(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】タンパク質含有溶液精製用ポリアミド媒体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 69/46 20060101AFI20230614BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20230614BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20230614BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20230614BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20230614BHJP
【FI】
C08G69/46
C07K1/14
B01D71/56
C07K1/34
C07K16/18
(21)【出願番号】P 2021513652
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2020015741
(87)【国際公開番号】W WO2020209267
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2019073514
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019201725
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】日高 純臣
【審査官】蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-271300(JP,A)
【文献】特表昭60-501126(JP,A)
【文献】特開2012-187448(JP,A)
【文献】特開2005-145852(JP,A)
【文献】特開平06-116810(JP,A)
【文献】特開2018-040772(JP,A)
【文献】特開昭61-124868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法であって、
酸性又はアルカリ性水溶液で処理前のポリアミド媒体を、
(i)酸性
水溶液で処理する工程、又は
(ii)アルカリ性水溶液で処理する工程と、
前記ポリアミド媒体を洗浄する工程と、
を有し、
前記(i)酸性水溶液で処理する工程は、
酸性水溶液で処理前の前記ポリアミド媒体を、pH5.0以下の酸性水溶液で、4℃以上100℃以下、及び、1時間以上70時間以下で処理する工程を有し、
前記(ii)アルカリ性水溶液で処理する工程は、
アルカリ水溶液で処理前の前記ポリアミド媒体を、pH12.0以上のアルカリ性水溶液で、4℃以上100℃以下、及び、5分以上70時間以下で処理する工程を有し、
前記ポリアミド媒体がグラフト鎖を有さず、
前記ポリアミド媒体が多孔質体である、
タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
【請求項2】
前記多孔質体が、膜状の多孔質体である、請求項1に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
【請求項3】
前記酸性又はアルカリ性水溶液が、pH5以下の酸性水溶液である、請求項1又は2に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
【請求項4】
前記酸性又はアルカリ性水溶液が、pH10以上のアルカリ性水溶液である、請求項1又は2に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
【請求項5】
前記タンパク質含有溶液が、抗体含有溶液である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
【請求項6】
アルカリ処理前のポリアミド媒体を、pH10以上のアルカリ性水溶液で4℃以上100℃以下、5分以上70時間以下の条件で処理する工程と、
前記ポリアミド媒体を洗浄する工程と、
前記洗浄後のポリアミド媒体に、タンパク質含有溶液を接触させる工程と、
を、有する、タンパク質含有溶液を精製する方法。
【請求項7】
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法であって、
アルカリ性水溶液に浸漬前のポリアミド媒体を、pH5以下の酸性水溶液又はpH10以上のアルカリ性水溶液に5分以上浸漬する工程を有する、
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法。
【請求項8】
前記ポリアミド媒体が多孔質体である、請求項7に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法。
【請求項9】
前記多孔質体が、膜状の多孔質体である、請求項8に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法。
【請求項10】
前記アルカリ性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液である、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法。
【請求項11】
前記抗体凝集体が、モノクローナル抗体の凝集体である、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法。
【請求項12】
酸性又はアルカリ性水溶液で処理されたポリアミド媒体に、抗体凝集体を含む抗体溶液を接触させる工程を有する、
抗体単量体の純度が向上した抗体溶液を回収する方法。
【請求項13】
酸性又はアルカリ性水溶液で処理されたポリアミド媒体に、抗体凝集体を含む抗体溶液を接触させる工程を有する、
抗体溶液から抗体凝集体を除去する方法。
【請求項14】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項12に記載の抗体単量体の純度が向上した抗体溶液を回収する方法。
【請求項15】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項13に記載の抗体溶液から抗体凝集体を除去する方法。
【請求項16】
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体であって、
当該ポリアミド媒体の表面のアミノ基及びカルボキシル基の和が、前記ポリアミド媒体の内部におけるアミノ基及びカルボキシル基の和よりも、1.01倍以上多い、抗体凝集体除去用のポリアミド媒体。
【請求項17】
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体であって、
当該ポリアミド媒体の表面のポリマーの数平均分子量Mn(S)と、
前記ポリアミド媒体の内部のポリマーの数平均分子量Mn(I)が、
下記の式で表される、
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体。
Mn(S)/Mn(I) ≦ 0.99
【請求項18】
請求項16又は17に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体と、抗体凝集体を含む抗体溶液とを接触させる工程を有する、
純度が向上した抗体溶液を回収する方法。
【請求項19】
請求項16又は17に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体と、抗体凝集体を含む抗体溶液とを接触させる工程を有する、
抗体溶液から抗体凝集体を除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法、タンパク質含有溶液を精製する方法、及びタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品においてタンパク質を応用したバイオ医薬品が注目されている。
その中でも特に注目されているのが免疫グロブリン、すなわち抗体であり、医薬品、診断薬、あるいは対応する抗原タンパク質の分離精製材料等の用途において、その利用価値が高まっている。
抗体は、免疫反応を司る生理活性物質であり、免疫した動物の血液、抗体産生能を保有する細胞の細胞培養液又は動物の腹水培養液から取得される。
なお、それらの抗体を含有する血液、細胞培養液、及び腹水培養液は、抗体以外のタンパク質又は細胞培養に用いた原料液に由来する複雑な夾雑成分(以下、これらを夾雑物と記載する場合がある。)を包含しており、多段階の工程を経て、夾雑物が除去される。
【0003】
前記血液や細胞培養液及び腹水培養液からの夾雑物の除去方法としては、従来から、吸着メカニズムを利用した、イオン交換カラムを用いる方法や、疎水ゲルを用いる方法(例えば、下記非特許文献1参照)、更にはポリアミド含有成形体を用いる方法(例えば、下記特許文献1参照)等が提案されている。
【0004】
また、前記夾雑物の除去方法の他の形態としては、サイズ排除カラムを用いる方法(例えば、下記特許文献2参照)や、ナノフィルターを用いて濾過を行う方法等、サイズ排除のメカニズムにより、夾雑物を除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6455851号公報
【文献】特許第2638680号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】HLC MAILGRAM,東ソー株式会社,2003年8月25日,第97巻,第3号,p.10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した吸着メカニズムを利用して夾雑物の除去を行う方法、及び、サイズ排除のメカニズムによって夾雑物の除去を行う方法のいずれにおいても、目的タンパク質の吸着も起こることにより、目的タンパク質の回収率が低下してしまう、という問題点を有している。
【0008】
そこで本発明においては、目的タンパク質の回収率がより高いタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法、及びタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体を提供することを課題とする。
また、別の課題として、酸又はアルカリ処理後でもその強度が維持された、タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法、及びタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体を提供する。
さらに、別の課題として、前記ポリアミド媒体を用いたタンパク質含有溶液を精製する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリアミド媒体に所定の処理を行うことにより、上述した従来技術の課題を解決し得るタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
〔1〕
タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法であって、
酸性又はアルカリ性水溶液で処理前のポリアミド媒体を、酸性又はアルカリ性水溶液で処理する工程を有する、
タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
〔2〕
前記ポリアミド媒体が多孔質体である、前記〔1〕に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
〔3〕
前記多孔質体が、膜状の多孔質体である、前記〔2〕に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
〔4〕
前記酸性又はアルカリ性水溶液が、pH5以下の酸性水溶液である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
〔5〕
前記酸性又はアルカリ性水溶液が、pH10以上のアルカリ性水溶液である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
〔6〕
前記タンパク質含有溶液が、抗体含有溶液である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法。
〔7〕
酸性又はアルカリ性水溶液で処理されたタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体に、タンパク質含有溶液を接触させる工程を有する、
