(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】β-1,6-グルカナーゼを用いたゲンチオオリゴ糖の製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/56 20060101AFI20230614BHJP
C12P 19/00 20060101ALI20230614BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230614BHJP
C12P 19/12 20060101ALI20230614BHJP
C12N 9/24 20060101ALN20230614BHJP
【FI】
C12N15/56
C12P19/00
C12N1/19
C12P19/12
C12N9/24 ZNA
(21)【出願番号】P 2021558013
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 CN2020131823
(87)【国際公開番号】W WO2021258629
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】202010590774.X
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】呉敬
(72)【発明者】
【氏名】夏偉
(72)【発明者】
【氏名】徐星豪
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/103127(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/059404(WO,A1)
【文献】特開2010-148427(JP,A)
【文献】一般講演,日本農芸化学会大会講演要旨集 2009年度(平成21年度)大会[福岡] NIPPON NOGEIKAGAKU KAISHI ,社団法人 日本農芸化学会
【文献】一般講演,日本農芸化学会大会講演要旨集 2008年度(平成20年度)大会[名古屋] NIPPON NOGEIKAGAKU KAISHI ,社団法人 日本農芸化学会
【文献】Endo-1,6-beta-D-glucanase neg1 [Talaromyces pinophilus],Protein,NCBI,Accession KAF3385823.1
【文献】putative beta-glucosidase [Talaromyces pinophilus],Protein,NCBI,Accession KAF3402481.1
【文献】Talaromyces pinophilus,Taxonomy Browser,NCBI,Taxonomy ID: 128442
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-1,6-グルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼの両方を用いてゲンチオオリゴ糖を製造する方法であって、
前記β-1,6-グルカナーゼのアミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示され、前記β-グルコシダーゼのアミノ酸配列はSEQ ID NO.2に示され
、
グルコースを基質とし、
前記ゲンチオオリゴ糖はゲンチオビオース及びゲンチオトリオースを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記β-1,6-グルカナーゼの使用量は400~1600U/gグルコースであり、前記β-グルコシダーゼの使用量は200~600U/gグルコースである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
70~90g/100mLのグルコースを基質と
する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ゲンチオトリオースの収率向上方法であって、
グルコースを基質とし、
アミノ酸配列がSEQ ID NO.1に示されるβ-1,6-グルカナーゼ及びアミノ酸配列がSEQ ID NO.2に示されるβ-グルコシダーゼを用いて基質を触媒
