(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】追加免疫ワクチンのアジュバント化された処方物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/39 20060101AFI20230614BHJP
A61K 39/116 20060101ALI20230614BHJP
A61K 39/05 20060101ALI20230614BHJP
A61K 39/08 20060101ALI20230614BHJP
A61K 39/10 20060101ALI20230614BHJP
A61K 39/13 20060101ALI20230614BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230614BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K39/39
A61K39/116
A61K39/05
A61K39/08
A61K39/10
A61K39/13
A61P31/04
A61P31/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021015094
(22)【出願日】2021-02-02
(62)【分割の表示】P 2018194314の分割
【原出願日】2013-03-08
【審査請求日】2021-03-04
(32)【優先日】2012-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ ブファーリ
(72)【発明者】
【氏名】ババラ バウドナー
(72)【発明者】
【氏名】デレク オーヘイガン
(72)【発明者】
【氏名】マンモハン シン
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-500398(JP,A)
【文献】国際公開第2011/027222(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/049677(WO,A1)
【文献】特開平04-368337(JP,A)
【文献】Blatter, M. et al.,Immunogenicity and safety of a tetanus toxoid, reduced diphtheria toxoid and three-component acellular pertussis vaccine in adults 19-64 years of age,Vaccine,2009年,Vol.27, No.5,p.765-772
【文献】Giannini, S. L. et al.,Enhanced humoral and memory B cellular immunity using HPV16/18 L1 VLP vaccine formulated with the MPL/aluminium salt combination (AS04) compared to aluminium salt only,Vaccine,2006年,Vol.24, No.33-34,p.5937-5949
【文献】中山 哲夫,アジュバントの種類と作用機序,インフルエンザ,2009年,第10巻,第4号,p.295-301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、アルミニウム塩アジュバント及び
3d-MPLを含む免疫原性組成物であって、ジフテリアトキソイドと比較して過剰の(Lf単位で測定)破傷風トキソイドを含む、前記組成物。
【請求項2】
前記
3d-MPLが前記アルミニウム塩アジュバントに吸着されている、
請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記トキソイドのうちの1、2又は3種が前記アルミニウム塩アジュバントに吸着されている、
請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
Al
+++濃度が≦0.5mg/mlである、
請求項1~3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記アルミニウム塩が水酸化アルミニウムである、
請求項1~4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記
3d-MPLが、前記
3d-MPLの不溶性金属塩への吸着を可能にする少なくとも1個の吸着部分を含む、
請求項1~5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記吸着部分がホスフェート又はホスホネートである、
請求項6記載の組成物。
【請求項8】
ヒスチジン緩衝液を含む、
請求項1~7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
ジフテリアトキソイド濃度が≦4Lf/mlである、
請求項1~8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
破傷風トキソイド濃度が≦9Lf/mlである、
請求項1~9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
百日咳トキソイド濃度が≦4μg/mlである、
請求項1~10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
三価の不活化ポリオウイルス抗原成分もまた含む、
請求項1~11のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
6.1~7.9のpHを有する、
請求項1~12のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
被験体において免疫応答を上昇させるための、
請求項1~13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
前記被験体が、小児のときにDTPワクチンを以前に受けたことがある、
請求項14記載の組成物。
【請求項16】
百日咳トキソイド、線維状赤血球凝集素及びペルタクチンが、1:1:2の質量比で存在する、無細胞性百日咳成分、アルミニウム塩アジュバント及び
3d-MPLを含む免疫原性組成物。
【請求項17】
前記百日咳トキソイドがPT-9K/129G二重変異体である、
請求項16記載の組成物。
【請求項18】
単位用量形態であり、1単位用量あたり、4μgの百日咳トキソイド、4μgのFHA及び8μgのペルタクチンを含む、
請求項16又は17記載の組成物。
【請求項19】
ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイドもまた含む、
請求項16~18のいずれか1項記載の組成物。
【請求項20】
前記
3d-MPLが前記アルミニウム塩に吸着されている、
請求項16~19のいずれか1項記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国仮出願第61/608,398号(2012年3月8日出願)および同第61/697,730号(2012年9月6日出願)の利益を主張する。これら出願の両方の完全な内容は、全ての目的のために参考として本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ジフテリア、破傷風および百日咳のための追加免疫ワクチンの分野にある。
【背景技術】
【0003】
2種の青年DTP追加免疫ワクチン(booster vaccine)、すなわちBOOSTRIX(商標)およびADACEL(商標)が現在使用可能である[1]。両方のワクチンはジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドおよび無細胞性百日咳抗原を含有している。これらはまた不活化ポリオウイルス(BOOSTRIX POLIO(商標)およびADACEL POLIO(商標))と組み合わせて使用可能である。これらのワクチンすべては、アルミニウム塩アジュバントを含む。
【0004】
一般的にそれらのワクチンは、小児DTaPワクチンとは対照的に、TdaPワクチンとして公知である。一般的な特徴は、それらの小児用の対応物と比較して、抗原用量がより低いことであり、例えば、BOOSTRIX(商標)のジフテリアトキソイド含有量は、INFANRIX(商標)製品の10分の1まで低くなり、ADACEL(商標)では、DAPTACEL(商標)の15分の2まで低くなっている。さらに、抗原性成分の比もまた変化している。特に、ジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドの比は、INFANRIX(商標)製品では2.5:1であるが、BOOSTRIX(商標)製品では1:2であり、またDAPTACEL(商標)製品では3:1であるが、ADACEL(商標)製品では1:2.5である。したがって、これらの追加免疫ワクチンは、絶対量においても、さらに破傷風トキソイド含有量と比較しても、ジフテリアトキソイドの用量において大きな低減を示している。百日咳成分のうちのいくつかもまた、小児用の対応物に見られるレベルと異なるが、ポリオウイルス抗原のレベルは、小児ワクチンおよび青年ワクチンの両方において同じである。公共の情報に基づき、組成は以下のとおりである:
【0005】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Broderら、MMWR Recomm Rep(2006)55(RR-3):1~34
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、小児期の免疫化を以前に受けたことがある、成人、青年および4才以上の年齢の小児において追加免疫(booster)として、ヒトの使用に適したさらなるおよび改善されたTdaPワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、現行のTdaPワクチンの中にTLRアゴニストを含むことによって、それらを改善する。このアゴニストは、より強い保護、より長く持続する保護を提供することができ、かつ/またはある特定の免疫応答を達成するのに必要とされる抗原の量を低減させることができる。
【0009】
第2の態様では、本発明は、水中油型エマルジョンで現在のTdaPワクチンにアジュバント化する(adjuvanting)ことによって、それらを改善する。公知のTdaPワクチンと比較して、このエマルジョンは、再度、保護を改善することができる。
【0010】
したがって、第1の態様に対して本発明は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、アルミニウム塩アジュバント、およびTLRアゴニストを含む免疫原性組成物であって、ジフテリアトキソイドと比較して、過剰の破傷風トキソイドを含む(Lf単位で)組成物を提供する。
【0011】
TLRアゴニストは、理想的にはTLR4アゴニストまたはTLR7アゴニストである。好ましくは、TLRアゴニストおよび/または少なくとも1種のトキソイドは、アルミニウム塩アジュバントに吸着している。
【0012】
TLRアゴニストを含めることによって、同等の免疫原性を有しながらも、組成物が公知のワクチンと比較してより低い量の抗原および/またはより低い量のアルミニウムを有することが可能となる。
【0013】
理想的には組成物は、以下の特性のうちの1つまたは複数を有する:
・Al+++濃度≦0.5mg/ml;
・ジフテリアトキソイド濃度≦4Lf/ml;
・破傷風トキソイド濃度≦9Lf/ml;および/または
・百日咳トキソイド濃度≦4μg/ml。
【0014】
例えば、患者への投与に対して免疫原性組成物が単位用量形態である場合(例えば、0.5mlの体積で)、免疫原性組成物は、以下の特性のうちの1つまたは複数を有することができる:
・Al+++含有量≦0.255mg;
・ジフテリアトキソイド含有量≦2Lf;
・破傷風トキソイド含有量≦4.5Lf;および/または
・百日咳トキソイド含有量≦2μg。
【0015】
第2の態様に対して、本発明は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、および水中油型エマルジョンアジュバントを含む免疫原性組成物であって、ジフテリアトキソイドと比較して、過剰の破傷風トキソイドを含む(Lf単位で)組成物を提供する。
【0016】
理想的には組成物は、以下の特性のうちの1つまたは複数を有する:
・ジフテリアトキソイド濃度≦4Lf/ml;
・破傷風トキソイド濃度≦9Lf/ml;および/または
・百日咳トキソイド濃度≦4μg/ml。
【0017】
例えば、患者への投与に対して免疫原性組成物が単位用量形態である場合(例えば、0.5mlの体積で)、免疫原性組成物は、以下の特性のうちの1つまたは複数を有することができる:
・ジフテリアトキソイド含有量≦2Lf;
・破傷風トキソイド含有量≦4.5Lf;および/または
・百日咳トキソイド含有量≦2μg。
【0018】
両方の態様に対して、本発明の組成物は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、および百日咳トキソイドに加えて抗原を含むことができ、例えばこれらは不活化ポリオウイルス(IPV)成分を含むことができる。
【0019】
アルミニウム塩
TLRアゴニストは、不溶性アルミニウム塩に吸着することによって、TdaP免疫原をアジュバント化させるための吸着されている複合体を形成することができる。このようなアルミニウム塩は、ワクチン中で使用されてきた長い歴史を有する。
【0020】
有用なアルミニウム塩として、これらに限定されないが、水酸化アルミニウムアジュバントおよびリン酸アルミニウムアジュバントが挙げられる。このような塩は、例えば、参考文献2の第8および9章、ならびに参考文献3の第4章において記載されている。ヒドロキシドイオンを含むアルミニウム塩は、これらのヒドロキシドイオンが容易にリガンド交換できることから、本発明で使用するのに好ましい。したがって、TLRアゴニストの吸着に好ましい塩は、水酸化アルミニウムおよび/またはヒドロキシリン酸アルミニウムである。これらは、リン含有基(例えばホスフェート、ホスホネート)と容易にリガンド交換して、安定的な吸着をもたらし得る表面ヒドロキシル部分を有する。水酸化アルミニウムアジュバントが最も好ましい。
【0021】
「水酸化アルミニウム」として一般に公知のアジュバントは典型的には、通常は少なくとも部分的に結晶質であるオキシ水酸化アルミニウム塩である。式AlO(OH)によって表すことができるオキシ水酸化アルミニウムは、赤外(IR)分光法によって、詳細には1070cm-1での吸着バンドおよび3090~3100cm-1での強いショルダーの存在によって、水酸化アルミニウムAl(OH)3などの他のアルミニウム化合物から識別することができる(参考文献2の第9章)。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶化度は、ハーフハイトでの回折バンド幅(the width of the diffraction band at half height)(WHH)に反映され、その際、結晶性が乏しい粒子は、結晶子のより小さなサイズのため、より大きな線の広がりを示す。WHHが大きくなるほど、表面積は大きくなり、かつより高いWHH値を有するアジュバントが、抗原吸着についてより高い能力を有することが判明している。繊維状形態(例えば透過電子顕微鏡写真において見られるとおりの)が、例えば直径約2nmを有する針様粒子を伴う水酸化アルミニウムアジュバントでは典型的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは典型的には、約11であり、即ちそのアジュバント自体が、生理学的pHで正の表面電荷を有する。pH7.4でAl+++1mg当たりタンパク質1.8~2.6mgの吸着能が、水酸化アルミニウムアジュバントでは報告されている。
【0022】
「リン酸アルミニウム」として一般に公知のアジュバントは典型的には、ヒドロキシリン酸アルミニウムであり、多くの場合に少量の硫酸塩も含む(即ち、ヒドロキシリン酸硫酸アルミニウム)。それらは沈殿によって得ることができ、沈殿の間の反応条件および濃度が、その塩中のヒドロキシルに対するホスフェートの置換の程度に影響する。ヒドロキ
シリン酸塩は一般に、0.3から1.2のPO4/Alモル比を有する。ヒドロキシリン酸塩は、ヒドロキシル基の存在によって厳密なAlPO4からは区別することができる。例えば3164cm-1でのIRスペクトルバンド(例えば、200℃に加熱した場合)が、構造的ヒドロキシルの存在を示す(参考文献2の第9章)。
