(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】配管ユニット、作業用台車、及び、施工方法
(51)【国際特許分類】
F16L 3/00 20060101AFI20230615BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20230615BHJP
F16L 3/22 20060101ALI20230615BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20230615BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230615BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F16L3/00 H
E04G21/16
F16L3/22 A
F16L5/00 N
H02G3/04 087
H02G1/06
(21)【出願番号】P 2022034107
(22)【出願日】2022-03-07
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000191319
【氏名又は名称】新菱冷熱工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】浜野 明大
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-160040(JP,A)
【文献】特開昭50-096915(JP,A)
【文献】特開平08-144334(JP,A)
【文献】特表2021-525845(JP,A)
【文献】国際公開第2017/074245(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第3014382(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00
E04G 21/16
F16L 3/22
F16L 5/00
H02G 3/04
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物において複数フロアに渡る縦方向の配管をフロアごとに設置する配管ユニットであって、
設置対象フロアの床スラブに設置される基台と、
前記基台に取り付けられ、左右方向に所定間隔を隔てて互いに平行な状態で前記基台から上方に延びる一対のレール部と、
前記一対のレール部に係合した状態に取り付けられ、縦方向に配置される第1の配管を左右方向に並べた状態で保持する第1保持部材と、
前記第1保持部材に隣接した状態で前記基台に取り付けられ、縦方向に配置される第2の配管を左右方向に並べた状態で保持する第2保持部材と、
を備え、
前記第1保持部材は、前記一対のレール部に沿って前記一対のレール部の上部へ移動可能であり、
前記第2保持部材は、前記第1保持部材が前記第1の配管を保持した状態で前記一対のレール部の上部へ移動した状態のときに、前記第1保持部材の下方位置へ移動可能であり、前記第2の配管の上端を前記第1の配管の下端に接合させることができることを特徴とする配管ユニット。
【請求項2】
前記第2保持部材は、左右両側が前記基台の左右両側面に設けられた前後方向に延びるガイド部に係合しており、前記第1保持部材が前記第1の配管を保持した状態で前記一対のレール部の上部へ移動した状態のときに、前記ガイド部に沿って前記第1保持部材の下方位置へ移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の配管ユニット。
【請求項3】
前記第1保持部材は、前記一対のレール部の上部へ移動したとき、前記第1の配管の上端を上階床スラブに形成された開口に差し込んだ状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載の配管ユニット。
【請求項4】
前記基台は、前記設置対象フロアの床スラブに形成された開口を囲繞するように設置され、
前記第2保持部材は、前記第1保持部材の下方位置へ移動したとき、前記第2の配管の下端を、前記開口から上方に突出する下階フロアに設置された配管の上端に接合させることができることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の配管ユニット。
【請求項5】
前記基台の左右両側面のうちの一方の側面には、キャスターが取り付け可能であり、
前記基台を横倒し姿勢にして前記キャスターを接地させることにより、前記設置対象フロアへの搬入を可能としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の配管ユニット。
【請求項6】
前記第1保持部材は、前記第1の配管と共に第1の電気ケーブルを保持し、
前記第2保持部材は、前記第2の配管と共に第2の電気ケーブルを保持し、前記第1保持部材の下方位置へ移動したとき、前記第2の電気ケーブルの上端を前記第1の電気ケーブルの下端に接続することが可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の配管ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の配管ユニットを設置対象フロアに設置する際に使用する作業用台車であって、
前記配管ユニットの前記基台を囲繞するように配置可能であり、下面にキャスターが取り付けられた台車本体と、
前記台車本体の上面側に互いに対向するように配置される一対の揚重手段と、
を備え、
前記一対の揚重手段が前記配管ユニットを持ち上げた状態で前記台車本体を移動させることにより前記配管ユニットを設置箇所へ移動させることが可能であると共に、前記配管ユニットを前記設置箇所へ設置した後には、前記一対の揚重手段が前記第1保持部材を持ち上げることにより前記第1保持部材を前記一対のレール部の上部へ移動させることが可能であることを特徴とする作業用台車。
【請求項8】
前記台車本体は、
前記配管ユニットの前記基台の前面側及び後面側にそれぞれ配置される一対のビームと、
前記一対のビームの一端同士を相互に連結する第1連結ビームと、