タンパク質含有溶液を精製する方法。
〔7-1〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法により得られる酸性又はアルカリ性水溶液で処理されたタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体に、タンパク質含有溶液を接触させる工程を有する、
タンパク質含有溶液を精製する方法。
〔8〕
前記ポリアミド媒体にタンパク質含有溶液を接触させる工程が、前記ポリアミド媒体によりタンパク質含有溶液を濾過する工程である、前記〔7〕又は〔7-1〕に記載のタンパク質含有溶液を精製する方法。
〔9〕
アルカリ処理前のポリアミド媒体を、pH10以上のアルカリ性水溶液で4℃以上100℃以下、5分以上70時間以下の条件で処理する工程と、
前記ポリアミド媒体を洗浄する工程と、
前記洗浄後のポリアミド媒体に、タンパク質含有溶液を接触させる工程と、
を、有する、タンパク質含有溶液を精製する方法。
〔9-1〕
アルカリ処理前のポリアミド媒体を、pH13以上のアルカリ性水溶液で10℃以上30℃以下、0.5時間以上40時間以下の条件で処理する工程と、
前記ポリアミド媒体を洗浄する工程と、前記ポリアミド媒体にタンパク質含有溶液を接触させる工程と、
を、有するタンパク質含有溶液を精製する方法。
〔10〕
タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体であって、
当該ポリアミド媒体の表面のアミノ基及びカルボキシル基の和が、前記ポリアミド媒体の内部におけるアミノ基及びカルボキシル基の和よりも1.01倍以上多い、
タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体。
〔10-1〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法により得られるタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体であって、
当該ポリアミド媒体の表面のアミノ基及びカルボキシル基の和が、前記ポリアミド媒体の内部におけるアミノ基及びカルボキシル基の和よりも1.01倍以上多い、
タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体。
〔11〕
タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体であって、
当該ポリアミド媒体の表面のポリマーの数平均分子量Mn(S)と、
前記ポリアミド媒体の内部のポリマーの数平均分子量Mn(I)が、
下記の式で表される、
タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体。
Mn(S)/Mn(I) ≦ 0.99
〔11-1〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法により得られるタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体であって、
当該ポリアミド媒体の表面のポリマーの数平均分子量Mn(S)と、
前記ポリアミド媒体の内部のポリマーの数平均分子量Mn(I)が、
下記の式で表される、
タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体。
Mn(S)/Mn(I) ≦ 0.99
〔12〕
前記〔10〕、〔10-1〕、〔11〕、又は〔11-1〕に記載のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体に、タンパク質含有溶液を接触させる工程を有する、タンパク質含有溶液を精製する方法。
〔13〕
前記タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体にタンパク質含有溶液を接触させる工程が、前記ポリアミド媒体によりタンパク質含有溶液を濾過する工程である、前記〔12〕に記載のタンパク質含有溶液を精製する方法。
〔14〕
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法であって、
アルカリ性水溶液に浸漬前のポリアミド媒体を、pH5以下の酸性水溶液又はpH10以上のアルカリ性水溶液に5分以上浸漬する工程を有する、
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法。
〔15〕
前記ポリアミド媒体が多孔質体である、前記〔14〕に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法。
〔16〕
前記多孔質体が、膜状の多孔質体である、前記〔15〕に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法。
〔17〕
前記アルカリ性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液である、前記〔14〕乃至〔16〕のいずれか一に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法。
〔18〕
前記抗体凝集体が、モノクローナル抗体の凝集体である、前記〔14〕乃至〔17〕のいずれか一に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法。
〔19〕
酸性又はアルカリ性水溶液で処理されたポリアミド媒体に、抗体凝集体を含む抗体溶液を接触させる工程を有する、抗体単量体の純度が向上した抗体溶液を回収する方法。
〔19-1〕
前記〔14〕乃至〔18〕のいずれか一に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法により得られるポリアミド媒体に、抗体凝集体を含む抗体溶液を接触させる工程を有する、抗体単量体の純度が向上した抗体溶液を回収する方法。
〔20〕 酸性又はアルカリ性水溶液で処理されたポリアミド媒体に、抗体凝集体を含む抗体溶液を接触させる工程を有する、抗体溶液から抗体凝集体を除去する方法。
〔20-1〕
前記〔14〕乃至〔18〕のいずれか一に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法により得られるポリアミド媒体に、抗体凝集体を含む抗体溶液を接触させる工程を有する、抗体溶液から抗体凝集体を除去する方法。
〔21〕
前記抗体がモノクローナル抗体である、前記〔19〕又は〔19-1〕に記載の抗体単量体の純度が向上した抗体溶液を回収する方法。
〔22〕
前記抗体がモノクローナル抗体である、前記〔20〕又は〔20-1〕に記載の抗体溶液から抗体凝集体を除去する方法。
〔23〕
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体であって、
当該ポリアミド媒体の表面のアミノ基及びカルボキシル基の和が、前記ポリアミド媒体の内部におけるアミノ基及びカルボキシル基の和よりも、1.01倍以上多い、抗体凝集体除去用のポリアミド媒体。
〔23-1〕
前記〔14〕乃至〔18〕のいずれか一に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法により得られる抗体凝集体除去用のポリアミド媒体であって、
当該ポリアミド媒体の表面のアミノ基及びカルボキシル基の和が、前記ポリアミド媒体の内部におけるアミノ基及びカルボキシル基の和よりも、1.01倍以上多い、抗体凝集体除去用のポリアミド媒体。
〔24〕
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体であって、
当該ポリアミド媒体の表面のポリマーの数平均分子量Mn(S)と、
前記ポリアミド媒体の内部のポリマーの数平均分子量Mn(I)が、
下記の式で表される、
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体。
Mn(S)/Mn(I) ≦ 0.99
〔24-1〕
前記〔14〕乃至〔18〕のいずれか一に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法により得られる抗体凝集体除去用のポリアミド媒体であって、
当該ポリアミド媒体の表面のポリマーの数平均分子量Mn(S)と、
前記ポリアミド媒体の内部のポリマーの数平均分子量Mn(I)が、
下記の式で表される、
抗体凝集体除去用のポリアミド媒体。
Mn(S)/Mn(I) ≦ 0.99
〔25〕
前記〔23〕、〔23-1〕、〔24〕、又は〔24-1〕に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体と、抗体凝集体を含む抗体溶液とを接触させる工程を、有する、純度が向上した抗体溶液を回収する方法。
〔26〕
前記〔23〕、〔23-1〕、〔24〕、又は〔24-1〕に記載の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体と、抗体凝集体を含む抗体溶液とを接触させる工程を、有する、抗体溶液から抗体凝集体を除去する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一態様において目的タンパク質の回収率が高いタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法を提供することができる。また、一態様において当該製造方法により得られるポリアミド媒体を用いたタンパク質含有溶液を精製する方法を提供することができる。さらに、一態様においてタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1の、抗体単量体と抗体凝集体を含む抗体含有溶液のクロマトチャートを示す。
【
図2】
図1のクロマトチャートのピーク部の拡大図を示す。
【
図3】実施例10、比較例10の、FT-IRのスペクトルを示す。1639cm
-1、1544cm
-1のピークが大きい方(「水」と記載されている方)が比較例10の測定結果を示し、前記ピークが小さい方(「水酸化ナトリウム」と記載されている方)が実施例10の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」とも記載する。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
〔タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法〕
本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法は、ポリアミド原料を、酸性又はアルカリ性水溶液で処理する工程を有する。
上記構成を有することにより、目的タンパク質の回収率が高い、ポリアミド媒体が得られる。
ここで、ポリアミド原料、すなわち酸性又はアルカリ性水溶液で処理前のポリアミド媒体は、酸性又はアルカリ性水溶液で処理する工程を実施する前段階の、未処理のポリアミド媒体のことをいう。ポリアミド原料は、ポリアミドのみを含む媒体でもよく、ポリアミド以外の化合物を含んだ媒体でもよい。
本実施形態の製造方法により得られるタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体を用いてタンパク質含有溶液を精製することにより、目的タンパク質のポリアミド媒体への吸着量を低減することができ、目的タンパク質を高い回収率で回収することができる。
【0015】
目的タンパク質を高い回収率で回収できるとの効果を生み出すメカニズムの一つとして、処理前のポリアミド媒体を酸性又はアルカリ性水溶液で処理することによりポリアミド表面上のアミド結合が加水分解し、親水性官能基であるカルボキシ基又はアミノ基が現れることにより、ポリアミド媒体へのタンパク質吸着の低減化が図られたものと考えられるが、本発明は、当該メカニズムに拘泥されるものではない。
また、本実施形態の製造方法により得られるタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体は、酸性又はアルカリ性水溶液で処理する前の状態の強度は維持されたものであることが好ましい態様である。
すなわち、本実施形態の製造方法により得られるタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体は、目的タンパク質のポリアミド媒体への吸着量が低減し、かつ酸性又はアルカリ性水溶液で処理する前の状態に比べ、その強度が維持されたポリアミド媒体であることが好ましい態様である。
【0016】
(抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法)