【0023】
リン酸アルミニウムアジュバントのPO4/Al+++モル比は、一般に0.3から1.2、好ましくは0.8から1.2、より好ましくは0.95±0.1である。リン酸アルミニウムは一般に、特にヒドロキシリン酸塩では非晶質である。典型的なアジュバントは、0.84から0.92のPO4/Alモル比を有する非晶質のヒドロキシリン酸アルミニウムであり、0.6mg Al+++/mlで含まれる。そのリン酸アルミニウムは一般に、粒子状である(例えば、透過電子顕微鏡写真で見られるとおりプレート様の形態であり、主要な粒子は50nmの範囲である)。その粒子の典型的な直径は、任意の抗原の吸着後に、0.5~20μmの範囲(例えば約5~10μm)である。pH7.4でAl+++1mgあたりタンパク質0.7~1.5mgの吸着能が、リン酸アルミニウムアジュバントで報告されている。
【0024】
リン酸アルミニウムのゼロ電荷点(PZC)は、ヒドロキシルに対するホスフェートの置換の度合いに逆比例し、この置換度は、沈殿によって塩を調製するために使用される反応条件および反応物の濃度に応じて変えることができる。他にも、溶液中の遊離ホスフェートイオンの濃度を変化させることによって(より多くのリン酸塩=より酸性のPZC)、またはヒスチジン緩衝液などの緩衝液を添加する(PZCをより塩基性にする)ことによって、PZCを変える。本発明によって使用されるリン酸アルミニウムは一般に、4.0から7.0、より好ましくは、5.0から6.5、例えば約5.7のPZCを有するであろう。
【0025】
溶液であると、リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムアジュバントの両方ともが、直径1~10μmの安定的な多孔性凝集体を形成する傾向がある[4]。
【0026】
アルミニウム塩に吸着しているTLRアゴニストを含む組成物はまた、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液またはトリス緩衝液)も含むことができる。しかしながら、そのような組成物がリン酸緩衝液を含む場合、緩衝液中のホスフェートイオンの濃度は、50mM未満、例えば<40mM、<30mM、<20mM、<10mM、もしくは<5mM、または1~15mMであることが好ましい。ヒスチジン緩衝液は、例えば1~50mM、5~25mM、または約10mMであるのが好ましい。
【0027】
本発明で有用な吸着性アルミニウム塩の不溶性のため、吸着されているTLRアゴニストを含有する組成物は概して、濁った外観をもつ懸濁物である。この外観は、混入している細菌増殖を遮蔽してしまうので、本発明の組成物は、チオメルサールまたは2-フェノキシエタノールなどの防腐剤を含み得る。組成物は、実質的に水銀物質を含まない(例えば<10μg/ml)、例えばチオメルサールを含まないことが好ましい。水銀を含有しない組成物がより好ましい。防腐剤を含まない組成物もまた可能である。
【0028】
組成物は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物を含むことができ、かつTLRアゴニストは、これらの塩の一方または両方に吸着されていてよい。
【0029】
患者に投与するための組成物中でのAl+++の濃度は好ましくは、0.5mg/ml未満、例えば≦0.4mg/ml、≦0.3mg/ml、≦0.2mg/ml、≦0.1mg/mlなどである。TLRアゴニストの包含によって、アルミニウム塩のアジュバント効果を改善することができるので、本発明は、有利なことには、1用量あたりより低量のAl+++を可能にし、したがって、本発明の組成物は、有用なことには、1単位用量
あたり10から250μgのAl+++を含むことができる。現行のTdaPワクチンは、1用量あたり少なくとも330μgのAl+++を含む。濃度については、本発明の組成物は、10~500μg/ml、例えば10~300μg/ml、10~200μg/ml、または10~100μg/mlのAl+++濃度を有し得る。
【0030】
一般に、TLRアゴニストとAl+++との重量比は、5:1未満、例えば4:1未満、3:1未満、2:1未満、または1:1未満である。したがって、例えば、0.5mg/mlのAl+++濃度では、TLRアゴニストの最大濃度は、2.5mg/mlであろう。しかし、より高いか、またはより低いレベルを使用することができる。Al+++の質量より少ない質量のTLRアゴニストが最も典型的であり、例えば1用量あたり、Al+++0.2mgで、TLRアゴニスト100μgなどであり得る。例えば、Fendrix製品は、1用量あたり、50μgの3d-MPLおよび0.5mg Al+++を含む。
【0031】
組成物中のTLRアゴニスト(複数可)のうちの少なくとも50%(質量で)、例えば≧60%、≧70%、≧80%、≧85%、≧90%、≧92%、≧94%、≧95%、≧96%、≧97%、≧98%、≧99%、またはさらに100%が、アルミニウム塩に吸着されていることが好ましい。
【0032】
TLRアゴニスト
第1の態様では、本発明の組成物は、TLRアゴニスト、すなわち、トール様受容体をアゴナイズすることができる化合物を含む。最も好ましくは、TLRアゴニストはヒトTLRのアゴニストである。TLRアゴニストは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9またはTLR11のいずれかを活性化することができる;好ましくは、TLRアゴニストは、ヒトTLR4またはヒトTLR7を活性化することができる。
【0033】
任意の特定のトール様受容体に対する化合物のアゴニスト活性は、標準的アッセイによって決定することができる。ImgenexおよびInvivogenなどの会社が、TLR活性化経路を測定するための、ヒトTLR遺伝子およびNFκB、ならびに適切なレポーター遺伝子を安定的に共トランスフェクトされている細胞株を供給している。それらは、感度、幅広い作動範囲(working range)動力学に関して設計されており、ハイスループットスクリーニングのために使用することができる。1種または2種の特異的なTLRの構成的発現が、そのような細胞株において典型的である。参考文献5も参照されたい。多くのTLRアゴニストが当技術分野で公知であり、例えば参考文献6には、TLR2アゴニストである特定のリポペプチド分子が記載されており、参考文献7~10にはそれぞれ、TLR7の複数のクラスの小分子アゴニストが記載されており、参考文献11および12には、疾患を処置するためのTLR7およびTLR8アゴニストが記載されている。
【0034】
本発明で使用されているTLRアゴニストは、理想的には少なくとも1個の吸着部分を含む。TLRアゴニスト中にこのような部分を包含することによって、TLRアゴニストの不溶性アルミニウム塩への吸着(例えば、リガンド交換または任意の他の適切なメカニズムにより)が可能となり、これらの免疫学的挙動を改善する[13]。リン含有吸着部分は特に有用であり、したがって、吸着部分は、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスホニト(phosphonite)、ホスフィニト(phosphinite)などを含んでもよい。
【0035】
好ましくは、TLRアゴニストは少なくとも1個のホスホネート基を含む。
【0036】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、ホスホネート基を含むTLRアゴニスト(より好ましくは、TLR7アゴニスト)を含む。このホスホネート基は、アゴニストの不溶性アルミニウム塩への吸着を可能にし得る[13]。
【0037】
本発明に有用なTLRアゴニストは、単一の吸着部分を含み得るか、または1個より多く、例えば2個から15個の吸着部分を含み得る。典型的には、化合物は、1、2または3個の吸着部分を含む。
【0038】
本発明で有用なリン含有TLRアゴニストは、式(A1):
【0039】
【0040】
によって表され得、ここで、
RXおよびRYは独立に、HおよびC1~C6アルキルから選択され;
Xは、共有結合、OおよびNHから選択され;
Yは、共有結合、O、C(O)、SおよびNHから選択され;
Lは、例えば、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレン、C1~C6アルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、C1~C6アルキレンオキシおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択されるリンカーであり;
pはそれぞれ独立に、1、2、3、4、5および6から選択され;
qは、1、2、3および4から選択され;
nは、1、2および3から選択され;かつ
Aは、TLRアゴニスト部分である]。
【0041】
一実施形態では、式(A1)によるTLRアゴニストは、次のとおりである:RXおよびRYはHであり;XはOであり;Lは、1から2個のハロゲン原子でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pは1、2および3から選択され;qは、1および2から選択され;かつnは1である。したがってこれらの実施形態では、吸着部分は、ホスフェート基を含む。
【0042】
他の実施形態では、式(A1)によるTLRアゴニストは、次のとおりである:RXおよびRYはHであり;Xは共有結合であり;Lは、1から2個のハロゲン原子でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pは1、2または3から選択され;qは1または2から選択され;かつnは1である。したがってこれらの実施形態では、吸着部分は、ホスホネート基を含む。
【0043】
式(A1)のための有用な「A」部分には、これらに限られないが、本明細書で定義されているか、または参考文献4~13および14~48に開示されているとおりの次の化
合物のいずれかのラジカルが含まれる:
【0044】
【0045】
一部の実施形態では、TLRアゴニスト部分「A」は、1000Da未満の分子量を有する。一部の実施形態では、式(A1)のTLRアゴニストは、1000Da未満の分子量を有する。
【0046】
好ましいTLRアゴニストは、水溶性である。したがってこれらは、水性緩衝液中で水と、pH7、25℃および1気圧で混合した場合に、均一な溶液を形成して、少なくとも50μg/mlの濃度を有する溶液をもたらし得る。したがって「水溶性」という用語は、これらの条件下でほんの僅かに可溶性である物質を排除するものである。
【0047】
有用なTLRアゴニストは、以下により詳細に記載されている式(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)、(II)、(J)または(K)を有するものを含む。他の有用なTLRアゴニストは、参考文献13に定義されているとおりの化合物1~102である。好ましいTLR7アゴニストは、式(K)、例えば以下に特定されている化合物K2などを有する。これらは、例えば、K2のアルギニン塩などの塩として使用することができる。
【0048】
好ましいTLR4アゴニストは、以下により詳細に記載されているようなモノホスホリル脂質Aの類似体(MPL)である。例えば、有用なTLR4アゴニストは3d-MPLである。
【0049】
本発明の組成物は1種より多くのTLRアゴニストを含むことができる。これら2種のアゴニストは相互に異なり、それらは同じTLRまたは異なるTLRをターゲットにできる。両方のアゴニストがアルミニウム塩に吸着し得る。
【0050】
式(C)、(D)、(E)および(H)-TLR7アゴニスト
TLRアゴニストは、式(C)、(D)、(E)または(H):
【0051】
【0052】
のいずれかによる化合物であり得、ここで、
(a)P3は、H、C1~C6アルキル、CF3および-((CH2)pO)q(CH2)pOs-および-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;かつP4は、H、C1~C6アルキル、-C1~C6アルキルアリールおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択されるが;但し、P3およびP4のうちの少なくとも1個は、-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)であることを条件とし、
(b)P5は、H、C1~C6アルキルおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;P6は、H、C1~C6アルキル(C1~C4アルキルおよびOH
から選択される1から3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい)および-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;かつP7は、H、C1~C6アルキル、-((CH2)pO)q(CH2)pOs-、-NHC1~C6アルキルおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択されるが;但し、P5、P6およびP7のうちの少なくとも1個は-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)であることを条件とし;
(c)P8は、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、-NHC1~C6アルキル(それぞれOHで置換されていてもよい)および-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;かつP9およびP10はそれぞれ独立に、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、-NHC1~C6アルキル(それぞれOHおよびC1~C6アルキルで置換されていてもよい)および-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択されるが;但し、P8、P9またはP10のうちの少なくとも1個は-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)であることを条件とし;
(d)P16および各P18はそれぞれ独立に、H、C1~C6アルキルおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;P17は、H、C1~C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、C1~C6アルキルアリール、C1~C6アルキルヘテロアリール、C1~C6アルキルアリール-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)および-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)(C1~C6アルキルまたはヘテロシクリルから選択される1から2個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい)から選択されるが、但し、P16、P17またはP18のうちの少なくとも1個は、-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)部分を含有することを条件とし;
RXおよびRYは独立に、HおよびC1~C6アルキルから選択され;
RC、RDおよびRHはそれぞれ独立に、HおよびC1~C6アルキルから選択され;
XCはCHおよびNから選択され;
REは、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C(O)C1~C6アルキル、ハロゲンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;
XEは、共有結合、CRE2RE3およびNRE4から選択され;
RE2、RE3およびRE4は独立に、HおよびC1~C6アルキルから選択され;
XH1-XH2は、-CRH2RH3-、-CRH2RH3-CRH2RH3-、-C(O)CRH2RH3-、-C(O)CRH2RH3-、-CRH2RH3C(O)-、-NRH4C(O)-、C(O)NRH4-、CRH2RH3S(O)2および-CRH2=CRH2-から選択され;
RH2、RH3およびRH4はそれぞれ独立に、H、C1~C6アルキルおよびP18から選択され;
XH3は、NおよびCNから選択され;
Xは、共有結合、OおよびNHから選択され;
Yは、共有結合、O、C(O)、SおよびNHから選択され;
