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特許7296060ブロック共重合体、剥離剤組成物、剥離層、および剥離シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ブロック共重合体、剥離剤組成物、剥離層、および剥離シート
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20230615BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20230615BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
C08F293/00
C08G18/62 016
C09K3/00 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021509370
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012627
(87)【国際公開番号】W WO2020196373
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2019055928
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西塔 正幸
(72)【発明者】
【氏名】持舘 和臣
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-147327(JP,A)
【文献】特開2006-37069(JP,A)
【文献】特開2004-114620(JP,A)
【文献】特開2003-327946(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103788316(CN,A)
【文献】国際公開第2015/111668(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F293/
C09K3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セグメントと第2セグメントを有するブロック共重合体(A)であって、
前記第1セグメントは、一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基である。)で表されるモノマー、および
一般式(2):
【化2】
(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、nは1以上30以下のアルキレンオキシ基の平均付加モル数である。)で表されるモノマーからなる群より選ばれる1種以上の水酸基含有モノマーと、
一般式(3):
【化3】
(一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rはノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基、またはアダマンチル基である。)で表される多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーを含むモノマー成分により形成される重合体セグメントであり、
前記第2セグメントは、一般式(4):
【化4】
(一般式(4)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数12以上24以下のアルキル基である。)で表される長鎖アルキル基含有モノマーを含むモノマー成分により形成される重合体セグメントであり、
前記第1セグメントを形成するモノマー成分中、前記水酸基含有モノマーおよび前記多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーの合計の割合が、80質量%以上であり、
前記第2セグメントを形成するモノマー成分中、前記長鎖アルキル基含有モノマーの割合が、85質量%以上であり、
前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、前記水酸基含有モノマーの割合が1質量%以上30質量%以下であり、前記多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーの割合が5質量%以上45質量%以下であり、前記長鎖アルキル基含有モノマーの割合が45質量%以上90質量%以下であることを特徴とするブロック共重合体。
【請求項2】
前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、前記第1セグメントを形成するモノマー成分の割合が、10質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のブロック共重合体。
【請求項3】
請求項1または2記載のブロック共重合体(A)と、水酸基と反応性を有する官能基を有する架橋剤(B)を含むことを特徴とする剥離剤組成物。
【請求項4】
前記架橋剤(B)がイソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項3記載の剥離剤組成物。
【請求項5】
さらに、前記架橋剤(B)と反応性を有する官能基を有する高分子(C)を含むことを特徴とする請求項3または4記載の剥離剤組成物。
【請求項6】
前記高分子(C)が水酸基含有フッ素樹脂であることを特徴とする請求項5記載の剥離剤組成物。
【請求項7】
請求項3~6のいずれかに記載の剥離剤組成物から形成されることを特徴とする剥離層。
【請求項8】
基材の表面に、請求項7記載の剥離層が設けられていることを特徴とする剥離シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体、剥離剤組成物、剥離層、および剥離シートに関する。
