(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】流量計および流量計測システム
(51)【国際特許分類】
G01F 1/72 20060101AFI20230615BHJP
E04G 21/04 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
G01F1/72
E04G21/04 ESW
(21)【出願番号】P 2022017437
(22)【出願日】2022-02-07
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】520384987
【氏名又は名称】有限会社ベトンテック
(73)【特許権者】
【識別番号】522050952
【氏名又は名称】庄野 和隆
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】庄野 和隆
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-156784(JP,A)
【文献】実開昭59-071978(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2021/0181003(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108196487(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/56-1/90
E04G 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー状の建設材料または廃棄物を吸入して吐出するピストン式ポンプ装置に附設されて当該スラリーの吐出量を計測する流量計であって、
前記ピストン式ポンプ装置の運転・停止を表示する運転状況表示部に係止して前記運転状況表示部に表示される運転状況を監視する運転状況監視センサと、
前記ピストン式ポンプ装置に取り付けられてポンプシリンダ内をポンプピストンが往復する際に発する脈動を監視する脈動監視センサと、
前記運転状況監視センサによって監視される運転状況、前記脈動監視センサによって監視される脈動の間隔、および前記ポンプシリンダの体積に関する情報に基づき、前記ピストン式ポンプ装置が吐出するスラリーの単位時間当たり流量を演算する演算部と、
前記流量を信号に変換して出力する信号出力部とを備える、流量計。
【請求項2】
前記脈動監視センサは、前記ピストン式ポンプ装置の油圧管に取り付けられる圧力センサであって、油圧変化の脈動を監視する、請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記演算部は、前記圧力センサから入力される圧力値に基づき、前記ポンプシリンダから吐出されるスラリーの吐出圧力値を演算し、
前記信号出力部は、前記吐出圧力値に関する信号と、該吐出圧力値に対応する流量に関する信号を出力する、請求項2に記載の流量計。
【請求項4】
前記脈動監視センサは、前記ピストン式ポンプ装置のポンプシリンダ内をポンプピストンが往復する際に発する音を検出するマイクである、請求項1に記載の流量計。
【請求項5】
前記脈動監視センサは、前記ピストン式ポンプ装置のポンプシリンダ内をポンプピストンが往復する際に発する脈振動を検出する振動計である、請求項1に記載の流量計。
【請求項6】
前記運転状況監視センサは、前記ピストン式ポンプ装置が正転中であることを表示する運転ランプの発光と、前記ピストン式ポンプ装置が逆転中および停止中であることを表示する停止ランプの発光をそれぞれ検出する光センサである、請求項1~5のいずれかに記載の流量計。
【請求項7】
前記演算部が演算した流量を表示する表示部をさらに備える、請求項1~6のいずれかに記載の流量計。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の流量計と、
前記ピストン式ポンプ装置の吐出口から延びて自在に変位するスラリー圧送管の先端部に取付固定される位置センサとを具備し、
前記演算部は、前記先端部の位置毎の流量を演算し、
