(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
D21F 3/00 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
D21F3/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021081782
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2021-05-13
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515183610
【氏名又は名称】バルメット テクノロジーズ オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】サトゥ ハグフォーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェサ‐マッティ リーヒオヤ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-089950(JP,A)
【文献】特表2008-506856(JP,A)
【文献】特開2011-089229(JP,A)
【文献】特表平05-505428(JP,A)
【文献】国際公開第2014/200095(WO,A1)
【文献】特開2017-002451(JP,A)
【文献】特表平01-503315(JP,A)
【文献】特表2019-535924(JP,A)
【文献】特開2002-180393(JP,A)
【文献】特開平11-247086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じたループを形成する、抄紙機、ボード製造機、パルプ製造機、又はティッシュ製造機のスリーブロール用のベルトであって、以下の:
-内表面
-外表面
-弾性体及び
-補強構造
を備え、ここで前記補強構造は、
-前記ベルトの第1の方向に配置された第1ヤーン及び
-前記ベルトの第2の方向に配置された第2ヤーン
を備え、
ここで、前記第1の方向は、前記ベルトの走行方向に垂直又は実質的に垂直であって、かつ、前記第2の方向は、前記第1の方向に垂直又は実質的に垂直であって、
ここで、前記ベルトは、前記第1の方向よりも前記第2の方向に弾性的に伸張するように構成されており、かつ、前記ベルトを伸張する力が除去された後、前記ベルトが元の長さに戻るように構成されており、
ここで、前記第2ヤーンの数は、490ヤーン/m~630ヤーン/m;及び
前記第1ヤーンの数は、230ヤーン/m~390ヤーン/m
の範囲である、
ベルト。
【請求項2】
前記第2ヤーンの直径は、前記第1ヤーンの直径よりも短い、請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
-前記第1ヤーンの直径は、0.5mm~2.0mmの範囲であり、及び/又は
-前記第2ヤーンの直径は、0.5mm~1.5mmの範囲である、
請求項1又は2に記載のベルト。
【請求項4】
-前記第1ヤーンは、前記ベルトの前記内表面に最も近い最も内側のヤーン層を形成し、及び/又は
-前記第2ヤーンは、前記ベルトの前記外表面に最も近い最も外側のヤーン層を形成する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のベルト。
【請求項5】
前記ベルトは、前記ベルトの伸張力の除去後、元の長さに戻るように、前記ベルトの走行方向に少なくとも1.5%、好ましくは1.8%~3.0%の範囲で、弾性伸張するように構成される、
請求項1~4のいずれか一項に記載のベルト。
【請求項6】
-スリーブロール、及び
-前記スリーブロール上の請求項1~
5のいずれかに記載の前記ベルト、
を含む、装置。
【請求項7】
抄紙機、ボード製造機、パルプ製造機、又はティッシュ製造機のスリーブロールに用いるための、請求項1~
5のいずれかに記載のベルトの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリーブロール用ベルトに関する。本発明は、当該ベルト及びスリーブロールと備える配置に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機やボード、パルプ及びティッシュの製造機には、通常、成形部、プレス部及び乾燥部が設けられる。製紙、パルプ及び板紙製造では、生産効率を上げるため、濡れた繊維ウェブからの脱水量をいかに高めるかが課題である。
【0003】
現在、当該機械は、通常、ベルトやワイヤが繊維ウェブから水分を除去する。水分は、例えば、少なくとも1つの成形ワイヤを介して成形部で除去しうる。
【0004】
スリーブロールは、例えば成形部で用いて、ウェブからの脱水性を向上させうる。当該スリーブロールにはスリーブロールベルトが必要である。しかし、スリーブロールと相性の良いベルトを得ることは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スリーブロール用の新規なベルトを開示する。新規の配置は、ベルトとスリーブロールを備える。
【0006】
本発明の目的は、スリーブロール用の改良されたベルトを提供することである。本発明の態様は、独立請求項の記載により特徴付けられる。本発明の様々な実施形態は、従属請求項に開示される。
【0007】
スリーブロールは、通常、紙、板紙、パルプ又はティッシュの製造機のワイヤ部に配置される。スリーブロールのおかげで、ワイヤ部の水分除去を改善しうる。
【0008】
本明細書の新規のベルトは、スリーブロールベルトともいうが、紙、板紙、パルプ又はティッシュの製造機のスリーブロールに適する。外表面に曲線要素を備えるスリーブロールの構造は、シュープレスの構造とは異なり、つまり、スリーブロールベルトに必要な特性は、シュープレス用ベルトに必要な特性とは異なる。例えば、シュープレスのベルトは、当該シュープレスの長いニップに起因する応力に対応できなければならない。当該シュープレスのロングニップは、プレス領域への出入りの際に急激なたわみが生じるため、シュープレス用ベルトに大きなストレスを与える。スリーブロールにはそのような長いニップがなく、そのため、スリーブロールベルトは当該ストレスに対処する必要がない。しかし、スリーブロールベルトには、スリーブロールの曲線要素によって生じる様々なストレスに対応する適当な特性が求められる。従来のシュープレス用ベルトは、スリーブロールに対する適当な性能を発揮しえなかった。そのため、スリーブロールに適する改良型ベルトが求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
当該スリーブロール用ベルトは、閉じたループを形成することができ、以下の:
-内表面
-外表面
-弾性体及び
-前記弾性体の内部に少なくとも部分的に配置されることが好ましい、補強構造
を備える。
前記補強構造は、前記弾性体を支持する支持構造であってよい。
前記補強構造は、前記ベルトの第1の方向に配置された第1ヤーンを備えてよい。前記補強構造は、前記ベルトの第2の方向に配置された第2ヤーンをさらに備えてよい。前記第2ヤーンは、前記ベルトの前記外表面に最も近い最も外側のヤーン層であってよい。
【0010】
前記第1ヤーンは前記ベルトの前記第1の方向に配置され、前記第2ヤーンは前記ベルトの前記第2の方向に配置される。前記第2の方向は、好ましくは、前記第1の方向に垂直又は実質的に垂直である。前記第2の方向は、前記ベルトの走行方向に平行又は実質的に平行であってよい。さらに、前記第1の方向は、ベルトの回転軸に平行又は実質的に平行であってよい。
【0011】
前記第2ヤーン層の前記第2ヤーンは、少なくとも部分的に、前記ベルトの弾性体上に配置しうる。したがって、前記第2ヤーンは、人間の目に少なくとも部分的に見られうる。そこで、この場合、前記第2ヤーンは、弾性体の材料に完全に囲まれていなくてよく、弾性体の材料に部分的に囲まれてよい。技術的効果としては、中立軸が当該ベルトの外表面の近傍にあることである。これにより、ベルトの摩耗が大幅に低減されて、ベルトの長寿命化を図ることができる。さらに、前記第2ヤーンは、隣接するヤーンの間に溝を形成しうる。そのため、水の除去率が向上しうる。
【0012】