【背景技術】
【0002】
剥離シートとは、基材の表面に剥離層を有するプラスチックフィルムなどの材料であり、例えば、合成皮革や電子材料のグリーンシートなどの材料形成用の支持体、粘着層の保護などの用途で使用されている。
【0003】
剥離層の構成成分としては、例えば、特許文献1および2で開示されているように、シロキサン骨格を有する化合物が剥離性に優れているため、広く用いられている。
【0004】
一方、積層セラミックコンデンサーや半導体素子などの電子部品の製造工程にて用いられる剥離シートにおいては、シロキサン骨格を有する化合物由来のケイ素成分が電子部品上に移行することで導通不良などの原因となる恐れがあるため、ケイ素成分を含まない剥離シートのニーズが存在する。
【0005】
特許文献3では、ケイ素成分を含まない剥離成分の一つとしては、長鎖アルキル基を有する共重合体が挙げられ、当該長鎖アルキル基含有ポリマーからなる離型層を有する離型フィルム(剥離シート)が開示されている。
【0006】
また、特許文献4では、剥離成分として、長鎖アルキル基および脂環族基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルが開示され、とくに、架橋反応に対する活性点を有しないポリ(メタ)アクリル酸エステルとともに架橋剤を併用することによって、相互侵入高分子網目構造を形成して、耐熱性、耐溶剤性、基材密着性などに優れた剥離層が形成できることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-306344号公報
【文献】特開2011-219630号公報
【文献】特開2003-300283号公報
【文献】特開2006-037069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、架橋剤を使用した剥離層の作製においては、剥離剤組成物を基材上に塗布した後、組成物中の構成成分の反応性官能基同士により架橋構造が形成される。しかしながら、そのような剥離剤組成物は、配合直後から反応性官能基の反応が開始するため、剥離剤組成物のゲル化などにより可使時間(ポットライフ)が短くなるため、生産工程に制約が生じる点、剥離剤組成物の配合からの経過時間に伴い、剥離層の性能が変化し得る点などが課題となっていた。
【0009】
また、剥離シートは、材料形成用の支持体として用いられる場合において、一般的に、材料を剥離層上に塗工する工程が含まれる。この工程の際、塗工装置の部品や材料中の固体粒子との接触により剥離層が削れると、剥離層成分が材料に混入することが懸念されるため、剥離シートは、硬度も要求される。
【0010】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、架橋剤を使用した場合においても、良好な可使時間を有する剥離剤組成物を調製でき、かつ優れた剥離性および硬度を有する剥離シートを作製できる、剥離成分(ブロック共重合体)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1セグメントと第2セグメントを有するブロック共重合体(A)であって、
前記第1セグメントは、一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基である。)で表されるモノマー、および
一般式(2):
【化2】
(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、nは1以上30以下のアルキレンオキシ基の平均付加モル数である。)で表されるモノマーからなる群より選ばれる1種以上の水酸基含有モノマーと、
一般式(3):
【化3】
(一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rはノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基、またはアダマンチル基である。)で表される多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーを含むモノマー成分により形成される重合体セグメントであり、
前記第2セグメントは、一般式(4):
【化4】
(一般式(4)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数12以上24以下のアルキル基である。)で表される長鎖アルキル基含有モノマーを含むモノマー成分により形成される重合体セグメントであり、
前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、前記水酸基含有モノマーの割合が1質量%以上30質量%以下であり、前記多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーの割合が5質量%以上45質量%以下であり、前記長鎖アルキル基含有モノマーの割合が45質量%以上90質量%以下であるブロック共重合体、に関する。
【0012】
また、本発明は、前記剥離剤組成物から形成される剥離層、に関する。
【0013】
また、本発明は、基材の表面に、前記剥離層が設けられている剥離シート、に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のブロック共重合体における効果のメカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0015】