本実施形態の製造方法により得られるタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体は、抗体凝集体除去用のポリアミド媒体であってもよい。
すなわち、本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体は、抗体溶液精製用のポリアミド媒体であってもよい。詳細には、精製対象となる抗体含有溶液が、抗体単量体に加え、抗体凝集体を含んでいるとき、ポリアミド媒体により凝集体を除去するものであってもよい。
本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法を、抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法とする場合は、当該製造方法においては、アルカリ性水溶液に浸漬前のポリアミド媒体を、pH5以下の酸性水溶液又はpH10以上のアルカリ性水溶液に5分以上浸漬する工程を有するものとする。これにより抗体凝集体を効果的に除去可能なポリアミド媒体が得られる。
【0017】
(タンパク質及び抗体)
本実施形態において、精製対象となるタンパク質含有溶液に含まれるタンパク質としては、本実施形態の製造方法により得られるポリアミド媒体により、目的タンパク質を高い回収率で回収可能なタンパク質であれば特に限定されない。以下に限定されるものではないが、例えば、アルブミン、グロブリン、又はフィブリノゲン等が挙げられる。
また、精製対象となるタンパク質含有溶液に含まれるタンパク質としては、抗体が好ましい例として挙げられる。すなわち、精製対象となるタンパク質含有溶液の好適な例としては、抗体含有溶液が挙げられる。
本実施形態の製造方法により得られるタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体を、タンパク質凝集体を含む所定のタンパク質含有溶液と接触させることにより、高選択的にタンパク質凝集体が除去され、タンパク質単量体の純度が向上したタンパク質溶液を高い回収率で回収できる。
すなわち、本実施形態の製造方法により得られるポリアミド媒体に、抗体凝集体を含む抗体溶液を接触させることにより、抗体溶液から抗体凝集体が除去され、抗体単量体の純度が向上した抗体溶液を高い回収率で回収できる。
抗体としては、生化学における一般的な定義のとおり、脊椎動物の感染防禦機構としてBリンパ球が産生する糖タンパク質分子(ガンマグロブリン又は免疫グロブリンともいう)が挙げられる。
例えば、本実施形態で精製される抗体溶液中の抗体は、ヒトの医薬品として使用でき、かかる場合、投与対象であるヒトの体内にある抗体と実質的に同一の構造を有する。
【0018】
抗体は、ヒト抗体であってもよく、ヒト以外のウシ及びマウス等の哺乳動物由来抗体タンパク質であってもよい。
また、抗体は、ヒトIgGとのキメラ抗体タンパク質や、ヒト化抗体であってもよい。
前記ヒトIgGとのキメラ抗体とは、可変領域がマウス等のヒト以外の生物由来であるが、その他の定常領域がヒト由来の免疫グロブリンに置換された抗体である。
前記ヒト化抗体とは、可変領域のうち、相補性決定領域(complementarity-determining region:CDR)がヒト以外の生物由来であるが、その他のフレームワーク領域(framework region:FR)がヒト由来である抗体である。ヒト化抗体は、キメラ抗体よりも免疫原性がさらに低減される。
【0019】
本実施形態において、抗体のクラス(アイソタイプ)及びサブクラスは特に限定されない。例えば、抗体は、定常領域の構造の違いにより、IgG、IgA、IgM、IgD、及びIgEの5種類のクラスに分類される。しかし、本実施形態の製造方法により得られるタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体を、抗体凝集体除去用として用いて抗体凝集体を除去し、抗体単量体の純度の高い抗体溶液を得る際、精製対象とする抗体溶液に含まれる抗体は、5種類のクラスのいずれであってもよい。
また、ヒト抗体においては、IgGにはIgG1からIgG4の4つのサブクラスがあり、IgAにはIgA1とIgA2の2つのサブクラスがある。しかし、本実施形態においては、抗体のサブクラスは、いずれであってもよい。なお、Fc領域にタンパク質を結合したFc融合タンパク質等の抗体関連タンパク質も、本実施形態において精製対象とする抗体に含まれ得る。
【0020】
さらに、抗体は、由来によっても分類することができる。しかし、本実施形態において精製対象とする抗体は、天然のヒト抗体、遺伝子組換え技術により製造された組換えヒト抗体、モノクローナル抗体、又はポリクローナル抗体のいずれであってもよい。
これらの抗体の中でも、本実施形態において精製対象とする抗体としては、抗体医薬としての需要や重要性の観点から、モノクローナル抗体が好適であるが、本実施形態は、これに限定されない。
【0021】
また、抗体としては、IgM、IgD、IgG、IgA、又はIgEのいずれかを含むモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体が挙げられる。さらに、抗体は、血漿生成物由来であってもよく、あるいは細胞培養液由来であってもよい。
細胞培養によって抗体を得る場合は細胞として動物細胞もしくは微生物を使用することができる。
動物細胞としては、種類は特に限定されないが、CHO細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、Vero細胞、PER.C6細胞等が挙げられる。
微生物としては、種類は特に限定されないが、大腸菌や酵母等が挙げられる。
【0022】
(抗体凝集体)
本実施形態により製造されるタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体を用いて精製される溶液が抗体溶液であり、抗体溶液が凝集体を含んでいる場合、除去対象である抗体凝集体としては、目的抗体の単量体が2つ会合した二量体、目的抗体の単量体が3つ会合した三量体、又は目的抗体の単量体が4つ以上会合した多量体、あるいはその混合物が挙げられる。
なお、多量体は二量体及び三量体がいずれも含まれる場合がある。
また、抗体凝集体には、目的とする抗体以外のタンパク質が含まれる場合もある。
さらに、タンパク質の凝集体は、不可逆的な会合体であってもよく、可逆的な会合体であってもよい。
【0023】
(ポリアミド媒体)
本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法、又は抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法において用いる、酸性又はアルカリ性水溶液による処理前のポリアミド媒体を構成するポリアミドは、アミド結合からなる繰り返し単位から構成されるポリマーであって、モノマー単位は脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミドのいずれでもよく、その混合物でもよく、複数種の脂肪族モノマー及び芳香族モノマーからなってもよい。
ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、εカプロラクタム、ウンデカンカプロラクタム、ラウリルラクタムの重縮合反応により得られる、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12や、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共縮重合反応により得られるナイロン66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との共縮重合反応により得られるナイロン610、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の共縮重合反応により得られるナイロン6T、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の共縮重合反応により得られるナイロン6I、ノナンジアミンとテレフタル酸の共縮重合反応により得られるナイロン9T、メチルペンタジアミンとテレフタル酸の共縮重合反応により得られるナイロンM5T、εカプロラクタムとラウリルラクタムの共縮重合反応により得られるナイロン612、パラフェニレンジアミンとテレフタル酸の共重合反応により得られるポリアミド、メタフェニレンジアミンとイソフタル酸の共重合反応により得られるポリアミド等が挙げられる。
前記酸性又はアルカリ性水溶液による処理前のポリアミド媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド媒体(但しグラフト鎖を有するポリアミド媒体を除く)が例示される。また、別の態様としてグラフト鎖を有さないポリアミド媒体が例示される。
【0024】
本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法、又は抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法において用いる、酸性又はアルカリ性水溶液で処理前のポリアミド媒体を構成するポリアミドの重量平均分子量は、特に限定されないが、ポリアミド媒体の強度の観点から、より大きいほうが好ましい。具体的には、ポリアミド媒体の強度の観点から、2000以上が好ましく、より好ましくは5000以上、10000以上、50000以上、60000以上、70000以上、80000以上であり、さらに好ましくは90000以上、95000以上、100000以上である。
また、ポリアミド媒体が繊維である場合の紡糸性及び末端官能基量の観点から、2000000以下が好ましく、より好ましくは1000000以下であり、さらに好ましくは500000以下、300000以下、200000以下である。
ポリアミドの重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、Gel Permeation Chromatography)のような公知の手法で測定できる。
【0025】
本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法、又は抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法において用いる、酸性又はアルカリ性水溶液で処理前のポリアミド媒体を構成するポリアミドの数平均分子量は、特に限定されないが、ポリアミド媒体の強度の観点から、より大きいほうが好ましい。具体的には、1000以上が好ましく、より好ましくは5000以上、6000以上、7000以上、8000以上、9000以上、10000以上であり、さらに好ましくは20000以上、25000以上、30000以上である。
また、ポリアミド媒体が繊維である場合の紡糸性及び末端官能基量の観点から、1000000以下が好ましく、より好ましくは500000以下であり、さらに好ましくは100000以下、50000以下、40000以下、30000以下である。
ポリアミドの数平均分子量は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、Gel Permeation Chromatography)のような公知の手法で測定できる。
【0026】
<タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法の処理条件>
本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法においては、原料である所定の処理前のポリアミド媒体を、酸性又はアルカリ性水溶液により処理する工程を有する。
本実施形態のポリアミド媒体の製造方法において、原料であるポリアミドに生じる変化は特に限定されないが、加水分解、官能基の導入等が挙げられる。前記導入される官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、アルデヒド基、カルボニル基、ニトロ基が挙げられる。
処理方法としては、浸漬でもよく、多孔質体である場合、通液でもよい。
酸性水溶液により処理する場合、酸性水溶液のpHは、上限として、加水分解の進行速度の観点から、5以下であることが好ましく、4以下、3以下、2以下、1.5以下等がより好ましい。また、下限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、1.0以上であることが例示される。
【0027】
酸性水溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸の水溶液が挙げられる。酸性水溶液中には、前記無機酸もしくは有機酸以外の化合物が含まれていてもよい。