前記信号出力部は、前記先端部の位置に関する信号と、該位置に対応する流量に関する信号を出力する、流量計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設業で用いられるコンクリートポンプやスラリーポンプに取り付けられる流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントを含むコンクリートないしモルタル、あるいはセメントを含まないスラリー(例えば土砂やフライアッシュ等を水で攪拌したスラリー)を建設材料(または廃棄物)として利用する場合においては昨今、作業人員の省力化や発注の最適化という観点で施工管理される。
【0003】
具体的には例えば、マスコンクリートを扱う大規模な建設現場にあっては、コールドジョイントが生じることがないよう、早すぎず遅すぎず適切なタイミングで、生コンプラントへ未硬化コンクリートを連続発注する必要がある。
【0004】
コンクリートポンプ車を使ってコンクリート打設を行う建設現場におけるコンクリート打設管理システムとして従来、例えば特開2020‐020103号公報(特許文献1)および特開2021‐113432号公報(特許文献2)記載の技術が知られている。特許文献1記載の管理システムでは、コンクリート運搬車の運搬状況とコンクリート打設ブロック毎の打設状況がデータベースに記録される。特許文献2記載の管理システムでは、コンクリート運搬車が生コンプラントを出発する時刻と、コンクリートポンプ車に荷下ろしする時刻と、生コンプラントに帰着する時刻と、コンクリートの打設が完了する時刻が、コンクリート運搬車毎に記録される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020‐020103号公報
【文献】特開2021‐113432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のような管理システムを使用するにあたり、さらに改善すべき点があることを本発明者は見いだした。第1に携帯端末を持った係員が、荷下ろし箇所あるいは打設ブロックに常駐して、荷下ろし状況および打設状況を監視しながら携帯端末を操作する必要があり、発注業務もこなさなければならず、監督業務が煩雑であった。このため業務省力化の点で改善の余地があった。第2にコンクリート運搬車毎(例えば5m3毎)の伝票管理であったり、打設ブロック毎(例えば数十m3毎)の目視管理であったりするため、きめ細かな打設管理ができなかった。第3にコンクリートポンプ車のホッパに荷下ろしされたコンクリートが打設ブロックに到達するまでタイムラグがあるところ、コンクリート運搬車毎の管理では、時々刻々と進行する現場の状況を管理することができない。第4にコンクリートポンプ車には、予測不能なポンプ詰まり等、アクシデントが起こりうるところ、管理システムではコンクリートポンプ車自体の管理ができなかった。
【0007】
昨今の管理システムでは、打設状況のデータを単純に記録するのみならず、IoT(Internet of Things)、AI(Artificial Intelligence)との融合が試みられている。打設中にコンクリート流量を秒単位で時々刻々と計測できれば、生コンプラントへのコンクリート発注をAIに予測させることができ、建設現場の省力化に役立つ。
【0008】
ところが既存のコンクリートポンプは、自走するコンクリートポンプ車にせよ、自走しないコンクリートポンプにせよ、その他のスラリーポンプにせよ、古い車体が多く、IoTに対応できない。
【0009】
本発明者は、今後の建設業のIoT化を鑑み、上述した第1~第4の課題を解決することを目的として、既存の建設用スラリーポンプに後付けで簡単に取り付けることができ、ポンプ流量を逐次計測して計測結果を信号出力する流量計を発明するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため本発明による流量計は、スラリー状の建設材料または廃棄物を吸入して吐出するピストン式ポンプ装置に附設されて当該スラリーの吐出流量を計測する流量計であって、ピストン式ポンプ装置の運転・停止を表示する運転状況表示部に係止して運転状況表示部に表示される運転状況を監視する運転状況監視センサと、ピストン式ポンプ装置に取り付けられてポンプシリンダ内をポンプピストンが往復する際に発する脈動を監視する脈動監視センサと、運転状況監視センサによって監視される運転状況と脈動監視センサによって監視される脈動の間隔とポンプシリンダの体積に関する情報に基づいてピストン式ポンプ装置が吐出するスラリーの単位時間当たり流量を演算する演算部と、演算された流量を信号に変換して出力する信号出力部とを備える。