さらに又はあるいは、前記第2ヤーンは、少なくとも部分的に弾性体の中に配置されうる。したがって、この有利な例では、当該ヤーンは、少なくとも部分的に弾性体の材料によって囲まれてよい。従って、第2ヤーンは、弾性体内に埋め込むことができる。さらに、前記弾性体材料は、ベルトの表面に溝を形成することができ、この溝は、第2ヤーンを傷つけない。従って、当該ベルトの水分除去率を改善しうる。
【0013】
従って、第2ヤーンは、弾性体の外表面からベルトの深さ方向の第2ヤーンの底部まで測定して、3mm以下の深さに配置しうる。従って、第2ヤーン層の第2ヤーンは、ベルトの弾性体上に、又は部分的に若しくは完全に弾性体内に配置しうる。従って、第2ヤーンは、弾性体の材料によって部分的に又は完全に囲まれてもよい。有利には、第2ヤーンは、ベルトの深さ方向において、弾性体の外表面から各第2ヤーンの底部まで測定して、2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、又は0.8mm以下、及び最も好ましくは0.5mm以下の深さに配置される。この技術的効果は、ベルトの摩耗を低減するためにベルトの外表面近くにベルトの中立軸を提供することである。これにより、ベルトの寿命が他のベルトと比較して長くなりうる。
【0014】
スリーブロールベルトの破断伸張値は、スリーブロールベルトの移動方向において測定された20~25%の範囲等、20%以上であってよい。従って、スリーブロールベルトが容易には破損されえない。破断伸張値とは、ベルトを破断するのに必要な伸張をいう。
【0015】
第1ヤーンの数は、230ヤーン/m~390ヤーン/mの範囲、好ましくは280ヤーン/m~340ヤーン/mの範囲でありうる。さらに、第2ヤーンの数は、490~630ヤーン/m、好ましくは530~580ヤーン/mの範囲であってよい。第2の方向に配置された第2ヤーンの直径は、第1ヤーン層に配置された第1ヤーンの直径よりも小さくてよい。従って、ベルトの弾性は、第2の方向に改善され得る。1メートルあたりの第2ヤーンの数は、1メートルあたりの第1ヤーンの数の1.25~2.8倍でありうる。そのため、当該ベルトは、当該スリーブロールに対して、良好な伸張性及び強度特性を備えうる。
【0016】
第2ヤーンの直径は、第1ヤーンの直径よりも短く、例えば、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%短くてよい。第2ヤーン層の第2ヤーンは、ベルトの走行方向において良好な伸縮性を得るために、第1ヤーン層の第1ヤーンよりも薄くてよい。例えば、第2ヤーン層のヤーンの直径が第1ヤーン層のヤーンの直径よりも短い場合、第2ヤーンは、第1ヤーンよりも可撓性があってよい。さらに、ベルトの弾性は、第2の方向に改善しうる。
【0017】
第1ヤーンの直径は、0.5mm~2.0mmでありうる。第1ヤーンの直径は、1.8mm以下、より好ましくは1.5mm以下、最も好ましくは1.5mm以下でありうる。従って、薄いスリーブロールベルトを得ることができる。さらに、第1ヤーンの直径は、0.6mm以上、より好ましくは0.8mm以上、最も好ましくは1.0mm以上としうる。従って、スリーブロールベルトをスリーブロールにしっかりと取り付けうる。
【0018】
第2ヤーンの直径は、0.5mmから1.5mmの範囲であってよい。第2ヤーンの直径は、1.3mm以下、より好ましくは1.1mm以下、最も好ましくは0.9mm以下であってよい。従って、スリーブロールベルトのヤーンは薄くてよく、従って、薄いスリーブロールベルトが得られうる。さらに、伸張特性は、第2の方向に改善され得る。さらに、第2ヤーンの直径は、0.5mm以上、より好ましくは0.6mm以上、最も好ましくは0.7mm以上であってよい。従って、強度特性が良好なベルトを獲得しうる。
【0019】
第1ヤーン層は、スリーブロールベルトの内表面に最も近い最内周のヤーン層であることが好ましい。したがって、第1ヤーンは、好ましくは、ベルトの内表面に最も近傍に配置される。当該ヤーンは、弾性体に埋め込むことができる。第1ヤーンは、好ましくは、弾性体の材料で完全に取り囲まれ、すなわち、弾性体の材料がヤーンをすべての面で取り囲んでよい。
【0020】
さらに、第2ヤーン層は、好ましくは、スリーブロールベルトの外表面に最も近い最も外側のヤーン層である。したがって、第2ヤーンは、好ましくは、弾性体の外面、及び/又は、ベルトの外面の最も近くに配置される。
【0021】
一実施形態では、第2ヤーンは、ベルトの外表面に溝を形成する。したがって、水分除去率が改善されうる。隣接する第2ヤーンによって形成される溝の深さは、0mm以上、好ましくは2.0mm以下、例えば0.3mm~1.5mmの範囲内であってよい。
【0022】
本願では、「弾性」とは、力を抜いたときにベルトが元の形状に戻る機能をいう。弾性率(%)は、ベルトがどれだけ弾性伸張するかを示す値である。新規のスリーブロールベルトは、スリーブロールベルトの走行方向に1.8%以上弾性伸張して、ベルトの伸張力を除去後に元の長さに戻るように構成されてよい。第2ヤーン層におけるヤーンの弾性は、例えば、1.8%~2.5%の範囲であってよい。さらに、スリーブロールベルトは、スリーブロールベルトの伸張力除去後に元の長さに戻るように、スリーブロールベルトの走行方向において2.0%以上、好ましくは2.0%から5%まで弾性伸張するように構成しうる。さらに、第1ヤーン層のヤーンの弾性は、好ましくは、第2ヤーン層のヤーンの弾性よりも小さく、例えば少なくとも10%小さく、好ましくは少なくとも20%小さい。新規なスリーブロールベルトは、第1の方向よりも第2の方向に対して少なくとも10%多く弾性伸張するように構成しうる。有利には、第1の方向のベルトの弾性は、第2の方向のベルトの弾性よりも少なくとも20%小さい。
【0023】
特定伸展時荷重(Load at Specific Elongation;LASE)とは、所定の伸張に必要な荷重、すなわち所定の伸張に適用される荷重を意味する。例えば、LASE2%は、伸びが2%のときの荷重として定義される値である。これは規格SFS2983に基づいて決定される。この値は、Lorentzen&WettreAB(Lorentzen&Wettre、スウェーデン)のAlwetronTCT20装置を用いて決定しうる。
【0024】
また、本技術分野では用語EASFを用いて、特定の力での伸張を表す。EASFは、LASEと同様の目的で用いうるが、EASF(特定の力での伸張)はLASE(特定の伸張での荷重)とは異なる。
【0025】
一実施形態では、スリーブロールベルトの走行方向のLASE2%は、28kN/m以上、好ましくは40kN/m以下である。さらに、本実施形態では、スリーブロールベルトの走行方向のLASE4%は、49kN/m以上、好ましくは60kN/m以下である。これは、スリーブロールベルトの良好な特性を提供し得る。
【0026】
一実施形態では、スリーブロールベルトは、スリーブロールベルトの移動方向に30kN/mの力で伸張し、ベルトの伸張力の除去後、スリーブロールベルトが元の長さに戻るように構成しうる。このように、当該ベルトでは、ベルトの走行方向の伸張性及び弾性が良好でありうる。
【0027】
スリーブロールベルトの破断強度は、スリーブロールベルトの走行方向で決定され100kN/m~230kN/mのように、100kN/m以上であってよい。技術的な効果としては、応力の激しい場所にベルトを取り付けることができる。破断強度は、規格SFS2983に基づいて決定しうる。この値は、Lorentzen&WettreAB(スウェーデン、Lorentzen&Wettre)のAlwetronTCT20装置を用いて決定しうる。
【0028】
当該第1ヤーンは、以下の:
-ポリアミド(PA)及び/又は
-芳香族ポリアミド及び/又は
-ポリエチレン(PE)及び/又は
-ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、及び/又は
-炭素繊維、及び/又は
-炭素・熱可塑性樹脂複合材料、
を含み得るか、又は主に含み得るか、又はからなる。
【0029】
当該第2ヤーンは、以下の:
-ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、及び/又は
-ポリアミド(PA)及び/又は
-芳香族ポリアミド及び/又は
-ポリエチレン(PE)及び/又は
-芳香族ポリアミド及び/又は
-炭素繊維/熱可塑性複合糸、
