(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】プリント柄及びプリント柄の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06P 5/00 20060101AFI20230615BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20230615BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230615BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20230615BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20230615BHJP
D06P 5/20 20060101ALI20230615BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20230615BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20230615BHJP
B41M 1/26 20060101ALI20230615BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
D06P5/00 120C
B05D5/06 101Z
B05D7/00 K
B05D5/06 104M
B32B3/14
B32B27/12
D06P5/20 C
B41M1/12
B41M3/06 F
B41M1/26
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2019071776
(22)【出願日】2019-04-04
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】519047820
【氏名又は名称】有限会社フジテック
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 茂
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-030103(JP,A)
【文献】特開昭61-188475(JP,A)
【文献】特開昭54-014809(JP,A)
【文献】特開2003-205672(JP,A)
【文献】特開昭62-145000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 1/00-7/00
B41M 1/00-3/18,
7/00-9/04
B41J 2/01
B05D 1/00-7/26
B32B 1/00-43/00
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のドットから構成されるプリント柄であり、
前記ドットは、側面視において、凸状に隆起した形状であり、
凸状に隆起したドットの表面は、複数の塗材で塗り分けられて
おり、
前記複数の塗材による色の境界線は、前記ドットが隆起する方向に沿って現れる形状であり、
前記ドットを横方向から観察したときに、異なる2つの視点において、前記ドットの色の組み合わせが互いに異なるものであるプリント柄。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント柄を有する布地。
【請求項3】
対象物品に対して、発泡インクを複数のドット状に付着させる工程と、
発泡インクを含有するドットの表面を複数の塗材で塗り分ける工程と、
発泡インクを含有するドットを発泡させる工程とを含む複数のドットから構成されるプリント柄の製造方法
であり、
形成されるプリント柄を構成するドットは、
前記複数の塗材による色の境界線は、前記ドットが隆起する方向に沿って現れる形状であり、
前記ドットを横方向から観察したときに、異なる2つの視点において、前記ドットの色の組み合わせが互いに異なるものであるプリント柄の製造方法。
【請求項4】
ドットの表面を複数の色で塗り分ける工程は、加熱発泡性かつ熱硬化型の発泡インクを含有する未発泡のドットの表面を、複数の塗材で塗り分ける工程であり、
発泡インクを含有するドットを発泡させる工程は、前記塗材で塗り分けられた前記ドットを加熱発泡性かつ熱硬化型の発泡インクと共に塗材を加熱することにより実施する請求項3に記載のプリント柄の製造方法。