【0011】
本発明によれば、信号出力部から出力される流量の信号がIoTに用いられ得ることから、本発明をIoT非対応のポンプ装置に後から取り付けることで、簡単にIoT化が可能になる。したがって時々刻々と流れるスラリーの流量と、開始から現時点までのスラリーの累積体積を正確かつ自動的に表示・記録することができ、係員の監督業務が軽減され、業務が省力化される。またスラリーの状況を細かく管理することができるばかりでなく、予測不能なアクシデントを瞬時に知ることができる。また本発明とAIを組み合わせることにより、スラリーの発注が自動化される。なお演算部はポンプシリンダの体積を予め知っていてもよいが、好ましくは、本発明は、ポンプシリンダの体積に関する情報を入力される操作部をさらに備えるとよい。操作部は演算部へポンプシリンダの体積を出力する。
【0012】
脈動監視センサは特に限定されない。監視対象は例えば、ポンプ装置が発する音や振動である。本発明の一局面として脈動監視センサは、ピストン式ポンプ装置の油圧管に取り付けられる圧力センサであって、油圧変化の脈動を監視する。かかる局面によれば、ポンプ装置を駆動する作動油の油圧を監視して、ポンプ装置の脈動を求めることができる。ポンプ装置の油圧管は、作動油が流れる管であってもよいし、背圧油が流れる管であってもよいし、これらの油圧管から分岐する管であってもよい。
【0013】
本発明の好ましい局面として、演算部は圧力センサから入力される圧力値に基づきポンプシリンダから吐出されるスラリーの吐出圧力値を演算し、信号出力部はスラリー吐出圧力値に関する信号と該吐出圧力値に対応するスラリー流量に関する信号を出力する。かかる局面によれば、スラリー吐出圧力値を検出して信号化することができ、流量毎の吐出圧力値をIoTの管理対象にすることができる。
【0014】
本発明の他の局面として脈動監視センサは、ピストン式ポンプ装置のポンプシリンダ内をポンプピストンが往復する際に発する音を検出するマイクである。かかる局面によれば、ポンプ装置が発する音に基づいてポンプ装置の脈動を求めることができる。他の局面として脈動監視センサは、ピストン式ポンプ装置のポンプシリンダ内をポンプピストンが往復する際に発する脈振動を検出する振動計であってもよい。あるいは演算部は、ポンプ装置が発する音と脈動の両方に基づいて、ポンプ装置の脈動を求めてもよい。
【0015】
運転状況監視センサは、例えば既存のポンプ装置の運転状況表示ランプに対向する光センサであったり、あるいは既存のポンプ装置の運転状況表示部と接続する電流計であったりする。本発明の一局面として運転状況監視センサは、ピストン式ポンプ装置が正転中であることを表示する運転ランプの発光と、ピストン式ポンプ装置が逆転中および停止中であることを表示する停止ランプの発光をそれぞれ検出する光センサである。光センサの数は限定されず、1個でもよいし、2個1対であってもよい。好ましくは、光センサは、運転状況表示部に設けられるランプと同数個であって、1対1で対向し、運転状況表示部に設けられるランプそれぞれを監視する。本発明の他の局面として運転状況監視センサは、ピストン式ポンプ装置に後付けで附設される電流計である。
【0016】
本発明の一局面として、演算部が演算した流量を表示する表示部をさらに備える。かかる局面によれば、流量計の傍にいる係員がスラリーの流量を正確に知り、記録に資することができる。他の局面として、流量計から離れた箇所にいる係員が携帯端末を所持し、携帯端末は信号出力部から出力される信号に基づいてスラリーの流量を表示してもよい。
【0017】
本発明の流量計測システムは、上述した流量計と、ピストン式ポンプ装置の吐出口から延びて自在に変位するスラリー圧送管の先端部に取付固定される位置センサとを具備し、流量計の演算部は圧送管先端部の位置毎の流量を演算し、流量計の信号出力部は圧送管先端部の位置に関する信号と、該位置に対応する流量に関する信号を出力する。かかる本発明によれば、スラリー圧送管の先端から出てくるスラリーの位置を正確に知り、記録および管理に資することができる。したがって管理システムの管理向上を図ることができる。
【0018】