を含み得るか、又は主に含み得るか、又はからなる。
【発明の効果】
【0030】
新規な課題解決のおかげで、スリーブロールに適する改良されたベルトを得ることができた。新規のスリーブロールベルトは、新規の補強構造を有してよい。新しい補強構造は、従来のベルトの補強構造よりもベルトの走行方向が軽い。さらに、新規なスリーブロールベルトは、従来のスリーブロールベルトの弾性値と比較して、ベルトの走行方向において弾性がより高くありうる。さらに、新規のスリーブロールベルトは、ベルトの外表面付近に中立軸がありうる。したがって、ベルトの摩耗を低減しうる。さらに、ベルトと接触するワイヤの摩耗を低減しうる。
【0031】
以下に、本発明は、以下の図面により例示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1a及びbはスリーブロールを例示する図である。
【
図2】
図2aはベルトの例示であり、
図2bはベルトの内部構造を例示する図である。
【
図3】
図3a及びbは、ベルトの内部構造を例示する図である。
【
図4】
図4a及びbは、ベルトの内部構造を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図は、縮尺ではない可能性のある例示である。同様の部分を同じ参照番号で図中に示す。
本出願のすべての実施形態は、例示的な実施形態として示され、これらは限定的に考えるべきではない。
【0034】
スリーブロールベルト10は、不透過性ベルトであってよい。当該スリーブロールベルトとは、スリーブロールに適するベルトをいう。
【0035】
本出願における用語「ヤーン」は、断面が比較的小さく長い構造をいう。当該ヤーンは、ねじれの有無にかかわらず、繊維及び/又はフィラメントから構成されうる。当該ヤーンは、複数のプリッド糸であってよい。当該ヤーンは、合成ポリマー系であってよい。
【0036】
用語「フィラメント」は、非常に長い繊維をいう。
【0037】
用語「第1ヤーン層」及び「第1ヤーン」は、第1の方向に配置されるヤーンをいう。当該第1ヤーン層は、最も内側のヤーン層であってよい。当該第1ヤーン層はスリーブロールベルトの横方向に配置されてよい。使用時、横方向は、スリーブロールベルトの回転軸に平行である。
【0038】
用語「第2ヤーン層」及び「第2ヤーン」は、第2の方向に配置されるヤーンをいう。当該第2ヤーン層は、最も外側のヤーン層であってよい。当該第2ヤーンは、スリーブロールベルトの走行方向に配置されてよい。使用時の移動方向は、スリーブロールベルトの回転方向である。
【0039】
すなわち、用語「第1ヤーン」は当該第1ヤーン層のヤーンをいい、用語「第2ヤーン」は当該第2ヤーン層のヤーンをいう。当該ベルトは、第1ヤーン層及び第2ヤーン層を含んでよい。つまり、当該スリーブロールベルトには、少なくとも2つの方向に配置されるいくつかのヤーンがあってよい。
【0040】
当該第1ヤーン層は別個のヤーンからなってよい。つまり、当該第1ヤーン層に隣接するヤーンは互いに離間してよい。
【0041】
さらに、当該第2ヤーン層は別個のヤーンからなってよい。つまり、当該第2ヤーン層に隣接するヤーンは互いに離間してよい。
【0042】
本出願では、用語「走行方向」MD及び「横方向」CDが用いられる。当該走行方向MDは使用中のスリーブロールベルトの回転方向をいう。横方向CDは、通常、ベルト10の走行方向MDに対して横方向の長手方向をいう。使用時、横方向は、スリーブロールベルトの回転軸に平行である。
【0043】
本出願では、用語「実質的に平行」とは、一方の方向が、前記実質的に平行な方向から10°を超えず、より有利には5°度を超えず、最も好ましくは3°を超えないことをいう。つまり、例えば、用語「実質的に平行」は、本出願では、方向が、前記走行方向から10°を超えず、より有利には5°を超えず、好ましくは3°を超えない。さらに、例えば用語「実質的に平行」は、本出願では、方向が、前記横方向から10°を超えず、より有利には5°を超えず、好ましくは3°を超えないことをいう。
本出願では、用語「第1の方向」D1とは、第1ヤーンが配置される方向をいう。当該第1の方向は、好ましくは、当該ベルトの横方向と平行か又は実質的に平行である。さらに、用語「第2の方向」D2とは、第2ヤーンが配置される方向をいう。当該第2の方向は、好ましくは、走行方向と平行か又は実質的に平行である。
【0044】
しかしながら、一実施形態では、当該第1の方向の角度は、ベルトの横方向に対して10°~25°の範囲であり、及び/又は当該第2の方向の角度は、ベルトの走行方向に対して10°~25°の範囲である。
【0045】
さらに、当該ベルトの厚さの用語を用いるが、それは、スリーブロールベルトの深さ方向をいう。
【0046】
通常、紙、ボード、パルプ及びティッシュの製造機では、繊維ウェブは、プロセスラインに連続的に配置された、いくつかの装置により形成されたアセンブリで製造され、処理される。通常の製造ラインは、ヘッドボックスとワイヤとを備える形成部、プレス部、乾燥部、最後にリールアップを備える。さらに、生産ラインは、通常、例えば、少なくとも1つのワインダを備え、顧客ロールを形成する。
【0047】
形成部では、ヘッドボックスを用いて繊維ウェブを形成する。さらに、一部の水は、少なくとも1つの形成ワイヤを介して除去されうる。スリーブロール100は、形成部内に配置されて水分除去を改善しうる。本発明は、スリーブロール100用のスリーブロールベルト10に関する。スリーブロール100は、例えば、底面層ワイヤループ内に配置しうる。当該スリーブロールは、例えば、スリーブロールとツインワイヤ形成部材の反対ワイヤとの間のスリーブロールニップで用いて、多層繊維ウェブの層を接合しうる。
【0048】
本出願では、用語「ベルト」及び「スリーブロールベルト」は、特に断らない限り、スリーブロールに適するベルトをいう。当該ベルト10は、紙、ボード、パルプ又はティッシュの製造機のスリーブロールに適してよい。当該スリーブロールベルト10は、例えば、紙、ボード、パルプ又はティッシュの製造機のワイヤ部に配置されることができるスリーブロール上に配置されうる。当該スリーブロールベルト10は、通常、端なしループのように成形される。当該スリーブロールベルトは、ワイヤ部の非常に湿った繊維ウェブからの水分除去の改善に用いられうる。
【0049】
スリーブロール100の例は、
図1a及びbに例示される。当該スリーブロール100は、支持軸102を含んでよい。当該スリーブロールは、スリーブロール100の外表面の周囲に配置されたスリーブロールベルト10をさらに備える。当該スリーブロールベルト10は、支持軸102の周囲を回るように導かれうる。
【0050】
さらに、スリーブロール100は、支持軸102上で互いに離間して配置された支持要素を含んでよい。スリーブロールベルト10は、当該スリーブロールの外表面の周囲を回ることができ、当該支持要素により支持されてよい。
【0051】
当該スリーブロール100は、さらに、曲線要素110をさらに含みうる。動作では、当該スリーブロールベルトは、通常、当該曲線要素上の脱水領域を通って延びる。当該曲線要素110は、当該曲線要素110上のスリーブロールベルトの伸張力を高めうる。当該曲線要素110は、可動であってよく、すなわち、当該曲線要素110の表面上の当該スリーブロールベルトの曲率半径を、当該スリーブロールの中心に向かって、又は当該スリーブロールの外表面から外側に向かって、当該曲線要素110を移動させることにより、制御しうる。従って、スリーブロールベルト10の伸張は、通常の速度から非常に高い速度まで変化しうる。
【0052】
当該スリーブロールベルト10は、その外表面12が繊維ウェブに面し、その内表面11が当該スリーブロールに面するように、当該スリーブロール100と接して配置されるか、又は配置されてよい。すなわち、当該スリーブロール100は、ループの形状のスリーブロールベルト10により取り囲まれてよい。
【0053】
当該スリーブロールベルトの円周は、可動曲線要素110のため、当該ベルトの動作時間中に増加及び減少させることができる。つまり、当該スリーブロールベルトは高い弾性を備えることができ、当該スリーブロールの当該曲線要素110により生じる伸張に対応しうる。さらに、当該スリーブロールベルトは、良好な強度特性を備えることができ、容易に破損しない。
【0054】
