(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】農産物処理方法、農産物処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20230615BHJP
【FI】
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2019125255
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】518377562
【氏名又は名称】株式会社レグミン
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】成勢 卓裕
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-065626(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152820(WO,A1)
【文献】特開2012-083944(JP,A)
【文献】特開2003-345413(JP,A)
【文献】特開2004-203514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する、
農産物の品質を示す品質情報を作成するステップと、
前記品質情報を解析することにより、複数の加工内容から前記農産物に必要な加工内容を
選択して決定するステップと、
前記
農産物に付与された識別情報と前記加工内容とを関連付けて記憶部に記憶させるステップと、
前記識別情報に関連付けて前記記憶部に記憶された前記加工内容に
基づいて、複数の加工処理部のうち前記農産物に必要な前記加工内容に対応する加工処理部に前記農産物を搬送するステップと、
を有する農産物処理方法。
【請求項2】
前記加工内容を
選択して決定するステップは、
前記品質情報に基づいて、前記農産物を加工する前記加工処理部を決定するステップと、
を有する、
請求項1に記載の農産物処理方法。
【請求項3】
前記農産物に必要な加工内容を
選択して決定するステップの前に、容器識別情報が付された容器に前記農産物を収容するステップをさらに有し、
前記品質情報を作成するステップにおいて、前記容器識別情報と前記農産物とに基づいて、前記容器識別情報に関連付けられた前記品質情報を作成し、
前記記憶させるステップにおいて、前記容器識別情報と前記加工内容とを関連付けて前記記憶部に記憶させる、
請求項2に記載の農産物処理方法。
【請求項4】
前記容器識別情報に関連付けて、前記容器識別情報と異なり、かつ前記農産物に固有の農産物識別情報を前記記憶部に記憶させるステップをさらに有する、
請求項3に記載の農産物処理方法。
【請求項5】
前記農産物識別情報を前記記憶部に記憶させるステップにおいて、加工内容を決定した時刻に関連付けられた情報を含む前記農産物識別情報を前記記憶部に記憶させる、
請求項4に記載の農産物処理方法。
【請求項6】
前記加工処理部において前記農産物を加工した後に、当該農産物の前記識別情報に関連付けて前記記憶部に記憶された前記加工内容を参照することにより、複数の前記加工処理部から、前記農産物を次に加工する加工処理部を選択するステップをさらに有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の農産物処理方法。
【請求項7】
前記加工処理部において前記農産物を加工した後に前記識別情報に関連付けて前記記憶部に記憶された前記加工内容を参照することにより、他の前記加工処理部においてさらに前記農産物を加工するか否かを判定するステップと、
前記他の加工処理部において加工すると判定した場合、前記農産物を前記他の加工処理部に搬送するステップと、
前記他の加工処理部において加工しないと判定した場合、前記農産物を包装するためのラインに前記農産物を搬送するステップと、
を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の農産物処理方法。
【請求項8】
前記加工処理部において前記農産物を加工した後に、前記農産物の加工後の品質を示す加工後品質情報を作成するステップと、
前記加工後品質情報に基づいて複数の前記加工処理部から前記農産物を次に加工する加工処理部を選択するステップをさらに有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の農産物処理方法。