し、
β-グルコシダーゼを単一酵素で用いるゲンチオオリゴ糖を製造する方法と比べ、ゲンチオトリオースの収率が増加する、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
ゲンチオオリゴ糖を製造する方法であって、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-1,6-グルカナーゼを用いたゲンチオオリゴ糖の製造方法及びその使用に関し、遺伝子工学及び発酵工学の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ゲンチオリゴ糖はグルコースがβ-1,6グリコシド結合で連結した機能性オリゴ糖であり、ゲンチオビオースと少量のゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオースを含む。ゲンチオリゴ糖は人体の腸管により消化・吸収されないが、ビフィズス菌と乳酸菌の繁殖と成長に有利で、糖尿病などの人に適しており、その高い保湿性は食品の中の水分を維持するのに有利であり、でんぷんの老化を防ぐことができ、また、ゲンチオリゴ糖は耐熱性が高く、高温処理を必要とする食品に適用でき、その成分の中のゲンチオトリオースは独特且つやわらかでリフレッシュさせる苦味を有し、良い健康維持効果を持っている。現在、ゲンチオリゴ糖はチョコレート、アイスクリーム、コーヒー、調味料、焙煎食品や飲料に広く応用されている。
【0003】
ゲンチオリゴ糖の酵素法による生産に関する研究は、β-グルコシダーゼを用いて、グルコースを基質とし、逆加水分解縮合作用により生成物を形成することに注目しているが、現在報告されているβ-グルコシダーゼはゲンチオリゴ糖の製造プロセスにおいて、主に3つの問題が存在し、1つ目はゲンチオリゴ糖の収率が低いこと、2つ目は生成物中にゲンチオビオースしか含まれておらず、ゲンチオトリオース及びびそれより高い重合度のゲンチオリゴ糖成分が検出されていないこと、3つ目は酵素の使用コストが高いことである。研究資料によると、ゲンチオトリオースとゲンチオテトラオースはゲンチオビオースよりビフィズス菌成長促進活性に優れている。
【0004】
β-1,6-グルカナーゼ(EC 3.2.1.75)はβ-1,6グルカンを加水分解するグリコシド加水分解酵素であり、加水分解最終産物はゲンチオビオースである。しかし、一部の研究により、自然界にはゲンチオビオースに対して微弱な加水分解活性を有するβ-1,6-グルカナーゼが存在し、ゲンチオビオースを基質としてグリコシドを転化してゲンチオトリオースひいてはゲンチオテトラオースを合成できることが示された。Fujimotoらが重合度2~6のゲンチオリゴ糖を基質としてβ-グルカナーゼを試験した結果、重合度の低下に伴って基質に対する酵素の加水分解活性が低下し、六糖に対する加水分解活性が100%であると仮定すると二糖に対しては1%未満であり、二糖に対して一定の加水分解活性を有する酵素のみがゲンチオビオースを基質としてより高重合度のゲンチオリゴ糖を合成できることが示された。このことから、現在の生産や研究において、どのように重合度の高いゲンチオトリオースを製造するかは依然として解決すべき問題である。
【発明の概要】
【0005】
現在存在している問題を解決するために、本発明は、ゲンチオオリゴ糖の転化率、及び生成物中のゲンチオトリオースの割合を向上させ、製品の品質を高める、β-1,6-グルカナーゼを用いたゲンチオオリゴ糖の製造方法及びその使用を提案している。
【0006】
本発明の第1の目的は、β-1,6-グルカナーゼ単一酵素法を用いたゲンチオオリゴ糖の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の一実施形態においては、前記方法はグルコースを基質とする。
【0008】
本発明の一実施形態においては、前記β-1,6-グルカナーゼは、タラロマイセス・セルロリティカスTalaromyces cellulolyticus由来のβ-1,6-グルカナーゼTcBgnであり、そのアミノ酸配列がSEQ ID NO.1に示される。
【0009】
本発明の一実施形態においては、70~90%のグルコースを基質とし、β-1,6-グルカナーゼの酵素添加量は400~1600U/gグルコースであり、pH 3.5~4.5、温度40~50℃で触媒反応を48~96時間、行う。
