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特許7296003非水系インク組成物、記録方法、記録物の製造方法、インクセット、記録物、及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】非水系インク組成物、記録方法、記録物の製造方法、インクセット、記録物、及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/326 20140101AFI20230614BHJP
   C09D 11/36 20140101ALI20230614BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230614BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C09D11/326
C09D11/36
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022189940
(22)【出願日】2022-11-29
(62)【分割の表示】P 2022180976の分割
【原出願日】2022-11-11
【審査請求日】2022-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山崎 史絵
(72)【発明者】
【氏名】吉森 圭士郎
(72)【発明者】
【氏名】折笠 由佳
(72)【発明者】
【氏名】田村 充功
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177551(JP,A)
【文献】特開2009-235324(JP,A)
【文献】特開2008-019409(JP,A)
【文献】特開2009-126989(JP,A)
【文献】特許第7169486(JP,B2)
【文献】特許第7169485(JP,B2)
【文献】特開2010-180332(JP,A)
【文献】特開2019-151772(JP,A)
【文献】特開2005-179679(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101020795(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00
B41M 5/50
B41M 5/52
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21- 2/215
C09D 11/00- 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、界面活性剤と、前記顔料分散剤及び前記界面活性剤とは異なる樹脂と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物であって、
前記顔料と前記顔料分散剤と前記界面活性剤と前記樹脂との合計量が6.5質量%以上13.8質量%以下であり、
前記顔料は、下記式(1)で示される顔料A1、下記式(2)で示される顔料A2、及び下記式(3)で示される顔料A3からなる群より選択される少なくとも1以上を含有し、
前記顔料A1からA3の合計含有量は、1.0質量%以上8.0質量%以下であり、
前記顔料分散剤の含有量は、前記顔料の含有量よりも小さく、
前記樹脂の含有量は、前記顔料の含有量よりも大きく、
前記樹脂の含有量は、前記顔料と前記顔料分散剤と前記界面活性剤との含有量の合計よりも大きい、
非水系インク組成物。但し、活性エネルギー線を照射することにより硬化する活性エネ
ルギー線硬化型インク組成物であるものを除く。
【化1】
(式(1)中、X~X16は、いずれも独立にハロゲン原子または水素原子を表す。M
は2つの水素原子又は配位子を有していてもよい金属原子を表す。)
【化2】
【化3】
【請求項2】
(前記顔料分散剤の含有量)/(前記樹脂の含有量)が0.8未満である、
請求項に記載の非水系インク組成物。
【請求項3】
(前記顔料分散剤の含有量)/(前記顔料の含有量)が0.45未満である、
請求項1又は2に記載の非水系インク組成物。
【請求項4】
前記インク組成物中の水の含有量が、0.5質量%以下である、
請求項1又は2に記載の非水系インク組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の非水系インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する、
記録方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の非水系インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する、
記録物の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の非水系インク組成物を少なくとも備える、
インクセット。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の非水系インク組成物の層が基材の表面に形成された、
記録物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の非水系インク組成物が充填された収容容器が搭載された、
インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系インク組成物、記録方法、記録物の製造方法、インクセット、記録物、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク組成物として、水、又は水と有機溶剤との混合液に色材を溶解又は分散させた水性インク組成物や水を含有しない有機溶剤に色材を溶解又は分散させた非水系インク組成物が広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、銅錯体染料(銅フタロシアニン)を含んでなるインクジェット記録用インク組成物であって、インク組成物中の遊離銅イオン濃度が10ppm以下であるインク組成物が開示されている。特許文献1によれば、このインク組成物は、析出物のない、インクジェット記録用インク組成物に求められる種々の特性を高いことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、C.I.ピグメントブルー60、やC.I.ピグメントバイオレット23等の色材を含むブルーインキ(インク組成物)を含む非水系インクジェットインキセット(インクセット)に関する技術が開示されている。特許文献2によれば、この非水系インクジェットインキセット(インクセット)は、連続印刷時の吐出安定性に優れ、高精細かつ色域の広い印刷物を得ることができる。
【0005】
このようにフタロシアニン構造を有する色材やC.I.ピグメントブルー60、やC.I.ピグメントバイオレット23は、インクジェット法によって吐出されるインク組成物に用いられる色材として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-355665号公報
【文献】特開2022-140467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、フタロシアニン構造を有するフタロシアニン系顔料やC.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントバイオレット23のような所定の構造を有する顔料が知られている。
【0008】
ところが、これらの所定の構造を有する顔料を含む非水系インク組成物は、非水系インク組成物中で顔料が沈殿しやすく、保存安定性やインクジェット吐出安定性が悪くなる場合や、印刷物の耐擦性が不十分な場合があり、非水性インク組成物として要求される特性を満たさなくなることがある、という問題が本発明者らの研究により明らかとなった。
【0009】
本発明は、所定の構造を有する顔料を含む非水系インク組成物であっても保存安定性、及び吐出安定性の高く、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として好適に使用することのできる非水系インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、顔料及び顔料分散剤の含有量の割合、並びに顔料及び樹脂の含有量の割合を所定の範囲にすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0011】
(1)顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、該顔料分散剤とは異なる樹脂と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物であって、前記顔料は、下記式(1)で示される顔料A1、下記式(2)で示される顔料A2、及び下記式(3)で示される顔料A3からなる群より選択される少なくとも1以上を含有し、前記顔料分散剤の含有量は、前記顔料の含有量よりも小さく、前記樹脂の含有量は、前記顔料の含有量よりも大きい非水系インク組成物。
【化1】
(式(1)中、X~X16は、いずれも独立にハロゲン原子または水素原子を表す。Mは2つの水素原子又は配位子を有していてもよい金属原子を表す。)
【化2】
【化3】
【0012】
(2)前記樹脂の含有量は、前記顔料と前記顔料分散剤と前記樹脂とは異なる界面活性剤との含有量の合計よりも大きい、(1)に記載の非水系インク組成物。
【0013】
(3)前記顔料の含有量が1.0質量%以上である、(1)又は(2)に記載の非水系インク組成物。
【0014】
(4)前記樹脂の含有量は、前記顔料分散剤の含有量よりも大きい、(1)から(3)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0015】
(5)(前記顔料分散剤の含有量)/(前記樹脂の含有量)が0.8未満である、(1)から(4)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0016】
(6)(前記顔料分散剤の含有量)/(前記顔料の含有量)が0.45未満である、(1)から(5)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0017】
(7)前記インク組成物中の水の含有量が、0.5質量%以下である、(1)から(6)のいずれかに記載の非水系インク組成物。
【0018】
(8)(1)から(7)のいずれかに記載の非水系インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する、記録方法。
【0019】
(9)(1)から(7)のいずれかに記載の非水系インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する、記録物の製造方法。
【0020】
(10)(1)から(7)のいずれかに記載の非水系インク組成物を少なくとも備える、インクセット。
【0021】
(11)(1)から(7)のいずれかに記載の非水系インク組成物の層が基材の表面に形成された、記録物。
【0022】
(12)(1)から(7)のいずれかに記載の非水系インク組成物が充填された収容容器が搭載された、インクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の非水系インク組成物は、顔料として所定の構造を有する顔料を使用してもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0025】
≪1.非水系インク組成物≫
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、この顔料分散剤とは異なる樹脂と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物である。ここで、「非水系インク組成物」とは、水を主成分とする水性インク組成物とは異なり、水を意図的に含有させずに製造された有機溶剤を含むインク組成物であることを意味する。
【0026】
そしてこの非水系インク組成物に含有される顔料は下記式(1)で示される顔料A1、下記式(2)で示される顔料A2、及び下記式(3)で示される顔料A3からなる群より選択される少なくとも1以上を含有し、非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の含有量は、非水系インク組成物に含まれる顔料の含有量よりも小さく、樹脂(顔料分散剤とは異なる樹脂)の含有量は、前記顔料の含有量よりも大きいことを特徴としている。
【0027】
【化4】
(式(1)中、X~X16は、いずれも独立にハロゲン原子または水素原子を表す。Mは2つの水素原子又は配位子を有していてもよい金属原子を表す。)
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
