(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】タンパースイッチの構造
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20230615BHJP
H01H 13/18 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
H01H13/14 B
H01H13/18 Z
(21)【出願番号】P 2019193985
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000210403
【氏名又は名称】竹中エンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 厳宗
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-276656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0040674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
H01H 3/16
G08B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器のベースに開口部を設け、
前記機器内部の前記開口部に対応した位置にスイッチを設け、
タンパー機能を有効にするときは、突起部を備えたスイッチ押下部材を、取付面側に前記突起部が向く方向で前記ベースに装着し、
前記取付面への前記機器取り付け前は、前記ベースの取付面接触部より前記突起部が出る状態で前記スイッチは前記スイッチ押下部材に押されず、
前記取付面への前記機器取り付け後は、前記取付面により前記突起部が押され、前記スイッチは前記スイッチ押下部材により直接または間接的に押され、
タンパー機能を無効にするときは、前記スイッチ押下部材を、前記スイッチ側に前記突起部が向く方向で前記ベースに装着し、
前記取付面への前記機器の取り付けにかかわらず、前記スイッチは前記スイッチ押下部材により直接または間接的に押されることを特徴とするタンパースイッチの構造。
【請求項2】
前記スイッチ押下部材は弾性体であることを特徴とする請求項1に記載のタンパースイッチの構造。
【請求項3】
前記ベースの取付面側の前記開口部周辺に突起部14を設け、
前記スイッチ押下部材の両面に溝を設け、
前記溝を前記突起部14に合わせて前記押下部材を前記ベースに装着することを特徴とする請求項2に記載のタンパースイッチの構造。
【請求項4】
前記スイッチ押下部材と前記スイッチとの間に押下用延長部材を設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のタンパースイッチの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポールや壁面に取り付ける防犯センサーなどの機器が取付対象物から外されたときに作動するタンパー機能におけるタンパースイッチの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防犯用機器等では、故意に壁面やポールに設置された機器が壁から外されたときに、その異常を検出する目的で、機器内にタンパースイッチを装備させている。
【0003】
従来、機器のベースに開口部を設け、開口部から出た突起部などによりスイッチを作動させるものがある(特許文献1参照)。また、タンパー機能を使用しない場合、特許文献2のようにスペーサーなどの部品を別途機器に追加するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平03-196297号公報
【文献】特開2010-160908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機器のベースに開口部を設け、開口部から出た突起部などによりスイッチを作動させるものの場合、機器の出荷状態では開口部を設けずノックアウト穴を設けてタンパー機能を無効にしておき、タンパー機能を有効にする場合にノックアウト穴を開けて使用することになる。この場合、一度ノックアウト穴を開けてしまうと元に戻せず、タンパー機能を無効にすることができなかった。
【0006】
