(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/427 20060101AFI20230615BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20230615BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/68
B60R21/207
(21)【出願番号】P 2018150815
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 仁一
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107762(JP,A)
【文献】特開2002-079901(JP,A)
【文献】特開2018-012402(JP,A)
【文献】特開2003-093202(JP,A)
【文献】特開2011-254934(JP,A)
【文献】特開2018-007717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-7/74
A47C 1/00-31/12
B68G 7/00-7/12
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド(P2)と、前記パッド(P2)を裏面側から支持するフレーム(20)と、前記パッド(P2)に固定されて該パッド(P2)の表面を覆う第1表皮(25)と、前記第1表皮(25)に接続具(f1~f4)を介して着脱可能に接続されて前記パッド(P2)の表面の一部を直接又は前記第1表皮(25)を介して覆う第2表皮(26)とを備えた乗物用シートにおいて、
前記フレーム(20)には、前記パッド(P2)の表面より外方に展開可能なエアバッグ(52)を収納するエアバッグモジュール(AM)が設けられ、
前記第1表皮(25)には、前記エアバッグ(52)の前記展開を許容するように破断可能な破断許容部(m1)が前記接続具(f1~f4)から間隔をおいて配設され、
前記第1表皮(25)又は前記第2表皮(26)の、前記エアバッグモジュール(AM)の周辺に位置する特定の前記接続具(f4)と隣接する部分には、展開時の前記エアバッグ(52)と該特定の接続具(f4)との接触を抑制する接触抑制部(61)が、該特定の接続具(f4)に沿うように設けられることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記接触抑制部(61)は、該接触抑制部(61)が設けられる表皮(25)の表面より外方に張出した外方張出部(61)で構成され、前記外方張出部(61)の張出高さは、前記特定の接続具(f4)の張出高さよりも高いことを特徴とする、請求項
1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記パッド(P2)は、前記第1,第2表皮(25,26)のうち少なくとも前記第1表皮(25)の一部を引き込むための引込み溝(g1,g2)と、前記引込み溝(g1,g2)の底部に一端が開口すると共に前記パッド(P2)の裏面に他端が開口する引込み孔(P2h)とを有し、
前記第1表皮(25)の、前記引込み溝(g1,g2)内への引込み部分が、前記引込み孔(P2h)を貫通する連結部材(J1,J2)の一端部に結合され、
前記連結部材(J1,J2)の他端部が前記フレーム(20)の内側面に直接又は支持部材(41)を介して連結されると共に、その連結部(
w)を避けるようにして前記エアバッグモジュール(AM)が前記フレーム(20)に取付けられることを特徴とする、請求項1
または2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記エアバッグモジュール(AM)の、前記フレーム(20)に取付けられる被取付部(50m)は、前記フレーム(20)を挟んで前記連結部(
w)とは反対側に配置されることを特徴とする、請求項
3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記フレーム(20)の、前記被取付部(50m)と前記連結部(
w)とに挟まれた板状の壁部分(20b)は、該壁部分(20b)の厚さ方向一方側に凹んだ凹曲部(20ba)を有することを特徴とする、請求項
4に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シート、特にパッドと、パッドの裏面を支持するフレームと、パッドに固定されてパッドの表面を覆う第1表皮と、第1表皮に接続具を介して着脱可能に接続されてパッドの表面の一部を直接又は第1表皮を介して覆う第2表皮とを備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
上記乗物用シートにおいて第1表皮に対し第2表皮を必要に応じて別の第2表皮と随時取り替え、交換できる利点がある。このような着脱容易表皮を有する乗物用シートは、例えば特許文献1に示されるように従来公知であり、その公知のシートでは、第1,第2表皮の相互間の接続具としてファスナが用いられている。
【0003】
また、乗物用シートにおいて、パッドの裏面を支持するフレームに、パッドの表面より外方に展開可能なエアバッグを収納するエアバッグモジュールを設けたものが、例えば特許文献2に示されるように従来公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-97275号公報
