(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板および方向性電磁鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 22/00 20060101AFI20230614BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20230614BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20230614BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20230614BHJP
C23C 10/50 20060101ALI20230614BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C23C22/00 A
C21D8/12 B
C22C38/00 303U
C22C38/60
C23C10/50
H01F1/147 183
(21)【出願番号】P 2021536315
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2019018030
(87)【国際公開番号】W WO2020130643
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165662
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ミン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユン ス
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン-テ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-278827(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117638(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/117637(WO,A2)
【文献】特表2020-511592(JP,A)
【文献】特表2020-511591(JP,A)
【文献】国際公開第02/088403(WO,A1)
【文献】特開平11-158555(JP,A)
【文献】特開平05-287544(JP,A)
【文献】米国特許第05509976(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0083295(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00
C21D 8/12
C22C 38/00
C22C 38/60
C23C 10/50
H01F 1/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地組織、
前記基地組織上に位置するAl浸透層、および
前記Al浸透層上に位置する被膜を含み、
前記Al浸透層はAlを0.5~5重量%含み、
前記被膜はAl-Mg複合物を含
み、
前記被膜はAlを0.1~10重量%、Mgを5~30重量%、Siを0.1~20重量%、Oを10~55重量%およびFeを残部として含み、
前記被膜と前記基地組織の密着性が15~20mmΦであり、鉄損(W17/50)は0.84~0.86であり、磁束密度(B8)が1.93~1.94であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
なお、密着性は、試験片を10~100mm円弧に接して180°曲げるときに被膜剥離がない最小円弧直径で示したものであり、鉄損および磁束密度はsingle sheet測定法を用いて測定し、鉄損(W17/50)は周波数50Hzの磁場を1.7Teslaまで交流により磁化させたとき現れる電力損失を意味し、磁束密度(B8)は電磁鋼板の周囲を巻いた巻線に800A/m大きさの電流量を流したとき、電磁鋼板に流れる磁束密度値を示す。
【請求項2】
前記被膜は厚さが0.1~10μmであることを特徴とする請求項
1に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項3】
前記Al浸透層はα-酸化アルミニウムを含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項4】
鋼板の厚さ方向への断面に対して、前記Al浸透層の面積に対する前記α-酸化アルミニウムの占有面積は0.1~50%であることを特徴とする請求項
3に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項5】
前記Al浸透層は厚さが0.1~10μmであることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項6】