Lは、共有結合、C1~C6アルキレン、C1~C6アルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、C1~C6アルキレンオキシおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-(それぞれ、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1~4個の置換基で置換されていてもよい)から選択され;
mは、0または1から選択され;
pはそれぞれ独立に、1、2、3、4、5および6から選択され;
qは、1、2、3および4から選択され;かつ
sは、0および1から選択される。
【0053】
式(G)-TLR8アゴニスト
TLRアゴニストは、式(G):
【0054】
【0055】
による化合物で有り得、ここで、
P11は、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、NRVRWおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;
P12は、H、C1~C6アルキル、-C(O)NRVRWによって置換されていてもよいアリールおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;
P13、P14およびP15は独立に、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択されるが;
但し、P11、P12、P13、P14またはP15のうちの少なくとも1個は、-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)であることを条件とし;
RvおよびRwは独立に、H、C1~C6アルキルから選択されるか、または結合している窒素原子と一緒に4員から7員の複素環式環を形成しており;
XGは、C、CHおよびNから選択され;
【0056】
【0057】
は、任意選択の二重結合を表し、ここで、
【0058】
【0059】
が二重結合である場合、XGはCであり;かつ
RGは、HおよびC1~C6アルキルから選択され;
Xは、共有結合、OおよびNHから選択され;
Yは、共有結合、O、C(O)、SおよびNHから選択され;
Lは、共有結合、C1~C6アルキレン、C1~C6アルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、C1~C6アルキレンオキシおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-(それぞれ、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1~4個の置換基で置換されていてもよい)から選択され;
pはそれぞれ独立に、1、2、3、4、5および6から選択され、かつ
qは、1、2、3および4から選択される。
【0060】
式(I)および(II)-TLR7アゴニスト[8]
TLRアゴニストは、式(I)または(II):
【0061】
【0062】
による化合物で有り得、ここで、
Zは、-NH2または-OHであり;
X1は、アルキレン、置換アルキレン、アルケニレン、置換アルケニレン、アルキニレン、置換アルキニレン、カルボシクリレン、置換カルボシクリレン、ヘテロシクリレンまたは置換ヘテロシクリレンであり;
L1は、共有結合、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロシクリレン、置換ヘテロシクリレン、カルボシクリレン(carbocyclylene)、置換カルボシクリレン、-S-、-S(O)-、S(O)2、-NR5-または-O-であり、
X2は、共有結合、アルキレンまたは置換アルキレンであり;
L2は、NR5-、-N(R5)C(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、S(O)2または共有結合であり;
R3は、H、アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキルまたは置換ヘテロシクリルアルキルであり;
Y1およびY2はそれぞれ独立に、共有結合、-O-または-NR5-であるか;または-Y1-R1および-Y2-R2はそれぞれ独立に、-O-N=C(R6R7)であり;
R1およびR2はそれぞれ独立に、H、アルキル、置換アルキル、カルボシクリル、置換カルボシクリル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロシクリルアルキル、置換ヘテロシクリルアルキル、-アルキレン-C(O)-O-R5、-(置換アルキレン)-C(O)-O-R5、-アルキレン-O-C(O)-R5、-(置換アルキレン)-O-C(O)-R5、-アルキレン-O-C(O)-O-R5または-(置換アルキレン)-O-C(O)-O-R5であり、
R4は、H、ハロゲン、-OH、-O-アルキル、-O-アルキレン-O-C(O)-O-R5、-O-C(O)-O-R5、-SHまたは-NH(R5)であり;
R5、R6およびR7はそれぞれ独立に、H、アルキル、置換アルキル、カルボシクリル、置換カルボシクリル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロシクリルアルキルまたは置換ヘテロシクリルアルキルである。
【0063】
式(J)-TLR2アゴニスト[14]
TLRアゴニストは、式(J):
【0064】
【0065】
による化合物で有り得、ここで、
R1は、H、-C(O)-C7~C18アルキルまたは-C(O)-C1~C6アルキルであり;
R2は、C7~C18アルキルであり;
R3は、C7~C18アルキルであり;
L1は、-CH2OC(O)-、-CH2O-、-CH2NR7C(O)-または-CH2OC(O)NR7-であり;
L2は、-OC(O)-、-O-、-NR7C(O)-または-OC(O)NR7-であり;
R4は、-L3R5または-L4R5であり;
R5は、-N(R7)2、-OR7、-P(O)(OR7)2、-C(O)OR7、-NR7C(O)L3R8、-NR7C(O)L4R8、-OL3R6、-C(O)NR7L3R8、-C(O)NR7L4R8、-S(O)2OR7、-OS(O)2OR7、C1~C6アルキル、C6アリール、C10アリール、C14アリール、O、SおよびNから選択される1から3個のヘテロ原子を含有する5環員から14環員のヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルまたはO、SおよびNから選択される1から3個のヘテロ原子を含有する5環員から6環員のヘテロシクロアルキルであり、ここで、R5の前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルはそれぞれ非置換であるか、またはR5の前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルはそれぞれ、-OR9、-OL3R6、-OL4R6、-OR7および-C(O)OR7から独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;
L3は、C1~C10アルキレンであり、ここで、L3の前記C1~C10アルキレンは非置換であるか、またはL3の前記C1~C10アルキレンは、1から4個のR6基で置換されているか、またはL3の前記C1~C10アルキレンは同じ炭素原子上で、結合している炭素原子と共にC3~C8シクロアルキルを一緒に形成している2個のC1~C6アルキル基で置換されており;
L4は、-((CR7R7)pO)q(CR10R10)p-または-(CR11R11)((CR7R7)pO)q(CR10R10)p-であり、ここで、R11はそれぞれ、結合している炭素原子と共にC3~C8シクロアルキルを一緒に形成しているC1~C6アルキル基であり;
R6はそれぞれ独立に、ハロ、C1~C6アルキル、1~2個のヒドロキシル基で置換されているC1~C6アルキル、-OR7、-N(R7)2、-C(O)OH、-C(O)N(R7)2、-P(O)(OR7)2、C6アリール、C10アリールおよびC14アリールから選択され;
R7はそれぞれ独立に、HおよびC1~C6アルキルから選択され;
R8は、-SR7、-C(O)OH、-P(O)(OR7)2ならびにOおよびNから選択される1から3個のヘテロ原子を含有する5環員から6環員のヘテロシクロアルキルから選択され;
R9は、フェニルであり;
R10はそれぞれ独立に、Hおよびハロから選択され;
pはそれぞれ独立に、1、2、3、4、5および6から選択され、かつ qは、1、2
、3または4である。
【0066】
好ましくは、R5はP(O)(OR7)2、-NR7C(O)L3-P(O)(OR7)2、-NR7C(O)L4-P(O)(OR7)2、-OL3-P(O)(OR7)2、-C(O)NR7L3-P(O)(OR7)2または-C(O)NR7L4-P(O)(OR7)2である。
【0067】
(J)の一部の実施形態では、R1はHである。(J)の他の実施形態では、R1は-C(O)-C15アルキルである;
(J)の一部の実施形態では:(i)L1は-CH2OC(O)-であり、かつL2は-OC(O)-、-O-、-NR7C(O)-または-OC(O)NR7-であるか;または(ii)またはL1は-CH2O-であり、かつL2は-OC(O)-、-O-、-NR7C(O)-または-OC(O)NR7-であるか;または(iii)L1は-CH2NR7C(O)-であり、かつL2は-OC(O)-、-O-、-NR7C(O)-または-OC(O)NR7-であるか;または(iv)L1は-CH2OC(O)NR7-であり、かつL2は-OC(O)-、-O-、NR7C(O)-または-OC(O)NR7-である。
【0068】
(J)の一部の実施形態では:(i)L1は-CH2OC(O)-であり、かつL2は-OC(O)-であるか;または(ii)L1は-CH2O-であり、かつL2は-O-であるか;または(iii)L1は-CH2O-であり、かつL2は-NHC(O)-であるか;または(iv)L1は-CH2OC(O)NH-であり、かつL2は-OC(O)NH-である。
【0069】
(J)の一部の実施形態では、(i)R2は-C11アルキルであり、かつR3は-C11アルキルであるか;または(ii)R2は-C16アルキルであり、かつR3は-C16アルキルであるか;または(iii)R2は-C16アルキルであり、かつR3は-C11アルキルであるか;または(iv)R2は-C12アルキルであり、かつR3は-C12アルキルであるか;または(v)R2は-C7アルキルであり、かつR3は-C7アルキルであるか;または(vi)R2は-C9アルキルであり、かつR3は-C9アルキルであるか;または(vii)R2は-C8アルキルであり、かつR3は-C8アルキルであるか;または(viii)R2は-C13アルキルであり、かつR3は-C13アルキルであるか;または(ix)R2は-C12アルキルであり、かつR3は-C11アルキルであるか;または(x)R2は-C12アルキルであり、かつR3は-C12アルキルであるか;または(xi)R2は-C10アルキルであり、かつR3は-C10アルキルであるか;または(xii)R2は-C15アルキルであり、かつR3は-C15アルキルである。
【0070】
(J)の一部の実施形態では、R2は-C11アルキルであり、かつR3は-C11アルキルである。
【0071】
(J)の一部の実施形態では、L3はC1~C10アルキレンであり、ここで、L3の前記C1~C10アルキレンは非置換であるか、または1から4個のR6基で置換されている。
【0072】
(J)の一部の実施形態では:L4は-((CR7R7)pO)q(CR10R10)p-であり;R10はそれぞれ独立にHおよびFから選択され;かつpはそれぞれ独立に、2、3および4から選択される。
【0073】
(J)の一部の実施形態では、R6はそれぞれ独立に、メチル、エチル、i-プロピル
、i-ブチル、-CH2OH、-OH、-F、-NH2、-C(O)OH、-C(O)NH2、-P(O)(OH)2およびフェニルから選択される。
【0074】
(J)の一部の実施形態では、R7はそれぞれ独立に、H、メチルおよびエチルから選択される。
【0075】
TLR4アゴニスト
本発明の組成物はTLR4アゴニストを含むことができ、最も好ましくはヒトTLR4アゴニストである。TLR4は従来の樹状細胞およびマクロファージを含めた先天免疫系の細胞によって発現される[15]。TLR4を介したトリガー(triggering)により、MyD88依存性経路およびTRIF依存性経路の両方を利用するシグナル伝達カスケードが誘発され、それぞれNF-κBおよびIRF3/7活性化をもたらす。TLR4の活性化は、典型的に確固としたIL-12p70の生成を誘発し、Th1-タイプ細胞免疫応答および液性免疫応答を強く強化する。
【0076】
様々な有用なTLR4アゴニストが当技術分野で公知であり、このうちの多くは内毒素またはリポ多糖類(LPS)の類似体である。例えば、TLR4アゴニストは以下であってよい:
(i)3d-MPL(すなわち3-O-脱アシル化モノホスホリル脂質A;3-de-O-アシル化モノホスホリル脂質Aまたは3-O-デスアシル-4’-モノホスホリル脂質Aとしても公知)。内毒素のモノホスホリル脂質A部分のこの誘導体は、グルコサミンの還元末端の脱アシル化した3位を有する。それは、Salmonella minnesotaのヘプトース欠損変異体から調製され、脂質Aと化学的に同様であるが、酸に不安定なホスホリル基および塩基に不安定なアシル基が欠如している。3d-MPLの調製は、参考文献16にもともと記載されており、製品は、Corixa Corporationにより製造および販売されている。それはGSKの「AS04」アジュバント中に存在する。さらなる詳細は参考文献17~20において見出すことができる。
【0077】
(ii)グルコピラノシル脂質A(GLA)[21]またはそのアンモニウム塩:
【0078】
【0079】
(iii)アミノアルキルグルコサミニドホスフェート、例えば、RC-529またはCRX-524[22~24]など。RC-529およびCRX-524は、これらのR2基が異なる以下の構造:
【0080】
【0081】
を有する。
【0082】
(iv)ホスフェート含有非環式骨格に連結している脂質を含有する化合物、例えば、TLR4アンタゴニストE5564など[25、26]:
【0083】
【0084】
(v)参考文献27に定義されているとおりの式I、IIもしくはIIIの化合物、またはその塩、例えば、化合物「ER803058」、「ER803732」、「ER804053」、「ER804058」、「ER804059」、「ER804442」、「ER804680」、「ER803022」、「ER804764」または「ER804057」など。ER804057はまた、E6020としても公知であり、以下の構造:
【0085】
【0086】
を有し、一方で、ER803022は以下の構造:
【0087】
【0088】
を有する。
【0089】
(vi)参考文献28に開示されているポリペプチドリガンドのうちの1種。
【0090】
これらのTLR4アゴニストのいずれも本発明で使用することができる。
【0091】
本発明の組成物は、TLR4アゴニストが吸着されるアルミニウム塩を含むことができる。吸着性の特性を有するTLR4アゴニストは典型的に、アルミニウム塩の表面基、特に表面ヒドロキシル基を有する塩とリガンド交換され得るリン含有部分を含む。したがって有用なTLR4アゴニストは、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスホニト、ホスフィニト、ホスフェートなどを含み得る。好ましいTLR4アゴニストは、少なくとも1個のホスフェート基[13]、例えば上記に列挙したアゴニスト(i)~(v)を含む。
【0092】
本発明での使用のための好ましいTLR4アゴニストは3d-MPLである。それは、リン酸アルミニウムアジュバントに、水酸化アルミニウムアジュバントに、または両方の混合物に吸着され得る[29]。
【0093】
3d-MPLは、それらのアシル化(例えば、3、4、5または6個のアシル鎖を有し、その鎖の長さは異なってもよい)により異なる、関連する分子の混合物の形態をとることができる。2種のグルコサミン(また2-デオキシ-2-アミノ-グルコースとしても公知)単糖は、これらの2位の炭素(すなわち、2および2’位)においてN-アシル化しており、3’位にもまたO-アシル化が存在する。炭素2に付加している基は、式-NH-CO-CH2-CR1R1’を有する。炭素2’に付加している基は式-NH-CO-CH2-CR2R2’を有する。炭素3’に付加している基は式-O-CO-CH2-CR3R3’を有する。代表的な構造は:
【0094】
【0095】