前記一対のビームの他端同士を相互に連結する第2連結ビームと、
を備え、
前記揚重手段は、前記一対のビーム、前記第1連結ビーム及び前記第2連結ビームのそれぞれに取り付け可能であることを特徴とする請求項7に記載の作業用台車。
【請求項9】
前記一対のビームのうち少なくとも一方のビームは、中央部が両端部よりも高い位置に設けられており、前記設置対象フロアの床スラブに形成された開口から上方に突出する下階フロアに設置された配管の上方を移動可能としたことを特徴とする請求項8に記載の作業用台車。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の配管ユニットを設置する施工方法であって、
前記配管ユニットを横倒し姿勢にして設置対象フロアへの搬入する工程と、
前記配管ユニットを前記横倒し姿勢から起立姿勢に姿勢変化させる工程と、
前記配管ユニットを前記起立姿勢で持ち上げ、前記配管ユニットを設置箇所へ移動させる工程と、
前記配管ユニットの前記基台を前記設置箇所に固定する工程と、
前記第1保持部材を前記一対のレール部に沿って持ち上げることにより前記第1保持部材を前記一対のレール部の上部へ移動させる工程と、
前記第2保持部材を前記第1保持部材の下方位置へ移動させる工程と、
前記第1保持部材が保持する前記第1の配管の下端と前記第2保持部材が保持する前記第2の配管の上端とを接続する工程と、
を有することを特徴とする施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物においてフロアごとに設置される配管ユニット、その施工に用いられる作業用台車、及び、配管ユニットの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数フロアを有する建築物では、空調用の室外機が屋上に設置され、その室外機と各フロアに設置される空気調和機(例えば室内機)との間を接続するための配管(竪配管)が複数フロアに渡って縦方向に設置される。従来、この種の配管の施工方法として、ライザーユニット工法が知られている(例えば、特許文献1)。ライザーユニット工法とは、工場において加工された複数の配管を集約してユニット化し、そのユニット化された配管を建築物の施工現場にトラックにて搬送し、施工現場でユニット化された配管をクレーンで吊り上げ、躯体工事中の建築物の内部に吊り降ろして据え付ける工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の施工方法は、工事中の建築現場に設置されたクレーンを使用するため、多数の作業員が必要であると共に、配管の据え付けに手間取るなどして工程が遅延すると、建築工事全体に影響を与えるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、クレーンを用いることなく、従来よりも小人数の作業員でフロアごとに設置していくことを可能にした配管ユニット、その施工に用いられる作業用台車、及び、配管ユニットの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、建築物において複数フロアに渡る縦方向の配管をフロアごとに設置する配管ユニットであって、設置対象フロアの床スラブに設置される基台と、前記基台に取り付けられ、左右方向に所定間隔を隔てて互いに平行な状態で前記基台から上方に延びる一対のレール部と、前記一対のレール部に係合した状態に取り付けられ、縦方向に配置される第1の配管を左右方向に並べた状態で保持する第1保持部材と、前記第1保持部材に隣接した状態で前記基台に取り付けられ、縦方向に配置される第2の配管を左右方向に並べた状態で保持する第2保持部材と、を備え、前記第1保持部材は、前記一対のレール部に沿って前記一対のレール部の上部へ移動可能であり、前記第2保持部材は、前記第1保持部材が前記第1の配管を保持した状態で前記一対のレール部の上部へ移動した状態のときに、前記第1保持部材の下方位置へ移動可能であり、前記第2の配管の上端を前記第1の配管の下端に接合させることができることを特徴とする構成である。
【0007】
第2に、本発明は、第1の構成を有する配管ユニットにおいて、前記第2保持部材は、左右両側が前記基台の左右両側面に設けられた前後方向に延びるガイド部に係合しており、前記第1保持部材が前記第1の配管を保持した状態で前記一対のレール部の上部へ移動した状態のときに、前記ガイド部に沿って前記第1保持部材の下方位置へ移動可能であることを特徴とする構成である。
【0008】
第3に、本発明は、第1又は第2の構成を有する配管ユニットにおいて、前記第1保持部材は、前記一対のレール部の上部へ移動したとき、前記第1の配管の上端を上階床スラブに形成された開口に差し込んだ状態となることを特徴とする構成である。
【0009】
第4に、本発明は、第1乃至第3のいずれかの構成を有する配管ユニットにおいて、前記基台は、前記設置対象フロアの床スラブに形成された開口を囲繞するように設置され、前記第2保持部材は、前記第1保持部材の下方位置へ移動したとき、前記第2の配管の下端を、前記開口から上方に突出する下階フロアに設置された配管の上端に接合させることができることを特徴とする構成である。
【0010】
第5に、本発明は、第1乃至第4のいずれかの構成を有する配管ユニットにおいて、前記基台の左右両側面のうちの一方の側面には、キャスターが取り付け可能であり、前記基台を横倒し姿勢にして前記キャスターを接地させることにより、前記設置対象フロアへの搬入を可能としたことを特徴とする構成である。
【0011】
第6に、本発明は、第1乃至第5のいずれかの構成を有する配管ユニットにおいて、前記第1保持部材は、前記第1の配管と共に第1の電気ケーブルを保持し、前記第2保持部材は、前記第2の配管と共に第2の電気ケーブルを保持し、前記第1保持部材の下方位置へ移動したとき、前記第2の電気ケーブルの上端を前記第1の電気ケーブルの下端に接続することが可能であることを特徴とする構成である。
【0012】