参考例の流量計測システムは、未硬化コンクリートを吸入して吐出するコンクリートポンプ装置に設けられるシステムであって、コンクリートポンプ装置に取り付けられて当該コンクリートポンプ装置の正転・逆転・停止を監視する運転状況監視センサと、コンクリートポンプ装置に取り付けられて当該コンクリートポンプ装置が発する脈動を監視する脈動監視センサと、運転状況監視センサによって監視される運転状況と脈動監視センサによって監視される脈動の間隔と脈動の間隔1回につき吐出されるポンプ体積に基づき未硬化コンクリートの流量を演算する演算部と、流量を信号に変換して出力する信号出力部とを備える。かかる本発明のシステムは、コンクリートポンプ装置に予め組み込み可能である。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明によれば、IoT非対応のスラリーポンプ装置を後から簡単にIoT化することができる。またコンクリートポンプ装置に本発明のシステムを予め組み込み可能である。産業用ポンプはIoT化によって高度に管理され、生産性が向上し、人手が省力化される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の流量計が取り付けされるピストン式ポンプ装置を示す全体側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態になる流量計がピストン式ポンプ装置の運転/停止表示灯に後付けされる様子を示す図である。
【
図3】本実施形態の流量計を示す模式的な全体図である。
【
図4】本実施形態の流量計が用いられる管理システムを示す模式的な全体図である。
【
図5】本実施形態の流量計から出力される流量に基づいて計算される実績ラインを例示するモニター画面である。
【
図6】本発明の他の実施形態になる流量計を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の流量計が取り付けされるピストン式ポンプ装置を示す全体側面図である。
図2は、本発明の一実施形態になる流量計がピストン式ポンプ装置の運転/停止表示灯に後付けされる様子を示す図である。
図3は、本実施形態の流量計を示す模式的な全体図である。
【0022】
図1を参照して、ピストン式ポンプ装置102は例えばコンクリートポンプであり、具体的には例えば既存の汎用型のコンクリートポンプ車100に搭載される。コンクリートポンプ車100は、ピストン式ポンプ装置102の吸入口と接続するホッパ101と、ピストン式ポンプ装置102が運転中であるかその他の状態であるかを表示する運転状況表示部103と、旋回自在かつ折り曲げ自在なブーム104と、ピストン式ポンプ装置102の吐出口から延びブーム104に沿って配管される圧送管(図略)と、当該配管の先端から延びるホース106とを有する。
【0023】
ホース106は屈曲自在であって、ブーム104の先端から延出する。これによりホース106の筒先107はブーム104の先端に対して自由移動可能である。ブーム104の基端はコンクリートポンプ車100の車体に連結され、係る基端を中心とする角度(方位角および仰角)を調整可能である。またブーム104は途中に関節104jを1または複数有し、関節104jで折り曲げ可能である。このためブーム104先端の平面位置および高さ位置が自在に変化する。
【0024】
ピストン式ポンプ装置102は、ホッパ101で受け入れた未硬化コンクリートを吸入してブーム104の圧送管に吐出する。ピストン式ポンプ装置102から吐出された未硬化コンクリートは、圧送管内を流動し、筒先107から打設ブロック(図略)へ流出する。
【0025】
運転状況表示部103はホッパ101に隣り合って設けられる。ピストン式ポンプ装置102が正転で運転される間、未硬化コンクリートはピストン式ポンプ装置102の吸入口から吸入されて吐出口から吐出される。このとき運転状況表示部103は<運転状態>を表示する。ピストン式ポンプ装置102が逆転で運転される間、未硬化コンクリートはピストン式ポンプ装置102の吐出口から吸入されて吸入口から吐出される。つまり未硬化コンクリートは配管からホッパ101へ向かって逆流する。このとき運転状況表示部103は<停止状態>を表示する。ピストン式ポンプ装置102の停止中、未硬化コンクリートはピストン式ポンプ装置102および配管内を流れない。このときも運転状況表示部103は<停止状態>を表示する。