である。基R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、-(CH2)n-CH3である。nの値は、好ましくは8から16、より好ましくは9から12、最も好ましくは10である。
【0096】
基R1’、R2’およびR3’は、それぞれ独立に:(a)-H;(b)-OH;または(c)-O-CO-R4(式中、R4は、-Hまたは-(CH2)m-CH3のいずれかであり、mの値は好ましくは8から16であり、より好ましくは10、12または14である)であることができる。2位において、mは好ましくは14である。2’位において、mは好ましくは10である。3’位において、mは好ましくは12である。したがって、基R1’、R2’およびR3’は、好ましくは、ドデカン酸、テトラデカン酸またはヘキサデカン酸からの-O-アシル基である。
【0097】
R1’、R2’およびR3’のすべてが-Hである場合、3d-MPLは3個のアシル鎖しか有さない(2、2’および3’位のそれぞれの上に1個)。R1’、R2’およびR3’のうちの2個だけが-Hである場合、3d-MPLは4個のアシル鎖を有することができる。R1’、R2’およびR3’のうちの1個だけが-Hである場合、3d-MPLは5個のアシル鎖を有することができる。R1’、R2’およびR3’のいずれも-Hでない場合、3d-MPLは6個のアシル鎖を有することができる。本発明に従い使用される3d-MPLは、3~6個のアシル鎖を有するそれらの形態の混合物であってよいが、混合物中に6個のアシル鎖を有する3d-MPLを含むこと、特に6個のアシル鎖形態が3d-MPL全体の少なくとも10重量%、例えば≧20%、≧30%、≧40%、≧50%またはこれ以上を占めることを確実にすることが好ましい。6個のアシル鎖を有する3d-MPLが最もアジュバント活性のある形態であることが判明している。
【0098】
したがって、本発明での使用に対して最も好ましい形態の3d-MPLは:
【0099】
【0100】
である。3d-MPLが混合物の形態で使用される場合、本発明の組成物において、3d-MPLの量または濃度に関する言及は、混合物中で組み合わせた3d-MPL種を指す。
【0101】
典型的な組成物は、25μg/mlから200μg/ml、例えば50~150μg/ml、75~125μg/ml、90~110μg/mlの範囲、または約100μg/mlの濃度で3d-MPLを含む。1用量あたり25~75μgの3d-MPL、例えば1用量あたり45~55μg、または約50μgの3d-MPLを投与することが通常である。
【0102】
水性条件では、3d-MPLは、異なるサイズ、例えば、直径<150nmまたは>500nmを有するミセル凝集体または粒子を形成することができる。それらのうちのいずれかまたは両方を本発明に使用することができ、より良い粒子は、慣用的なアッセイにより選択することができる。それらの優れた活性のため、より小さな粒子(例えば、3d-MPLの透明な水性懸濁物を得るために十分に小さい)が本発明による使用に対して好ま
しい[30]。好ましい粒子は、150nm未満、より好ましくは120nm未満の平均直径を有し、100nm未満の平均直径さえも有することができる。しかし、ほとんどの場合には、平均直径は、50nm以上である。3d-MPLがアルミニウム塩に吸着されている場合、3D-MPLの粒径を直接測定することができないこともあるが、粒径は吸着が行われる前に測定することができる。粒子直径は、動的光散乱の慣用的な技法で評価することができ、これによって平均粒子直径が明らかとなる。粒子がxnmの直径を有するということであれば、一般に、この平均の周囲に粒子の分布が存在することになり、少なくとも50%の数(例えば≧60%、≧70%、≧80%、≧90%、またはそれ以上)の粒子がx±25%の範囲内の直径を有することになる。
【0103】
式(K)[31]
TLRアゴニストは、式(K):
【0104】
【0105】
による化合物で有り得、ここで、
R1は、H、C1~C6アルキル、-C(R5)2OH、-L1R5、-L1R6、-L2R5、-L2R6、-OL2R5または-OL2R6であり;
L1は、-C(O)-または-O-であり;
L2は、C1~C6アルキレン、C2~C6アルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンまたは-((CR4R4)pO)q(CH2)p-であり、ここで、L2の前記C1~C6アルキレンおよびC2~C6アルケニレンは、1から4個のフルオロ基で置換されていてもよく;
L3はそれぞれ独立に、C1~C6アルキレンおよび-((CR4R4)pO)q(CH2)p-から選択され、ここで、L3の前記C1~C6アルキレンは、1から4個のフルオロ基で置換されていてもよく;
L4は、アリーレンまたはヘテロアリーレンであり;
R2は、HまたはC1~C6アルキルであり;
R3は、C1~C4アルキル、-L3R5、-L1R5、-L3R7、-L3L4L3R7、-L3L4R5、-L3L4L3R5、-OL3R5、-OL3R7、-OL3L4R7、-OL3L4L3R7、-OR8、-OL3L4R5、-OL3L4L3R5および-C(R5)2OHから選択され;
R4はそれぞれ独立に、Hおよびフルオロから選択され;
R5は、-P(O)(OR9)2であり、
R6は、-CF2P(O)(OR9)2または-C(O)OR10であり;
R7は、-CF2P(O)(OR9)2または-C(O)OR10であり;
R8は、HまたはC1~C4アルキルであり;
R9はそれぞれ独立に、HおよびC1~C6アルキルから選択され;
R10は、HまたはC1~C4アルキルであり;
pはそれぞれ独立に、1、2、3、4、5および6から選択され、かつ
qは、1、2、3または4である。
【0106】
式(K)の化合物は、好ましくは、式(K’):
【0107】
【0108】
であり、ここで、
P1は、H、COOHで置換されていてもよいC1~C6アルキルおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;
P2は、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択されるが;
但し、P1およびP2のうちの少なくとも1個が-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)であることを条件とし;
RBは、HおよびC1~C6アルキルから選択され;
RXおよびRYは独立に、HおよびC1~C6アルキルから選択され;
Xは、共有結合、OおよびNHから選択され;
Yは、共有結合、O、C(O)、SおよびNHから選択され;
Lは、共有結合、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレン、C1~C6アルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、C1~C6アルキレンオキシおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;
pはそれぞれ独立に、1、2、3、4、5および6から選択され;かつ
qは、1、2、3および4から選択される。
【0109】
式(K’)の一部の実施形態では:P1は、COOHで場合によって置換されているC1~C6アルキルおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;P2は、C1~C6アルコキシおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;RBはC1~C6アルキルであり;Xは共有結合であり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1~4個の置換基でそれぞれ場合によって置換されている、C1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;各pは、独立に、1、2および3から選択され;qは、1および2から選択される。
【0110】
式(F)-TLR7アゴニスト[9]
TLRアゴニストは、式(F):
【0111】
【0112】
による化合物で有り得、ここで、
X3は、Nであり;
X4は、NまたはCR3であり、
X5は、-CR4=CR5-であり;
R1およびR2はHであり;
R3は、Hであり;
R4およびR5はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、-C(O)OR7、-C(O)R7、-C(O)N(R11R12)、-N(R11R12)、-N(R9)2、-NHN(R9)2、-SR7、-(CH2)nOR7、-(CH2)nR7、-LR8、-LR10、-OLR8、-OLR10、C1~C6アルキル、C1~C6ヘテロアルキル、C1~C6ハロアルキル、C2~C8アルケン、C2~C8アルキン、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルおよびC3~C8ヘテロシクロアルキルから選択され、ここで、R4およびR5の前記C1~C6アルキル、C1~C6ヘテロアルキル、C1~C6ハロアルキル、C2~C8アルケン、C2~C8アルキン、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルおよびC3~C8ヘテロシクロアルキル基はそれぞれ、ハロゲン、-CN、-NO2、-R7、-OR8、-C(O)R8、-OC(O)R8、-C(O)OR8、-N(R9)2、-P(O)(OR8)2、-OP(O)(OR8)2、-P(O)(OR10)2、-OP(O)(OR10)2、-C(O)N(R9)2、-S(O)2R8、-S(O)R8、-S(O)2N(R9)2および-NR9S(O)2R8から独立に選択される1から3個の置換基で置換されていてもよいか;
または、R3およびR4またはR4およびR5またはR5およびR6は、隣接する環原子上に存在する場合、場合によって一緒に連結して、5員~6員の環を形成することができ、その際、前記5員~6員の環は、R7で置換されていてもよく;
Lはそれぞれ独立に、結合、-(O(CH2)m)t-、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニレンおよびC2~C6アルキニレンから選択され、ここで、Lの前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニレンおよびC2~C6アルキニレンはそれぞれ、ハロゲン、-R8、-OR8、-N(R9)2、-P(O)(OR8)2、-OP(O)(OR8)2、-P(O)(OR10)2および-OP(O)(OR10)2から独立に選択される1から4個の置換基で置換されていてもよく;
R7は、H、C1~C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、C3~C8シクロアルキル、C1~C6ヘテロアルキル、C1~C6ハロアルキル、C2~C8アルケン、C2~C8アルキン、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルコキシおよびC3~C8ヘテロシクロアルキルから選択され、ここで、R7の前記C1~C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、C3~C8シクロアルキル、C1~C6ヘテロアルキル、C1~C6ハロアルキル、C2~C8アルケン、C2~C8アルキン、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルコキシおよびC3~C8ヘテロシクロアルキル基はそれぞれ、1から3個のR13基で置換されていてもよく、R13はそれぞれ独立に、ハロゲン、
【0113】
【0114】
から選択され;
R8はそれぞれ独立に、H、-CH(R10)2、C1~C8アルキル、C2~C8アルケン、C2~C8アルキン、C1~C6ハロアルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ヘテロアルキル、C3~C8シクロアルキル、C2~C8ヘテロシクロアルキル、C1~C6ヒドロキシアルキルおよびC1~C6ハロアルコキシから選択され、ここで、R8の前記C1~C8アルキル、C2~C8アルケン、C2~C8アルキン、C1~C6ヘテロアルキル、C1~C6ハロアルキル、C1~C6アルコキシ、C3~C8シクロアルキル、C2~C8ヘテロシクロアルキル、C1~C6ヒドロキシアルキルおよびC1~C6ハロアルコキシ基はそれぞれ、-CN、R11、-OR11、-SR11、-C(O)R11、-OC(O)R11、-C(O)N(R9)2、-C(O)OR11、-NR9C(O)R11、-NR9R10、-NR11R12、-N(R9)2、-OR9、-OR10、-C(O)NR11R12、-C(O)NR11OH、-S(O)2R11、-S(O)R11、-S(O)2NR11R12、-NR11S(O)2R11、-P(O)(OR11)2および-OP(O)(OR11)2から独立に選択される1から3個の置換基で置換されていてもよく;
R9はそれぞれ独立に、H、-C(O)R8、-C(O)OR8、-C(O)R10、-C(O)OR10、-S(O)2R10、-C1~C6アルキル、C1~C6ヘテロアルキルおよびC3~C6シクロアルキルから選択されるか、またはR9はそれぞれ独立に、結合しているNと一緒にC3~C8ヘテロシクロアルキルを形成しているC1~C6アルキルであり、ここで、前記C3~C8ヘテロシクロアルキル環は場合によって、N、OおよびSから選択される追加のヘテロ原子を含有してもよく、R9の前記C1~C6アルキル、C1~C6ヘテロアルキル、C3~C6シクロアルキルまたはC3~C8ヘテロシクロアルキル基はそれぞれ、-CN、R11、-OR11、-SR11、-C(O)R11、OC(O)R11、-C(O)OR11、-NR11R12、-C(O)NR11R12、-C(O)NR11OH、-S(O)2R11、-S(O)R11、-S(O)2NR11R12、-NR11S(O)2R11、-P(O)(OR11)2および-OP(O)(OR11)2から独立に選択される1から3個の置換基で置換されていてもよく;
R10はそれぞれ独立に、アリール、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールから選択され、ここで、前記アリール、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール基は、ハロゲン、-R8、-OR8、-LR9、-LOR9、-N(R9)2、-NR9C(O)R8、-NR9CO2R8、-CO2R8、-C(O)R8および-C(O)N(R9)2から選択される1から3個の置換基で置換されていてもよく;
R11およびR12は独立に、H、C1~C6アルキル、C1~C6ヘテロアルキル、C1~C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルおよびC3~C8ヘテロシクロアルキルから選択され、ここで、R11およびR12の前記C1~C6アルキル、C1~C6ヘテロアルキル、C1~C6ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルおよびC3~C8ヘテロシクロアルキル基はそれぞれ、ハロゲン、-CN、R8、-OR8、C(O)R8、OC(O)R8、-C(O)
OR8、-N(R9)2、-NR8C(O)R8、-NR8C(O)OR8、-C(O)N(R9)2、C3~C8ヘテロシクロアルキル、-S(O)2R8、-S(O)2N(R9)2、-NR9S(O)2R8、C1~C6ハロアルキルおよびC1~C6ハロアルコキシから独立に選択される1から3個の置換基で置換されていてもよいか;
または、R11およびR12はそれぞれ独立に、結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよく、N、OおよびSから選択される追加のヘテロ原子を含有してもよいC3~C8ヘテロシクロアルキル環を形成しているC1~C6アルキルであり;
環Aは、アリールまたはヘテロアリールであり、ここで、環Aの前記アリールおよびヘテロアリール基は、1から3個のRA基で置換されていてもよく、ここで、RAはそれぞれ独立に、
【0115】
【0116】
から選択されるか、または環A上の2個の隣接するRA置換基は、環員として2個までのヘテロ原子を含有する5員~6員の環を形成しており;
nは、出現する毎に独立に、0、1、2、3、4、5、6、7または8であり;
mはそれぞれ独立に、1、2、3、4、5および6から選択され、かつ
tは、1、2、3、4、5、6、7または8である。
【0117】
式(C)、(D)、(E)、(G)および(H)
前記で検討されているとおり、TLRアゴニストは、式(C)、(D)、(E)、または(H)であり得る。
【0118】