本発明のブロック共重合体は、第1セグメントと第2セグメントを有する。前記第1セグメントは前記水酸基含有モノマーに由来する構造を有するため、ブロック共重合体の水酸基と架橋剤の反応により剥離層に架橋構造が導入できることから、剥離層の硬度が向上できる。また、前記第1セグメントは前記多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーに由来する構造を有するため、剥離剤組成物中のブロック共重合体の水酸基と架橋剤の接近を抑制することにより、可使時間を延長することができる。さらに、前記第2セグメントは前記長鎖アルキル基含有モノマーに由来する構造を有するため、剥離性を向上することができる。よって、本発明のブロック共重合体は、上記の各モノマー成分を特定量含有するため、架橋剤を使用した場合においても、良好な可使時間を有する剥離剤組成物を調製でき、かつ優れた剥離性および硬度を有する剥離シートを作製できる、剥離成分として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明について詳しく説明する。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの双方を含む総称を意味する。
【0017】
<ブロック共重合体(A)>
本発明のブロック共重合体は、第1セグメントと第2セグメントを有するブロック共重合体(A)である。
【0018】
<第1セグメント>
前記第1セグメントは、一般式(1):
【化5】
(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基である。)で表されるモノマー、および
一般式(2):
【化6】
(一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、nは1以上30以下のアルキレンオキシ基の平均付加モル数である。)で表されるモノマーからなる群より選ばれる1種以上の水酸基含有モノマーと、
一般式(3):
【化7】
(一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rはノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基、またはアダマンチル基である。)で表される多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーを含むモノマー成分により形成される重合体セグメントである。
【0019】
前記一般式(1)中、Rは炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、第2セグメント中の長鎖アルキル基との極性差を生じさせ、長鎖アルキル基部位の表面偏析を促進する観点から、炭素数1以上4以下であることが好ましい。前記一般式(1)で表されるモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
前記一般式(2)中、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、例えば、エチレンオキシ基(-CO-)、プロピレンオキシ基(-CO-)、テトラメチレンオキシ基(-CO-)などが挙げられる。前記一般式(2)中、-(AO)n-が、2種以上のアルキレンオキシ基を含む場合、各種アルキレンオキシ基の配列は、ブロックでもランダムでも良い。また、前記一般式(2)中、nは1以上30以下のアルキレンオキシ基の平均付加モル数であり、ブロック共重合体における水酸基の導入効率の観点から、nは1以上15以下であることが好ましい。前記一般式(2)で表されるモノマーとしては、例えば、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される水酸基含有モノマーは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
前記一般式(3)中、Rはノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基、またはアダマンチル基であり、これら有機基は、無置換であっても置換されていてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられる。前記一般式(3)で表される多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの中でも、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが好ましい。前記一般式(3)で表される多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
前記水酸基含有モノマーは、剥離層の架橋密度を高め、硬度を向上させる観点から、前記第1セグメントを形成(構成)するモノマー成分中、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、そして、剥離層形成時にブロック共重合体の表面偏析性を高め、剥離性を向上させる観点から、前記第1セグメントを形成(構成)するモノマー成分中、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
前記多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーは、剥離剤組成物中での架橋反応を抑制し、可使時間を向上させる観点から、前記第1セグメントを形成(構成)するモノマー成分中、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、そして、剥離層の架橋密度を高め、硬度を向上させる観点から、前記第1セグメントを形成(構成)するモノマー成分中、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
前記水酸基含有モノマーおよび前記多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーの合計は、架橋反応の抑制による可使時間の延長と架橋密度の増加による硬度の向上を両立する観点から、前記第1セグメントを形成(構成)するモノマー成分中、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0025】
