(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ガスバーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/58 20060101AFI20230614BHJP
F23D 14/26 20060101ALI20230614BHJP
F23D 14/48 20060101ALI20230614BHJP
F23D 14/74 20060101ALI20230614BHJP
F23D 14/22 20060101ALI20230614BHJP
F23D 14/24 20060101ALI20230614BHJP
F23D 14/02 20060101ALI20230614BHJP
F23C 99/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
F23D14/58 A
F23D14/26
F23D14/48 B
F23D14/74 D
F23D14/22 G
F23D14/24 A
F23D14/02 H
F23C99/00 323
(21)【出願番号】P 2022074375
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱重工パワーインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冠木 豊
(72)【発明者】
【氏名】津村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】上妻 富明
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄三
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】関口 慎一
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-251304(JP,A)
【文献】特開2004-036910(JP,A)
【文献】特開2021-050897(JP,A)
【文献】特開平08-121710(JP,A)
【文献】特開昭58-035308(JP,A)
【文献】実開昭58-137234(JP,U)
【文献】特開平07-269818(JP,A)
【文献】特開平06-101818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/58
F23D 14/26
F23D 14/48
F23D 14/74
F23D 14/22
F23D 14/24
F23D 14/02
F23C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含むガス燃料を燃焼するためのガスバーナであって、
所定の厚みを有して軸線が延びる軸線方向に沿って延在するとともに燃焼用空気が流通する筒状のスリーブであって、一端部に前記燃焼用空気が流出される流出口が形成されるスリーブと、
前記スリーブの内部において前記スリーブの
前記軸線の周囲に互いに間隔をあけて配置された複数のノズルであって、先端面および前記先端面と連なる周壁面を含む先端部を含む複数のノズルと、を備え、
前記先端部は、前記先端面に形成された主孔と、前記周壁面のうちの前記スリーブの径方向の内側の内側周壁面に形成された副孔と、を含み、
前記副孔は、前記ガス燃料を前記径方向の内側に向かって噴出するように構成され、且つ前記副孔の副孔中心軸線と前記ノズルの中心軸とのなす角度のうちの前記流出口側の角度が45度以上75度以下となるように構成される、
ガスバーナ。
【請求項2】
前記主孔は、前記ガス燃料を前記径方向の外側に向かって噴出するように構成され、且つ前記主孔の主孔中心軸線と前記ノズルの中心軸とのなす角度が10度以上30度以下となるように構成される、
請求項1に記載のガスバーナ。
【請求項3】
前記スリーブの前記一端部は、前記スリーブの下流端に向かうにつれて前記径方向の外側に向かって拡がる拡径部を含む、
請求項1又は2に記載のガスバーナ。
【請求項4】
前記複数のノズルは、互いに隣接する第1ノズルと第2ノズルとを含み、
前記第1ノズルの前記副孔は、前記スリーブの周方向のうち前記ガス燃料を前記第2ノズル側に向かって噴出するように構成され、