式(C)、(D)、(E)および(H)の「親」化合物は、有用なTLR7アゴニストであるが(参考文献7~10および32~48を参照されたい)、本明細書では、好ましくは、リン含有部分の付着によって修飾されている。
【0119】
式(C)、(D)および(E)の一部の実施形態では、化合物は、下記に示されている式(C’)、(D’)および(E’)による構造を有する:
【0120】
【0121】
式(C)、(D)、(E)および(H)の本発明の実施形態はまた、式(C’)、(D’)、(E’)および(H’)にも当てはまる。
【0122】
式(C)、(D)、(E)および(H)の一部の実施形態では:XはOであり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に、1、2および3から選択され;かつqは、1および2から選択される。
【0123】
式(C)の他の実施形態では:P3は、C1~C6アルキル、CF3および-((CH2)pO)q(CH2)pOs-および-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;P4は、-C1~C6アルキルアリールおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;XcはCHであり;Xは共有結合であり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に1、2および3から選択され;qは、1または2である。
【0124】
式(C)、(D)、(E)および(H)の他の実施形態では:Xは共有結合であり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に、1、2および3から選択され;かつqは、1および2から選択される。
【0125】
式(C)の他の実施形態では:P3は、C1~C6アルキル、CF3および-((CH2)pO)q(CH2)pOs-および-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;P4は、-C1~C6アルキルアリールおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択され;XcはNであり;Xは共有結合であり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に1、2および3から選択され;qは、1および2から選択される。
【0126】
式(D)の他の実施形態では:P5は、C1~C6アルキルおよび-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)から選択される。
【0127】
式(D)の他の実施形態では:XはOであり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に1、2および3から選択され;qは、1および2から選択される。
【0128】
式(D)の他の実施形態では:Xは共有結合であり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に1、2および3から選択され;qは、1および2から選択される。
【0129】
式(E)の他の実施形態では:XはOであり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に、1、2および3から選択され;かつqは、1および2から選択される。
【0130】
式(E)の他の実施形態では:Xは共有結合であり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に、1、2および3から選択され;かつqは、1および2から選択される。
【0131】
式(E)の他の実施形態では:XEはCH2であり、P8は、-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)で置換されていてもよいC1~C6アルコキシである。
【0132】
式(E)の他の実施形態では:P9は、OHおよびC1~C6アルキルで置換されていてもよい-NHC1~C6アルキルならびに-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)である。
【0133】
一部の実施形態では、式(C)の化合物は、P4が-Y-L-X-P(O)(ORX)(ORY)である化合物ではない。
【0134】
一部の実施形態では、式(C)の化合物では、P4は、H、C1~C6アルキル、-C1~C6アルキルアリールから選択される。
【0135】
式(H)の一部の実施形態では:XH1-XH2はCRH2RH3であり、RH2およびRH3はHであり、XH3はNであり、Xは共有結合であり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に1、2および3から選択され;かつqは、1および2から選択される。
【0136】
式(H)の一部の実施形態では:XH1-XH2はCRH2RH3であり、RH2およびRH3はHであり、XH3はNであり、XはOであり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に1、2および3から選択され;かつqは、1および2から選択される。
【0137】
式(G)の「親」化合物は、有用なTLR8アゴニストであるが(参考文献11および12を参照されたい)、好ましくは吸着を可能にするように、本明細書では、リン含有部分の付着によって修飾されている。式(G)の一部の実施形態では、化合物は、式(G’):
【0138】
【0139】
による構造を有する。
【0140】
式(G)または(G’)の一部の実施形態では:XGはCであり、
【0141】
【0142】
は二重結合を表している。
【0143】
式(G)または(G’)の一部の実施形態では:Xは共有結合であり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に1、2および3から選択され;qは、1および2から選択される。
【0144】
式(G)または(G’)の一部の実施形態では:XはOであり;Lは、ハロ、OH、C1~C4アルキル、-OP(O)(OH)2および-P(O)(OH)2から独立に選択される1から4個の置換基でそれぞれ置換されていてもよいC1~C6アルキレンおよび
-((CH2)pO)q(CH2)p-から選択され;pはそれぞれ独立に1、2および3から選択され;かつqは、1および2から選択される。
【0145】
水中油型エマルジョンアジュバント
本発明の第2の態様に従い、ワクチンは水中油型エマルジョンでアジュバント化される。様々なこのようなエマルジョンが公知であり、例えばMF59およびAS03が両方とも欧州で認可されている。
【0146】
有用なエマルジョンアジュバントは、少なくとも1種の油および少なくとも1種の界面活性剤を典型的に含み、油(複数可)および界面活性剤(複数可)は生分解性(代謝可能な)かつ生体適合性である。エマルジョン内の油滴は一般にサブミクロンの直径を有し、それらの小さなサイズは、安定したエマルジョンを得るためのマイクロフルダイザー(microfluidiser)を用いて、または、例えば位相反転などの代替法により、容易に達成することができる。小滴の少なくとも80%(数で)が220nm未満の直径を有するエマルジョンは、濾過滅菌に供することができるので好ましい。
【0147】
上記エマルジョンは、動物(例えば魚類)供給源および/または植物供給源からの油を含むことができる。植物油の供給源としては、堅果、種子および穀類が挙げられる。ラッカセイ油、ダイズ油、ヤシ油およびオリーブ油が、最も一般的に利用できる堅果油の例である。例えばホホバ豆から得られる、ホホバ油を使用することができる。種子油としては、紅花油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ種子油およびこれらに類するものが挙げられる。穀類の群の中で、トウモロコシ油が最も容易に入手できるが、他の穀物粒(cereal grain)、例えばコムギ、オートムギ、ライムギ、イネ、テフ、ライコムギおよびこれらに類するものの油も使用することができる。グリセロールおよび1,2-プロパンジオールの6~10炭素脂肪酸エステルは、種子油中に天然に存在しないが、堅果油および種子油から出発して適切な材料の加水分解、分離およびエステル化によって調製することができる。哺乳動物の乳からの脂肪および油は代謝性であり、従って、本発明で使用することができる。動物供給源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、鹸化および他の手段についての手順は、当該技術分野において周知である。
【0148】
殆どの魚類は、容易に回収できる代謝性の油を含有する。例えば、タラ肝油、サメ肝油、および鯨油、例えば鯨ろうが、ここで使用することができる魚油のいくつかの例である。多数の分岐鎖油が5炭素イソプレン単位で生化学的に合成されており、一般にテルペノイドと呼ばれる。サメ肝油は、スクアレン、2,6,10,15,19,23-ヘキサメチル-2,6,10,14,18,22-テトラコサヘキサン、として公知の、分岐した不飽和テルペノイドを含有し、これは、本発明での使用に特に好ましい(下記を参照のこと)。スクワラン、スクアレンの飽和類似体も有用な油である。スクアレンおよびスクワランを含む、魚油は、商業的供給源から容易に入手することができ、または当該技術分野において公知の方法によって得ることができる。他の好ましい油は、トコフェロール類(下記参照)である。油の混合物を使用することができる。
【0149】
アジュバントエマルジョン中の油の好ましい全量(体積%)は、1から20%、例えば2~10%である。5体積%のスクアレン含有量が特に有用である。
【0150】
界面活性剤は、これらの「HLB」(親水性/親油性バランス)により分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、例えば約15の周囲のHLBを有する。本発明は、これらに限定されないが、以下を含む界面活性剤を使用することができる:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweenと呼ばれる)、特にポリソルベート20またはポリソルベート80;エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー
、(DOWFAX(商標)の商標名で販売)、例えば、線形EO/POブロックコポリマーなど;オクトキシノール(繰返しのエトキシ(オキシ-1,2-エタンジイル)基の数において異なることができる)であり、オクトキシノール-9(トリトンX-100、またはt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深い;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA-630/NP-40);リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(レシチン)など;ノニルフェノールエトキシレート、例えば、Tergitol(商標)NPシリーズなど;ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールに由来するポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知)、例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30)など;およびソルビタンエステル(一般にSpansとして公知)、例えば、トリオレイン酸ソルビタン(Span85)またはモノラウリン酸ソルビタンなど。
【0151】
本発明で使用されるエマルジョンとして、好ましくは非イオン性界面活性剤(複数可)が挙げられる。エマルジョンに含めるのに好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート;Tween80)、Span85(トリオレイン酸ソルビタン)、レシチンまたはトリトンX-100である。界面活性剤の混合物、例えば、ポリソルベート80とトリオレイン酸ソルビタンの混合物を使用することができる。ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えば、ポリソルベート80(Tween80)などと、オクトキシノール、例えば、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(トリトンX-100)などとの組合せもまた有用である。もう1つの有用な組合せは、ラウレス9ならびにポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールである。界面活性剤の混合物が使用される場合、混合物のHLBは、これらの相対的な重みづけ(体積による)に従い計算する。例えば、ポリソルベート80とトリオレイン酸ソルビタンの体積1:1の好ましい混合物は8.4のHLBを有する。
【0152】
アジュバントエマルジョン中の全界面活性剤(体積%)の好ましい量は、0.1から2%、例えば0.25~2%である。1体積%という全含有量、例えば0.5体積%のポリソルベート80および0.5体積%のトリオレイン酸ソルビタンは、特に有用である。
【0153】
有用なエマルジョンは、公知の技術を使用して調製することができ、例えば、参考文献3および29-3035を参照されたい。
【0154】
本発明で有用な特定の水中油型エマルジョンアジュバントとして、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
・スクアレン、ポリソルベート80、およびトリオレイン酸ソルビタンのサブミクロンエマルジョン。体積によるエマルジョンの組成は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.5%のトリオレイン酸ソルビタンとすることができる。重量の点から見ると、これらの比は4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80および0.48%のトリオレイン酸ソルビタンとなる。このアジュバントは、参考文献2の第10章および参考文献3の第12章により詳細に記載されているとおり、「MF59」として公知である[36-38]。MF59エマルジョンは、有利には、シトレートイオン、例えば10mMのクエン酸ナトリウム緩衝液を含む。
・スクアレン、トコフェロール、およびポリソルベート80のエマルジョン。エマルジョンはリン酸緩衝生理食塩水を含み得る。これらのエマルジョンは、2~10%のスクアレン、2~10%のトコフェロールおよび0.3~3%のポリソルベート80を有することができ、スクアレン:トコフェロールの重量比は好ましくは≦1(例えば0.90)であり、これは、より安定したエマルジョンを提供することができるからである。スクアレンおよびポリソルベート80は、約5:2の体積比、または約11:5の重量比で存在し得る。したがって、3種の成分(スクアレン、トコフェロール、ポリソルベート80)は、1068:1186:485または55:61:25辺りの重量比で存在し得る。このア
ジュバントは「AS03」として公知である。このタイプのもう1つの有用なエマルジョンは、ヒト1用量あたり、0.5~10mgのスクアレン、0.5~11mgのトコフェロール、および0.1~4mgのポリソルベート80[39]を、例えば上記に考察された比で含み得る。
・サポニン(例えばQuilAまたはQS21)およびステロール(例えばコレステロール)が螺旋状ミセルとして関連するエマルジョン[40]。
・0.5~50%の油、0.1~10%のリン脂質、および0.05~5%の非イオン性界面活性剤を有するエマルジョン。参考文献41に記載されているとおり、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロン小滴サイズが有利である。
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性の非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)および疎水性の非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステルまたはマンナイドエステル、例えば、ソルビタンモノオレエート(sorbitan monoleate)または「Span80」など)を含むエマルジョン。エマルジョンは、好ましくは熱可逆性があり、かつ/またはサイズ200nm未満の油滴(体積による)を少なくとも90%有する[42]。エマルジョンはまた以下のうちの1種または複数を含み得る:アルジトール;凍結保護剤(例えば糖、例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロース);および/またはアルキルポリグリコシド。エマルジョンはまた、TLR4アゴニスト、例えば、その化学構造が糖環を含まないものなどを含み得る[43]。そのようなエマルジョンは凍結乾燥されていてもよい。「AF03」製品はそのようなエマルジョンの1つである。