【文献】特開2015-20457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような従来の着脱容易表皮付きの乗物用シートでは、これを特許文献2のようなエアバッグ付きシートにまで適用することは想定されていないが、もし適用した場合に、第1,第2表皮相互間の接続具(例えばファスナ)と、パッド表面からのエアバッグの展開開始部位とが重なり合うほどに近ければ、その接触具が展開初期のエアバッグと干渉し易くなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、上記問題を解決可能な乗物用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、パッドと、前記パッドを裏面側から支持するフレームと、前記パッドに固定されて該パッドの表面を覆う第1表皮と、前記第1表皮に接続具を介して着脱可能に接続されて前記パッドの表面の一部を直接又は前記第1表皮を介して覆う第2表皮とを備えた乗物用シートにおいて、前記フレームには、前記パッドの表面より外方に展開可能なエアバッグを収納するエアバッグモジュールが設けられ、前記第1表皮には、前記エアバッグの前記展開を許容するように破断可能な破断許容部が前記接続具から間隔をおいて配設され、前記第1表皮又は前記第2表皮の、前記エアバッグモジュールの周辺に位置する特定の接続具と隣接する部分には、展開時の前記エアバッグと該特定の接続具との接触を抑制する接触抑制部が、該特定の接続具に沿うように設けられることを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記接触抑制部は、該接触抑制部が設けられる表皮の表面より外方に張出した外方張出部で構成され、前記外方張出部の張出高さは、前記特定の接続具の張出高さよりも高いことを第2の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1または第2の特徴に加えて、前記パッドは、前記第1,第2表皮のうち少なくとも前記第1表皮の一部を引き込むための引込み溝と、前記引込み溝の底部に一端が開口すると共に前記パッドの裏面に他端が開口する引込み孔とを有し、前記第1表皮の、前記引込み溝内への引込み部分が、前記引込み孔を貫通する連結部材の一端部に結合され、前記連結部材の他端部が前記フレームの内側面に直接又は支持部材を介して連結されると共に、その連結部を避けるようにして前記エアバッグモジュールが前記フレームに取付けられることを第3の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第3の特徴に加えて、前記エアバッグモジュールの、前記フレームに取付けられる被取付部は、前記フレームを挟んで前記連結部とは反対側に配置されることを第4の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第4の特徴に加えて、前記フレームの、前記被取付部と前記連結部とに挟まれた板状の壁部分は、該壁部分の厚さ方向一方側に凹んだ凹曲部を有することを第5の特徴とする。
【0012】
本発明において、「破断許容部」とは、エアバッグの展開時にその展開を許容するために表皮に予め設けられる、展開初期のエアバッグにより破断可能な脆弱部分をいう。
【0013】
また本発明において、「連結部」とは、連結部材の他端部がフレームの内側面に直接連結される場合は、連結部材の他端部とフレームの内側面との結合部をいい、また連結部材の他端部がフレームの内側面に支持部材を介して連結される場合は、支持部材とフレームの内側面との結合部とをいう。
【発明の効果】
【0014】
第1の特徴によれば、パッドに固定される第1表皮と、第1表皮に接続具を介して着脱可能に接続されてパッドの一部を直接又は第1表皮を介して覆う第2表皮とを備えた乗物用シートであって、フレームにエアバッグモジュールを設けたものにおいて、第1表皮には、エアバッグの展開を許容するように破断可能な破断許容部が接続具から間隔をおいて配設されるので、エアバッグの展開初期に第1,第2表皮間の接続具がエアバッグに接触、干渉するのを効果的に回避でき、エアバッグの的確な作動を確保する上で有利となる。
【0015】
また、破断許容部が、パッドに固定の第1表皮に設けられるので、破断許容部がパッドに対しずれ動くのを効果的に回避でき、エアバッグの作動をより安定させることができる。
【0016】
また更に、第1表皮又は第2表皮の、上記特定の接続具と隣接する部分には、展開時のエアバッグと該特定の接続具との接触を抑制する接触抑制部が、該特定の接続具に沿うように設けられるので、破断許容部が特定の接続具と比較的近い位置に在っても、接触抑制部が展開時のエアバッグと接続具との接触を抑制でき、エアバッグをより的確に展開、作動させることができる。
【0017】
また第2の特徴によれば、接触抑制部は、これが設けられる表皮の表面より外方に張出した外方張出部より構成され、その外方張出部の張出高さは、上記特定の接続具の張出高さよりも高いので、第1又は第2表皮の表面に外方張出部を設けるだけの簡単な構造で、展開時のエアバッグと接続具との接触を効果的に抑制可能となる。
【0018】
また第3の特徴によれば、パッドは、第1表皮の一部を引き込むための引込み溝と、引込み溝の底部に一端が開口すると共にパッドの裏面に他端が開口する引込み孔とを有し、第1表皮の、引込み溝内への引込み部分が、引込み孔を貫通する連結部材の一端部に結合され、連結部材の他端部がフレームの内側面に直接又は支持部材を介して連結されると共に、その連結部を避けるようにしてエアバッグモジュールがフレームに取付けられるので、シート構造の簡素化を図るべく、共通のフレームに表皮引込み用連結部材を連結し且つエアバッグモジュールを取付けるようにしても、エアバッグの作動に支障を来たす虞れはない。
【0019】
また第4の特徴によれば、エアバッグモジュールの、フレームに取付けられる被取付部は、フレームを挟んで上記連結部とは反対側に配置されるので、上記連結部とエアバッグモジュールの被取付部とがフレームを挟んでコンパクトに対向配置可能となる。
【0020】
また第5の特徴によれば、フレームの、上記連結部とエアバッグモジュールの被取付部とに挟まれた板状の壁部分は、この壁部分の厚さ方向一方側に凹んだ凹曲部を有するので、その凹曲部が補強リブ効果を発揮することで、フレーム構造の軽量化を図りながらフレーム(特に板状壁部分)の剛性を高めることができ、延いてはフレームに対する表皮引込み用連結部材及びエアバッグモジュールの各取付剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る自動車用シートを示す全体斜視図
【
図2】(A)は、シートの座部及びシートバック部において着脱容易表皮をベース表皮から取り外した状態を示す斜視図、(B)は、ベース表皮を取付ける前の座部パッド及びバックパッドの単体斜視図
【