前記第1セグメントを形成(構成)するモノマー成分には、上記の各モノマー成分の好ましい範囲を満たしたうえで、前記水酸基含有モノマーおよび前記多環式脂肪族炭化水素基含有モノマー以外のその他のモノマーを用いることができる。当該その他のモノマーは、公知のラジカル重合性単量体であればよいが、多環脂環式アルキル基の配向性制御などの観点から、例えば、炭素数1~24の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基含有(メタ)アクリレート;炭素数1~12の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基の水素原子の1つ以上がフッ素原子で置換された基を有するフッ素原子含有(メタ)アクリレート;アルコキシ基末端およびポリアルキレングリコール基含有(メタ)アクリレートなどが好ましい。前記炭素数1~24の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記炭素数1~12の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基の水素原子の1つ以上がフッ素原子で置換された基を有するフッ素含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-n-デシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記アルコキシ基末端およびポリアルキレングリコール基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。当該その他のモノマーは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
<第2セグメント>
前記第2セグメントは、一般式(4):
【化8】
(一般式(4)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数12以上24以下のアルキル基である。)で表される長鎖アルキル基含有モノマーを含むモノマー成分により形成される重合体セグメントである。
【0027】
前記一般式(4)中、Rは炭素数12以上24以下のアルキル基であり、剥離性を向上させる観点から、炭素数16以上22以下であることが好ましい。前記一般式(4)で表される長鎖アルキル基含有モノマーとしては、例えば、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの中でも、剥離性向上効果が高く、かつモノマーが40℃以下で融解するために製造時の融解時間を短縮できる観点より、オクタデシル(メタ)アクリレートが好ましい。前記一般式(4)で表される長鎖アルキル基含有モノマーは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
前記長鎖アルキル基含有モノマーは、長鎖アルキル基同士を局所的に結晶化し、表面自由エネルギーを低下させて、剥離性を向上させる観点から、前記第2セグメントを形成(構成)するモノマー成分中、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0029】
前記第2セグメントを形成(構成)するモノマー成分には、上記の長鎖アルキル基含有モノマーの好ましい範囲を満たしたうえで、前記長鎖アルキル基含有モノマー以外のその他のモノマーを用いることができる。当該その他のモノマーは、公知のラジカル重合性単量体であればよいが、剥離性や剥離層の物性を調整するなどの観点から、例えば、炭素数1~11の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基含有(メタ)アクリレート;炭素数1~12の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基の水素原子の1つ以上がフッ素原子で置換された基を有するフッ素原子含有(メタ)アクリレート;アルコキシ基末端およびポリアルキレングリコール基含有(メタ)アクリレート;水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基などの反応性官能基含有(メタ)アクリレートなどが好ましい。前記炭素数1~11の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記炭素数1~12の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基の水素原子の1つ以上がフッ素原子で置換された基を有するフッ素含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-n-デシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記アルコキシ基末端およびポリアルキレングリコール基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記反応性官能基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などが好ましい。当該その他のモノマーは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、前記水酸基含有モノマーの割合は1質量%以上30質量%以下である。前記水酸基含有モノマーの割合は、剥離層の架橋密度を高め、硬度を向上させる観点から、前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、そして、剥離層形成時にブロック共重合体の表面偏析性を高め、剥離性を向上させる観点から、前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、前記多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーの割合は5質量%以上45質量%以下である。