【請求項5】
ドットを付着させる工程と、ドットの表面を複数の塗材で塗り分ける工程は、複数の異なる形状を有する貫通孔を有する版板を使用したスクリーン印刷により実施される請求項3又は4に記載のプリント柄の製造方法。
【請求項6】
対象物品は布地である請求項3ないし5に記載の各工程を含む布地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント柄とプリント柄の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布などの対象製品に対して、立体的な柄を形成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、下から上に向けて、離型紙層と、接着剤層と、発泡材層と、インク又はトナーの受容層とを順に積層したシートが開示されている。このシートを、接着剤層によって、布製のシャツなどに貼着して、アイロンや熱プレス機で加熱すると、発泡材層が膨らんで、立体的な画像が形成されるとされている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、発泡インクによって、立体印刷部として、シートに対して点字を形成する技術が記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献3には、シートに発泡インクで印刷した後、加熱処理を施して、文字、図柄の発泡層を形成した緩衝用シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-333839号公報
【文献】特開2001-96883号公報
【文献】特開昭61-178865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の立体的な画像は、一つの発泡材層の上にインクを積層することによって、所望の画像を現出させる構成である。この画像は、発泡インクが膨化することによって、画像全体が膨れ上がって見えるという視覚効果を生じるものであり、それ以外に特別な視覚的な効果は生じない。
【0007】
特許文献2に示されている点字や特許文献3に示されている文字又は図案についてもやはり、点字を発泡インクで形成すること、文字または図案を発泡インクで形成される発泡層で形成することが記載されているにすぎず、特別な視覚的な効果を生じるものではない。
【0008】
本発明は、プリント柄を見る方向によって、プリント柄の外観が変化するプリント柄と、そのようなプリント柄の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
複数のドットから構成されるプリント柄であり、前記ドットは、側面視において、凸状に隆起した形状であり、凸状に隆起したドットの表面は、複数の塗材で塗り分けられているプリント柄により上記の課題を解決する。前記ドットは凸状に隆起しており、複数の塗材で塗り分けられているため、プリント柄を構成するドットを観察する方向によって、プリント柄の色、模様、質感などの外観が変化する。これによって、従来にはない、視覚的な効果を発揮するプリント柄が得られる。
【0010】
また、対象物品に対して、発泡インクを複数のドット状に付着させる工程と、発泡インクを含有するドットの表面を複数の塗材で塗り分ける工程と、発泡インクを含有するドットを発泡させる工程とを含む複数のドットから構成されるプリント柄の製造方法により、上記の課題を解決する。この方法により、簡易な方法によって、上記のような視覚的な効果を発揮するプリント柄を製造することができる。
【0011】
上記の製造方法において、ドットの表面を複数の色で塗り分ける工程は、加熱発泡性かつ熱硬化型の発泡インクを含有する未発泡のドットの表面を、複数の塗材で塗り分ける工程であり、発泡インクを含有するドットを発泡させる工程は、前記塗材で塗り分けられた前記ドットを加熱発泡性かつ熱硬化型の発泡インクと共に塗材を加熱することにより実施することが好ましい。このようにすれば、ドットの発泡及び硬化と、前記塗材の定着とを、同時に実施することができる。
【0012】
上記の製造方法において、ドットを付着させる工程と、ドットの表面を複数の塗材で塗り分ける工程は、例えば、複数の異なる形状を有する貫通孔を有する版板を使用したスクリーン印刷により、効率的に実施することができる。
【0013】