【0028】
処理方法として酸性水溶液への浸漬を行う場合の浸漬時間は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解の観点から、下限として5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、55分以上であり、さらに好ましくは、ポリアミド媒体の種類、形態、適用する抗体の種類に応じて、順次1時間以上、2時間以上、3時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、20時間以上、40時間以上、70時間以上を適宜選択できる。
また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、70時間以下、40時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、5時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、10分以下が適宜選択できる。
【0029】
処理方法として酸性水溶液への浸漬を行う場合の浸漬温度は、原料である処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解進行速度の観点から、下限として4℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。
また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、100℃以下、80℃以下、50℃以下が好ましく、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
【0030】
処理方法として酸性水溶液の通液を行う場合の通液時間は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解の観点から、下限として5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、55分以上であり、さらに好ましくは、ポリアミド媒体の種類、形態、適用する抗体の種類に応じて、順次1時間以上、2時間以上、3時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、20時間以上、40時間以上、70時間以上等を適宜選択できる。
また、上限としては、ポリアミド媒体の種類、形態、適用する抗体の種類に応じて、70時間以下、40時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、5時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、10分以下等が適宜選択できる。
【0031】
処理方法として酸性水溶液の通液を行う場合の通液温度は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解進行速度の観点から、下限として4℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。
また、上限としては、ポリアミド媒体の強度の観点から、100℃以下、80℃以下、50℃以下が好ましく、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
【0032】
ポリアミド媒体をアルカリ性水溶液により処理する場合、アルカリ性水溶液のpHは、ポリアミド媒体表面のアミド結合の分解効率の観点から、下限として、pH10.0以上が好ましく、より好ましくは11.0以上、さらに好ましくは12.0以上、さらにより好ましくは12.5以上、よりさらに好ましくは13.0以上、特に好ましくは13.5以上である。
また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、好ましくは14.0以下であり、より好ましくは13.5以下である。
アルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等が挙げられ、入手コストの観点から、水酸化ナトリウム水溶液、又は水酸化カリウム水溶液が好ましい。
ポリアミド媒体処理用のアルカリ性水溶液中には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム以外の化合物が含まれていてもよい。
【0033】
処理方法として、ポリアミド媒体をアルカリ性水溶液へ浸漬する場合の浸漬時間は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の加水分解を十分に起こす観点から、下限として5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上、20分以上、30分以上であり、さらに好ましくは、40分以上、50分以上、55分以上であり、ポリアミド媒体の種類、形態、適用するタンパク質の種類に応じて、順次1時間以上、2時間以上、3時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、20時間以上、40時間以上、70時間以上等を適宜選択できる。
また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、70時間以下、40時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、5時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、10分以下等を適宜選択できる。
【0034】
処理方法として、ポリアミド媒体をアルカリ性水溶液へ浸漬する場合の浸漬温度は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解進行速度の観点から、下限として4℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、15℃以上、さらに好ましくは20℃以上である。また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、100℃以下、80℃以下、50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下が例示される。
【0035】
処理方法として、ポリアミド媒体に対してアルカリ性水溶液の通液を行う場合の通液時間は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解の観点から、下限として5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、55分以上であり、さらに好ましくは、ポリアミド媒体の種類、形態、適用する抗体の種類に応じて、順次1時間以上、2時間以上、3時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、20時間以上、40時間以上、70時間以上を適宜選択できる。
また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、70時間以下、40時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、5時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、10分以下等が適宜選択できる。
【0036】
処理方法として、ポリアミド媒体に対してアルカリ性水溶液への通液を行う場合の通液温度は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解進行速度の観点から、下限として4℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、15℃以上、さらに好ましくは20℃以上である。また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、100℃以下、80℃以下、50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
【0037】
本実施形態のタンパク質含有溶液を精製する方法においては、アルカリ処理前のポリアミド媒体を、pH10以上のアルカリ性水溶液で4℃以上100℃以下、5分以上70時間以下の条件で処理する工程と、前記ポリアミド媒体を洗浄する工程と、前記洗浄後のポリアミド媒体に、タンパク質含有溶液を接触させる工程とを有することが好ましい。
また、アルカリ処理前のポリアミド媒体を、pH13以上のアルカリ性水溶液で10℃以上30℃以下、0.5時間以上40時間以下の条件で処理する工程と、前記ポリアミド媒体を洗浄する工程と、前記ポリアミド媒体にタンパク質含有溶液を接触させる工程と、を、有することがさらに好ましい。
これにより、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の加水分解を、高い効率で十分な速度で起こすことができ、かかる処理後のポリアミド媒体を用いてタンパク質含有溶液を精製することにより、目的タンパク質のポリアミド媒体への吸着量を低減でき、目的タンパク質を高い回収率で回収することができる。
【0038】
<抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法の処理条件>
本実施形態のポリアミド媒体の製造方法が、特に、抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法である場合においては、原料となる所定の処理前のポリアミド媒体を、pH5以下の酸性水溶液に5分以上又はpH10以上のアルカリ性水溶液に10分以上浸漬する。
本実施形態のポリアミド媒体の製造方法において、原料であるポリアミドに生じる変化は特に限定されないが、加水分解、官能基の導入等が挙げられる。前記導入される官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、アルデヒド基、カルボニル基、ニトロ基が挙げられる。
酸性水溶液により処理する場合、酸性水溶液のpHは、上限としては、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解進行速度の観点から5以下であることが好ましく、4以下、3以下、2以下、1.5以下がより好ましい。また、下限としては、ポリアミド媒体の強度の観点から、1.0以上であることが好ましい。
【0039】
酸性水溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸の水溶液が挙げられる。酸性水溶液中には、前記無機酸又は有機酸以外の化合物が含まれていてもよい。
【0040】
処理方法として酸性水溶液への浸漬を行う場合の浸漬時間は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解の観点から、下限として5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、55分以上であり、さらに好ましくは、ポリアミド媒体の種類、形態、適用する抗体の種類に応じて、順次1時間以上、2時間以上、3時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、20時間以上、40時間以上、70時間以上等を適宜選択できる。
また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、70時間以下、40時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、5時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、又は10分以下等を適宜選択できる。
【0041】
処理方法として酸性水溶液への浸漬を行う場合の浸漬温度は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解進行速度の観点から、下限として4℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。
また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、100℃以下、80℃以下、50℃以下が好ましく、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下である。
【0042】
