(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】熱ローラ装置、熱ローラ装置の製造方法、及び熱ローラ装置の冷却能力の調整方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/14 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
H05B6/14
(21)【出願番号】P 2019147707
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】平郡 正信
(72)【発明者】
【氏名】山口 邦香
(72)【発明者】
【氏名】篠原 洋平
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-104975(JP,A)
【文献】特開2001-312163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持されたローラ本体と、
前記ローラ本体内に形成された
冷却用流路に冷却媒体を通流させる冷却機構と
を備え、
前記ローラ本体は、円筒状をなすロールシェル部を有し、
前記冷却用流路は、前記ロールシェル部の内側周面と外側周面との間に形成されており、
前記冷却用流路を形成する内面に断熱部材が設けられている、熱ローラ装置。
【請求項2】
前記冷却用流路は、前記ロールシェル部の軸方向に沿って形成された直線流路部を有している、請求項1に記載の熱ローラ装置。
【請求項3】
前記直線流路部は、前記ロールシェル部において周方向に複数形成されている、請求項2に記載の熱ローラ装置。
【請求項4】
前記断熱部材は、前記
冷却用流路の内面において周方向全体に設けられている、請求項1
乃至3の何れか一項に記載の熱ローラ装置。
【請求項5】
前記断熱部材は、樹脂製のものである、請求項1
乃至4の何れか一項に記載の熱ローラ装置。
【請求項6】
前記断熱部材は、管形状をなすものである、請求項1乃至
5の何れか一項に記載の熱ローラ装置。
【請求項7】
前記
ロールシェル部には、気液二相の熱媒体が封入されるジャケット室が形成されている、請求項1乃至
6の何れか一項に記載の熱ローラ装置。
【請求項8】
回転自在に支持されたローラ本体と、前記ローラ本体内に形成された
冷却用流路に冷却媒体を通流させる冷却機構とを備える熱ローラ装置の製造方法であって、
前記ローラ本体の円筒状をなすロールシェル部の内側周面と外側周面との間に前記冷却用流路を形成し、
前記冷却用流路を形成する内面に断熱部材を設けることを特徴とする、熱ローラ装置の製造方法。
【請求項9】
回転自在に支持されたローラ本体と、前記ローラ本体内に形成された
冷却用流路に冷却媒体を通流させる冷却機構とを備える熱ローラ装置の冷却能力の調整方法であって、
前記ローラ本体の円筒状をなすロールシェル部の内側周面と外側周面との間に前記冷却用流路を形成し、
前記冷却用流路を形成する内面に断熱部材を設けることを特徴とする、熱ローラ装置の冷却能力の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ローラ装置、熱ローラ装置の製造方法、及び熱ローラ装置の冷却能力の調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導発熱ローラ装置としては、特許文献1に示すように、誘導発熱されるローラ本体の側周壁に冷却媒体を通流させる冷却用流路を形成して、ローラ本体を冷却媒体で冷却して、ローラ本体の表面温度を所望の温度に調整するものが考えられている。
【0003】
しかしながら、ローラ本体が加熱されてその温度が例えば100~200℃或いはそれ以上である場合に、例えば25℃の冷却媒体を通流させると、ローラ本体が冷却されすぎてしまい、所望の温度に調整することが難しい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、熱ローラ装置の冷却容量(冷却能力)を容易に調整可能とすることをその主たる課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る熱ローラ装置は、回転自在に支持されたローラ本体と、前記ローラ本体内に形成された内部流路に冷却媒体を通流させる冷却機構と、前記内部流路を形成する内面に設けられた断熱部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