そして、顔料分散剤の含有量は、顔料の含有量よりも小さい(顔料の含有量未満である)ことにより、得られる印刷物の印字表面の光沢性や塗膜耐性が向上する等のインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。
【0031】
さらに、樹脂の含有量は、顔料の含有量よりも大きい(顔料の含有量超である)ことにより、得られる印刷物の印字表面の光沢性や塗膜耐性が向上する等のインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。
【0032】
本実施の形態に係る非水系インク組成物における水分の含有量は、非水系インク組成物全量中0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量以下%であることがより好ましく、0.1質量%であることがさらに好ましい。所定の構造を有する顔料A1、顔料A2及び顔料A3は疎水性が高いため、この顔料を含む非水系インクジェット組成物は、水との接触により比較的容易に顔料の分散性が悪化しやすく、保存安定性が悪化しやすい。非水系インク組成物中に水分の含有量を低減してできるだけ水分を含まないようにすること(水分を意図的に含まないようにすること)で、保存安定性、や吐出安定性等を向上させることが可能となる。
【0033】
次に、本実施の形態に係る非水系インク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0034】
[顔料]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は顔料を含有する。そして、この顔料は、下記式(1)で示される顔料A1、下記式(2)で示される顔料A2、及び下記式(3)で示される顔料A3からなる群より選択される少なくとも1以上を含有することを特徴としている。
【0035】
【化7】
(式(1)中、X~X16は、いずれも独立にハロゲン原子または水素原子を表す。Mは2つの水素原子又は配位子を有していてもよい金属原子を表す。)
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
このような顔料A1、顔料A2、顔料A3は、耐候性を有しているため、顔料A1、顔料A2、顔料A3を含有する非水系インク組成物により得られる印刷物についても耐候性を向上させることができる。しかも顔料分散剤の含有量が顔料の含有量よりも小さいことにより、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。
【0039】
顔料A1における分子構造中のベンゼン環中の置換基(X~X12)は適宜変更させてもよい。置換基(X~X12)の種類を変更する方法は、顔料を有機溶剤中に分散させ、特定の置換基を導入可能な添加剤により所望の置換基を導入する方法が挙げられる。例えば、特許2993392号に記載された方法により調製することができ、ベンゼン環中の置換基(X~X12)の種類を変更する場合、ベンゼン環の12個のいずれの置換位置であればよく特に限定されず、置換基の数も特に限定されない。
【0040】
顔料A1、顔料A2、顔料A3の体積基準累積50%粒子径(D50)は特に限定されないが、体積基準累積50%粒子径(D50)の下限は、30nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。これにより、顔料A1、顔料A2、顔料A3の耐候性が向上する。体積基準累積50%粒子径(D50)の上限は、150nm以下であることが好ましく、140nm以下であることがより好ましく、130nm以下であることがさらに好ましい。顔料A1、顔料A2、顔料A3の体積基準累積50%粒子径(D50)がこのような範囲であることで、非水系インク組成物の保存安定性を向上させることができる。なお、本明細書において「体積基準累積50%粒子径(D50)(単にD50と表記する場合がある)」とは、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を意味する。なお、顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE等)を用いて測定できる。
【0041】
顔料A1、顔料A2、顔料A3の体積基準累積90%粒子径(D90)(単にD90と表記する場合がある)は、特に限定されないが、体積基準累積90%粒子径(D90)の下限は、50nm以上であることが好ましく、60nm以上であることがより好ましく、70nm以上であることがさらに好ましい。これにより、顔料A1、顔料A2、顔料A3の耐候性が向上する。体積基準累積90%粒子径(D90)の上限は、300nm以下であることが好ましく、290nm以下であることがより好ましく、280nm以下であることがさらに好ましい。顔料A1、顔料A2、顔料A3の体積基準累積90%粒子径(D90)がこのような範囲であることで、非水系インク組成物の保存安定性を向上させることができる。なお、本明細書において「体積基準累積90%粒子径(D90)(単にD90と表記する場合がある)」とは、小径側から計算した累積体積が90%となる粒子径を意味する。なお、顔料の体積基準累積90%粒子径(D90)は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE等)を用いて測定できる。
【0042】
顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量は、特に制限されないが、顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量の下限は、非水系インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1.0質量%以上であることがさらになお好ましく、2.0質量%以上であることが特に好ましく、3.0質量%以上であることが最も好ましい。顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量が非水系インク組成物全量中0.1質量%以上であることで、印字濃度を向上させることが可能となり、他の色の非水系インク組成物と組み合わせることで得られる記録物の色再現域を広くすることができる。また、顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量の上限は、8.0質量%以下であることが好ましく、6.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量が非水系インク組成物全量中8.0質量%以下であることで、相対的に他の添加材の含有量を増やすことが可能となり、顔料A1、顔料A2、顔料A3の分散安定性が向上し、さらに顔料の含有量を増加することによる粘度の上昇を抑制できるのでインクジェットヘッドのノズル目詰まりを抑制することができる。
【0043】
式(1)で示される顔料A1としては、フタロシアニン顔料やハロゲン化フタロシアニン顔料を挙げることができる。ハロゲン化フタロシアニン顔料とは、X~X16のうち、少なくとも1つ以上がハロゲン原子に置き換わったものをいう。すなわち、ハロゲン化フタロシアニン顔料は、フタロシアニン分子1個あたり、ハロゲン原子の合計が、最小で1個結合し、最大でも16個結合した構造の顔料である。なお、ハロゲン基が多いハロゲン化フタロシアニン顔料であるほどより緑色に近い顔料となる。ハロゲン化フタロシアニン顔料に置換されているハロゲン原子の個数は、緑色の色相を呈すために、1個以上が好ましく、8個以上がより好ましく、12個以上がより好ましく、14個以上がより好ましい。
【0044】
顔料A1はそのフタロシアニン骨格の中心Mが2つの水素原子であっても良く、Mが金属原子である金属フタロシアニン顔料であってもよい。Mが金属原子であるとき、金属の種類は特に限定されないが、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、又はアルミニウム(Al)であれば特に望ましい。また、Mが金属原子であるとき、Mは配位子を有していても良い。
【0045】
このようなフタロシアニン顔料(ハロゲン化フタロシアニン顔料や金属フタロシアニン顔料やハロゲン化金属フタロシアニン顔料を含む)としては、具体的には、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63等が挙げられる。フタロシアニン顔料A(ハロゲン化フタロシアニン顔料や金属フタロシアニン顔料やハロゲン化金属フタロシアニン顔料を含む)は、従来公知の方法で製造する方法であってもよく、DIC社製のFASTOGEN BLUE AE-8K(C.I.ピグメントブルー15:6)、DIC社製のFASTGEN GREEN 2YK(C.I.ピグメントグリーン36)、大日精化工業社製のシアニングリーン5370(C.I.ピグメントグリーン36)、DIC社製のFASTGEN GREEN 5740(C.I.ピグメントグリーン7)、DIC社製のFastogen GREEN A110(C.I.ピグメントグリーン58)等の市販品であってもよい。
【0046】
式(2)で示される顔料A2は、インダントロンであり、具体的には、C.I.ピグメントブルー60を挙げることができる。C.I.ピグメントブルー60は、従来公知の方法で製造する方法であってもよく、トーヨーカラー社製のLIONOGEN BLUE 6520(C.I.ピグメントブルー60)、Zeya Chemicals社製コリマックスブルーA3R(C.I.ピグメントブルー60)等の市販品であってもよい。
【0047】
式(3)で示される顔料A3は、C.I.ピグメントバイオレット23を挙げることができる。C.I.ピグメントバイオレット23は、従来公知の方法で製造する方法であってもよく、DIC社製のFASTOGEN SUPER VIOLET RSP(C.I.ピグメントバイオレット23)、DIC社製のFASTOGEN SUPER VIOLET LBP-01、02、04(C.I.ピグメントバイオレット23)、等の市販品であってもよい。
【0048】
なお、本実施の形態に係る非水系インク組成物は、上述の顔料A1、顔料A2、顔料A3以外の色材(顔料・染料を含む)をさらに含有してもよい。そのような色材としては顔料A1、顔料A2、顔料A3と類似する骨格や色相(シアン、グリーン、イエロー)の顔料及び染料が挙げられる。
【0049】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214等の顔料等が挙げられる。
【0050】
顔料(非水系インク組成物に含まれる全ての顔料)の含有量は、特に制限されないが、顔料の含有量の下限は、非水系インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1.0質量%以上であることがさらになお好ましく、2.0質量%以上であることが特に好ましく、3.0質量%以上であることが最も好ましい。顔料の含有量が非水系インク組成物全量中0.1質量%以上であることで、印字濃度を向上させることが可能となり、他の色の非水系インク組成物と組み合わせることで得られる記録物の色再現域を高くすることができる。また、顔料の含有量の上限は、8.0質量%以下であることが好ましく、6.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。顔料の含有量が非水系インク組成物全量中8.0質量%以下であることで、相対的に他の添加材の含有量を増やすことが可能となり、顔料の分散安定性が向上し、さらに顔料の含有量を増加することによる粘度の上昇を抑制できるのでインクジェットヘッドのノズル目詰まりを抑制することができる。
【0051】
本発明においては、顔料の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料の合計含有量)は、顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)と界面活性剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる界面活性剤の合計含有量)との合計よりも大きいことが好ましい。非水系インク組成物中の、顔料の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料の合計含有量)に対する、顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)と界面活性剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる界面活性剤の合計含有量)との合計の比、((顔料分散剤+界面活性剤)/顔料)は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.6未満が更に好ましい。下限値は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。