【請求項9】
前記農産物を購入する顧客からの注文情報を取得するステップと、
前記注文情報に基づいて前記農産物に必要な加工内容を決定するステップと、
をさらに有する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の農産物処理方法。
【請求項10】
前記農産物は、コマツナ、ホウレンソウ、キャベツ、ハクサイ及びチンゲンサイを含む葉菜類である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の農産物処理方法。
【請求項11】
複数の農産物それぞれ
の品質を示す品質情報を作成し、作成した前記品質情報を解析することにより、複数の加工内容から前記農産物に必要な加工内容を
選択して決定し、前記複数の農産物それぞれに付与された識別情報と決定した前記加工内容とを関連付けて記憶部に記憶させる加工内容決定部と、
前記複数の農産物それぞれに付与された前記識別情報に関連付けて前記記憶部に記憶された前記加工内容に基づいて前記複数の農産物を分別する分別部と、
前記分別部が分別した結果に基づいて
、複数の加工処理部
のうち分別された前記農産物に必要な前記加工内容に対応する加工処理部に前記農産物を搬送する搬送部と、
を有する、農産物処理システム。
【請求項12】
農産物を加工するために用いられるコンピュータに、
農産物の品質を示す品質情報を作成するステップと、
前記品質情報を解析することにより、複数の加工内容から前記農産物に必要な加工内容を
選択して決定するステップと、
前記
農産物に付与された識別情報と前記加工内容とを関連付けて記憶部に記憶させるステップと、
前記識別情報に関連付けて前記記憶部に記憶された前記加工内容に
基づいて、複数の加工処理部のうち前記農産物に必要な前記加工内容に対応する加工処理部に前記農産物を搬送するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物を処理するための農産物処理方法、農産物処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農産物に識別情報を付与する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1においては、農産物の識別情報と生産工程の履歴情報とを関連付けて記録する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
葉物野菜のような農産物は、包装する前に、変色部分の除去や虫食い部分の除去等のように農産物に加工処理を施すことが必要になる場合がある。従来技術のように、農産物に識別情報と履歴情報とを関連付けて記録するだけでは、加工工程において農産物に必要な加工処理を適切に施すことが困難であった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、農産物に必要な処理を施せるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る農産物処理方法は、農産物に必要な加工内容を決定するステップと、前記農産物に付与された識別情報と前記加工内容とを関連付けて記憶部に記憶させるステップと、前記識別情報に関連付けて前記記憶部に記憶された前記加工内容に対応する加工処理部に前記農産物を搬送するステップと、を有する。
【0007】
前記加工内容を決定するステップは、前記農産物の品質を示す品質情報を作成するステップと、前記品質情報に基づいて、前記農産物を加工する前記加工処理部を決定するステップと、を有してもよい。
【0008】
前記農産物に必要な加工内容を決定するステップの前に、容器識別情報が付された容器に前記農産物を収容するステップをさらに有し、前記品質情報を作成するステップにおいて、前記容器識別情報と前記農産物とに基づいて、前記容器識別情報に関連付けられた前記品質情報を作成し、前記記憶させるステップにおいて、前記容器識別情報と前記加工内容とを関連付けて前記記憶部に記憶させてもよい。
【0009】
農産物処理方法は、前記容器識別情報に関連付けて、前記容器識別情報と異なり、かつ前記農産物に固有の農産物識別情報を前記記憶部に記憶させるステップをさらに有してもよい。
【0010】