処理方法として酸性水溶液の通液を行う場合の通液時間は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解の観点から、下限として5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、55分以上であり、さらに好ましくは、ポリアミド媒体の種類、形態、適用する抗体の種類に応じて、順次1時間以上、2時間以上、3時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、20時間以上、40時間以上、70時間以上を適宜選択できる。
また、上限としては、ポリアミド媒体の種類、形態、適用する抗体の種類に応じて、70時間以下、40時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、5時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、10分以下を適宜選択できる。
【0043】
処理方法として酸性水溶液の通液を行う場合の通液温度は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解進行速度の観点から、下限として4℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。
また、上限としては、ポリアミド媒体の強度の観点から、100℃以下、80℃以下、50℃以下が好ましく、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
【0044】
ポリアミド媒体をアルカリ性水溶液により処理する場合、アルカリ性水溶液のpHは、ポリアミド媒体表面のアミド結合の分解効率の観点から、下限としてpH10.0以上が好ましく、より好ましくは11.0以上、さらに好ましくは12.0以上、さらにより好ましくは12.5以上、よりさらに好ましくは13.0以上、特に好ましくは13.5以上である。
また、上限としては、ポリアミド媒体の強度の観点から、14以下が好ましく、13.5以下がより好ましい。
アルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液が好ましいものとして挙げられる。
アルカリ性水溶液中には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム以外の化合物が含まれていてもよい。
【0045】
処理方法として、ポリアミド媒体をアルカリ性水溶液へ浸漬する場合の浸漬時間は、原料であるポリアミド媒体表面のアミド結合の加水分解を十分に起こす観点から、下限として5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは20分以上、さらにより好ましくは30分以上、40分以上、50分以上、55分以上であり、よりさらに好ましくは、ポリアミド媒体の種類、形態、適用する抗体の種類に応じて、順次1時間以上、2時間以上、3時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、20時間以上、40時間以上等を適宜選択できる。
また、上限としては、ポリアミド媒体の強度の観点から、40時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、5時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、10分以下等を適宜選択できる。
【0046】
処理方法として、ポリアミド媒体をアルカリ性水溶液へ浸漬する場合の浸漬温度は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解進行速度の観点から、下限として4℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上であり、さらに好ましくは15℃以上であり、さらにより好ましくは20℃以上である。
また、上限としては、ポリアミド媒体の強度の観点から、100℃以下、80℃以下、50℃以下が好ましく、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
【0047】
処理方法として、ポリアミド媒体に対してアルカリ性水溶液の通液を行う場合の通液時間は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解の観点から、下限として5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、55分以上であり、さらに好ましくは、ポリアミド媒体の種類、形態、適用する抗体の種類に応じて、順次1時間以上、2時間以上、3時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、20時間以上、40時間以上、70時間以上等を適宜選択できる。
また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、70時間以下、40時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、5時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、10分以下等を適宜選択できる。
【0048】
処理方法として、ポリアミド媒体に対してアルカリ性水溶液への通液を行う場合の通液温度は、原料である所定の処理前のポリアミド媒体の表面のアミド結合の分解進行速度の観点から、下限として4℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上、さらにより好ましくは20℃以上である。
また、上限として、ポリアミド媒体の強度の観点から、100℃以下、80℃以下、50℃以下が好ましく、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
【0049】
本実施形態の製造方法により得られるポリアミド媒体は、タンパク質含有溶液精製用、抗体凝集体除去用のいずれにおいても、夾雑物を吸着により除去する場合、表面積の大きさの観点から、多孔質体であることが好ましい。また、夾雑物をサイズ排除により除去する場合も、多孔質体であることが好ましい。
多孔質体の形態としては、例えば、膜状、粒子状、モノリス、キャピラリー、焼結体等が挙げられ、具体的には、微多孔中空糸膜、微多孔平膜、不織布、織布が挙げられる。多孔質体は、膜状であることにより、タンパク質含有溶液の通液により、高速でタンパク質含有溶液を精製できる効果が得られるため好ましい。
ポリアミド媒体が多孔質膜である場合、夾雑物を吸着もしくはサイズ排除により除去する観点から、多孔質膜の孔径は小さいほうが好ましい。ポリアミド多孔質膜の平均孔径は、上限として1000nm以下が好ましく、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは400nm以下、さらにより好ましくは300nm以下である。また、下限としては、ろ過速度の観点から、1nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上が好ましい。
【0050】
〔タンパク質含有溶液を精製する方法〕
本実施形態のタンパク質含有溶液を精製する方法は、酸性又はアルカリ性水溶液で処理されたポリアミド媒体に、タンパク質含有溶液を接触させる工程を有する。
具体的には、上述した本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法により得られたタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体に、タンパク質含有溶液を接触させる工程を有する。
前記ポリアミド媒体にタンパク質含有溶液を接触させる工程とは、例えば、後述するようにタンパク質含有溶液をポリアミド媒体に通過させる工程、タンパク質溶液中にポリアミド媒体を浸漬する工程等が含まれる。また、タンパク質含有溶液をポリアミド媒体に通過させる工程として、ポリアミド媒体によりタンパク質含有溶液を濾過する工程が例示される。
これにより、純度の向上したタンパク質含有溶液が得られる。
前記ポリアミド媒体にタンパク質含有溶液を接触させることで除去できる夾雑物として、タンパク質凝集体、抗体凝集体、バイオ医薬品製造工程における細胞宿主由来のタンパク質(HCP;Host Cell Proteins)、ウイルス粒子等が挙げられる。ウイルス粒子はエンベロープを有していてもよい。
【0051】
〔抗体溶液を回収する方法、抗体溶液から抗体凝集体を除去する方法〕
また、本実施形態の抗体溶液を回収する方法及び抗体溶液から抗体凝集体を除去する方法は、酸性又はアルカリ性水溶液で処理されたポリアミド媒体に、抗体凝集体を含む抗体溶液を接触させる工程を有する。
具体的には、上述した本実施形態の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法により得られた抗体凝集体除去用のポリアミド媒体と、抗体凝集体を含む抗体溶液とを接触させる工程を有する。
前記ポリアミド媒体と抗体凝集体を含む抗体溶液とを接触させる工程とは、例えば、後述するように抗体溶液をポリアミド媒体に通過させる工程、抗体溶液中にポリアミド媒体を浸漬する工程等が含まれる。また、タンパク質含有溶液をポリアミド媒体に通過させる工程として、ポリアミド媒体によりタンパク質含有溶液を濾過する工程が例示される。
これにより、抗体溶液から抗体凝集体を効果的に除去でき、純度が向上した抗体溶液を得ることができる。
【0052】
本実施形態において、タンパク質含有溶液が抗体溶液であってもよいし、その抗体溶液が抗体凝集体を含んでいてもよい。その場合、上述したように、抗体溶液から抗体凝集体を除去し、抗体単量体の純度が向上した抗体溶液を高い回収率で得ることができる。
【0053】
本実施形態において用いるタンパク質含有溶液が抗体溶液である場合、当該抗体溶液は、目的抗体を溶解している溶液を意味する。
抗体溶液に用いる溶媒は、純水であってもよいし、緩衝液であってもよい。
溶液として使用できる緩衝液の種類は、以下に限定されないが、例えば、tris塩、酢酸塩、Tween、ソルビトール、マルトース、グリシン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、スルホン酸塩、リン酸塩、クエン酸、又は塩化ナトリウムが溶解した緩衝液が挙げられる。
【0054】
本実施形態において用いる抗体溶液の濃度としては、抗体が溶液に溶解されていれば特に限定されない。
抗体溶液の濃度の下限値としては、0.01mg/mL以上が例示され、他の態様としては0.05mg/mL以上が例示され、また他の態様として0.1mg/mL以上が例示され、さらに他の態様としては0.5mg/mL以上が例示され、さらにまた他の態様としては1.0mg/mL以上が例示され、またさらに他の態様としては5.0mg/mL以上が例示される。
抗体溶液の濃度の上限値としては、100mg/mL以下が例示され、他の態様としては90mg/mL以下が例示され、また他の態様としては80mg/mL以下が例示され、さらに他の態様としては70mg/mL以下が例示され、さらにまた他の態様としては60mg/mL以下が例示され、またさらに態様としては50mg/mL以下が例示され、さらに他の態様としては40mg/mL以下が例示され、さらにまた他の態様としては30mg/mL以下が例示され、またさらに他の態様としては25mg/mL以下が例示され、さらに他の態様としては20mg/mL以下が例示される。
【0055】
前記緩衝液の濃度は、上述した所定の溶解物が溶解していれば特に限定されない。
緩衝液の濃度の下限値としては、緩衝液の種類に応じて、0mmol/L以上が例示され、他の態様としては0.5mmol/L以上が例示され、また他の態様としては1.0mmol/L以上が例示され、さらに他の態様としては5mmol/L以上が例示され、さらにまた他の態様としては10mmol/L以上が例示され、またさらに他の態様としては15mmol/L以上が例示され、さらに他の態様としては25mmol/L以上が例示される。
【0056】
前記緩衝液のpHは、特に限定されないが、緩衝液の種類に応じて、pHの下限値としては4.0以上が例示され、他の態様としては4.5以上が例示され、また他の態様としては5.0以上が例示され、さらに他の態様としては5.5以上が例示され、さらにまた他の態様としては6.0以上が例示される。pHの上限値としては、10.0以下が例示され、他の態様としては9.0以下が例示され、また他の態様としては8.0以下が例示され、さらに他の態様としては8.5以下が例示され、さらにまた他の態様としては8.0以下が例示され、またさらに他の態様としては7.5以下が例示され、さらに他の態様としては7.0以下が例示される。
【0057】