前記多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーの割合は、剥離剤組成物中での架橋反応を抑制し、可使時間を向上させる観点から、前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、そして、剥離層の架橋密度を高め、硬度を向上させる観点から、前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、前記長鎖アルキル基含有モノマーの割合は45質量%以上90質量%以下である。前記長鎖アルキル基含有モノマーの割合は、長鎖アルキル基同士を局所的に結晶化し、表面自由エネルギーを低下させて、剥離性を向上させる観点から、前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、そして、剥離層の架橋密度の向上と可使時間の向上を両立する観点から、前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、前記第1セグメントを形成するモノマー成分の割合は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。前記第1セグメントを形成するモノマー成分の割合は、剥離層の架橋密度を高め、硬度を向上させる観点から、前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが好ましく、そして、剥離性を向上させる観点から、前記ブロック共重合体(A)を形成する全モノマー成分中、47質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
<ブロック共重合体(A)の製造方法>
本発明のブロック共重合体(A)の製造方法は、公知のブロック共重合体の製造方法を用いて得ることができ、何ら制限されるものではないが、例えば、アニオン重合法、ポリメリックペルオキシド(ポリメリックパーオキシド)を用いた重合法などが挙げられる。前記重合法としては、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、エマルション重合法などが挙げられる。
【0035】
前記ポリメリックペルオキシドを用いた重合法は、1分子中に2個以上のペルオキシ(パーオキシド)結合を有する化合物を、重合開始剤として用いる重合法である。前記ポリメリックペルオキシドとしては、例えば、特公平5-59942号公報に開示されている各種ポリメリックペルオキシド化合物が挙げられる。前記ポリメリックペルオキシドは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
前記ポリメリックペルオキシドとしては、一般式(5):
【化9】
(一般式(5)中、mは1~10の整数を表し、nは2~20の整数を表す。)で表される構造を有する化合物、一般式(6):
【化10】
(一般式(6)中、nは2~20の整数を表す。)で表される構造を有する化合物、一般式(7):
【化11】
(一般式(7)中、nは2~20の整数を表す。)で表される構造を有する化合物、が好ましい。
【0037】
前記ポリメリックペルオキシドを用いた重合法は、例えば、ポリメリックペルオキシドを重合開始剤として用い、前記一般式(4)で表される長鎖アルキル基含有モノマーを溶液(重合溶剤)中で重合する工程により、連鎖中にペルオキシ結合が導入されたペルオキシ結合含有第2セグメントを有する重合体の溶液を得る第1工程と、得られたペルオキシ結合含有第2セグメントを有する重合体の溶液に、前記一般式(1)または(2)で表される水酸基含有モノマーおよび前記一般式(3)で表される多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーを加えて重合する工程により、第1セグメントと第2セグメントからなるブロック共重合体(A)を得る第2工程を含む重合法である。なお、前記ポリメリックペルオキシドを用いた重合法では、第1工程として、前記一般式(1)または(2)で表される水酸基含有モノマーおよび前記一般式(3)で表される多環式脂肪族炭化水素基含有モノマーを加えてペルオキシ結合第1セグメントを有する重合体の溶液を得た後、第2工程として、前記一般式(4)で表される長鎖アルキル基含有モノマーを加えて重合してもよい。
【0038】
前記溶液(重合溶剤)は、ブロック共重合体(A)が製造できればものであればよい。前記溶液(重合溶剤)としては、例えば、アセトン、2-ブタノン、3-メチル-2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-メチル-3-ペンタノン、3-メチル-2-ペンタノン、4-メチル-2-ペンタノン、2,4-ジメチル-3-ペンタノン、4,4-ジメチル-2-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-メチル-3-ヘキサノン、5-メチル-2-ヘキサノン、5-メチル-3-ヘキサノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トリメチル酢酸メチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、2-メチル酪酸メチル、カプロン酸メチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、フェノール、シクロヘキサン、ヘキサン、イソヘキサン、イソヘキセン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、イソパラフィン系溶剤(日油(株)製、商品名:NAS-3,NAS-4,NAS-5H)などの炭化水素系溶剤;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリルなどの含窒素系溶剤;1,1,2,-トリフルオロ-1,2,2-トリクロロエタン、テトラクロルジフルオロエタン、メチルクロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノール、(メタ)パラキシレンヘキサフロライド、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタンなどのハロゲン系溶剤;ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどが挙げられる。