前記農産物識別情報を前記記憶部に記憶させるステップにおいて、加工内容を決定した時刻に関連付けられた情報を含む前記農産物識別情報を前記記憶部に記憶させてもよい。
【0011】
農産物処理方法は、前記加工処理部において前記農産物を加工した後に、当該農産物の前記識別情報に関連付けて前記記憶部に記憶された前記加工内容を参照することにより、複数の前記加工処理部から、前記農産物を次に加工する加工処理部を選択するステップをさらに有してもよい。
【0012】
前記加工処理部において前記農産物を加工した後に前記識別情報に関連付けて前記記憶部に記憶された前記加工内容を参照することにより、他の前記加工処理部においてさらに前記農産物を加工するか否かを判定するステップと、前記他の加工処理部において加工すると判定した場合、前記農産物を前記他の加工処理部に搬送するステップと、前記他の加工処理部において加工しないと判定した場合、前記農産物を包装するためのラインに前記農産物を搬送するステップと、を有してもよい。
【0013】
前記加工処理部において前記農産物を加工した後に、前記農産物の加工後の品質を示す加工後品質情報を作成するステップと、前記加工後品質情報に基づいて複数の前記加工処理部から前記農産物を次に加工する加工処理部を選択するステップをさらに有してもよい。
【0014】
農産物処理方法は、前記農産物を購入する顧客からの注文情報を取得するステップと、前記注文情報に基づいて前記農産物に必要な加工内容を決定するステップと、をさらに有してもよい。
【0015】
前記農産物は、例えば、コマツナ、ホウレンソウ、キャベツ、ハクサイ及びチンゲンサイを含む葉菜類である。
【0016】
本発明の第2の態様の農産物処理システムは、複数の農産物それぞれに必要な加工内容を決定し、前記複数の農産物それぞれに付与された識別情報と決定した前記加工内容とを関連付けて記憶部に記憶させる加工内容決定部と、前記識別情報に関連付けて前記記憶部に記憶された前記加工内容に基づいて前記複数の農産物を分別する分別部と、前記分別部が分別した結果に基づいて複数の加工処理部から選択した加工処理部に前記農産物を搬送する搬送部と、を有する。
【0017】
本発明の第3の態様のプログラムは、農産物を加工するために用いられるコンピュータに、農産物に必要な加工内容を決定するステップと、前記農産物に付与された識別情報と前記加工内容とを関連付けて記憶部に記憶させるステップと、前記識別情報に関連付けて前記記憶部に記憶された前記加工内容に対応する加工処理部に前記農産物を搬送するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、農産物に必要な処理を施せるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】農産物管理データベースの一例を示す図である。
【
図3】農産物の加工の流れを示すフローチャートである。
【
図4】複数の分別部を有する農産物処理システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[農産物処理システムSの概要]
図1は、農産物処理システムSの概要を示す図である。農産物処理システムSは、農産物Vを加工するための処理を支援するシステムである。農産物Vは、例えばコマツナ、ホウレンソウ、キャベツ、ハクサイ及びチンゲンサイを含む葉菜類であるが、農産物Vは葉菜類に限定されない。
【0021】
農産物処理システムSは、収穫された農産物Vを出荷するために必要な加工をする際に使用されるシステムであり、農産物管理装置10と、収容処理部11と、加工内容決定部12と、分別部13と、第1搬送部14と、加工処理部15(
図1においては15a、15b、15c)と、包装処理部16と、第2搬送部17とを備える。加工内容決定部12及び分別部13は、それぞれが異なる装置により構成されていてもよく、
図1において破線で示すように1台の分類機に含まれていてもよい。また、収容処理部11、加工内容決定部12、分別部13、第1搬送部14、加工処理部15、包装処理部16、及び第2搬送部17の全て又は一部が同一の装置に含まれていてもよい。
【0022】
収穫された農産物Vは、ベルトコンベアー等の搬送装置を含む第1搬送部14を介して、収容処理部11から加工処理部15へと搬送される。農産物処理システムSは、プログラムを実行することにより収容処理部11、加工内容決定部12、分別部13、第1搬送部14、加工処理部15、第2搬送部17、包装処理部16及び農産物管理装置10の少なくとも一部を制御するコンピュータを備えてもよい。