前記第2ノズルの前記副孔は、前記周方向のうち前記ガス燃料を前記第1ノズル側とは反対側に向かって噴出するように構成され、
前記スリーブの前記軸線が延びる
前記軸線方向に沿って視認した正面視において、前記第1ノズルの前記副孔中心軸線、及び前記第2ノズルの前記副孔中心軸線のそれぞれは前記軸線とずれている、
請求項1又は2に記載のガスバーナ。
【請求項5】
前記スリーブの内部に配置され、火炎を保持するための保炎器をさらに備え、
前記ノズルの前記先端部は、前記保炎器よりも前記径方向の外側に位置する、
請求項1又は2に記載のガスバーナ。
【請求項6】
前記保炎器は、前記副孔よりも前記流出口側とは反対側に位置している
請求項5に記載のガスバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素を含むガス燃料を燃焼するためのガスバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバーナは、一端に開口が形成されている筒状のスリーブと、スリーブの開口の中央部に設けられる保炎器と、該保炎器の周囲に配置される複数のガスノズルと、を含む場合がある。このようなガスバーナは、いわゆるマルチスパッド型のガスバーナとして知られている(特許文献1を参照)。ガスノズルの先端部には、主孔と、スリーブの開口の中央部に向かって開口している副孔と、が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出量削減を目的として、化石燃料から脱却する取り組み(脱炭素)が進められている。この脱炭素のために、ガスバーナの燃料として水素を含むガス燃料が適用されることがある。水素は、メタンやプロパン等の他のガスに比べて燃焼速度は速い、火炎温度は高いなど、他のガスとは大きく異なる特性を有している。このため、マルチスパッド型のガスバーナに水素を含むガス燃料を適用した場合に、副孔から噴出される少量のガス燃料であっても火炎を発生させ、この火炎がスリーブに接触することでスリーブを損傷させてしまう虞がある。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、水素を含むガス燃料を用いるマルチスパッド型のガスバーナであって、スリーブの損傷を抑制することができるガスバーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るガスバーナは、水素を含むガス燃料を燃焼するためのガスバーナであって、燃焼用空気が流通する筒状のスリーブであって、一端部に前記燃焼用空気が流出される流出口が形成されるスリーブと、前記スリーブの内部において前記スリーブの軸線の周囲に互いに間隔をあけて配置された複数のノズルであって、先端面および前記先端面と連なる周壁面を含む先端部を含む複数のノズルと、を備え、前記先端部は、前記先端面に形成された主孔と、前記周壁面のうちの前記スリーブの径方向の内側の内側周壁面に形成された副孔と、を含み、前記副孔は、前記ガス燃料を前記径方向の内側に向かって噴出するように構成され、且つ前記副孔の副孔中心軸線と前記ノズルの中心軸とのなす角度のうちの前記流出口側の角度が45度以上75度以下となるように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示のガスバーナによれば、水素を含むガス燃料を用いるマルチスパッド型のガスバーナにおいて、スリーブの損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るガスバーナの構成を燃焼空間から視たときの概略図(正面図)である。
【
図2】一実施形態に係るガスバーナの構成を概略的に示す図である。
【
図3】一実施形態に係るノズルの先端部の構成を概略的に示す図である。
【
図4】一実施形態に係る副孔について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態によるガスバーナについて、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
本開示に係るガスバーナ1は、水素を含むガス燃料Fを燃焼する。ガスバーナ1は、例えばボイラのような燃焼設備に設けられ、燃焼設備の火炉内(以下、燃焼空間100と記載する)で火炎を形成してガス燃料Fを燃焼させる。
【0011】