前記基地組織は、シリコン(Si):2.0~7.0重量%、アルミニウム(Al):0.020~0.040重量%、マンガン(Mn):0.01~0.20重量%、リン(P)0.01~0.15重量%、炭素(C)0.01重量%以下(0%を除く)、N:0.005~0.05重量%およびアンチモン(Sb)、スズ(Sn)、またはこれらの組み合わせを0.01~0.15重量%含み、残部はFeおよびその他不可避不純物からなることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項7】
酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムのうち1種以上を100重量部、および
γ-酸化アルミニウムを
10~100重量部を含
み、
前記γ-酸化アルミニウムは平均粒度が3~50nmであることを特徴とする方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項8】
セラミック粉末を1~10重量部さらに含むことを特徴とする請求項
7に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項9】
前記セラミック粉末は、SiO
2、TiO
2およびZrO
2の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項
8に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項10】
溶媒を50~500重量部さらに含むことを特徴とする請求項
7乃至
9のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物。
【請求項11】
鋼スラブを準備する段階、
前記鋼スラブを加熱する段階、
前記加熱した鋼スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、
前記冷延板を1次再結晶焼鈍する段階、
前記1次再結晶焼鈍した鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する段階、および
前記焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階を含み、
前記焼鈍分離剤は酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムのうち1種以上を100重量部および
平均粒度が3~50nmのγ-酸化アルミニウムを
10~100重量部含むことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板および方向性電磁鋼板の製造方法に係り、より具体的には、γ-酸化アルミニウムを添加して密着性および磁性を改善した方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板および方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
方向性電磁鋼板とは鋼板にSi成分を含有したものであって、結晶粒の方位が{110}<001>方向に整列した集合組織を有しており、圧延方向にきわめて優れた磁気的特性を有する電磁鋼板をいう。
最近、高磁束密度級の方向性電磁鋼板の商用化につれて鉄損が少ない材料が求められている。電磁鋼板における鉄損改善は4つの技術的方法から進めることができる。第一に、方向性電磁鋼板の磁化容易軸を含んでいる{110}<001>結晶粒方位を圧延方向に正確に配向する方法、第二に、材料の薄物化、第三に、化学的、物理的方法によりマグネチックドメインを微細化する磁区微細化方法、そして第四に、表面処理およびコーティング等のような化学的方法による表面物性改善または表面張力付与等がある。
【0003】
特に、表面物性改善または表面張力付与について、1次被膜および絶縁被膜を形成する方式が提案されている。1次被膜として、電磁鋼板素材の1次再結晶焼鈍過程で素材表面に生成される酸化ケイ素(SiO2)と焼鈍分離剤として使用される酸化マグネシウム(MgO)の反応からなるフォルステライト(2MgO・SiO2)層が知られている。このように2次再結晶焼鈍中に形成された1次被膜は外観に欠陥がない均一な色相を有するべきであり、機能的としてはコイル状態で板と板の間の融着を防止し、素材と1次被膜間の熱膨張係数差によって素材に引張応力を付与することによって素材の鉄損を改善する効果をもたらす。
【0004】
最近、低鉄損方向性電磁鋼板に対する要求が高まることにつれて、1次被膜の高張力化を追求することになり、実際に高張力絶縁被膜が最終製品の磁気的特性を大きく改善させるように、張力被膜の特性向上のために様々な工程因子の制御技法が試みられている。仮に1次被膜による被膜張力を改善する場合、素材の鉄損改善はもちろん変圧器の効率も改善することができる。
【0005】