【0155】
本発明で使用される好ましい水中油型エマルジョンは、スクアレンおよびポリソルベート80を含む。
【0156】
エマルジョンは、ワクチン製造中にTdaP抗原と混合してもよいし、または送達時に即時調合によりこれらを混合してもよい。したがって、一部の実施形態では、アジュバントおよび抗原は、包装された、または流通したワクチンの中に別々に保持され、使用時にはいつでも最終処方される状態にある。混合の際には(バルク製造中、または使用間際であるかどうかに関わらず)、抗原は一般に水性の形態であることによって、最終ワクチンは、2つの液体を混合することによって調製するようになる。混合用の2つの液体の体積比は異なることができるが(例えば、5:1から1:5)、一般に約1:1である。エマルジョンおよび抗原がキット内で別々に保存されている場合、製品は、アジュバント化した液体ワクチンを得るための混合用に、エマルジョンを含有するバイアルおよび水性抗原を含有するバイアルとして提示されてもよい(単回用量または複数回用量)。
【0157】
本発明の好ましいエマルジョンはスクアレン油を含む。これは普通、サメ油から調製されるが、代替の原料は公知であり、例えば参考文献44(イースト菌)および45(オリーブ油)を参照されたい。参考文献46に開示されているとおり、スクアレン(TEQ)1グラムあたり661ピコグラム未満のPCBを含有するスクアレンが本発明での使用に好ましい。エマルジョンは、参考文献47に開示されているとおり、例えば二回の蒸留により調製した高い純度のスクアレンから好ましくは作製される。
【0158】
組成物がトコフェロールを含む場合、α、β、γ、δ、εまたはξトコフェロールのうちのいずれかを使用することができるが,α-トコフェロールが好ましい。トコフェロールは、いくつかの形態、例えば、異なる塩および/または異性体などの形態をとることができる。塩としては、有機酸塩、例えば、コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩などが挙げられる。D-α-トコフェロールおよびDL-α-トコフェロールは両方とも使用するこ
とができる。トコフェロールは、エマルジョンを安定化させるのに役立つことができる抗酸化剤特性を有する[48]。好ましいα-トコフェロールはDL-α-トコフェロールであり、このトコフェロールの好ましい塩はコハク酸塩である。
【0159】
ジフテリアトキソイド
ジフテリアは、グラム陽性の無芽胞性好気性細菌であるCorynebacterium diphtheriaeにより引き起こされる。この生物はプロファージコードADP-リボシル化外毒素(「ジフテリア毒素」)を発現し、その毒素は、(例えばホルムアルデヒドを使用して)処理することによって、もはや毒性はないが、抗原性のままであり、注射後に特異的な抗毒素抗体の生成を刺激することができるトキソイドが得られる。ジフテリアトキソイドは、参考文献69の第13章により詳細に開示されている。好ましいジフテリアトキソイドは、ホルムアルデヒド処理によって調製されるものである。そのジフテリアトキソイドは、C. diphtheriaeを増殖培地(例えばFenton培地、またはLinggoud&Fenton培地)(これらにウシ抽出物を補充してもよい)中で増殖させ、続いてホルムアルデヒド処理、限外濾過および沈殿を行うことによって得ることができる。次いで、トキソイド化した材料を滅菌濾過および/または透析を含むプロセスにより処理してもよい。
【0160】
ジフテリアトキソイドの量は、国際単位(IU)で表現することができる。例えば、NIBSC[70]は、「Diphtheria Toxoid Adsorbed Third International Standard 1999」[71、72]を供給し、それは、1アンプルあたり160IUを含有する。IU系の代替として、「Lf」単位(「凝集単位」、「限界凝集用量」、または「凝集の限界」)が、1国際単位の抗毒素と混合した場合に、最適に凝集する混合物を生成するトキソイドの量として定義される[73]。例えば、NIBSCは、1アンプルあたり300Lfを含有する「Diphtheria Toxoid,Plain」[74]および1アンプルあたり900Lfを含有する「The 1st International Reference Reagent For Diphtheria Toxoid For Flocculation Test」[75]を供給する。組成物中のジフテリア毒素の濃度は、このような基準試薬に対して較正された基準物質との比較によって、凝集アッセイを使用して容易に決定することができる。IU系とLf系との間の変換は、特定のトキソイド調製物に依存する。
【0161】
本発明の組成物中のジフテリアトキソイドの濃度は、典型的に2~8Lf/mlの範囲(例えば4Lf/mlまたは5Lf/ml)であるが、理想的には≦4Lf/mlである。したがって、典型的な0.5mlの単位用量の体積では、ジフテリアトキソイドの量は、2Lf、2.5Lf、または2Lf未満とすることができる。
【0162】
組成物中のジフテリアトキソイドは、好ましくはアルミニウム塩上に、好ましくは水酸化アルミニウムアジュバント上に吸着されている(より好ましくは完全に吸着されている)。
【0163】
破傷風トキソイド
破傷風は、グラム陽性、芽胞形成性桿菌属である、Clostridium tetaniにより引き起こされる。この生物は、エンドペプチダーゼ(「破傷風毒素」)を発現し、これを処理することによって、もはや毒性はないが、抗原性のままであり、注射後に特異的な抗毒素抗体の生成を刺激することができるトキソイドが得られる。破傷風トキソイドは、参考文献69の第27章でより詳細に開示されている。好ましい破傷風トキソイドは、ホルムアルデヒド処理により調製されたものである。破傷風トキソイドは、C.tetaniを増殖培地(例えば、ウシカゼイン由来のLatham培地)中で増殖させ、
続いてホルムアルデヒド処理、限外濾過法および沈殿を行うことによって得ることができる。次いで、材料は、滅菌濾過および/または透析を含むプロセスによって処理することができる。
【0164】
破傷風トキソイドの量は、国際単位(IU)で表現することができる。例えば、NIBSCは、「Tetanus Toxoid Adsorbed Third International Standard 2000」[76、77]を供給し、それは、1アンプルあたり469IUを含有する。ジフテリアトキソイドと同様に、「Lf」単位はIU系の代替である。NIBSCは、「The 1st International Reference Reagent for Tetanus Toxoid For
Flocculation Test」[78]を供給し、それは、1アンプルあたり1000LFを含有する。組成物中のジフテリア毒素の濃度は、このような基準試薬に対して較正された基準物質との比較によって、凝集アッセイを使用して容易に決定することができる。
【0165】
本発明の組成物中の破傷風トキソイドの濃度は、典型的に5~15Lf/ml(例えば10Lf/ml)の範囲であるが、理想的には≦9Lf/mlである。したがって、典型的な0.5mlの単位用量の体積では、ジフテリアトキソイドの量は5Lf、または4.5Lf未満であることができる。
【0166】
組成物中の破傷風トキソイドは、好ましくはその塩上に、好ましくは水酸化アルミニウムアジュバント上に吸着されている(時には完全に吸着されている)。
【0167】
百日咳トキソイド
Bordetella pertussisは百日咳を引き起こす。ワクチン中の百日咳抗原は、細胞性(全細胞、不活化B.pertussis細胞の形態;「wP」)または無細胞性(「aP」)のいずれかである。細胞性百日咳抗原の調製は、十分に記録されており(例えば、参考文献69の第21章を参照されたい)、例えばそれは、B.pertussisの第I相培養物の熱不活化により得ることができる。本発明は、好ましくは無細胞性抗原を使用し、以下の3種の抗原のうちの1種、2種または(好ましくは)3種を含む:(1)無毒化百日咳毒素(百日咳トキソイド、または「PT」);(2)線維状赤血球凝集素(「FHA」);(3)ペルタクチン(「69キロダルトン外膜タンパク質」としても公知)。これら3種の抗原は、改変Stainer-Scholte液体培地中で増殖させたB.pertussis培養物からの単離により調製することができる。PTおよびFHAは、発酵ブロスから(例えば、ヒドロキシアパタイトゲル上への吸着により)単離することができるのに対して、ペルタクチンは、細胞から加熱処理および凝集(例えば塩化バリウムを使用して)により抽出することができる。抗原は、次に続くクロマトグラフィーおよび/または沈殿ステップにおいて精製することができる。PTおよびFHAは、疎水性クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーにより精製することができる。ペルタクチンは、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー、またはIMACにより精製することができる。FHAおよびペルタクチンは、本発明による使用の前に、ホルムアルデヒドで処理することができる。PTは、好ましくは、ホルムアルデヒドおよび/またはグルタルアルデヒドの処理により無毒化される。この化学的解毒作用手順の代替として、PTは、酵素活性が変異誘発によって低減した変異体PT[79](例えば9K/129G二重変異体[80])であってよい。
【0168】
本発明は、好ましくはPT含有aP抗原を使用する。aP抗原を使用する場合、本発明の組成物は典型的に、PTに加えて、FHAおよび、場合によって、ペルタクチンを含むことになる。それはまた場合によって、線毛タイプ2および3も含むことができる。
【0169】
無細胞性百日咳抗原の量は、典型的には、マイクログラムで表現される。本発明の組成物中の百日咳トキソイドの濃度は典型的に、2~20μg/mlの範囲(例えば5μg/mlまたは16μg/ml)であるが、理想的には≦4μg/mlである。したがって、典型的な0.5mlの単位用量の体積では、ジフテリアトキソイドの量は、2.5μg、8μg、または<2μgとすることができる。
【0170】
百日咳トキソイド、FHAおよびペルタクチンのそれぞれが本発明の組成物中に存在することが通常である。これらは、様々な比(質量による)、例えば、PT:FHA:p69の比が16:16:5または5:10:6で存在してもよい。それらの3種の抗原のそれぞれが、一般に<20μg/ml、例えばそれぞれ4~20μg/mlの範囲で存在することになる。百日咳抗原の総濃度<40μg/mlは典型的である。ペルタクチンと比較して、FHAの質量が過剰であることが通常である。
【0171】
組成物中の百日咳トキソイドは好ましくは、その塩上に、好ましくは水酸化アルミニウムアジュバント上に吸着されている(時には完全に吸着されている)。いずれかのFHAはまた、水酸化アルミニウムアジュバント上に吸着されていることができる。いずれのペルタクチンも、リン酸アルミニウムアジュバントに吸着されていることができる。
【0172】
不活化ポリオウイルス抗原(IPV)
灰白髄炎は、3つの型のポリオウイルスのうちの1つによって引き起こされ得る。その3つの型は類似しており、同一の症状を引き起こすが、それらは抗原的には極めて異なり、1つの型による感染は、その他による感染を防御しない。したがって、参考文献69の第24章で説明されているとおり、本発明と共に3つのポリオウイルス抗原、すなわちポリオウイルス1型(例えばMahoney菌株)、ポリオウイルス2型(例えばMEF-1菌株)、およびポリオウイルス3型(例えばSaukett菌株)を使用することが好ましい。これらの菌株(「Salk」菌株)の代替として、例えば、参考文献81および82に考察されているとおり、1型~3型のうちのSabin菌株を使用することができる。これらの菌株は普通のSalk菌株より強力であることができる。
【0173】
ポリオウイルスは細胞培養物中で増殖してもよい。好ましい培養物は、Vero細胞株を使用し、このVero細胞株は、サル腎臓由来の継続細胞株である。Vero細胞は、好都合には、培養されたマイクロキャリアであることができる。ウイルス感染前および感染中のVero細胞の培養物は、ウシ由来の材料、例えば、子牛血清、およびラクトアルブミン加水分解物(例えば、ラクトアルブミンの酵素分解により得られる)の使用を含み得る。このようなウシ由来の材料は、BSEも他のTSEも含まない供給源から得られるべきである。最終のワクチンは、好ましくは10ng/ml未満、好ましくは≦1ng/ml、例えば≦500pg/mlまたは≦50pg/mlのVero細胞DNA、例えば≧50の塩基対の長さである、10ng/ml未満のVero細胞DNAを含有する。
【0174】
増殖後、ビリオンは、限外濾過法、ダイアフィルトレーション、およびクロマトグラフィーなどの技術を使用して精製することができる。患者への投与の前に、ポリオウイルスを不活化させなければならず、これは、ウイルスが本発明のプロセスで使用される前に、ホルムアルデヒドでの処理により達成することができる。
【0175】
ウイルスは、好ましくは、個々に増殖、精製および不活化され、次いで組み合わせることによって、本発明での使用のためのバルク混合物が得られる。
【0176】
不活化ポリオウイルス(IPV)の量は、典型的には「DU」単位(「D-抗原単位」[83])で表現される。典型的に、組成物は、IPV抗原1/2/3を80/16/6
4DU/mlの濃度で有する(0.5ml用量あたり、40/8/32DU)。しかし、一部の実施形態では組成物は、より少ない抗原を含むことを介して、またはより強力な菌株を使用することにより、より低量のポリオウイルス抗原を含むことができる。1型ポリオウイルスに対して、組成物中のウイルスの濃度は、≦20DU/ml、例えば<18、<16、<14、<12、<10などとすることができる。2型ポリオウイルスに対して、組成物中のウイルスの濃度は、≦4DU/ml、例えば<3、<2、<1、<0.5などとすることができる。3型ポリオウイルスに対して、組成物中のウイルスの濃度は、≦16DU/ml、例えば<14、<12、<10、<8、<6などとすることができる。1型、2型および3型ポリオウイルスの3種すべてが存在する場合、これら3種の抗原は、それぞれDU比5:1:4で存在するか、または任意の他の適切な比、例えば、Sabin菌株を使用する場合には15:32:45の比で存在することができる[81]。Sabin菌株由来の低用量の抗原は特に有用であり、これは、1型≦10DU、2型≦20DU、および3型≦30DUを有する(1単位用量あたり)。
【0177】
ポリオウイルスは、好ましくは、それらが処方される前にはいずれのアジュバントにも吸着されていないが、処方後は、それらは組成物中のアルミニウム塩(複数可)に吸着することができる。
【0178】
組合せワクチン
D、T、Pa、および/またはポリオウイルス抗原を含むばかりでなく、本発明の免疫原性組成物は、さらなる病原体からの抗原を含むことができる。例えば,これらの抗原は、HBsAg、結合体化Hib莢膜糖、結合体化N.meningitidis莢膜糖(血清群A、C、W135および/またはYのうちの1種または複数)または結合体化S.pneumoniae莢膜糖であってよい。例えば、PEDIARIX、MENVEO、MENACTRA、NIMENRIX、PREVNAR、またはSYNFLORIXの適切な抗原成分のうちのいずれかを使用することができる。
【0179】
しかし、好ましくは、ワクチンの唯一の抗原性成分は、(i)ジフテリア、破傷風および百日咳に対するもの、または(ii)ジフテリア、破傷風、百日咳およびポリオウイルスに対するもののいずれかである。
【0180】
本発明の免疫原性組成物は、免疫原性成分として、少なくともジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、および百日咳トキソイドを含む。組成物は、ジフテリアトキソイドと比較して、過剰の破傷風トキソイドを含む。この過剰分は、Lf単位で測定される(しかし、過剰分はまたIUを介しても示すことができる、例えばAdacelの含有量は、5Lfの破傷風トキソイドおよび2Lfのジフテリアトキソイド、または20IUの破傷風トキソイドおよび2IUのジフテリアトキソイドとして提示されている)。過剰分は理想的には少なくとも1.5:1(すなわち、ジフテリアトキソイド1Lfごとに対して、少なくとも1.5Lfの破傷風トキソイド)であり、例えば2:1または2.5:1である。過剰分は普通5倍を超えないものとする(再度、Lf単位で)。