【0026】
図2を参照して、既存の運転状況表示部103は緑ランプ(青ランプ)103bおよび赤ランプ103cを有する。上述した<運転状態>で、運転状況表示部103は緑ランプ103bを点灯させ、赤ランプ103cを消灯させる。反対に<停止状態>で、運転状況表示部103は赤ランプ103cを点灯させ、緑ランプ103bを消灯させる。流量計10は、例えば箱体であり、フックやバンド等の係止具で運転状況表示部103の筐体に係止し、あるいは面ファスナ等で、運転状況表示部103の筐体に簡単に後付け固定される。流量計10は、マイク11および1対の光センサ12,13を有する。光センサ12は緑ランプ103bと対向し、光センサ13は赤ランプ103cと対向する。1対の光センサ12,13は運転状況監視センサである。
【0027】
図示しない変形例として流量計10は、光センサ12,13に代えて、電流計を有してもよい。かかる電流計は、運転状況表示部103のケース内、あるいはピストン式ポンプ装置102の本体から運転状況表示部103まで延びるケーブル103f、あるいは他の適切な部位に、後付けで附設される。かかる電流計も運転状況監視センサである。
【0028】
図3を参照して、後付けの流量計10は、ケース10b、マイク11、1対の光センサ12,13、振動検出部14、バッテリ15、操作部16、演算部17、表示部18、信号出力部19を有する。マイク11は、ケース10bの表面に固定されて、ピストン式ポンプ装置102の脈動を検出する。脈動とは、ピストン式ポンプ装置102のポンプシリンダの中をポンプピストンが1往復する際に1度だけ発する音および振動をいう。つまりポンプピストンが複数回往復すると、同数の脈動が現れる。光センサ12,13は、互いに間隔を空けてケース10bの表面に設けられる。光センサ12,13はそれぞれ、フレキシブルなロッド12r,13r(
図2)で流量計10のケースに連結される。ロッド12r,13rを所望の形状に変化させることにより、緑ランプ103bや赤ランプ103cと対向するよう光センサ12,13はそれぞれ位置調整可能である。
【0029】
振動検出部14はケース10bに内蔵され、ピストン式ポンプ装置102の脈動を検出する。本実施形態の運転状況表示部103は、ピストン式ポンプ装置102に立設される長尺なポール103eの上端に固定される。これにより運転状況表示部103と、運転状況表示部103に取り付けられた流量計10は、ピストン式ポンプ装置102の脈動に同期して振動する。このため振動検出部14はピストン式ポンプ装置102の脈動を容易に検出できる。なお図示しない変形例として流量計10は、マイク11および振動検出部14のいずれか一方のみを有するものであってもよい。マイク11および振動検出部14はいずれも、ピストン式ポンプ装置102に取り付けられてポンプシリンダ内をポンプピストンが往復する際に発する脈動を監視する脈動監視センサである。
【0030】
操作部16は、ケース10bの表面に固定される。操作部16は、係員に操作されて、演算部17に、ピストン式ポンプ装置102のポンプシリンダに関する情報を入力する。ポンプシリンダに関する情報とは具体的には、ポンプシリンダの中をポンプピストンが1往復することによって吐出口から吐出される未硬化コンクリートの体積である。かかる体積は、ポンプシリンダの内空断面積に、ポンプピストンのストローク距離と、1.0未満の所定の係数を乗算して求められる。所定の係数は例えば0.8以上1未満の範囲に含まれる所定値あるいは変動値である。
【0031】
演算部17は、ケース10bに内蔵され、バッテリ15によって駆動される(マイク11、光センサ12,13、振動検出部14も同じ)。バッテリ15は、ケース10bに内蔵され、繰り返し充電可能であり、あるいは使い捨ての乾電池である。演算部17は、マイク11および/または振動検出部14から入力される音や振動に基づいて、単位時間当たりの脈動回数を演算する。そして演算部17は、単位時間当たりの脈動回数に、上述したポンプピストン1往復当りにおいて吐出口から吐出される未硬化コンクリートの体積を乗算して、流量を算出する。かかる算出は、1間隔の脈動毎、あるいは1~数十秒毎に時々刻々と行われる。算出された流量は表示部18および信号出力部19へ出力される。
【0032】