第7に、本発明は、第1乃至第6のいずれかの構成を有する配管ユニットを設置対象フロアに設置する際に使用する作業用台車であって、前記配管ユニットの前記基台を囲繞するように配置可能であり、下面にキャスターが取り付けられた台車本体と、前記台車本体の上面側に互いに対向するように配置される一対の揚重手段と、を備え、前記一対の揚重手段が前記配管ユニットを持ち上げた状態で前記台車本体を移動させることにより前記配管ユニットを設置箇所へ移動させることが可能であると共に、前記配管ユニットを前記設置箇所へ設置した後には、前記一対の揚重手段が前記第1保持部材を持ち上げることにより前記第1保持部材を前記一対のレール部の上部へ移動させることが可能であることを特徴とする構成である。
【0013】
第8に、本発明は、第7の構成を有する作業用台車において、前記台車本体は、前記配管ユニットの前記基台の前面側及び後面側にそれぞれ配置される一対のビームと、前記一対のビームの一端同士を相互に連結する第1連結ビームと、前記一対のビームの他端同士を相互に連結する第2連結ビームと、を備え、前記揚重手段は、前記一対のビーム、前記第1連結ビーム及び前記第2連結ビームのそれぞれに取り付け可能であることを特徴とする構成である。
【0014】
第9に、本発明は、第8の構成を有する作業用台車において、前記一対のビームのうち少なくとも一方のビームは、中央部が両端部よりも高い位置に設けられており、前記設置対象フロアの床スラブに形成された開口から上方に突出する下階フロアに設置された配管の上方を移動可能としたことを特徴とする構成である。
【0015】
第10に、本発明は、第1乃至第6のいずれかの構成を有する配管ユニットを設置する施工方法であって、前記配管ユニットを横倒し姿勢にして設置対象フロアへの搬入する工程と、前記配管ユニットを前記横倒し姿勢から起立姿勢に姿勢変化させる工程と、前記配管ユニットを前記起立姿勢で持ち上げ、前記配管ユニットを設置箇所へ移動させる工程と、前記配管ユニットの前記基台を前記設置箇所に固定する工程と、前記第1保持部材を前記一対のレール部に沿って持ち上げることにより前記第1保持部材を前記一対のレール部の上部へ移動させる工程と、前記第2保持部材を前記第1保持部材の下方位置へ移動させる工程と、前記第1保持部材が保持する前記第1の配管の下端と前記第2保持部材が保持する前記第2の配管の上端とを接続する工程と、を有することを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、建築現場のクレーンを用いることなく、従来よりも小人数の作業員でフロアごとに配管ユニットを設置していくことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】配管ユニットの一構成例を示す斜視図である。
【
図5】第1保持部材をレール部の上部へ移動させた状態を示す図である。
【
図6】第2保持部材を第1保持部材の下方位置へ移動させた状態を示す図である。
【
図7】配管ユニットを施工する際に用いられる作業用台車を示す図である。
【
図8】配管ユニットを施工する際に用いられる作業用台車を示す図である。
【
図9】横倒し姿勢の配管ユニットに作業用台車を装着する前の状態を示す図である。
【
図10】作業用台車を配管ユニットに装着した状態及び配管ユニットを持ち上げた状態を示す図である。
【
図11】配管ユニットを回転させて起立姿勢とした状態を示す図である。
【
図12】配管ユニットを持ち上げて設置箇所へ移動させる状態を示す図である。
【
図13】揚重手段のフックを第1保持部材に取り付けた状態を示す図である。
【
図14】揚重手段が第1保持部材をレール部の上部へ持ち上げた状態を示す図である。
【
図15】基台に歩廊床を取り付けた状態を示す図である。
【
図16】歩廊床を取り付けた配管ユニットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態における配管ユニット1を示す斜視図である。この配管ユニット1は、建築物の複数フロアに渡って縦方向に配置される複数の配管(竪配管)を集約したユニットであり、複数の配管をフロアごとに設置可能としたものである。例えば、この配管ユニット1は、新築工事中の建築物において下階フロアから上階フロアに向かって1フロアずつ順に設置可能とされている。
【0020】
この配管ユニット1は、複数のフレーム材11が溶接等によって直方体状に形成された基台10と、その基台10に取り付けられて互いに平行な状態で基台10の上方に延設される一対のレール部21,22と、基台10の内側に配置される第1保持部材30と、基台10の内側において第1保持部材30に隣接して配置される第2保持部材40とを備えている。第1保持部材30及び第2保持部材40は、建築物の内部において縦方向に設置される複数の配管8,9を保持する部材である。これら配管8,9は、空調用の冷媒配管であり、建築物の屋上に設置される室外機と各フロアに設置される空気調和機(例えば室内機)との間で冷媒を循環させるための配管である。第1保持部材30及び第2保持部材40によって保持される配管8,9のそれぞれの長さは、例えば設置対象フロアの床スラブから上階フロアの床スラブまでの長さを2分割した長さとして形成される。第1保持部材30及び第2保持部材40は、複数の配管8を左右方向に並設した状態で保持することが可能である。また、第1保持部材30及び第2保持部材40は、配管8,9と共に、電気ケーブル39,49を保持している。これら電気ケーブル39,49は、建築物の屋上に設置される室外機と各フロアに設置される空気調和機(例えば室内機)との間で電気信号を送受信するためのケーブルである。
【0021】
図2は、基台10と一対のレール部21,22とを示す図である。基台10は、例えば山形鋼や溝形鋼などの鋼材である複数のフレーム材11が溶接等によって直方体状に組み付けられ、上部開口12と下部開口13とを有している。基台10の前後方向の奥行き寸法は、左右方向の幅寸法よりも小さく形成され、例えば建築現場に設置される仮設エレベータの奥行き寸法よりも小さく、仮設エレベータに積載可能なサイズとして形成される。基台10の高さ寸法は、例えば第1保持部材30及び第2保持部材40によって保持される配管8,9の長さの半分程度であれば良い。
【0022】
このような基台10は、設置対象フロアの床スラブに固定された状態に設置される。基台10は、剛性が高いため、例えば地震発生時において配管8,9が横方向に大きく振動することを抑制する振れ止め機能を有している。
【0023】