前記緩衝液の電気伝導度は、特に限定されないが、電気伝導度の下限値としては、緩衝液の種類に応じて、0mS/cm以上が例示され、他の態様としては1mS/cm以上が例示され、また他の態様としては2mS/cm以上が例示され、さらに他の態様としては3mS/cm以上が例示され、さらにまた他の態様としては4mS/cm以上が例示され、またさらに他の態様としては5mS/cm以上が例示される。
電気伝導度の上限値としては、100mS/cm以下が例示され、他の態様としては90mS/cm以下が例示され、また他の態様としては80mS/cm以下が例示され、さらに他の態様としては70mS/cm以下が例示され、さらにまた他の態様としては60mS/cm以下が例示され、またさらに他の態様としては50mS/cm以下が例示され、さらに他の態様としては40mS/cm以下が例示される。
【0058】
本実施形態のタンパク質含有溶液を精製する方法において、当該タンパク質含有溶液として抗体溶液を適用し、抗体溶液から抗体凝集体を除去し、抗体単量体の純度が向上した抗体溶液を回収する際には、上述したようにポリアミド媒体と、抗体凝集体を含む抗体溶液を接触させる。
ポリアミド媒体と抗体溶液との接触方法は、抗体溶液をポリアミド媒体と接触させることができれば特に限定されないが、上述したように、抗体溶液をポリアミド媒体に通過させる方法、抗体溶液中にポリアミド媒体を浸漬する方法等が挙げられる。また、タンパク質含有溶液をポリアミド媒体に通過させる方法として、ポリアミド媒体によりタンパク質含有溶液を濾過する方法が例示される。
【0059】
抗体溶液をポリアミド媒体に通過させる方法としては、シリンジ又はポンプ等により抗体溶液をポリアミド媒体に通過させる方法が挙げられる。抗体溶液をポリアミド媒体に通過させる方法としては、ポリアミド媒体の所定の部分に向けて流した抗体溶液がポリアミド媒体を通過し、ポリアミド媒体の他の部分から抗体溶液が回収できればよい。また、抗体溶液をポリアミド媒体に通過させる前後において、抗体溶液とは別に緩衝液をポリアミド媒体に通過させてもよい。タンパク質含有溶液をポリアミド媒体に通過させる方法としては、ポリアミド媒体によりタンパク質含有溶液を濾過する方法が好ましい例として挙げられる。
抗体溶液の回収の際、ポリアミド媒体に通過させた抗体溶液を全て回収してもよく、一定体積ごとにフラクションを取得してもよい。
上述のようにして精製された抗体を含有するフラクションを収集して一つにすることにより、精製された抗体を回収することができる。
また、抗体溶液をポリアミド媒体に通過させる流速としては特に限定されないが、抗体溶液の種類に応じて、下限値としてポリアミド媒体1mLに対して0.1mL/min以上が例示され、他の態様としては0.5mL/min以上が例示され、また他の態様としては1.0mL/min以上が例示され、さらに他の態様としては5mL/min以上が例示される。
【0060】
〔タンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体、抗体凝集体除去用のポリアミド媒体〕
本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体、及び本実施形態の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体は、ポリアミド媒体の表面のポリマーのアミノ基及びカルボキシル基の和(合計数)が、ポリアミド媒体の内部におけるポリマーのアミノ基及びカルボキシル基の和(合計数)よりも、1.01倍以上多いことが好ましい。
これにより、タンパク質凝集体、例えば抗体凝集体の除去選択性が高く、かつ、強度特性にも優れたポリアミド媒体が得られる。
上記のようなポリアミド媒体は、上述した本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法及び本実施形態の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法により得られるが、上記アミノ基及びカルボキシル基の和の条件を満たせば、ポリアミドの製造工程は任意に選択でき、上述した本実施形態の製造方法に限定されるものではない。
なお、表面とは、ポリアミド媒体が多孔質体である場合には、孔の表面も含む。
また、ポリアミド媒体の表面のポリマーとは、用いる酸性又はアルカリ性水溶液の種類、濃度、浸漬時間、抗体の種類、ポリアミド媒体の種類、形態等に適宜応じて、表面から10nm、又は5nm、3nm、あるいは2nm、1nmの媒体中に存在するポリマーのことを意味する。
ポリアミド媒体内部のポリマーとは、上記により定義されるポリアミド媒体の表面以外のポリマーのことを意味する。
【0061】
本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体、及び抗体凝集体除去用のポリアミド媒体は、ポリアミドであるため、ポリマー末端にアミノ基及びカルボキシ基の官能基を有する。
ポリアミド媒体の表面におけるアミノ基とカルボキシル基の官能基の和と、ポリアミド媒体内部における官能基の和が異なる傾向にあり、タンパク質凝集体、例えば抗体凝集体の除去選択性とポリアミド媒体の強度の両立の観点から、表面のアミノ基及びカルボキシル基の和が、内部におけるアミノ基及びカルボキシル基の和の1.01倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.02倍以上、さらに好ましくは1.03倍以上、さらにより好ましくは1.04倍以上、1.05倍以上、1.06倍以上、1.07倍以上、1.08倍以上、1.09倍以上、1.1倍以上、1.15倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、3.0倍以上、3.5倍以上、4.0倍以上、4.5倍以上、5.0倍以上、6.0倍以上、7.0倍以上、8.0倍以上、9.0倍以上、10.0倍以上、15倍以上、20倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、100倍以上である。
アミノ基とカルボキシル基の官能基の和は、アミノ基とカルボキシル基をそれぞれ測定し、その合計数を算出すればよい。また、ポリアミド媒体におけるアミド結合の加水分解により、アミノ基とカルボキシル基が一対一で生ずるメカニズムに照らし、アミノ基又はカルボキシル基のいずれか一方の量を測定し、当該量を2倍とすることで和とすることができる。
本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体及び抗体除去用のポリアミド媒体は、酸性又はアルカリ性水溶液のpHや、アルカリ性水溶液への浸漬時間の調整、浸漬温度等を適宜設定することにより、表面のアミノ基及びカルボキシル基の和が、内部のアミノ基及びカルボキシル基の和よりも、上記に示す倍率で多いものに制御することができる。
【0062】
ポリアミド媒体の所定の官能基の割合は、質量あたりの官能基密度により求めることができる。
ポリアミド媒体全体の官能基量は、例えば、NMR等で定量することができる。
また、ポリアミド媒体の表面の官能基量は、例えば、XPS(X線光電子分光分析)のような公知の手法で分析することができる。
【0063】
本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体及び抗体凝集体除去用のポリアミド媒体は、ポリアミド媒体の表面のポリマーの数平均分子量と、ポリアミド媒体内部のポリマーの数平均分子量が異なっていてもよく、内部の方が大きいことが好ましい。
なお、表面とは、ポリアミド媒体が多孔質状である場合には、孔の表面も含む。
また、ポリアミド媒体の表面のポリマーとは、用いる酸性又はアルカリ性水溶液の種類、濃度、浸漬時間、抗体の種類、ポリアミド媒体の種類、形態等に適宜応じて、表面から10nm、又は5nm、3nm、あるいは2nm、1nmの媒体中に存在するポリマーのことを意味する。
ポリアミド媒体内部のポリマーとは、ポリアミド媒体の表面以外のポリマーのことを意味する。
その際の数平均分子量の比率は、ポリアミド媒体の表面のポリマーの数平均分子量をMn(S)、内部のポリマーの数平均分子量をMn(I)とした時、Mn(S)/Mn(I)と表すことができ、タンパク質凝集体、例えば抗体凝集体の選択性と強度の両立の観点から、Mn(S)/Mn(I)の値が0.99以下であることが好ましい。すなわち、Mn(S)/Mn(I)≦0.99であることが好ましい。
より好ましくは0.98以下、さらに好ましくは0.97以下、さらにより好ましくは0.96以下、よりさらに好ましくは0.95以下、0.94以下、0.93以下、0.92以下、0.91以下、0.90以下、0.88以下、0.86以下、0.84以下、0.82以下、0.80以下、0.75以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下である。
ポリアミド媒体の数平均分子量は、公知の方法のゲル浸透クロマトグラフィーなどにより求めることができ、この場合は標準物質の換算分子量となる。
上記のような、表面のポリマーと内部のポリマーの数平均分子量の比(Mn(S)/Mn(I))が0.99以下である本実施形態のポリアミド媒体は、上述した本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法及び本実施形態の抗体凝集体除去用のポリアミド媒体の製造方法により得られる。具体的には、ポリアミド媒体を酸性又はアルカリ性水溶液で処理することによって、表面ポリマーの一部の結合鎖が切れることにより、内部の方が数平均分子量が大きくなる傾向にある。
なお、上記数平均分子量の比の条件を満たせば、ポリアミドの製造工程は任意に選択でき、上述した本実施形態の製造方法に限定されるものではない。具体的には、本実施形態のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体及び抗体凝集体除去用のポリアミド媒体は、酸性又はアルカリ性水溶液のpHや、アルカリ性水溶液への浸漬時間の調整、浸漬温度等を適宜設定することにより、表面のポリマーの数平均分子量と、内部のポリマーの数平均分子量との比を上記に示す数値に制御することができる。
【実施例】
【0064】
以下、具体的な実施例及び比較例を用いて本実施形態についてさらに詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0065】
〔実施例1〕
(1) ポリアミド媒体としてのポリアミド膜のアルカリ性水溶液浸漬
直径2.5cmの円形であり、膜厚160μm、平均孔径0.2μmの、多孔質ポリアミド媒体としてのポリアミド膜(Whatman(登録商標):7402-002、ジーイーヘルスケア社製、材質:ポリアミド66)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液(pH14)に室温で24時間浸漬した。
次に、純水で5回洗浄し、水酸化ナトリウムを完全に取り除いた。
得られたポリアミド膜を、ステンレスホルダーKS-25(Advantech社製、有効膜面積3.8cm2)に2枚セットし、ポリアミド膜1とした。
なお、ポリアミド膜の膜厚はデジマチックインジケータID-C112XBS(Mitutoyo社製)で測定した。
【0066】
(2) タンパク質含有溶液としての抗体含有溶液の調製
CHO細胞CRL12445から発現させたモノクローナル抗体(以下、CRL12445抗体と略すことがある)を0.74g/L含む培養液上澄みを用意した。
CRL12445から発現させたモノクローナル抗体生産細胞を含む培養液を、ろ過膜(旭化成メディカル社製、商品名 BioOptimal(登録商標) MF-SL)を用いてろ過し、不純物と抗体を含む抗体含有溶液(培養上澄)を取得した。
【0067】
(3) アフィニティーカラムによる抗体含有溶液の精製
リン酸緩衝液(20mmol/Lリン酸ナトリウム+150mmol/LNaCl(pH8.0))で平衡化したプロテインAカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス製、MabSelect Sureを充填したカラム)に、前記(2)で取得した抗体含有溶液(培養上澄)を添加し、プロテインAに抗体を吸着させた。
次に、カラムにリン酸緩衝液(20mmol/Lのリン酸ナトリウム+150mmol/L NaCl(pH8.0))を通液して洗浄した後、カラムに溶出緩衝液(100mmol/Lクエン酸ナトリウム(pH3.6))を通液して、プロテインAカラムから抗体を溶出させて、不純物がある程度低減された抗体含有溶液を回収した。
なお、本抗体タンパク質を、下記の(8)に記載の方法で測定したところ、単量体としての抗体タンパク質のピーク(下記(8)に記載する、
図2中の(3)のピーク)のみ確認され、
図2中に示す、3量体以上の凝集体(1)、2量体である凝集体(2)のピークは確認できなかった。