【0010】
本発明の第2の目的は、β-グルコシダーゼ及びβ-1,6-グルカナーゼの両方を用いてゲンチオオリゴ糖を製造する方法を提供することである。
【0011】
本発明の一実施形態においては、前記方法はグルコースを基質とする。
【0012】
本発明の一実施形態においては、前記β-グルコシダーゼ及びβ-1,6-グルカナーゼは、すべてタラロマイセス・セルロリティカス(Talaromyces cellulolyticus)に由来し、前記β-グルコシダーゼはβ-グルコシダーゼTcBgl3Aであり、前記β-1,6-グルカナーゼはβ-1,6-グルカナーゼTcBgnであり、β-1,6-グルカナーゼTcBgnのアミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示され、β-グルコシダーゼTcBgl3Aのアミノ酸配列はSEQ ID NO.2に示される。
【0013】
本発明の一実施形態においては、70~90%グルコースを基質とし、β-グルコシダーゼの酵素添加量は200~600U/gグルコースであり、また、β-1,6-グルカナーゼの酵素添加量は400~800U/gグルコースであり、pH 4.0~5.0、温度50~60℃で36~60時間、反応させる。
【0014】
本発明の一実施形態においては、前記ゲンチオオリゴ糖はゲンチオビオース及びゲンチオトリオースを含む。
【0015】
本発明の第3の目的は、グルコースを基質とするゲンチオトリオースの収率向上方法を提供することである。
【0016】
本発明の一実施形態においては、アミノ酸配列がSEQ ID NO.1に示されるβ-1,6-グルカナーゼを加える。
【0017】
本発明の一実施形態においては、アミノ酸配列がSEQ ID NO.1に示されるβ-1,6-グルカナーゼ、及びアミノ酸配列がSEQ ID NO.2に示されるβ-グルコシダーゼを加える。
【0018】
本発明の第4の目的は、前記β-1,6-グルカナーゼを発現させる遺伝子組み換え菌を提供することであり、前記遺伝子組み換え菌は、ピキア・パストリスを宿主として、アミノ酸配列がSEQ ID NO.1に示されるβ-1,6-グルカナーゼを発現させる。
【0019】
本発明の第5の目的は、前記遺伝子組み換え菌の構築方法を提供することであり、前記方法は、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO.3であるβ-1,6-グルカナーゼをコードする遺伝子を発現ベクターpPIC9Kに連結して、組換えプラスミドを得て、組換えプラスミドをピキア・パストリスKM71に形質転換して、β-1,6-グルカナーゼを発現させる遺伝子組み換え菌を得ることである。
【0020】
本発明の第6の目的は、β-1,6-グルカナーゼの生産方法を提供することであり、前記方法は、以下の段階を含む
(1)バッチ発酵段階:種液を8%~12%の接種量で発酵槽(ファーメンター)に接種し、温度28~30℃、初期回転数180~220rpm、初期通気量7L/分、溶存酸素28~32%、pH 4.5~5.5に制御し、
(2)流加発酵段階:溶存酸素が80~100%に上昇したら、定速でグリセリンを流加する方式で流加培養を行い、温度28~30℃、溶存酸素28~32%、pH 4.5~5.5に制御する。
【0021】
本発明の一実施形態においては、菌体OD600が150~200であるときに、体積比が1~1.5%のメタノールを添加し、25~30℃で酵素を誘導産生しながら、溶存酸素28~32%、pH 4.5~5.5に制御して、96~144時間、誘導する。
【0022】
本発明は、さらに、前記β-1,6-グルカナーゼ単一酵素法を用いてゲンチオオリゴ糖を製造する方法、又はβ-グルコシダーゼ及びβ-1,6-グルカナーゼの両方を用いてゲンチオオリゴ糖を製造する方法、又はゲンチオトリオースの収率向上方法、又は前記β-1,6-グルカナーゼを発現させる遺伝子組み換え菌、又はβ-1,6-グルカナーゼの生産方法の、ゲンチオオリゴ糖の製造における使用を保護するために開示される。
【0023】
本発明の有利な効果:
