積について得られたもの(σ
PSII=(4.3±0.1)×10
-18
σPSII=(4.3±0.1)×10
-18m2)に近い。これらのパラメータの誤差は、20%を超えないと推定した。
【0233】
炭素固定率(C14Pmax)は、0.5gl-1(5.95mM)の重炭酸ナトリウムを含有する培地で5μg chl ml-1に正規化された培養物を使用して測定された。20.4μCi ml-1 C14標識重炭酸ナトリウムを各培養物に添加し、2500μEに10分間の持続時間で曝露させた。試料を、2NのHClで直ちに酸性化し、一晩オフガスにした。翌日、試料をBeckman LS6500シンチレーションカウンターを使用して測定し、定量化した。
【0234】
τ’
Qa(飽和光条件下で測定されたPSIIのアクセプター側の電子輸送時間-線形光合成電子輸送の最も遅い工程によって効果的に決定)は、FIRe光度曲線および暗黒誘起緩和速度論(DIRK)プロファイルから測定された。野生型と比較した体積PSII濃度を、(Fv/σ
530PSII)と推定した。これらのパラメータの誤差は、15%を超えないと推定した。光吸収断面積(光源の発光スペクトル全体の平均)を、次の等式を使用して推定した。
式中、[Chl/TOC]は、試料のクロロフィル/TOCであり、OD(λ)OD(λ)は、試料の波長λλで測定された光学密度であり、ΔlΔlは、キュベット内の測定ビーム経路長(1cm)であり、I(λ)I(λ)は、波長λλで藻類を成長させるために使用された光源の強度である。
【0235】
(表6)FIRe手法で測定された蛍光および光合成パラメータ
【0236】
野生型ParachlorellaWT-1185株の光生理学的データ、クロロフィル含有量および生産性データ、Parachlorellaにおける、SRP54およびSGI2遺伝子の単一ノックアウト、ならびにSGI2およびSRP54遺伝子のダブルノックアウトを評価した。すべての測定値は、CL-SCPA培養物を使用して採取した。FV/FMおよびσPSIIを得るために、蛍光誘導および緩和(FIRe)速度論の測定を暗黒下で行った。Fv/FMおよびσPSIIの提示された値は、6つの測定値の平均として計算し(2つの生物的反復のそれぞれの3つの測定値)、これらのパラメータの誤差は、5%を超えなかった。τ’Qa(飽和光条件下で測定されたPSIIのアクセプター側の電子輸送時間-線形光合成電子輸送の最も遅い工程によって効果的に決定)は、FIRe光度曲線およびDIRKプロファイルから測定された。上述のように、PSI断面積の測定を行った。結果を以下の表7にまとめる。
【0237】
(表7)光生理学、クロロフィル、および生産性データ
【0238】
PSIIの機能的吸収断面積が大幅に減少し(50%)、機能的PSII複合体の数がいくらか減少している。細胞は炭素固定能力が向上した(Pmaxの26%の増加)。SGI2またはSRP54の単一ノックアウトは、野生型株と比較して、TOC生産性の少なくとも17%の増加を示した。全体的に、Parachlorellaについて観察された生産性の最も高い増加の中でも、ダブルSGI2/SRP54ノックアウト株は、TOC生産性の32%の向上を示し(ダブルSGI2/SRP54ノックアウト株をCL-SCPAアッセイで実行した二回とも、生産性は40g/m
2/日を超えた)、
図11に示すように、SRP54またはSGI2のいずれかの単一ノックアウトの平均改善よりも高かった。結果は、SGI2とSRP54の両方の遺伝子をノックアウトすると、生産性に相乗効果があるように見えることを示している。
【0239】
野生型ParachlorellaWT-1185株の光生理学的データ、SRP54およびSGI1遺伝子の単一ノックアウト、ならびにParachlorellaにおけるSGI1およびSRP54遺伝子のダブルノックアウトを有する3つの株を評価した。すべての測定値は、CL-SCPA培養物を使用して採取した。FV/FMおよびσPSIIを得るために、蛍光誘導および緩和(FIRe)速度論の測定を暗黒下で行った。Fv/FMおよびσPSIIについて提示した値は、6つの測定値の平均として計算し(2つの生物的反復のそれぞれの3つの測定値)、これらのパラメータの誤差は、5%を超えなかった。τ’Qa(飽和光条件下で測定されたPSIIのアクセプター側の電子輸送時間-線形光合成電子輸送の最も遅い工程によって効果的に決定)は、FIRe光度曲線およびDIRKプロファイルから測定された。結果を以下の表8にまとめる。
【0240】
【0241】
単一のSGI1またはSRP54遺伝子ノックアウトと比較して、SGI1/SRP54ダブルノックアウト株のPSIIの機能的断面積が実質的に減少し、ならびに電子輸送の光飽和率が減少し、光合成の速度が向上していることを示している。機能的PSII複合体の数もある程度増加している。SRP54またはSGI1のみの単一ノックアウトと比較して、ダブルノックアウト株では、光化学系IIの光化学の最大量子収率(FV/FM)が改善されている。
【0242】