【0181】
本開示の独立した実施形態として、本発明は、百日咳トキソイド(例えば、PT-9K/129G二重変異体)、線維状赤血球凝集素およびペルタクチンが1:1:2の質量比で存在する、無細胞性百日咳成分を含む免疫原性組成物を提供する。例えば、組成物は、1単位用量あたり4μgの百日咳トキソイド、4μgのFHAおよび8μgのペルタクチンを含むことができる。組成物はまた、TdaP組合せを提供するために、ジフテリアトキソイド(例えば、1単位用量あたり2Lf)および破傷風トキソイド(例えば、1用量あたり5Lf)を含むことができる。この組成物はまた、アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム)を含むアジュバントと、場合によって、本明細書中の他の箇所で記載されているとおりのTLRアゴニストとを含むことができる。
【0182】
薬学的組成物および製品
本発明は、種々の免疫原性組成物を提供する。これらは、理想的には、ヒトでの使用に適切な薬学的組成物である。薬学的組成物は、通常、免疫原およびアジュバント成分に加えて成分を含み、例えばそれらは典型的には、1種または複数の薬学的キャリア(複数可)および/または賦形剤(複数可)を含む。そのような成分についての徹底的な検討は、参考文献84において入手することができる。
【0183】
薬学的組成物は好ましくは、特に投与の時点では水性形態であるが、それらはまた、非水性液体形態で、または乾燥形態で、例えばゼラチンカプセル剤として、または凍結乾燥物(lyophilisate)などとして提供することができる。
【0184】
薬学的組成物は、チオメルサールまたは2-フェノキシエタノールなどの1種または複数の防腐剤を含み得る。水銀を含有しない組成物が好ましく、防腐剤を含まないワクチンを調製することができる。
【0185】
薬学的組成物は、例えば張度を制御するために、ナトリウム塩などの生理学的塩を含んでもよい。塩化ナトリウム(NaCl)が典型的であり、これは、1から20mg/ml、例えば10±2mg/mlまたは9mg/mlで存在し得る。存在し得る他の塩には、塩化カリウム、二水素リン酸カリウム、リン酸二ナトリウム脱水物(disodium phosphate dehydrate)、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが含まれる。
【0186】
薬学的組成物は、200mOsm/kgから400mOsm/kg、例えば240~360mOsm/kgまたは290~310mOsm/kgの質量オスモル濃度を有してよい。組成物は、ヒトと等張性であり得る。
【0187】
薬学的組成物は、化合物(不溶性アルミニウム塩を用いるか、または用いずに)を淡水(plain water)(例えば注射用水)中に含み得るが、通常は1種または複数の緩衝液を含む。典型的な緩衝液には:リン酸緩衝液(第15の態様を除く);トリス緩衝液;ホウ酸緩衝液;コハク酸緩衝液;ヒスチジン緩衝液(特に水酸化アルミニウムアジュバントとともに);またはクエン酸緩衝液が含まれる。緩衝塩(buffer salt)は典型的には、5~20mMの範囲で含まれる。リン酸緩衝液を使用する場合には、ホスフェートイオンの濃度は一部の実施形態では、<50mM(上記参照)、例えば<10mMであるべきである。
【0188】
本発明の組成物のpHは、一般に6.0から7.5である。したがって、製造プロセスは、包装前に組成物のpHを調整するステップを含むことができる。患者に投与する水性組成物は、最適な安定性のため、5.0から7.5、より典型的には5.0から6.0のpHを有することができる;ジフテリアトキソイドおよび/または破傷風トキソイドが存在する場合、pHは理想的には6.0から7.0である。
【0189】
薬学的組成物は好ましくは無菌である。
【0190】
薬学的組成物は好ましくは非発熱性であり、例えば、1用量あたり<1EU(内毒素単位、標準的な尺度)、好ましくは1用量あたり<0.1EUを含有する。1EUは、1用量あたり0.2ngのFDA参照標準内毒素EC-2「RSE」と等しい。
【0191】
薬学的組成物は好ましくはグルテンを含まない。
【0192】
製造中に、所望の最終濃度を得るための成分の希釈は、通常WFI(注射用蒸留水(water for injection))を用いて実施されることになる。
【0193】
薬学的組成物は、動物(および、特に、ヒト)患者に投与するのに適しており、したがってヒトおよび獣医学使用の両方を含む。それらは、患者において免疫応答を上昇させる方法において使用することができ、その方法は、組成物を患者に投与するステップを含む。
【0194】
本発明は、個々の用量への包装に対して適したバルク材料を提供することができ、次いでこれらを患者への投与のために分配することができる。上記で考察された濃度は、典型的には、最終の包装された用量における濃度であり、よって、バルクワクチン中の濃度はより高くてもよい(例えば、希釈により最終濃度へ低減されるものとする)。
【0195】
薬学的組成物は、単位用量形態で調製することができる。一部の実施形態では、単位用量は、筋肉注射に対して、0.05から1.5ml、例えば約0.5mlの体積を有し得る。0.5ml用量についての言及は、通常の分散、例えば0.5ml±0.05mlを含むと理解されるはずである。複数回用量の状況に対しては、複数回用量の量を単一容器内に、例えば、10回用量の複数回用量容器には5ml(または10%の過剰充填を入れて5.5ml)を一緒に抽出および包装することになる。
【0196】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物を含有する、例えば単位用量を含有する送達デバイス(例えばシリンジ、ネブライザー、噴霧器、吸入器、皮膚パッチなど)を提供する。このデバイスは、組成物を脊椎動物被験体に投与するために使用することができる。
【0197】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物を含有する、例えば単位用量を含有する滅菌容器(例えばバイアル)を提供する。
【0198】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の単位用量を提供する。
【0199】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物を含有する気密密閉容器を提供する。適切な容器には例えば、バイアルが含まれる。
【0200】
本発明の薬学的組成物は、様々な形態で調製し得る。例えば組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかとしての注射剤として調製し得る。注射の前に液体ビヒクル中に溶解または懸濁させるのに適した固体形態もまた、調製することができる(例えば、凍結乾燥組成物または噴霧凍結乾燥組成物)が、水性組成物が好ましい。筋肉内注射または皮内注射または皮下注射のための懸濁物が典型的である。
【0201】
第1の態様の組成物は、有効量のTLRアゴニスト、即ち、単一用量で、または一連のものの一部として個体に投与した場合に、その同時投与された免疫原に対して免疫応答を増強するのに有効である量を含む。この量は、処置される個体の健康および身体的状態、年齢、処置される固体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望の防御程度、ワクチンの処方、医学的状況の処置医師による評価ならびに他の関連要因に応じて変動してよい。
【0202】
組成物の単位用量中のTLRアゴニストの量には、常套的な試験を介して決定することができる比較的幅広い範囲が該当する。1~1000μg/用量の量、例えば1用量当たり5~100μgまたは1用量当たり10~100μg、理想的には1用量当たり≦300μg、例えば1用量当たり約5μg、10μg、20μg、25μg、50μgまたは100μgを使用することができる。したがって、本発明の組成物中のTLRアゴニスト
の濃度は、2~2000μg/ml、例えば10~200μg/ml、または約5、10、20、40、50、100もしくは200μg/ml、理想的には≦600μg/mlであってよい。
【0203】
処置方法および免疫原性組成物の投与方法
本発明は、ヒトにおいて免疫応答を上昇させるのに適しているが、それらはまた、非ヒト動物(特に哺乳動物)の被験体においても有用となり得る。本発明に従い調製した組成物は、小児および成人の両方を処置するために使用することができる。
【0204】
本発明は、被験体において免疫応答を上昇させる方法を提供し、その方法は、被験体に本発明の組成物を投与するステップを含む。本発明はまた、被験体において免疫応答を上昇させる方法で使用するための本発明の組成物を提供する。本発明はまた、被験体において免疫応答を上昇させるための医薬(例えばワクチン)を製造する際の、(i)本明細書で定義されているとおりのTLRアゴニストおよび(ii)不溶性アルミニウム塩および(iii)少なくともジフテリア、破傷風および百日咳トキソイドの使用を提供する。本発明はまた、被験体において免疫応答を上昇させるための医薬(例えばワクチン)を製造する際の(i)本明細書で定義されているとおりの水中油型エマルジョンアジュバントならびに(ii)少なくともジフテリア、破傷風および百日咳トキソイドの使用を提供する。
【0205】
それらの方法および使用により刺激された免疫応答は一般に、抗体応答、好ましくは防御抗体応答が含まれる。免疫応答はまた、細胞性応答を含むことができる。免疫化の後に、特にジフテリア、破傷風、百日咳およびポリオウイルス抗原に対して、抗体応答および細胞性免疫応答を評価するための方法は当技術分野では周知である。
【0206】
本発明の組成物の投与は一般に注射により行われるが、これは、皮下、筋肉内経路の皮内による注射であってよい。筋肉注射が好ましい。
【0207】
本発明の免疫原性組成物は一般に、少なくとも3歳の年齢、好ましくは少なくとも4歳の年齢の人々に投与される。例えば、被験体は10~64歳、またはティーンエイジャーであってよい。組成物は、慣用的な小児期免疫化(DTPワクチンを含む)を以前に受けたことのある人々に最も有用である。
【0208】
患者は一般に、必要なだけの頻度で組成物を受けることになる。免疫化の各過程は、単回の追加免疫用量を含むことになる。
【0209】
化学基
他に具体的に定義されていない限り、本明細書で検討されている化学基は、本明細書で使用される場合は次の意味を有する:
「アルキル」という用語には、下記を含む飽和炭化水素残基が含まれる:
-10個までの原子(C1~C10)または6個までの原子(C1~C6)または4個までの原子(C1~C4)の直鎖基。そのようなアルキル基の例には、これらに限られないが、C1-メチル、C2-エチル、C3-プロピルおよびC4-n-ブチルが含まれる。-3から10個の原子(C3~C10)または7個までの原子(C3~C7)または4個までの原子(C3~C4)の分岐基。そのようなアルキル基の例には、これらに限られないが、C3-イソ-プロピル、C4-sec-ブチル、C4-イソ-ブチル、C4-tert-ブチルおよびC5-ネオ-ペンチルが含まれる。
【0210】
「アルキレン」という用語は、アルキル基に由来する二価の炭化水素ラジカルを指し、かつ上記の定義に従って解釈されることとする。
【0211】
「アルケニル」という用語には、下記を含むモノ不飽和炭化水素残基が含まれる:
-2から6個の原子(C2~C6)の直鎖基。そのようなアルケニル基の例には、これらに限られないが、C2-ビニル、C3-1-プロペニル、C3-アリル、C4-2-ブテニルが含まれる。
-3から8個の原子(C3~C8)の分岐基。そのようなアルケニル基の例には、これらに限られないが、C4-2-メチル-2-プロペニルおよびC6-2,3-ジメチル-2-ブテニルが含まれる。
【0212】
アルケニレンという用語は、アルケニル基に由来する二価炭化水素ラジカルを指し、上記の定義に従って解釈されることとする。
【0213】
「アルコキシ」という用語には、下記を含むO-連結炭化水素残基が含まれる:
-1から6個の原子(C1~C6)または1から4個の原子(C1~C4)の直鎖基。そのようなアルコキシ基の例には、これらに限られないが、C1-メトキシ、C2-エトキシ、C3-n-プロポキシおよびC4-n-ブトキシが含まれる。
-3から6個の原子(C3~C6)または3から4個の原子(C3~C4)の分岐基。そのようなアルコキシ基の例には、これらに限られないが、C3-イソ-プロポキシおよびC4-sec-ブトキシおよびtert-ブトキシが含まれる。
【0214】
ハロは、Cl、F、BrおよびIから選択される。ハロは好ましくは、Fである。
【0215】
「アリール」という用語には、6または10個の炭素原子を含有する単一または縮合芳香環系が含まれ;ここで、別段に述べられていない限り、生じているアリールはそれぞれ、上記で定義されたとおり、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、OH、ハロ、CN、COOR14、CF3およびNR14R15から独立に選択される5個までの置換基で置換されていてもよい。典型的には、アリールは場合によって、1、2または3個の置換基で置換されていてもよい。場合による置換基は上述されたものから選択される。適切なアリール基の例には、フェニルおよびナフチル(それぞれ上述のとおり置換されていてもよい)が含まれる。アリーレンは、アリール基に由来する二価のラジカルを指し、上記の定義に従って解釈されることとする。
【0216】
「ヘテロアリール」という用語には、1または2個のN原子および場合によってNR14原子または1個のNR14原子およびSもしくはO原子または1個のS原子または1個のO原子を含有する5、6、9または10員の単環式または二環式芳香環が含まれ;ここで、別段に述べられていない限り、前記ヘテロアリールは、下記で定義されているとおり、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、OH、ハロ、CN、COOR14、CF3およびNR14R15から独立に選択される1、2または3個の置換基で置換されていてもよい。適切なヘテロアリール基の例には、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾイル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、キノリニルおよびイソキノリニル(場合によって、上述のとおり置換されている)が含まれる。ヘテロアリーレンは、ヘテロアリールに由来する二価のラジカルを指し、上記の定義に従って解釈されることとする。
【0217】
「ヘテロシクリル」という用語は、C連結またはN連結している3員から10員の非芳香族単環式または二環式環であり、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は可能な場合には、N、NR14、S(O)qおよびOから独立に選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有し;かつ前記ヘテロシクロアルキル環は場合によって可能な場合には、1また
は2つの二重結合を含有し、かつ炭素上で、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、OH、CN、CF3、ハロ、COOR14、NR14R15およびアリールから独立に選択される1または2個の置換基で置換されていてもよい。
【0218】
上記の定義において、R14およびR15は、Hおよび(C1~C6)アルキルから独立に選択される。
【0219】
構造式が、例えば式(C)の場合には基P3についてのように、特定されていないか、または「浮動性」結合によって分子の核に付着している置換基と共に定義されている場合、この定義は、浮動性結合が位置している環上のいずれかの原子に、その原子で許容される原子価に応じて特定されていない置換基が付着している場合を含む。
【0220】
互変異性体形態で(即ちケトまたはエノール形態で)存在し得る本発明の化合物、例えば式(C)または(H)の化合物の場合には、特定の化合物についての言及は場合によって、そのような互変異性体形態の全てを含む。
【0221】
一般
「含むこと」という用語は、「含むこと」および「からなること」を内包し、例えば、Xを「含む」組成物は、Xから専らなることも、または追加の何か、例えば、X+Yを含むこともある。
【0222】
「実質的に」という語は、「完全に」を排除するものではない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないこともある。必要に応じて、「実質的に」という言葉は、本発明の定義から省かれていることもある。
【0223】
