(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】がん免疫療法アジュバント
(51)【国際特許分類】
A61K 31/575 20060101AFI20230615BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230615BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230615BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230615BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2021564428
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 KR2020005368
(87)【国際公開番号】W WO2020222461
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0049990
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514163907
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コーポレーション ファウンデーション ヨンセイ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION, YONSEI UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】520473960
【氏名又は名称】キュラクル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CURACLE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】23-1 Hyoryeong-ro, Seocho-gu, Seoul 06694, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヨングン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ヘヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソンギ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,ミンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨミョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョンファ
(72)【発明者】
【氏名】アン,クヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ピョ,ジョンイン
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-509401(JP,A)
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2014年,450,pp.1320-1326
【文献】Cancer Res.,2009年,69(6),pp.2506-2513
【文献】Oncotarget,2014年,5(9),pp.2761-2777
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん免疫療法剤;および
下記式2
[式2]
【化1】
で表される化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容し得る塩
を活性成分として含む、組み合わせ薬剤であって、
がん免疫療法剤が抗PD1である、前記組み合わせ薬剤。
【請求項2】
化合物が、がん免疫療法剤の効果を高める、請求項1に記載の組み合わせ薬剤。
【請求項3】
化合物が、免疫増強作用を示す、請求項1に記載の組み合わせ薬剤。
【請求項4】
化合物が、がん免疫療法剤と同時にまたは逐次的に投与されてもよい、請求項1に記載の組み合わせ薬剤。
【請求項5】
化合物が、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)およびサイトカインからなる群から選択される少なくとも1種の免疫因子を活性化させる、請求項1に記載の組み合わせ薬剤。
【請求項6】
化合物が、偽粘液腫、肝内胆管癌腫、肝芽腫、肝臓がん、甲状腺がん、大腸がん、精巣がん、骨髄異形成症候群、膠芽腫、口腔がん、口唇がん、菌状息肉症、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞癌腫、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞がん、男性乳がん、脳がん、下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆嚢がん、胆道がん、結腸直腸がん、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、網膜芽腫、脈絡膜メラノーマ、ファーター膨大部がん、膀胱がん、腹膜がん、副甲状腺がん、副腎がん、鼻腔がん、非小細胞肺がん、舌がん、星状細胞腫、小細胞肺がん、若年性脳がん、若年性リンパ腫、若年性白血病、小腸がん、髄膜腫、食道がん、神経膠腫、腎盂がん、腎臓がん、心臓がん、十二指腸がん、悪性軟部がん、悪性骨がん、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性メラノーマ、眼がん、外陰部がん、尿管がん、尿道がん、原発不明がん、胃リンパ腫、胃がん、胃癌腫、消化管間質がん、ウィルムスがん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、肉腫、陰茎がん、咽頭がん、妊娠性絨毛疾患、子宮頸がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、前立腺がん、転移性骨がん、転移性脳がん、縦隔がん、直腸がん、直腸癌腫、膣がん、脊髄がん、前庭神経鞘腫、膵臓がん、唾液腺がん、カポジ肉腫、パジェット病、扁桃がん、扁平細胞癌腫、肺腺がん、肺がん、肺扁平細胞癌腫、皮膚がん、肛門がん、横紋筋肉腫、喉頭がん、胸膜がん、血液がん、および胸腺がんからなる群から選択される少なくとも1種のがんを予防または処置する、請求項1に記載の組み合わせ薬剤。
【請求項7】
化合物が、大腸がんを予防または処置する、請求項1に記載の組み合わせ薬剤。
【請求項8】
がん免疫療法剤;および
下記式2
[式2]
【化2】
で表される化合物、その立体異性体、またはその薬学的に許容し得る塩
を活性成分として含む、抗がん処置のためのキットであって、
がん免疫療法剤が抗PD1である、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、がん免疫療法アジュバントに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
がんは、全身に広がる可能性がある、異常な局所的細胞増殖により特徴づけられる疾患である。がんには、肺がん、膀胱がん、前立腺がん、膵臓がん、子宮頸がん、脳がん、胃がん、結腸直腸がん、およびメラノーマを含む、数多くの種類がある。従来、腫瘍学的がんの処置方法(腫瘍学)としては、手術、放射線療法、または化学療法が最も一般的であった。しかしながら、最近、がん免疫療法が、腫瘍学的処置として極めて有望であることが示されている。
【0003】
がん免疫療法は、腫瘍を直接切除または処置する従来の処置方法とは対照的に、免疫系を用いてがんを処置する腫瘍学の一分野である。この治療コンセプトは、T細胞の表面に存在している、これら細胞の免疫機能を阻害するように作用する数多くのタンパク質が見出されたことに基づいている。
腫瘍免疫における最も基本的な問題は、抗原を認識および排除する免疫系をどのように活性化させるかということである。この点について、腫瘍細胞を遺伝子操作して特定のサイトカインを分泌させるという新たな方法は、腫瘍免疫における大きな進歩をもたらした。
【0004】
免疫療法に基づく遺伝子組み換え腫瘍ワクチンの理論的背景は、腫瘍を外的因子として認識することができる抗原を宿主が保有しているということである。ヒトTリンパ球およびBリンパ球は、発生過程を通して抗原受容体という形で、無限に近い抗原の差異を区別する能力を有している。しかしながら、実際に腫瘍免疫を成功させるためには、次の2つの基準を満たさなければならない。第一に、腫瘍細胞が、正常細胞には発現していない新たな抗原(ペプチド)を発現していなければならない。第二に、免疫細胞が、適切に活性化されてこれらの抗原を認識しなければならない。
【0005】
サイトカイン遺伝子が導入された腫瘍細胞を用いた従来の免疫療法は、白色マウスを用いた動物実験でその有効性が示されていた。現在では、特定のサイトカイン遺伝子を導入した腫瘍細胞を白色マウスに注入した場合に、これらの白色マウスで新たな腫瘍を根絶することができ、腫瘍免疫を獲得することができるという研究が世界中で行われている。
世界的には、毎年1,000万人以上ががんと診断されており、この数は、2020年までには年間新たに1,500万人にまで増加するものとみられる。がんにより毎年600万人が死亡しており、あるいは世界の死亡数のうちの12%ががんによるものであり、がんを処置することができる方法は依然として必要とされている。かかる方法は、ヒトおよび他の哺乳動物におけるがんの予防または処置に有用な医薬組成物についての基盤を提供することができるものである。
【0006】
特に、がんの処置のための併用投与は、複合的な手段で疾患を攻撃することについての利点が認識されるにつれ、ますます一般的になってきている。抗がん剤に対する耐性を示す場合でも、併用投与は有用である。加えて、併用投与は、抗がん剤の効果を高めることにより、抗がん剤の投与量を減らすことができるという利点も有している。これにより、体の各器官への毒性および副作用を最小限にしながら、抗がん効果を増大させることが可能である。過去数十年にわたって数多くの有効な併用療法が見出されてきたが、年間のがん死亡者数が引き続き多いという観点から、抗がん療法における使用のための有効な療法を見出すことは引き続き必要とされている。