一対のレール部21,22は、基台10の内側において後方の左右両側に溶接等によって固着されており、基台10の上部開口12から更に上方に向かって延びている。これら一対のレール部21,22の高さは、設置対象フロアの天井高さにもよるが、例えば基台10の高さの約1.5~3程度の高さとして形成される。そのため、基台10の上方の所定高さ位置には、一対のレール部21,22を相互に連結する連結部材25が設置され、一対のレール部21,22を平行な状態に保持している。また、各レール部21,22の前面側には、上下方向に延びるスリット23が形成されている。スリット23は、レール部21,22の下端から上端まで連続形成されている。更に、一対のレール部21,22の上端部には、リング状の係合部24,24が設けられている。
【0024】
基台10の左右両側面には、水平方向(前後方向)に配置されるガイド部15が設けられる。例えば、ガイド部15は、中央の高さ位置に水平方向(前後方向)に長尺のガイド孔15aが形成された金属板によって構成される。このようなガイド部15は、基台10の左右両側面において、第1の高さ位置と、第1の高さ位置よりも高い位置の第2の高さ位置との2箇所に設置される。また、第1の高さ位置に設置されるガイド部15の上部には、リング状の係合部16が設けられている。
【0025】
基台10の左右両側面のうちの一方の側面には、後述するキャスター19(
図9参照)を取り付け可能なキャスター取付部14が設けられる。尚、
図2では、キャスター取付部14が基台10の右側面に設けられている例を示している。
【0026】
更に、基台10の前後両面には、左右方向に横断する支持部材17が取り付けられている。例えば支持部材17は、基台10の中央の高さ位置に取り付けられている。支持部材17は、その左右両端が基台10の支柱に固定されており、左右方向中央位置にリング状の係合部18が設けられている。
【0027】
図3は、第1保持部材30を示す図である。第1保持部材30は、基台10の内部において左右方向に所定間隔で配置される一対の保持部31,32を有する。一対の保持部31,32は、例えば断面コ字状の鋼材によって構成され、互いに対向するように配置される。また、一対の保持部31,32は、縦方向に長尺であり、上部、中央部、及び、下部の3箇所に、水平方向(左右方向)に延びる連結部材33が連結されており、それら連結部材33によって互いに所定間隔で平行な状態を保持するように一体化されている。尚、連結部材33の配置箇所は3箇所に限られるものではなく、2箇所以上であれば良い。
【0028】
第1保持部材30は、一対の保持部31,32間に横架される複数の連結部材33に配管8(第1の配管)を取り付けることにより、配管8を保持する。すなわち、第1保持部材30は、配管8を連結部材33に添接した状態で、配管8の外周面に配管バンド34を装着し、その配管バンド34の両端を連結部材33に固定することで配管8を保持する。また、第1保持部材30は、一対の保持部31,32間に、複数の配管8を保持することが可能である。例えば1つのフロアには、3つの冷媒配管8a,8b,8cが設置されるため、第1保持部材30は、それら3つの冷媒配管8a,8b,8cを1つに束ねた状態で配管バンド34によって連結部材33に固定される。尚、各冷媒配管8a,8b,8cは、銅管の外周面に断熱材を被覆した構成となっている。そして第1保持部材30は、そのような冷媒配管8a,8b,8cの束を左右方向に並設することが可能であり、複数フロア分の配管8を保持することができる。
【0029】
また、第1保持部材30は、配管8と共に電気ケーブル39(第1の電気ケーブル)を保持する。すなわち、第1保持部材30は、配管8と共に筒状のスリーブ38を配管バンド34によって連結部材33に固定しており、そのスリーブ38の内側に電気ケーブル39を挿通した状態で保持する。この電気ケーブル39は、配管バンド34によって束ねられた配管8が接続される空気調和機(例えば室内機)と室外機とを電気的に接続するケーブルである。
図3の拡大
図A1に示すように、電気ケーブル39の上端は、スリーブ38の上端開口から延びており、その先端にコネクタ39aが設けられている。また、
図3の拡大
図A2に示すように、電気ケーブル39の下端は、スリーブ38の下端開口から延びている。電気ケーブル39が配管8よりも長い場合は、結束バンドなどを用いて電気ケーブル39を巻いた状態で保持しておくことが好ましい。そして電気ケーブル39の下端には、コネクタ39bが設けられている。
【0030】
更に、第1保持部材30は、一対の保持部31,32の中央部及び下部の2箇所の位置に係合金具35,36を備えている。これら係合金具35,36は、一対の保持部31,32の外側の側面に取り付けられる。
【0031】
係合金具35は、一対の保持部31,32の中央部に取り付けられる。この係合金具35は、レール部21,22の前面に接合する平板状の接合部35aを有し、その接合部35aにはレール部21,22の前面に形成されたスリット23に係合する係合部35bが設けられている。この係合部35bは、例えばボルトとナットから成る締結部材によって構成される。すなわち、係合部35bは、接合部35aの後方側に突出する軸部を有し、その軸部がレール部21,22のスリット23に挿通され、軸部の先端にナットが装着されることにより、レール部21,22に係合する。ボルトとナットの締め付けが緩い状態のとき、係合金具35はレール部21,22に固定されていない。そのため、係合金具35は、レール部21,22のスリット23の長手方向に沿ってスライド移動可能である。また、ボルトとナットがきつく締め付けられると、係合金具35は、レール部21,22に対して固定される。
【0032】
係合金具36は、一対の保持部31,32の下部に取り付けられる。この係合金具36も、レール部21,22の前面に接合する平板状の接合部36aを有し、その接合部36aにはレール部21,22の前面に形成されたスリット23に係合する係合部36bが設けられている。この係合部36bは、上記と同様、例えばボルトとナットから成る締結部材によって構成される。すなわち、係合部36bは、接合部36aの後方側に突出する軸部を有し、その軸部がレール部21,22のスリット23に挿通され、軸部の先端にナットが装着されることにより、レール部21,22に係合する。ボルトとナットの締め付けが緩い状態のとき、係合金具36はレール部21,22に固定されていない。そのため、係合金具36は、レール部21,22のスリット23の長手方向に沿ってスライド移動可能である。また、ボルトとナットがきつく締め付けられると、係合金具36は、レール部21,22に対して固定される。この係合金具36には、リング状の係合部37が設けられている。