当該前記溶液(重合溶剤)は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、前記ポリメリックペルオキシドの使用量は、ブロック共重合体(A)を構成するモノマー成分100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましく、2~15質量部であることがより好ましい。重合反応を行う温度は、使用する前記ポリメリックペルオキシドの種類によって適宜変更されるが、工業的に製造を行う上で、30~150℃であることが好ましく、40~100℃であることがより好ましい。
【0040】
前記ブロック共重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が、5,000以上200,000以下であることが好ましく、8,000以上150,000以下であることがより好ましく、10,000以上100,000以下であることがさらに好ましい。なお、前記重量平均分子量(Mw)は、以下の条件にて求めることができる。重量平均分子量が5,000未満であると、ブロック共重合体毎のモノマー成分の組成比の違いが大きくなり、剥離性が低下する可能性がある。一方、重量平均分子量が200,000を超えると、剥離剤組成物を調製する際に、溶解性が不足する可能性がある。
【0041】
<重量平均分子量(Mw)の測定条件>
分析装置:TOSOH HLC-8320GPC
カラム:TSKgel SuperMulbipore HZ-M(東ソー社製)
溶離液:THF
流量:0.35ml/min
検出器:RI
カラム温度:40℃
試料濃度:0.2wt%
試料注入量:10μL
標準試料:標準ポリスチレン
【0042】
<剥離剤組成物>
本発明の剥離剤組成物は、前記ブロック共重合体(A)と、水酸基と反応性を有する官能基を有する架橋剤(B)を含む。
【0043】
前記水酸基と反応性を有する官能基を有する架橋剤(B)は、前記ブロック共重合体(A)の水酸基と反応性を示す官能基を有する架橋剤であればよい。前記架橋剤(B)としては、例えば、強固な剥離層が得られる観点から、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。前記架橋剤(B)は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート類、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環式ポリイソシアネート類などのポリイソシアネート類;前記ポリイソシアネート類のビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。
【0045】
前記ポリイソシアネート類としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;これらのイソシアヌレートや、これらのポリメリックイソシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるポリイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリオールの反応により得られるポリイソシアネートが好ましい。
【0046】
前記架橋剤(B)は、剥離剤組成物中の架橋剤(B)と反応しうる官能基の合計量に対して、架橋剤(B)の官能基が0.5~1.5モル程度となるように添加することが好ましく、0.8~1.2モル程度になるように添加することがより好ましい。
【0047】
さらに、本発明の剥離剤組成物は、耐薬品性、撥油性、耐傷付性などの剥離性以外の機能を剥離層に付与する観点から、前記架橋剤(B)と反応性を有する官能基を有する高分子(C)を含むことができる。
【0048】
前記架橋剤(B)と反応性を有する官能基を有する高分子(C)は、前記架橋剤(B)の官能基と反応性を示す官能基(反応性官能基)を有する高分子であればよい。当該反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられ、架橋反応後の剥離層に残存した場合にプロトンの授受を伴う反応が起こりにくく、剥離層と接触する物体への悪影響が小さい観点から、水酸基が好ましい。前記高分子(C)は、剥離層の耐久性を向上させる観点から、高分子(C)1gの反応性官能基価の合計が、20~200mg/KOH程度であることが好ましく、30~160mg/KOH程度であることがより好ましい。また、前記高分子としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類などが挙げられ、これらの中でも、フッ素樹脂が好ましい。前記高分子(C)は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
前記フッ素樹脂は、フルオロオレフィンを構成単位として含む共重合体である。前記フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、フッ化ビニルなどが挙げられる。前記フルオロオレフィンは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