【0023】
[農産物処理システムSの各部の構成]
以下、
図1を参照しながら農産物処理システムSの各部の構成及び機能を説明する。
農産物管理装置10は、ハードディスク又はSSD等の記憶部を含む装置であり、例えばコンピュータである。農産物管理装置10は、農産物処理システムSを構成する他の装置と同一の場所に設置されていてもよく、ネットワークを介して他の一部の装置と接続されていてもよい。農産物管理装置10は、農産物Vの加工内容を示す履歴情報と農産物Vの識別情報とが関連付けられた農産物管理データベースを記憶部に記憶する。
【0024】
図2は、農産物管理装置10が記憶している農産物管理データベースの一例を示す図である。農産物管理データベースにおいては、農産物IDと、容器IDと、処理回数と、品質と、農産物Vの高さ・重量と、農産物Vの色と、農産物Vの葉の割合と、状態フラグ(黄葉除去、虫食除去、一部破損、廃棄)と、廃棄理由と、処理ラインとが関連付けられている。農産物処理システムSを構成する各部は、農産物管理データベースに含まれるデータを参照したり、データを更新したりすることができる。
【0025】
図2に示す例における「農産物ID」は、農産物Vに所定の処理が施された日時を示すタイムスタンプを含む農産物識別情報である。農産物IDは、日時を示すタイムスタンプを含む情報に限定されず、処理の順番を示す情報であってもよく、日時又は処理の順番等が暗号化された情報(例えばハッシュ値)であってもよい。所定の処理は、例えば農産物Vを容器Cに収容する処理、又は農産物Vの加工内容を決定する処理である。「容器ID」は、農産物Vが収容された容器Cに固有の容器識別情報である。
【0026】
「処理回数」は、農産物Vに施された処理の回数を示す数値である。「品質」は、農産物Vの品質のランクを示す。品質のランクは、例えば、農産物Vに必要な加工処理の数が多ければ多いほど低下する。品質のランクは、葉の枚数又は色を含む各種の判断基準に基づいて総合的に判断されることにより決定されていてもよい。「高さ」は農産物Vの高さであり、「重量」は農産物Vの重量である。「色」は、農産物Vの色を示すコードである。「葉の割合」は、農産物Vにおける葉の割合である。
【0027】
「状態フラグ」は、農産物Vの状態を示す情報であり、
図2においては、農産物VがXで示される処理をする必要がある状態に該当するということを示している。例えば、「黄葉除去」と「虫食葉除去」の欄にXが付されている農産物Vは、黄葉を除去する処理、及び虫食葉を除去する処理が必要である。「廃棄理由」は、農産物Vを廃棄する必要があると判定された理由を示している。「処理ライン」は、農産物Vの加工を施す加工処理部15又は包装処理部16を特定するための情報を示している。「処理日時」は、加工処理部15又は包装処理部16において処理が施された日時を示している。
【0028】
図2に示す例において、容器IDが1212の農産物Vは、1回目の処理の前においては黄変した葉と虫食の葉を除去する必要があり、2回目の処理の前(すなわち黄変した葉を除去した後)においては虫食の葉を除去する必要があり、3回目の処理である包装処理の前には加工が不要な状態になっている。当該農産物Vは、加工処理部15aにおいて2019年5月9日11時13分23秒に、黄変した葉を除去する処理が施され、加工処理部15bにおいて2019年5月9日11時15分12秒に、虫食の葉を除去する処理が施されたということがわかる。
【0029】
収容処理部11は、農産物Vを容器Cに収容するための処理部である。容器Cは、例えば透明な樹脂又はガラスで形成された円筒状の側面を有する。容器Cが円筒状の側面を有する透明な素材で形成されていることにより、後述する加工内容決定部12が、農産物Vが容器Cに収容された状態で、農産物Vの品質を示す情報を作成しやすい。容器Cには、容器Cに固有の識別情報である容器IDが含まれるタグTが付されている。タグTは、例えばRFIDタグ又はQRコード(登録商標)である。
【0030】
加工内容決定部12は、複数の農産物Vそれぞれに必要な加工内容を決定し、農産物Vに付与された識別情報と決定した加工内容とを関連付けて記憶部に記憶させる。農産物Vに付与された識別情報は、例えば容器IDである。
【0031】