このような熱ローラ装置によれば、内部流路を形成する内面に断熱部材を設けているので、冷却媒体からローラ本体への熱伝達率を低下させることができる。これにより、ローラ本体の温度や熱ローラ装置により処理される処理物の温度を冷却媒体によって下がり過ぎるという問題を解決することができる。その結果、ローラ本体の温度や熱ローラ装置により処理される処理物の温度を所望の温度に調節しやすくすることができる。
【0008】
断熱部材の設置の具体的な態様としては、前記断熱部材は、前記内部流路の内面において周方向全体に設けられていることが望ましい。
この構成であれば、内部流路の内面において部分的に過度に冷やされる部分がなくなり、温度の調節をしやすくできる。
その他、ローラ本体の表面温度を所望の温度に調整しやすくするためには、内部流路の内面において径方向外側部分に断熱部材を設けることも考えられる。
【0009】
前記断熱部材としては、樹脂製のものであることが望ましい。
この構成であれば、ローラ本体の内部流路に断熱部材を設けやすくすることができるし、低コストで断熱部材を準備することができる。
【0010】
ローラ本体の内部流路に断熱部材を設けやすくするためには、前記断熱部材は、管形状をなすものであることが望ましい。これならば、内部流路に管形状の断熱部材を挿し込むだけで良い。
【0011】
ローラ本体の表面温度を軸方向において均一化するためには、前記ローラ本体の側周壁には、気液二相の熱媒体が封入されるジャケット室が形成されていることが望ましい。
【0012】
また、本発明に係る熱ローラ装置の製造方法は、回転自在に支持されたローラ本体と、前記ローラ本体内に形成された内部流路に冷却媒体を通流させる冷却機構とを備える熱ローラ装置の製造方法であって、前記内部流路を形成する内面に断熱部材を設けることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係る熱ローラ装置の冷却能力の調整方法は、回転自在に支持されたローラ本体と、前記ローラ本体内に形成された内部流路に冷却媒体を通流させる冷却機構とを備える熱ローラ装置の冷却能力の調整方法であって、前記内部流路を形成する内面に断熱部材を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、熱ローラ装置の冷却容量(冷却能力)を容易に調整可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】同実施形態に係るローラ本体の軸方向に沿った部分拡大断面図である。
【
図3】同実施形態に係るローラ本体の軸方向に直交する部分拡大断面図である。
【
図4】変形実施形態に係るローラ本体の軸方向に直交する部分拡大断面図である。
【
図5】変形実施形態に係るローラ本体の軸方向に直交する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明に係る熱ローラ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
<1.装置構成>
本実施形態に係る熱ローラ装置100は、例えばプラスチックフィルム、紙、布、不織布、合成繊維、金属箔等のシート材又はウェブ材、線(糸)材等の連続材(被処理物)の連続熱処理工程等において用いられるものである。
【0018】
具体的に熱ローラ装置100は、
図1に示すように、回転自在に支持されたローラ本体2と、ローラ本体2の内部に設けられ、ローラ本体2を誘導発熱させる誘導発熱機構3とを備え、ローラ本体2を軸方向の両側から支持する所謂両持ち式の誘導発熱ローラ装置である。
【0019】
ローラ本体2は、円筒状をなすロールシェル部2aと、当該ロールシェル部2aの軸方向両端部に設けられて、ロールシェル部2aの両端開口を閉塞するジャーナル部2bと、ジャーナル部2bからロールシェル部2a外においてロールシェル部2aの回転中心軸上に延び設けられた中空の駆動軸部2cとを有する。駆動軸部2cは、転がり軸受等の軸受4を介して機台5に回転自在に支持されている。そして、ローラ本体2は、例えばモータ等の回転駆動機構(不図示)により外部から与えられる駆動力によって回転されるように構成されている。なお、ローラ本体2には、ロールシェル部2aの温度を検出するための温度センサ(不図示)が設けられている。
【0020】
誘導発熱機構3は、例えば円筒状の鉄心31と、当該鉄心31の外側周面に巻装された誘導コイル32とから構成されている。鉄心31の両端部にはそれぞれ、支持軸6が取り付けられている。この支持軸6は、それぞれ駆動軸部2cの内部に挿通されており、転がり軸受等の軸受7を介して駆動軸部2cに対して回転自在に支持されている。これにより、誘導発熱機構3は、回転するローラ本体2の内部において、ローラ本体2に対して静止状態に保持される。誘導コイル32には、リード線L1が接続されており、このリード線L1には、交流電圧を印加するための交流電源Vが接続されている。