上記のプリント柄を構成する対象物を、布地とすることにより、上記のような視覚的効果を発揮するプリント柄を有する布地を提供することができる。布地には、布の原反、布を補正した布製品が含まれるものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プリント柄を見る方向によって、プリント柄の外観が変化するプリント柄と、そのようなプリント柄の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】複数のドットから構成されるプリント柄を有する布地で構成したティーシャツの正面図である。
【
図2】
図1のプリント柄の部分を拡大して示した正面図である。
【
図7】プリント柄を構成するドットの他の例を示す正面図である。
【
図8】プリント柄を構成するドットの他の例を示す正面図である。
【
図9】プリント柄を構成するドットの他の例を示す正面図である。
【
図10】プリント柄を構成するドットの他の例を示す正面図である。
【
図11】プリント柄を構成するドットの他の例を示す正面図である。
【
図12】プリント柄を構成するドットの他の例を示す正面図である。
【
図13】スクリーン印刷の方法を示す説明図である。
【
図14】スクリーン印刷で使用する複数の刷版を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら、説明する。
図1ないし
図6にプリント柄を形成した布地の一例を示す。
図7ないし
図12にプリント柄を構成するドットの他の例を示す。
図13及び
図14にプリント柄の製造方法の一例を示す。なお、
図3ないし
図6においては、プリント柄を構成するドットの数は、図の簡単のため、
図2のドットの数とは厳密に一致していない状態で示した。
【0017】
図1ないし
図6に示したプリント柄1は、ティーシャツ3を構成する布地2に印刷したアルファベットの「A」の文字であり、
図2に示したように、複数のドット11から構成される。プリント柄1を構成する個々のドット11は、
図3ないし
図6に示したように、ドット11を側面視から見た際に、凸状に隆起した形状となっている。そして、凸状に隆起したドット11の表面は、
図2に示したように、複数の色で塗り分けられている。
【0018】
図1ないし
図6に示したプリント柄1を構成する個々のドット11は、正面視において、円形であり、左右側面視、平面視、及び底面視において、正面側に凸状に隆起する形状である。個々のドットの正面視における形状は、後述する
図7ないし
図12に示すように、円形に限定されない。個々のドットの左右側面視、平面視、及び底面視における形状も、凸状に隆起していればよく、その形状は特に限定されない。個々のドットの左右側面視、平面視、及び底面視における形状は、例えば、半球状、又は半球状よりも扁平な半楕円状、先端が丸く構成された先丸円錐状などが挙げられる。ドットを横から見た際における視認性を向上させるため、ドットは基部の幅が先端部に比して大きな形状とすることが好ましい。
【0019】
図1ないし
図6に示したプリント柄では、
図2に示したように、凸状に隆起したドット11の表面は、複数の塗材で塗り分けられている。具体的には、正面視において、
図2において黒色の塗りつぶしで示される左上の領域Cは青色の塗材で塗られており、
図2にいて白抜きで示される右上の領域Aは緑色の塗材で塗られており、
図2において135°の斜線で示された左下の領域Dは黄色の塗材で塗られており、
図2において45°の斜線で示された右下の領域Bはピンク色の塗材で塗られている。ドットの表面を塗り分けるに際しては、ドットの表面の一部を着色せずに、地色を残すことによって、ドットの表面が複数の色となるようにしてもよい。
【0020】
上述のように、複数のドット11は、凸状に隆起しているため、
図3に示したように、左側面からプリント柄1を観察すると、ドット11の色のうち青色と黄色とが主に視認される。このため、プリント柄1を左側面から観察すると、青色と黄色とで着色された複数のドット11で構成されたプリント柄1が視認される。
【0021】
図4に示したように、右側面からプリント柄1を観察すると、ドット11の色のうち緑色とピンク色とが主に視認される。このため、プリント柄を左側面から観察すると、緑色とピンク色とで着色された複数のドットで構成されたプリント柄が視認される。
【0022】
図5に示したように、平側面からプリント柄1を観察すると、ドット11の色のうち青色と緑色とが主に視認される。このため、プリント柄を平面側面から観察すると、青色と緑色とで着色された複数のドットで構成されたプリント柄が視認される。
【0023】