表示部18は、ケース10bの表面に固定され、演算部17で算出した未硬化コンクリートの流量値、例えば単位[m3/min]あるいは[m3/sec]を表示する。本実施形態では、操作部16と表示部18が電気的に相互接続される。係員は、操作部16を手動で操作して、表示部18に表示される流量の情報、例えば単位であったり、あるいは累計体積であったり、を変更可能である。
【0033】
信号出力部19は、演算部17で算出した未硬化コンクリートの流量を、送信用の信号に変換して、流量計10の外部、例えば管理システムのサーバ(図略)、へ出力する。かかる出力は、Wi-fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)の規格、あるいは他の種類にされた無線信号である。あるいは図示しない変形例として、信号出力部19とサーバをワイヤケーブルで相互に接続し、信号出力部19はワイヤケーブルに有線信号を出力する。
【0034】
本実施形態の流量計10によれば、IoT非対応の既存のピストン式ポンプ102あるいは他のスラリーポンプやコンクリートポンプに後から取り付けるだけで、IoT対応にすることができ、既存の建設用スラリーポンプをコンピュータ化された施工管理システムに組み入れることができる。
【0035】
図4は、IoT非対応の既存のコンクリートポンプ車100を、コンピュータで管理された施工管理システムに組み込んだ様子を示す模式図である。
図4に示す施工管理システムは、ホストコンピュータ300と、以下に述べる幾つかのオプション機器を具備し、両矢印で表されるようにネットワーク接続されて、あるいは個々に1対1接続されて、データを送受信する。ホストコンピュータ300は、各オプション機器からデータを収集し、分析し、結果を各オプション機器へ返すことから、サーバとも呼ばれる。
【0036】
施工現場およびこれを管理する施工管理システムにつき説明すると、打設ブロック801、802・・・に未硬化コンクリートを順次打設する施工現場において、施工現場から離れた生コンプラント500で生産される未硬化コンクリートは、コンクリート運搬車601,602・・・に搭載、運搬されて、施工現場のコンクリートポンプ車100のホッパ101に荷下ろしされる。
【0037】
コンクリート運搬車601,602・・・は、生コンプラント500と施工現場の間を往復し、コンクリートポンプ車100へ未硬化コンクリートを供給する。
【0038】
ピストン式ポンプ装置102は、ホッパ101の未硬化コンクリートを吸入し、ブーム104の圧送管へ吐出する。ブーム104の先端105は、1の打設ブロック(例えば打設ブロック805)に届くようにセットされる。ホース106は、打設ブロック805に差し込まれて、当該打設ブロックに未硬化コンクリートを打設する。
【0039】
流量計10は、施工管理システムのホストコンピュータ300との間でコンクリート流量に関するデータを送受信する。施工現場にいる係員200は携帯端末201を所持しており、携帯端末201はホストコンピュータ300との間で施工管理に関するデータを送受信する。また携帯端末201は流量計10との間でコンクリート流量に関するデータを送受信可能である。
【0040】
ホストコンピュータ300は工事事務所700に置かれた1台あるいは複数台のコンピュータ701との間で施工管理に関するデータを送受信する。またホストコンピュータ300は生コンプラント500との間で、生産状況に関するデータを送受信する。またホストコンピュータ300は個々のコンクリート運搬車601,602・・・との間で運搬状況に関するデータを送受信する。ホストコンピュータ300は、施工現場に設置されてもよいし、あるいは工事事務所700に設置されてもよいし、あるいはコンピュータ701であってもよいし、あるいはクラウドサービスプロバイダのように施工現場でも工事事務所でもない外部に設置されていてもよい。
【0041】
ホストコンピュータ300は、受信した各種データに基づいて施工管理帳票を自動作成する。施工管理の一例として、打設ブロック805における打設計画および打設実績の対比図を自動作成する。
【0042】
図5は、施工管理に関するデータを例示するグラフである。
図5中、横軸は時刻または時間であり、縦軸はコンクリート体積であり、破線aは打設計画を表し、実線bは打設実績を表す。
図5のグラフによれば、時刻t1において、打設計画はa1[m
3]であり、打設実績はb1[m