また、緩衝液のpHの測定には、pHメータであるHM-30R(東亜ディーケーケー社製)を使用した。下記の緩衝液のpHも同様に測定を行った。
【0068】
(4) 多量の抗体凝集体を含む抗体含有溶液の調製
前記((3)アフィニティーカラムによる抗体の精製)で得られた、不純物がある程度低減された抗体含有溶液の一部に塩酸を加え、pH2.5に調整し、一時間維持した。
その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和し、多量の抗体凝集体を含む抗体含有溶液を調製した。
【0069】
(5) 抗体凝集体を含む抗体含有溶液の調製
前記((3)アフィニティーカラムによる抗体の精製)で得られた、不純物がある程度低減された抗体含有溶液を、任意の量の塩化ナトリウムを含む15mmol/L tris-HCl緩衝液(pH7.0、5mS/cm)にバッファー交換した溶液と、前記((4)多量の抗体凝集体を含む抗体含有溶液の調製)で得られた多量の凝集体を含む抗体含有溶液を任意の量の塩化ナトリウムを含む15mmol/L tris-HCl緩衝液(pH7.0、5mS/cm)にバッファー交換した溶液とを、任意の割合で混合し、抗体凝集体と抗体単量体を含む抗体含有溶液(以降、「SM」と略すことがある。)を調製した。
前記緩衝液の電気伝導度は電気伝導率計CM-40S(東亜ディーケーケー社製)を使用し、測定した。
【0070】
(6) ポリアミド膜への抗体含有溶液の通液
前記((1)ポリアミド膜のアルカリ性水溶液浸漬)で得たポリアミド膜1に、前記((5)凝集体を含む抗体含有溶液の調製)で作製した抗体凝集体と抗体単量体を含む抗体含有溶液(SM)を通過させた。
抗体含有溶液の通過には、分離・精製装置であるAKTA purifier(GEヘルスケア社製)を用い、抗体含有溶液を通過させ、抗体含有溶液を回収した。
加えた量は13mL(4.8mg/mLの濃度、抗体の総量62.7mg)、流速は3.9mL/分であった。
【0071】
(7) 凝集体除去性能の評価
凝集体除去性能は、抗体凝集体除去量、及び抗体単量体の回収量により評価した。
【0072】
(8) 凝集体除去性能の具体的な評価方法
前記((6)ポリアミド膜への抗体含有溶液の通液)で回収した抗体含有溶液、及び前記((5)凝集体を含む抗体含有溶液の調製)で作製した抗体凝集体と抗体単量体を含む抗体含有溶液(SM)を、下記の条件により、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:Size Exclusion Chromatography)装置を用いて測定した。
測定結果を下記〔表1〕に示し、
図1に抗体凝集体と抗体単量体とを含む抗体含有溶液のクロマトチャートを示す。
図2は、
図1のクロマトチャートの拡大図である。
カラム:ACQUITY UPLC BEH200 SEC1.7μm(Waters社製)カラム温度:30℃ システム:ACQUITY UPLC H CLASS(Waters社製)
移動相:0.1mol/Lリン酸水素二ナトリウム+0.2mol/L L(+)-アルギニン水溶液(塩酸でpH6.7に調整)
図1及び
図2に示すように、抗体単量体(ピーク(3))、2量体(ピーク(2))、3量体以上(ピーク(1))の凝集体に分かれた。
【0073】
(9) 抗体単量体回収率の算出
抗体単量体の回収率は、分光光度計;SpectraMax Plus384 (モレキュラーデバイスジャパン社製)を用いた抗体濃度及びサイズ排除クロマトグラフィーの結果より算出した。
具体的には、ポリアミド膜1通過前の抗体含有溶液濃度をC0、抗体含有溶液量をV0、サイズ排除クロマトグラフィーより求められる抗体単量体割合をR0とし、同様にポリアミド膜1通過後の抗体含有溶液の濃度をC1、抗体含有溶液量をV1、抗体単量体割合をR1とし、以下の式(1)により求めた。
算出結果を下記〔表1〕に示す。
抗体単量体回収率(%)=C1V1R1/C0V0R0・・・(式(1))
【0074】
〔比較例1〕
ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しないこと以外は前記ポリアミド膜1と同じ条件で作製したポリアミド膜2を用いた。
なお、比較例1においては、水に浸漬した。
その他の条件は、実施例1と同様に操作を行った。
ポリアミド膜2通過後のサイズ排除クロマトグラフィーによる分析結果、及び抗体単量体回収率を下記〔表1〕に示す。
【0075】
【0076】
実施例1、及び比較例1の結果を比較すると、ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬する処理を行ったことにより、抗体凝集体除去量は維持したまま、抗体単量体回収率が向上したことが分かった。
【0077】
〔実施例2〕
(1)ポリアミド媒体としてのポリアミド膜のアルカリ性水溶液処理
水酸化ナトリウム溶液への浸漬溶液と浸漬時間を変更し、その他の条件は、前記〔実施例1〕中の、「(1) ポリアミド媒体としてのポリアミド膜のアルカリ性水溶液浸漬)」と同じ方法でポリアミド膜3~6、及びポリアミド膜8を作製した。
ポリアミド膜7に関しては、前記〔実施例1〕と同様のポリアミド膜(Whatman(登録商標):7402-002、ジーイーヘルスケア社製、材質:ポリアミド66)を、前記〔実施例1〕と同様にステンレスホルダーKS-25(Advantech社製、有効膜面積3.8cm2)に2枚セットし、続いて、分離・精製装置であるAKTA purifier(GEヘルスケア社製)を用いて、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を流速1.1mL/min、室温で1時間通液した後、純水を通液し、水酸化ナトリウムを完全に取り除いて作製した。
作製したポリアミド膜を下記〔表2〕に示す。
【0078】
【0079】
(2) ポリアミド膜への抗体含有溶液の通液
前記〔実施例1〕の((2)抗体含有溶液の調製)、及び((3)アフィニティーカラムによる抗体含有溶液の精製)で得られた溶液を15mmol/L tris-HCl緩衝液(pH7.0、5mS/cm)にバッファー交換し、抗体含有溶液を得た。
前記〔実施例2〕の((1)ポリアミド媒体としてのポリアミド膜のアルカリ性水溶液処理)で得られたポリアミド膜3~7に、AKTA purifierを用いて、 流速0.6mL/minで、前記抗体含有溶液を通過させ、抗体含有溶液を回収した。
なお、前記で得られたポリアミド膜3~7に、抗体含有溶液を通過させる前、15mmol/L tris-HCl緩衝液(pH7.0、5mS/cm)を通液し、回収した液を分光光度計;NanoDrop One(Thermo Fisher Scientific社製)で分析したところ、一般的にタンパク質などベンゼン環を持つ化合物が吸収する波長280nmの光の吸収は確認されなかった。
そのため、抗体含有溶液を通過させる前のポリアミド膜からは、波長280nmの光を吸収するような化合物の溶出がなく、抗体含有溶液をポリアミド膜に通過させ回収した溶液の光の吸収は、抗体由来であると特定した。
【0080】
(3) 抗体単量体回収率の評価
前記〔実施例2〕の(2)で調製した抗体含有溶液と、〔実施例2〕の(2)で、ポリアミド膜に通過させて回収した抗体含有溶液の凝集体割合と抗体濃度を測定した。
得られた測定値から、調製した抗体含有溶液、及び各ポリアミド膜に吸着した抗体単量体質量、抗体単量体の回収率を算出した。
具体的には、調製した抗体含有溶液、及び各ポリアミド膜に吸着した抗体単量体質量は、以下の式(2)、(3)により求めた。
下記(2)、(3)では、ポリアミド膜3~8を通過前の抗体含有溶液濃度をC2、抗体含有溶液量をV2、サイズ排除クロマトグラフィーより求められる抗体単量体割合をR2とし、同様にポリアミド膜3~8通過後の抗体含有溶液の濃度をC3、抗体含有溶液量をV3、抗体単量体割合をR3とした。
抗体単量体の回収率は、前記〔実施例1〕の((9)抗体単量体回収率の算出)と同様の方法で算出した。
算出結果を下記〔表3〕に示す。
調製抗体含有溶液中の抗体単量体の質量(mg)=C2V2R2・・・(式(2))
ポリアミド膜に吸着した抗体単量体質量(mg)=C2V2R2-C3V3R3・・・(式(3))
抗体含有溶液中の凝集体割合と、抗体濃度の測定方法としては、前者は前記〔実施例1〕の((8)凝集体除去性能の具体的な評価)と同様の方法で測定し、後者は分光光度計;NanoDrop One(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて測定した。
【0081】
〔比較例2〕
ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しないこと以外は、前記ポリアミド膜3と同様の方法でポリアミド膜αを作製した。
なお、比較例2においては、水に浸漬した。
ポリアミド膜αの作製条件を、前記〔表2〕に示す。
ポリアミド膜αに対して、前記〔実施例2〕と同様の操作を行った。
抗体単量体回収率を下記〔表3〕に示す。
【0082】
【0083】
実施例2、及び比較例2の結果を比較すると、ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することにより、抗体単量体回収率が向上したことが分かった。
ポリアミド膜3~6、ポリアミド膜8は、いずれにおいても、ポリアミド膜αに比べて抗体単量体回収率が高いことから、本発明のポリアミド媒体の抗体単量体回収率の向上効果は、アルカリ溶液のpH、浸漬時間によらないことが明らかとなった。
また、ポリアミド膜7においても同様の効果が得られていることから、本発明のポリアミド媒体の抗体単量体回収率の向上効果は、アルカリ溶液の処理方法によらないことが示された。
【0084】
〔実施例3〕
抗体含有溶液のpH、電気伝導度、及び緩衝液を変更し、他の条件は、前記〔実施例2〕と同様の実験を、ポリアミド膜3~5、ポリアミド膜8に対して行った。
抗体含有溶液については、前記〔実施例1〕の((2)抗体含有溶液の調製)、((3)アフィニティーカラムによる抗体含有溶液の精製)で得られた抗体含有溶液を15mmol/L 酢酸緩衝液(pH5.5、15mS/cm)にバッファー交換し、抗体含有溶液を得た。
抗体単量体回収率の算出結果を、下記〔表4〕に示す。
【0085】
〔比較例3〕
前記〔比較例2〕で作製したポリアミド膜αに対し、前記〔実施例3〕と同様の操作を行った。
抗体単量体回収率の算出結果を、下記〔表4〕に示す。
【0086】
【0087】
実施例3、及び比較例3の結果を比較すると、ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することにより、抗体単量体回収率が向上したことが分かった。
実施例2、3と比較例2、3との結果を対比することにより、抗体含有溶液の液性によらず、ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することによる抗体単量体回収量増加の効果が得られることが分かった。
【0088】
〔実施例4〕
抗体含有溶液の抗体種を変更し、その他は、前記〔実施例3〕と同様の実験を行った。
エボロクマブ(アステラス製薬社製)を15mmol/L 酢酸緩衝液(pH5.5、15mS/cm)にバッファー交換し、抗体含有溶液を得た。
抗体単量体回収率の算出結果を、下記〔表5〕に示す。
【0089】
〔比較例4〕
前記〔比較例2〕で作製したポリアミド膜αに対し、前記〔実施例4〕と同様の操作を行った。
抗体単量体回収率の算出結果を、下記〔表5〕に示す。
【0090】
【0091】
実施例4、及び比較例4の結果を比較すると、ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することにより、抗体単量体回収率が向上したことが分かった。
実施例3、4と、比較例3、4との結果の比較により、抗体種によらず、ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することによる抗体単量体回収量の向上効果が得られることが分かった。
【0092】
〔実施例5〕
ポリアミド膜の作製方法を変更し、その他は、前記〔実施例4〕と同様の実験を行った。
具体的には、浸漬溶液と浸漬時間を変更し、その他は、前記(〔実施例1〕ポリアミド媒体としてのポリアミド膜のアルカリ性水溶液処理)と同様の方法でポリアミド膜9~11を作製した。
ポリアミド膜の作製条件を下記〔表6〕に示す。
また、抗体単量体回収率の算出結果を下記〔表7〕に示す。
【0093】
【0094】
〔比較例5〕
ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しないこと以外は、前記〔実施例5〕中のポリアミド膜9~11と同じ条件で作製したポリアミド膜αを用いた。
なお、比較例5においては、水に浸漬した。
ポリアミド膜αに対し、前記〔実施例5〕と同様の操作を行った。ポリアミド膜の作製条件を前記〔表6〕に示す。