また、前記フッ素樹脂では、構成単位として、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル類;ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどのエチレングリコールモノビニルエーテル類;2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテルなどのヒドロキシアルキルアリルエーテル類;ヒドロキシ酢酸ビニルエステル、ヒドロキシ酪酸ビニルエステルなどのヒドロキシアルカン酸ビニルエステル類;ヒドロキシ酢酸アリルエステルなどのヒドロキシアルカン酸アリルエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類などの水酸基含有単量体を用いることができる。また、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;エチルアリルエーテル、n-プロピルアリルエーテル、n-ブチルアリルエーテルなどのアルキルアリルエーテル;プロピオン酸アリル、酪酸アリルなどのカルボン酸アリルエステル;エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテンなどのポリオレフィン;安息香酸ビニル、4-t-ブチル安息香酸ビニルなどの芳香族基含有単量体などを用いることができる。
【0051】
前記剥離剤組成物において、前記高分子(C)を使用する場合、前記高分子(C)は、前記ブロック共重合体(A)100質量部に対して、前記ブロック共重合体に起因する剥離性と前記高分子に起因する耐薬品性等の機能を両立する観点から25質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、そして、900質量部以下であることが好ましく、400質量部以下であることがより好ましい。
【0052】
前記剥離剤組成物は、有機溶剤で希釈して調製することができる。前記有機溶剤としては、前記重合溶剤として例示したものと同様のものが使用できる。前記剥離剤組成物は、固形分濃度が、通常、0.1~50質量%程度であり、1~20質量%程度であることが好ましい。
【0053】
前記剥離剤組成物には、必要に応じて、硬化触媒、pH調整剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、レオロジーコントロール剤、帯電防止剤、有機系粒子、無機系粒子、着色剤、難燃剤、レベリング剤などを用いることができる。
【0054】
<剥離層>
本発明の剥離層は、前記剥離剤組成物から形成されるものであり、例えば、前記剥離剤組成物(溶液)を基材に塗布し、溶剤などを乾燥除去して基材上に形成することにより作製される。前記塗布の方法としては、従来公知の各種の方法を使用可能であり、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ナイフコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法などが挙げられる。前記乾燥は、使用する溶剤、架橋剤(B)などによって、乾燥の温度および時間を適宜調整することが好ましいが、通常、60~200℃で、10秒~10分間程度である。また、前記乾燥は、異なる乾燥条件を組み合わせてもよい。
【0055】
前記基材としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、トリアセテートセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂などのプラスチック基材;上質紙、コート紙などの紙基材などが挙げられる。前記基材の形状はとくに制限されないが、剥離シートの形態として好適である観点から、フィルムやシートが好ましい。また、前記基材と前記剥離層との間には、プライマー層、接着層などの各種機能層;コロナ処理、UVオゾン処理、プラズマ処理などの表面処理層などを適宜設けてもよい。
【0056】
前記剥離層は、製造性や機能付与の観点から、膜厚が、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~10μmであることがより好ましい。
【0057】
<剥離シート>
本発明の剥離シートは、前記基材の表面に、前記剥離層が設けられたものである。前記剥離シートとしては、例えば、合成皮革や電子材料のグリーンシートなどの材料形成用の支持体、粘着層の保護などの用途が挙げられる。
【実施例
【0058】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
<ブロック共重合体(A)の製造>
<実施例1>
温度計、撹拌機及び還流冷却管を備えた反応容器にトルエン73.9gを加え、窒素ガスを吹き込みながら70℃に加熱した。その後、反応容器中の温度と窒素雰囲気を保ち、2-ヒドロキシルエチルメタクリレート9.0g、ジシクロペンタニルメタクリレート25.0g、メチルメタクリレート1.0g、トルエン106.4gからなる混合液と、前記一般式(7)で表される構造を有するポリメリックペルオキシド(n=10)16.7gからなる重合開始剤液を同時に1時間かけて加え、更に3時間重合反応を行い、ペルオキシ結合含有第1セグメントを有する重合体の溶液を得た。続いて、オクタデシルメタクリレート65.0g、トルエン22.3gの混合液を1時間かけて加え、2時間重合反応を行った。その後、更に80℃に昇温した後に3時間重合反応を行い、第1セグメントと第2セグメントを有するブロック共重合体(A)を含む重合溶液を得た。得られた重合溶液をトルエンによって希釈をして、ブロック共重合体(A)を含む溶液を得た(固形分濃度は30質量%)。上述したGPC測定方法に基づいて分析した結果、Mwが53,000、Mw/Mnが3.4であった。
【0060】
<実施例1~7、比較例1~2>
各実施例および比較例において、実施例1に記載の各モノマー成分およびその配合量を、表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例1~7、比較例1~2のブロック共重合体(A)を含む溶液を得た。また、上述の方法に基づき、Mw、Mw/Mnを測定した。結果を表1に示す。