図3】シートバック部においてバックパッドを取り外してバックフレームを露出させた状態を示す斜視図
【
図7】(C)は、シートバック部を前方外側(即ちエアバッグ設置側)から見た斜視図、また(D)は、バックパッドを同じく前方外側から見た斜視図
【
図8】エアバッグの展開過程の一例を概略的に示す
図5対応断面図であって、(E)はエアバッグの展開初期状態を示し、また(F)はエアバッグの展開完了状態を示す
【
図11】参考形態に係るエアバッグの展開過程の一例を概略的に示す断面図であって、(G)は
図8(E)に対応し、また(H)は
図8(F)に対応する
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態及び参考形態を添付図面に基づいて以下に説明する。尚、本明細書において、前後・左右・上下は、シートに座る乗員から見ての前後・左右・上下をそれぞれいう。
【0023】
先ず、
図1~
図8を参照して、第1実施形態について説明する。乗物用シートとしての自動車用シートSは、乗員の尻部を下方から支持するシート座部S1と、乗員の背中を後方から支持するシートバック部S2と、シートバック部S2の上部に装着されるヘッドレスト部S3とを備える。
【0024】
尚、図示例では、運転席用シートが示されるが、助手席用シートも、後述するエアバッグモジュールAMの配設部位が左右逆になる点を除いて運転席用シートと基本的に同一である。
【0025】
シート座部S1は、座部パッドP1と、座部パッドP1を裏面側から支持する座部フレームF1と、座部パッドP1の表面を被覆する座部用表皮C1とを備える。座部フレームF1は車体フロア30に、従来周知の前後位置調整機構(図示せず)を介して前後位置調節可能に支持される。
【0026】
一方、シートバック部S2は、バックパッドP2と、バックパッドP2を裏面側から支持するバックフレームF2と、バックパッドP2の表面を被覆するシートバック用表皮C2とを備える。バックフレームF2は、従来周知のリクライニング機構32を介して座部フレームF1の後部に支持されており、そのリクライニング機構32により、シートバック部S2は、起立角度を任意に調節、固定できるようになっている。
【0027】
次にシートバック部S2の具体的構造を説明する。
【0028】
シートバック部S2の骨格フレームとなるバックフレームF2は、
図3に示すように、上下方向に延びる左右一対のサイドフレーム20,20と、その両サイドフレーム20,20の上部間、及び下部間をそれぞれ結合すべく左右方向に延びる上,下部クロスメンバ21,22と、両サイドフレーム20,20の上端部間を一体に接続するヘッドレスト支持フレーム部23とを備えた金属製のフレーム枠で構成される。
【0029】
左右のサイドフレーム20の各フレーム上部20aとヘッドレスト支持フレーム23とは、逆u字状に形成される一繋がりのパイプ材で構成される。そして、各サイドフレーム20は、上記パイプ材の一部よりなるフレーム上部20aと、フレーム上部20aが上端部に結合(例えば溶接)されて上下方向に延びる板状のフレーム主部20bとを備える。フレーム主部20bは、シート中心側が開放した横断面コ字状のチャンネル材で構成され、このチャンネル材は、これの座部フレームF1との結合部(即ち下端部)に近づくにつれて前後幅が徐々に拡大して剛性強度が増すように形成される。
【0030】
またフレーム主部20bの幅方向中間部には、厚さ方向即ち左右方向で一方側(実施形態ではシート内方側)に凹んで上下方向に延びる凹曲部20baが一体成形されており、この凹曲部20baが補強リブ効果を発揮することでフレーム主部20b(従ってサイドフレーム20)の剛性強度が高められる。
【0031】
各々のサイドフレーム20(具体的にはフレーム主部20bの凹曲部20baやフレーム上部20a)の内側面には、山部と谷部が交互に並ぶ波形の棒材より成る支持部材41の複数の外向き張出部41oが結合(例えば溶接)される。この支持部材41は、後述するシートバック用表皮C2の引込み用連結部材J1,J2を係止、連結するために用いられる。尚、支持部材41の形状構造は、実施形態に限定されず、例えば帯板材を波形に屈曲成形したものを使用してもよい。
【0032】
バックフレームF2の上、下部クロスメンバ21,22には、両クロスメンバ21,22間に掛け渡した左右一対のワイヤ28,28を介して、合成樹脂製又は金属製の受圧板24が架設、支持される。更にこの受圧板24の下部寄りの背面を支持する少なくとも1本の波形スプリング29が、左右のサイドフレーム20,20間に横架、支持される。そして、これら受圧板24、波形スプリング29及びワイヤ28は、互いに協働してバックパッドP2を裏面側から支持する。
【0033】
次にバックパッドP2の構造を説明する。バックパッドP2は、バックパッドP2の主要部をなす主バックパッドP2Mと、後述するエアバッグモジュールAMの外側を覆う扁平なカバーパッドP2Cとを備えており、それらパッドP2M,P2Cは、クッション材(例えばウレタンフォーム)で所定形状に各々成形される
【0034】
主バックパッドP2Mは、
図2に示すように、前面が乗員の背中に対する支持面となるパッド本体P2mと、パッド本体P2mの左右両側に連なり且つ前方に張出して背中の外側方を支持する左、右隆起パッド部P2sとを備えており、左、右の各隆起パッド部P2sの裏面側がサイドフレーム20で支持(
図4,
図5参照)される。そして、左、右の各隆起パッド部P2sは、サイドフレーム20の前、後端面及び外側面を被覆する。
【0035】
また左、右の隆起パッド部P2sのうち特に車両外側の(例えば実施形態のシートSは運転席用である関係で右側の)隆起パッド部P2sには、
図5,
図7に示すようにモジュール用開口Oが形成されている。このモジュール用開口OにはエアバッグモジュールAMが収納され、エアバッグモジュールAMは、開口Oに臨むサイドフレーム20のフレーム主部20bの外側面に固定される。
【0036】
エアバッグモジュールAMは、
図5,