【0052】
本発明においては、顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量は、顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)と界面活性剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる界面活性剤の合計含有量)との合計よりも大きいことが好ましい。非水系インク組成物中の、顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量に対する、顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)と界面活性剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる界面活性剤の合計含有量)との合計の比、((顔料分散剤+界面活性剤)/(顔料A1+顔料A2+顔料A3))は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.6未満が更に好ましい。下限値は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。
【0053】
また、顔料分散剤とともに、後述する分散助剤(顔料誘導体)を使用してもよい。これにより、顔料の分散安定性を向上させて、非水系インク組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0054】
[顔料分散剤]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は顔料分散剤を含有する。そして、顔料分散剤の含有量は、非水系インク組成物に含有される顔料の含有量よりも小さいことを特徴としている。これにより、非水系インク組成物に含まれる顔料(顔料A1、顔料A2、顔料A3)の凝集を抑制することが可能となり、得られる印刷物の印字表面の光沢性が向上する等のインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。なお、顔料分散剤の含有量は、顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量よりも小さいことが好ましい。
【0055】
非水系インク組成物中の、全顔料の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料の合計含有量)に対する、顔料分散剤の含有量の比(顔料分散剤/全顔料)は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.7未満が更に好ましく、0.6未満が更になお好ましく、0.45未満が特に好ましい。下限値は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。非水系インク組成物中の、顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量に対する、顔料分散剤の含有量の比(顔料分散剤/(顔料A1+顔料A2+顔料A3))は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.7未満が更に好ましく、0.6未満が更になお好ましく、0.45未満が特に好ましい。下限値は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。
【0056】
顔料分散剤としては、非水系インク組成物において用いられている任意の分散剤を用いることができる。顔料分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましい。高分子分散剤としては、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するものである。これらの中でも、高分子分散剤としてポリカプロラクトン系高分子分散剤を含むものを使用することにより、非水系インク組成物に含まれるペリノン系顔料の凝集をより効果的に抑制することが可能となる。
【0057】
ポリアクリル系分散剤では、例えば、Disperbyk-2000、2001、2008、2009、2010、2020、2020N、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2151、2155、2163、2164、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151(ビック・ケミー社製)、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PA4401、4402、PA4403、4570、7411、7477、PX4700、PX4701(BASF社製)、TREPLUS D-1200、D-1410、D-1420、MD-1000(大塚化学社製)、フローレンDOPA-15BHFS、17HF、22、G-700、900、NC-500、GW-1500(共栄社化学(株)製)、などが用いられる。ポリカプロラクトン系分散剤では、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB881(味の素ファインテクノ(株)製)、ヒノアクトKF-1000、T-6000、T-7000、T-8000、T-8000E、T-9050(川研ファインケミカル(株)製)、Solsperse20000、24000、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34000、35200、36000、37500、39000、71000、76400、76500、86000、88000、J180、J200(ルーブリゾール社製)、TEGO Dispers652、655、685、688、690(エボニック・ジャパン社製)などが用いられる。好ましい分散剤としては、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PX4700、PX4701、Solsperse20000、24000、32000、33000、33500、34000、35200、39000、71000、76500、86000、88000、J180、J200、TEGO Dispers655、685、688、690などが用いられる。これらの単独、又はそれらの混合物を用いることができる。
【0058】
特に顔料における分子構造中のベンゼン環中の置換基を酸性~弱塩基性を示すようになる置換基を導入した場合(例えば、顔料Aの分子構造中のベンゼン環中の置換基(X~X12)を酸性~弱塩基性を示すようになる置換基を導入した場合)には、上記の中でも塩基性基を有する顔料分散剤を使用することが好ましい。塩基性基を有する顔料分散剤を使用することで非水系インク組成物中での顔料の凝集を抑制することができる。
【0059】
この中でもアミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲の顔料分散剤を使用することが好ましい。非水系インク組成物中での顔料Aの凝集をさらに効果的に抑制することができる。特に顔料のpHが8以下である場合(好ましくはpHが7以下である場合)には、顔料の表面にアミン価が所定範囲の顔料分散剤がより付着されやすくなるので、非水系インク組成物中での顔料Aの凝集を効果的に抑制することが可能となる。
【0060】
また、これらの顔料分散剤は、重量平均分子量が1,000以上であることが好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。高分子量の顔料分散剤によって顔料Aの凝集を効果的に抑制することが可能となり、非水系インク組成物中での顔料Aの凝集を効果的に抑制することが可能となり、非水系インク組成物の保存安定性が良好なものとすることが可能となる。さらに印刷物の塗膜耐性も良好なものとすることが可能となる。
【0061】
顔料分散剤の含有量は、非水系インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。顔料分散剤の含有量は、非水系インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%以上であることがさらになお好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。
【0062】
[分散助剤]
本実施の形態に係る非水系インク組成物において必要に応じて分散助剤を用いてもよい。分散助剤は色材(顔料)の表面に吸着し、官能基が非水系インク組成物中の有機溶剤や分散剤との親和力を高め、分散安定性を向上させる。分散助剤としては、上記に記載された顔料の誘導体が好ましく、有機顔料残基に酸性基、塩基性基、中性基などの官能基を有する公知の顔料誘導体を用いることができる。
【0063】
[樹脂]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、顔料分散剤とは異なる樹脂を含有する。そして、この樹脂の含有量は、非水系インク組成物に含有される顔料の含有量よりも大きいことを特徴としている。顔料分散剤の含有量が顔料の含有量未満であることに加え、樹脂を顔料の含有量よりも大きい量で含有することにより、非水系インク組成物に含まれる顔料の凝集を抑制することが可能となるとともに、得られる印刷物の印字表面の光沢性や塗膜耐性が向上する等のインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。さらに、樹脂を含有することにより、非水系インク組成物により形成される層の定着性、耐水性並びに延伸性を向上させることができる。なお、樹脂の含有量は、顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量よりも大きいことが好ましい。また、本明細書において「樹脂」とは、主に非水系インク組成物の層(記録物)に耐擦性を付与するバインダー樹脂を意味し、後述する色材(顔料)を含有させる分散剤(高分子分散剤)やシロキサン骨格を有する界面活性剤等の高分子の界面活性剤等とは異なるものである。
【0064】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において、非水系インク組成物中の、顔料の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料の合計含有量)に対する、樹脂の含有量(非水系インク組成物に含まれる樹脂の合計含有量)の比(樹脂/顔料)は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.7未満が更に好ましく、0.6未満が特に好ましい。下限値は0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。本実施の形態に係る非水系インク組成物において、非水系インク組成物中の、顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量に対する、樹脂の含有量の比(樹脂/(顔料A1+顔料A2+顔料A3))は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.7未満が更に好ましく、0.6未満が特に好ましい。下限値は0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。
【0065】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において、樹脂の含有量(非水系インク組成物に含まれる樹脂の合計含有量)は、顔料の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料の合計含有量)と、顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)と、界面活性剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる界面活性剤の合計含有量)と、の合計よりも大きいことが好ましい。樹脂を顔料と顔料分散剤と界面活性剤との含有量よりも大きい量で含有することにより、非水系インク組成物に含まれる顔料の凝集をより効果的に抑制することが可能となるとともに、得られる印刷物の印字表面の光沢性や塗膜耐性が向上する等のインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性をより効果的に満たすことが可能となる。