【0033】
図4は、第2保持部材40を示す図である。第2保持部材40は、基台10の内部において左右方向に所定間隔で配置される一対の保持部41,42を有する。一対の保持部41,42は、例えば断面コ字状の鋼材によって構成され、互いに対向するように配置される。また、一対の保持部41,42は、縦方向に長尺であり、上部、中央部、及び、下部の3箇所に、水平方向(左右方向)に延びる連結部材43が連結されており、それら連結部材43によって互いに所定間隔で平行な状態を保持するように一体化されている。尚、連結部材33の配置箇所は3箇所に限られるものではなく、2箇所以上であれば良い。
【0034】
第2保持部材40は、一対の保持部41,42間に横架される複数の連結部材43に配管9(第2の配管)を取り付けることにより、配管9を保持する。すなわち、第2保持部材40は、配管9を連結部材43に添接した状態で、配管9の外周面に配管バンド44を装着し、その配管バンド44の両端を連結部材43に固定することで配管9を保持する。また、第2保持部材40は、一対の保持部41,42間に、複数の配管9を保持することが可能である。すなわち、第1保持部材30と同様、第2保持部材40は、1つのフロアに設置される3つの冷媒配管9a,9b,9cを1つに束ねた状態で配管バンド34によって連結部材33に固定する。そして第2保持部材40は、そのような冷媒配管9a,9b,9cの束を左右方向に並設することが可能であり、複数フロア分の配管9を保持することができる。尚、冷媒配管9a,9b,9cの管径はそれぞれ冷媒配管8a,8b,8cの管径と同一である。
【0035】
また、第2保持部材40は、配管9と共に電気ケーブル49(第2の電気ケーブル)を保持する。すなわち、第2保持部材40は、配管9と共に筒状のスリーブ48を配管バンド44によって連結部材33に固定しており、そのスリーブ48の内側に電気ケーブル49を挿通した状態で保持する。この電気ケーブル49は、配管バンド44によって束ねられた配管9が接続される空気調和機(例えば室内機)と室外機とを電気的に接続するケーブルである。
図4の拡大
図B1に示すように、電気ケーブル49の上端は、スリーブ48の上端開口から延びており、その先端にコネクタ49aが設けられている。また、
図4の拡大
図B2に示すように、電気ケーブル49の下端は、スリーブ48の下端開口から延びている。電気ケーブル49が配管9よりも長い場合は、結束バンドなどを用いて電気ケーブル49を巻いた状態で保持しておくことが好ましい。そして電気ケーブル49の下端には、コネクタ49bが設けられている。
【0036】
更に、第2保持部材40は、一対の保持部41,42の中央部及び下部の2箇所の位置に係合金具45,46を備えている。これら係合金具45,46は、一対の保持部41,42の外側の側面に取り付けられる。
【0037】
係合金具45は、一対の保持部41,42の中央部に取り付けられる。また、係合金具46は、一対の保持部41,42の下部に取り付けられる。これら係合金具45,46は、同一形状を有し、基台10の左右両側面に設けられたガイド部15に係合する。すなわち、係合金具45は、基台10の左右両側面の上部に設けられたガイド部15の内面に接合する平板状の接合部45aを有し、その接合部45aにはガイド部15に形成された前後方向のガイド孔15aに係合する係合部45bが設けられている。また、係合金具46は、基台10の左右両側面の下部に設けられたガイド部15の内面に接合する平板状の接合部46aを有し、その接合部46aにはガイド部15に形成された前後方向のガイド孔15aに係合する係合部46bが設けられている。これら係合部45b,46bは、例えばボルトとナットから成る締結部材によって構成される。すなわち、係合部45b,46bは、接合部45a,46aの外側に突出する軸部を有し、その軸部がガイド部15のガイド孔15aに挿通され、軸部の先端にナットが装着されることにより、ガイド部15に係合する。ボルトとナットの締め付けが緩い状態のとき、係合金具45,46はガイド部15に固定されていない。そのため、係合金具45,46は、ガイド部15のガイド孔15aの長手方向(前後方向)に沿ってスライド移動可能である。また、ボルトとナットがきつく締め付けられると、係合金具45,46は、ガイド部15に対して固定される。
【0038】
上記のように構成される配管ユニット1は、
図1に示すように、配管8を保持する第1保持部材30を基台10の後方側に配置しており、第1保持部材30の左右両側に設けた係合金具35,36を一対のレール部21,22のスリット23に係合させている。また、配管ユニット1は、配管9を保持する第2保持部材40を基台10の前方側に配置しており、第2保持部材40の左右両側に設けた係合金具45,46を基台10のガイド部15に係合させている。
【0039】
このような配管ユニット1は、工場において
図1に示す状態に組み付けられ、建築現場へと搬送され、建築現場に設置される仮設エレベータを用いて設置対象フロアへと搬入される。設置対象フロアへ搬入されると、配管ユニット1は、設置箇所に据え付けられる。そして配管ユニット1は、
図5に示すように、第1保持部材30が一対のレール部21,22に沿って一対のレール部21,22の上部へ移動した状態に固定される。
図5に示すように、第1保持部材30が一対のレール部21,22の上部へ移動すると、第1保持部材30の下方には第2保持部材40を収容可能な空間が形成される。そこで、配管ユニット1は、第1保持部材30が一対のレール部21,22の上部に固定された後、第2保持部材40をガイド部15に沿って基台10の後方側へ移動させることが可能である。そして、配管ユニット1は、
図6に示すように、第2保持部材40が第1保持部材30の下方へ移動した状態に固定されることにより、第1保持部材30によって保持される配管8と第2保持部材40によって保持される配管9とを鉛直方向の直線上に配置することができ、配管9の上端を配管8の下端に接合させることが可能な状態となる。