図7からも明らかなように、フレーム主部20bの外側面に沿って延びる、車幅方向に扁平な箱状のモジュールケース50と、モジュールケース50内に格納、固定されるインフレータ51と、インフレータ51からの高圧ガスで急速に膨張可能なエアバッグ52と、平時はエアバッグ52を折り畳み状態に保持する保持袋53とを備える。インフレータ51は、車両衝突時の衝撃を検知可能な衝突センサ(図示せず)の検知信号に基づいて作動してエアバッグ52内に高圧ガスを供給可能である。また保持袋53は、エアバッグ52の膨張により即座に破断可能である。
【0037】
モジュールケース50は、車両外方側に開口する扁平皿状のケース本体50mと、ケース本体50mの外端開口を開閉する蓋板50cとを備えており、ケース本体50mの底壁部がフレーム主部20bに複数組のボルトb・ナットnで固定される。
【0038】
蓋板50cは、これの後縁部がケース本体50mの開口後端縁に揺動可能に枢支連結50hされる。また蓋板50cは、これがケース本体50mの開口を閉じた状態で、前縁部がケース本体50mの開口前端縁に係脱可能に係止される。その係止部50kは、エアバッグ52の膨張により容易に係止解除されて蓋板50cを開放可能とする程度の係止構造とされる。
【0039】
ところで主バックパッドP2Mの前面には、
図2に示すようにパッド本体P2mと左、右隆起パッド部P2sとの各境界部でそれぞれ上下方向に延びる第1,第2引込み溝g1,g2と、第1,第2引込み溝g1,g2の中間部相互を連通させるよう左右方向に延びる第3引込み溝g3とが凹設される。更に主バックパッドP2Mには、
図4~
図6に示すように各引込み溝g1~g3の底面に一端が開口し且つ主バックパッドP2Mの背面即ち裏面に他端が開口する複数の引込み孔P2h…が、各々の引込み溝g1~g3の長手方向に互いに間隔をおいて形成される。
【0040】
またシートバック用表皮C2は、バックパッドP2に固定されてバックパッドP2の外表面を覆うベース表皮25と、ベース表皮25の前面を覆う着脱容易表皮26とを備える。着脱容易表皮26は、後述するように各引込み溝g1~g3内において第1~第3ファスナf1~f3を介してベース表皮25に着脱可能に接続され、更に着脱容易表皮26の外周縁部が第4ファスナf4を介してベース表皮25に着脱可能に接続される。
【0041】
ベース表皮25は、バックパッドP2の形状に対応して、パッド本体P2mを覆う中央ベース表皮部25mと、左、右隆起パッド部P2sの前面及び側面前部を覆う左、右ベース表皮部25sと、バックパッドP2の外周面を全周に亘り覆う外周ベース表皮部25zとを備えると共に、それらベース表皮部25m,25s,25zが相互間で縫着されていて、全体が一体となってバックパッドP2を覆っている。そして、ベース表皮25のうち外周ベース表皮部25zだけが、着脱容易表皮26と重なり合わない領域に在って、外部に常時露出する。
【0042】
外周ベース表皮部25z後半の特に左右両側部は、
図4,
図5に示すように左右の隆起パッド部P2s及びサイドフレーム20にそれらの各後端面に回り込むように固定(例えば接着)され、また外周ベース表皮部25z後半の特に上下両側部は、パッド本体P2mの上,下端部にそれらの各後端面に回り込むように固定(例えば接着)される。
【0043】
尚、シートバック部S2の背面のうち、外周ベース表皮部15zでは被覆困難な部位は、図示しないカバー部材をシートバック部S2背面に装着することで体裁よく被覆可能である。
【0044】
また外周ベース表皮部25zの、エアバッグモジュールAMとの対向面には、
図5,
図7に示すようにモジュールケース50(特に蓋板50c)の外面に対面する扁平なカバーパッドP2Cが固定(例えば接着)される。
【0045】
次にベース表皮25のバックパッドP2への引込み固定構造について、
図3~
図6を参照して説明する。ベース表皮25の中央ベース表皮部25mと左、右ベース表皮部25sとの各縫着部は、第1,第2引込み溝g1,g2にそれぞれ対応した位置に設定されていて、対応する引込み溝g1,g2内に引き込まれ、その引込み部分は、バックパッドP2を貫通する各複数の第1,第2連結部材J1…,J2…と、前述の支持部材41とを介してサイドフレーム20(具体的にはフレーム主部20bの凹曲部20ba)の内側面に連結、支持される。一方、中央ベース表皮部25mの上下中間部は、第3引込み溝g3内に引き込まれ、その引込み部分は、バックパッドP2を貫通する複数の連結部材J3…を介して受圧板24に係止、連結される。
【0046】
より具体的に説明すると、中央ベース表皮部25mと左、右ベース表皮部25sとの各縫着部には、前後方向に延びる各複数の第1,第2連結部材J1…,J2…の前端部が固定(例えば縫着)され、それら連結部材J1…,J2…は、第1,第2引込み溝g1,g2に各々間隔をおいて開口する複数の引込み孔P2h…をそれぞれ貫通してバックパッドP2の後面に達する。また中央ベース表皮部25mの上下中間部には、前後方向に延びる複数の第3連結部材J3…の前端部が固定(例えば縫着)され、それら連結部材J3…は、第3引込み溝g3に間隔をおいて開口する複数の引込み孔P2h…をそれぞれ貫通してバックパッドP2の後面に達する。
【0047】
第1~第3連結部材J1~J3は、帯板状に形成されて前後方向に延びる部材本体Jaと、部材本体Jaの後端部に結合、固定される係止片Jkとを各々備える。係止片Jkは、本実施形態ではJ字状のフック体で構成され、そのうち特に第1,第2連結部材J1,J2の係止片Jkは、
図4,
図5に示すようにサイドフレーム20に固定した支持部材41の内向き張出部41iに係止、連結される。一方、第3連結部材J3の係止片Jkは、
図6に示すように第3引込み溝g3に開口する引込み孔P2hの対向部又はその近傍部に位置する受圧板24の貫通孔h1に係止、連結される。
【0048】
尚、一部の引込み孔P2hがワイヤ28又は波形スプリング29の対向部又はその近傍部に位置する場合には、この引込み孔P2hを貫通する第1~第3連結部材J1~J3のの係止片Jkをワイヤ28又は波形スプリング29に係止、連結させてもよい。
【0049】
尚また、第1~第3連結部材J1~J3の係止片Jkとしては、上記したフック体に限定されず、即ち支持部材41やワイヤ28,スプリング29、受圧板24の貫通孔h1等に係止、連結可能な種々の形状に形成可能である。例えば、弾性変形可能な鉤部を先部に有するクリップ体(図示せず)で係止片Jkを構成してもよい。
【0050】
次に、着脱容易表皮26について具体的に説明する。着脱容易表皮26は、