実施例15
SGI1/SGI2、SGI1/SRP54、およびSGI1/SGI2/SRP54ノックアウト変異体のマイクロ近似分析
SGI1/SGI2、SGI1/SRP54、およびSGI1/SGI2/SRP54ノックアウト変異体の全体的なバイオマス組成を決定するために、40%の毎日の希釈で半連続モードで成長させた培養物の試料の定量分析を行って、半連続培養における細胞の全有機炭素(TOC)および脂質含有量を決定した。培養物が定常状態に達した後、毎日の希釈のために取り出した培養物のアリコートを、脂質、タンパク質、および炭水化物の分析に使用した。藻類培養物試料の全有機炭素(TOC)は、2mLの細胞培養物をDI水で20mLの総量に希釈することによって決定した。全炭素(TC)および全無機炭素(TIC)を測定するために、測定ごとに3回の注入を、Shimadzu TOC-Vcsjアナライザーに注入した。燃焼炉を720℃に設定し、TOCを、TCからTICを差し引いて求めた。4点の校正範囲は、非希釈培養の20~2000ppmに相当する2ppm~200ppmであった(相関係数:r2>0.999)。
【0243】
脂質含有量を測定するために、GeneVac HT-4Xを使用して乾燥させた2mLの試料に対してFAME分析を行った。乾燥したペレットに、以下を添加した:500μLの、メタノール中500mMのKOH;200μLの、0.05%のブチル化ヒドロキシルトルエンを含有するテトラヒドロフラン;40μLの、2mg/mlのC11:0遊離脂肪酸/C13:0トリグリセリド/C23:0脂肪酸メチルエステル内部標準ミックス;および500μLのガラスビーズ(直径425~600μm)。バイアル瓶を、オープントップのPTFEセプタムで裏打ちされたキャップで蓋をし、SPEX GenoGrinder内に、1.65krpmで7.5分間置いた。次に、試料を80℃で5分間加熱し、冷却した。誘導体化のために、500μLのメタノール中の10%三フッ化ホウ素を試料に添加し、その後、80℃で30分間加熱した。チューブを冷却して、その後、2mLのヘプタンと、500μLの5MのNaClとを添加した。次いで、試料を2krpmで5分間ボルテックスし、最後に1krpmで3分間遠心分離した。ヘプタン層を、Gerstel MPSオートサンプラーを使用してサンプリングした。定量には、80μgのC23:0 FAME内部標準を使用した。
【0244】
Parachlorella野生型株(STR00010)、SRP54ノックアウト変異体(STR00625)、SGI1ノックアウト変異体(STR24183)、SGI1/SRP54ダブルノックアウト変異体(STR24538およびSTR24540)の半連続領域TOC生産性およびバッチTOCを示すアッセイの結果を、それぞれ
図12Aおよび12Bに示す。SRP54ノックアウト変異体、SGI1ノックアウト変異体、SGI1/SRP54ダブルノックアウト変異体は、Parachlorella野生型株を超えるTOC生産性の増加を示した。
【0245】
Parachlorella野生型株(STR00010)、SRP54ノックアウト変異体(STR00625)、SGI1ノックアウト変異体(STR00012)、SGI2/SRP54ダブルノックアウト変異体(STR00516)、およびSGI1/SGI2/SRP54トリプルノックアウト変異体(STR25761およびSTR25762)の半連続領域TOC生産性およびバッチTOCを示すアッセイの結果を、それぞれ
図13Aおよび13Bに示す。SGI1ノックアウト変異体、SGI2/SRP54ダブルノックアウト変異体、SGI1/SGI2/SRP54トリプルノックアウト変異体は、Parachlorella野生型株を超えるTOC生産性の増加を示した。
【0246】
Parachlorella野生型株(STR00010)、SRP54ノックアウト変異体(STR00625)、SGI1ノックアウト変異体(STR24183)、SGI1/SRP54ダブルノックアウト変異体(STR24538およびSTR24540)のバッチFAME生産性アッセイの結果を、
図14に示す。SGI1ノックアウト変異体およびSGI1/SRP54ノックアウト変異体は、Parachlorella野生型株を超えるFAME生産性の増加を示した。
【0247】
Parachlorella野生型株(STR00010)、SGI1ノックアウト変異体(STR00012)、SGI2/SRP54ダブルノックアウト変異体(STR00516)、およびSGI1/SGI2/SRP54トリプルノックアウト変異体(STR25761およびSTR25762)のバッチFAME生産性アッセイの結果を、
図15に示す。
【0248】
本出願内の見出しは、読者の便宜のためだけのものであり、本発明またはその実施形態の範囲を多少なりとも限定するものではない。
【0249】
本明細書で言及されたすべての刊行物および特許出願は、あたかも各刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】