現在、グルコースを基質とした酵素法でゲンチオオリゴ糖を製造する場合、最高のレベルは、トリコデルマ・ビリデTrichoderma viride由来のβ-グルコシダーゼは80%グルコースの基質濃度、酵素添加量900U/gグルコースでは、ゲンチオオリゴ糖製造における転化率が16.25%であることが報告されている。
本発明によるβ-1,6-グルカナーゼTcBgnは、グルコースを基質として単一酵素でゲンチオオリゴ糖を製造することができ、酵素添加量400~800U/gグルコースでは、ゲンチオオリゴ糖の転化率は19.21%~19.84%に達し、最適な反応条件下、80%グルコースを基質としてゲンチオオリゴ糖を製造する場合は、転化率は19.96%に達し、現在報告されているグルコースを基質として単一酵素でゲンチオオリゴ糖を製造する場合の最高転化率よりも高く、しかも、三糖の割合が1.35%~1.93%に達する。
本発明は、また、β-1,6-グルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼの二重酵素を組み合わせて配合してゲンチオオリゴ糖を製造する方法を提供しており、上記β-1,6-グルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼの両方を用いて反応系を構築し、最適な反応条件下、80%グルコースを基質とすると、ゲンチオオリゴ糖の転化率は最高では23.83%に達し、且つ製品の成分中、ゲンチオトリオースの含量が明らかに上昇し、三糖の割合が2.97%~4.00%に達し、いままでの報告ではグルコースを基質として製造した場合の最高収率であり、製品の品質が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】単一酵素法又は二重酵素法によるゲンチオオリゴ糖の製造方法の模式図である。
【
図2】組換えβ-グルコシダーゼTcBgl3Aが3.6Lファーメンターで発酵するときの上澄みの酵素活性曲線及びSDS-PAGE電気泳動図である。
【
図3】組換えβ-1,6グルカナーゼTcBgnが3.6Lファーメンターで発酵するときの上澄みの酵素活性曲線及びSDS-PAGE電気泳動図である。
【
図4】組換えβ-グルコシダーゼTcBgl3Aの酵素活性に対する温度及びpHの影響である。
【
図5】組換えβ-1,6グルカナーゼTcBgnの酵素活性に対する温度及びpHの影響である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
培地:
(1)MD固体培地:YNB 13.4g/L、ビオチン4×10-4g/L、グルコース20g/L、寒天20g/L。
(2)YPD培地:ペプトン20g/L、酵母抽出物10g/L、グルコース20g/L、固体培地添加20g/L寒天
(3)BMGY培地:YNB 13.4g/L、グリセリン10g/L、ビオチン4×10-4g/L、0.1mol/Lリン酸カリウム緩衝溶液(pH 6.0)、ペプトン20g/L、酵母粉10g/L
(4)BMMY培地:YNB 13.4g/L、メタノール1%、ビオチン4×10-4g/L、0.1mol/Lリン酸カリウム緩衝溶液(pH 6.0)、ペプトン20g/L、酵母粉10g/L
(5)発酵種培地:酵母粉5.0g/L、トリプトン10.0g/L、グルコース10.0g/L、グリセリン30g/L。
(6)BSM培地:85%リン酸26.7mL/L、CaSO4 0.93g/L、K2SO4 18.2g/L、MgSO4・7H2O 14.9g/L、KOH 4.13g/L、グリセリン30.0g/L、微量元素塩溶液4.32mL/L。
(7)成長段階の流加培地:80%グリセリン、4.92mL/L微量元素液。
(8)誘導段階の流加培地:100%メタノール、12.5mL/L微量元素液。高密度発酵用100%アンモニア水及び50%リン酸でpHを調整。
【0026】
β-グルコシダーゼ酵素活性分析:
(1)酵素活性単位の定義
1mlの酵素液がpNPGを1分加水分解して1μmolのp-ニトロフェノールを生成する酵素活性を1酵素活性単位とする。
(2)酵素活性の測定ステップ
反応系を1mLとして、pH 5.0の酢酸緩衝液960μLに、適切に希釈した粗酵素液20μLを加え、次に20μL 100mmol/LのpNPGを加え、60℃の恒温水浴にて10分間、反応させ、10分後、直ぐ1mol/LのNa2CO3溶液を200μL加えて反応を停止し、氷浴にて5分間、処理し、405nmで光吸収値を測定する。加熱により不活化した酵素液を同様の方法で処理してブランクとする。