本開示において、「水素を含むガス燃料F」には、水素と水素以外の燃料を含むもの(混焼)と、水素のみ(専焼)とがあり、さらに、水素と水素以外の燃料を含むものでも、水素が主たる燃料(水素の体積割合が50%以上)、水素以外の燃料が主たる燃料(水素の体積割合が50%未満)に区分できる。「水素を含むガス燃料F」とは、これらの場合をすべて含む。
【0012】
(構成)
一実施形態に係るガスバーナ1の構成について説明する。
図1は、一実施形態に係るガスバーナ1の構成を燃焼空間100から視たときの概略図(正面図)である。
図2は、一実施形態に係るガスバーナ1の構成を概略的に示す図である。
図2には、スリーブ2の軸線方向Dに沿って切断したときのガスバーナ1の構成が図示されている。一実施形態では、
図1に例示するように、ガスバーナ1は、スリーブ2と、複数のノズル4と、保炎器6と、を含んでおり、いわゆるマルチスパッド型のガスバーナである。
【0013】
スリーブ2は、筒形状を有しており、燃焼用空気が流通する。スリーブ2の燃焼空間100側の一端部8には、燃焼用空気が流出される流出口10が形成される。流出口10は、燃焼空間100に連通している。一実施形態では、
図2に例示するように、スリーブ2は、スリーブ2の軸線O1に沿って延びる円筒形状を有しており、内部に一次空気A1が燃焼用空気として流通する一次空気流路3が形成されている。一次空気A1は、ガス燃料Fに対する空気比が1未満になるように設定されている。空気比とは、ガス燃料Fを完全燃焼させるのに必要な空気量を1としたときの空気量の比率をいう。以下、スリーブ2の軸線O1が延びる軸線方向Dのうち燃焼空間100に向かう方向を軸線方向Dの一方とし、燃焼空間100から離れる方向を軸線方向Dの他方とする。
【0014】
一実施形態では、
図2に例示するように、ガスバーナ1は、軸線方向Dに沿って延びる円筒形状の外側スリーブ12(2次スリーブ)をさらに含んでいる。外側スリーブ12の軸線方向Dの一方側の一端は開口しており、燃焼空間100に連通している。外側スリーブ12の軸線方向Dの一方側の一端面14は、軸線方向Dの一方側に向かうにつれて軸線O1から離間している。外側スリーブ12は、スリーブ2より大径であり、スリーブ2を囲っている。言い換えると、スリーブ2は、外側スリーブ12の内部に配置されている。スリーブ2と外側スリーブ12との間には、二次空気A2が燃焼用空気として流通する二次空気流路13が形成されている。一次空気A1の空気比は、二次空気A2の空気比より小さい。一次空気A1の空気比と二次空気A2の空気比との合計値は1以上であり、ガスバーナ1は、ガス燃料Fを完全燃焼させるように構成されている。
【0015】
図2に例示するように、ノズル4は、筒形状を有しており、スリーブ2の内部において軸線方向Dに沿って延びている。ノズル4の中心軸O2とスリーブ2の軸線O1とは、互いに平行となっている。ノズル4は、ガス燃料Fが燃焼空間100に向かって流通するように構成されており、ノズル4の軸線方向Dの一方側(燃焼空間100側)に位置する先端部16はガス燃料Fを噴出するように構成されている。ノズル4の先端部16の具体的な構成については後述する。
【0016】
図1に例示するように、複数のノズル4は、軸線方向Dに沿って視認した正面視(以下、正面視と記載する)において、スリーブ2の軸線O1の周囲に互いに間隔をあけて配置されている。一実施形態では、
図1に例示するように、複数のノズル4は、第1ノズル4A(4)、第2ノズル4B(4)、第3ノズル4C(4)、第4ノズル4D(4)、第5ノズル4E(4)、及び、第6ノズル4F(4)を含む。第1ノズル4Aと第2ノズル4Bとは互いに隣接している。
【0017】
保炎器6は、一次空気流路3を流れる一次空気A1のうちの一部又は全部に旋回力を付与することで、ガス燃料Fの燃焼によって発生する火炎を保持する。このような保炎器6は、スリーブ2の内部に配置されている。つまりは、保炎器6は、一次空気流路3に配置されている。尚、ガスバーナ1が保炎器6を備えることで保炎性を向上させることができるが、本開示に係るガスバーナ1は、保炎器6を必ずしも備える必要はない。
【0018】
一実施形態では、
図1に例示するように、保炎器6は、複数の翼22を含む羽根式の保炎器(いわゆる、スワラ-と呼ばれる)である。複数の翼22は、スリーブ2の軸線O1を中心とする周方向(以下、単に「周方向」と記載する)に沿って並んで配置されるとともに、スリーブ2の軸線O1を中心とする径方向(以下、単に「径方向」と記載する)の外側に向かって延びている。一実施形態では、