図2に示すようにベース表皮25の中央ベース表皮部25mを覆う中央着脱容易表皮部26mと、左、右ベース表皮部25sをそれぞれ覆う左、右着脱容易表皮部26sとを備えると共に、それら着脱容易表皮部の相互間が縫着されていて、全体が一体となってベース表皮25の前面及び左右側面前部(即ち外周ベース表皮部25zを除く領域)を覆っている。
【0051】
この着脱容易表皮26と、ベース表皮25との接続構造について、次に
図4,
図5を参照して説明する。
【0052】
即ち、第1,第2引込み溝g1,g2にそれぞれ引き込まれる、中央ベース表皮部25mと左、右ベース表皮部25sとの各縫着部には、第1,第2ファスナf1,f2の内側ファスナ片f1i,f2iがそれぞれ固定(例えば縫着)される。また、同じく第1,第2引込み溝g1,g2にそれぞれ引き込まれる、中央着脱容易表皮部26mと左、右着脱容易表皮部26sとの各縫着部には、第1,第2ファスナf1,f2の外側ファスナ片f1o,f2oがそれぞれ固定(例えば縫着)される。
【0053】
一方、第3引込み溝g3に引き込まれる、中央ベース表皮部25mの前後中間部には、第3ファスナf3の内側ファスナ片f3iが固定(例えば縫着)される。また第3引込み溝g3に引き込まれる、中央着脱容易表皮部26mの前後中間部には、第3ファスナf3の外側ファスナ片f3oが固定(例えば縫着)される。
【0054】
そして、第1~第3ファスナf1~f3は、それらの外側ファスナ片f1o~f3o及び内側ファスナ片f1i~f3iの相互間が、第1~第3引込み溝g1~g3内でそれぞれスライダf1s~f3sのスライド操作により任意に着脱可能に接続される。
【0055】
更に中央ベース表皮部25mの上縁部及び左、右ベース表皮部25sの外側縁部と、外周ベース表皮部25zの前縁部との間の縫着部には、第4ファスナf4の内側ファスナ片f4iが固定(例えば縫着)される。また着脱容易表皮26の上縁部及び左右外縁部には、第4ファスナf4の外側ファスナ片f4oが固定(例えば縫着)される。そして、第4ファスナf4は、それの外側ファスナ片f4o及び内側ファスナ片f4iの相互間が、バックパッドP2の外周面(即ち上面及び左右側面)においてスライダf4sのスライド操作により任意に着脱可能に接続される。
【0056】
尚、上記したスライダf1s~f4sの用途機能は、従来周知の線ファスナのスライダのそれと同様である。
【0057】
ところで、前記したエアバッグ52は、これの膨張初期に、その膨張変化に応じて係止部50kの係止を自動解除し且つ蓋板50cを後端の枢支連結50h部回りに外方揺動させる。これにより、蓋板50cとケース本体50mの開口端との間に生じた隙間(
図8(E)を参照)からエアバッグ52が車両前方外向きに膨張、展開できるようになっている。そして、上記隙間、乃至その隙間の外側に隣接していて右隆起パッド部P2sとカバーパッドP2Cとに挟まれた部位が、バックパッドP2の表面からのエアバッグ52の展開開始部位P2xに相当する。
【0058】
上記したエアバッグ52の設置に関連して、外周ベース表皮部25zには、展開初期のエアバッグ52により破断可能な破断許容部m1が設けられる。この破断許容部m1は、これが展開初期のエアバッグ52で容易に且つ効率よく破断できるように、本実施形態では前記したエアバッグ展開開始部位P2xとの対応位置(即ち、その展開開始部位P2xとの対向位置又は近傍位置)に配設される。
【0059】
本実施形態の破断許容部m1は、外周ベース表皮部25zに穿設されてミシン目状に並ぶ一連の小孔群で構成される。そして、この破断許容部m1は、モジュールケース50の蓋板50c(従って前述のカバーパッドP2C)を多少広めに囲むように、その蓋板50cの前縁・上縁・下縁に略沿ってコ字状に配列される。しかも破断許容部m1(従って展開開始部位P2x)は、第1~第4ファスナf1~f4のうちエアバッグモジュールAMの周辺に位置する第4ファスナf4から離間して(即ち前後方向に間隔をおいて)配置されている。
【0060】
尚、破断許容部m1は、外周ベース表皮部25zにおいて通常使用に耐え得るカバー強度は確保しつつ展開初期のエアバッグ52により破断可能な脆弱構造であればよく、実施形態に限定されることなく種々の脆弱構造を採用可能である。例えば、上記のようなミシン目状の小孔群に代えて、外周ベース表皮部25zの当該部位を他の部位よりも破れ易い薄手に構成したり、或いは、当該部位に、そこを二分する切込みを入れ且つその切込み部分の両側相互間を低強度に(即ち破れ易いように)縫い合せる構成としてもよい。
【0061】
而して、バックパッドP2は本発明のパッドの一例であり、またバックフレームF2は本発明のフレームの一例である。また第1~第4ファスナf1~f4は本発明の接続具の一例であり、そのうち特に第4ファスナf4は、本発明の接続具のうちエアバッグモジュールAMの周辺に位置する特定の接続具の一例である。
【0062】
更にベース表皮25は本発明の第1表皮の一例であり、また着脱容易表皮26は本発明の第2表皮の一例である。
【0063】
尚、シート座部S1の座部パッドP1も、ベース表皮15と着脱容易表皮16とを含む座部用表皮C1で覆われており、この表皮C1の座部パッドP1への取付構造は、シートバック用表皮C2のバックパッドP2への前記した取付構造と同様である。例えば、座部パッドP1の上面には、バックパッドP2と同様に表皮引込み用の引込み溝g1′~g3′が設けられ、ベース表皮15と着脱容易表皮16とは、シートバック用表皮C2で用いたファスナf1~f4と同様のファスナf1′~f4′で着脱可能に接続される。
【0064】
次に第1実施形態の作用を説明する。シートSの組立に際し、バックフレームF2には、シートバック用表皮C2を組付ける前のバックパッドP2が取付けられ、またバックフレームF2の一方のサイドフレーム20の外側面にはエアバッグモジュールAMが取付けられる。そして、その状態より、シートバック用表皮C2のバックパッドP2への組付け作業が、次のようにして行われる。
【0065】
シートバック用表皮C2のベース表皮25については、これの外周ベース表皮部25z、中央ベース表皮部25m及び左、右ベース表皮部25sの相互間を縫着すると共に、所定部位に第1~第3連結部材J1~J3及び第1~第4ファスナf1~f4の内側ファスナ片f1i~f4iを縫着してなるベース表皮ユニットを予め製作しておき、そのベース表皮ユニットをバックパッドP2の前面に被せるように置く。