β-1,6-グルカナーゼ活性分析:
(1)酵素活性単位の定義
1mlの酵素液がPustulan多糖を1分加水分解して1μmolのグルコースを生成する酵素活性を、1酵素活性単位とする。
(2)酵素活性の測定ステップ
50mMのpH 4.0クエン酸-リン酸水素二ナトリウム緩衝液を用いて40g/LのPustulan多糖溶液を調製し、180μLの緩衝液に200μLのPustulan多糖溶液を加えて均一に混合した後、一定温度の水浴鍋に入れて5分間、予熱した後、一定の希釈倍数の酵素液を20μL加え、30分間、正確に計時した後、600μL DNSを加えて反応を停止し、氷浴で7分間、処理した後、脱イオン水2mLを加え、540nmで吸光値を測定し、加熱により酵素液を不活化させた同様の反応系をブランクとする。
【0027】
実施例1:β-1,6グルカナーゼ及びβ-グルコシダーゼピキア・パストリス遺伝子組み換え菌の構築
(1)β-1,6グルカナーゼピキア・パストリス遺伝子組み換え菌の構築
β-1,6-グルカナーゼTcBgnのコード遺伝子(ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.3に示される)を化学的に合成してピキア・パストリス発現ベクターpPIC9Kに連結し、組換えプラスミドpPIC9K-TcBgnを得てEscherichia coli JM109に形質転換し、酵素消化で検証後、組換えプラスミドpPIC9K-TcBgnをエレクトロポレーションによりピキア・パストリスKM71に組み込み、次に、形質転換液をMD平板に塗布して、MDプレートに単一クローンを成長させ、次に96個の形質転換体を新しいMDプレートに播種して10mLサイズの小さなチューブを用いて酵素活性の高い形質転換体を選別し、β-1,6グルカナーゼピキア・パストリス遺伝子組み換え菌とした。
PCRでβ-1,6-グルカナーゼTcBgn 遺伝子に用いるプライマーを増幅した(下線箇所は酵素消化部位):
F:5’- GGGAATTCATCCACAAACGAGTTACAACTCCG -3’,(SEQ ID NO.5);
R:5’- GGGCGGCCGCTTAGACAGCAGGCAACACCCATGT -3’ ,(SEQ ID NO.6)。
(2)β-グルコシダーゼピキア・パストリス遺伝子組み換え菌の構築
β-グルコシダーゼのコード遺伝子(ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.4に示される)を合成し、構築に用いる酵素消化部位、具体的なステップなどは上記β-1,6グルカナーゼピキア・パストリス遺伝子組み換え菌の構築を参照して、β-グルコシダーゼピキア・パストリス遺伝子組み換え菌を構築した。
【0028】
実施例2:3.6 Lファーメンター発酵によるβ-グルコシダーゼ及びβ-1,6-グルカナーゼの製造
(1)実施例1で製造したβ-1,6グルカナーゼピキア・パストリス遺伝子組み換え菌及びβ-グルコシダーゼピキア・パストリス遺伝子組み換え菌をそれぞれYPD培地に播種し、30℃、200 rpmで種液のOD
600が1.3~1.5となるまで24時間、培養した。
(2)バッチ発酵段階:種液を8%~12%の播種量でファーメンターに播種し、温度28~30℃、初期回転数180~220 rpm、初期通気量 7L/分、溶存酸素28~32%、pH 4.5~5.5に制御した。
(3)流加発酵段階:溶存酸素が80~100%に上昇すると、定速でグリセリンを流加することにより流加培養を行い、温度28~30℃、溶存酸素28~32%、pH 4.5~5.5に制御した。
(4)誘導培養段階:菌体の細胞濃度OD
600が100~200の範囲では、メタノール流加装置を用いてメタノールを流加して酵素を誘導産生し、メタノール濃度を0.5~1.5%(v/v)、温度20~30℃、溶存酸素28~32%、pH 4.5~5.5に制御して、96~144時間、誘導した。発酵液を遠心分離して上澄み液を取り、粗酵素液を得た。
高密度発酵の誘導段階では、初期誘導菌体OD
600、メタノール濃度、誘導温度をそれぞれ最適化させた。
i.初期誘導菌体OD
600の最適化:初期誘導菌体OD
600を100、150、200として、144時間、発酵させて、β-1,6-グルカナーゼの酵素活性を測定した。