数値xに関連して、「約」という用語は、任意選択であり、例えば、x±10%を意味する。
【0224】
特に述べられていない限り、2つ以上の成分を混合するステップを含む方法は、特定の順序での混合を何ら必要としない。したがって成分を、任意の順序で混合することができる。3つの成分が存在する場合は、2つの成分を互いに組み合わせることができ、次いで、その組合せを、第3の成分などと組み合わせ得る。
【0225】
動物(特にウシ)材料を、典型的に細胞培養において使用するので、それらを、伝染性海綿状脳症(TSE)がない、特にウシ海綿状脳症(BSE)がない供給源から得るべきである。
【0226】
化合物が組成物の一部として体内に投与される場合、その化合物は適切なプロドラッグで代わりに置き換えられてもよい。
【0227】
本発明で使用されるリン含有基は、周辺環境のpH、例えばそれらが溶解している溶媒のpHに応じていくつかのプロトン化および脱プロトン化形態で存在することがある。したがって、特定の形態を例示することはできるが、別段に述べられていない限り、これらの例示は、単なる代表であり、具体的なプロトン化または脱プロトン化形態に限定するものではないことが意図されている。例えば、ホスフェート基の場合には、これは、-OP(O)(OH)2として例示されているが、定義には、酸性条件で存在し得るプロトン化形態-[OP(O)(OH2)(OH)]+および-[OP(O)(OH2)2]2+ならびに塩基性条件で存在し得る脱プロトン化形態-[OP(O)(OH)(O)]-および[OP(O)(O)2]2-が含まれる。
【0228】
本明細書に開示されている化合物は、薬学的に許容される塩として存在してよい。したがって、化合物は、その薬学的に許容される塩、すなわち生理学的または毒物学的に容認できる塩(適切には、薬学的に許容される塩基付加塩および薬学的に許容される酸付加塩が含まれる)の形態で使用され得る。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、アルミニウム塩アジュバント、およびTLRアゴニストを含む免疫原性組成物であって、ジフテリアトキソイドと比較して、過剰の(Lf単位で測定)破傷風トキソイドを含む、組成物。
(項目2)
上記TLRアゴニストがTLR4アゴニストまたはTLR7アゴニストである、項目1に記載の組成物。
(項目3)
上記TLRアゴニストが上記アルミニウム塩アジュバントに吸着されている、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目4)
上記トキソイドのうちの1、2または3種が上記アルミニウム塩アジュバントに吸着されている、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
Al+++濃度が≦0.5mg/mlである、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
上記アルミニウム塩が水酸化アルミニウムである、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
上記TLRアゴニストが、本明細書の式「K」の化合物、または薬学的に許容されるその塩である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
上記TLRアゴニストが化合物K2である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。(項目9)
上記TLRアゴニストが、上記TLRアゴニストの不溶性金属塩への吸着を可能にする少なくとも1個の吸着部分を含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
上記吸着部分がホスフェートまたはホスホネートである、項目9に記載の組成物。
(項目11)
上記TLRアゴニストが、本明細書において定義されているとおりの式(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)、(II)、(J)もしくは(K)を有するか、または3d-MPLである、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
上記TLRアゴニストが、参考文献13に定義されているとおりの化合物1~102のうちの1種、または薬学的に許容されるその塩である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
ヒスチジン緩衝液を含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14)
ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、および水中油型エマルジョンアジュバントを含む免疫原性組成物であって、ジフテリアトキソイドと比較して、過剰の(Lf単位で測定)破傷風トキソイドを含む、組成物。
(項目15)
上記エマルジョンがスクアレンおよび/またはポリソルベート80を含む、項目14に
記載の組成物。
(項目16)
上記エマルジョン中の油滴のうち、数で少なくとも80%が220nm未満の直径を有する、項目14または項目15に記載の組成物。
(項目17)
ジフテリアトキソイド濃度が≦4Lf/mlである、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目18)
破傷風トキソイド濃度が≦9Lf/mlである、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目19)
百日咳トキソイド濃度が≦4μg/mlである、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目20)
三価の不活化ポリオウイルス抗原成分もまた含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目21)
6.1から7.9のpHを有する、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目22)
被験体において免疫応答を上昇させる方法であって、上記項目のいずれか一項に記載の組成物を上記被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目23)
上記被験体が、小児のときにDTPワクチンを以前に受けたことがある、項目22に記載の方法。
(項目24)
百日咳トキソイド、線維状赤血球凝集素およびペルタクチンが、1:1:2の質量比で存在する、無細胞性百日咳成分を含む免疫原性組成物。
(項目25)
上記百日咳トキソイドがPT-9K/129G二重変異体である、項目24に記載の組成物。
(項目26)
単位用量形態であり、1単位用量あたり、4μgの百日咳トキソイド、4μgのFHAおよび8μgのペルタクチンを含む、項目24または項目25に記載の組成物。
(項目27)
ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドもまた含む、項目24から26のいずれか一項に記載の組成物。
(項目28)
アルミニウム塩アジュバントもまた含む、項目24から27のいずれか一項に記載の組成物。
(項目29)
上記アルミニウム塩に吸着されているTLRアゴニストを含む、項目28に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【
図1】
図1は、示された処置群に対するFHA-特異的記憶B細胞の%を示している。
【発明を実施するための形態】
【0230】
ワクチンの調製
参考文献31および85は、上記で検討されたとおりの式(K)を有するTLR7アゴ
ニストを開示している。これらの化合物の1つである3-(5-アミノ-2-(2-メチル-4-(2-(2-(2-ホスホノエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェネチル)ベンゾ[f]-[1,7]ナフチリジン-8-イル)プロパン酸は、これより以下化合物「K2」と称す:
【0231】
【0232】
化合物K2を4mg/mlで水に加え、次いで、室温で15分間撹拌しながら1M NaOHを加えることによって、完全な可溶化を確実にする。この材料を水酸化アルミニウムアジュバント(Al-H)の懸濁物に加えることによって、所望の最終濃度を得る。この混合物を周辺温度で2時間振盪することによって、完全な吸着を確実にし、次いでヒスチジン緩衝液成分を加える(10mMヒスチジン緩衝液、pH6.5)。
【0233】
化合物はまたアルギニン塩一水和物(98mgの化合物を、1.7mlの0.1Mアルギニンと80/20メタノール/水中で混合することによって、57mg/mlの溶液を得て、続いて7mlのエタノールを加えて塩を沈殿させることによって得られる)として使用することもでき、この場合、Al-Hとの混合前に、可溶化のためのNaOHは必要ないと考えられる。
【0234】
4つの異なる混合物を調製し、最終のK2濃度、10、50、250または500μg/mlを得る(100μlの投与量の体積中、K2の1、5、25または50μgの用量を得る);Al-H濃度は常に3mg/mlである。すべての強度において、>95%の化合物K2をAl-Hに吸着させる。吸着されているアジュバントは、これより以下「Al-H/K2」と称す。
【0235】
抗原へのアジュバント吸着
3価(DTaP)ワクチンを、Al-H単独でまたはAl-H/K2でアジュバント化した。これらの処方物は最適なpH(6.5~6.8±0.1)および容量オスモル濃度値(0.300±50mO)を示した。容量オスモル濃度をNaClで調節した。アジュバント-抗原複合体を遠心分離で吸着していない抗原から分離することによって吸着を検出した。0.4%DOCを、吸着していない抗原を含有する上清に加えた。60%TCAの添加により抗原を沈殿させ、遠心分離で収集した。TCAで沈殿した抗原を含有するペレットをローディングバッファー中に再懸濁させ、SDS-PAGEゲル上にローディングした。アジュバント-抗原複合体を含有するペレットを、脱離緩衝液中に再懸濁させ(4×濃度:0.5M Na2HPO4 pH、8g SDS、25gグリセロール、6.16g DTTおよびブロモフェノールブルー)、水酸化アルミニウムを遠心分離で除去し、上清をSDS-PAGEゲルに加えた。
【0236】
2mg/mlの濃度でAl-Hを単独で使用して、Coomassie Blue染色により検出したDT、TT、PT、FHAおよび69Kに対する吸着プロファイルを完成した。DOC-TCA処理した上清にはバンドは検出されなかった。Western Blot分析は、DT、TT、PT、FHAおよび69Kに対して完全なAl-H吸着を確
認した。
【0237】
4つの異なるK2濃度を試験した(0.1、0.025、0.01、0.005mg/ml)。Al-H濃度は2mg/mlで一定であった。0.1mg/mlのK2においてさえも、すべての抗原が完全に吸着した。
【0238】
TLRアゴニストを用いた免疫原性試験
それぞれが(0.5mlあたり)5Lfの破傷風トキソイド、2Lfのジフテリアトキソイド、および16μgの無細胞性百日咳抗原(精製したPT-9K/129G、FHAおよびp69ペルタクチンの混合物)を含有している4種のワクチンを試験した。
【0239】
4種のワクチンは、(A)アジュバント化していない(B)2mg/mlのAl-Hでアジュバント化した(C)2mg/mlのAl-Hおよび100μg/mlの合成モノホスホリル脂質A、すなわちTLR4アゴニストでアジュバント化した、または(D)2mg/mlのAl-Hおよび1mg/mlの化合物「K2」すなわちTLR7アゴニストでアジュバント化した。ワクチン(C)および(D)中のTLRアゴニストはAl-Hに吸着されていた。すべての抗原は、処方物(B)、(C)および(D)中でAl-Hに吸着されていた。
【0240】
比較のため、BOOSTRIX(商標)製品もまた試験した。上記で検討されたとおり、それは、(0.5mlあたり)2.5Lfのジフテリアトキソイド、5Lfの破傷風トキソイド、および18.5μgの無細胞性百日咳抗原(精製したPT、FHAおよびp69ペルタクチンの混合物)を含有し、リン酸アルミニウムおよび水酸化物塩の混合物でアジュバント化されている。緩衝液とAl-Hの混合物を陰性対照として使用した。
【0241】
4種のワクチンは、100μlの筋肉内用量で、メスのBalb/Cマウス(6週齢)に、第0、21および35日目に投与した。各用量から2週間後、血清を試験した。
【0242】
血清の全IgG力価を各抗原に対して測定すると、以下のとおりであった(幾何平均):
【0243】
【0244】
したがってすべての場合において、かつすべての時間点で(第49日でのPTを除いて)、これら6つの群の中で最も高い力価は、吸着されているTLRアゴニストでアジュバント化した抗原を与えたマウスに見られ、Al-HへのTLRアゴニストの添加は、Al-H単独と比較してIgG応答を改善した。重要なことに、認可されたBOOSTRIX(商標)ワクチンと比較した場合、改善された応答がすべての場合において見られた。さらに、Al-H単独またはBOOSTRIX(商標)とは異なり、吸着されているTLRアゴニストは、アジュバント化していない群と比較して、抗PT力価を一貫して改善することができた。
【0245】
TLRアゴニストの使用はまた、より急速な応答をもたらす。第2の用量は、すべての抗原についてIgG応答の明白な増加を示したが、第3の用量後の改善はあまり有意ではなかった。これらの実験のマウスはDTPに対してナイーブであるが、実社会での人間の状況では、ターゲット患者は以前にDTPワクチンを小児のときに受けており、これらの実験における第2の用量後に見られる急速な応答は助けになる。
【0246】
水中油型エマルジョンを用いた免疫原性試験
(0.5mlあたり)5Lfの破傷風トキソイド、2Lfのジフテリアトキソイド、および16μgの無細胞性百日咳抗原(精製したPT-9K/129G、FHAおよびp69ペルタクチンの混合物)を含有するワクチンを調製した。それらは、100μlの筋肉内用量で、メスのBalb/Cマウス(6週齢)に第0、21および35日目に投与した。各用量から2週間後血清を試験した。ワクチンは、(A)アジュバント化していないまたは(B)50μlの抗原溶液を50μlのMF59と混合することによって、MF59エマルジョンでアジュバント化した。比較のため、BOOSTRIX(商標)製品も試験し、抗原を含まない陰性対照もまた試験した。
【0247】
血清の全IgG力価を各抗原について測定すると、以下のとおりであった(幾何平均):
【0248】
【0249】
したがって、DTPに対してナイーブなマウスにおいて2回の用量後、エマルジョンでアジュバント化されているワクチンから、認可されたBOOSTRIX(商標)製品よりもはるかに良好な抗体力価を得た。抗Dt応答を除いて、この優位性は第3の用量後維持された。さらに、BOOSTRIX(商標)とは異なり、エマルジョンは、アジュバント化していない群と比較して、抗PT力価を改善することができた。
【0250】
FHA特異的な記憶B細胞
第3の用量から4~5カ月後、FHA特異的記憶B細胞を、免疫化されたマウスにおいて測定した。マウスを屠殺し、それらの脾臓細胞を5日間IL-2およびCpGの存在下で培養することによって、すべての記憶B細胞を増殖させた。次いで脾臓細胞を収集し、事前にFHA抗原(10mg/ml)または抗マウスIgのいずれかをコーティングした96-ウェルELISPOTプレートに播種した。一晩のインキュベーション後、プレートを洗浄することによって、付着していない脾臓細胞を除去し、FHA特異的な記憶B細胞および全部の記憶B細胞の両方をビオチン化した抗マウスIgおよびHRP-ストレプトアビジンで検出した。個々の記憶B細胞を表す有色のスポットをELISPOTリーダー装置でカウントした。次いで、全B細胞と比較して、FHA特異的なB細胞のパーセンテージを各試料に対して計算した。
図1は、以下の群に対する結果を示す:(A)アジュバント化していない;(B)Al-Hでアジュバント化した;(C)Al-HおよびMPL-Aでアジュバント化した;(D)Al-Hおよび「K2」でアジュバント化した;(E)MF59でアジュバント化した;(F)BOOSTRIX(商標);および(G)陰性対照。最も高い応答は、群(D)、すなわち吸着されているTLR7アゴニストを使用した群において見られた。次に高い応答は、吸着されているTLR4アゴニストまたはエマルジョンのいずれかを有する群(C)および(E)において見られ、これらの群において、応答は本質的に同じであったが、BOOSTRIX(商標)製品よりも依然として高かった。
【0251】
本発明は単なる例で説明されており、本発明の範囲および意図の範囲内で改変がなされ得ることは理解されるはずである。
【0252】
【0253】