【0040】
次に、上記のような作業を施工現場で効率良く行えるようにするための作業用台車について説明する。
図7及び
図8は、上述した配管ユニット1を施工する際に用いられる作業用台車2を示す図である。この作業用台車2は、配管ユニット1の基台10を囲繞するように配置可能であり、下面にキャスター63が取り付けられた台車本体60と、台車本体60の上面側に互いに対向するように配置される一対の揚重手段71,72とを備えている。
【0041】
台車本体60は、配管ユニット1の基台10の前面側及び後面側のそれぞれに対向するように配置される一対のビーム61,62と、それら一対のビーム61,62の一端同士を相互に連結する第1連結ビーム64と、一対のビーム61,62の他端同士を相互に連結する第2連結ビーム65とを備えている。一対のビーム61,62は、その両端の下面にキャスター63が取り付けられている。キャスター63は、鉛直軸周りに旋回可能な車輪を備えており、作業用台車2を任意の方向に移動可能に支持している。
【0042】
例えば、第1連結ビーム64は、一対のビーム61,62の一端に溶接等によって固定され、一対のビーム61,62に対して着脱不可能な状態に取り付けられる。これに対し、第2連結ビーム65は、ボルトとナットから成る締結部材66によって一対のビーム61,62の他端に取り付けられるため、一対のビーム61,62に対して着脱可能である。第2連結ビーム65が一対のビーム61,62の他端に取り付けられたとき、台車本体60は平面視で矩形状となる。また、第2連結ビーム65が一対のビーム61,62の他端から取り外されると、一対のビーム61,62の他端が開放されるため、台車本体60は平面視でコ字状となる。
【0043】
また、一対のビーム61,62のうちの一方のビーム62は、アーチ型(門型)のビームとして構成される。すなわち、ビーム62は、中央部62aが両端部62b,62bよりも高い位置に設けられている。尚、
図7及び
図8では、一対のビーム61,62のうち、一方のビーム62だけをアーチ型とした例を示しているが、双方のビーム61,62をアーチ型として構成しても構わない。
【0044】
そして、台車本体60は、一対のビーム61,62、第1連結ビーム64、及び、第2連結ビーム65のそれぞれの上面中央に、揚重手段71,72を嵌め込んで装着することが可能なスリーブ68を備えている。一対の揚重手段71,72は、それらのスリーブ68に嵌め込んだ状態でビスなどによって台車本体60に固定される。
【0045】
一対の揚重手段71,72は、例えば手動式のリフト装置によって構成される。揚重手段71,72は、所定高さを有する筐体70の正面側上部に開口73が設けられ、筐体70の背面側に操作ハンドル79が設けられている。操作ハンドル79は、筐体70の内部に設けられた巻取器78をR方向に回転させるものである。巻取器78には、チェーンやワイヤーロープなどの索条74の端部が接続されている。そのため、操作ハンドル79がR方向に回転操作されると、巻取器78は、操作ハンドル79と共に回転し、索条74を巻き取ったり、繰り出したりする。例えば操作ハンドル79には、切り替え可能なワンウェイクラッチが設けられており、巻き取り操作や繰り出し操作の途中で操作ハンドル79から手が離されたとしても逆方向に回転しない構造となっている。巻取器78から延びる索条74は、筐体70の上部に取り付けられた滑車77に架けられており、その先端にはフック75が設けられている。そしてフック75は、筐体70の開口73から揚重手段71,72の正面側に垂下している。また、滑車77は、筐体70の上部に設けられた係合部76に対して着脱可能となっている。
【0046】
上記のような揚重手段71,72は、その下部が台車本体60に設けられたスリーブ68に嵌め込み可能となっており、台車本体60の上面側において、開口73が設けられた正面を互いに対向させた状態に設置される。例えば、揚重手段71,72は、
図7に示すように、それぞれの正面側を作業用台車2の内側に向けた状態で、一対のビーム61,62の上面に設けられたスリーブ68に嵌め込んだ状態に固定可能である。また、揚重手段71,72は、
図8に示すように、それぞれの正面側を作業用台車2の内側に向けた状態で、第1連結ビーム64及び第2連結ビーム65の上面に設けられたスリーブ68に嵌め込んだ状態に固定することも可能である。すなわち、作業用台車2は、台車本体60に対する揚重手段71,72の設置位置を、
図7に示す位置と、
図8に示す位置とで簡単に付け替えることができる構成となっている。
【0047】
次に、上記のような作業用台車2を用いて配管ユニット1を施工する手順について説明する。まず、配管ユニット1は、工場で組み付けられた後、基台10の側面に設けられたキャスター取付部14にキャスター19が取り付けられる。そして配管ユニット1は、
図9に示すように、基台10を横倒し姿勢にしてキャスター19を接地させた状態に姿勢変化される。この配管ユニット1は横倒し姿勢でトラックに積載され、建築現場へと搬送される。建築現場に到着すると、配管ユニット1は横倒し姿勢のままでトラックから降ろされ、建築現場の仮設エレベータを利用して設置対象フロアへと搬入される。つまり、本実施形態の配管ユニット1は、建築現場のクレーンを用いることなく、設置対象フロアへ搬入することが可能である。そのため、クレーンを用いる場合に比べて少ない人数で配管ユニット1を設置対象フロアへ搬入することができる。
【0048】
設置対象フロアに配管ユニット1が搬入されると、
図9に示すように、作業用台車2を準備する。このとき、作業用台車2の第2連結ビーム65を台車本体60から取り外しておく。また、揚重手段71,72は、
図9に示すように一対のビーム61,62の上面に設置しておく。そして作業用台車2を矢印F1で示す方向に移動させ、一対のビーム61,62のうちの開放された端部の内側に配管ユニット1を挿入する。これにより、一対のビーム61,62の間に配管ユニット1の基台10が収容された状態となる。
【0049】
図10(a)は、配管ユニット1の基台10が作業用台車2の一対のビーム61,62間に収容された状態を示している。このとき、作業用台車2の揚重手段71,72のそれぞれが基台10の前面及び後面のそれぞれに対向した状態となっている。その状態で台車本体60に第2連結ビーム65を取り付け、作業用台車2の剛性を高める。