【0066】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において、樹脂の含有量(非水系インク組成物に含まれる樹脂の合計含有量)は、顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)よりも大きいことが好ましい。樹脂を顔料分散剤の含有量よりも大きい量で含有することにより、得られる印刷物の印字表面の光沢性がさらに向上するとともに、発色性や耐擦過性や耐溶剤性が優れたものとなり、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性をさらに満たすものとなる。
【0067】
具体的には、非水系インク組成物中の、樹脂の含有量(非水系インク組成物に含まれる樹脂の合計含有量)に対する、顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)の比(顔料分散剤/樹脂)は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.7未満が更に好ましく、0.6未満が特に好ましく、0.4未満が最も好ましい。下限値は0.1以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.2以上が更に好ましい。
【0068】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において、樹脂の含有量(非水系インク組成物に含まれる樹脂の合計含有量)は、顔料の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料の合計含有量)と顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)の合計よりも大きいことが好ましい。これにより、得られる印刷物の印字表面の光沢性がさらに向上するとともに、発色性や耐擦過性や耐溶剤性が優れたものとなり、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性をさらに満たすものとなる。非水系インク組成物中の、樹脂の含有量(非水系インク組成物に含まれる樹脂の合計含有量)に対する、顔料の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料の合計含有量)と顔料分散剤との含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)の合計の比((顔料+顔料分散剤)/樹脂)は、1.0未満が好ましく、0.95未満がより好ましく、0.9未満が更に好ましい。下限値は0.1以上であることが好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上が更に好ましい。
【0069】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において、樹脂の含有量(非水系インク組成物に含まれる樹脂の合計含有量)は、顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量と顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)の合計よりも大きいことが好ましい。これにより、得られる印刷物の印字表面の光沢性がさらに向上するとともに、発色性や耐擦過性や耐溶剤性が優れたものとなり、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性をさらに満たすものとなる。非水系インク組成物中の、樹脂の含有量(非水系インク組成物に含まれる樹脂の合計含有量)に対する、顔料A1、顔料A2、顔料A3の合計含有量と顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)との合計の比(((顔料A1+顔料A2+顔料A3)+顔料分散剤)/樹脂)は、1.0未満が好ましく、0.95未満がより好ましく、0.9未満が更に好ましい。下限値は0.1以上であることが好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上が更に好ましい。
【0070】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において、樹脂の含有量(非水系インク組成物に含まれる樹脂の合計含有量)は、顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)と界面活性剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる界面活性剤の合計含有量)との合計よりも大きいことが好ましい。非水系インク組成物中の、樹脂の含有量(非水系インク組成物に含まれる樹脂の合計含有量)に対する、顔料分散剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる顔料分散剤の合計含有量)と界面活性剤の含有量(非水系インク組成物に含まれる界面活性剤の合計含有量)との合計の比、((顔料分散剤+界面活性剤)/樹脂)は、1.0未満が好ましく、0.8未満がより好ましく、0.6未満が更に好ましい。下限値は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が特に好ましい。
【0071】
樹脂の種類としては特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂(スチレン-アクリル系樹脂等のような共重合体も含む)、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シリコーン(シリコン)系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂を挙げることができる。この中でも、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂を含むものが好ましく、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂を含むものがより好ましい。
【0072】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成するモノマーの主成分として含むものであれば特に限定されるものではない。アクリル系樹脂は、1種のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよいし、ラジカル重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよく、特に、本実施の形態に係る非水系インク組成物として好ましいアクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル単独の重合体、或いは、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、及びメタクリル酸ベンジルよりなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物との共重合体である。又、市販の(メタ)アクリル樹脂としては、例えばロームアンドハース社の「パラロイドB99N」「パラロイドB60」「パラロイドB66」「パラロイドB82」等が例示される。
【0073】
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルモノマーからなる単独重合体であっても重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよい。塩化ビニル系樹脂の共重合体としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂が挙げられる。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は、塩化ビニル単量体及び酢酸ビニル単量体の重合物である。塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、例えば、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ヒドロキシアルキルアクリレート共重合体など、及びそれらの混合物が挙げられる。上記の塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、日信化学工業(株)社から「ソルバインC、CL、CNL、CLL、CLL2、C5R、TA2、TA3、A、AL、TA5R、M5」等の商品名で入手して使用することができる。
【0074】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は塩化ビニル単量体及び酢酸ビニル単量体を重合することにより得ることができる。重合する方法は、従来公知の重合方法であればよい。重合する方法は、乳化重合または懸濁重合であることが好ましく、懸濁重合であることがより好ましい。
【0075】
セルロース系樹脂とは、セルロースを原料として生物的または化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する樹脂である。例えば、セルロース系樹脂としては、例えばセルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂などのセルロースアセテートアルキレート樹脂、セルロースアセテート樹脂、ニトロセルロース樹脂及びそれらの混合物が挙げられる。上記セルロース樹脂としてはEASTMAN社の「CAB551-0.01」「CAB551-0.2」、「CAB553-0.4」、「CAB531-1」、「CAB381-0.1」、「CAB381-0.5」、「CAB381-2」、「CAB381-20」「CAP504」、「CAP482-0.5」等の商品名で入手して使用することができる。
【0076】
ポリエステル系樹脂とは、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる構成単位を少なくとも含むものである。ポリエステル系樹脂は、変性されたポリエステル系樹脂を含んでもよい。ポリエステル系樹脂としては、東洋紡社の「VYLON226」、「VYLON270」、「VYLON560」、「VYLON600」、「VYLON630、「VYLON660」、「VYLON885」、「VYLONGK250」、「VYLONGK810」、「VYLON GK890」等やユニチカ社の「elitleUE-3200」「elitleUE-3285」、「elitleUE-3320」、「elitleUE-9800」、「elitleUE-9885」等の商品名で入手して使用することができる。
【0077】
ポリウレタン系樹脂とは、アルコール成分とイソシアネート成分を共重合させて得られる構成単位を少なくとも含むものである。ポリウレタン系樹脂は、ポリエステルやポリエーテルやカプロラクトンにより変性されたポリウレタン系樹脂を含んでもよい。上記のポリウレタン系樹脂としては、荒川化学工業社の「ユリアーノKL-424」、「ユリアーノKL-564」、「ユリアーノKL-593」、「ユリアーノ3262」等やDIC社の「パンデックス372E」、「パンデックス390E」、「パンデックス394E」、「パンデックス304」、「パンデックス305E」、「パンデックスP-870」、「パンデックスP-910」、「パンデックスP-895」、「パンデックス4030」、「パンデックス4110」等の商品名で入手して使用することができる。
【0078】
また、これらのアクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂は、単独で使用してもよいが、2種を混合して使用することが好ましく、アクリル系樹脂と塩化ビニル系樹脂と、を混合した樹脂を使用することがより好ましい。アクリル系樹脂と塩化ビニル系樹脂との含有比率により、非水系インク組成物に要求される発色、乾燥性、塗膜物性、印字適性などの要求を満たすように制御することができる。アクリル系樹脂と塩化ビニル系樹脂と、を混合する場合、混合比は特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。
【0079】
また、これらの樹脂は、重量平均分子量が10,000以上であることが好ましく、15,000以上がより好ましく、20,000以上がさらに好ましく、25,000以上がさらにより好ましい。得られる印刷物の印字表面の耐擦性を良好なものにすることが可能となる。樹脂分子量を絶対分子量|Mw|で表す場合には、20,000以上が好ましく、25,000以上がさらに好ましく30,000以上がさらにより好ましい。得られる印刷物の塗膜耐性が、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが可能となる。
【0080】