図2に例示するように、ガスバーナ1は、スリーブ2の内部に配置され、軸線方向Dに沿って延びる延在部23をさらにいる。そして、保炎器6は、一次空気流路3の出口付近に位置するように、延在部23によって支持されている。ノズル4の噴出口(先端部16)は、保炎器6よりも径方向の外側に位置する。尚、本開示は、保炎器6をスワラーに限定するものではない。保炎器6は、延在部23の軸線方向Dの一方側の一端部を囲うプレート部を含むお皿式の保炎器(いわゆるディフューザと呼ばれる)であってもよい。
【0019】
ノズル4の先端部16の構成について説明する。
図3は、一実施形態に係るノズル4の先端部16の構成を概略的に示す図である。一実施形態では、ノズル4の先端部16は、ノズル4のうち保炎器6よりも軸線方向Dの一方側(燃焼空間100側)に位置する部分である。軸線方向Dにおいて、ノズル4の先端部16とスリーブ2の一端部8は少なくとも一部が互いに重複している。スリーブ2の内径の大きさをd1とし、ノズル4の先端部16の軸線方向Dの長さをd2とする。一実施形態では、
図3に例示するように、d2<0.15d1を満たす。径方向において、スリーブ2の軸線O1から副孔28までの距離をd3とすると、d3>0.25d1を満たす。
【0020】
図3に例示するように、ノズル4の先端部16は、先端面18及び先端面18と連なる周壁面20を含む。そして、ノズル4の先端部16は、先端面18に形成された主孔24と、周壁面20のうちの径方向の内側の内側周壁面26に形成された副孔28と、を含む。
【0021】
ノズル4の先端面18は、軸線方向Dの一方側に向かうにつれてスリーブ2の軸線O1に近づいている。言い換えると、ノズル4の先端面18は、径方向の外側に向いている。ノズル4の周壁面20は、ノズル4の中心軸O2に沿って延びている。内側周壁面26は、スリーブ2の軸線O1を挟んで反対側に位置するスリーブ2の内壁面30と対向している。内側周壁面26は、正面視において、周壁面20のうちスリーブ2の軸線O1を通過する2つの接線B1、B2によって画定される2つの接点P1、P2の間に位置する径方向の内側の部分である(
図1を参照)。
【0022】
主孔24は、ガス燃料Fを径方向の外側に向かって噴出するように構成されている。具体的には、主孔24は、直線状に延びており、主孔24の中心を通過する主孔中心軸線O3はノズル4の先端面18に対して直交している。このような主孔24は、主孔中心軸線O3がノズル4の先端面18に対して非直交である場合と比較して、長さが短くなる。上述したように、ノズル4の先端面18は径方向の外側に向いているので、ガス燃料Fは主孔24から径方向の外側に向かって噴出される。主孔24から噴出されたガス燃料Fは、一次空気A1や二次空気A2と混合されて、火炎(以下、主火炎X1と記載する。
図2を参照)を形成して燃焼される。
【0023】
主孔24は、主孔中心軸線O3とノズル4の中心軸O2とのなす角度(以下、第1傾斜角θ1と記載する)が10度以上30度以下となるように構成される。一実施形態では、先端面18がノズル4の中心軸O2と直交する方向(径方向)に対して10度以上30度以下で傾斜することで、第1傾斜角θ1は10度以上30度以下を満たしている。
【0024】
副孔28は、ガス燃料Fを径方向の内側に向かって噴出するように構成されている。具体的には、副孔28は、直線状に延びており、副孔28の中心を通過する副孔中心軸線O4はノズル4の内側周壁面26に対して傾斜している。このような副孔28は、副孔中心軸線O4がノズル4の内側周壁面26に対して直交である場合と比較して、長さが長くなる。尚、副孔28は、主孔24より少量のガス燃料Fを噴出するように構成されており、例えば、主孔24より小径である。
【0025】
副孔28は、副孔中心軸線O4とノズル4の中心軸O2とのなす角度のうちの流出口10側の角度(以下、第2傾斜角θ2と記載する)が45度以上75度以下となるように構成される。一実施形態では、副孔28の出口を副孔28の入口よりも軸線方向Dの一方側に位置させて、副孔28そのものを傾斜させることで、第2傾斜角θ2は45度以上75度以下を満たしている。尚、副孔28の入口は、ノズル4の内部に形成されガス燃料Fが流通するガス流路29に連通している。副孔28の出口は、一次空気流路3に連通している。