図6に示したように、底面からプリント柄1を観察すると、ドット11の色のうち黄色とピンク色とが主に視認される。このため、プリント柄を底面から観察すると、黄色とピンク色とで着色された複数のドットで構成されたプリント柄が視認される。
【0024】
そして、
図2に示したように、プリント柄を正面から観察すると、ドットの色のうち青色と緑色と黄色とピンク色とが視認される。このため、プリント柄を正面から観察すると、青色と緑色と黄色とピンク色とで着色された複数のドットで構成されたプリント柄が視認される。
【0025】
以上のように、
図1ないし
図6のプリント柄は、プリント柄を見る方向によって、プリント柄を構成するドットの色味が変化する。これによって、今までにはない斬新な視覚的な効果が得られる。
【0026】
図1ないし
図6のプリント柄では、同じ配色パターンの複数のドット11でプリント柄1が構成されている。このため、例えば、左側面視からプリント柄を観察すると青と黄色とからなるドット11が規則的に繰り返し配列された幾何学的なプリント柄1を観察することができる。右側面視、平面視、底面視、正面視においても同様に幾何学的なプリント柄を観察することができる。
【0027】
図1ないし
図6のプリント柄1は、同じ配色パターンの複数のドット11でプリント柄1を構成したが、プリント柄を構成する一のドットと他のドットとで、配色パターンを相違させてもよい。例えば、一のドットを2色で着色し、他のドットを4色で着色するといったパターンや、一のドットを1色とし、他のドットを2色とするといったパターンが挙げられる。
【0028】
図1ないし
図6のプリント柄1を構成するドット11では、正面視において、左上の領域Cの面積が、右上の領域Aの面積に比して、大きくなるように構成されている。また、右下の領域Bの面積が、左下の領域Dの面積に比して、大きくなるように構成されている。これにより、例えば、右側面側からドット11を観察した際に、面積を大きくした領域Aの青色が、わずかに視認されるようになっている。また、例えば、左側面側からドット11を観察した際に、面積を大きくした領域Bのピンク色が、わずかに視認されるようになっている。
【0029】
図1ないし
図6のプリント柄では、プリント柄1を構成し、隣接するドット11の間隔が同程度となるようにしている。これにより、ドット11の配列に規則性が付与され、幾何学的なプリント柄を観察することができるようにされている。隣接するドット11の間隔は、例えば、0.5~100mm、0.5~50mm、又は0.5~10mmの範囲とすることができる。隣接するドット11に間隔を設けることで、ドットの表面に塗られた異なる色彩を視認させやすくすることができる。
【0030】
上記のようなプリント柄は、例えば、
図1に示したような、布地2から構成させるティーシャツ3などの布製品に対して、印刷することができる。プリント柄を印刷する対象物となる物品は、特に限定されず、例えば、布地、紙、金属板、プラスチック板などの物品が挙げられる。布地には、布の原反に加えて、上衣、下衣、つなぎ服などの衣服、ペット用の衣服、布製の鞄などを含む布製品が含まれる。同様に、紙、金属板、又はプラスチック板には、ポスター、看板などの加工品が含まれるものとする。
【0031】
プリント柄には、
図1ないし
図6のような文字だけではなく、文字、図形、記号、模様、キャラクターの絵、又は肖像などが含まれる。
【0032】
上述の
図1ないし
図6の例では、ドットを複数の色で塗り分けたが、この例に限定されない。プリント柄を構成するドットは、外観が異なる複数の塗材で塗り分けられていればよい。例えば、複数の質感の異なる塗材でドットを塗り分けたりすることができる。これらの場合において、顔料や染料を併用してもよい。
【0033】
ドットを複数の質感の異なる塗材で塗り分ける際には、例えば、ガラス粉、パール粉などによるラメを含有する塗材と、ラメを含有していない塗材とで塗り分けたり、蓄光材を含有する塗材と、蓄光材を含有していない塗材とで塗り分けたり、再帰性反射材を含有する塗材と、再帰性反射材を含有しない塗材とで塗り分けたりすることができる。
【0034】
ドットを複数の色彩の異なる塗材で塗り分ける際には、色相、明度、及び彩度のうち少なくとも一つにおいて相違する複数の色を選択することが好ましい。着色する際の塗材としては、顔料、染料、ガラスビーズやプリズムなどの再帰性反射材、又は蓄光材などを使用することができる。
【0035】
ドットの直径は、特に限定さないが、例えば、1.0~100mmとすることができる。衣服などの布製品の場合は、例えば、ドットの直径は、1.0~50.0mm又は2.0~20.0mmの範囲など、小さめにしてもよい。看板などの物品の場合は、例えば、ドットの直径は、10.0~100mmの範囲など、大きめにしてもよい。