また、スペーサーなどの部品を別途機器に追加してタンパー機能を無効に変更するものの場合、スペーサーなどの部品を機器の設置当初から使用し、タンパー機能を無効にしているなら問題ないが、機器設置後にタンパー機能を有効から無効に変更するときに時間が経ってしまって追加するスペーサーなどの部品を紛失してしまっている恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のタンパースイッチは、機器のベースに開口部を設け、前記機器内部の前記開口部に対応した位置にスイッチを設け、タンパー機能を有効にするときは、突起部を備えたスイッチ押下部材を、取付面側に前記突起部が向く方向で前記ベースに装着し、前記取付面への前記機器取り付け前は、前記ベースの取付面接触部より前記突起部が出る状態で前記スイッチは前記スイッチ押下部材に押されず、前記取付面への前記機器取り付け後は、前記取付面により前記突起部が押され、前記スイッチは前記スイッチ押下部材により直接または間接的に押され、タンパー機能を無効にするときは、前記スイッチ押下部材を、前記スイッチ側に前記突起部が向く方向で前記ベースに装着し、前記取付面への前記機器の取り付けにかかわらず、前記スイッチは前記スイッチ押下部材により直接または間接的に押されることを特徴とするタンパースイッチの構造とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベースに常に装着するスイッチ押下部材の装着方向でタンパー機能の有効と無効とを変更するため、スイッチ押下部材の紛失の恐れがなく、設置状況やユーザーの考えに応じて容易に機能を切り替えられる。また、ベースに穴を開けるなど加工をすることなくタンパー機能の有効と無効とを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のタンパースイッチの第1の実施形態のタンパー機能を有効にしたときを示した図である。
【
図2】本発明のタンパースイッチの第1の実施形態のタンパー機能を無効にしたときを示した図である。
【
図3】本発明のタンパースイッチの第2の実施形態に用いるスイッチ押下部材を示した図である。
【
図4】本発明のタンパースイッチの第2の実施形態においてスイッチ押下部材のベースへの固定場所を示した図である。
【
図5】本発明のタンパースイッチの第2の実施形態のタンパー機能を有効にしたときを示した図である。
【
図6】本発明のタンパースイッチの第2の実施形態のタンパー機能を無効にしたときを示した図である。
【
図7】ベースの開口部からスイッチが離れて配置されている本発明のタンパースイッチの第2の実施形態においてタンパー機能を有効にしたときを示した図である。
【
図8】ベースの開口部からスイッチが離れて配置されている本発明のタンパースイッチの第2の実施形態においてタンパー機能を無効にしたときを示した図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1と
図2を用いて本発明のタンパースイッチの第1の実施形態の説明を行う。
図1は、本発明のタンパースイッチの第1の実施形態のタンパー機能を有効にしたときを示した図である。
図1(a)は機器が取付面Wから外された状態、
図1(b)は機器が取付面Wに固定された状態を示した図であり、それぞれ断面図である。
【0011】
1は、防犯用に使用される受動型赤外線検知装置や対向型光線式検知装置、反射型光線式検知装置などの防犯機器のベースである。ベース1は、開口部11とスイッチ押下部材3を装着するための突起部12を設けており、機器設置時に壁やポールなどの取付面Wにネジやバンドなどで固定される。
【0012】
スイッチ2はマイクロスイッチやプッシュスイッチなどのノンロック式のスイッチであり、プリント基板5に実装され、プリント基板5はベース1に固定される。スイッチ2は取付面W側に実装され、スイッチ2が押されている状態が正常状態となり、スイッチ2が押されていない状態が異常状態となって、検出信号を出力するようになっている。
【0013】
スイッチ押下部材3は、片面に突起部31を、その対面にスイッチ押下部32を備えている。突起部31はベース1の厚みより長く、スイッチ押下部32はベース1の厚みと同じか短くなっている。タンパー機能を有効にするときは、ベース1の開口部11にスイッチ押下部材3の突起部31を挿入し、ベース1の突起部12の内側にスイッチ押下部材3をベース1に装着する。スイッチ押下部材3の突起部31は、機器が取付面Wから外された状態では、
図1(a)のように、取付面接触部Bから突き出て、スイッチ2はスイッチ押下部材3のスイッチ押下部32に押されない状態となる。
【0014】
機器が取付面Wに固定された状態では、
図1(b)のように、スイッチ押下部材3が取付面Wにより押され、突起部31がベース1の内部に入り込み、スイッチ2はスイッチ押下部材3のスイッチ押下部32に押される状態となる。
【0015】
スイッチ押下部材3とスイッチ2の動きで、機器が取付面Wから外されたときに異常を検出し、信号を出力することができる。
【0016】
図2は、本発明のタンパースイッチの第1の実施形態のタンパー機能を無効にしたときを示した図であり、断面図である。
【0017】
図1と異なる点は、スイッチ押下部材3の方向であり、タンパー機能を無効にするときは、スイッチ押下部材3の突起部31をスイッチ2側に向く方向にし、ベース1の開口部11にスイッチ押下部材3のスイッチ押下部32を挿入し、ベース1の突起部12の内側にスイッチ押下部材3を装着することで、常時スイッチ2はスイッチ押下部材3の突起部31に押される状態になる。