【0026】
一実施形態では、
図3に例示するように、保炎器6は、副孔28よりも流出口10側とは反対側に位置している。言い換えると、保炎器6は、副孔28よりも軸線方向Dの他方側に位置している。
【0027】
一実施形態では、
図3に例示するように、スリーブ2の一端部8は、スリーブ2の下流端32に向かうにつれて径方向の外側に向かって拡がる拡径部34を含む。拡径部34は流出口10が形成されるリング形状を有しており、軸線方向Dの一方側に向かうにつれてスリーブ2の軸線O1から離間する。拡径部34は、軸線方向Dにおいて、少なくとも一部が主孔24と重複している。幾つかの実施形態では、拡径部34は、第1傾斜角θ1より小さくなるように、スリーブ2の下流端32に向かうにつれて径方向の外側に向かって拡がっている。このような構成によれば、ガス燃料Fを径方向の外側に拡散させつつ、ガス燃料Fと一次空気A1との混合を促進させることができる。
【0028】
図4は、一実施形態に係る副孔28について説明するための図であって、複数のノズル4を軸線方向Dに沿って視認している。一実施形態では、
図4に例示するように、第1ノズル4Aの副孔28A(28)は、周方向のうちガス燃料Fを第2ノズル4B側に向かって噴出するように構成されている。第2ノズル4Bの副孔28B(28)は、周方向のうちガス燃料Fを第1ノズル4A側とは反対側に向かって噴出するように構成されている。以下、
図4の紙面において、半時計回りに回転する方向を周方向D2の一方と記載する。
図4に例示する形態では、第1ノズル4Aの副孔28A及び第2ノズル4Bの副孔28Bの両方が周方向D2の一方側に向かってガス燃料Fを噴出するように構成されている。
【0029】
一実施形態では、
図4に例示するように、正面視において、第1ノズル4Aの副孔中心軸線O4A、及び第2ノズル4Bの副孔中心軸線O4Bのそれぞれは軸線O1とずれている。軸線O1と第1ノズル4Aの中心軸O2Aとを接続する仮想の直線をL1、軸線O1と第2ノズル4Bの中心軸O2Bとを接続する仮想の直線をL2とする。第1ノズル4Aの副孔28Aは、直線L1よりも周方向D2の一方側に位置している。第2ノズル4Bの副孔28Bは、直線L2よりも周方向D2の一方側に位置している。一実施形態では、直線L1と第1ノズル4Aの副孔中心軸線O4Aとによって形成される角度をθ3とすると、30度≦θ3≦50度を満たす。同様に、直線L2と第2ノズル4Bの副孔中心軸線O4Bとによって形成される角度をθ4とすると、30度≦θ4≦50度を満たす。
【0030】
尚、一実施形態では、
図4に例示するように、全てのノズル4が、周方向D2の一方側に向かってガス燃料Fを噴出するように構成されている。また、全てのノズル4の副孔中心軸線O4のそれぞれが、正面視において、軸線O1とずれている。
【0031】
(作用・効果)
一実施形態に係るガスバーナ1の作用・効果について説明する。水素は、メタンやプロパン等の他のガスに比べて燃焼速度は速い、火炎温度は高いなど、他のガスとは大きく異なる特性を有している。このため、副孔28から噴出されるガス燃料Fは少量であるにも関わらず、火炎(以下、副孔火炎X2と記載する。
図2を参照)を発生させる場合がある。従来からのマルチスパッド型のガスバーナは、第2傾斜角θ2が90度となるように設計されている。このため、従来からのガスバーナにガス燃料Fを適用した場合、副孔火炎X2がスリーブ2の内壁面30に接触し、スリーブ2を損傷させてしまう虞がある。
【0032】
一実施形態に係るガスバーナ1によれば、副孔28は、第2傾斜角θ2が45度以上75度以下となるように構成されるので、従来からのガスバーナと比較してスリーブ2の内壁面30への副孔火炎X2の接触を抑制し、スリーブ2の損傷を抑制することができる。また、副孔28から噴出されるガス燃料Fは、燃焼空間100に向かって流れるので、一次空気A1に対して主孔24から噴出されるガス燃料Fが過剰である強還元域に流入する。このため、強還元域におけるガス燃料Fの燃焼が促進され、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制することができる。
【0033】