【0007】
特許文献1には、p53活性化剤およびc-Met阻害剤を活性成分として含む、がんの予防または治療のための併用投与における使用のための医薬組成物が開示されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、がん免疫療法アジュバントを提供することである。
本発明の別の目的は、がん免疫療法剤;およびがん免疫療法アジュバントを含む、がん免疫療法のための組み合わせ薬剤を提供することである。
本発明の別の目的は、がん免疫療法剤の効果を高めることにおける使用のための医薬組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、免疫を高めることにおける使用のための医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、がんを予防または処置するための方法を提供することである。
本発明の別の目的は、抗がん処置のためのキットを提供することである。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一つの側面においては、本発明は、下記式1で表される化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容し得る塩を活性成分として含む、がん免疫療法アジュバントを提供する。
[式1]
【化1】
(式1において、
Xは、酸素または硫黄であり;
【化2】
は、単結合または二重結合を表し;
【0011】
R1は、水素、ハロ、C1-30アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-30アルケニル、C3-10シクロアルケニル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC2-15ヘテロシクロアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-15ヘテロシクロアルキル、C2-30アルコキシアルキル、C3-30アルコキシアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-10ヘテロシクロアルケニル、C1-20アルコール、C1-20アルケノール、C2-30アシル、C1-10アミド、C1-10アミン、C2-15エステル、硫酸塩、カルボキシル基、C3-20カルボキシアルキル、C3-20カルボキシアルケニル、C3-20アルキルカルボキシル、C3-20アルケニルカルボキシル、C3-20アルキルカルボキシアルキル、C3-20アルキルカルボキシアルケニル、C3-20アルケニルカルボキシアルキル、C4-20アルケニルカルボキシアルケニル、C6-30アリール、C6-30アラルキル、C6-30アルカリール、ヘテロ原子として窒素を含有するC3-30ヘテロアリール、またはC6-30アリールカルボニルであり;
【0012】
R21は、C2-30アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-30アルケニル、C3-10シクロアルケニル、C2-30カルボキシアルキル、C2-30アルキルカルボキシル、C3-30カルボキシアルケニル、C3-30アルケニルカルボキシル、C3-30アルキルカルボキシアルキル、C3-30アルキルカルボキシアルケニル、C3-30アルケニルカルボキシアルキル、C4-30アルケニルカルボキシアルケニル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC2-10ヘテロシクロアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-10ヘテロシクロアルキル、C2-30アルコキシアルキル、C3-30アルコキシアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-10ヘテロシクロアルケニル、C1-20アルコール、C1-20アルケノール、C2-30アシル、C1-10アミド、C1-10アミンまたはC2-15エステルであり;
【0013】
R22は、水素、ヒドロキシ、ハロまたはC1-10アルキルであり;
R23は、水素、ヒドロキシまたはC1-10アルキルであり;
R21は、R22およびR23と一緒に結合している炭素に対して二重結合を形成していてもよく;
R23は、R21およびR22と一緒に結合している炭素に対して二重結合を形成していてもよく;
R21またはR23が前記炭素に対して二重結合を形成している場合は、R22は原子を含まず;ならびに
R3およびR4は、独立して水素またはC1-10アルキルである。)
【0014】
本発明の別の側面においては、本発明は、がん免疫療法剤;およびがん免疫療法アジュバントを含む、がん免疫療法用の組み合わせ薬剤を提供する。
本発明の別の側面においては、本発明は、式1で表される化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容し得る塩を活性成分として含む、がん免疫療法剤の効果を高めることにおける使用のための医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明の別の側面においては、本発明は、式1で表される化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容し得る塩を活性成分として含む、免疫を高めることにおける使用のための医薬組成物を提供する。
本発明の別の側面においては、本発明は、がん免疫療法剤;およびがん免疫療法アジュバントを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、がんを予防または処置するための方法を提供する。
本発明の別の側面においては、本発明は、がん免疫療法剤;およびがん免疫療法アジュバントを活性成分として含む、抗がん処置のためのキットを提供する。
【発明の効果】
【0016】
有利な効果
本発明によるがん免疫療法アジュバントは、がん免疫療法剤と組み合わせて投与される場合には、in vivoでの副作用を引き起こすことなく免疫因子の機能を活性化させ、がん免疫療法剤の抗がん作用を高める作用を示し、それによりがん免疫療法アジュバントとして有効に用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1aは、実験動物モデルの作製からその動物モデルの屠殺までの手順を示す概略図である。
【
図1B】
図1bは、MC38結腸直腸がん細胞株の注入および薬剤投与によるマウスの腫瘍サイズにおける変化を示すグラフである。
【
図1C】
図1cは、MC38結腸直腸がん細胞株の注入および薬剤投与によるマウスの生存率を示すグラフである。
【0018】
【
図2A】
図2aは、MC38結腸直腸がん細胞株の注入および薬剤投与後における、腫瘍および脾臓切除前のマウスの写真である。
【
図2B】
図2bは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスから摘出された脾臓の写真である。
【
図2C】
図2cは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスから摘出された腫瘍の写真である。
【
図2D】
図2dは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの体重における変化を示すグラフである。
【
図2E】
図2eは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍重量を示すグラフである。
【
図2F】
図2fは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの脾臓重量における変化を示すグラフである。
【0019】
【
図3A】
図3aは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍についてのFACSの結果である。
【
図3B】
図3bは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍についてのFACSの結果である。
【
図3C】
図3cは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍についてのFACSの結果である。
【
図3D】
図3dは、CD45.2+マーカーによる各薬剤投与群における免疫因子のレベルを示すグラフである。
【
図3E】
図3eは、各薬剤投与群におけるCD4
+T細胞のレベルを示すグラフである。
【
図3F】
図3fは、各薬剤投与群におけるCD8
+T細胞のレベルを示すグラフである。
【
図3G】
図3gは、各薬剤投与群におけるナチュラルキラー細胞のレベルを示すグラフである。
【
図3H】
図3hは、各薬剤投与群における制御性T細胞のレベルを示すグラフである。
【0020】
【
図4A】
図4aは、各薬剤投与群におけるCD4
+T細胞の増殖能を全量%として示すグラフである。
【
図4B】
図4bは、各薬剤投与群におけるCD8
+T細胞の増殖能を全量%として示すグラフである。
【
図4C】
図4cは、各薬剤投与群におけるナチュラルキラー細胞の増殖能を全量%として示すグラフである。
【
図4D】
図4dは、各薬剤投与群におけるCD4
+T細胞の増殖能をMFI(平均蛍光強度(mean fluorescence intensity))として示すグラフである。
【
図4E】
図4eは、各薬剤投与群におけるCD8
+T細胞の増殖能をMFI(平均蛍光強度)として示すグラフである。
【
図4F】
図4fは、各薬剤投与群におけるナチュラルキラー細胞の増殖能をMFI(平均蛍光強度)として示すグラフである。
【0021】
【
図5A】
図5aは、各薬剤投与群のCD4
+T細胞におけるCD107aのレベルを示すグラフである。
【
図5B】
図5bは、各薬剤投与群のCD8
+T細胞におけるCD107aのレベルを示すグラフである。
【
図6A】
図6aは、各薬剤投与群のCD4