【0066】
この状態から、ベース表皮ユニットの一部表皮を、バックパッドP2の前面の第1~第3引込み溝g1~g3内に各々引込む。そして、その各引込み部分に連なる第1~第3連結部材J1~J3を引込み孔P1hを通してバックパッドP2の裏面側まで延出させる。その延出端のうち特に第1,第2連結部材J1,J2の係止片Jkはサイドフレーム20内側面に固定の支持部材41の内方張出部41iに係止、連結させ、一方、第3連結部材J3の係止片Jkは、受圧板24の貫通孔h1に係止、連結させる。
【0067】
しかる後、上記したベース表皮ユニットの外周ベース表皮部25zの左右両側部を、
図4,
図5に示すように左右の隆起パッド部P2s及びサイドフレーム20にそれらの各後端面に回り込むように固定(例えば接着)すると共に、外周ベース表皮部25zの上下両側部をパッド本体P2mの上,下端部にそれらの後端面に回り込むように固定(例えば接着)する。
【0068】
かくして、ベース表皮25の各ベース表皮部25m,25s,25zを含むベース表皮ユニットが、座部パッドP2にこれを被覆するように固定される。この場合、ベース表皮25の一部が第1~第3引込み溝g1~g3内に引込まれた状態は、第1,第2連結部材J1,J2がサイドフレーム20内側面に固定の支持部材41に係止、連結され、且つ第3連結部材J3が受圧板24の貫通孔h1に係止、連結されることで維持されるため、ベース表皮25に長期の使用に伴う位置ずれや弛み、皺等が発生するのを効果的に防止可能である。
【0069】
一方、シートバック用表皮C2の着脱容易表皮26については、これの中央着脱容易表皮部26m及び左、右着脱容易表皮部26sの相互間を縫着すると共に、所定部位に第1~第4ファスナf1~f4の外側ファスナ片f1o~f4oを縫着してなる着脱容易表皮ユニットを予め製作しておく。そして、この着脱容易表皮ユニットを、座部パッドP2に先に固定したベース表皮25上に被せるようにして置き、その際に、第1~第3ファスナf1~f3の外側ファスナ片f1o~f3oと内側ファスナ片f1i~f3iとを順次接続することで、着脱容易表皮26の一部を第1~第3引込み溝g1~g3に各々引込む。しかる後に第4ファスナf4の外側ファスナ片f4と内側ファスナ片f4iとを接続すれば、着脱容易表皮26を、それの一部を第1~第3引込み溝g1~g3内に引込みつつベース表皮25に接続、固定することができる。尚、この状態から着脱容易表皮26を取り外す場合は、上記とは逆の手順で行う。
【0070】
かくして、シートバック用表皮C2のバックパッドP2への取付けが完了する。また座部用表皮C1のベース表皮15及び着脱容易表皮16を座部パッドP1に取付ける場合も、上記したシートバック用表皮C2と同様の取付手順で取付作業を行うことができる。
【0071】
上記構造のシート座部S1及びシートバック部S2においては、座部パッドP1及びバックパッドP2に各々固定したベース表皮15,25に対し、着脱容易表皮16,26がファスナf1~f4,f1′~f4′により随時、容易に着脱可能となっている。このため、着脱容易表皮16,26を、季節に応じて色、模様、風合い等の異なる他の着脱容易表皮16,26に交換したり、或いは汚れた着脱容易表皮16,26を取り外してクリーニングしたりすることが可能であり、便利である。
【0072】
ところで走行車両が万一、衝突事故を起こしたような場合に、バックパッドP2に内蔵のエアバッグモジュールAMにおいては、衝突時の衝撃でインフレータ51が作動してエアバッグ52に高圧ガスを供給し、これにより、エアバッグ52が急速に膨張、展開しようとする。このときエアバッグ52は、これの展開初期(
図8(E)を参照)にモジュールケース50の蓋板50cを開放即ち外方揺動させ、その蓋板50cとケース本体50mの開口端との間に生じた隙間からエアバッグ52が、該隙間に対向、近接した破断許容部25zxを突き破りつつ、
図8(F)に示すように車両前方外向きに膨張、展開して乗員を保護する。
【0073】
この場合、シートバック用表皮C2のベース表皮25(具体的には外周ベース表皮部25z)には、展開初期のエアバッグ52により破断可能な破断許容部m1が、バックパッドP2の表面におけるエアバッグ展開開始部位P2xとの対応位置(即ち展開開始部位P2xとの対向位置又はその近傍位置)に配設され、この破断許容部m1は、エアバッグモジュールAMの周辺に位置する特定の接続具としての第4ファスナf4から間隔をおいて配置されている。これにより、エアバッグ52の展開初期において、破断許容部m1を突き破って膨張、展開しようとするエアバッグ52に対し第4ファスナf4が接触、干渉するのを効果的に回避できるため、エアバッグ52の的確な作動を確保する上で有利となる。
【0074】
また本実施形態では、シートバック用表皮C2の破断許容部m1が、バックパッドP2に固定のベース表皮25に設けられる。これにより、破断許容部m1がバックパッドP2(従ってパッドP2表面からのエアバッグ展開開始部位P2x)に対しずれ動くのを効果的に回避できるため、エアバッグ52の作動をより安定させることができる。
【0075】
また本実施形態のシートバック用表皮C2では、ベース表皮25の上に着脱容易表皮26と重なり合う領域(即ち中央ベース表皮部25m及び左右ベース表皮部25sに相当する領域)が存在するが、この領域の外(即ち外周ベース表皮部25z)にベース表皮25の破断許容部m1が配置されている。これにより、エアバッグ52の展開動作が着脱容易表皮26で阻害される虞れはなくなり、エアバッグ52の的確な作動を確保する上で有利となる。
【0076】
また本実施形態では、シートバック部S2において、エアバッグモジュールAM周辺に位置する第4ファスナf4が、破断許容部m1よりも前方側に配置されている。これにより、エアバッグ52が破断許容部m1を破断させつつシートバック部S2の斜め前方外側に展開しても、これと第4ファスナf4との接触、干渉を効果的に防止可能である。
【0077】