これについて、焼鈍分離剤にハロゲン化合物を導入して高張力の被膜を得る方法が提案された。また、カオリナイトが主成分である焼鈍分離剤を適用して熱膨張係数が低いムライト被膜を形成する技術が提案されている。また、希土類元素であるCe、La、Pr、Nd、Sc、Y等を導入して界面接着力を強化する方法が提案されている。しかし、このような方法が提示している焼鈍分離剤添加剤は非常に高価であり、また、実際の生産工程に適用するには作業性が顕著に落ちる問題を有している。特にカオリナイトのような物質は焼鈍分離剤として使用するためにスラリーに製造した際その塗布性が劣位して焼鈍分離剤の役割としては非常に不十分である。
【0006】
また、焼鈍分離剤に酸化アルミニウム(α-酸化アルミニウム)または水酸化アルミニウムを添加した方法が提案された。しかし、酸化アルミニウム(α-酸化アルミニウム)の場合、焼鈍分離剤内への導入後に焼鈍時結晶相変化が生じないため熱膨張係数の減少による鉄損改善を期待できず、水酸化アルミニウムの場合、Al-Mg-Si複合物形成による比較的高張力の1次被膜を期待できるが、複合反応物を生成するためには水酸化アルミニウムの拡散を制御するパウダー粒度を均一に製造するのがかなり難しい短所があり、実際の量産工程に適用するには適しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板および方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。より具体的にはγ-酸化アルミニウムを添加して密着性および磁性を改善した方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物、方向性電磁鋼板および方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板は、基地組織、前記基地組織上に位置するAl浸透層、および前記Al浸透層上に位置する被膜を含む。
前記Al浸透層はAlを0.5~5重量%含み、前記被膜はAl-Mg複合物を含む。
【0009】
前記被膜はAlを0.1~10重量%、Mgを5~30重量%、Siを0.1~20重量%、Oを10~55重量%およびFeを残部として含み得る。
【0010】
前記被膜は厚さが0.1~10μmであり得る。
【0011】
前記Al浸透層はα-酸化アルミニウムを含み得る。
【0012】
鋼板の厚さ方向への断面に対して、前記Al浸透層の面積に対する前記α-酸化アルミニウムの占有面積は0.1~50%であり得る。
【0013】
前記Al浸透層は厚さが0.1~10μmであり得る。
【0014】
前記基地組織は、シリコン(Si):2.0~7.0重量%、アルミニウム(Al):0.020~0.040重量%、マンガン(Mn):0.01~0.20重量%、リン(P)0.01~0.15重量%、炭素(C)0.01重量%以下(0%を除く)、N:0.005~0.05重量%およびアンチモン(Sb)、スズ(Sn)、またはこれらの組み合わせを0.01~0.15重量%含み、残部はFeおよびその他不可避不純物からなる。
【0015】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物は、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムのうち1種以上を100重量部、およびγ-酸化アルミニウムを5~200重量部を含む。
【0016】
前記γ-酸化アルミニウムは平均粒度が3~1000nmであり得る。
【0017】
セラミック粉末を1~10重量部さらに含み得る。
【0018】
前記セラミック粉末はSiO2、TiO2およびZrO2の中から選ばれる1種以上であり得る。
【0019】
溶媒を50~500重量部さらに含み得る。
【0020】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の製造方法は、鋼スラブを準備する段階、前記鋼スラブを加熱する段階、前記加熱した鋼スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、前記冷延板を1次再結晶焼鈍する段階、前記1次再結晶焼鈍した鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する段階、および前記焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階を含む。
前記焼鈍分離剤は酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムのうち1種以上を100重量部およびγ-酸化アルミニウムを5~200重量部含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施例によれば、Alが基地組織内に多量浸透してAl浸透層を形成することによって、被膜と基地組織の密着性および磁性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の概略的な側断面図である。
【
図2】実施例4で製造した方向性電磁鋼板に対するGDS分析結果である。
【
図3】比較例2で製造した方向性電磁鋼板に対するGDS分析結果である。
【