+T細胞におけるTNFαのレベルを示すグラフである。
【
図6B】
図6bは、各薬剤投与群のCD8
+T細胞におけるTNFαのレベルを示すグラフである。
【
図7A】
図7aは、各薬剤投与群のCD4
+T細胞におけるIFNγのレベルを示すグラフである。
【
図7B】
図7bは、各薬剤投与群のCD8
+T細胞におけるIFNγのレベルを示すグラフである。
【0022】
【
図8A】
図8aは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍についてのFACSの結果である。
【
図8B】
図8bは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍についてのFACSの結果である。
【
図8C】
図8cは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD4
+T細胞のCD107aレベルを示すグラフである。
【
図8D】
図8dは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD4
+T細胞のTNFαレベルを示すグラフである。
【
図8E】
図8eは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD4
+T細胞のIFNγレベルを示すグラフである。
【
図8F】
図8fは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD8
+T細胞のCD107aレベルを示すグラフである。
【
図8G】
図8gは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD8
+T細胞のTNFαレベルを示すグラフである。
【
図8H】
図8hは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD8
+T細胞のIFNγレベルを示すグラフである。
【0023】
【
図9A】
図9aは、各薬剤投与群における腫瘍内接着結合の発現レベルを示す蛍光写真である。
【
図9B】
図9bは、各薬剤投与群における腫瘍内接着結合の発現レベルの定量化による蛍光密度を示すグラフである。
【
図10】
図10は、各薬剤投与群におけるPDL1およびCD3の発現レベルを示す蛍光写真である。
【0024】
【
図11A】
図11aは、各薬剤投与群における炎症促進性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの発現についてのRT-PCRの結果を示す写真である。
【
図11B】
図11bは、各薬剤投与群におけるCXCL9、iNOSおよびGapdhの発現についてのRT-PCRの結果を示す写真である。
【
図11C】
図11cは、各群のmRNA発現レベルをRT-PCRによりグラフ化して示す写真である。
【0025】
【
図12A】
図12aは、CD4/8+T、NK除去、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与の手順を示す概略図である。
【
図12B】
図12bは、CD4/8+T、NK除去、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与による結果がフローサイトメトリーで確認されたこと、ならびに免疫細胞の除去が順調に進んだことを確認する図である。
【
図12C】
図12cは、CD4/8+TおよびNK除去による、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与後のマウスの生存率を示す図であり、CD8+T細胞を除去した実験群マウスは生存率が最も低かったことを確認している。
【
図12D】
図12dは、
図12cと同様のプロセスを説明する図であり、CD4/8+T除去による、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与後の腫瘍の増殖率を経時的に示しており、CD8+T細胞を除去した実験群マウスは腫瘍増殖率が最も高かったことを確認している。
【
図12E】
図12eは、CD4/8+TおよびNK除去による、MC38結腸直腸がん細胞株の注入および薬剤投与後の各実験群での腫瘍のサイズ比較を示す図であり、CD8+T細胞を除去した実験群マウスで腫瘍サイズが最も大きかったことを確認している。
【0026】
【
図13A】
図13aは、MC38結腸直腸がん細胞株注入および長期薬剤投与の手順を示す概略図である。
【
図13B】
図13bは、MC38結腸直腸がん細胞株注入および長期薬剤投与によるマウスの生存率を示すグラフである。
【
図13C】
図13cは、MC38結腸直腸がん細胞株注入および長期薬剤投与によるマウスの腫瘍サイズを示すグラフである。
【0027】
好ましい態様の説明
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の態様は、他の様々な形態に改変することが可能であり、本発明の範囲は下記の態様に限定されない。本発明の態様が本発明をより正確に説明するために記載されるものであることは、当該分野における平均的な知識を有する者にはよく理解されるところである。加えて、本明細書全体を通じてある要素を「包含すること」は、特に別段の記載がない限り、他の要素を排除するものでなく、他の要素を包含し得る。
【0028】
本発明の一つの側面においては、本発明は、がん免疫療法アジュバントを提供する。
特に、本発明は、下記式1で表される化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容し得る塩を活性成分として含む、がん免疫療法アジュバントを提供する。
[式1]
【化3】
(式1において、
Xは、酸素または硫黄であり;
【化4】
は、単結合または二重結合を表し;
【0029】
R1は、水素、ハロ、C1-30アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-30アルケニル、C3-10シクロアルケニル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC2-15ヘテロシクロアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-15ヘテロシクロアルキル、C2-30アルコキシアルキル、C3-30アルコキシアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-10ヘテロシクロアルケニル、C1-20アルコール、C1-20アルケノール、C2-30アシル、C1-10アミド、C1-10アミン、C2-15エステル、硫酸塩、カルボキシル基、C3-20カルボキシアルキル、C3-20カルボキシアルケニル、C3-20アルキルカルボキシル、C3-20アルケニルカルボキシル、C3-20アルキルカルボキシアルキル、C3-20アルキルカルボキシアルケニル、C3-20アルケニルカルボキシアルキル、C4-20アルケニルカルボキシアルケニル、C6-30アリール、C6-30アラルキル、C6-30アルカリール、ヘテロ原子として窒素を含有するC3-30ヘテロアリール、またはC6-30アリールカルボニルであり;
【0030】
R21は、C2-30アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-30アルケニル、C3-10シクロアルケニル、C2-30カルボキシアルキル、C2-30アルキルカルボキシル、C3-30カルボキシアルケニル、C3-30アルケニルカルボキシル、C3-30アルキルカルボキシアルキル、C3-30アルキルカルボキシアルケニル、C3-30アルケニルカルボキシアルキル、C4-30アルケニルカルボキシアルケニル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC2-10ヘテロシクロアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-10ヘテロシクロアルキル、C2-30アルコキシアルキル、C3-30アルコキシアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-10ヘテロシクロアルケニル、C1-20アルコール、C1-20アルケノール、C2-30アシル、C1-10アミド、C1-10アミンまたはC2-15エステルであり;
【0031】
R22は、水素、ヒドロキシ、ハロまたはC1-10アルキルであり;
R23は、水素、ヒドロキシまたはC1-10アルキルであり;
R21は、R22およびR23と一緒に結合している炭素に対して二重結合を形成していてもよく;
R23は、R21およびR22と一緒に結合している炭素に対して二重結合を形成していてもよく;
R21またはR23が前記炭素に対して二重結合を形成している場合は、R22は原子を含まず;ならびに
R3およびR4は、独立して水素またはC1-10アルキルである。)
【0032】
式1において、Xは、酸素であってもよい。
式1において、R1は、水素、ハロ、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C2-10アルケニル、C3-8シクロアルケニル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC2-8ヘテロシクロアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-10ヘテロシクロアルキル、C2-20アルコキシアルキル、C3-20アルコキシアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-8ヘテロシクロアルケニル、C1-10アルコール、C1-10アルケノール、C2-20アシル、C1-10アミド、C1-5アミン、C2-15エステル、硫酸塩、カルボキシル基、C3-20カルボキシアルキル、C3-20カルボキシアルケニル、C3-20アルキルカルボキシル、C3-20アルケニルカルボキシル、C3-20アルキルカルボキシアルキル、C3-20アルキルカルボキシアルケニル、C3-20アルケニルカルボキシアルキル、C4-20アルケニルカルボキシアルケニル、C6-20アリール、C6-20アラルキル、C6-20アルカリール、ヘテロ原子として窒素を含有するC3-20ヘテロアリール、またはC6-20アリールカルボニルであってもよい。