加工内容決定部12は、加工内容を決定するために、農産物Vの品質を示す情報(以下、「品質情報」という。)を作成する。加工内容決定部12は、例えば撮像装置を有しており、容器Cに付された容器IDと農産物Vとを撮像することにより、容器IDに関連付けられた品質情報である撮像画像を作成する。加工内容決定部12は、撮像画像を解析することにより加工内容を決定する。
【0032】
加工内容決定部12は、例えば、農産物Vに変色した葉がある場合、変色した葉を除去する加工が必要であると判定し、農産物Vに虫食いの穴がある場合、虫食いの葉を除去する加工が必要であると判定し、一部が破損した葉がある場合、破損した葉を除去する加工が必要であると判定する。加工内容決定部12は、農産物Vに問題がない場合、加工が不要であると判定する。加工内容決定部12は、農産物Vに複数の加工が必要であると決定してもよい。
【0033】
加工内容決定部12は、農産物Vが収容された容器Cの容器IDに関連付けて、決定した加工内容を農産物管理装置10に通知する。加工内容決定部12は、容器IDに関連付けて、容器IDと異なり、かつ農産物に固有の農産物識別情報(以下、「農産物ID」という。)を農産物管理装置10が有する記憶部に記憶させてもよい。農産物IDは、例えば農産物Vの加工内容が決定された時刻に関連付けられた情報を含む。加工内容が決定された時刻に関連付けられた情報は、例えば加工内容決定部12が加工内容を決定した日時及び時刻を示すタイムスタンプ情報であるが、農産物Vが容器Cに収容された日時及び時刻を示すタイムスタンプ情報であってもよい。
【0034】
容器Cは繰り返し使用され得るので、同一の容器IDに対応する農産物Vが複数存在し得る。また、農産物処理システムSが複数の加工内容決定部12を有する場合、同一のタイムスタンプに対応する農産物Vが複数存在し得る。ところが、加工内容決定部12が、容器IDと、容器IDと異なる農産物IDとを農産物Vに関連付けることで、容器Cを再利用した場合であっても、容器IDと農産物IDとの組み合わせによりユニークな識別情報が農産物Vに割り当てられる。その結果、農産物処理システムSの各部は、農産物管理装置10に記憶された農産物管理データベースにおいて農産物Vを一意に特定することが可能になる。
【0035】
なお、加工内容決定部12が加工内容を決定する際に用いる品質情報は、撮像画像に限られず、農産物Vの品質を示しており、品質のランクを決定するために使用可能な任意の情報であればよい。品質情報は、例えば、荷重センサにより測定された農産物Vの重量、X線撮影をすることにより作成された透過画像、糖度センサ・水分量センサ等の非破壊センサを用いて測定された糖度又は水分量、光学センサを用いて測定された栄養成分、圧力センサを用いて測定された野菜表面の弾力、レーザ測量機により測定された高さ、又は3次元スキャナにより測定された形状である。
【0036】
分別部13は、加工内容決定部12が決定した加工内容に応じて複数の農産物Vを分別する。具体的には、分別部13は、加工内容決定部12が決定し、農産物Vの識別情報に関連付けて農産物管理装置10の記憶部に記憶された加工内容に対応する加工処理部15に農産物Vを搬送するように第1搬送部14を制御する。分別部13は、加工が不要な農産物Vを包装処理部16に搬送するように第1搬送部14を制御する。
【0037】
第1搬送部14は、分別部13の制御に基づいて、複数の農産物Vそれぞれを適切な加工処理部15又は包装処理部16に搬送する。第1搬送部14は、例えば複数の加工処理部15又は包装処理部16のそれぞれに農産物Vを搬送するための複数のベルトコンベアー、及びそれぞれのベルトコンベアーに農産物Vを乗せるためのエアシリンダー又はアクチュエータ等の機構を有する。第1搬送部14は、分別部13から入力される制御情報に基づいてエアシリンダー又はアクチュエータ等の機構を動作させることにより、農産物Vを加工内容に適した加工処理部15又は包装処理部16に搬送するためのベルトコンベアーに乗せる。
【0038】
加工処理部15は、識別情報が付与された農産物Vを加工するための装置を含む。加工処理部15は、例えば農産物Vを加工するための作業台、及び農産物Vを加工するためのアクチュエータの少なくともいずれかを備える。加工処理部15は、例えば、変色した葉を除去するための加工処理部15a、虫が食べた部分がある葉を除去するための加工処理部15b、又は一部が破損した葉を除去するための加工処理部15cを備える。
【0039】