ii.メタノール濃度の最適化:初期誘導菌体OD
600が150の条件下、メタノール濃度を0.5%(v/v)、1.0%、1.5%として、144時間、発酵させて、β-1,6-グルカナーゼの酵素活性を測定した。
iii. 誘導温度の最適化:初期誘導菌体OD
600が150、メタノール濃度が1.0%(v/v)では、誘導温度を20、25、30℃として、144時間、発酵させて、プロテアーゼ活性を測定した。
同様の方法に従って、β-グルコシダーゼの発酵条件を最適化させた結果、初期誘導菌体OD
600 150、メタノール濃度1.0%、誘導温度25℃の条件でも、β-グルコシダーゼの酵素産生効果が他の条件よりも優れることが明らかになった。
初期誘導菌体OD
600 150、メタノール濃度1.0%、誘導温度25℃という最適な発酵条件下で測定したところ、β-グルコシダーゼは108時間、発酵させたときに、最高酵素活性が350U/mLであり、β-1,6-グルカナーゼは144時間、発酵させたときに、最高酵素活性が1795U/mLであり、組換えβ-グルコシダーゼのSDS-PAGE電気泳動図は
図2に示され、β-1,6-グルカナーゼのタンパク質のSDS-PAGE電気泳動図は
図3に示される。
【0029】
実施例3:β-グルコシダーゼの酵素学的性質
得られたβ-グルコシダーゼ酵素液について前記酵素活性測定方法で酵素学的にキャラクタリゼーションした。pNPGを基質として、様々な温度で酵素活性を測定した結果、β-グルコシダーゼの最適温度が60℃であることが明らかになり、次に、最適な温度条件下で様々なpH勾配を設定してβ-グルコシダーゼの酵素活性を測定したところ、この酵素の最適pHは4.5であった(
図4)。
【0030】
実施例4:β-1,6-グルカナーゼの酵素学的性質
得られたβ-グルコシダーゼ酵素液について酵素学的にキャラクタリゼーションした。Pustulan多糖を基質として、様々な温度で酵素活性を測定した結果、β-1,6-グルカナーゼの最適な温度が45℃であることが明らかになった。次に、最適な温度条件下で様々なpH勾配を設定してβ-1,6-グルカナーゼの酵素活性を測定したところ、この酵素の最適pHは4.0であった(
図5)。
【0031】
実施例5:β-1,6-グルカナーゼのゲンチオオリゴ糖の製造における使用
80%グルコースを基質として、pH 4.0、45℃の反応条件で72時間、反応させ、様々なβ-1,6-グルカナーゼの酵素添加量を設定してそれによる酵素反応への影響を調べたところ(表4)、ゲンチオオリゴ糖の蓄積量は所定の範囲内で酵素添加量の上昇に伴い増加した。酵素添加量が1600U/gである場合、ゲンチオオリゴ糖の収率は159.7g/L、転化率は19.96%に達し、いままで報告されているグルコースを基質として単一酵素でゲンチオオリゴ糖を製造する場合の最高転化率よりも高かった。
【0032】
実施例6:β-グルコシダーゼ及びβ-1,6-グルカナーゼの両方のゲンチオオリゴ糖の製造における使用
80%グルコースを基質として、pH 4.5、60℃の反応条件下で48時間、反応させ、β-グルコシダーゼの酵素添加量を400U/gとして、様々なβ-1,6-グルカナーゼの酵素添加量を設定してそれによる酵素反応の影響を調べたところ(表5)、ゲンチオオリゴ糖の蓄積量は一定の範囲内で酵素添加量の上昇に伴い増加したが、β-1,6-グルカナーゼの酵素添加量が400U/gグルコースに達すると、酵素添加量の増加によりゲンチオオリゴ糖の収率がかえって低下した。このため、β-1,6-グルカナーゼの酵素添加量を400U/gグルコースとする場合は最適であり、このとき、ゲンチオオリゴ糖の収率は190.6g/Lに達し、転化率は23.83%であり、このうち、ゲンチオビオースは19.83%、ゲンチオトリオースは4.00%であった。二重酵素法でゲンチオオリゴ糖を製造する場合、転化率は単一酵素法のそれよりも明らかに高く、そして製品の成分中、ゲンチオトリオースの含量は明らかに向上し、製品の品質は高まった。
【0033】
好適な実施例をもって本発明を以上のように開示したが、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、各種の変更や修正を行うことができる。よって本発明の権利範囲は、特許請求の範囲により定められるべきである。
【配列表】