【0036】
ドットを塗り分ける色の数は、特に限定されないが、例えば、2~8色とすることができるし、2~4色とすることもできる。
【0037】
プリント柄を構成する複数のドットのうち、すべてのドットを凸状に隆起させた形状とし、すべてのドットの表面を複数の塗材で塗り分けるように構成してもよいし、一部のドットの表面を複数の塗材で塗り分けるように構成してもよい。
【0038】
プリント柄を構成するドットは、見る方向によって、色、模様、又は質感等の外観が変化するように構成すればよい。ドットは横方向から観察されやすい。このため、ドットを横方向から観察した際における、異なる少なくとも2つの視点において、ドットの色、模様、又は質感が変化するように、ドットを複数の塗材で塗り分ければよい。
【0039】
[ドットの変形例]
図1ないし
図6の例では、ドットを正面視において円形にし、ドットが正面側に凸状に隆起した形状とした。プリント柄を構成するドットは、例えば、
図7ないし
図12のように変更してもよい。以下、順に説明する。
図7ないし
図12の例は、いずれも、ドットの正面側に向かって隆起する形状である。
【0040】
図7の例は、正面視において、円形のドット11aを構成するA1、B1、C1、及びD1の扇形の領域の面積が同等となるように変更したものである。A1ないしD1の領域を、例えば、4色の異なる色彩で着色すると、左側面視、右側面視、平面視、又は底面視のいずれにおいても、2色の異なる色彩が視認される。A1ないしD1を塗り分けるパターンは、任意に変更することができる。
【0041】
図8の例は、正面視において、A2ないしH2の面積が同等の8つの三角形の領域からなる八角形のドット11bである。A2ないしH2を、例えば、8色の異なる色彩の塗材で着色すると、左側面視、右側面視、平面視、又は底面視のいずれにおいても、4色の異なる色彩が視認される。A2ないしH2を塗り分けるパターンは、任意に変更することができる。
【0042】
図9の例は、正面視において、A3ないしC3の面積が同等の3つの扇形の領域からなる円形のドット11cである。A3ないしC3を、例えば、3色の異なる色彩の塗材で着色すると、左側面視、右側面視、平面視、又は底面視のいずれにおいても、2色の異なる色彩が視認される。A3ないしC3を塗り分けるパターンは、任意に変更することができる。
【0043】
図10の例は、正面視において、A4ないしD4の面積が同等の4つの三角形の領域からなる菱形のドット11dである。A4ないしD4を、例えば、4色の異なる色彩の塗材で着色すると、左側面視、右側面視、平面視、又は底面視のいずれにおいても、2色の異なる色彩が視認される。A4ないしD4を塗り分けるパターンは、任意に変更することができる。
【0044】
図11の例は、正面視において、A5ないしC5の面積が相違する3つの面積が四角形の領域からなる菱形のドット11eである。A5ないしC5を、例えば、3色の異なる色彩の塗材で着色すると、左側面視、右側面視、平面視、又は底面視のいずれにおいても、2色の異なる色彩が視認される。A5ないしC5を塗り分けるパターンは、任意に変更することができる。
【0045】
図12の例は、正面視において、A6ないしD6の面積が同等の4つの三角形の領域からなる四角形のドット11fである。A6ないしD6を、例えば、4色の異なる色彩の塗材で着色すると、左側面視、右側面視、平面視、又は底面視のいずれにおいても、1色の異なる色彩が視認される。A6ないしD6を塗り分けるパターンは、任意に変更することができる。
【0046】
ドットの形状は、上記に例示したものの他、例えば、正面視における角の数が3~8の多角形、正面視おいて楕円形などの任意の形状にすることができる。
【0047】
[プリント柄の製造方法]
上記のプリント柄11は、例えば、布地2などの対象物品に対して、発泡インクを複数のドット状に付着させる工程と、発泡インクを含有するドットの表面を複数の塗材で塗り分ける工程と、発泡インクを含有するドットを発泡させる工程とを含む複数のドットから構成されるプリント柄の製造方法によって、製造することができる。この方法では、発泡インクを発泡させることによって、ドットを膨化させて、プリント柄を側面視において観察した際に凸状に隆起した形状とすることができる。ドットの表面は、複数の塗材で塗り分けられているので、プリント柄を見る方向によって、プリント柄は色、質感、又は模様などの外観が変化する。
【0048】