図4】実施例4で製造した方向性電磁鋼板に対する集束イオンビーム-走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)の分析結果である。
【
図5】
図4の1に対するアルミニウム-マグネシウム複合相結晶(Al
2MgO
4,FCC)の分析結果である。
【
図6】
図4の2に対するα-アルミニウム(rhombohedral)結晶の分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1、第2および第3等の用語を多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用するが、これらに限定されない。これらの用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するために使用する。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及され得る。
【0024】
ここで使用する専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用する単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。明細書で使用する「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
ある部分が他の部分「上に」または「の上に」あると言及する場合、これは他の部分のすぐ上にまたは上にあり得、その間に他の部分が介在し得る。対照的にある部分が他の部分の「すぐ上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
また、特記しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0025】
本発明の一実施例で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量だけに残部である鉄(Fe)の代わりに含むことを意味する。
特に定義していないが、使用する技術用語および科学用語を含むすべての用語は本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般に用いられている辞書に定義された用語は関連技術文献と開示する内容に合う意味を有するものと追加解釈され、定義されない限り理想的または公式的過ぎる意味に解釈されない。
【0026】
以下、本発明の実施例について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0027】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物は、酸化マグネシウム(MgO)および水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)のうち1種以上を100重量部およびγ(ガンマ)-酸化アルミニウム5~200重量部を含む。ここで重量部とは各成分に対する相対的に含有される重量を意味する。
【0028】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物は、従来の焼鈍分離剤組成物の成分の一つである酸化マグネシウム(MgO)の他にγ相結晶形態で存在する酸化アルミニウム(γ-Al2O3)を添加することによって、焼鈍分離剤と一部は反応してAl-Mgの複合物を形成し、一部は基地組織の内部に浸透してγ結晶相からα結晶相に相変化を起こして電磁鋼板の表面に生成される被膜の弾性係数を向上させて窮極的に素材の鉄損を減少させる役割をして電力損失が少ない高効率変圧器を製造することができる。
【0029】
方向性電磁鋼板の製造工程で冷延板が1次再結晶のために湿潤雰囲気に制御されている加熱炉を通過するとき鋼中の酸素親和度が最も高いSiが炉内水蒸気から供給される酸素と反応して表面にSiO2が形成される。その後に酸素が鋼中に浸透することによってFe系酸化物が生成される。このように形成されたSiO2は焼鈍分離剤内の酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムと下記反応式1のような化学反応によりフォルステライト(Mg2SiO4)層を形成する。
[反応式1]
2Mg(OH)2+SiO2→Mg2SiO4+2H2O
【0030】
すなわち、1次再結晶焼鈍を経た電磁鋼板は、焼鈍分離剤として酸化マグネシウムスラリーを塗布した後2次再結晶焼鈍、すなわち、高温焼鈍を経るが、このとき熱によって膨張した素材は冷却時に再び収縮しようとすることに対して既に表面に生成されたフォルステライト層は素材の収縮を妨げる。フォルステライト被膜の熱膨張係数が素材に比べて非常に少ないとき圧延方向での残留応力(Residual stress)・σRDは、次のような[数1]で表される。
【数1】
ここで、
△T=2次再結晶焼鈍温度と常温温度の差(℃)、
α
Si-Fe=素材の熱膨張係数、
α
C=1次被膜の熱膨張係数、
Ec=1次被膜弾性(Young’s Modulus)の平均値