図1aは、固定支持軸102及びスリーブロールベルト10を備えるスリーブロール100の一例を例示する。当該スリーブロールベルト10は、固定支持軸102の周囲を回るように導かれる。さらに、ワイヤは、曲線状脱水領域C1、C2を介して導くことができ、当該脱水領域は、スリーブロールベルト10によって支持されうる。
【0055】
スリーブロール100は、第1の部分曲線C1の曲率半径は、スリーブロールベルトの移動方向MDにおける第1の部分曲線に続く第2の部分曲線C2の曲率半径よりも大きくなるように、通常少なくとも2つの部分曲線C1、C2を含む、少なくとも1つの曲線状脱水領域C1、C2を備えることができる。これにより、繊維ウェブからの水の除去が改善されうる。
【0056】
曲線状脱水領域C1、C2は、スリーブロール100の曲線要素110によって形成されてよい。当該曲線要素110の曲率の程度は、当該曲線要素110上の少なくとも1つの曲線状脱水領域C1、C2上のワイヤ間を移動する繊維ウェブに脱水圧力の印加が高められるように、ベルト10の移動方向に高めることができる。当該曲線要素110上の曲線状脱水領域C1、C2は、曲率半径が好ましくはワイヤの走行方向に低下するように、いくつかの曲線を含んでよい。これにより、繊維ウェブからの水の除去が改善される。
【0057】
当該スリーブロール100は、当該スリーブロールベルト10の内表面11と当該スリーブロール100の外表面との間に潤滑剤を含むことができる。従って、当該スリーブロールは、例えば、前記ベルト10とスリーブロールの外表面との間のギャップに潤滑剤を注入しうる潤滑ポンプを含むことができる。
【0058】
当該曲線要素110は、2又はそれ以上の位置の間で移動させうる。従って、当該曲線要素110を用いて、当該曲線要素110上の当該ベルト10の曲率半径を制御しうる。
【0059】
当該曲線要素110の第1の位置は、曲線要素上に第1の表面10aを形成することができ、第1の表面10aは、曲線要素近傍の表面と実質的に同じ曲率半径をスリーブロール上に有しうる。
【0060】
当該曲線要素110の第2の位置では、当該曲線要素の外表面は外側に移動しうる。従って、当該曲線要素110の第2の位置は、当該曲線要素上に第2の表面10bを形成しうる。当該第2の表面10bの曲率半径は、曲線要素の近傍の表面と比較して短くてよい。
【0061】
当該曲線要素110の当該第2の位置では、当該スリーブロールベルト10は、曲線要素110のために伸張する必要がある。さらに、曲線要素110が可動である場合、曲線要素が第1の位置に戻されるときに、スリーブロールベルト10を元の形状に戻す必要がある。従って、スリーブロールベルト10の弾性は、良好であり、また、強度特性が適当である必要がある。
【0062】
上記のように、当該スリーブロールベルト10は、当該スリーブロール100の周囲を走行するように配置しうる。当該スリーブロールベルト10の内表面11は、当該スリーブロール100の当該外表面に対してスライドしうる。処理される繊維ウェブは、通常ワイヤ等の1又はそれ以上の布により支持されるスリーブロールベルト10に導かれることができる。
【0063】
当該スリーブロールベルト10には、交差方向長、円周、及び厚さがある。厚さは最小寸法である。円周及び長さは、ベルトをスリーブロール100に適合させるために選択しうる。スリーブロールベルト10の周囲は、動作中のスリーブロールベルト10の内径が使用に適するように決定される。
【0064】
当該スリーブロールベルト10の周囲、すなわち1回転の長さは、2.2m以上、例えば3.0m以上、3.4m以上であってもよい。また、ベルト10の周径は、6.3m以下、例えば6.0m以下、5.8m以下が好ましい。横方向のベルトの長さは、機械の幅に応じて決定され、例えば、1.5m~12.6mの範囲である。
当該スリーブロールベルトの厚さは、少なくとも1.5mm、より好ましくは少なくとも2.0mm、最も好ましくは少なくとも2.5mmとしうる。従って、少なくともいくつかのヤーンをベルト内に配置することが可能である。さらに、スリーブロールベルトの厚さは、例えば、2.5mm~5mmの範囲で、7mm以下、より好ましくは5mm以下、最も好ましくは4mm以下としうる。この厚さは、スリーブロールに特に適している。さらに、当該厚さは、材料及びベルトの構造と共に、スリーブロールベルトに良好な強度特性を付与しうる。
【0065】
スリーブロールベルト10の脱水特性を改善するために、スリーブロールベルトの外表面12は、例えば
図3a-bに示すように、いくつかの平行な溝50を備えることができる。
【0066】
あるいは、スリーブロールベルトの外表面12は、例えば、
図4bに示すように、実質的に滑らかでありうる。従って、弾性体15は、前記溝50を形成しない。従って、ベルトの外表面12の近くに少なくともいくつかの補強ヤーンを配置することが可能である。これにより、スリーブロールベルトの摩耗を低減しうる。
【0067】
ベルトの外表面に溝が含まれる場合、それらは通常、スリーブロールベルトの移動方向に配置される。溝50は、ランド53によって分離しうる。脱水溝50の機能は、スリーブロールベルト10によって脱水される繊維ウェブからの水の除去を促進し、それによって前記繊維ウェブの乾燥含有量を増加させることである。繊維ウェブが曲線要素110及びその中のスリーブロールベルト上を走行するとき、少なくとも一部の水がワイヤを通って溝50の中に流れ込むことができる。
【0068】
ベルトの外表面12が、弾性体材料によって形成された溝を有する場合、前記溝の深さは、例えば、0.2mm以下のように、0.3mm未満であってもよい。従って、第2ヤーン層の補強ヤーンは、弾性体の外側表面及び/又は外側表面の近くに配置しうる。従って、スリーブロールベルトの特性は、ベルト及びその中のワイヤの表面摩耗を低減できるように改善しうる。
【0069】
脱水溝50は、好ましくは「エンドレス」であり、スリーブロールベルト10の移動方向MDに実質的に平行な、すなわち、使用中のスリーブロールベルト10の回転方向に実質的に延びる。換言すれば、使用時に、スリーブロールベルト10は、前記脱水溝50が繊維ウェブに対向するときに、好ましくは繊維ウェブの走行方向、即ち、いわゆる機械方向に、又は少なくとも実質的に前記機械方向に延びるように、製紙機械のワイヤ部のような標的に嵌合又は嵌合するように意図される。
脱水溝50は、スリーブロールベルト10の周囲に延びる別個の溝であってよく、又は連続的な螺旋溝であってよい。脱水溝の機械方向に対する角度、すなわちスリーブロールベルトの回転方向は、有利には、例えば0°~2°のように2°以下、より有利には1°以下、好ましくは0.0°~0.5°のように0.5°以下である。このようにして、脱水は、特に、曲線要素110を含むスリーブロールと共に使用する場合、特に効果的でありうる。
【0070】
脱水溝50の深さは、有利には、脱水溝の最も深い点から測定して、少なくとも0.4mmから2.0mm以下である。脱水溝50の幅は、0.5mm以上2.0mm以下としうる。2つの平行な隣接する脱水溝50の中心線間の距離は、有利には、少なくとも1.5mmであり、7.0mm以下である。2つの脱水溝50の間のランド53、32aの幅は、有利には、少なくとも1.0mmであり、5.0mm以下である。脱水溝50の総水量は、例えば、100~800g/m2であってよい。スリーブロールベルト外表面の水量に影響を与える要因としては、脱水溝の断面積、脱水溝の密度(横方向の個数/m)が挙げられる。好ましくは、脱水溝50の数は、少なくとも140/mであり、より有利には少なくとも200/mであり、有利には670/m以下である。脱水溝50の上述の特徴(深さ、幅、中心線間の距離、リッジの幅、水量、脱水溝の数)により、水は、前記脱水溝50を介してウェブからより効率的に除去しうる。これらの利点は、通常、より良好に実現され、スリーブロールベルト10において、上述の特徴のより多くが実施される。
【0071】
スリーブロールベルトの外表面12は、2つの隣接する第2ヤーン32aの間に形成された、いくつかの平行な溝50を備えることができる。これは、スリーブロールベルトの脱水特性を改善しうる。第2ヤーン32aの間に形成された溝50を