第2傾斜角θ2が75度を超えると、スリーブ2の内壁面30への副孔火炎X2の接触が発生する虞がある。一方で、第2傾斜角θ2を45度より小さくすると、主火炎X1が保持されなくなる(主火炎X1の保炎性が悪化する)虞がある。一実施形態に係るガスバーナ1によれば、第2傾斜角θ2を45度以上75度以下とすることで、スリーブ2の内壁面30への副孔火炎X2の接触を抑制しつつ、主火炎X1の保炎性を確保することができる。
【0034】
第1傾斜角θ1が30度を超えると、主火炎X1の長炎化による緩慢燃焼を促進できず、火炎温度が高くなり、NOxの量が増える虞がある。一方で、第1傾斜角θ1が10度未満であると主火炎X1の保炎性が悪化する虞がある。一実施形態に係るガスバーナ1によれば、第1傾斜角θ1を10度以上30度以下とすることで、NOxの発生を抑制しつつ、主火炎X1の保炎性を確保することができる。
【0035】
一実施形態に係るガスバーナ1によれば、スリーブ2の一端部8は、軸線方向Dの一方側(燃焼空間100側)に向かうにつれて副孔28から離れる拡径部34を含んでいるので、副孔火炎X2がスリーブ2の内壁面30に接触することをさらに抑制することができる。
【0036】
一実施形態に係るガスバーナ1によれば、保炎器6は、副孔28よりも軸線方向Dの他方側に位置しているので、副孔火炎X2が保炎器6に接触することによる保炎器6の損傷を抑制することができる。
【0037】
流出口10から流出される燃焼用空気は、旋回している場合がある。一実施形態では、一次空気A1は、保炎器6によって旋回力が付与されている。一実施形態に係るガスバーナ1によれば、正面視において、第1ノズル4Aの副孔中心軸線O4A、及び第2ノズル4Bの副孔中心軸線O4Bのそれぞれが軸線O1とずれていることで、第1ノズル4Aの副孔28A及び第2ノズル4Bの副孔28Bのそれぞれは一次空気A1が旋回する方向に沿ってガス燃料Fを噴出するので、効率的に一次空気A1と副孔28から噴出されるガス燃料Fとが混合され、保炎性を向上させることができる。
【0038】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0039】
[1]本開示に係るガスバーナ(1)は、
水素を含むガス燃料(F)を燃焼するためのガスバーナであって、
燃焼用空気(A1、A2)が流通する筒状のスリーブであって、一端部(8)に前記燃焼用空気が流出される流出口(10)が形成されるスリーブ(2)と、
前記スリーブの内部において前記スリーブの軸線(O1)の周囲に互いに間隔をあけて配置された複数のノズルであって、先端面(18)および前記先端面と連なる周壁面(20)を含む先端部(16)を含む複数のノズル(4)と、を備え、
前記先端部は、前記先端面に形成された主孔(24)と、前記周壁面のうちの前記スリーブの径方向の内側の内側周壁面(26)に形成された副孔(28)と、を含み、
前記副孔は、前記ガス燃料を前記径方向の内側に向かって噴出するように構成され、且つ前記副孔の副孔中心軸線(O4)と前記ノズルの中心軸(O2)とのなす角度のうちの前記流出口側の角度(θ2)が45度以上75度以下となるように構成される。
【0040】
従来からのマルチスパッド型のガスバーナは、副孔中心軸線とノズルの中心軸とのなす角度のうちの流出口側の角度が90度となるように設計されている。このような従来からのガスバーナに水素を含むガス燃料を適用した場合、副孔から噴出されたガス燃料の燃焼によって発生した火炎がスリーブに接触し、スリーブを損傷させてしまう虞がある。これに対して、上記[1]に記載の構成によれば、副孔は、副孔中心軸線とノズルの中心軸とのなす角度のうちの流出口側の角度(以下、副孔の傾斜角と記載する)が45度以上75度以下となるように構成されるので、スリーブへの火炎の接触を抑制し、スリーブの損傷を抑制することができる。
【0041】
副孔の傾斜角が75度を超えると、スリーブへの火炎の接触が発生する虞がある。一方で、副孔の傾斜角を45度より小さくすると、火炎が保持されなくなる(保炎性が悪化する)虞がある。上記[1]に記載の構成によれば、副孔の傾斜角を45度以上75度以下とすることで、スリーブへの火炎の接触を抑制しつつ、保炎性を確保することができる。
【0042】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記主孔は、前記ガス燃料を前記径方向の外側に向かって噴出するように構成され、且つ前記主孔の主孔中心軸線(O3)と前記ノズルの中心軸とのなす角度(θ1)が10度以上30度以下となるように構成される。
【0043】