δ=素材とコート層の厚さ比、
νRD=圧延方向でのポアソン比(Poisson’s ratio)
を示す。
【0031】
[数1]から1次被膜による引張応力向上係数としては1次被膜の厚さ、または基材と被膜の間の熱膨張係数の差が挙げられ、被膜の厚さを向上させると占積率が悪くなるので、基材とコーティング剤の間の熱膨張係数差を大きくすることによって引張応力を高めることができる。しかし、焼鈍分離剤が酸化マグネシウムに制限されていたので、熱膨張係数差を大きくするか、被膜弾性(Young’s Modulus)値を上げて被膜張力を向上させることに限界がある。
【0032】
本発明の一実施例では純粋なフォルステライトが有する物性的な限界点を克服するために酸化マグネシウム焼鈍分離剤の導入時γ相結晶形態で存在する酸化アルミニウム(γ-Al2O3)を添加することによって、純粋なフォルステライト被膜の他にAl-Mg複合相を形成し、また、一部は基地組織の内部に浸透してγ結晶相からα結晶相に相変化を誘導して純粋なフォルステライト被膜に対する熱膨張係数を低下して弾性係数を向上させる効果をもたらす。
【0033】
前述したように、既存の被膜はMg-Siの反応により形成されるフォルステライトを含み、熱膨張係数は概ね11×10-6/K程度で母材との熱膨張係数差が概ね2.0を超えない。反面、熱膨張係数が低いAl-Mg系複合相としてはスピネル(Spinel)があり、素材との熱膨張係数の差は概ね5.0程度である。さらには酸化アルミニウムが被膜内でMgとの複合相を形成せず純粋にγ結晶相からα結晶相に相変化が起きる場合、被膜弾性(Young’s Modulus)は200GPaである通常のフォルステライトに対して450GPa以上の値を示す。
【0034】
本発明の一実施例では前述した通り、焼鈍分離剤とともに導入されるアルミニウム系添加剤が一部は焼鈍分離剤と反応してAl-Mgの複合物を形成して被膜の熱膨張係数を低下させる役割をし、一部は基地組織の内部に浸透してγ結晶相からα結晶相に相変化を起こして被膜の弾性係数を向上させることによって窮極的に被膜張力を向上させる。
【0035】
以下では本発明の一実施例による焼鈍分離剤組成物について各成分別に具体的に説明する。
本発明の一実施例で焼鈍分離剤組成物は、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムのうち1種以上を100重量部含む。本発明の一実施例で焼鈍分離剤組成物は方向性電磁鋼板基材の表面に容易に塗布するためにスラリー形態で存在し得る。スラリーの溶媒として水を含む場合、酸化マグネシウムは水に容易に溶解し、水酸化マグネシウム形態で存在することもできる。したがって、本発明の一実施例では酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムを一つの成分として取り扱う。酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムのうち1種以上を100重量部を含むことの意味は、酸化マグネシウムを単独で含む場合、酸化マグネシウムを100重量部含み、水酸化マグネシウムを単独で含む場合、水酸化マグネシウムを100重量部含み、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムを同時に含む場合、その合量で100重量部含むことを意味する。
【0036】
酸化マグネシウムの活性化度は400~3000秒であり得る。酸化マグネシウムの活性化度が過度に大きい場合は2次再結晶焼鈍後の表面にスピネル系酸化物(MgO・Al2O3)を残す問題が発生し得る。酸化マグネシウムの活性化度が過度に小さい場合は酸化層と反応せず被膜を形成できないこともある。したがって、前述した範囲に酸化マグネシウムの活性化度を調節することができる。この時、活性化度とはMgO粉末が他成分と化学反応を起こし得る能力を意味する。活性化度はMgOが一定量のクエン酸溶液を完全に中和させるのにかかる時間で測定される。活性化度が高いと中和にかかる時間が短く、活性化度が低いと逆に長いといえる。具体的には30℃温度で1%のフェノールフタレイン試薬を2ml添加した0.4Nのクエン酸溶液100mlに、MgO 2gを投入して攪拌するとき、溶液が白色からピンク色に変わるのにかかった時間で測定される。
【0037】
本発明の一実施例で焼鈍分離剤組成物は、γ-酸化アルミニウム(γ-Al2O3)を5~200重量部含む。γ-酸化アルミニウムは一般的なα-酸化アルミニウムと結晶構造面で差がある。すなわち、γ-酸化アルミニウム(Boemite)の結晶構造面においてrubyまたはスピネル(spinel)構造であることに対し、α-酸化アルミニウムは高温安定構造でcorundum構造であるためAl/O原子の配列および位置に差がある。このような結晶構造差によってα-酸化アルミニウムはγ-酸化アルミニウム(Boemite)に対する密度および熱伝導が高い。またγ-酸化アルミニウム(Boemite)の場合、十分なエネルギが加えられると結晶構造がもう少し安定したα-酸化アルミニウムに相変換する傾向がある。
【0038】