【0033】
式1において、R1は、水素、C1-10アルキル、C3-8シクロアルキル、C2-10アルケニル、C3-8シクロアルケニル、ヘテロ原子として酸素を含有するC2-8ヘテロシクロアルキル、ヘテロ原子として酸素を含有するC3-10ヘテロシクロアルキル、C2-20アルコキシアルキル、C3-10アルコキシアルキル、ヘテロ原子として酸素を含有するC3-8ヘテロシクロアルケニル、C1-10アルコール、C1-10アルケノール、C1-10アミド、C1-5アミン、C2-15エステル、硫酸塩、カルボキシル基、C3-20カルボキシアルキル、C3-20カルボキシアルケニル、C3-20アルキルカルボキシル、C3-20アルケニルカルボキシル、C3-20アルキルカルボキシアルキル、C3-20アルキルカルボキシアルケニル、C3-20アルケニルカルボキシアルキル、C4-20アルケニルカルボキシアルケニル、C6-20アリール、C6-20アラルキル、C6-20アルカリール、ヘテロ原子として窒素を含有するC3-20ヘテロアリール、またはC6-20アリールカルボニルであってもよい。
【0034】
式1のR1において、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ヒドロキシ、ハロ、C1-5アルキル、C1-5アルコール、C1-5アルコキシ、C2-8アルコキシアルキル、C6-20アリール、C7-20アリールカルボキシルまたはそれらの組み合わせで置換されていてもよく;C3-10シクロアルケニルまたはヘテロシクロアルケニルは、ヒドロキシ、ハロ、C1-5アルキル、C2-8アルキルカルボキシル、C3-8アルキルカルボキシルアルキル、C1-5アルコール、C1-5アルコキシ、C2-8アルコキシアルキル、C6-20アリール、C7-20アリールカルボキシルまたはそれらの組み合わせで置換されていてもよく;アリールは、ヒドロキシ、ハロ、C1-5アルキル、C1-5アルコール、C1-5アルコキシ、C2-8アルコキシアルキル、ニトロ、C2-8アルキルカルボキシルアミノまたはそれらの組み合わせで置換されていてもよく;アラルキルは、ヒドロキシ、ハロ、C1-5アルキル、C1-5アルコール、C1-5アルコキシ、C2-8アルコキシアルキル、ニトロ、C2-8アルキルカルボキシルアミノまたはそれらの組み合わせで置換されていてもよく;アルカリールは、ヒドロキシ、ハロ、C1-5アルキル、C1-5アルコール、C1-5アルコキシ、C2-8アルコキシアルキル、ニトロ、C2-8アルキルカルボキシルアミノまたはそれらの組み合わせで置換されていてもよく;アリールカルボニルは、ヒドロキシ、ハロ、C1-5アルキル、C1-5アルコール、C1-5アルコキシ、C2-8アルコキシアルキル、ニトロ、C2-8アルキルカルボキシルアミノまたはそれらの組み合わせで置換されていてもよく;および、ヘテロアリールは、ヒドロキシ、ハロ、C1-5アルキル、C1-5アルコール、C1-5アルコキシ、C2-8アルコキシアルキル、ニトロ、C2-8アルキルカルボキシルアミノまたはそれらの組み合わせで置換されていてもよい。
【0035】
式1において、R21は、直鎖または分岐C2-15アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-15アルケニル、C3-10シクロアルケニル、C2-15カルボキシアルキル、C2-15アルキルカルボキシル、C3-15カルボキシアルケニル、C2-15アルケニルカルボキシル、C3-15アルキルカルボキシアルキル、C3-15アルキルカルボキシアルケニル、C3-15アルケニルカルボキシアルキル、C2-30アルケニルカルボキシアルケニル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC2-10ヘテロシクロアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-10ヘテロシクロアルキル、C2-20アルコキシアルキル、C3-30アルコキシアルキル、ヘテロ原子として酸素、硫黄もしくは窒素を含有するC3-10ヘテロシクロアルケニル、C1-20アルコール、C1-20アルケノール、C2-30アシル、C1-10アミド、C1-10アミンまたはC2-15エステルであってもよい。
【0036】
式1において、R
23は、C
1-5アルキルであるか、またはR
21およびR
22と一緒に結合している炭素に対して二重結合を形成していてもよい。
式1において、
【化5】
は、二重結合であってもよい。
式1で表される化合物の例には、下記式2
【化6】
で表される化合物が含まれる。
【0037】
本発明の式1で表される化合物は、薬学的に許容し得る塩の形態として用いることができ、この場合、塩は、好ましくは薬学的に許容し得る遊離酸により形成される酸付加塩である。本明細書における酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸、および亜リン酸などの無機酸;脂肪族モノおよびジカルボン酸塩、フェニル置換アルカン酸塩、ヒドロキシアルカン酸塩およびアルカン二酸塩、芳香族酸、ならびに脂肪族および芳香族スルホン酸などの非毒性有機酸;ならびにトリフルオロ酢酸、酢酸塩、安息香酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、酒石酸、およびフマル酸などの有機酸から得ることができる。
【0038】
薬学的に非毒性である塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、カバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオン酸塩、ヘキサン-1,6-ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、およびマンデル酸塩が例示される。
【0039】
本発明による酸付加塩は、当業者に知られている従来の方法により調製することができる。例えば、式1で表される誘導体を、メタノール、エタノール、アセトン、塩化メチレン、およびアセトニトリルなどの有機溶媒に溶解し、これに有機酸または無機酸を加えて沈殿を誘導する。次いで、沈殿物をろ過し、乾燥させて塩を得る。あるいは、溶媒および過剰な酸を減圧下で蒸留し、乾燥させて塩を得る。あるいは、沈殿物を有機溶媒中で結晶化させて同様のものを得る。
【0040】
薬学的に許容し得る金属塩は、塩基を用いて調製することができる。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、下記プロセス:化合物を過剰なアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液に溶解すること;非溶解性の化合物塩をろ過すること;残った溶液を蒸発させること、およびそれを乾燥させることにより得られる。この場合、金属塩は好ましくは、薬学的に適した、ナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩の形態で調製される。ならびに、対応する銀塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と適切な銀塩(例;硝酸銀)との反応により調製される。
【0041】
加えて、本発明には、式1で表される化合物だけでなく、その薬学的に許容し得る塩、およびそれらから生成され得る溶媒和物、光学異性体、または水和物も含まれる。
用語「水和物」は、非共有結合性の分子間力で結合した化学量論的または非化学量論的な量の水を含む、本発明の化合物またはその塩をいう。本発明の式1で表される化合物の水和物は、非共有結合性の分子間力で結合した化学量論的または非化学量論的な量の水を含むことができる。水和物は、1当量を超える水を含むことができ、好ましくは、1~5当量の水を含むことができる。かかる水和物は、本発明の式1で表される化合物、その異性体、またはその薬学的に許容し得る塩を、水または水を含有する溶媒から結晶化させることにより調製することができる。
【0042】
用語「溶媒和物」は、非共有結合性の分子間力で結合した化学量論的または非化学量論的な量の溶媒を含む、本発明の化合物またはその塩をいう。そのための好ましい溶媒には、揮発性、非毒性、および/またはヒトへの投与に適した、溶媒が含まれる。
用語「異性体」は、同じ化学式または分子式を有するが、構造的または立体的に異なっている本発明の化合物またはその塩をいう。かかる異性体には、互変異性体などの構造異性体、幾何学異性体(トランス、シス)および光学異性体(エナンチオマー)などの立体異性体が含まれる。全てのこれら異性体およびその混合物もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0043】
本発明によるがん免疫療法アジュバントにおいて、式1で表される化合物またはその薬学的に許容し得る塩は、臨床投与時には様々な製剤で経口または非経口的に投与することができる。より好ましくは、これは非経口投与製剤であってもよい。式1で表される化合物またはその薬学的に許容し得る塩は、一般的に用いられる希釈剤または充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、および界面活性剤などの賦形剤と混合することにより、経口または非経口投与用に調製することができる。経口投与用固形製剤は、錠剤、丸剤、粉剤、顆粒、およびカプセルである。これら固形製剤は、本発明の式1で表される化合物またはその薬学的に許容し得る塩を、デンプン、炭酸カルシウム、ショ糖または乳糖、ゼラチンなどの1種類以上の適した賦形剤と混合することにより調製される。単純な賦形剤以外では、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤を用いることができる。
【0044】
経口投与用の液体製剤は、懸濁液、溶液、乳濁液、およびシロップであり、上記製剤は、水または流動パラフィンなどの一般的に用いられる単純な希釈剤に加えて、湿潤剤、甘味料、香料、および防腐剤などの様々な賦形剤を含有し得る。非経口投与用製剤は、滅菌水溶液、水不溶性賦形剤、懸濁液、および乳濁液である。水不溶性賦形剤および懸濁液は、活性化合物または化合物に加えて、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルのような注射用エステル等を含有し得る。