図4aに示す。従って、第2ヤーン32aは、前記隣接する第2ヤーンの間に溝が形成されるように、弾性体の表面に配置しうる。溝50は、第2ヤーン32aによって分離しうる。隣接する第2ヤーン32aの間に形成される溝50の深さは、好ましくは、溝を形成する第2ヤーンの直径まで0.1mmである。2つの隣接する第2ヤーン32aの間に形成される溝の深さは、脱水溝の最も深い点から第2ヤーン32aの外表面まで測定すると、例えば、少なくとも0.4mmであり、2.0mm以下である。2つの隣接する第2ヤーン32aの間に形成される溝50の深さは、好ましくは、脱水溝の最も深い点から第2ヤーン32aの外表面(すなわち、上面)まで測定した0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、最も好ましくは0.3mm以上である。従って、ベルトの水分除去率を改善することが可能である。また、第2ヤーン32aをベルト表面近傍に配置することにより、ベルトの摩耗を低減しうる。さらに、隣接する2本の第2ヤーン32aの間に形成される溝の深さは、1.5mm未満、例えば1.0mm以下、より好ましくは0.7mm以下、最も好ましくは0.5mm以下であり、脱水溝の最も深い点から第2ヤーン32aの外表面(すなわち上面)まで測定される。このように、外表面12の滑らかさを向上させることができる。さらに、直径が極めて小さい糸を用いうる。
【0072】
当該スリーブロールベルトは、湾曲できてよく、すなわち、ベルトは、破損せずに、少なくとも所定の曲率半径まで曲げることができる。所定の曲率半径は、曲線要素110のいかなる位置でも、曲線要素110の表面の曲率半径よりも小さくすることができ、従って、ベルトが容易に損傷されえない。
【0073】
当該スリーブロールベルト10は弾性体15を備え、弾性を良好にできる。本出願において、用語「弾性」とは、ベルトが伸張又はプレス後に元の形状に戻る機能を意味する。当該スリーブロールベルト10は補強構造30をさらに備え、強度特性を良好にできる。しかしながら、当該スリーブロールベルトの弾性は、実質的に高ければならない場合があり、従って、当該補強構造は、スリーブロールベルトの弾性を過度に低下させてはならない。
【0074】
当該スリーブロールベルトの内表面は、実質的に平滑でありうる。当該スリーブロールベルト10は、ベルト10の内表面11上にパターンがあってもなくてもよい。当該内表面11は、わずかなパターン形成、すなわち、いわゆるバフを含むことができる。バフの深さは、例えば、0~15μm、好ましくは0.01μm~4.00μmであってよい。さらに、バフの深さは少なくとも0.05μmであってもよい。前記ベルトの内表面の粗さは、スリーブロールベルトの耐久性に実質的な影響を及ぼしうる。例えば、潤滑油膜の均一性が損なわれると、当該スリーブロールの表面とスリーブロールベルトの内表面の組合せの粗さは、スリーブロールの金属平滑面とスリーブロールベルトの内表面平滑面との組合せほど減速に敏感でない。このような状況では、バフ付きの内表面11があるスリーブロールベルトは、内表面が平滑なベルトほど容易に損傷しない。
【0075】
当該ベルト10の外表面12は、好ましくは、繊維ウェブにマーキングを生じないように設計される。スリーブロールベルトの外表面12は、わずかなパターン形成、すなわち、いわゆるバフ形成を含むことができる。スリーブロールベルト10の外表面12上のバフの深さは、例えば、0~50μmであってもよい。スリーブロールベルトの外表面の適切な粗さは、抄紙機織物と共にその作用に有利な効果を有し得る。
当該スリーブロールベルト10は、紙、ボード、パルプ及びティッシュの製造機に適し、ワイヤ又は繊維ウェブを傷つけず、適当な伸張性及び強度特性を備える材料で製造しうる。
【0076】
当該スリーブロールベルトは、ポリマーを含むことができる。当該弾性体15は、エラストマー材料を含んでよく、又は、それからなってよい。エラストマー材料は、好ましくは、当該スリーブロールベルトの主原料である。
【0077】
当該スリーブロールベルトは、以下の:
-ポリウレタン、及び/又は
-天然ゴム(NR)及び/又は
-合成ゴム、
を含むか、又はからなってよい。
前記材料の量は、好ましくは、ベルトの総質量から算出される少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、最も好ましくは80質量%以上である。従って、ベルトの弾性、及び曲げ性が改善されうる。当該材料を用いて、良好な強度及び弾性特性を獲得することができ、従って、ベルトは、破損せずに、運転時間中に伸張及び屈曲しうる。さらに、当該スリーブロールベルトは、前記材料を、スリーブロールベルトの総質量から算出して、99.9質量%以下、より好ましくは97質量%以下、好ましくは95質量%以下で含むことができる。例えば、補強構造は、通常、他の材料を含む。
【0078】
当該スリーブロールベルトはポリウレタンを含むことができる。好ましくは、弾性体はポリウレタンからなるか、主にポリウレタンを含有する。好ましくは、当該スリーブロールベルトは、スリーブロールベルトの総質量から算出して、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも80質量%のポリウレタンを含む。さらに、当該スリーブロールベルトは、ポリウレタンを、スリーブロールベルトの総質量から計算した99.9質量%以下、より好ましくは97質量%以下、好ましくは95質量%以下で含むことができる。ポリウレタンは、弾性及び曲げ性等のスリーブロールベルトの特性を改善することができ、スリーブロールの曲線要素との併用に特に適する。
【0079】
スリーブロールの曲線要素110は、スリーブロールベルトに高い応力を発生させうる。従って、スリーブロールベルト10は、適当な補強構造が必要である。しかしながら、通常、スリーブロールベルトを強制的に伸張及び/又は圧縮させる曲線要素のため、スリーブロールベルトは強度と弾性がともに良好でなければならない。従来、ベルトは、ベルトに対して良好な強度特性を提供する補強構造を有し、例えば、曲線要素110上のベルトの伸張を防止しないスリーブロールのためのベルトを得ることが困難であった。
【0080】
当該スリーブロールベルトの補強構造30は、以下の:
-弾性体の材料がヤーンを囲むようにベルト内に配置されたヤーン、及び/又は
-当該ヤーンが少なくとも部分的に人間の眼に見えるように弾性体に少なくとも部分的に配置されたヤーン、
を含んでよい。
従って、ベルトは、ベルトの外表面及び/又はベルトの外表面近くに配置されたヤーンを含んでよい。新規なスリーブロールベルトは、良好な強度特性と良好な弾性及び伸張能力を備えうる。
【0081】
図3a~
図3b及び
図4a~
図4bは、弾性体15及びヤーン32a、31aを含むベルト10の構造例を例示する。当該弾性体15は、押圧及び伸張後に元の形状に戻る機能があってよい。従って、弾性体15には、例えば、圧縮後にその初期形状を再び伸張する機能がある。
図3a~
図3b及び
図4a~
図4bは、第1ヤーン31aと第2ヤーン32aを例示する。当該ベルトは、隣接する第1ヤーン31aの間の弾性体15の材料を含んでよい。さらに、ベルトは、隣接する第2ヤーン32aの間の弾性体15の材料を含んでよい。
【0082】
上記のように、スリーブロールベルト10は、ヤーン31a、32aによって形成された支持構造であってよい補強構造30を備えることができる。ヤーン31a、32aは、好ましくは、弾性体15内の層状に配置される。当該補強構造30は、スリーブロールベルトに適する強度特性を提供すると共に、例えば曲線要素110により起こる伸張後にその元の形状を戻す機能を提供しうる。
【0083】
当該補強構造30は、第1ヤーン層31及び第2ヤーン層32を含むことができる。当該第1ヤーン層31は、第1の方向D1に、好ましくは弾性体15内に配置される第1ヤーン31aを含む。当該第2ヤーン層32は、第2の方向D2に配置された第2ヤーン32aを含む。
【0084】
当該第1ヤーン31は、当該第2ヤーン32に対して垂直又は実質的に垂直に配置しうる。この技術的効果は、スリーブロールベルトの走行方向と交差方向に良好な強度特性を付与することである。好ましくは、合計2つの補強ヤーン層31、32が設けられる。
【0085】
上記のように、当該スリーブロールベルト10の補強構造30は、第1の方向D1に平行に形成された第1ヤーン31aを含むことができる。第1の方向は、当該スリーブロールベルトの横方向CDに対して平行又は実質的に平行であってもよい。当該第1ヤーン31aと交差方向CDとの間の角度は、好ましくは15°未満、より好ましくは10°未満、最も好ましくは5°未満である。当該第1の方向は、スリーブロールベルトの横方向CDに対して平行又は実質的に平行であってもよい。当該第1ヤーン31aは、ベルトが横方向に実質的に伸張しないため、伸張性が高くなくてよい。従って、第1ヤーン31aの弾性は、第2ヤーン32aの弾性よりも小さくしうる。しかしながら、当該第1ヤーン31aの強度は良好でなければならない。当該第1ヤーン31aの技術的効果は、スリーブロールベルトの横方向の寸法安定性を改善することである。