また本実施形態のバックパッドP2は、ベース表皮25の一部を引き込むための引込み溝g1~g3と、引込み溝g1~g3の底部に一端が開口すると共にバックパッドP2の裏面に他端が開口する複数の引込み孔P2hとを有し、ベース表皮25の、引込み溝g1~g3内への引込み部分が、引込み孔P2hを貫通する複数の連結部材J1~J3の各一端部に結合され、連結部材J1~J3の各他端部がサイドフレーム20のフレーム主部20b内側面に支持部材41を介して連結されると共に、その連結部(即ち支持部材41とフレーム主部20b内側面との結合部w)を避けるようにしてエアバッグモジュールAMがサイドフレーム20に取付けられる。
【0078】
これにより、シート構造の簡素化を図るべく、共通の右サイドフレーム20(具体的にはフレーム主部20b)に、表皮引込み用連結部材J1~J3を支持部材41を介して連結し且つエアバッグモジュールAMを取付けるようにしても、エアバッグ52の作動に支障を来たす虞れはない。しかもエアバッグモジュールAMの、フレーム主部20bに取付けられる被取付部、即ちケース本体50mは、フレーム主部20bを挟んで上記結合部wとは反対側に配置されるため、その結合部w(従って支持部材41)と、ケース本体50mとがフレーム主部20bを挟んでコンパクトに対向配置可能となる。
【0079】
その上、サイドフレーム20の、上記結合部w(従って支持部材41)とケース本体50mとに挟まれた板状の壁部分であるフレーム主部20bは、これの厚さ方向一方側に凹んだ凹曲部20baを有している。そして、この凹曲部20baが補強リブ効果を発揮することで、フレーム構造の軽量化を図りながらサイドフレーム20(フレーム主部20b)の剛性を高めることができ、延いてはサイドフレーム20に対する連結部材J1~J3及びエアバッグモジュールAMの各取付剛性が効果的に高められる。
【0080】
また
図9には、本発明の第2実施形態が示される。第2実施形態は、基本的に第1実施形態と同じシート構造であるが、更に第1表皮としてのベース表皮25の、第4ファスナf4(特定の接続具)と隣接する部分に、展開時のエアバッグ52と第4ファスナf4との接触を抑制する接触抑制部としての外方張出部61を、第4ファスナf4に沿うように設けた構造を追加したものである。
【0081】
この外方張出部(接触抑制部)61は、第2実施形態ではベース表皮25、即ち外周ベース表皮部25sに基端部が結合(例えば縫着)されてベース表皮25の表面より外方(特に第4ファスナf4側)に張出すシート状の張出部本体61mと、張出部本体61mの先端部に一体的に連設されて第4ファスナf4に沿って延びる玉縁状の膨大頭部61aとを備える。張出部本体61mは、シート状の可撓性材料、例えば布材や合成樹脂シート材で構成される。
【0082】
而して、第2実施形態では、第1実施形態の前記した作用効果に加えて、次の作用効果も併せて達成可能である。
【0083】
即ち、破断許容部m1が第4ファスナf4と比較的近い位置に在っても、外方張出部(接触抑制部)61の特設により展開時のエアバッグ52と第4ファスナf4との接触を抑制できるため、エアバッグ52をより的確に展開、作動させることができる。しかも外方張出部(接触抑制部)61、特に先部の玉縁状の膨大頭部61aの張出高さは、第4ファスナf4の張出高さよりも高いので、ベース表皮25の表面に外方張出部61を設けるだけの簡単な構造で、展開時のエアバッグ52と第4ファスナf4との接触を効果的に抑制可能となる。
【0084】
尚、第2実施形態では、外方張出部(接触抑制部)61のシート状の張出部本体61mの先端部に玉縁状、即ち横断面が略円形状の膨大頭部61aを一体に連設したものを示したが、膨大頭部61aの横断面形状は、第2実施形態に限定されず、展開時のエアバッグ52と第4ファスナf4との接触を抑制可能な形状であればよい。また、このような膨大頭部61aを省略して、シート状の張出部本体61mのみで外方張出部(接触抑制部)61を構成してもよい。
【0085】
また
図10,
図11には、本発明の参考形態が示される。参考形態のシートバック用表皮C2では、ベース表皮25と着脱容易表皮26とが重なり合う領域の外でベース表皮25(即ち外周ベース表皮部25z)に破断許容部m1が配置されていたが、参考形態では、上記領域の内でベース表皮25(即ち右ベース表皮部25s)に第1の破断許容部m1が配設される。そして、着脱容易表皮26には、第1の破断許容部m1と重なり合う第2の破断許容部m2が設けられる。第1,第2の破断許容部m1,m2は、第1実施形態の破断許容部m1と同様、モジュールケース50の蓋板50c(従ってカバーパッドP2C)の前縁・上縁・下縁に略沿ってミシン目状に並ぶ一連の小孔群より構成される。
【0086】
尚、第1,第2の破断許容部m1,m2は、第1実施形態の破断許容部m1と同様、ベース表皮25及び着脱容易表皮26において通常使用に耐え得るカバー強度は確保しつつ展開初期のエアバッグ52により破断可能な脆弱構造であればよく、実施形態及び参考形態に限定されることなく種々の脆弱構造を採用可能である。例えば、上記のようなミシン目状の小孔群に代えて、ベース表皮25及び着脱容易表皮26の当該部位を他の部位よりも破れ易い薄手に構成したり、或いは、当該部位に、そこを縦通する切込みを入れ且つその切込み部分の両側相互を低強度に(即ち破れ易いように)縫い合せる構成としてもよい。
【0087】
そして、参考形態においても、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
【0088】
更に参考形態においては、ベース表皮25の上に着脱容易表皮26と重なり合う領域が存在し且つこの領域に第1の破断許容部m1が配置されても、その第1の破断許容部m1と重なり合う第2の破断許容部m2が着脱容易表皮26に設けられるため、エアバッグ52の展開動作が着脱容易表皮26で阻害される虞れはなくなり、エアバッグ52の的確な作動を確保する上で有利となる。
【0089】
尚、参考形態の表皮C2の構造に第2実施形態の外方張出部(接触抑制部)61を適用することも可能であり、その場合は、外方張出部(接触抑制部)61の基端部が着脱容易表皮26(具体的には右着脱容易表皮部26s)に結合、例えば縫着される。
【0090】
以上、本発明の実施形態及び参考形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0091】