【0045】
式1で表される化合物またはその薬学的に許容し得る塩を活性成分として含むがん免疫療法アジュバントは、非経口的に投与することができ、非経口的投与には、皮下注入、静脈内注入、筋肉内注入、または胸腔内注入が含まれる。
【0046】
式1で表される化合物またはその薬学的に許容し得る塩を非経口投与用製剤として調製するためには、式1で表される化合物またはその薬学的に許容し得る塩を、水中で安定剤または緩衝剤と混合して溶液または懸濁液を生成し、次いでこれをアンプルまたはバイアルとして製剤化する。本明細書における組成物は、滅菌されていてもよく、さらに防腐剤、安定剤、湿潤性粉末または乳化剤、浸透圧調節のための塩および/または緩衝剤、ならびに他の治療上有用な物質を含有し、組成物は、従来の混合、造粒または被覆方法により製剤化することができる。
【0047】
経口投与用製剤としては、錠剤、丸剤、ハード/ソフトカプセル、溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、顆粒、エリキシル、およびトローチが例示される。これら製剤は、活性成分に加えて、希釈剤(例えば、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、セルロース、および/またはグリシン)および潤滑剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸エステルおよびそのマグネシウム塩またはカルシウム塩、および/またはポリエチレングリコール)を含むことができる。錠剤は、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンなどの結合剤を含むことができ、必要に応じてさらに、デンプン、アガロース、アルギン酸またはそのナトリウム塩または共沸混合物などの崩壊剤、吸収剤、着色剤、香味剤、および甘味料を含むことができる。
【0048】
がん免疫療法アジュバントは、がん免疫療法剤の効果を高めることができ、より具体的には、免疫因子を活性化させてがん免疫療法剤の抗がん活性を補助することにより、がん免疫療法剤の効果を高めることができる。免疫因子は、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、およびサイトカインからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
がん免疫療法アジュバントは、がん免疫療法剤と同時にまたは逐次的に投与することができ、逐次的に投与する場合は、がん免疫療法剤を投与した後にがん免疫療法アジュバントを投与してもよく、または、がん免疫療法剤を投与した後にがん免疫療法アジュバントを投与してもよい。しかしながら、投与方法は一例に過ぎず、抗がん免疫作用を高めるために投与方法を変更してもよい。本発明の一つの態様においては、がん免疫療法アジュバントを毎日静脈内注入により投与し、かつがん免疫療法剤を週に3回腹腔内注入により投与したが、必ずしもこれに限定されない。
【0049】
がん免疫療法アジュバントは、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)およびサイトカインからなる群から選択される1種以上の免疫因子を活性化させることができる。がん免疫療法アジュバントは、免疫因子を活性化させることにより、がん免疫療法剤の抗がん作用を高める作用を示す。
この場合、がん免疫療法アジュバントは、がん免疫療法剤と組み合わせて投与することにより、がんを予防または処置することができる。
【0050】
がんは、偽粘液腫、肝内胆管癌腫、肝芽腫、肝臓がん、甲状腺がん、大腸がん、精巣がん、骨髄異形成症候群、膠芽腫、口腔がん、口唇がん、菌状息肉症、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞癌腫、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞がん、男性乳がん、脳がん、下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆嚢がん、胆道がん、結腸直腸がん、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、網膜芽腫、脈絡膜メラノーマ、ファーター膨大部がん、膀胱がん、腹膜がん、副甲状腺がん、副腎がん、鼻腔がん、非小細胞肺がん、舌がん、星状細胞腫、小細胞肺がん、若年性脳がん、若年性リンパ腫、若年性白血病、小腸がん、髄膜腫、食道がん、神経膠腫、腎盂がん、腎臓がん、心臓がん、十二指腸がん、悪性軟部がん、悪性骨がん、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性メラノーマ、眼がん、外陰部がん、尿管がん、尿道がん、原発不明がん、胃リンパ腫、胃がん、胃癌腫、消化管間質がん、ウィルムスがん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、肉腫、陰茎がん、咽頭がん、妊娠性絨毛疾患、子宮頸がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、前立腺がん、転移性骨がん、転移性脳がん、縦隔がん、直腸がん、直腸癌腫、膣がん、脊髄がん、前庭神経鞘腫、膵臓がん、唾液腺がん、カポジ肉腫、パジェット病、扁桃がん、扁平上皮細胞癌腫、肺腺がん、肺がん、肺扁平上皮細胞癌腫、皮膚がん、肛門がん、横紋筋肉腫、喉頭がん、胸膜がん、血液がん、および胸腺がんからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0051】
がん免疫療法アジュバントは、当業者に従来から知られている周知のがん免疫療法剤と一緒に、制限なく併用投与することができる。例えば、がん免疫療法アジュバントは、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3、抗VISTA、抗BTLA、抗TIM3、抗HVEM、抗CD27、抗CD137、抗OX40、抗CD28、抗PDL2、抗GITR、抗ICOS、抗SIRPα、抗ILT2、抗ILT3、抗ILT4、抗ILT5、抗EGFR、抗CD19および抗TIGITからなる群から選択される1種以上のがん免疫療法剤と組み合わせて投与することができるが、必ずしもこれに限定されない。
【0052】
本発明の他の側面において、本発明は、がん免疫療法用の組み合わせ薬剤を提供する。
特に、本発明は、がん免疫療法剤およびがん免疫療法アジュバントを含む、がん免疫療法用の組み合わせ薬剤を提供する。
がん免疫療法剤、がん免疫療法アジュバントおよび組み合わせ薬剤の具体的な説明は、がん免疫療法アジュバントの具体的な説明と同様である。
【0053】
本発明の他の側面において、本発明は、がん免疫療法剤の効果を高めることにおける使用のための医薬組成物を提供する。
特に、本発明は、式1で表される化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容し得る塩を活性成分として含む、がん免疫療法剤の効果を高めることにおける使用のための医薬組成物を提供する。
【0054】
[式1]
【化7】
式1における、R
1~R
4およびXの具体的な説明は、がん免疫療法アジュバントにおける式1の具体的な説明と同様である。
加えて、がん免疫療法剤の効果を高めることにおける使用のための医薬組成物の具体的な説明は、がん免疫療法アジュバントの具体的な説明と同様である。
【0055】
本発明の他の側面において、本発明は、免疫を高めることにおける使用のための医薬組成物を提供する。
特に、本発明は、式1で表される化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容し得る塩を活性成分として含む、免疫を高めることにおける使用のための医薬組成物を提供する。
【0056】
[式1]
【化8】
式1における、R
1~R
4およびXの具体的な説明は、がん免疫療法アジュバントにおける式1の具体的な説明と同様である。
加えて、免疫を高めることにおける使用のための医薬組成物の具体的な説明は、がん免疫療法アジュバントの具体的な説明と同様である。
【0057】
本発明の他の側面において、本発明は、がん免疫療法剤およびがん免疫療法アジュバントを、それを必要とする対象に投与するステップを含む、がんを予防または処置するための方法を提供する。
がん免疫療法アジュバントおよびがん免疫療法剤は、組み合わせて投与してもよく、または異なる時点で投与してもよい。
【0058】
本発明の他の側面において、本発明は、がん免疫療法アジュバントおよび免疫療法剤の、がんの予防または処置における使用を提供する。
本発明の他の側面において、本発明は、がん免疫療法アジュバントおよびがん免疫療法剤を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、がんの処置のための組み合わせ療法を提供する。
本発明の他の側面において、本発明は、がん免疫療法剤およびがん免疫療法アジュバントを活性成分として含む、がんを予防または処置するためのキットを提供する。
【0059】
以下に、下記の例および実験例により本発明を詳細に説明する。
しかしながら、下記の例および実験例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の内容はこれに限定されない。
【0060】
例1:がん免疫療法アジュバント(SAC-1004)の調製
[式2]
【化9】
式2で表される化合物SAC-1004は、がん免疫療法剤との併用投与のための本発明の医薬組成物であるが、韓国特許公開第10-2011-0047170号に基づき、下記反応式1に従って調製した。
【0061】
【0062】