本実施の形態に係る非水系インク組成物における樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、非水系インク組成物全量中0.05質量%以上の範囲で含有することが好ましく、0.1質量%以上の範囲で含有することがより好ましく、0.5質量%以上の範囲で含有することがさらに好ましい。これにより、得られる記録物の表面乾燥性をさらに向上させることができる。非水系インク組成物に含有される樹脂は、非水系インク組成物全量中20.0質量%以下の範囲で含有することが好ましく、15.0質量%以下の範囲で含有することがより好ましく、10.0質量%以下の範囲で含有することがさらに好ましい。これにより、インクジェットヘッドのノズル内での詰まりをより効果的に解消し、非水系インク組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0081】
[有機溶剤]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は有機溶剤を含有する。有機溶剤は、本実施の形態に係る非水系インク組成物に含有される各成分を分散又は溶解することができるものである。有機溶剤は、特に限定されないが、顔料を含有する顔料を分散させて、本発明の効果をより効果的に奏する観点から、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤、環状アミド系溶剤、及び環状エステル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有することが好ましい。また、非水系インク組成物の吐出性を良好なものにして、本発明の効果をより効果的に奏する観点から、有機溶剤Bとともに、有機溶剤C(グリコールエーテル系溶剤)を含有することが好ましい。なお、本実施の形態に係る非水系インク組成物において、有機溶剤Bや有機溶剤Cを含有することは必須ではない。
【0082】
以下、有機溶剤Bに含有されるアルキルアミド系溶剤、環状アミド系溶剤、及び環状エステル系溶剤、有機溶剤Cに含有されるグリコールエーテル系溶剤、及びその他の有機溶剤についてそれぞれ説明する。
【0083】
[有機溶剤B]
(1)アルキルアミド系溶剤
アルキルアミド系溶剤とは、アルキル基(C2n+1-)と-C(=O)-N-基(アミド結合)を有する化合物であって、水素若しくはアルキル基と-C(=O)-N-基から構成された化合物からなる溶剤である。アルキルアミド系溶剤は、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。なお、本発明の有機溶剤においてアルキルアミド系溶剤は必須ではなく、アルキルアミド系溶剤を含有しない(アルキルアミド系溶剤を除く)有機溶剤であってもよい。
【0084】
【化10】
(式(4)中、Rは、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立して水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。
【0085】
なお、式(4)中のR及びRは、炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数2以上4以下のアルキル基であることがより好ましい。
【0086】
【化11】
(式(5)中、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R13は、炭素数1以上4以下のアルキレン基を表す。)
【0087】
アルキルアミド系溶剤としては、具体的には、3-メトキシプロパンアミド、3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-ブトキシプロパンアミド等のアルコキシアミド系溶剤や、ホルムアミド、アセトアミド、プロパンアミド、ブタンアミド、イソブチルアミド、ペンタンアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、N-メチルブタンアミド、N-メチルイソブチルアミド、N-メチルペンタンアミド、N-エチルホルムアミド、N-エチルアセトアミド、N-エチルプロパンアミド、N-エチルブタンアミド、N-エチルイソブチルアミド、N-エチルペンタンアミド、N-プロピルホルムアミド、N-プロピルアセトアミド、N-プロピルプロパンアミド、N-プロピルブタンアミド、N-プロピルイソブチルアミド、N-プロピルペンタンアミド、N-イソプロピルホルムアミド、N-イソプロピルアセトアミド、N-イソプロピルプロパンアミド、N-イソプロピルブタンアミド、N-イソプロピルイソブチルアミド、N-イソプロピルペンタンアミド、N-ブチルホルムアミド、N-ブチルアセトアミド、N-ブチルプロパンアミド、N-ブチルブタンアミド、N-ブチルイソブチルアミド、N-ブチルペンタンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルブタンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジメチルペンタンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、N,N-ジエチルブタンアミド、N,N-ジエチルイソブチルアミド、N,N-ジエチルペンタンアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジプロピルプロパンアミド、N,N-ジプロピルブタンアミド、N,N-ジプロピルイソブチルアミド、N,N-ジプロピルペンタンアミド、N,N-ジイソプロピルホルムアミド、N,N-ジイソプロピルアセトアミド、N,N-ジイソプロピルプロパンアミド、N,N-ジイソプロピルブタンアミド、N,N-ジイソプロピルイソブチルアミド、N,N-ジイソプロピルペンタンアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジブチルアセトアミド、N,N-ジブチルプロパンアミド、N,N-ジブチルブタンアミド、N,N-ジブチルイソブチルアミド、N,N-ジブチルペンタンアミド、N-エチル-N-メチルホルムアミド、N-エチル-N-メチルアセトアミド、N-エチル-N-メチルプロパンアミド、N-エチル-N-メチルブタンアミド、N-エチル-N-メチルイソブチルアミド、N-エチル-N-メチルペンタンアミド、N-メチル-N-プロピルホルムアミド、N-メチル-N-プロピルアセトアミド、N-メチル-N-プロピルプロパンアミド、N-メチル-N-プロピルブタンアミド、N-メチル-N-プロピルイソブチルアミド、N-メチル-N-プロピルペンタンアミド、N-エチル-N-プロピルホルムアミド、N-エチル-N-プロピルアセトアミド、N-エチル-N-プロピルプロパンアミド、N-エチル-N-プロピルブタンアミド、N-エチル-N-プロピルイソブチルアミド、N-エチル-N-プロピルペンタンアミド等が挙げられる。この中でも、本発明の効果を特に奏するという観点から、式(4)で表されるアルキルアミド系溶剤であることが好ましく、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、N,N-ジプロピルプロパンアミド、N-エチルホルムアミド、及びN-エチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有することがより好ましく、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有することがさらに好ましい。
【0088】
アルキルアミド系溶剤の含有量は、特に限定されないが、アルキルアミド系溶剤の含有量の下限は、非水系インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、8質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0089】
アルキルアミド系溶剤の含有量の上限は、非水系インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
【0090】
(2)環状アミド系溶剤
環状アミド系溶剤とは、環状構造を有し、その環状構造に-C(=O)-N-基を有する溶剤である。環状アミド系溶剤は、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0091】
【化12】
(式(6)中、Rは、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、Rは、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)
【0092】
【化13】
(式(7)中、R14は炭素数1以上4以下の分岐しても良いアルキル基又は不飽和炭化水素基であり、R15は炭素数1以上4以下のアルキレン基を表す。)
【0093】
【化14】
(式(8)中、R16、R17はそれぞれ独立して、炭素数1以上4以下の分岐しても良いアルキル基でありR18は炭素数2以上4以下のアルキレン基を表す。
【0094】
環状アミド系溶剤としては、具体的には、3-メチル-2-オキサゾリジノン、3-エチル-2-オキサゾリジノン、N-ビニルメチルオキサゾリジノン等のオキサゾリジノン系溶剤、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン系溶剤、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-アセチルカプロラクタム、ε-カプロラクタム、N-ビニルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-エチル-ε-カプロラクタム、N-プロピル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム等が挙げられる。この中でも、本発明の効果を特に奏するという観点から、式(6)で表される環状アミド系溶剤であることが好ましく、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-アセチルカプロラクタム、ε-カプロラクタム、N-ビニルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-エチル-ε-カプロラクタム、N-プロピル-ε-カプロラクタム、及びN-メチル-ε-カプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましく、ε-カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、及びN-ビニルカプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含有することがさらに好ましい。
【0095】
環状アミド系溶剤の含有量は、特に限定されないが、環状アミド系溶剤の含有量の下限は、非水系インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、8質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0096】
環状アミド系溶剤の含有量の上限は、非水系インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
【0097】
(3)環状エステル系溶剤
環状エステル構造を有する溶剤としては、環状炭酸エステル系溶剤、ラクトン系溶剤等が挙げられる。ラクトン系溶剤としては、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0098】
ラクトン系溶剤としては、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【化15】
(式(9)中、Rは、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、Rは、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)なおRは、炭素数4以上5以下のアルキレン基がより好ましく、炭素数5のアルキレン基がより好ましい。
【0099】
環状炭酸エステル系溶剤としては、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0100】
【化16】
(式(10)中、Rは、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、Rは、炭素数1以上3以下のアルキレン基を表す。)
【0101】
ラクトン系溶剤としては、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン等が挙げられる。これらのなかでも、γーブチロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンがより好ましく、ε-カプロラクトンがより好ましい。
【0102】
環状炭酸エステル系溶剤としては、具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等を挙げることができる。