加工処理部15は、農産物Vの加工処理が終了すると、当該農産物Vを収容している容器Cの容器IDを読み取る。加工処理部15は、読み取った容器IDに関連付けて、終了した加工の内容を農産物管理装置10に通知する。農産物管理装置10は、通知された内容に基づいて、通知された加工が終了したことを示す状態に状態フラグを更新する。
【0040】
包装処理部16は、全ての加工が終了した農産物Vを出荷するために包装するための装置を備える。包装処理部16は、例えば農産物Vを包装するための作業台、及び農産物Vを包装するためのアクチュエータの少なくともいずれかを備える。
【0041】
第2搬送部17は、加工処理部15において加工された農産物Vを分別部13に搬送する。第2搬送部17は、例えばベルトコンベアーを有する。
【0042】
[農産物Vの加工の流れ]
図3は、農産物Vの加工の流れを示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、加工する対象となる農産物Vが持ち込まれた時点から開始している。
図3に示すフローチャートに示す全ての処理が、プログラムを実行するマイクロプロセッサの制御により実行されてもよく、一部の処理が人によって実行されてもよい。
【0043】
まず、収容処理部11において、持ち込まれた農産物Vは容器Cに収容される(S1)。続いて、加工内容決定部12は、例えば農産物Vを撮影することにより、品質情報として撮像画像を作成する(S2)。加工内容決定部12は、作成した撮像画像を解析することにより加工内容を決定する(S3)。また、加工内容決定部12は、容器Cに付されている容器IDを特定する(S4)。
【0044】
加工内容決定部12は、農産物Vを収容した容器の容器IDと加工内容とを関連付けて農産物管理装置10に通知する(S5)。これにより、農産物管理データベースにおいて、それぞれの農産物Vと、それぞれの農産物Vに必要な加工内容とが関連付けられる。
【0045】
続いて、第1搬送部14は、分別部13の制御に基づいて、ステップS3において決定した加工内容に対応する加工処理部15又は包装処理部16に農産物Vを搬送する(S6)。農産物Vが搬送された加工処理部15又は包装処理部16は、農産物Vを加工したり農産物Vを包装したりする処理を実行する(S7)。加工処理部15は、農産物Vを加工した場合に、加工した内容と容器IDとを関連付けて農産物管理装置10に通知する(S8)。
【0046】
農産物管理装置10は、通知された加工内容を農産物管理データベースに記憶させる。具体的には、農産物管理装置10は、通知された容器IDに対応する農産物IDに関連付けられた、通知された加工内容に対応する状態フラグを、加工が完了したことを示す状態に変化させることにより、農産物管理データベースを更新する(S9)。
図2に示す例において、農産物管理装置10は、加工が完了した日時を示すデータを新たに追加している。このように、農産物管理装置10が、加工処理部15において加工が行われたことに応じて農産物管理データベースを更新することで、農産物管理データベースに農産物Vを加工した履歴を示す履歴情報が蓄積される。
【0047】
第2搬送部17は、農産物Vの加工作業を終了するという操作を受けた場合(S10においてYES)、農産物Vの搬送処理を終了する。第2搬送部17は、農産物Vの加工作業を終了するという操作を受けていない場合(S10においてNO)、加工処理部15において加工された農産物Vを分別部13に戻し、ステップS6からステップS9までの処理が繰り返される。
【0048】
ステップS10からステップS6に戻った場合、分別部13は、農産物Vの識別情報に関連付けて農産物管理装置10の記憶部に記憶された加工内容を参照することにより、複数の加工処理部15から、農産物Vを次に加工する加工処理部15を選択する。具体的には、分別部13は、農産物管理データベースを参照し、農産物管理データベースにおいて農産物Vに関連付けられた状態フラグに基づいて、未完了の加工内容を選択する。農産物管理データベースにおいて農産物Vの識別情報に関連付けて加工の履歴が管理されていることにより、ステップS6からステップS9までの処理を繰り返すことで、同一の農産物Vに対して同じ加工を行うことなく、農産物Vに必要な複数の加工を施すことができる。
【0049】