【0050】
続いて、揚重手段71,72のフック75を、基台10の前後両面に設けられた係合部18に係合させる。そして揚重手段71,72の操作ハンドル79を同時に所定方向に回転させて索条74を巻き取っていく。その結果、
図10(b)に示すように、配管ユニット1は、作業用台車2の揚重手段71,72によって持ち上げられた状態となる。
【0051】
配管ユニット1を所定高さまで持ち上げると、次に
図11に示すように配管ユニット1を回転させ、配管ユニット1を横倒し姿勢から起立姿勢に姿勢変化させる。その後、配管ユニット1の起立姿勢を保持したままで、揚重手段71,72の操作ハンドル79を上記とは逆方向に回転させることにより、索条74を繰り出して配管ユニット1を降下させ、床面に仮置きする。配管ユニット1を床面に仮置きすると、基台10の側面に取り付けられているキャスター19を取り外す。また、揚重手段71,72を一対のビーム61,62から取り外し、第1連結ビーム64及び第2連結ビーム65の上面に設置する。そして揚重手段71,72のフック75を、基台10の左右両側面に設けられた係合部16に係合させる。このとき、先にキャスター19を取り外しておけば、フック75を係合部16に係合させる際にキャスター19が邪魔にならず、作業効率が向上する。
【0052】
その後、揚重手段71,72の操作ハンドル79を同時に所定方向に回転させて再び索条74を巻き取っていく。その結果、
図12に示すように、配管ユニット1は、作業用台車2の揚重手段71,72によって再び持ち上げられた状態となる。そして配管ユニット1を持ち上げた状態のまま、作業用台車2を矢印F2で示すように配管ユニット1の設置箇所90へ移動させる。
【0053】
図12に示すように、設置対象フロアにおいて配管ユニット1の設置箇所90には、床スラブに開口91が形成されており、下階フロアに設置された配管93の上端が開口91から上方に突出している。配管ユニット1の基台10は、その開口91の周囲に設置されたアンカー92に固定される。
【0054】
ここで、作業用台車2の台車本体60において、アーチ型に形成されるビーム62は、その中央部62aが開口91から上方に突出する配管93の上端位置よりも高い位置に設けられる。そして揚重手段71,72が配管ユニット1を持ち上げる際には、基台10の底部がアーチ型のビーム62の中央部62aよりも更に高い位置となるまで持ち上げる。これにより、作業用台車2を矢印F2方向へ移動させる際には、ビーム62及び基台10が開口91から上方に突出する配管93に干渉しない。すなわち、アーチ型のビーム62及び基台10は、配管93の上方を矢印F2方向へ移動する。そして、配管ユニット1を開口91の上方位置へ移動させることができる。
【0055】
配管ユニット1を開口91の上方位置へ移動させると、揚重手段71,72の操作ハンドル79を操作し、配管ユニット1を設置箇所90へ降ろす。そして基台10の底部周縁をアンカー92に固定する。これにより、基台10は、開口91を囲繞するように設置される。また、基台10がアンカー92によって床スラブに固定されることにより、基台10は、躯体(床スラブ)と一体構造物となる。
【0056】
配管ユニット1の基台10を設置箇所90へ据え付けた後、
図13に示すように、揚重手段71,72の滑車77を取り外し、レール部21,22の上端に設けられている係合部24に滑車77を取り付ける。また、揚重手段71,72のフック75は、第1保持部材30の左右両側の係合金具36に設けられている係合部37に係止される。そして係合部35b,36bのボルトとナットを緩めた後、揚重手段71,72の操作ハンドル79を同時に所定方向に回転させて索条74を巻き取っていく。これにより、揚重手段71,72は、第1保持部材30をレール部21,22に沿って上昇させることができる。
【0057】
図14は、第1保持部材30を所定高さ位置へ上昇させた状態を示している。
図14に示すように、揚重手段71,72は、係合金具35がレール部21,22の上端近傍位置に達するまで第1保持部材30をレール部21,22に沿って上昇させることができる。
図14に示すように、第1保持部材30を上昇させると、係合部35b,36bのボルトとナットを締め付け、第1保持部材30をレール部21,22に固定する。これにより、第1保持部材30に保持されている配管8は、レール部21,22の上部に固定されると共に、振れ止め効果も付与される。すなわち、配管8は、十分な耐震性能を備えた状態でレール部21,22に固定される。
【0058】
第1保持部材30をレール部21,22の上部に固定することができると、フック75を係合部37から取り外すと共に、滑車77をレール部21,22の係合部24から取り外す。そして作業用台車2の第2連結ビーム65を台車本体60から取り外し、作業用台車2を配管ユニット1の周囲から撤去する。これにより、配管ユニット1は、
図5に示した状態となる。その後、第2保持部材40の左右両側に設けられた係合部45b,46bのボルトとナットを緩め、第2保持部材40をガイド部15に沿って基台10の後方側へ移動させることにより、第2保持部材40は、
図6に示したように第1保持部材30の下方に配置される。そして係合部45b,46bのボルトとナットを締め付け、第2保持部材40を基台10に固定する。第2保持部材40が基台10に固定されることにより、第2保持部材40に保持されている配管9も基台10に固定されると共に、振れ止め効果も付与される。すなわち、配管9は、十分な耐震性能を備えた状態で基台10に固定される。
【0059】
第2保持部材40を第1保持部材30の下方位置に固定すると、基台10の上部前方側には空きスペースができる。この空きスペースには歩廊床を取り付けることが可能である。
図15は、基台10の上部前方側に歩廊床81を取り付けた例を示す斜視図である。また、
図16は、歩廊床81を取り付けた配管ユニットを示す側面図である。
図15及び
図16に示すように、歩廊床81は、基台10の上端部に配置されたフレーム材11に固定される。基台10の上部に歩廊床が取り付けられることにより、配管8の下端部と配管9の上端部とをロウ付け等によって接続する際、