【0103】
環状エステル系溶剤の含有量は、特に限定されないが、環状エステル系溶剤の含有量の下限は、非水系インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、8質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0104】
環状エステル系溶剤の含有量の上限は、非水系インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下あることがさらに好ましい。
【0105】
有機溶剤Bを含有することにより、顔料A1、顔料A2、顔料A3を含有する顔料をより効果的に分散させることが可能となり、非水系インク組成物の保存安定性やクリーニング回復性を向上させることができる。さらに、基材上での表面乾燥性の高い非水系インク組成物となって印字の滲みが少なくなり印字が鮮明となる。
【0106】
有機溶剤Bは、アルキルアミド系溶剤、環状アミド系溶剤、環状エステル系溶剤、のうち少なくとも1種類を含むと十分効果を発揮するものであるが、有機溶剤Bの溶剤の中から2種類以上を混合してもよい。2種類以上混合することによって、保存安定性、部材適正、表面乾燥性、クリーニング回復性のバランスを任意のものとすることができる。2種類以上を混合する場合は、有機溶剤Bの合計含有量の下限は、非水系インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、10質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。有機溶剤Bの合計含有量の上限は、非水系インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましい。
【0107】
[有機溶剤C]
有機溶剤Cは、グリコールの両末端のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルジアルキル系溶剤、又はグリコールの片方のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルモノアルキル系溶剤である。
【0108】
グリコールエーテルジアルキル系溶剤は、下記一般式で表される。
-(-O-R-)-O-R・・・(11)
(式(11)中、Rは炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基であり、Rは炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキレン基であり、Rは、炭素数1以上8以下の分岐してもよいアルキル基である。nは1以上6以下の整数を表す。)
【0109】
なお、Rは、炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキル基であることが好ましい。Rは、炭素数1以上3以下の分岐してもよいアルキレン基であることが好ましい。Rは、水素又は炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキル基であることが好ましい。
【0110】
-(-O-R-O-H・・・(12)
(式(12)中、R、は、炭素数1以上8以下の分岐しても良いアルキル基であり、Rは炭素数1以上4以下の分岐しても良いアルキレン基を表す。nは1以上6以下の整数を表す。)
【0111】
なお、Rは、炭素数1以上4以下の分岐してもよいアルキル基であることが好ましい。Rは、炭素数1以上3以下の分岐してもよいアルキレン基であることが好ましい。
【0112】
式(11)で表されるグリコールエーテルジアルキル系溶剤としては、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等が挙げられる。
【0113】
非水系インク組成物が吐出された基材への浸透性、基材表面でのレベリング性、乾燥性、の観点からは、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等が、好ましいものとして挙げられる。
【0114】
式(12)で表されるグリコールエーテルモノアルキル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-イソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-イソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーエル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0115】
この中でも、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等が、好ましいものとして挙げられる。
【0116】
式(11)で表されるグリコールエーテルジアルキル系溶剤の好ましい含有量は、非水系インク組成物全量中40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。式(11)で表されるグリコールエーテルジアルキル系溶剤の好ましい含有量は、非水系インク組成物全量中95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
【0117】
式(12)で表されるグリコールエーテルモノアルキル系溶剤の好ましい含有量は、非水系インク組成物全量中3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。式(12)で表されるグリコールエーテルモノアルキル系溶剤の好ましい含有量は、非水系インク組成物全量中95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
【0118】
また、これらの有機溶剤Cのうち引火点が異なる2種類以上の有機溶剤Cを組み合わせることが好ましい。引火点の高い(例えば引火点が70℃以上)の有機溶剤Cを含有させることにより、高いクリーニング回復性を有する非水系インク組成物となる。引火点の低い(例えば引火点が70℃未満)の有機溶剤Cを含有させることにより、基材上での表面乾燥性の高い非水系インク組成物となる。引火点が70℃以上の有機溶剤Cと引火点が70℃未満の有機溶剤Cを含有することにより、高いクリーニング回復性と基材上での表面乾燥性とを両立させることが可能となり、本発明の効果を特に効果的に奏する非水系インク組成物となる。
【0119】
[その他の有機溶剤]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、上記の有機溶剤Bや有機溶剤C以外の有機溶剤を含有していてもよい。具体的には、エチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテ-ト、3-メトキシブチルアセテート、2-メチルブチルアセテート、3-メトキシブチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート等のアセテート系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール等の炭素数1~5のアルキルアルコール類、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-n-ブタノール等の1価のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチル-n-ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセチルケトン等のケトン又はケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、イソブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール類;メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル等の酢酸エステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、乳酸エチルヘキシル、乳酸アミル、乳酸イソアミル等の乳酸エステル類、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチルなどの二塩基酸エステル類、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ノナン、イソノナン、ドデカン、イソドデカン等の飽和炭水素類、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等の不飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等の環状飽和炭化水素類、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7-シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の環状不飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ホルミルモルホリンなどのモルホリン類、テルペン系溶剤などの有機溶剤のうち、上記の有機溶剤B,有機溶剤Cに該当しない有機溶剤を挙げることができる。組み合わせる樹脂や分散剤などに応じて、適切なHLB値の溶剤を選択することが好ましい。
【0120】
その他の有機溶剤の含有量は、特に制限はされないが、その他の有機溶剤の含有量の下限は、非水系インク組成物全量中10質量%以上の範囲であることが好ましく、20質量%以上の範囲であることがより好ましく、30質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。その他の有機溶剤の含有量の上限は、非水系インク組成物全量中90質量%以下の範囲であることが好ましく、85質量%以下の範囲であることがより好ましく、80質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0121】
[界面活性剤]
本実施の形態に係る非水系インク組成物においては、ノズル部やチューブ内等の機器内での非水系インク組成物の揮発抑制、固化防止、又、固化した際の再溶解性を目的として、又、表面張力を低下させ記録媒体(基材)との濡れ性を向上させる目的で、また、インク組成物の基材上でのにじみ抑制を目的として、また、塗膜の耐擦性向上を目的として、また、記録物の更なる光沢性の向上を目的として、界面活性剤を添加してもよい。なお、界面活性剤には、表面調整剤、レベリング剤、消泡剤等と呼ばれるものも含まれる。
【0122】
この中でも界面活性剤は、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有することが好ましい。顔料A、顔料B、顔料Cは非水系インク組成物中において凝集しやすく、体積平均粒子径が大きくなる傾向がある。すると、得られる記録物の光沢性が低下することがある。本実施の形態に係る非水系インク組成物においてシロキサン骨格を有する界面活性剤を含有することで、顔料Aを含有していても得られる記録物の光沢性を向上させることができる。さらに、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有した非水系インクであれば、印字の滲みを適宜調整することができ、且つ、耐擦性が向上した記録物を得ることができる。
【0123】
シロキサン骨格を有する界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-313、315N、322、326、331、347、348、BYK-UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)等を使用することができる。
【0124】
また、本実施の形態に係る非水系インク組成物には、シロキサン骨格を有する界面活性剤とは異なる界面活性剤を含有してもよい。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるノニオンP-208、P-210、P-213、E-202S、E-205S、E-215、K-204、K-220、S-207、S-215、A-10R、A-13P、NC-203、NC-207(日本油脂(株)製)、エマルゲン106、108、707、709、A-90、A-60(花王(株)製)、フローレンG-70、D-90、TG-740W(共栄社化学(株)製)、ポエムJ-0081HV(理研ビタミン(株)製)、脂肪族リン酸エステル類としては、アデカトールNP-620、NP-650、NP-660、NP-675、NP-683、NP-686、アデカコールCS-141E、TS-230E((株)アデカ製)等、ソルゲン30V、40、TW-20、TW-80、ノイゲンCX-100(第一工業製薬(株)製)等、フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-340(ビックケミー・ジャパン社製)等、アセチレングリコール系界面活性剤としては、具体例として、サーフィノール(登録商標)82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィン(登録商標)STG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)等が例示される。界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができる。