なお、第2搬送部17は、加工処理部15において加工された農産物Vを加工内容決定部12に戻してもよい。この場合、加工内容決定部12は、加工処理部15において農産物Vを加工した後に、農産物Vの加工後の品質を示す加工後品質情報を作成する。加工内容決定部12は、加工後品質情報に基づいてさらに必要な加工内容を決定する。分別部13は、決定された加工内容に基づいて、複数の加工処理部15から農産物Vを次に加工する加工処理部15を選択する。
【0050】
加工内容決定部12は、例えば、農産物管理データベースに登録されている加工内容と同一の加工内容が必要だと判定した場合には農産物管理データベースを更新せず、農産物管理データベースに登録されている加工内容と異なる加工内容が必要だと判定した場合には農産物管理データベースを更新する。第2搬送部17及び加工内容決定部12がこのように動作することで、加工処理部15における加工が不完全であり、同じ加工を再度行う必要がある場合に、農産物Vに適切な加工を施すことができる。
【0051】
加工内容決定部12は、農産物管理データベースに登録されている加工内容と同一の加工内容が必要だと判定した場合に、同一の加工を行った回数をカウントアップすることにより農産物管理データベースを更新してもよい。単一の農産物Vに対して同一の加工処理部15で複数回の加工が行われた場合、加工処理の品質(例えば作業者の作業品質)が低いという可能性がある。農産物処理システムSが、同一の加工を行った回数をカウントして記録することで、加工処理の品質の低下を検出することが可能になる。また、農産物Vに対する全ての処理の記録が残っていることにより、農産物Vの加工履歴のトレーサビリティが向上する。
【0052】
なお、
図3に示したフローチャートは、処理の順序の一例を示しているに過ぎず、農産物Vを、農産物Vを識別するための情報に紐づけられた加工処理の内容に従って搬送することができれば、処理の順序は任意である。
【0053】
[注文情報に基づく分別]
加工内容決定部12は、操作パネル又はネットワークを介して、農産物を購入する顧客からの注文内容を示す注文情報を取得し、取得した注文情報に基づいて農産物Vに必要な加工内容を決定してもよい。注文情報は、例えば、農産物Vを包装するパッケージの種類、一袋あたりの内容量、下処理の種類等の情報を含む。下処理は、例えば、所定の大きさに葉をカットする処理又は農産物Vを茹でる処理である。農産物処理システムSは、注文時に選択可能な複数の注文情報に対応する複数の加工処理部15を有しており、分別部13は、複数の加工処理部15から注文情報に対応する加工処理部15を選択する。
【0054】
[複数の分別部を有する構成]
農産物処理システムSは、加工処理部15において処理された農産物Vをさらに処理する内容に基づいて複数の農産物Vを分別する分別部18をさらに有してもよい。
図4は、複数の分別部を有する農産物処理システムSの構成を示す図である。
図4に示す例において、分別部18は、加工処理部15において農産物Vを加工した後に農産物Vの識別情報に関連付けて農産物管理装置10の記憶部に記憶された加工内容を参照することにより、他の加工処理部15においてさらに農産物Vを加工するか否かを判定する。分別部18は、例えば、加工処理部15a、加工処理部15b、加工処理部15cにおいて処理された農産物Vを、他の加工処理部15においてさらなる加工処理をするか、包装処理部16において包装処理をするかを分別する。
【0055】
分別部18は、農産物管理データベースを参照し、農産物Vに必要な加工内容のうち、完了していない加工内容が残っており、他の加工処理部15において加工すると判定した場合、農産物Vを他の加工処理部15に搬送するように第2搬送部17を制御する。具体的には、分別部18は、他の加工処理部15において加工すると判定した場合、農産物Vを分別部13に搬送するように第2搬送部17を制御する。
【0056】
一方、分別部18は、農産物管理データベースを参照し、農産物Vに必要な加工内容の全ての加工が完了しており、他の加工処理部15において加工しないと判定した場合、農産物Vを包装処理部16に搬送するように第2搬送部17を制御する。分別部18がこのように動作することで、全ての加工が完了した農産物Vが分別部13に戻されることなく包装処理部16に搬送されるので、出荷までに要する時間を短縮することが可能になる。
【0057】