γ-酸化アルミニウムは1次再結晶焼鈍工程後、素材表面に形成されているシリカ酸化層内でSiと反応してSi-Al複合物を形成し、また、焼鈍分離剤内のマグネシウム酸化物およびマグネシウム水酸化物と反応してMg-Al複合物を形成する。また、一部のγ-酸化アルミニウムは基地組織の内部に浸透して2次再結晶焼鈍工程での高温環境でα-酸化アルミニウムに結晶相変化を経る。γ-酸化アルミニウムは約1100℃でγ相から殆どα相に相転移が起きるからである。
【0039】
一方、γ-酸化アルミニウムでないα-酸化アルミニウムを焼鈍分離剤として投入する場合、α-酸化アルミニウムは原子構造が複雑で安定した複合酸化物構造であるため、周辺酸化層または酸化マグネシウムと化学的反応性が殆どなく酸化層の厚さ方向に濃度勾配が発生しない。これによりα-酸化アルミニウム間基地組織の内部に浸透しにくく、被膜内にのみ残存して密着性および張力改善に寄与することが難しい。
【0040】
一方、γ-酸化アルミニウムでない水酸化アルミニウムを焼鈍分離剤として投入する場合、水酸化アルミニウムの拡散を制御するパウダー粒度を均一に製造することがかなり難しい短所があり、これにより密着性および張力の改善が非常に難しい。
【0041】
γ-酸化アルミニウムは酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムのうち1種以上100重量部に対して、5~200重量部含まれる。γ-酸化アルミニウムが過度に少なく含まれると、前述したγ-酸化アルミニウムの添加による効果を十分に得ることが難しい。γ-酸化アルミニウムが過度に多く含まれると、焼鈍分離剤組成物の塗布性が悪くなる。したがって、前述した範囲にγ-酸化アルミニウムを含み得る。より具体的にはγ-酸化アルミニウム10~100重量部含み得る。さらに具体的には水酸化アルミニウムを20~50重量部含み得る。
【0042】
γ-酸化アルミニウムの平均粒度は3~1000nmであり得る。平均粒度が過度に小さい場合は製造が難しく、添加剤として導入時素材表面に形成されているシリカ酸化層に主な拡散反応が起きてフォルステライト被膜内の存在による被膜張力の向上よりは素材内のAl-Si系化合物を作って本発明で意図する目的を達成できない。反面、平均粒度が過度に大きい場合は酸化アルミニウムがフォルステライト被膜内に存在できず殆どの表面にのみ存在するので被膜張力の向上効果が顕著に落ちる。より具体的には3~50nmであり得る。
【0043】
方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤組成物は、セラミック粉末を酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムのうち1種以上100重量部に対して1~10重量部さらに含み得る。セラミック粉末はSiO2、TiO2およびZrO2の中から選ばれる1種以上であり得る。セラミック粉末を適正量さらに含む場合、被膜の絶縁特性がより向上することができる。具体的にはセラミック粉末として、TiO2をさらに含み得る。
【0044】
焼鈍分離剤組成物は固形物の均等な分散および容易な塗布のために溶媒をさらに含み得る。溶媒としては水、アルコール等を使用でき、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムのうち1種以上100重量部に対して50~500重量部含み得る。このように焼鈍分離剤組成物はスラリー形態であり得る。
【0045】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板100は、基地組織10、基地組織10上に位置するAl浸透層11およびAl浸透層11上に位置する被膜20を含む。
図1は本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の概略的な側断面図を示す。
【0046】
前述したように、本発明の一実施例による被膜20は、焼鈍分離剤組成物内に適正量の酸化/水酸化マグネシウムおよびγ-酸化アルミニウムが添加されて2次再結晶焼鈍過程を経てγ-酸化アルミニウムの一部は基地組織10の内部に浸透してα-酸化アルミニウムに結晶相変化を起こし、一部は焼鈍分離剤の主要成分であるMgと反応して被膜20内でスピネルのようなAl-Mg複合物を形成する。γ→α酸化アルミニウムの相変化はAl浸透層11の弾性係数を高め、付加的に生成されるスピネルのようなAl-Mg複合物は被膜20の熱膨張係数を低くして窮極的に被膜張力を向上させる。これについては前述したので、重複する説明は省略する。
【0047】
被膜はAl-Mg複合水の他にもSi-Mg複合物、およびSi-Al複合物をさらに含み得る。
被膜20はAlを0.1~10重量%、Mgを5~30重量%、Siを0.1~20重量%、Oを10~55重量%およびFeを残部として含み得る。Oは、2次再結晶焼鈍過程で浸透することができる。その他の炭素(C)等の不純物成分からなることもできる。被膜20内で合金成分は厚さに応じて濃度勾配を有することができ、前述した含有量は被膜20内の全体厚さに対する平均含有量を意味する。