発泡インクは、体積が膨張することにより、凸状に隆起するインクを使用すればよい。発泡インクとしては、例えば、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタンなどの低分子量の膨張剤を含有し、加熱により発泡又は硬化する市販の熱硬化型の発泡インクを好適に使用することができる。熱硬化型の発泡インクは、例えば、ポリウレタン樹脂をビヒクルとするインクなどを使用することが可能である。そのようなインクとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシ樹脂などを含有する主剤に対して、イソシアネートプレポリマーを含有する硬化剤を添加して使用する2液型のインクなどが市販されている。また、硬化剤としてブロックイソシアネートを使用した1液型のインクを使用してもよい。
【0049】
発泡インクとしては、上記に挙げたものの他、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合樹脂をビヒクルとするインク、アクリル樹脂をビヒクルとするインク、ポリエステル樹脂をビヒクルとするインクなどのインクに、上記のような膨張剤を予め含有するものを使用することができる。また、これらのインクに膨張剤を別途添加したものを使用することもできる。発泡インクには、炭酸カルシウムなどの充填剤、任意の溶媒を含有するものを使用してもよい。発泡インクは、熱硬化型のものに限られず、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型のものや、溶媒の揮発により定着する溶媒蒸発型のものを使用してもよい。発泡インクは、化学反応により二酸化炭素などの気体を発生させることにより、発泡するものを使用してもよい。
【0050】
複数の色で塗り分ける際に使用する塗材は、発泡インクの表面に定着するものを使用すればよい。塗材としては、染料又は顔料のいずれを使用してもよい。塗材は、溶媒が蒸発することにより、発泡インクに対して定着する乾燥型の塗材を使用してもよいし、上記のような熱硬化型のインクを使用してもよいし、紫外線で硬化するインクを使用してもよい。塗材には、炭酸カルシウムなどの充填剤、任意の溶媒を含有するものを使用してもよい。
【0051】
上記の製造方法において、発泡インクを含有するドットの表面を複数の塗材で塗り分ける工程と、発泡インクを含有するドットを発泡させる工程とは、いずれの工程を先に実施してもよい。例えば、発泡させた発泡インクの表面を複数の塗料で塗り分けてもよい。また、例えば、発泡させる前の発泡インクの表面を複数の塗料で塗り分けて、その後、発泡インクを発泡させてもよい。
【0052】
上述のように、発泡インクとして、熱硬化型の発泡インクを使用する場合は、発泡インクを加熱して硬化させる際に、併せて、発泡インクの表面に塗られた塗材も加熱して溶媒を揮発させるなどして発泡インクに対して着色剤を定着させたり、熱硬化型の塗材を硬化させて発泡インクに対して塗材を定着させることが可能になる。また発泡インクとして、加熱により発泡する加熱発泡性の発泡インクを使用すれば、加熱することにより、発泡インクを発泡と発泡インクの硬化とドットの表面に塗られた複数の塗材の定着とを同時に行うことができる。このようにすれば、製造工程数を減じて効率化することができる。
【0053】
このため、ドットの表面を複数の色で塗り分ける工程は、未発泡の加熱発泡性かつ熱硬化型の発泡インクを含有するドットの表面を、複数の塗材で塗り分ける工程であり、発泡インクを含有するドットを発泡させる工程は、前記塗材で塗り分けられた前記ドットを加熱発泡性かつ熱硬化型の発泡インクと共に塗材を加熱することにより実施することが好ましい。
【0054】
上記の方法では、発泡インクの発泡と、硬化と、ドットの表面に塗られた塗材の定着とを同時に行う。この方法に限られず、例えば、発泡インクの発泡と、発泡インクの硬化と、塗材の定着とは別々の工程として行ってもよい。
【0055】
対象物品に対して、発泡インクで構成したドットを付着させる工程は、対象物品に対してドットを付着させることが可能な方法で実施すればよい。例えば、筆で発泡インクを対象物品に対して塗布することにより行ってもよいし、インクジェットプリンターによって、発泡インクを対象物品に対して吹き付けることにより行ってもよいし、スクリーン印刷により、発泡インクを対象物品に対して印刷することにより行ってもよい。
【0056】