例えば、前記実施形態では、乗物用シートとして自動車用シートSを例示したが、本発明では、自動車以外の車両(例えば鉄道車両)に用いられるシートや、車両以外の乗物(例えば船舶、航空機)に用いられるシートにも適用可能である。
【0092】
また前記実施形態では、エアバッグモジュールAMをシートバック部S2のバックパッドP2に内蔵して、エアバッグ52をバックパッドP2表面より膨張展開させるようにしたものを示したが、本発明では、エアバッグモジュールをシート座部S1の座部パッドP1に内蔵して、エアバッグを座部パッドP1表面より膨張展開させるようにしてもよい。この場合は、座部用表皮C1の第1,第2表皮(即ちベース表皮15及び着脱容易表皮16)の少なくとも一方に、第1,第2表皮相互を接続する接続具としてのファスナf1′~f4′から間隔をおいて破断許容部m1が配設される。
【0093】
また前記実施形態では、座部用表皮C1及びシートバック用表皮C2を、ベース表皮15,25の少なくとも一部が着脱容易表皮16,26と重なり合う二層構造としたものを示したが、本発明では、ベース表皮と着脱容易表皮とが重なり合わない一層構造(例えば特開2016-97275号公報を参照)としてもよい。尚、その一層構造の場合においても、表皮の引込み構造は、前記実施形態と同様の構造とされる。また、その一層構造の場合には、ベース表皮(第1表皮)又は着脱容易表皮(第2表皮)の何れか一方に、破断許容部m1を、エアバッグモジュールAMの周辺に位置する特定の接続具(第4ファスナf4)から間隔をおいて設けるようにする。
【0094】
また前記実施形態では、座部用表皮C1及びシートバック用表皮C2をそれぞれ構成するベース表皮15,25及び着脱容易表皮16,26の各々を薄皮状の一層構造としたものを示したが、本発明では、ベース表皮15,25及び着脱容易表皮16,26のうちの少なくとも一方の表皮を、互いに重なり合う少なくとも2枚の外皮の相互間に薄肉のクッションシート材を挟んだ多層構造(例えば実公平6-14628 号公報を参照)の表皮としてもよい。
【0095】
また前記実施形態では、シートバック用表皮C2のベース表皮25に、展開初期のエアバッグ52により破断可能な破断許容部m1が、バックパッドP2の表面におけるエアバッグ展開開始部位P2xとの対応位置(即ち展開開始部位P2xとの対向位置又はその近傍位置)に配設されていて、破断許容部m1の破断が容易に且つ効率よく行われるものを示したが、破断許容部m1の配設位置は、エアバッグ52の展開初期にエアバッグ52で破断されてエアバッグ52の展開動作を無理なく許容し得る位置であればよく、例えば、上記対応位置から多少離れた位置であってもよい。
【0096】
また前記実施形態では、エアバッグモジュールAMが、折り畳み状態のエアバッグ52やインフレータ51を収納した扁平箱状のモジュールケース50を備えていて、このモジュールケース50で、エアバッグ52のバックパッドP2表面からの展開方向を制御できるようにしているが、本発明では、モジュールケースを省略したケースレスのエアバッグモジュール(例えば特許第6211839 号公報を参照)を使用してもよい。この場合、エアバッグがバックパッドの前方内部に向かって膨張するのを抑制してエアバッグの展開方向を適正に制御するために、表皮に接続されてエアバッグの膨張力を受ける力布(例えば特許第6211839 号公報を参照)を使用可能である。
【0097】
また前記実施形態では、引込み孔P2hを貫通する第1,第2連結部材J1,J2を、サイドフレーム20(より具体的にはフレーム主部20b)の内側面に固定した支持部材41に係止、連結させるものを示したが、引込み孔P2hとサイドフレーム20とが近いシート構造の場合には、支持部材41を省略して第1,第2連結部材J1,J2を、サイドフレーム20に設けた不図示の被係止部(例えば貫通孔、鉤状突起部等)に直接係止、連結させるようにしてもよい。
【0098】
また前記実施形態では、各連結部材J1~J3の部材本体Jaを剛性のある帯板材より構成したものを示したが、本発明の連結部材の部材本体Jaの形状は、実施形態に限定されず、引込み孔P2hを通過可能な形状であればよい。例えば、部材本体Jaを棒状材としてもよく、或いはまた、必要な連結強度を確保可能であれば部材本体Jaを可撓性材料より構成してもよい。
【0099】
また前記実施形態では、各連結部材J1~J3を表皮C2(具体的にはベース表皮25)の引込み溝g1~g3内への引込み部分に直接結合(縫着)したものを示したが、その引込み部分に取付けられて引込み溝g1~g3の長手方向に延びる縁補強部材(例えばワイヤ)を介して、該引込み部分に各連結部材J1~J3を結合するようにしてもよい。
【0100】
また前記実施形態では、シート用送風空調機能を持たない備えた乗物用シートを例示したが、本発明は、シートのパッド(例えば座部パッド)に設けた通気路と、送風装置(例えば送風ファン)と、それら通気路及び送風装置間を接続するダクトとを備えてシート用送風空調機能を発揮する乗物用シート(例えばPCT国際公開WO2018/061602A2公報、特開2005-287532 号公報等を参照)にも適用可能である。この場合、本実施形態のエアバッグモジュールAM、支持部材41、引込み溝g1~g3,g1′~g3′、引込み孔P2h、連結部材J1~J3、受圧板24、波形スプリング29及びワイヤ28は、シート座部S1又はシートバック部S2に設けられる上記した通気路、ダクト及び送風装置を避けるように配設される。
【符号の説明】
【0101】
AM・・・・・エアバッグモジュール
f1~f4・・接続具としての第1~第4ファスナ
g1,g2・・引込み溝としての第1,第2引込み溝
J1,J2・・連結部材としての第1,第2連結部材
m1・・・・・破断許容部,第1の破断許容部
m2・・・・・第2の破断許容部
P2・・・・・パッドとしてのバックパッド
P2h・・・・引込み孔
w・・・・・・連結部としての結合部
20・・・・・フレームとしてのサイドフレーム
20b・・・・壁部分としてのフレーム主部
20ba・・・凹曲部
25・・・・・第1表皮としてのベース表皮
26・・・・・第2表皮としての着脱容易表皮
41・・・・・支持部材
50m・・・・被取付部としてケース本体
52・・・・・エアバッグ
61・・・・・接触抑制部としての外方張出部