また、抗体単量体回収率を、下記〔表7〕に示す。
【0095】
【0096】
実施例5、及び比較例5の結果を比較すると、ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することにより、抗体単量体回収率が向上したことが分かった。
このことから、本発明は、ポリアミド媒体の処理に用いる溶液が酸性水溶液、アルカリ性水溶液のいずれであっても、抗体単量体回収率の向上効果が得られ、浸漬の溶液濃度や浸漬時間も限定されないことが分かった。
【0097】
〔実施例6〕
ポリアミド膜の作製方法のみを変更し、その他の条件は、前記〔実施例4〕と同様の実験を行った。
浸漬温度のみを変更し、前記〔実施例1〕の((1)ポリアミド媒体としてのポリアミド膜のアルカリ性水溶液浸漬)と同様の方法でポリアミド膜12を作製した。
ポリアミド膜の作製条件を下記〔表8〕に示す。
また、抗体単量体回収率の算出結果を、下記〔表9〕に示す。
【0098】
【0099】
〔比較例6〕
ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しないこと以外は前記ポリアミド膜12と同じ条件で作製したポリアミド膜βを用いた。
なお、比較例6においては、水に浸漬した。
ポリアミド膜βに対し、前記〔実施例6〕と同様の操作を行った。
ポリアミド膜の作製条件を前記〔表8〕に示す。
また、抗体単量体回収率を、下記〔表9〕に示す。
【0100】
【0101】
実施例6、及び比較例6の結果を比較すると、ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することにより、抗体単量体回収率が向上したことが分かった。
このことから、本発明は、水酸化ナトリウム水溶液による処理温度に限定されず、所期の効果が得られることが分かった。
【0102】
〔実施例7〕
(1) ポリアミド膜のアルカリ性水溶液浸漬
直径9.0cmの円形であり、膜厚170μm、平均孔径0.2μmの、多孔質ポリアミド媒体としてのポリアミド膜(Whatman(登録商標):7402-009、ジーイーヘルスケア社製、材質:ポリアミド66)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液(pH14)に室温で1時間浸漬した。
次に、純水で5回洗浄し、水酸化ナトリウムを完全に取り除いた。
得られたポリアミド膜をメタノールで置換し、真空乾燥により溶媒を完全に除去して得られた膜をポリアミド膜13とした。
また、浸漬時間を変更し、上記と同じ条件でポリアミド膜14、15を作製した。
ポリアミド膜の作製条件を下記〔表10〕に示す。
【0103】
(2) ポリアミド膜の引張強度評価
前記で得られたポリアミド膜を、2.0cm × 7.0cmの長方形となるように切片を作製した。
作製した切片の引張強度を引張圧縮試験機;TG-1KN(ミネベア社製)を用いて評価した。
この評価において、測定した部屋の環境に関し、温度は22.5℃、湿度は35~40%であり、測定条件に関し、引張速度は10mm/min、初期長は6.0cmであった。
測定結果を下記〔表11〕に示す。なお、各パラメータの数値は6回試験を行った平均値と標準誤差を示す。
ヤング率は試料にかかる応力とひずみのプロットをとった時の弾性領域における傾きを示し、最大応力は試験開始から試料が破断するまでの間で試料にかかった応力の最大値を示す。
【0104】
【0105】
〔比較例7〕
ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しないこと以外は、前記ポリアミド膜13と同じ条件で作製したポリアミド膜γを用いた。
なお、比較例7においては、水に浸漬した。
その他の条件は、前記〔実施例7〕と同様に操作を行った。
ポリアミド膜γの作製条件を前記〔表10〕に示す。
測定結果を下記〔表11〕に示す。
【0106】
【0107】
実施例7、及び比較例7の結果を比較すると、水酸化ナトリウム水溶液への浸漬の有無にかかわらず、ポリアミド膜のヤング率と最大応力が変化しないことが分かった。
すなわち、本発明によれば、実用上十分な機械的強度を維持できることが分かった。
抗体医薬品などタンパク製剤の製造工程において、特にウイルス除去フィルターとそのプレフィルターでは、膜に圧力がかかっても変形しにくく、かつ膜に高い圧力がかかっても破れにくいことが性質として求められる。その観点からアルカリ性水溶液で浸漬しても、ヤング率、最大応力ともに変化せず、タンパク質精製フィルターとして膜強度を維持でき、実用上、好ましいことが分かった。
【0108】
〔実施例8〕
(1) ポリアミド膜のアルカリ性水溶液浸漬
直径2.5cmの円形であり、膜厚160μm、平均孔径0.2μmの、多孔質ポリアミド媒体としてのポリアミド膜(Whatman(登録商標):7402-002、ジーイーヘルスケア社製)を、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液(pH14)に室温で1時間浸漬した。
次に、純水で5回洗浄し、水酸化ナトリウムを完全に取り除いた。
得られたポリアミド膜をメタノールで置換し、真空乾燥により溶媒を完全に除去し、ポリアミド膜16を得た。ポリアミド膜の作製条件を下記〔表12〕に示す。
【0109】
【0110】
(2) ポリアミド膜の重量平均分子量及び数平均分子量の測定
前記(1)で得られたポリアミド膜を試料とし、その分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いて測定した。
ポリアミド膜を約5mg測り採り、そこにトリフルオロ酢酸Na(HFIP)5mmol/Lを5mL添加後、一晩静置した。
前記試料が完全に溶解していることを確認した後、0.45μm(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)のフィルターを用いてろ過したものを測定用試料とした。
測定結果を下記〔表13〕に記す(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)。
<測定条件>
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel GMHHR-H(S)×3本(4.6mmI.D.×15cm)
カラム温度:40℃
溶離液:トリフルオロ酢酸Na 5mmol/L
較正曲線:polymethyl methacrylate(12点)
【0111】
〔比較例8〕
ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しないこと以外は、前記ポリアミド膜16と同じ条件で作製したポリアミド膜δを用いた。
なお、比較例8においては、水に浸漬した。
その他の条件は、前記〔実施例8〕と同様に操作を行った。
ポリアミド膜の作製条件を前記〔表12〕に示す。
測定結果を、下記〔表13〕に示す。
【0112】
【0113】
実施例8及び比較例8の結果を比較すると、ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しても重量平均分子量及び数平均分子量に影響が出ないことが分かった。このことはアルカリ浸漬による加水分解は、ポリアミド膜の内部までは進行していないことを意味する。かつ、実施例1~6、比較例1~6の結果から、抗体のポリアミド膜への吸着挙動がアルカリ性水溶液による処理の有無によって変化することから、ポリアミド膜の表面の性質が変わっていることが示されている。
よって、実施例1~6、実施例8、及び比較例1~6、比較例8の結果から、アルカリ性水溶液による処理はポリアミド膜の表面の性質を変化させるが、内部の性質には影響しないことが分かった。
【0114】
〔実施例9〕
(1) ポリアミド膜のアルカリ性水溶液浸漬
水酸化ナトリウム水溶液の浸漬時間を40時間にする以外は、前記〔実施例8〕の((1) ポリアミド膜のアルカリ性水溶液浸漬)と同じ方法でポリアミド膜17を作製した。
ポリアミド膜17の作製条件を下記〔表14〕に示す。
【0115】
【0116】
(2)ポリアミド膜のXPS測定
前記(1)で得られたポリアミド膜から約2mm四方の小片を切り出し、0.5×10-4mol/dm3Rb2CO3水溶液60mLに2時間浸漬した。
1.5mLサンプル管(脱脂綿の下敷きあり)に移し、10000rpmで10分間遠心分離して、XPS測定を実施した。測定結果を下記〔表15〕に示す。
使用機器:PHI5000 Versa Probe II(アルバック・ファイ社製)
励起源:mono.AlKα 20kV×5mA 100W
分析サイズ:100μm×1.4mm(データ取り込み時、100μmφのmono.AlKαを1.4mm幅で振動)
光電子取出角:45°
取込領域:Rb 3d
Pass Energy:93.9eV
【0117】
〔比較例9〕
ポリアミド膜を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しないこと以外は、前記ポリアミド膜17と同じ条件で作製したポリアミド膜εを用いた。
なお、比較例9においては、水に浸漬した。
その他の条件は、前記〔実施例9〕と同様に操作を行った。
ポリアミド膜εの作製条件を前記〔表14〕に示す。
測定結果を下記〔表15〕に示す。
【0118】
【0119】
実施例9、及び比較例9の結果を比較すると、ポリアミド膜をアルカリ性水溶液により処理することによって、ポリアミド膜の表面のルビジウム濃度が増加していることが分かった。このことから、ポリアミド膜をアルカリ性水溶液で処理することにより、表面のカルボキシル基の量が増加したことが分かった。すなわち、アルカリ性水溶液で処理することにより、ポリアミド膜の表面が親水化され、目的タンパク質の回収量増加につながったことが分かった。
【0120】
〔実施例10〕
(1) ポリアミドシートのアルカリ性水溶液浸漬
66ナイロンシート(型番:107-14301、厚さ:0.3mm、コクゴ社製)を1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(pH14)に室温で13日間浸漬した。
次に、純水で5回洗浄し、水酸化ナトリウムを完全に取り除いた。
得られたシートを0.001mol/Lの塩酸溶液に1時間浸漬させた後、蒸留水で洗浄し、風乾させ、ポリアミドシート(1)を得た。
ポリアミドシート(1)の作製条件を下記〔表16〕に示す。
【0121】
【0122】
(2) ポリアミドシートのFT-IR測定
前記(1)で得られたポリアミドシート(1)を測定用試料とし、当該試料を、下記の条件でフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)測定した。
測定結果を
図3に示す。
<測定条件>
測定装置:ALPHA(Bruker社)
測定法:ATR法(結晶:Ge)
分解能:4cm
-1
積算回数:16scans
【0123】
〔比較例10〕
ポリアミドシートを水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しないこと以外は、前記〔実施例10〕のポリアミドシート(1)と同じ条件でポリアミドシート(2)を作製し、測定用試料として用いた。
なお、比較例10においては、水に浸漬した。
その他の条件は、前記〔実施例10〕と同様に操作を行った。
ポリアミドシート(2)の作製条件を前記〔表16〕に示す。
測定結果を
図3に示す。
図3中、「水酸化ナトリウム」とは、水酸化ナトリウム水溶液により浸漬処理を行ったポリアミドシート(1)の測定結果であることを示し、
図3中、「水」とは、水酸化ナトリウム水溶液により浸漬処理を行わず、水により浸漬処理を行ったポリアミドシート(2)の測定結果であることを示す。
【0124】
実施例10、及び比較例10の結果を比較すると、ポリアミドシートをアルカリ性水溶液で処理することにより、1639cm-1、1544cm-1のピーク強度が減少していた。このことから、ポリアミドシートのアルカリ性水溶液処理により、表面のアミド結合が減少したことが分かった。
実施例8、比較例8の結果と合わせると、アルカリ性水溶液による処理によってポリアミドシートの表面で加水分解が進行していることが分かった。
【0125】
本出願は、2019年4月8日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2019-073514)、2019年11月6日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2019-201725)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のタンパク質含有溶液精製用のポリアミド媒体の製造方法は、抗体凝集体の除去の選択性を向上させた、抗体含有溶液の製造技術の分野において、産業上の利用可能性を有する。