【0086】
さらに、上記のように、当該補強構造30は、第2ヤーン32aを含むことができる。当該第2ヤーン32aは、第2の方向D2に平行に形成される。当該第2ヤーンは、第1の方向D1に対して実質的に垂直に形成されてよい。当該第2ヤーン32aとベルトの走行方向MDとの間の角度は、好ましくは15°未満、より好ましくは10°未満、最も好ましくは5°未満である。当該第2の方向は、当該スリーブロールベルトの走行方向MDに平行又は実質的に平行であってよい。従って、当該スリーブロールベルト10の走行方向に対して良好な補強構造を形成しうる。当該第2ヤーン層32のヤーン32は、スリーブロールの曲線要素110と良好に機能するように、伸縮性が高くてよい。さらに、当該第2ヤーンは、強度特性が良好である。
【0087】
第2ヤーン32aは、ベルトの支持構造のための良好な伸縮性及び/又は弾性並びにベルトの移動方向におけるベルトのための十分な強度を提供しうる。
【0088】
当該第2ヤーン32は、
図4aに示すように、人間の目に見える。好ましくは、当該第2ヤーン32aは、
図3a~
図3b及び
図4a~
図4bに示すように、弾性体内に少なくとも部分的に埋め込まれる。
【0089】
好ましくは、第2ヤーン層のヤーン32aは、弾性体内に少なくとも部分的に配置される。従って、第2ヤーン層32の第2ヤーン32aは、ベルトの弾性体内に少なくとも部分的に配置されることが好ましい。
【0090】
当該第2ヤーン32aは、ベルト10の弾性体15内に少なくとも部分的に配置しうる。当該第2ヤーン32aは、深さT1に配置することができ、その深さT1は、弾性体15の外表面15aからベルトの深さ方向の第2ヤーン32aの底面32a-iまでの間で測定した0mmから3.0mmの範囲である。好ましくは、当該第2ヤーン32aは、ベルトの深さ方向に弾性体15の外表面15aから第2ヤーン32aの底面32a-iまで測定された、0.2mm以上の深さT1、より好ましくは0.5mm以上の深さT1、最も好ましくは1.0mm以上の深さに配置される。さらに、当該第2ヤーン32aは、2.0mm以下の深さT1、より好ましくは1.5mm以下の深さT1、最も好ましくは、ベルトの深さ方向の弾性体15の外表面15aから第2ヤーン32aの底面32a-iまでの0.5mmから2mmの範囲の深さT1のように、1.0mm以下の深さT1に配置されるのが好ましい。技術的効果は、ベルトの中立軸がスリーブロールベルトの外表面の近くにあることである。したがって、使用時には、以下:
-ベルトの外表面
-ベルトに接触するワイヤの表面
の間の速度差が減少する場合がある。さらに、当該新規な課題解決のおかげで、ベルトとワイヤとの間の摩擦を低減しうる。従って、ベルトの表面摩耗及びワイヤの表面摩耗を低減しうる。従って、ベルトの表面摩耗ならびにワイヤの表面摩耗を低減しうる。さらに、当該第2ヤーンは、ベルトの表面に溝を形成しうる。従って、ベルトの水分除去効率を改善しうる。第2ヤーン層32の第2ヤーン32aがベルトの走行方向に(少なくとも実質的に)整列され、ベルトの外表面の近くに配置されると、ワイヤの摩耗だけでなく、ベルトの摩耗を著しく減少させうる。従って、ベルトに起因する費用が低減されうる。
【0091】
当該ベルトの中立軸は、ベルトの迅速な摩耗を防止するため、スリーブロールベルトの外表面の近くに配置されるのが好ましい。しかしながら、これは、通常、スリーブロールの外表面とベルトの内表面との間に油層のような潤滑剤層が存在するため、ベルトに問題は生じない。ベルトの中立軸をベルトの外表面の近くに配置することにより、ベルトの外表面の摩耗が少なくなり、ベルトの内表面の摩耗が大きくなる。従って、ベルトとスリーブロールとの間の摩擦は、通常非常に低い。従って、ベルトの中立軸がベルトの外表面の近くにあっても、ベルトの内表面がそれほど摩耗しえない。
【0092】
上記のように、当該補強構造30は、第1ヤーン層31及び第2ヤーン層32を含むか、からなってよい。有利には、補強構造は、前記2層のヤーンから構成される。当該ヤーン31a、32aは、好ましくは、ツイストがあるマルチフィラメントヤーンである。有利には、当該ヤーン層31、32は互いに実質的に垂直に配置される。当該第1ヤーン層の第1ヤーン31aと第2ヤーン層の第2ヤーン32aとの間の角度は、好ましくは、約90°であり、例えば、80°~100°である。
【0093】
当該第1ヤーン31aは、弾性体材料がヤーン31aの周囲に定着するように、互いに離間して互いに隣接して配置しうる。
【0094】
第2ヤーン32aは、弾性体材料がヤーンの周囲に沈降するように互いに距離を置いて互いに隣接して配置しうる。従って、第2ヤーン層のヤーンは、弾性体の内側に配置されうる。あるいは、弾性体材料が第2ヤーン32aのいくつかの(全てではない)表面に定着するように、第2ヤーン32aは互いに距離を置いて互いに隣接して配置しうる。従って、第2ヤーンは、弾性体の外表面15aに配置しうる。従って、第2ヤーン層32は、弾性体の外表面15a及び/又はベルトの外表面近傍に配置されたヤーンを備えうる。
【0095】
当該ベルトは、第1の方向に配置された第1ヤーン31aをメートルあたり230~390を含むことができ、第1の方向は、好ましくは、ベルトの交差方向に対して平行であるか、又は実質的に平行である。第1ヤーン31aメートルあたりの数は、好ましくは、メートル当たり260以上の第1ヤーン、より好ましくは、メートル当たり少なくとも270以上の第1ヤーン、最も好ましくは、メートル当たり280以上である。さらに、当該第1ヤーンの数は、好ましくは第1ヤーン31aメートルあたり360以下、より好ましくは350未満、最も好ましくは340以下である。従って、ベルトの交差方向に強度が良好かつ寸法安定性を備えるスリーブロールベルトを得ることができる。従って、ベルトをスリーブロールにしっかりと固定しうる。
【0096】
当該ベルトは、第2の方向に配置された第2ヤーン32aをメートル当たり490~630を備えることができ、この第2の方向は、好ましくはベルトの走行方向MDに対して平行又は実質的に平行である。第2ヤーン32aの数は、好ましくはメートルあたり490以上、より好ましくは少なくともメートルあたり510、最も好ましくはメートルあたり530以上である。さらに、第2ヤーン32aの数は、好ましくはメートルあたり620ヤーン以下、より好ましくはメートルあたり600未満、最も好ましくはメートルあたり580以下である。従って、ベルトの移動方向において弾性及び寸法安定性が良好でありうる。
【0097】
ベルト中の糸RNYの相対数は以下:
RNY = N(32a)/N(31a)
のように計算できる。ここで、N(32a)は、メートル当たりの第2ヤーン32aの数Nをいい、N(31a)は、メートル当たりの第1ヤーン31aの数Nをいう。
【0098】
ベルト内のヤーンの相対数(RNY)、すなわち、第1の方向に配列されたヤーンの数当たりの第2の方向に配列されたヤーンの数は、1.4~2.8の範囲、好ましくは1.5~2.3の範囲、最も好ましくは1.6~2.0の範囲のように、1.25以上としうる。
【0099】
異なる層31、32内のヤーン31a、32aは、次の層のヤーンと接触するか、接着されるか、又は互いに離間してよい。好ましくは、互いの頂部にある補強ヤーン層31、32は、互いに分離されている。従って、当該ヤーン層は、互いに固定される必要もなく、また、互いに結合される必要もない。
【0100】
有利には、補強構造30は、弾性体15の内側に2つの層に配置されたヤーンを含み、その層31、32は互いに実質的に垂直に配置される。第2ヤーン層32は、第1ヤーン層31の上方、例えば、第1ヤーン層から近い距離に配置できる。第2ヤーンは、第1ヤーンの上方0mm~2.0mm、好ましくは0.2mm~1.0mmに配置できる。
【0101】