【0061】
<ランダム共重合体の製造>
<比較例3>
温度計、撹拌機及び還流冷却管を備えた反応容器にトルエン106.4gを加え、窒素ガスを吹き込みながら70℃に加熱した。その後、反応容器中の温度と窒素雰囲気を保ち、2-ヒドロキシルエチルメタクリレート20.0g、ジシクロペンタニルメタクリレート25.0g、オクタデシルメタクリレート55.0g、トルエン88.1gからなる混合液と、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド(製品名:パーロイル355、日油株式会社製)2.2g、トルエン22.0gからなる重合開始剤液を同時に1時間かけて加え、更に9時間重合反応を行い、ランダム共重合体を含む重合溶液を得た。得られた重合溶液をトルエンによって希釈をして、ランダム共重合体を含む溶液を得た(固形分濃度は30質量%)。上述したGPC測定方法に基づいて分析した結果、Mwが46,000、Mw/Mnが3.2であった。
【0062】
<比較例4~5>
各比較例において、比較例3に記載の各モノマー成分およびその配合量を、表2に示すように変えたこと以外は、比較例3と同様の操作を行い、比較例4~5のランダム共重合体を含む溶液を得た。また、上述の方法に基づき、Mw、Mw/Mnを測定した。結果を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1および表2中、
HEMAは、2-ヒドロキシルエチルメタクリレート;
50PET800は、ポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノメタクリレート(ブレンマー55PET-800、日油株式会社製、エチレンオキシ基の平均付加モル数10、テトラメチレンオキシ基の平均付加モル数5、エチレンオキシ基とテトラメチレンオキシ基の配列はブロック);
DCPMAは、ジシクロペンタニルメタクリレート;
iBorAは、イソボルニルアクリレート;
MMAは、メチルメタクリレート;
SMAは、オクタデシルメタクリレート(ステアリルメタクリレート);
BMAは、n-ブチルメタクリレート;を示す。
【0066】
<実施例1-1>
<剥離剤組成物の製造>
上記の実施例1で得られたブロック共重合体(A)を含む溶液(固形分:30、0質量%、溶媒:トルエン)27.2g、架橋剤(B)としてイソシアネート系架橋剤(商品名:「コロネートL」、東ソー株式会社製)を2.4g、硬化触媒として、ジブチル錫ジラウリレートの0.01質量%トルエン溶液を0.6g、トルエン69.8gを混合し、剥離剤組成物を得た。得られた剥離剤組成物について、下記の評価を行った。結果を表3に示す。
【0067】
<可使時間の評価>
可使時間の評価は、コーンプレート型粘度計(測定装置:TVE-25L(東機産業株式会社製)、測定温度:25℃、ローター種:標準タイプ)を用い、剥離剤組成物の初期の粘度を測定した後、25℃で静置後の剥離剤組成物の粘度が、初期の粘度の2倍を超える時間までの時間を可使時間として評価した。
【0068】
<剥離シートの作製>
上記で得られた剥離剤組成物を、PETフィルム(商品名:「A4300」、東洋紡株式会社製)にバーコーター(No.02、第一理化株式会社製、Wet膜厚:4.6μm)を用いて剥離剤組成物を塗工した後、100℃の送風オーブンにて5分間加熱硬化を行い、剥離シートを作製した。得られた剥離シートについて、下記の評価方法を行った。結果を表3に示す。
【0069】
<剥離性の評価>
剥離性の評価は、剥離シートの剥離層の表面に、アクリル系粘着テープ(日東電工株式会社製、型番:31B、幅25mm)を張り合わせて試験片を作製し、25℃、60%RHにて24時間放置後、得られた試験片から粘着テープを引き剥がす力を引っ張り試験機(測定装置:AGS-H 500N(株式会社島津製作所製)、引っ張り速度:200mm/分、引張角度:180°)にて、剥離力(N)を測定して評価した。なお、剥離力(N)は、異なる3つの試験片における平均値である。
【0070】
<硬度の評価>
硬度の評価は、剥離シートの剥離層表面に対して、JIS K5600-5-4(機器:JIS K5600-5-4に準拠した車輪付き金属ブロック、塗膜と鉛筆の接触角度:45°、荷重:750g、鉛筆:製品名「Uni」(三菱鉛筆株式会社製)、試験回数:各鉛筆硬度に対して2回)に従って鉛筆硬度試験を行い、傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の鉛筆硬度を、硬度として評価した。
【0071】
<実施例1-2~7-1、比較例1-1~5-1>
<剥離剤組成物の製造、および剥離シートの作製>
各実施例および比較例において、各原料の種類とその配合量を表3または表4に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、剥離剤組成物および剥離シートを得た後、上記同様の評価を行った。評価結果を表3および表4に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
表3および表4中、
C-Lは、イソシアネート系架橋剤(商品名:「コロネートL」、東ソー株式会社製、固形分:74~76質量%、NCO含量:12.7~13.7質量%);
C-HXは、イソシアネート系架橋剤(商品名:「コロネートHX」、HDI系ポリイソシアネート、東ソー株式会社製、固形分:100質量%、NCO含量:20.5~22.0質量%);
LF200は、水酸基含有フッ素樹脂(商品名:「ルミフロンLF200」、固形分:60質量%、水酸基価:31mg(KOH)/g、AGC株式会社製);
LF910LM:水酸基含有フッ素樹脂(商品名:「ルミフロンLF910LM」、固形分:65質量%、水酸基価:63~73mg(KOH)/g、AGC株式会社製);
DBTtol:ジブチル錫ジラウリレートの0.01質量%トルエン溶液;を示す。