【0018】
機器が取付面に固定されている場合も取付面から外された場合も、常時スイッチ2はスイッチ押下部材3の突起部31に押された状態となり、異常検出信号を出力することはない。
【0019】
本発明の第1の実施形態は、ベースに常に装着するスイッチ押下部材の装着する方向でタンパー機能の有効と無効とを変更するため、タンパー押下部材の紛失の恐れがなく、設置状況やユーザーの考えに応じて容易に機能を切り替えられる。また、ベースに穴を開けるなど加工をすることなくタンパー機能の有効と無効とを変更することができる。
【0020】
図3~6を用いて、本発明の第2の実施形態を説明する。
図3は、スイッチ押下部材4を示した図であり、
図3(a)は斜視図、
図3(b)は
図3(a)の平面Aにおける断面図である。
スイッチ押下部材4は、ゴムなどの弾性体であり、両面に各面から見て同形状である溝43、44を設け、片面に突起部41を、その対面にスイッチ押下部42を設けている。突起部41は溝43を設けた面より突き出た形状であり、スイッチ押下部42は溝44を設けた面と同じか凹んだ形状である。
【0021】
図4に示す1は、防犯用に使用される受動型赤外線検知装置や対向型光線式検知装置、反射型光線式検知装置などの防犯機器のベースであり、9は、防犯機器を覆うカバーである。ベース1の取付面側において、開口部13の周辺に突起部14を設けている。
スイッチ押下部材4は、溝43または溝44をベース1の突起部14に合わせてベース1に装着することができ、タンパー機能を有効にするときは溝44をベース1の突起部14に合わせてベース1に装着し、タンパー機能を無効にするときは溝43をベース1の突起部14に合わせてベース1に装着する。溝43、44は、ベース1の突起部14に対し、弾性力による摩擦力がかかる大きさの溝とし、スイッチ押下部材4はベース1に摩擦力で固定される。
【0022】
図5は、本発明のタンパースイッチの第2の実施形態のタンパー機能を有効にしたときを示した図である。
図5(a)は機器が取付面Wから外された状態、
図5(b)は機器が取付面Wに固定された状態を示した図であり、それぞれ断面図である。
【0023】
ベース1は、第1の実施形態と同様に機器設置時に壁やポールなどの取付面Wにネジやバンドなどで固定される。スイッチ2はマイクロスイッチやプッシュスイッチなどのノンロック式のスイッチであり、プリント基板5に実装され、プリント基板5はベース1に固定される。スイッチ2は取付面W側に実装され、スイッチ2が押されている状態が正常状態となり、スイッチ2が押されていない状態が異常状態となって、検出信号を出力するようになっている。
【0024】
タンパー機能を有効にするときは、スイッチ押下部材4の溝44をベース1の突起部13に合わせてスイッチ押下部材4をベース1に装着する。スイッチ押下部材4の突起部41は、機器が取付面Wから外された状態では、
図5(a)のように、取付面接触部Bから突き出て、スイッチ2はスイッチ押下部材4のスイッチ押下部42に押されない状態となる。
【0025】
機器が取付面Wに固定された状態では、
図5(b)のように、スイッチ押下部材4の突起部41が取付面Wにより押されスイッチ押下部材4が変形し、スイッチ押下部材4のスイッチ押下部42が突き出て、スイッチ2はスイッチ押下部材4のスイッチ押下部42に押される状態になる。
【0026】
再び機器が取付面Wから外されると、スイッチ押下部材4は弾性力により
図5(a)の状態に戻り、スイッチ2はスイッチ押下部材4のスイッチ押下部42に押されない状態となる。
【0027】
スイッチ押下部材4とスイッチ2の動きで、機器が取付面Wから外されたときに異常を検出し、信号を出力することができる。
【0028】
図6は、本発明のタンパースイッチの第2の実施形態のタンパー機能を無効にしたときを示した図であり、断面図である。
【0029】
図5と異なる点は、スイッチ押下部材4の装着方向であり、タンパー機能を無効にするときは、スイッチ押下部材4の溝43をベース1の突起部14に合わせてスイッチ押下部材4をベース1に装着する。スイッチ押下部材4のスイッチ押下部42と溝44とがある側の面は、ベース1の取付面接触部Bと同じか凹んだ状態となる。スイッチ押下部材4はスイッチ2を押すことができる弾性力があり、常時スイッチ2はスイッチ押下部材4の突起部41に押される状態になる。
【0030】
機器が取付面に固定されている場合も取付面から外された場合も、常時スイッチ2はスイッチ押下部材4の突起部41に押された状態となり、異常検出信号を出力することはない。
【0031】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態と同様に、ベースに常に装着するスイッチ押下部材の装着方向でタンパー機能の有効と無効とを変更するため、タンパー押下部材の紛失の恐れがなく、設置状況やユーザーの考えに応じて容易に機能を切り替えられる。また、ベースに穴を開けるなど加工をすることなくタンパー機能の有効と無効とを変更することができる。