【0125】
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、シロキサン骨格を有する界面活性剤とともにこれらの界面活性剤を含有してもよく、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有せずに、これらの界面活性剤を含有してもよい。
【0126】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において、界面活性剤の含有量としては、特に限定されないが、界面活性剤の含有量の下限としては、0.01質量%以上の範囲であることが好ましく、0.05質量%以上の範囲であることがより好ましく、0.1質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量の下限としては、5.0質量%以下の範囲であることが好ましく、4.0質量%以下の範囲であることがより好ましく、3.0質量%以下の範囲であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが更により好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲であると、印刷物のインク塗膜の耐擦性や耐溶剤性、耐水性等の、塗膜物性が優れたものとすることが可能となる。
【0127】
[その他の成分]
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、エポキシ化物等、多価カルボン酸、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤等の公知の添加剤を任意成分として含んでもよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられる。具体的には、BHA(2,3-ブチル-4-オキシアニソール)、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)等が例示される。また、紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系化合物、又はベンゾトリアゾール系化合物を用いることができる。また、エポキシ化物の具体例としては、エポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、およびエポキシヘキサヒドロフタレートなどが例示され、具体的にはアデカサイザーO-130P、アデカサイザーO-180A(ADEKA社製)等が例示される。多価カルボン酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸などが例示される。
【0128】
(非水系インク組成物の粘度及び表面張力)
本実施の形態に係る非水系インク組成物の粘度は、とくに限定されず、その吐出形式によって適宜選択されることが好ましい。例えば、インクジェット吐出性、吐出安定性の点から、25℃での粘度が15.0mPa・s以下であることが好ましく、13.0mPa・sであることがより好ましく、10.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。又、本実施の形態に係る非水系インク組成物の粘度は、1.0mPa・s以上であることが好ましく、2.0mPa・s以上であることがより好ましく、3.0mPa・s以上であることがさらに好ましい。
【0129】
また、本実施の形態に係る非水系インク組成物の表面張力は、とくに限定されず、その吐出形式によって適宜選択されることが好ましい。例えば、インクジェットの吐出性、吐出安定性、基材へのレベリング性の点から、25℃での表面張力が20mN/m以上であることが好ましく、22mN/m以上であることがより好ましく、24mN/m以上あることがさらに好ましい。又、本実施の形態に係る非水系インク組成物の表面張力は、40mN/m以下であることが好ましく、37mN/m以下であることがより好ましく、35mN/m以下であることがさらに好ましい。
【0130】
≪2.非水系インク組成物の製造方法≫
本実施の形態に係る非水系インク組成物の製造方法は、有機溶剤と、顔料A1、顔料A2、顔料A3を含有する顔料と他成分(例えば顔料分散剤、樹脂等)をペイントシェイカーを用いて混合することにより製造することができる。この際、ジルコニアビーズにて各成分を分散させてもよい。また、得られた非水系インク組成物は、必要に応じて脱気処理するなどして所望の溶存酸素量や溶存窒素量に調整してもよい。
【0131】
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、水を意図的に含有させない非水系インク組成物であるが、原料由来および製造過程で水分が混入する場合がある。非水系インク組成物中における水分含有量は、できるだけ少ない方が望ましい。
【0132】
この際、有機溶剤に含まれる水分を予め除去しておくことが好ましい。有機溶剤に含まれる水分を予め除去しておくことで、非水系組成物に含まれる水分量を軽減することができる。有機溶剤に含まれる水分を除去する方法としては、例えば窒素等の不活性ガス雰囲気下で乾燥させた不活性ガス(例えば、窒素ガス)を所定時間吹き付ける方法や、有機溶剤を蒸留精製する方法や、水を選択的に透過する半透過膜に有機溶剤を透過させる方法や、水を吸着する水吸着剤に有機溶剤に混入した水を選択的に吸着させる方法等を挙げることができる。
【0133】
≪3.非水系インク組成物を用いた記録方法≫
本実施の形態に係る記録方法は、上記の非水系インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する記録方法である。本発明の非水系インク組成物は、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物に要求される特性を満たすものであり、本実施の形態に係る記録方法においても、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物に要求される特性を満たすものである。
【0134】
インクジェット法により吐出する方式は、圧電素子を用いたピエゾ方式であっても、発熱体を用いたサーマル方式であってもよく、特に限定されない。
【0135】
≪4.記録物の製造方法≫
上記の非水系インク組成物を用いた記録方法は、記録物の製造方法と定義することもできる。本実施の形態に係る記録物の製造方法においてもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物に要求される特性を満たすものである。
【0136】
≪5.インクセット≫
本実施の形態に係るインクセットは、上記の非水系インク組成物を含むインクセットである。上記の非水系インク組成物は、顔料及び顔料分散剤の含有量の割合、並びに顔料及び樹脂の含有量の割合を所定の範囲とすることで、顔料として所定の構造を有する顔料を使用してもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすものであるので、本実施の形態に係るインクセットにおいても同様の効果が得られる。
【0137】
例えば、上記の非水系インク組成物がグリーンインクやブルーインクである場合には、従来公知のイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクと、を組み合わせることで、本発明の効果を奏することに加えて、色再現性を拡げることが可能となる。また、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクとともに、ライトマゼンタ、ライトシアン、ライトブラック、オレンジ、レッド、ホワイト等を組み合わせてもよい。
【0138】
また、上記の非水系インク組成物と、メタリックインク、パールインクなどの光輝性インクを含むインクセットとしてもよい。また、上記の非水系インク組成物と、クリアインク、プレコーティングインク、オーバープリントインクなどを含むインクセットとしてもよい。
【0139】
≪6.記録物≫
本実施の形態に係る記録物は、基材と、基材上に形成された上記の非水系インク組成物の層と、を備える。上記の非水系インク組成物は、顔料及び顔料分散剤の含有量の割合、並びに顔料及び樹脂の含有量の割合を所定の範囲とすることで、顔料として所定の構造を有する顔料を使用してもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすものであるので、本実施の形態に係る記録物においても画像再現性の高い記録物となる。
【0140】
以下、本実施の形態に係る記録物を構成する各層について説明する。
【0141】
[媒体(記録媒体)]
本実施の形態に係る記録方法に使用することのできる基材(記録媒体)としては、特に限定はされず、樹脂基材、金属板ガラスなどの非吸収性基材であっても、紙や布帛などの吸収性基材であっても、受容層を備える基材のような表面塗工が施された基材であってもよく、種々の基材を使用することができる。
【0142】
非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基材や、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等を挙げることができる。
【0143】
吸収性基材としては、更紙、中質紙、上質紙、合成紙、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等を挙げることができる。
【0144】
表面塗工が施された基材としてはコート紙、アート紙、キャスト紙、軽量コート紙、微塗工紙等を挙げることができる。
【0145】
そのなかでも、特に、水を意図的に含有させない非水系インク組成物を使用する場合、表面が主として樹脂からなるものが好ましい。樹脂としては、ポリ塩化ビニル系重合体やアクリル、PET、ポリカーボネート、PE、PP等が挙げられる。また、記録物の記録表面に対してフィルムを張り合わせことを前提とするような樹脂基材(いわゆるラミネート用の樹脂基材)に用いられてもよい。特に、表面が硬質又は軟質ポリ塩化ビニル系重合体からなる基材(記録媒体)が好ましい。表面がポリ塩化ビニル重合体からなる基材(記録媒体)としては、ポリ塩化ビニル基材(フィルム又はシート)等が例示できる。
【0146】
[非水系インク組成物の層]
非水系インク組成物の層とは、上記の非水系インク組成物に含まれる溶媒が揮発することにより形成される層であり、所望の画像を形成する層である。上記の非水系インク組成物を吐出することでインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物に要求される特性を満たすものであるので、画像再現性の高い非水系インク組成物の層を形成することができる。
【0147】
[その他の層]
本実施の形態に係る記録物は、さらに非水系インク組成物の層の上表面に所望の機能を有する層を備えてもよい。例えば、記録物に耐擦性や光沢性をさらに付与する目的で、樹脂、ワックスの少なくとも1つを含有するオーバーコート層が形成されていてもよい。また、フィラーを含有させ、又は膜厚をピクセル単位で変化させること等により、表面に凹凸感(マット面)を表現された層が形成されていてもよい。また、記録物に耐候性を付与するために、紫外線吸収剤や光安定化剤等を含む耐候層や光輝性顔料を含む光輝性層等が形成されていてもよい。
【0148】
なお、本実施の形態に係る記録物においては、上記の非水系インク組成物により形成された層を含む記録物を説明したが、例えば、従来公知のインク組成物により形成された層上に、上記のインク組成物を吐出して非水系インク組成物の層を形成してもよい。また、上記のインク組成物により形成された層上に、上記のインク組成物を吐出して第2の非水系インク組成物の層を形成してもよい。
【0149】
≪7.インクジェット記録装置≫
本実施の形態に係る装置は、上記の非水系インク組成物が充填された収容容器が搭載されたインクジェット記録装置であって、上記の非水系インク組成物を基材上に吐出する。この装置は、上記の非水系インク組成物を、基材の表面に吐出することで記録物を製造する装置である。上記の非水系インク組成物を吐出することでインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物に要求される特性を満たすものであるので、本実施の形態に係る装置においてもこの非水系インク組成物を適切にインクジェット法によって基材上に吐出することが可能となって、画像再現性の高い記録物を製造することができる。