図16に示すように、作業者は歩廊床81に乗って作業を行うことができる。また、電気ケーブル39の下端に設けられたコネクタ39bと、電気ケーブル49の上端に設けられたコネクタ49aとの接続作業を行う際も歩廊床81に乗って行うことができる。そのため、配管8,9の接続作業、及び、電気ケーブル39,49の接続作業を効率良く行うことができるという利点がある。また、歩廊床81に乗って行う作業は高所作業となるため、歩廊床81には手摺82を取り付けることが好ましい。
【0060】
一方、配管9の下端部は、下階フロアに設置された配管93の上端部に接続される。また、電気ケーブル49の下端に設けられたコネクタ49bは、下階フロアに設置された配管93と共に束ねられている電気ケーブルの上端に設けられたコネクタに接続される。
【0061】
上記のようにして配管ユニット1が設置箇所90に設置されると、配管8の上端は、上階フロアの床スラブ95に形成された開口96に差し込まれた状態となり、その開口96から更に上方に突出している。また、電気ケーブル39の上端に設けられたコネクタ39aも上階フロアの床スラブ95に形成された開口96から上方に突出した状態となる。したがって、上階フロアにおいて上記と同様の工程で作業を進めることにより、上階フロアにも同様の配管ユニット1を据え付けることができる。
【0062】
以上のように、本実施形態における配管ユニット1は、建築物において複数フロアに渡る縦方向の配管をフロアごとに設置可能な構成となっている。この配管ユニット1は、直方体状に形成され、上部開口12及び下部開口13を有する基台10を備えており、建築物の内部を縦方向に設置される配管を基台10の上部開口12及び下部開口13に挿通した状態で支持するように形成される。そして配管ユニット1は、建築物の内部において縦方向に設置される配管8,9を基台10及び一対のレール部21,22に固定するため、地震発生時における配管8,9の横方向の振動を抑制することが可能である。つまり、本実施形態の配管ユニット1は、設置対象フロアに設置された時点で配管8,9の振れ止め機能を発揮するため、配管ユニット1を設置した後に配管8,9の振れ止めのための作業を別途行う必要がなく、作業効率に優れている。
【0063】
また、配管ユニット1は、基台10の内側に、第1保持部材30と第2保持部材40とを前後方向に隣接させて配置しており、それら第1保持部材30及び第2保持部材40のそれぞれに、1フロア分の長さを2分割した長さの配管8,9を保持させており、工場から建築現場の設置対象フロアへ搬入する際のサイズを小さくしている。そのため、建築現場に設置されているクレーンを用いることなく、仮設エレベータを使用して設置対象フロアへ搬送することが可能であり、作業者の人数を少なく抑えることができる。
【0064】
また、配管ユニット1を設置する際に使用する作業用台車2は、一対の揚重手段71,72が配管ユニット1を持ち上げた状態で台車本体60を移動させることにより配管ユニット1を設置箇所90へ移動させることが可能であると共に、配管ユニット1を設置箇所90へ設置した後には、一対の揚重手段71,72が第1保持部材30を持ち上げることにより第1保持部材30を一対のレール部21,22の上部へ移動させることが可能である。このような作業用台車2を用いれば、配管ユニット1を設置する際に必要な人数を3~4人程度に抑えることができるため、低コストで効率的に施工できるという利点がある。
【0065】
更に、本実施形態の配管ユニット1は、各フロアに配管8,9を設置するとき、電気ケーブル39,49も同時に配線することができる。そのため、配管ユニット1を設置した後に、複数のフロアに渡って電気ケーブルを敷設する作業を別途行う必要がなく、作業効率を著しく向上させることが可能である。
【0066】
以上、本発明に関する好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0067】
例えば、上記実施形態では、揚重手段71,72としてリフト装置が手動式である場合を例示した。しかし、揚重手段71,72は、手動式に限られるものではない。
【0068】
また、上記実施形態では、工場から建築現場の設置対象フロアへ搬送する際に、基台10の側面にキャスター19を取り付ける例を説明した。しかし、工場から建築現場の設置対象フロアへ搬送する際に、上述した作業用台車2を使用しても構わない。この場合、作業用台車2は、配管ユニット1を横倒し姿勢とした状態で配管ユニット1を設置対象フロアへ搬入する。
【0069】
更に、上記実施形態では、作業用台車2の台車本体60において、第1連結ビーム64が一対のビーム61,62の一端に溶接等によって固定され、着脱不可能である場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、第1連結ビーム64は、第2連結ビーム65と同様に、一対のビーム61,62に対して着脱可能な構成としても良い。
【符号の説明】
【0070】
1…配管ユニット、2…作業用台車、8,9…配管、10…基台、15…ガイド部、19…キャスター、21,22…レール部、30…第1保持部材、39…電気ケーブル(第1の電気ケーブル)、40…第2保持部材、49…電気ケーブル(第2の電気ケーブル)、60…台車本体、61,62…ビーム、63…キャスター、64…第1連結ビーム、65…第2連結ビーム、71,72…揚重手段(リフト装置)。
【要約】
【課題】建築物において複数フロアに渡る縦方向の配管を、クレーンを用いることなく、従来よりも小人数の作業員でフロアごとに設置できるようにする。
【解決手段】建築物において複数フロアに渡る縦方向の配管をフロアごとに設置する配管ユニット1は、設置対象フロアの床スラブに設置される基台10と、基台10に取り付けられ、互いに平行な状態で基台10から上方に延びる一対のレール部21,22と、一対のレール部21,22に係合し、配管8を保持する第1保持部材30と、第1保持部材30に隣接して配置され、配管9を保持する第2保持部材40と、を備える。第1保持部材30は、レール部21,22の上部へ移動可能であり、第2保持部材40は、第1保持部材30が配管8を保持した状態でレール部21,22の上部へ移動した状態のときに、第1保持部材30の下方位置へ移動可能である。
【選択図】
図1