同様に、発泡インクを含有するドットの表面を複数の色で塗り分ける工程は、ドットに対して塗材を付着させることが可能な方法で実施すればよい。例えば、筆で塗材をドットに対して塗布することにより行ってもよいし、インクジェットプリンターによって、塗材をドットに対して吹き付けることにより行ってもよいし、スクリーン印刷により、塗材をドットに対して印刷することにより行ってもよい。
【0057】
スクリーン印刷によって、対象物品に対して発泡インクを付着させたり、又はドットに対して塗材を付着するには、例えば、
図13及び
図14に示すようにして実施することができる。
図13及び
図14に示す方法では、スクリーンメッシュ21を張った枠体22と、感光材23と、スキージ26とを使用して、プリント柄1を構成するドット11を印刷する。
【0058】
図14及び
図15の方法では、複数の版板24を使用する。
図14に示したように、まず最初に、ドット11の外形状に対応する形状を有する複数の貫通孔241aを有する第1版板24aを使用する。
図13に示したように、枠体22に張られたスクリーンメッシュ21の印刷面に第1版板24aが固定された刷版を用意する。スクリーンメッシュ21の上に発泡インク25を載せて、発泡インクをスキージ26で圧延すると、貫通孔241aから発泡インク25が排出されて対象物品である布地2に対して、発泡インクから構成されるドット11が転写される。
図14の例では、第1版板24aには、複数の円形の貫通孔241aが形成されており、円形のドット11が転写される。
【0059】
次いで、
図14に示したように、ドット11の第1の領域に相当する形状の貫通孔241bを有する第2版板24bをスクリーンメッシュ21の印刷面に固定した第2刷版を使用して、黄色の塗材をドット11の第1の領域に印刷する。塗材をドットの第1の領域に印刷する際には、第2刷版の貫通孔241bからドット11が露出するように固定した状態で、スキージ26で塗材を圧延して、ドット11の表面に塗材を付着させる。
【0060】
同様に、ドット11の第2の領域に相当する形状の貫通孔241cを有する第3版板24cをスクリーンメッシュの印刷面に固定した第3刷版と、ドット11の第3の領域に相当する形状の貫通孔241dを有する第4版板24dをスクリーンメッシュの印刷面に固定した第4刷版と、ドット11の第4の領域に相当する形状の貫通孔241eを有する第5版板24eをスクリーンメッシュの印刷面に固定した第5刷版とを使用して、ドット11の第2の領域から第4の領域に、それぞれ緑色、青色、及びピンク色の異なる色の塗材を印刷する。
図14の例では、前記第1の領域は
図2に示したドット11のDの領域に対応し、前記第2の領域は
図2に示したドット11のAの領域に対応し、前記第3の領域は
図2に示したドット11のCの領域に対応し、前記第4の領域は
図4示したドット11のBの領域に対応する。
【0061】
上記のように、ドットを付着させる工程と、ドットの表面を複数の色で塗り分ける工程は、複数の異なる形状を有する貫通孔を有する版板を使用したスクリーン印刷により実施することによって、効率的に、複数のドットを形成し、当該ドットを複数の色で塗り分けることが可能になる。
【0062】
版板24に貫通孔241を形成する方法は、特に限定されない。例えば、枠体に張られたスクリーンメッシュ21に対して液状の感光材を塗布し、所望の貫通孔の形状に対応するポジフィルムを感光材23とスクリーンメッシュ21との上に載せて、日光や紫外線を照射して、感光材を硬化させ、未硬化の部分を水などの洗浄剤によって、洗い流すことにより形成することができる。また、感光材23として、PETなどの合成樹脂フィルムの上に一定の厚みとなるように感光材を塗布して構成されたフィルム状の感光材を使用してもよい。この場合、フィルム状の感光材の上に直接に所望の貫通孔の形状に対応するポジフィルムを重ねて感光してもよいし、フィルム状の感光材を枠体に張られたスクリーンメッシュ21の印刷面に固定した状態で、前記ポジフィルムをスクリーンメッシュ21と感光材23の上に重ねて、感光してもよい。
【0063】
感光材23は、スクリーンメッシュ21に対して、塗布することにより固定してもよいし、感光材23を接着剤などでスクリーンメッシュ21に対して固定してもよい。
【0064】
発泡インクを発泡させる工程では、発泡インクを発泡させるのに必要な処理を行えばよい。例えば、発泡インクが加熱により発泡する性質を備えるものであれば、加熱処理を行えばよい。また、発泡インクが、化学反応による二酸化炭素などの気体の発生により発泡するものであれば、触媒の添加などにより発泡させればよい。
【符号の説明】
【0065】
1 プリント柄
11 ドット