【0150】
インクジェット記録装置としては、上記の非水系インク組成物を基材上にインクジェット吐出することのできるインクジェット記録装置であることが好ましい。上記の非水系インク組成物をインクジェット法により吐出するインクジェット記録装置は、従来公知のものを使用することができる。例えば、VersaArt RE-640、VersaCAMM VS300i(いずれもローランドDG(株)製)のようなインクジェットプリンターなどを使用することができる。
【0151】
インクジェット記録装置の構成の一例として、オンキャリッジタイプであってシリアルプリンタータイプのインクジェット記録装置であっても、インクカートリッジが外部に固定されたオフキャリッジタイプのインクジェット記録装置であってもよく、インクジェットヘッドヘッドが移動せずに記録媒体(基材)上に非水系インク組成物を吐出するラインプリンタータイプのインクジェット記録装置であってもよい。
【0152】
また、インクジェット記録装置は、加温機構と、基材を固定する固定機構と、を備えていることが好ましい。インクジェット記録装置に備えられる加温機構によって基材表面温度を制御して、基材(記録媒体)に着弾した非水系インク組成物を乾燥させることで、非水系インク組成物に含有される溶媒を揮発させることが可能となる。
【0153】
さらに、基材を固定する固定機構によって、基材(記録媒体)を固定した状態で非水系インク組成物を乾燥させることが可能となり、加温により基材がたわむことにより熱のかかり方が不均一になることを抑制できる。
【0154】
インクジェット記録装置に備えられる加温機構は、プレヒーター、プラテンヒーター、アフターヒーター等であってもよく、記録物に温風を送風する機構であっても、赤外線などにより記録物を加熱する機構であってもよい。また、これらの加温機構を複数組み合わせるものであってもよい。
【0155】
基材を固定する固定機構としては、基材を所定の治具により固定する固定機構であっても、負圧により基材を吸引して吸着する固定機構であってもよく特に制限されない。
【0156】
上記の非水系インク組成物を吐出するインクジェットヘッドは、圧電素子を用いたピエゾ方式のインクジェットヘッドであっても、発熱体を用いたサーマル方式のインクジェットヘッドであってもよく、特に制限はされない。
【0157】
また、インクジェット記録装置は、上記の非水系インク組成物を貯蔵する容器(インクカートリッジやボトル等)と上記の非水系インク組成物を吐出するインクジェット吐出口とを接続するプラスティックチューブを備え、上記の非水系インク組成物がこのプラスティックチューブを通じてインクジェットヘッドに供給され、インクジェット法によって吐出されるように構成されていてもよい。
【0158】
また、貯蔵機構とインクジェット吐出口とに接続されたチューブには、非水系インク組成物の流路を調整する弁機構を備えていることが好ましい。貯蔵機構から弁機構を介してインクジェット吐出口に上記の非水系インク組成物を供給することにより、ノズル詰まりを解消できる機構が備えられ、非水系インク組成物の吐出安定性をさらに向上させることができる。
【0159】
また、本実施の形態に係るインクジェット記録装置は、上述したようにイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの各色のインクや、ライトマゼンタ、ライトシアン、ライトブラック、オレンジ、レッド、ホワイト、メタリック、パール、クリア、プレコーティング、オーバープリントなどの各種のインクにも使用することができ、印刷する色の順序やヘッドの位置や構成は特に制限されない。また、本実施の形態に係るインクジェット記録装置は、記録媒体(基材)の巻き取り機構や基材表面を乾燥させる乾燥機構、インクの循環機構を備えていても備えていなくともよい。
【実施例
【0160】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0161】
1.非水系インク組成物の調製
それぞれの有機溶剤、樹脂、分散剤、顔料(色材)下記表の割合になるように各成分のように実施例及び比較例の非水系インク組成物を作製した。具体的には、ペイントシェイカーを用いてジルコニアビーズにて体積基準累積90%粒子径(D90)が300nm以下になるまで分散させて非水系インク組成物を調製した。単位は質量%である。
【0162】
非水系インク組成物に含まれる顔料の体積基準累積90%粒子径(D90)は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて測定した。
【0163】
2.評価
(吐出性)
実施例、比較例および参考例の非水系インク組成物について吐出性(吐出安定性)を評価した。具体的には、インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)に非水系インク組成物を充填して、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に双方向の高速印刷モード(360x720dpi)で、基材表面温度40℃にて連続印刷でベタ及び細線を印刷し、ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛び散りの有無を目視により観察し、評価した(表中、「吐出性」と表記)。
評価基準
A:細線が正しく再現できている。
B:着弾位置のずれがわずかに見られるが細線がおおむね正しく再現できている。
C:着弾位置のずれによって細線を再現できない。
A、Bは使用可能範囲内である。
【0164】
(保存安定性)
実施例及び比較例の非水系インク組成物について保存安定性を評価した。具体的には、非水系インク組成物をガラス瓶に密封して60℃で1ヶ月間保管し、保管前の粘度からの変化率を求めた。なお、インクの粘度は、落球式粘度計(アントンパール社製AMVn)を用いて、20℃の条件下で測定した。
A:変化率が10%未満である。
B:変化率が10%以上20%未満である。
C:変化率が20%以上である。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0165】
(発色)
実施例及び比較例の非水系インク組成物について発色を評価した。具体的には、上記インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ画像を印字した。彩度は、JIS Z 8721に基づき、X-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件で測定を行うことにより求めた。(表中、「発色」と表記)。
評価基準
A:彩度が90以上である。
B:彩度が70以上、90未満である。
C:彩度が70未満である。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0166】
(光沢)
実施例、比較例および参考例の非水系インク組成物について光沢を評価した。具体的には、上記発色性評価と同様にして印刷物を作製し、ハンディタイプの光沢度計PhopointIQ-S(コニカミノルタ社製)により、当該印刷物の20°光沢度を測定した。(表中、「光沢」と表記)。
評価基準
A:20°光沢が60以上
B:20°光沢が55以上60未満
C:20°光沢が55未満
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0167】
(耐擦過性)
実施例、比較例および参考例の非水系インク組成物について耐擦過性を評価した。具体的には、上記発色性評価および光沢性評価と同様にして印刷物を作製し、当該印刷物の印刷面を、荷重200g、50往復、乾いた綿布によって擦り、目視で耐擦過性を評価した(表中、「耐擦過性」と表記)。
評価基準
A:印刷面に擦り後がみられなかった。
B:印刷面にわずかに擦り後がみられたが、実質上許容範囲内であった。
C:印刷面に明らかな剥がれがみられた。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0168】
(耐溶剤性)
実施例、比較例および参考例の非水系インク組成物について耐溶剤性を評価した。具体的には、上記耐擦過性評価と同様にして、当該印刷物の印刷面を、荷重200g、50往復、50質量%アルコール水溶液を浸透させた綿布によって擦り、目視で耐擦過性を評価した(表中、「耐溶剤性」と表記)。
評価基準
A:印刷面に擦り後がみられなかった。
B:印刷面にわずかに擦り後がみられたが、実質上許容範囲内であった。
C:印刷面に明らかな剥がれがみられた。
A、Bは実使用可能範囲内である。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
表中、「PB15:6」とは、DIC社製のFASTOGEN BLUE AE-8K(C.I.ピグメントブルー15:6)である。
表中、「PB60」とは、トーヨーカラー社製のLIONOGEN BLUE 6520(C.I.ピグメントブルー60)である。
表中、「PV23」とは、DIC社製のFASTOGEN SUPER VIOLET RSP(C.I.ピグメントバイオレット23)である。
表中、「PG7」とは、DIC社製のFASTGEN GREEN 5740(C.I.ピグメントグリーン7)である。
表中、「PG36-a」とは、DIC社製のFASTGEN GREEN 2YK(C.I.ピグメントグリーン36)である。
表中、「PG36-b」とは、大日精化工業社製のシアニングリーン5370(C.I.ピグメントグリーン36)である。
表中、「PB15:4」とは、C.I.ピグメントブルーPB15:4である。
表中、「PR122」とは、C.I.ピグメントレッド122である。
表中、「PY150」とは、C.I.ピグメントイエロー150である。
表中、「CB」とは、カーボンブラックである。
表中、「分散剤-a」とは、ルーブリゾール社製「Solsperse32000」(ポリカプロラクトン系高分子分散剤 アミン価:35mgKOH/g)である。
表中、「分散剤-b」とは、ルーブリゾール社製「Solsperse33000」(ポリカプロラクトン系高分子分散剤 アミン価:43mgKOH/g)である。
表中、「分散剤-c」とは、ルーブリゾール社製「Solsperse36000」(ポリカプロラクトン系高分子分散剤)である。
表中、「樹脂-a」とは、ロームアンドハース社製「パラロイドB60」(アクリル系樹脂)である。
表中、「樹脂-b」とは、日信化学工業(株)社製「ソルバインCL」(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂)である。
表中、「樹脂-c」とは、EASTMAN社製「CAB551-0.01」(セルロース系樹脂)である。
表中、「界面活性剤-a」とは、ビックケミー・ジャパン社製「BYK-331」(ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコン)である。
表中、「界面活性剤-b」とは、ビックケミー・ジャパン社製「BYK-3500」(ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコン)である。
【0173】
上記表から分かるように、顔料A1、A2、A3を含有し、顔料分散剤の含有量が顔料の含有量未満よりも小さく、樹脂の含有量が顔料の含有量よりも大きいで実施例の非水系インク組成物であれば、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たすことが分かる。
【0174】
なお、顔料A1,A2,A3を含有しない参考例1~4の非水系インク組成物は、顔料分散剤の含有量が顔料の含有量以上であってもインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として要求される特性を満たしていた。このことから、顔料は非水系インク組成物中において凝集するという本願発明の課題が、顔料A1,A2,A3を含有する非水系インク組成物独自のものであることが確認された。
【要約】
【課題】所定の構造を有する顔料を含む非水系インク組成物であっても保存安定性、及び吐出安定性の高く、インクジェット法によって吐出される非水系インク組成物として好適に使用することのできる非水系インク組成物を提供する。
【解決手段】顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、該顔料分散剤とは異なる樹脂と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水系インク組成物であって、顔料は、所定の構造を有する顔料を含有し、顔料分散剤の含有量は、前記顔料の含有量よりも小さく、樹脂の含有量は、顔料の含有量よりも大きい非水系インク組成物である。
【選択図】なし