【0048】
被膜20は厚さが0.1~10μmであり得る。被膜20の厚さが過度に薄いと、被膜張力付与能が低下して鉄損が劣位する問題が生じ得る。被膜20の厚さが過度に厚いと、被膜20の密着性が劣位になり剥離が起き得る。したがって、被膜20の厚さを前述した範囲に調節することができる。より具体的には被膜20の厚さは0.8~6μmであり得る。被膜20はFeが90重量%未満で含まれる部分として、Feを90重量%以上で含むAl浸透層11および基地組織10と区分される。
【0049】
図1に示すように、被膜20および基地組織10の界面から基地組織10の内部にAl浸透層11が形成される。Al浸透層11はAlを0.5~5重量%含む層として、Alをこれより少なく含む基地組織10と区分される。
【0050】
前述したように、本発明の一実施例では焼鈍分離剤組成物にγ-酸化アルミニウムを添加することによって、一部は基地組織10の内部に浸透して2次再結晶焼鈍過程を経てAl浸透層11内でα-酸化アルミニウムに結晶相変化を起こす。このようなγ→α酸化アルミニウムの相変化により従来のフォルステライト被膜に対して弾性係数が高く、これにより従来より優れた被膜張力を示す。より具体的には鋼板の厚さ方向への断面に対して、Al浸透層11の面積に対するα-酸化アルミニウムの占有面積は0.1~50%であり得る。厚さ方向への断面とは厚さ方向(ND方向)を含む断面(ND-RD面、ND-TD面)を意味する。
【0051】
また、焼鈍分離剤組成物に導入されたγ-酸化アルミニウムの一部は被膜20内にスピネルのようなAl-Mg複合物を形成させる。スピネルのようなAl-Mg複合物は熱膨張係数が素材または従来のフォルステライト被膜に対して熱膨張係数が低くまた、基地組織10と被膜20の接着力を向上させて被膜20による張力を向上させる。Al-Mg複合物については前述したので、重複する説明は省略する。
【0052】
本発明の一実施例で方向性電磁鋼板基地組織10の成分とは関係なく焼鈍分離剤組成物および被膜20の効果が現れる。さらに方向性電磁鋼板基地組織10の成分について説明すると、次のとおりである。
方向性電磁鋼板基地組織10は、シリコン(Si):2.0~7.0重量%、アルミニウム(Al):0.020~0.040重量%、マンガン(Mn):0.01~0.20重量%、リン(P)0.01~0.15重量%、炭素(C)0.01重量%以下(0%を除く)、N:0.005~0.05重量%およびアンチモン(Sb)、スズ(Sn)、またはこれらの組み合わせを0.01~0.15重量%含み、残部はFeおよびその他不可避不純物からなる。方向性電磁鋼板基地組織10の各成分に係る説明は一般的に知られている内容と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0053】
本発明の一実施例による方向性電磁鋼板の製造方法は、鋼スラブを準備する段階、鋼スラブを加熱する段階、加熱した鋼スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、冷延板を1次再結晶焼鈍する段階、1次再結晶焼鈍した鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する段階、および焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する段階を含む。その他に、方向性電磁鋼板の製造方法は他の段階をさらに含み得る。
【0054】
先に鋼スラブを準備する。
次に鋼スラブを加熱する。この時、スラブ加熱は1,200℃以下で低温スラブ法で加熱し得る。
次に、加熱した鋼スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。その後、製造された熱延板を熱延焼鈍し得る。
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。冷延板を製造する段階は冷間圧延を1回実施するか、中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を実施し得る。
次に、冷延板を1次再結晶焼鈍する。1次再結晶焼鈍過程で冷延板を同時に脱炭焼鈍および窒化焼鈍する段階を含むか、脱炭焼鈍した後、窒化焼鈍する段階を含み得る。
次に、1次再結晶焼鈍した鋼板の表面上に、焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤については具体的に前述したので、重複する説明は省略する。
【0055】
焼鈍分離剤の塗布量は6~20g/m2であり得る。焼鈍分離剤の塗布量が少なすぎると、被膜形成が円滑に行われない。焼鈍分離剤塗布量が多すぎると、2次再結晶に影響を与える。したがって、焼鈍分離剤の塗布量を前述した範囲に調節することができる。
焼鈍分離剤を塗布した後、乾燥する段階をさらに含み得る。乾燥する温度は300~700℃であり得る。温度が過度に低いと焼鈍分離剤の乾燥が容易でない。温度が過度に高いと、2次再結晶に影響を与える。したがって、焼鈍分離剤の乾燥温度を前述した範囲に調節することができる。
【0056】