農産物処理システムSは、分別部18の後段に、さらなる加工を行うための追加工処理部を有してもよい。追加工処理部は、例えば分別部18と包装処理部16との間に設けられており、葉をカットしたり、農産物Vを茹でたりする処理を行う部位である。農産物処理システムSが複数の追加工処理部を有しており、分別部18が、注文情報が示す追加工内容に基づいて、複数の追加工処理部から一つの追加工処理部を選択してもよい。このように分別部18が注文情報に基づいて追加工処理部を選択することで、農産物処理システムSは、注文元の要求に応じた追加工を農産物Vに効率的に施すことができる。
【0058】
[価格の管理]
農産物管理装置10は、農産物Vの価格を決定し、農産物Vに関連付けて価格を記憶してもよい。農産物管理装置10は、例えば、農産物Vに加工を施した加工処理部15の数に基づいて農産物Vの価格を決定し、農産物Vの識別情報に関連付けて価格を農産物管理データベースに登録する。それぞれの加工処理部15に異なる価格が定められており、農産物管理装置10は、農産物Vに加工を施した複数の加工処理部15それぞれに関連付けられた価格を合算することにより農産物Vの価格を決定してもよい。
【0059】
農産物管理装置10は、農産物Vに施した複数の加工のうち、農産物Vの注文者が指定した一以上の加工それぞれに関連付けられた価格を合算することにより農産物Vの価格を決定してもよい。農産物管理装置10がこのように農産物Vの価格を決定することにより、出荷する農産物Vの付加価値に応じた価格で農産物Vを提供することができる。
【0060】
[コンピュータによる制御]
農産物処理システムSを構成する各部の少なくとも一部は、コンピュータにより制御されてもよい。この場合、コンピュータは、記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することにより、農産物Vに必要な加工内容を決定するステップと、農産物Vに付与された識別情報と加工内容とを関連付けて農産物管理装置10の記憶部に記憶させるステップと、識別情報に関連付けて記憶部に記憶された加工内容に対応する加工処理部15に農産物Vを搬送するステップと、を実行する。
【0061】
コンピュータは、加工内容を決定するステップにおいて、農産物Vの品質を示す品質情報を作成するステップと、品質情報に基づいて、農産物Vを加工する加工処理部15を決定するステップをさらに実行してもよい。コンピュータは、品質情報を作成するステップにおいて、容器IDと農産物Vとを撮像することにより、容器IDに関連付けられた品質情報を作成し、容器IDと加工内容とを関連付けて記憶部に記憶させてもよい。このように、コンピュータがプログラムを実行することにより、以上説明した各種の処理を実行してもよい。
【0062】
[本実施形態の農産物処理方法による効果]
以上説明したように、本実施形態の農産物処理方法は、農産物Vに必要な加工内容を決定するステップと、農産物Vに付与された識別情報と加工内容とを関連付けて農産物管理装置10の記憶部に記憶させるステップと、識別情報に関連付けて記憶部に記憶された加工内容に対応する加工処理部15に農産物Vを搬送するステップとを有する。このように、識別情報と加工内容とを記憶しておき、記憶された識別情報に対応する加工内容に適した加工処理部15に農産物Vを搬送することで、農産物Vに必要な処理を施すことが可能になる。
【0063】
また、農産物Vが収容された容器Cに付された容器IDと農産物Vを撮像した画像に基づいて識別情報を特定するとともに加工内容を決定することにより、識別情報と加工内容とを容易に関連付けることができる。
【0064】
また、加工処理部15において農産物Vを加工した後に、当該農産物Vの識別情報に関連付けて記憶された加工内容を参照して、複数の加工処理部15から、農産物を次に加工する加工処理部15を選択することにより、農産物Vに複数種類の加工が必要な場合であっても、農産物Vに複数種類の加工を順次施すことができる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0066】
例えば以上の説明においては、農産物Vを容器Cに収容する場合を例示したが、農産物Vを容器Cに収容する代わりに、識別情報が付されたテープ又は紐により農産物Vを束ねてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 農産物管理装置
11 収容処理部
12 加工内容決定部
13 分別部
14 第1搬送部
15 加工処理部
16 包装処理部
17 第2搬送部
18 分別部