当該第1ヤーン層31は、当該スリーブロールベルト10の内表面11に最も近い最も内側のヤーン層でありうる。当該第1ヤーン層31は、別々のヤーンからなってよい。従って、隣接するヤーンは互いに間隔を置くことができる。好ましくは、第1の層の第1ヤーンは、均等に又は実質的に均等に間隔を置いて配置される。当該第1ヤーン層の各ヤーンは、隣接するヤーンから等距離離間されるように配置しうる。当該第1ヤーン層の隣接するヤーンは、1mm~3mm離間されていてよい。隣接する第1ヤーンの間の領域は、弾性体材料からなるのが好ましい。
【0102】
当該第2ヤーン層は、別々のヤーンからなることができ、隣接するヤーンは互いに間隔を置いて配置される。好ましくは、当該第2の層のヤーンは、均等に又は実質的に均等に間隔を置いて配置される。第2の補強ヤーン層の隣接する補強ヤーンは、例えば、1mm~3mmの間隔をあけて配置しうる。隣接する第2ヤーンの間の領域は、溝50を形成しない場合、弾性体材料から構成されるのが好ましい。当該第2ヤーン層32は、当該スリーブロールベルトの外表面12に最も近い最も外側のヤーン層でありうる。
【0103】
従って、補強ヤーンは、互いに隣接した別々のヤーンであってよく、例えば、スパイラル状に配置された1又はそれ以上のヤーンで形成されてよい。一実施形態では、当該ベルトは、弾性体15の表面上に織物層を備え、当該織物層は、第1ヤーン31a及び第2ヤーン32aを含む。織物層を弾性体の前記表面に、例えば機械的に、及び/又は高温レベルを用いて取り付けうる。当該織物層は、弾性体の表面上に閉じたループを形成しうる。
【0104】
補強ヤーンは、厚さが等しくても異なってもよい。好ましくは、第1ヤーンは、互いに実質的に等しい厚さである。さらに、第2ヤーンは、互いに実質的に等しい厚さであることが好ましい。
【0105】
第2ヤーン32aは、第1ヤーン31aと同じ厚さであってよい。しかしながら、第2ヤーン32aは、第1ヤーン31aよりも薄いのが好ましい。第2ヤーン32aは、好ましくは、第1ヤーン31aよりも4%以上薄く、例えば、第1ヤーン31aよりも4%から10%薄い。これにより、スリーブロールベルトの走行方向の弾性が向上するとともに、スリーブロールベルトの横方向の寸法安定性が向上した良好な強度特性が得られる。
【0106】
各第1ヤーン31aの直径は、例えば、0.5mm~2.0mmでありうる。技術的効果は、ベルトの横方向の良好な寸法安定性と同様に良好な強度特性を得ることである。
【0107】
各第2ヤーン32aの直径は、例えば、0.5mm~1.5mmの範囲、好ましくは0.6mm~1.2mmの範囲でありうる。技術的効果は、ベルトの移動方向の良好な弾性と同様に良好な強度特性を得ることである。
【0108】
ベルトの補強構造30の補強ヤーン31a、32aは、同じ材料又は異なる材料で作ることができる。第1ヤーン層31及び第2ヤーン層32は、モノフィラメントヤーン及び/又はマルチフィラメントヤーンを含むことができる。従って、各ヤーンは、モノフィラメント又はマルチフィラメントでありうる。モノフィラメントは、1本の糸につき1本のフィラメントしかないことを意味する。マルチフィラメントとは、1ヤーンあたり複数のフィラメントが存在することを意味する。マルチフィラメント構造は、フィラメントが互いにねじれてよい。有利には、ヤーン層31,32は、マルチフィラメントヤーンを含むか、又は、マルチフィラメントヤーンからなる。フィラメントの数は、ヤーンの特性の効果を有する。好ましくは、ヤーンは、1ヤーン当たり5~10,000フィラメントを有するマルチフィラメントヤーンである。
【0109】
第1ヤーン31aは、1ヤーン当たり5本以上のフィラメント、より好ましくは1ヤーン当たり200本以上のフィラメント、最も好ましくは1ヤーン当たり600本以上のフィラメントを有しうる。さらに、第1ヤーンは、ヤーン当たり10,000フィラメント以下、より好ましくはヤーン当たり4000フィラメント以下、最も好ましくはヤーン当たり2000フィラメント以下を有しうる。
【0110】
第2ヤーン32aは、1ヤーン当たり5本以上のフィラメント、より好ましくは1ヤーン当たり200本以上のフィラメント、最も好ましくは1ヤーン当たり400本以上のフィラメントを有しうる。さらに、第2ヤーン32aは、1ヤーン当たり10,000フィラメント以下、より好ましくは1ヤーン当たり3000フィラメント以下、最も好ましくは1ヤーン当たり1000フィラメント以下を有しうる。
【0111】
スリーブロールベルト10は、スリーブロールの曲線要素110で小さい半径で伸張され、曲げられた場合、高い応力を受ける。従って、第2ヤーン層32のヤーン32aは、弾性体材料から作られてよい。当該弾性体材料により、スリーブロールベルトを必要な曲率半径で曲げることができ、曲線要素の表面10a、10bにその通路が可能となる。
【0112】
ヤーン31a、32aは、高強度、高率及び高弾性率を有する合成繊維を含むことができる。ヤーンは、以下の:
-ナイロン等のポリアミド(PA)
-ポリプロピレン(PP)及び/又は
-ポリエチレン(PE)、好ましくはいわゆる高強度ポリエチレン、及び/又は
-レーヨン、及び/又は
-ビスコース、及び/又は
-ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、及び/又は
-ポリビニルアルコール(PVA、PVOH)及び/又は
-ポリアラミド、及び/又は
-ポリフェニレンスルフィド(PPS)及び/又は
-液晶プラスチック(LCP)及び/又は
-ポリイミド、及び/又は
-炭素繊維、好ましくは、炭素繊維/熱可塑性プラスチック複合材料、及び/又は
-ポリエチレンナフタレート(PEN)及び/又は
-ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
を含むことができる。
【0113】
当該材料の量は、好ましくは、ヤーンの総質量から算出される少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも80質量%、最も好ましくは少なくとも95質量%である。従って、上記材料を含む、又はからなるヤーンは、ベルトを硬化させつつ、ベルトに必要な屈曲及び伸張のレベルを獲得しうる。
【0114】
好ましくは、第1ヤーン31aは、実質的に伸縮性が低く、かつ及び強度が高い。従って、ベルトをスリーブロールにしっかりと固定しうる。当該第1ヤーン31aは、好ましくは、以下の:
-ポリアミド(PA)及び/又は
-ポリエチレン(PE)及び/又は
-ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、及び/又は
-芳香族ポリアミド及び/又は
-炭素繊維、及び/又は
-炭素繊維/熱可塑性複合糸
を含むか、又はからなる。
【0115】
例えば、炭素繊維を用いて、ベルトの強度を改善しうる。さらに、炭素繊維及び炭素繊維/熱可塑性複合材料を用いて、ベルトの横方向の伸張を最小限にできる。ポリエステル及びポリアミドは、ベルトの横方向を良好に支持しうる。第1ヤーンは、好ましくはマルチフィラメントヤーンであり、それは、それ自体公知の方法で、撚りをかけたものや、公知の方法で高撚りにしたもののいずれかである。
【0116】
第2の層のヤーンの伸張性は、第1の層のヤーンよりも、例えば、少なくとも4%大きくてよく、より好ましくは少なくとも8%大きくてよい。第2ヤーン32aは、好ましくは、以下の:
-ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、及び/又は
-芳香族ポリアミド及び/又は
-炭素繊維/熱可塑性複合糸
を含むか、又はからなる。
【0117】
例えば、ポリエステルは、ベルトの移動方向を良好に支持しうる。第2ヤーン層のヤーンが炭素繊維複合材料を含む場合、ベルトは、他の材料と同様に伸張しない場合がある。しかしながら、炭素繊維複合材料はベルトの強度を改善しうる。第2ヤーン層のヤーンは、好ましくはマルチフィラメントヤーンであり、それは、それ自体公知の方法で、撚りをかけたものや、公知の方法で高撚りにしたもののいずれかである。
【0118】
第2ヤーン層32の構造は、第2ヤーン層が第1ヤーン層よりも弾性的に可撓性であるように適合されうる。第2ヤーンは、第1ヤーンよりも薄くしうる。これにより、スリーブロールベルト10の移動方向における伸縮性を改善しうる。例えば、第2ヤーンの直径が第1ヤーンの直径より小さい場合、第2ヤーン層32は、第1ヤーン層よりも可撓性がある。好ましくは、ベルトは、ベルトの第1の方向よりもベルトの第2の方向に弾性伸張するように構成される。さらに、ベルトは、ベルトの横方向よりもベルトの走行方向において弾性的により伸張するように構成されるのが好ましい。