次に、焼鈍分離剤が塗布された鋼板を2次再結晶焼鈍する。2次再結晶焼鈍中に焼鈍分離剤成分およびシリカ反応によって最表面にはMg-Siのフォルステライト、α-酸化アルミニウム、そしてスピネルのようなAl-Mg複合物を含む被膜20が形成される。また、基材の内部に酸素およびアルミニウムが浸透してAl浸透層11を形成する。
2次再結晶焼鈍は700~950℃の温度範囲では昇温速度を18~75℃/hrで実施し、950~1200℃の温度範囲では昇温速度を10~15℃/hrで実施し得る。前述した範囲に昇温速度を調節することによって被膜20が円滑に形成される。また、700~1200℃の昇温過程は20~30体積%の窒素および70~80体積%の水素を含む雰囲気で行い、1200℃に到達した後には100体積%の水素を含む雰囲気で行い得る。前述した範囲に雰囲気を調節することによって被膜20が円滑に形成される。
【0057】
以下では実施例により本発明についてより詳細に説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
実施例
重量%でSi:0.04%、Sb:0.03%、P:0.03%および残部としてFeおよび不可避不純物からなる鋼スラブを製造した。
スラブを1150℃で220分間加熱した後2.8mm厚さに熱間圧延して熱延板を製造した。
熱延板を1120℃まで加熱した後920℃で95秒間維持した後、水に急冷して酸洗した後、0.23mm厚さに冷間圧延して冷延板を製造した。
冷延板を875℃で維持された炉(Furnace)の中に投入した後、74体積%の水素と25体積%の窒素および1体積%の乾燥したアンモニアガス混合の雰囲気に180秒間維持して同時脱炭、窒化処理した。
焼鈍分離剤組成物として活性化度500秒の酸化マグネシウム100g、下記表1に整理した量のγ-酸化アルミニウム、チタニウムオキシド2.5gからなるおよび固体相混合物に水250gを混合して製造された焼鈍分離剤準備した。焼鈍分離材10g/m2を塗布し、コイル状に2次再結晶焼鈍した。2次再結晶焼鈍時1次均熱温度は700℃、2次均熱温度は1200℃にし、昇温区間の昇温条件は700~950℃の温度区間では45℃/hr、950~1200℃の温度区間では15℃/hrにした。一方、1200℃での均熱時間は15時間として処理した。2次再結晶焼鈍時の雰囲気は1200℃までは25体積%の窒素および75体積%の水素混合の雰囲気にし、1200℃に到達した後には100体積%水素の雰囲気で維持した後炉冷した。
【0059】
表1は本発明に適用した焼鈍分離剤の成分を整理した。下記表2は表1のように製造された焼鈍分離剤を試験片に塗布した後2次再結晶焼鈍後張力、密着性、鉄損、磁束密度、鉄損改善率を整理した。
また、被膜張力は両面コートした試験片の片面コーティングを除去した後発生する試験片の曲率半径(H)を測定した後、その値を次のような[数2]に代入して求める。
【数2】
Ec=1次被膜弾性(Young’s Modulus)の平均値
νRD=圧延方向でのポアソン比(Poisson’s ratio)
T:コーティング前の厚さ
t:コーティング後の厚さ
I:試験片の長さ
H:曲率半径
【0060】
また、密着性は試験片を10~100mm円弧に接して180°曲げるときに被膜剥離がない最小円弧直径で示したものである。
鉄損および磁束密度はsingle sheet測定法を用いて測定し、鉄損(W17/50)は周波数50Hzの磁場を1.7Teslaまで交流により磁化させたとき現れる電力損失を意味する。磁束密度(B8)は電磁鋼板の周囲を巻いた巻線に800A/m大きさの電流量を流したとき、電磁鋼板に流れる磁束密度値を示す。
鉄損改善率はMgO焼鈍分離剤を用いた比較例を基準として((比較例鉄損-実施例鉄損)/比較例鉄損)×100により計算した。
【0061】
【0062】
【0063】
表1および表2に示すように、γ-酸化アルミニウムを焼鈍分離剤として使用する場合、α-酸化アルミニウムを使用する場合に比べて被膜張力、密着性および磁性が向上することを確認することができる。これはAl浸透層内のAl含有量およびAl2O3の占有面積による影響であることを確認することができる。
【0064】
図2および
図3では実施例4および比較例2で製造した方向性電磁鋼板に対するGDS分析結果である。実施例4ではAl浸透層(1~3μm厚さ範囲)でAlが多数検出されたが、比較例2では被膜下部(3μm以上の範囲)でAlが比較的に少なく検出されることを確認することができる。
図4は実施例4で製造した方向性電磁鋼板に対する集束イオンビーム-走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)の分析結果である。
図5に示すように、
図4の1(被膜)ではAl-Mg複合物であるスピネルが検出された。
図6に示すように、
図4の2(Al浸透層)ではα-酸化アルミニウムが検出された。
【0065】
本発明は実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0066】
10 基地組織
11 Al浸透層
20 被膜
100 方向性電磁鋼板