13.4mgのSAC-1003をテトラヒドロフラン1mLに溶解し、これにアルゴン雰囲気下でトリ-O-アセチル-D-グルカール(Aldrich)26mgおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(Aldrich)0.012mLを加え、次いで0℃で10時間撹拌した。反応溶液を室温まで昇温させた後、ジエチルエーテル5mLを加えて希釈し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1:10)の混合溶出液を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、目的化合物SAC-1004(11mg、56%)を得た: 1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ5.89-5.80 (m, 2H), 5.37-5.27 (m, 2H), 5.17-5.14 (m, 2H), 4.23-4.16 (m, 3H), 3.66 (s, 3H), 3.56 (m, 1H), 2.38-2.28 (m, 4H), 2.17-0.53 (m, 37H)。
【0063】
<実験方法>
1.実験動物モデルの作製
MC-38結腸直腸がん細胞(5x10
5細胞)を7週齢のC57BL/6雄性マウスに皮下注入した。結腸直腸がん細胞を注入して7日後、皮下MC-38腫瘍の平均腫瘍体積は約40mm
3であった。上記の通りのマウス腫瘍注入方法は、下記4群全てに対し同様に適用した。その後、実験群を、ビヒクル投与対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群に分けて、実験を行った。
図1aは、実験動物モデルの作製からその動物モデルの屠殺までの手順を示す概略図である。
【0064】
具体的には、投与は下記の通りに行った。血管漏出抑制剤であるSAC-1004をPBS中のDMSOに溶解し、マウス体重kgあたり1mgを静脈内注入により毎日投与した。免疫チェックポイント阻害剤である抗PD1は、200ng/マウスの濃度で、200ngのラットigG2aと共に腹腔内注入により週3回投与した。上記の通りにSAC-1004および抗PD1を各群に7日間投与し、8日目に腫瘍および脾臓を摘出した。
【0065】
2.RNA単離、cDNA合成およびPCR解析
摘出した腫瘍組織からTrizol試薬を用いて全RNAを単離した。単離したRNAの濃度は、nano-drop(ND-1000、Thermo scientific)を用いて260/280nmにおける吸光度を測定することにより決定し、RNA2μgを含み全量が20μlになるようにしてcDNAを合成した。
【0066】
3.マウス腫瘍の蛍光活性化セルソーティング(FACS)
コラゲナーゼを用いて腫瘍組織から細胞を分離した後、細胞に培地を加えて遠心し、沈殿した細胞を回収して計数した。生細胞を37℃で約30分間染色した。生細胞のみを染色した後、続いてPBSで3回洗浄した。生/死染色によりキャリブレーションを行った。加えて、Cantoを用いてFACSを行った。これにより、T細胞の活性比を比較することができた。
【0067】
T細胞は適応免疫反応に関与しており、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+T細胞)、およびCD4+T細胞由来であるが細胞傷害性T細胞を抑制する制御性T細胞(Treg細胞)に分けられる。加えて、自然免疫反応に関与する細胞傷害性を持つナチュラルキラー細胞(NK細胞)があるため、各群におけるこれらの細胞レベルを測定した。
ヘルパーT細胞であるCD4+T細胞を測定するマーカーとしてCD4抗体を用い、ならびに細胞傷害性T細胞であるCD8+T細胞を測定するマーカーとしてCD8抗体を用いた。加えて、制御性T細胞を測定するためにCD25抗体およびFoxp3抗体を用い、ならびにナチュラルキラー細胞を測定するためにNK1.1抗体を用いた。
【0068】
4.IHC染色
腫瘍組織を直ちに取り出し、次いで4%PFA中においてO/Nでインキュベートした(4℃で保存)。腫瘍組織を順次15%~30%ショ糖に浸して沈めた後、ドライアイス上でOCTサンプリングを行った。20μmの切片を各一次抗体および二次抗体で染色した。
【0069】
5.T細胞機能の解析
T細胞の機能は、主に2つの様式で測定される。一つの方法は、サイトカイン産生能解析であり、これは、炎症促進性サイトカインであるIFNγまたはTNFαのT細胞からの分泌を測定する。もう一つの方法は、細胞障害性を測定する方法であり、この場合、腫瘍細胞にパーフォリンまたはグランザイムBを挿入することにより、腫瘍細胞は直接的に連結され死滅する。
【0070】
実験例1:MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与によるマウスの腫瘍サイズ変化の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、抗PD1単独投与群からなる全4群において、実験動物モデルでの上記の通りの7日間の薬剤投与による腫瘍サイズの変化を解析した。
図1bは、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与によるマウスの腫瘍サイズにおける変化を示すグラフである。
図2aは、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与後における、腫瘍および脾臓切除前のマウスの写真である。
図2cは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスから摘出された腫瘍の写真である。
【0071】
特に、抗PD1単独投与群およびSAC-1004単独投与群においては、対照群と比べて腫瘍サイズが減少しており、ならびに、SAC-1004および抗PD1の併用投与群においては、前記の単独投与群に比べて腫瘍サイズが縮小していた。この結果は、二元配置ANOVAによって統計的に証明された。
上記結果は、SAC-1004および免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、がんに対する予防的または治療的作用が有意に増大することを示している。
【0072】
実験例2:MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与によるマウスの生存率の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群において、実験動物モデルでの上記の通りの7日間の薬剤投与によるマウスの生存率を解析した。
図1cは、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与によるマウスの生存率を示すグラフである。
【0073】
特に、抗PD1単独投与群においては、対照群またはSAC-1004単独投与群よりも薬剤投与によるマウスの生存率が高く、ならびに、SAC-1004および抗PD1の併用投与群においては、抗PD1単独投与群よりもマウスの生存率が高かった。この結果は、二元配置ANOVAによって統計的に証明された。
上記結果は、SAC-1004および免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、がんに対する予防的または治療的作用が有意に増大することを示している。
【0074】
実験例3:MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与によるマウスの体重変化の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群において、実験動物モデルでの上記の通りの7日間の薬剤投与によるマウスの体重変化を解析した。
図2dは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの体重における変化を示すグラフである。
【0075】
特に、全群において同程度の体重が測定されたが、これは、薬剤の長期投与後であってもマウスに何ら異常が観察されないことを意味している。上記結果は、本発明による併用投与における使用のための医薬組成物が、単独でまたは組み合わせて投与する場合であってもin vivoでの副作用を引き起こさず、安全性が確保されたものであることを示している。
【0076】
実験例4:MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの脾臓サイズおよび重量の比較
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、実験動物モデルにおいて上記の通り薬剤を7日間処置したマウスの脾臓サイズを解析した。
図2bは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスから摘出された脾臓の写真である。
図2fは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの脾臓重量における変化を示すグラフである。
【0077】
特に、SAC-1004単独投与群マウスは、対照群マウスよりも、脾臓重量が多く、抗PD1単独投与群マウスは、SAC-1004単独投与群マウスよりも、脾臓重量が多く、ならびに、SAC-1004および抗PD1の併用投与群マウスは、抗PD1単独投与群マウスよりも、脾臓重量が多かった。しかしながら、これは、一元配置ANOVAによる検証では統計的に有意ではなかった。
上記結果は、本発明による併用投与における使用のための医薬組成物が、単独でまたは組み合わせて投与する場合であってもin vivoでの副作用を引き起こさず、安全性が確保されたものであることを示している。
【0078】
実験例5:MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍重量の比較
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、実験動物モデルにおいて上記の通り薬剤を7日間処置したマウスの腫瘍重量を解析した。
図2eは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍重量を示すグラフである。
【0079】
特に、抗PD1単独投与群マウスは、対照群マウスよりも、腫瘍重量が少なく、SAC-1004単独投与群マウスは、抗PD1単独投与群マウスよりも、腫瘍重量が少なく、ならびに、SAC-1004および抗PD1の併用投与群マウスは、SAC-1004単独投与群マウスよりも、腫瘍重量が少なかった。この結果は、一元配置ANOVAによって統計的に証明された。