【0032】
また、第1の実施形態とは異なり、タンパー押下部材をベースの外側に装着できるようにしているため、プリント基板を外すことなく容易にタンパー機能の有効と無効との変更を行うことができる。また、タンパー押下部材はベースに密着しベースの開口部を密封することができるため、防水性能を確保することができる。
【0033】
前述した第1の実施形態、第2の実施形態において、スイッチ押下部材とスイッチとの間に押下用延長部材が位置するようにスイッチ押下部材またはスイッチに押下用延長部材を取り付けて、押下用延長部材を介して間接的にスイッチ押下部材によりスイッチを押せるようにしてもよい。この場合、ベースの開口部からスイッチが離れて配置されていたとしても、ベースに常に装着するスイッチ押下部材の装着方向でタンパー機能の有効と無効とを変更することができる。
【0034】
図7と
図8に第2の実施形態において、ベースの開口部からスイッチが離れて配置され、押下用延長部材を使用した場合を示す。スイッチ押下部材4の形状およびベース1への取り付け方法は、前述した
図5と
図6の場合と同様である。
【0035】
図7は、タンパー機能を有効にしたときを示した図である。
図7(a)は機器が取付面Wから外された状態、
図7(b)は機器が取付面Wに固定された状態を示した図であり、それぞれ断面図である。
【0036】
押下用延長部材6は、スイッチ押下部材4の突起部41とスイッチ押下部42の両方に取り付け可能な形状としている。
図7(a)と
図7(b)では、押下用延長部材6をスイッチ押下部材4のスイッチ押下部42に取り付けている。
【0037】
図7(a)では、スイッチ押下部材4の突起部41は、取付面接触部Bから突き出て、スイッチ2は押されない状態となる。
図7(b)では、スイッチ押下部材4の突起部41が取付面Wにより押されスイッチ押下部材4が変形し、スイッチ押下部材4のスイッチ押下部42が突き出て、スイッチ2は押下用延長部材6を介して間接的にスイッチ押下部材4のスイッチ押下部42に押される状態になる。再び機器が取付面Wから外されると、スイッチ押下部材4は弾性力により
図7(a)の状態に戻り、スイッチ2は押されない状態となる。
【0038】
図8は、タンパー機能を無効にしたときを示した図であり、断面図である。
図8では、押下用延長部材6をスイッチ押下部材4の突起部41に取り付けている。スイッチ押下部材4はスイッチ2を押すことができる弾性力があり、常時スイッチ2は押下用延長部材6を介して間接的にスイッチ押下部材4の突起部41に押される状態になる。機器が取付面に固定されている場合も取付面から外された場合も、常時スイッチ2は押下用延長部材6を介して間接的にスイッチ押下部材4の突起部41に押された状態となり、異常検出信号を出力することはない。
【0039】
図7と
図8では、ベースの開口部の真上にスイッチがある状態で説明したが、スイッチは左右にずれていてもよく、スイッチの位置に応じて、ずれた分は押下用延長部材の形状を斜めなどにして押下用延長部材におけるスイッチとの接触面をオフセットすれば、ベースに常に装着するスイッチ押下部材の装着方向でタンパー機能の有効と無効とを変更することができる。
【0040】
また、前述した第1の実施形態、第2の実施形態において、防犯機器のタンパースイッチの構造に関して説明したが、防犯機器だけでなく、壁面やポールなどに取り付ける機器であれば使用可能なタンパースイッチの構造である。また、ベースの開口部の形状や数は限定しない。
【0041】
また、第1の実施形態において、ベース1の厚みやスイッチ2の動作後の動き(Over Travel)などによってはスイッチ押下部材3のスイッチ押下部32は無くてもよい。
【0042】
また、第2の実施形態において、スイッチ押下部材の両面に同形状の溝を設けていたが、異なる形状でもよく、機器のベースの突起部がはまる形状であればよい。また、スイッチ押下部材の溝を円形としていたが、四角形にしてもよく、形状は限定しない。また、連なっていなくてもよく途切れていてもよい。また、機器のベースの突起部も同様に円形としていたが、四角形にしてもよく、形状は限定しない。また、連なっていなくてもよく途切れていてもよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態を説明したが、前述の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲はこれに限定するものではなく、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1・・・ベース
2・・・スイッチ
3,4・・・スイッチ押下部材
5・・・プリント基板
6・・・押下用延長部材
9・・・カバー
11,13・・・開口部
12・・・突起部
14・・・突起部
31・・・突起部
32・・・スイッチ押下部
41・・・突起部
42・・・スイッチ押下部
43,44・・・溝
B・・・取付面接触部
W・・・取付面