主孔中心軸線とノズルの中心軸とのなす角度(以下、主孔の傾斜角と記載する)が、30度を超えると火炎の長炎化による緩慢燃焼を促進できず、火炎温度が高くなり、NOxの量が増える虞がある。一方で、主孔の傾斜角が10度未満であると保炎性が悪化する虞がある。上記[2]に記載の構成によれば、主孔の傾斜角を10度以上30度以下とすることで、NOxの発生を抑制しつつ、保炎性を確保することができる。
【0044】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記スリーブの前記一端部は、前記スリーブの下流端(32)に向かうにつれて前記径方向の外側に向かって拡がる拡径部(34)を含む。
【0045】
上記[3]に記載の構成によれば、拡径部は下流端に向かうにつれて副孔から離れることになるので、副孔から噴出されたガス燃料の燃焼によって発生した火炎がスリーブに接触することをさらに抑制することができる。
【0046】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記複数のノズルは、互いに隣接する第1ノズル(4A)と第2ノズル(4B)とを含み、
前記第1ノズルの前記副孔(28A)は、前記スリーブの周方向のうち前記ガス燃料を前記第2ノズル側に向かって噴出するように構成され、
前記第2ノズルの前記副孔(28B)は、前記周方向のうち前記ガス燃料を前記第1ノズル側とは反対側に向かって噴出するように構成され、
前記スリーブの前記軸線が延びる軸線方向(D)に沿って視認した正面視において、前記第1ノズルの前記副孔中心軸線、及び前記第2ノズルの前記副孔中心軸線のそれぞれは前記軸線とずれている。
【0047】
流出口から流出される燃焼用空気は、旋回している場合がある。上記[4]に記載の構成によれば、第1ノズルの副孔中心軸線、及び第2ノズルの副孔中心軸線のそれぞれが軸線とずれていることで、第1ノズルの副孔及び第2ノズルの副孔のそれぞれは燃焼用空気が旋回する方向に沿ってガス燃料を噴出するので、保炎性を向上させることができる。
【0048】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記スリーブの内部に配置され、火炎を保持するための保炎器(6)をさらに備え、
前記ノズルの前記先端部は、前記保炎器よりも前記径方向の外側に位置する。
【0049】
上記[5]に記載の構成によれば、保炎性を向上させることができる。
【0050】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記保炎器は、前記副孔よりも前記流出口側とは反対側に位置している。
【0051】
上記[6]に記載の構成によれば、副孔から噴出されたガス燃料の燃焼によって発生した火炎が保炎器に接触することを抑制し、保炎器の損傷を抑制することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ガスバーナ
2 スリーブ
4 ノズル
4A 第1ノズル
4B 第2ノズル
6 保炎器
8 スリーブの一端部
10 流出口
16 ノズルの先端部
18 先端面
20 周壁面
24 主孔
26 内側周壁面
28 副孔
28A 第1ノズルの副孔
28B 第2ノズルの副孔
32 スリーブの下流端
34 拡径部
A1 一次空気(燃焼用空気)
A2 二次空気(燃焼用空気)
D 軸線方向
F ガス燃料
O1 スリーブの軸線
O2 ノズルの中心軸
O3 主孔中心軸線
O4 副孔中心軸線
【要約】
【課題】水素を含むガス燃料を用いるマルチスパッド型のガスバーナであって、スリーブの損傷を抑制することができるガスバーナを提供する。
【解決手段】水素を含むガス燃料を燃焼するためのガスバーナは、燃焼用空気が流通する筒状のスリーブであって、一端部に燃焼用空気が流出される流出口が形成されるスリーブと、スリーブの内部においてスリーブの軸線の周囲に互いに間隔をあけて配置された複数のノズルであって、先端面および先端面と連なる周壁面を含む先端部を含む複数のノズルと、を備え、先端部は、先端面に形成された主孔と、周壁面のうちのスリーブの径方向の内側の内側周壁面に形成された副孔と、を含み、副孔は、ガス燃料を径方向の内側に向かって噴出するように構成され、且つ副孔の副孔中心軸線とノズルの中心軸とのなす角度のうちの流出口側の角度が45度以上75度以下となるように構成される。
【選択図】
図3