上記結果は、SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、がんに対する予防的または治療的作用が有意に増大することを示している。
【0080】
実験例6:マウス腫瘍のFACS解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、実験動物モデルにおいて上記の通り薬剤を7日間処置したマウスの腫瘍についてFACS(蛍光活性化セルソーティング)解析を行った。
ヘルパーT細胞であるCD4
+T細胞を測定するためにはCD4抗体を用い、および細胞障害性T細胞であるCD8
+T細胞を測定するためにはCD8抗体を用いた。加えて、制御性T細胞を測定するためにはCD25抗体およびFoxp
3抗体を用い、およびナチュラルキラー細胞を測定するためにはNK1.1抗体を用いた。
図2eは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍重量を示すグラフである。
【0081】
図3a~3cは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍についてのFACSの結果である。
図3dは、CD45.2+マーカーによる各薬剤投与群における免疫因子のレベルを示すグラフである。
図3eは、各薬剤投与群におけるCD4
+T細胞のレベルを示すグラフである。
図3fは、各薬剤投与群におけるCD8
+T細胞のレベルを示すグラフである。
図3gは、各薬剤投与群におけるナチュラルキラー細胞のレベルを示すグラフである。
図3hは、各薬剤投与群における制御性T細胞のレベルを示すグラフである。
【0082】
特に、SAC-1004および抗PD1の併用投与群では、細胞障害性T細胞およびヘルパーT細胞のレベルが有意に高く、ナチュラルキラー細胞のレベルもまた高かったが、細胞障害性T細胞を抑制する制御性T細胞のレベルは減少していた。この結果は、一元配置ANOVAによって統計的に証明された。
したがって、SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、T細胞を活性化させる作用がより強いことが確認された。
上記結果は、SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与するよりも、免疫関連因子であるT細胞を活性化させる作用がより優れていることを示している。上記結果から、本発明の併用投与における使用のための医薬組成物は、免疫因子を活性化させることにより、がん免疫療法剤の抗がん作用を高めることができることが確認された。
【0083】
実験例7:マウス腫瘍における免疫因子の増殖能の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、実験動物モデルにおいて上記の通り薬剤を7日間処置したマウスの腫瘍における免疫因子の増殖能を解析した。増殖能を測定するために、増殖マーカーであるKi67を用いた。
図4aは、各薬剤投与群におけるCD4
+T細胞の増殖能を全量%として示すグラフである。
図4bは、各薬剤投与群におけるCD8
+T細胞の増殖能を全量%として示すグラフである。
図4cは、各薬剤投与群におけるナチュラルキラー細胞の増殖能を全量%として示すグラフである。
図4dは、各薬剤投与群におけるCD4
+T細胞の増殖能をMFI(平均蛍光強度(mean fluorescence intensity))として示すグラフである。
図4eは、各薬剤投与群におけるCD8
+T細胞の増殖能をMFI(平均蛍光強度)として示すグラフである。
図4fは、各薬剤投与群におけるナチュラルキラー細胞の増殖能をMFI(平均蛍光強度)として示すグラフである。
【0084】
特に、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、およびナチュラルキラー細胞の増殖能は、SAC-1004および抗PD1の併用投与群においては他の群よりも高かった。
上記結果は、SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、SAC-1004およびがん免疫療法剤を単独で投与した場合よりも、免疫関連因子の増殖能を高める作用がより優れていることを示している。上記結果から、本発明の併用投与における使用のための医薬組成物は、免疫因子を活性化させることにより、がん免疫療法剤の抗がん作用を高めることができることが確認された。
【0085】
実験例8:マウス腫瘍におけるT細胞の細胞障害性の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、実験動物モデルにおいて上記の通りの7日間薬剤投与によるマウスの腫瘍におけるT細胞の細胞障害性を解析した。
細胞障害性を測定するために、ナチュラルキラー細胞の脱顆粒およびCD8
+T細胞の活性化に関与するCD107aをマーカーとして用い、ペプチドおよびPMA/イオノマイシンで処理してT細胞を活性化させた。ペプチドにより処理する群では、腫瘍で発現するペプチドをin vitroで加えた。PMA/イオノマイシンで処理する群では、T細胞のカルシウムシグナルを刺激することにより全てのT細胞を活性化させた。
図5aは、各薬剤投与群のCD4
+T細胞におけるCD107aのレベルを示すグラフである。
図5bは、各薬剤投与群のCD8
+T細胞におけるCD107aのレベルを示すグラフである。
【0086】
特に、ペプチドおよびPMA/イオノマイシンで処理しなかった群では、ペプチドで処理した群よりも、T細胞におけるCD107aのレベルは低く、ならびにPMA/イオノマイシンで処理した群では、ペプチドで処理した群よりも、T細胞におけるCD107aのレベルが高かった。とりわけ、PMA/イオノマイシンで処理した場合には、SAC-1004および抗PD1の併用投与群でCD8+T細胞におけるCD107aのレベルが高かった。
上記結果は、CD8+T細胞における活性化が相対的に増加したものの、全群で有意でなかった。SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、T細胞を活性化させてがん細胞を死滅させる細胞傷害作用が優れていた。上記結果から、本発明の併用投与における使用のための医薬組成物は、がん免疫療法剤との併用投与により、抗がん作用を高めることができることが確認された。
【0087】
実験例9:マウス腫瘍におけるT細胞のサイトカイン産生能の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、実験動物モデルにおいて上記の通りの7日間薬剤投与によるマウスの腫瘍におけるT細胞のサイトカイン産生能を解析した。
(9-1)
サイトカイン産生能を測定するためには、炎症促進性サイトカインのレベルを比較して、炎症促進性サイトカインマーカーであるTNFαを用いることができる。実験例8における通り、ペプチドおよびPMA/イオノマイシン処理でT細胞を活性化させた後、TNFαのレベルを測定した。
【0088】
図6aは、各薬剤投与群のCD4
+T細胞におけるTNFαのレベルを示すグラフである。
図6bは、各薬剤投与群のCD8
+T細胞におけるTNFαのレベルを示すグラフである。
特に、ペプチドおよびPMA/イオノマイシンで処理しなかった場合には、各薬剤投与群においてTNFαのレベルでの差異は有意でなかったが、ペプチドおよびPMA/イオノマイシンで処理した場合には、SAC-1004および抗PD1の併用投与群におけるTNFαのレベルは有意に増加していた。
上記結果は、SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、免疫関連因子であるT細胞を活性化させる作用が優れていたことを示している。上記結果から、本発明の併用投与における使用のための医薬組成物は、免疫因子を活性化させるより、がん免疫療法剤の抗がん作用を高めることができることが確認された。
【0089】
(9-2)
IFNγもまた、炎症促進性サイトカインマーカーである。同様に、ペプチドおよびPMA/イオノマイシン処理でT細胞を活性化させた後、IFNγのレベルを測定した。
図7aは、各薬剤投与群のCD4
+T細胞におけるIFNγのレベルを示すグラフである。
図7bは、各薬剤投与群のCD8
+T細胞におけるIFNγのレベルを示すグラフである。
【0090】
特に、ペプチドおよびPMA/イオノマイシンで処理しなかった場合には、各薬剤投与群においてIFNγのレベルでの差異は有意でなかったが、ペプチドおよびPMA/イオノマイシンで処理した場合には、SAC-1004および抗PD1の併用投与群におけるIFNγのレベルは有意に増加していた。
上記結果は、SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、免疫関連因子であるT細胞を活性化させる作用が優れていたことを示している。上記結果から、本発明の併用投与における使用のための医薬組成物は、免疫因子を活性化させるより、がん免疫療法剤の抗がん作用を高めることができることが確認された。
【0091】
実験例10:マウス脾臓におけるT細胞のサイトカイン産生能の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、実験動物モデルにおいて上記の通り薬剤を7日間処置したマウスの脾臓におけるT細胞の機能を比較するため、CD107a、TNFαおよびIFNγマーカーを用いて、FACS解析、細胞障害性解析およびサイトカイン産生能解析を行った。加えて、実験例8および9における通り、ペプチドおよびPMA/イオノマイシンを処理してT細胞を活性化させた。
【0092】
図8aおよび8bは、MC38結腸直腸がん細胞株を注入しおよび薬剤を投与したマウスの腫瘍についてのFACSの結果である。
図8cは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD4
+T細胞のCD107aレベルを示すグラフである。
図8dは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD4
+T細胞のTNFαレベルを示すグラフである。
図8eは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD4
+T細胞のIFNγレベルを示すグラフである。