3]であり、打設実績が打設計画をa1-b1[m
3]下回っていることが、人手を介することなく瞬時で演算および表示される。係る表示は、コンピュータ701の画面702および/または携帯端末201の画面202による。本実施形態の流量計10は、
図4に示す施工管理システムの他、公知のスラリー管理、あるいは公知のコンクリート管理に適用可能である。
【0043】
本実施形態の流量計10は、オプション機器として、位置センサ20と連携するものであってもよい。位置センサ20は、ブーム104の先端105に後付けによって取り付け固定されて、先端105の平面位置および/または高さ位置を検出し、検出結果をホストコンピュータ300および/または流量計10へ出力する。かかる出力は、Wi-fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)の規格、あるいは他の種類にされた無線信号である。
【0044】
演算部17は、先端105の位置毎の流量を演算する。信号出力部19は、先端105の位置に関する信号と、該位置に対応する流量に関する信号を出力する。これにより、時々刻々と計算されるコンクリート流量と打設位置が関連付けされて、ホストコンピュータ300に格納され、画面202、702に表示される。なおコンクリート流量と打設位置の関連付けは、上述した演算部17に代えて、ホストコンピュータ300が実行してもよい。
【0045】
次に本発明の他の実施形態を説明する。
図6は本発明の他の実施形態を示す全体図である。他の実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。他の実施形態になる流量計では、上述したマイク11および振動検出部14に代えて、圧力センサ21を有する。
【0046】
圧力センサ21は、ケース10bから離れて、流量計10の外部に設置される。具体的には、既存のピストン式ポンプ装置102の油圧回路111に後付けで取り付け固定される。
【0047】
ここで既存のピストン式ポンプ装置102の概要につき説明すると、
図6に示すようにピストン式ポンプ装置102は、切換バルブ112と、切換バルブ揺動機構113と、油圧モータ114と、制御部115と、1対のポンプシリンダ116,117と、1対のポンプピストン118,119と、1対の油圧シリンダ120,121と、1対の油圧ピストン122,123と、1対のロッド124,125と、背圧管126,127と、圧力計128を有する公知のスラリーポンプである。
【0048】
ポンプシリンダ116,117はそれぞれ、一端を吸入/吐出口116b,117bとして、ホッパ101と接続する。切換バルブ112は、S字状に延びるパイプであって、その両端を入口端112bおよび出口端112cとされる。また切換バルブ112は、ホッパ101内に配置され、ホッパ101を貫通して延びる回動軸Xを中心として揺動する。出口端112cは回動軸Xに近い位置に配置され、ブーム104(
図1)に沿って配管される圧送管の基端と接続する。入口端112bは回動軸Xから遠い位置に配置され、切換バルブ112が揺動する際に、吸入/吐出口116b,117bと交互に接続する。
【0049】
ポンプピストン118,119はポンプシリンダ116,117内にそれぞれ配置される。ロッド124,125の一端はそれぞれ、ポンプシリンダ116,117の他端に差し込まれて、ポンプピストン118,119と連結される。ロッド124,125の他端はそれぞれ、油圧シリンダ120,121の一端に差し込まれて、油圧シリンダ120,121内に配置される油圧ピストン122,123に連結される。
【0050】
油圧ピストン122,123は、油圧シリンダ120,121の内部空間を作動油室と背圧油室に区画する。一端側の背圧油室は、背圧油で満たされ、背圧管126で連通状態にされる。他端側の作動油室は、作動油で満たされ、油圧モータ114から延びる油圧回路111とそれぞれ接続する。油圧モータ114と、切換バルブ112を揺動させる切換バルブ揺動機構113は、制御部115と接続する。制御部115は、油圧モータ114および切換バルブ揺動機構113を同期させる。これにより吸入/吐出口116b,117bの一方と切り換えバルブ112の入口端112bが接続して切り換えバルブ112へ未硬化コンクリートが吐出され、残る他方はホッパ101から未硬化コンクリートを吸入し、かかる動作が一方と他方で交互に実行される。