【0119】
各第2ヤーン32aのヤーンの強度、すなわち、特定の応力(N/tex)は、例えば、0.5N/tex~2N/texの範囲でありうる。N/texはNewton per texを表す。従って、ベルトの移動方向において良好な強度特性を得ることが可能である。
【0120】
各第1ヤーン31aのヤーンの強度、すなわち、特定の応力(N/tex)は、例えば、0.4N/tex~3N/texの範囲でありうる。従って、ベルトに対して良好な交差方向強度特性を得ることが可能である。
【0121】
スリーブロールベルトの破断強度は、例えば、スリーブロールベルトの走行方向で測定した170 kN/mから230 kN/mのように、100 kN/m以上、好ましくは、140 kN/m以上、最も好ましくは、160 kN/m以上でありうる。従って、特殊な場合、例えば機械の非常停止による場合、又はスリーブロールの外表面とスリーブロールベルトの内表面との間のオイルが少なく、例えば機械のダウンタイムの後にスリーブロールを開始することによる場合でも、ベルトは容易に損傷しえない。さらに、ベルトの破断強度は、スリーブロールを保護するため、スリーブロールの破断強度よりも小さくてよい。さらに、前記破断強度は、スリーブロールベルトに良好な弾性を提供しうる。
【0122】
ベルトの弾性は、力が除去されるとベルトが元の形状に戻る機能である。スリーブロールベルトは、曲線要素によっておきる力が除去されると、それがその初期の形状及び長さに戻るような弾性を有しうる。ベルトの伸張は、スリーブロールベルトの補強構造30によって制御しうる。
【0123】
スリーブロールベルトの補強構造は、ベルトの第1の方向D1よりも第2の方向D2の方が軽くてよい。従って、新規なスリーブロールベルトは、第2の方向において伸縮性が高くなりうる。
従って、第2ヤーン層のヤーンは、スリーブロールベルトが曲線要素110のために曲げられ、伸びる必要がある場合に、降伏し、つまり、それらの長手方向に伸びることができる。しかしながら、補強構造は、ベルトの伸張レベルを制御しうる。従って、新規なスリーブロールベルトは、前記補強構造なしでは、ベルトほど容易に損傷しえない。
【0124】
特定伸展時荷重(LASE)及び破断強度は、標準SFS 2983に基づいて決定しうる。値は、Lorentzen&Wettre AB(Lorentzen&Wettre,Sweden)のAlwetron TCT 20デバイスを用いて決定できる。一定の伸張速度(CRE)を用いて試験値を決定した。荷重を印加して、試料の伸張速度を一定に保つように、コンピュータ制御システムを用いて、一定の力を維持しうる。試料に適用される伸び率は10mm/分である。測定の間、固定クランプと移動クランプの間の試料を単位時間当たり一定の距離(10mm/分)だけ伸ばし、そのために必要な力を測定する。破断伸びはクランプ変位から計算した。
【0125】
試料の全長は、240mm×30~40mmであり、試料の長さは240mmであり、試料の幅は、試料の両端が40mm、中央が30mmである。クランプに接触する試料の幅は40mmである。測定中、最大負荷が1.7kN未満の試料については、2kN±0.1%の負荷を用いる。また、最大荷重が1.7kN以上の試料には20kN±0.1%の荷重を用いる。
【0126】
スリーブロールベルトは、28kN/m~50kN/mの範囲で2%のLASEを有するように構成しうる。LASE2%は、通常30kN/m以上、最も好ましくは35kN/m以上であり、スリーブロールベルトの走行方向で決定され、標準SFS2983により測定される。さらに、LASE2%は、スリーブロールベルトの走行方向で決定され、標準SFS2983に従って測定される50kN/m以下、又は40kN/m以下であってよい。従って、ベルトは、良好な伸張性及び良好な寸法安定性を有しうる。
【0127】
スリーブロールベルトは、47kN/m~60kN/mの範囲で4%のLASEを有するように構成しうる。LASE4%は、47kN/m以上、通常、50kN/m以上、最も好ましくは52kN/m以上でありえ、スリーブロールベルトの走行方向で決定され、標準SFS2983により測定される。さらに、LASE4%は、スリーブロールベルトの走行方向に決定され、60kN/m未満、例えば、58kN/m以下であってよい。技術的効果は、ベルトが高荷重で良好に機能し、良好な伸張性と良好な寸法安定性を有することである。さらに、前記特定の伸び(LASE2%及びLASE4%)を有するベルトは、良好な予測可能性を有しうる、すなわち、ベルトの伸びは、異なる応力において予測されうる。
【0128】
スリーブロールベルトは、ベルトを伸張する力が除去された後に元の長さに戻るように、ベルトの移動方向においてすくなくとも1.5%~3.0%の範囲内、又は2.0%~4.0%の範囲内で1.5%以上伸張するように構成しうる。好ましくは、スリーブロールベルトは、ベルトを伸張する力が除去された後に元の長さに戻るように、スリーブロールベルトの移動方向に少なくとも2.0%、より好ましくは少なくとも2.2%伸張するように構成しうる。
【0129】
スリーブロールベルトは、その中のヤーン層と同様に、それ自体公知の方法で製造しうる。スリーブロールベルトは、例えば、以下の:
-複数の支持ヤーンの提供工程;
-少なくとも1つのエラストマー材料をモールド表面に鋳造することによる、スリーブロールベルト用の弾性体の成形工程;並びに
-フレームの硬化工程;及び
-場合によっては、フレームの外表面に複数の溝を設ける工程;
で製造しうる。
【0130】
当該スリーブロールベルトは、ボード製造機、製紙製造機、パルプ製造機又はティッシュ製造機のスリーブロールに、好ましくはその中のワイヤ部に取り付けられるように意図される。当該スリーブロールベルトは、例えば、ベルトの取り付けのためのベルトの複数の取り付け点60をさらに備えることができる。
新しい課題解決のおかげで、曲線要素110上の曲率半径を、従来よりも小さくしうる。従って、ベルトに生じる曲率半径が非常に小さくなるような曲率要素を用いうる。これにより、スリーブロール100の機能が改善しうる。
【実施例】
【0131】
新規なスリーブロールベルトの試料を、標準SFS2983に従って試験した。
試験結果によれば、LASE2%は29kN/mであった。また、LASE4%は52kN/mであった。従って、前記特定の伸張に必要な荷重(LASE2%及びLASE4%)は、スリーブロールベルトに適したレベルであった。
【0132】
さらに、30kN/mの力を用いて試料を伸張させてから、その力を除去した後、試料は元の長さに戻ることができた。従って、試料の弾性はスリーブロールベルトに対して良好なレベルであった。
【0133】
さらに、試料の破断点を試験した。試料を破断した平均伸張は22.40%で、最小値は21.90%、最大値は23.22%であった。試料を破壊した平均荷重は199kN/mで、最小値は194kN/m、最大値は206kN/mであった。
【0134】
従って、試験結果によれば、新規なベルトは、曲線要素を有するスリーブロールに適した特性を有していた。
【0135】
本発明は、例示及び実施例を用いて説明された。本発明は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内で修正しうる。
本出願において用いられる符号は以下のとおりである。
【符号の説明】
【0136】
10 ベルト
11 ベルトの内表面
12 ベルトの外表面
15 弾性体
15a 弾性体の外表面
30 補強構造
31 補強構造の第1ヤーン層
31a 第1ヤーン層を形成する第1ヤーン
32 補強構造の第2ヤーン層
32a 第2ヤーン層を形成する第2ヤーン
32a-i ベルトの深さ方向、すなわち第2のヤーンの最内側表面における第2のヤーンの底面
50 ベルトの外表面の溝
53 ランド
60 スリーブロールベルトの接着部
D1 ベルトの第1の方向
D2 ベルトの第2の方向
MD ベルトの走行方向
CD ベルトの横方向
100 スリーブロール
102 スリーブロールの支持軸
110 スリーブロールの曲線要素
10a 可動曲線要素の第1の位置にある表面
10b 可動曲線要素の第2の位置にある表面
T1 弾性体の外表面からベルトの深さ方向の第2ヤーンの底までの深さ
C1 スリーブロールの第1の曲線
C2 スリーブロールの第2の曲線