図8fは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD8
+T細胞のCD107aレベルを示すグラフである。
図8gは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD8
+T細胞のTNFαレベルを示すグラフである。
図8hは、各薬剤投与群の脾臓におけるCD8
+T細胞のIFNγレベルを示すグラフである。
【0093】
特に、PMA/イオノマイシンにより脾臓のCD4+T細胞およびCD8+T細胞処理することによりT細胞が活性化された場合には、SAC-1004および抗PD1の併用投与群でCD107a、TNFαおよびIFNγのレベルが増加していた。
上記結果は、SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、がん細胞を死滅させる細胞傷害作用が優れており、ならびに免疫関連因子であるT細胞を活性化させる作用も優れていたことを示している。上記結果から、本発明の併用投与における使用のための医薬組成物は、免疫因子を活性化させることにより、がん免疫療法剤の抗がん作用を高めることができることが確認された。
【0094】
実験例11:マウス腫瘍における接着結合発現の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、実験動物モデルにおいて7日間にわたるSAC-1004の毎日投与および抗PD1の週3回投与により14日間薬剤を投与する以外は上記の通り薬剤を処置したマウスの腫瘍における接着結合の発現を解析した。
図9aは、各薬剤投与群における腫瘍内接着結合の発現レベルを示す蛍光写真である。
図9bは、各薬剤投与群における腫瘍内接着結合の発現レベルの定量化による蛍光密度を示すグラフである。
【0095】
特に、
図9aはIHC染色の結果を示しており、核を染色するためにDAPIを用い、血管を染色するためにCD31を用い、および接着接合を視覚化するためにVE-カドヘリン(接着タンパク質)を用いた。この際、VE-カドヘリンが十分に発現している場合には、薬剤の送達が良好であるので抗がん作用が増加し、ならびに、内皮細胞間の接着が良好であって、血管が安定しているのでT細胞は腫瘍内に十分に浸潤する。
図9aおよび9bに示されている通り、SAC-1004単独投与群では、対照群および抗PD1単独投与群よりも、腫瘍内VE-カドヘリンの比率が増加しており、ならびにSAC-1004および抗PD1の併用投与群では、SAC-1004単独投与群よりも、腫瘍内VE-カドヘリンがより多く発現していた。
【0096】
上記結果は、SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、がん免疫療法剤が良好に送達され、T細胞が腫瘍内に十分に侵入し、ならびに抗がん作用が増加したことを示している。上記結果から、本発明の併用投与における使用のための医薬組成物は、がん免疫療法剤の抗がん作用を高めることができることが確認された。
【0097】
実験例12:マウス腫瘍におけるPDL1発現の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、実験動物モデルにおいて上記の通りの7日間薬剤投与によるマウスの腫瘍におけるPDL1(プログラム細胞死リガンド1)の発現を解析した。PDL1は腫瘍において発現するリガンドであり、およびCD3はT細胞マーカーとして用いられる。
図10は、各薬剤投与群におけるPDL1およびCD3の発現レベルを示す蛍光写真である。
【0098】
特に、
図10はIHC染色の結果を示しており、PDL1の増加は、抗PD1が良好に送達されて免疫活性化が生じたことを意味している。SAC-1004および抗PD1の併用投与群では、抗PD1単独投与群よりも、PDL1およびCD3の発現レベルが高かった。
上記結果は、SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、がん免疫療法剤が良好に送達され、免疫活性化が十分に生じ、ならびに抗がん作用が増加したことを示している。上記結果から、本発明の併用投与における使用のための医薬組成物は、がん免疫療法剤の抗がん作用を高めることができることが確認された。
【0099】
実験例13:マウス腫瘍におけるサイトカイン発現レベルの解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、実験動物モデルにおいて上記の通りの7日間薬剤投与によるマウスの腫瘍におけるサイトカイン発現レベルを解析した。サイトカインマーカーとして、炎症促進性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインを用い、RT-PCRを行った。
図11aは、各薬剤投与群における炎症促進性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの発現についてのRT-PCRの結果を示す写真である。
図11bは、各薬剤投与群におけるCXCL9、iNOSおよびGapdhの発現についてのRT-PCRの結果を示す写真である。
図11cは、各群のmRNA発現レベルをRT-PCRによりグラフ化して示す写真である。
【0100】
特に、炎症促進性サイトカインのうち、IFNγが抗PD1を投与した群において増加していたが、これは、抗PD1を投与した群よりも、SAC-1004および抗PD1の併用投与群においてさらに増加していた。
上記結果は、SAC-1004およびがん免疫療法剤を組み合わせて投与した場合には、単独で投与した場合よりも、免疫関連因子であるT細胞を活性化させる作用が優れていたことを示している。上記結果から、本発明の併用投与における使用のための医薬組成物は、免疫因子を活性化させることにより、がん免疫療法剤の抗がん作用を高めることができることが確認された。
【0101】
実験例14:MC38結腸直腸がん細胞株増殖および薬剤注入の場合における、CD4/8
+
T細胞およびNK細胞枯渇後の薬剤投与による、マウスの生存率の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、CD4/8
+T細胞およびNK細胞枯渇後、実験動物モデルにおいて上記の通りの7日間薬剤投与によるマウスの生存率を解析した。
図12aは、CD4/8+T、NK除去、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与の手順を示す概略図である。
図12bは、CD4/8+T、NK除去、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与による結果がフローサイトメトリーで確認されたこと、ならびに免疫細胞の除去が順調に進んだことを確認する図である。
図12cは、CD4/8+TおよびNK除去による、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与後のマウスの生存率を示す図であり、CD8+T細胞を除去した実験群マウスは生存率が最も低かったことを確認している。
【0102】
図12dは、
図12cと同様のプロセスを説明する図であり、CD4/8+T除去による、MC38結腸直腸がん細胞株注入および薬剤投与後の腫瘍の増殖率を経時的に示しており、CD8+T細胞を除去した実験群マウスは腫瘍増殖率が最も高かったことを確認している。
図12eは、CD4/8+TおよびNK除去による、MC38結腸直腸がん細胞株の注入および薬剤投与後の各実験群での腫瘍のサイズ比較を示す図であり、CD8+T細胞を除去した実験群マウスで腫瘍サイズが最も大きかったことを確認している。
上記結果は、CD8
+T細胞の除去が最も高い腫瘍増殖率を示したこと、ならびにNK細胞およびCD4
+T細胞を除去した実験群が高い腫瘍増殖率を示したことを示している。このことは、SAC-1004および抗PD1の併用投与が、CD8
+T細胞依存的に誘導されるプロセスであることを示唆している。
【0103】
実験例15:長期薬剤投与による結果の解析
対照群、SAC-1004および抗PD1の併用投与群、SAC-1004単独投与群、ならびに抗PD1単独投与群からなる全4群で、長期薬剤注入後に生存率を解析した。
図13aは、MC38結腸直腸がん細胞株注入および長期薬剤投与の手順を示す概略図である。
図13bは、MC38結腸直腸がん細胞株注入および長期薬剤投与によるマウスの生存率を示すグラフである。
図13cは、MC38結腸直腸がん細胞株注入および長期薬剤投与によるマウスの腫瘍サイズを示すグラフである。
長期薬剤処置後であっても、一貫して同様の結果が示された。したがって、上記実験手順の信頼性が確認され、ならびに長期薬剤投与にもかかわらず薬剤毒性がないことが証明された。
【0104】
製造例1:粉剤の調製
式1で表される化合物 2g
乳糖 1g
従来の粉剤調製方法にしたがって、上記の全成分を混合することにより粉剤を調製し、これを気密パックへ充填した。
【0105】
製造例2:錠剤の調製
式1で表される化合物 100mg
トウモロコシデンプン 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
従来の錠剤調製方法にしたがって上記の全成分を混合することにより、錠剤を調製した。
【0106】
製造例3:カプセルの調製
式1で表される化合物 100mg
トウモロコシデンプン 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
従来のカプセル調製方法にしたがって、上記の全成分を混合し、これをゼラチンカプセルに充填することにより、カプセルを調製した。
【0107】
製造例4:注射溶液の調製
式1で表される化合物 100mg
マンニトール 180mg
Na2HPO4・2H2O 26mg
蒸留水 2974mg
従来の注射溶液調製方法で、上記の全成分を混合することにより注射溶液を調製した。
【0108】
製造例5:軟膏の調製
式1で表される化合物 5g
パルミチン酸セチル 20g
セタノール 40g
ステアリルアルコール 40g
ミリスチン酸イソプロピル 80g
ポリソルベート 60g
p-ヒドロキシ安息香酸プロピル 1g
p-ヒドロキシ安息香酸メチル 1g
リン酸および純水 適量
従来の軟膏調製方法で、上記の全成分を混合することにより軟膏を調製した。