【0051】
1対のポンプシリンダ116,117は互いに平行に延び、同一断面積、同一長さとされ、両端が揃うよう並列配置される。1対の油圧シリンダ120,121も同様である。
図6を参照して、油圧回路111の一方は送り側、他方は戻り側とされ、一方の油圧ピストン122を一方側へ押し込みつつ、他方の油圧ピストン123を他方側へ引き込む。これによりロッド124,125を介して、ポンプピストン118,119は交互に進退動しながら、ポンプシリンダ116,117内を摺動し、ホッパ101内の未硬化コンクリートを吸入し、切換バルブ112へ吐出する。
【0052】
ポンプピストン118および油圧ピストン122が一緒になって往復運動し、ポンプピストン119および油圧ピストン123が一緒になって往復運動する際、背圧管126の背圧油の圧力は脈動する。背圧管126から分岐して延びる背圧管127には既設のアナログ式の圧力計128が設けられる。既設の圧力計128は背圧油の圧力を単に表示するが、表示した圧力を電気信号に変換して外部出力するものではない。
【0053】
図6に示す実施形態では、圧力センサ21が背圧管127に後付けで固定される。背圧管126はピストン式ポンプ装置102内部に在ってアクセスし難いが、背圧管127はピストン式ポンプ装置102から突出するように延び、アクセス容易である。また圧力計128と接続することから、係員は背圧管127を容易に見つけることができる。したがって係員は、既存のピストン式ポンプ装置102の適切な位置に、圧力センサ21を迷わず簡単に後付け加工できる。
【0054】
圧力センサ21は、背圧油の圧力を10~1000[ms]の範囲に含まれる所定時間毎に時々刻々と検出して演算部17へ送信する。つまり圧力センサ21は、ピストン式ポンプ装置102に取り付けられてポンプシリンダ116,117内をポンプピストン118,119が往復する際に発する脈動を監視する脈動監視センサである。演算部17は背圧油の圧力変化からポンプピストン118が1往復するのに要する時間(脈動間隔)を演算する。油圧の脈動に基づくコンクリート流量の演算方法は、
図3に沿って上述した音、振動の脈動に基づく場合と同様である。
【0055】
演算部17は、圧力センサ21から入力される背圧油の圧力値に基づき、ポンプシリンダ116,117から切換バルブ112へ吐出されるコンクリートの吐出圧力値を演算する。信号出力部19は、コンクリートの流量に関する信号を出力することに重畳して、コンクリートの吐出圧力値に関する信号を出力する。これによりコンクリート流量値と、このときのコンクリート吐出圧力値が、ホストコンピュータ300に送信され、端末201の画面202に表示される。
【0056】
図6に示す実施形態によれば、CFT(Concrete Filled Steel Tube)構造物の建設において、未硬化コンクリートの吐出圧力値を施工管理することができる。
【0057】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。本発明の流量計は、IoT非対応のコンクリートポンプ、スラリーポンプ、および産業用ポンプに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、建設機械において有利に利用される。
【符号の説明】
【0059】
10 流量計、 11 マイク、 12,13 光センサ、
14 振動検出部、 15 バッテリ、 16 操作部、
17 演算部、 18 表示部、 19 信号出力部、
20 位置センサ、 21 圧力センサ。
【要約】
【課題】IoT非対応の建設用スラリーポンプをIoT化する技術を提供する。
【解決手段】流量計10は、IoT非対応のポンプ装置の運転・停止を表示する運転状況表示部に係止して運転状況を監視する光センサ12,13と、このポンプ装置に取り付けられてポンプシリンダ内をポンプピストンが往復する際に発する脈動を監視するマイク11と、ポンプシリンダの体積に関する情報を入力される操作部16と、光センサによって監視される運転状況、マイクによって監視される脈動の間隔、および操作部から入力される体積に関する情報に基づき、ポンプ装置が吐出するスラリーの流量を演算する演算部17と、演算された流量を信号に変換して出力する信号出力部18とを備える。
【選択図】
図3