【0021】
このような誘導発熱機構3により、誘導コイル32に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体2の側周壁であるロールシェル部2aを通過する。この通過によりロールシェル部2aに誘導電流が発生し、その誘導電流でロールシェル部2aはジュール発熱する。このとき、ロールシェル部2aの温度は、温度センサにより検出された温度に基づいてフィードバック制御される。
【0022】
しかして本実施形態の誘導発熱ローラ装置100において、ローラ本体2のロールシェル部2aには、気液二相の熱媒体が封入されるジャケット室21が形成されている。本実施形態の熱媒体は、例えば純水等の水であるが、これに限られない。
【0023】
ジャケット室21は、ローラ本体2のロールシェル部2aに軸方向に沿って複数形成されている。複数のジャケット室21は、ロールシェル部2aの周方向に例えば等間隔に設けられている。また、複数のジャケット室21は、少なくとも一方の軸方向端部において連通路22により互いに連通するように構成されている。これにより、1つのジャケット室21から別のジャケット室21に熱媒体が流入可能に構成されている。なお、複数のジャケット室21は、互いに連通する構成でなくてもよく、1つずつ独立したものであっても良い。
【0024】
また、本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、ローラ本体2内に形成された内部流路81(冷却用流路81)に冷却媒体を通流させて、ローラ本体2を冷却する冷却機構8をさらに備えている。
【0025】
ここで、冷却用流路81は、ローラ本体2のロールシェル部2aに形成された直線流路部81aと、一方のジャーナル部2b及び駆動軸部2cに形成され、直線流路部81aに冷却媒体を導入する導入流路部81bと、他方のジャーナル部2b及び駆動軸部2cに形成され、直線流路部81aを通過した冷却媒体を導出する導出流路部81cとを有している。この冷却用流路81は、ローラ本体2の外部に設けられた例えば循環ポンプ及び冷却器等を有する冷却媒体循環機構(不図示)に接続されている。
【0026】
ここで、冷却用流路81の直線流路部81aは、ローラ本体2のロールシェル部2aにおいて、ジャケット室21よりも径方向内側に形成されている。また、直線流路部81aは、ローラ本体2のロールシェル部2aにおいて、軸方向に沿って複数形成されている。複数の直線流路部81aは、ロールシェル部2aの周方向に例えば等間隔に設けられている。また、複数の直線流路部81aの軸方向一端部は、導入流路部81bに接続されており、複数の直線流路部81aの軸方向他端部は、導出流路部81cに接続されている。
【0027】
そして、本実施形態では、ローラ本体2において冷却用流路81を形成する内面に断熱部材9が設けられている。具体的には、冷却用流路81の直線流路部81aを形成する内面に断熱部材9が設けられている。
【0028】
断熱部材9は、冷却媒体からローラ本体2への熱伝達率を低下させるものであり、本実施形態ではテフロン等のフッ素系樹脂からなる。
【0029】
また、断熱部材9は、直線流路部81aの内面において周方向全体に設けられている。本実施形態の断熱部材9は、管形状をなすものである。ここで、管形状をなす断熱部材9は、直線流路部81aの内径に嵌まる外径を有している。なお、製造段階において、直線流路部81aに管形状をなす断熱部材9を挿入して直線流路部81aに断熱部材9を設けることになるが、この挿入作業を容易にするために、管形状をなす断熱部材9に軸方向に沿ってスリットを形成しておくことが考えられる。これにより挿入作業時に断熱部材9が変形しやすくなり、挿入作業が容易になる。
【0030】
さらに、製造段階において、断熱部材9の素材の選択や、断熱部材9の厚みを調節することによって、ローラ本体2の冷却性能(冷却容量)を調節することができる。例えば、管形状の断熱部材9であれば、管径の異なる断熱部材9を2重や3重等にして多層構造にして、断熱部材9の厚みを調節することが考えられる。
【0031】
<2.本実施形態の効果>
このように構成した熱ローラ装置100によれば、冷却用流路81を形成する内面に断熱部材9を設けているので、冷却媒体からローラ本体2のロールシェル部2aへの熱伝達率を低下させることができる。これにより、ローラ本体2のロールシェル部2aの温度や熱ローラ装置100により処理される被処理物の温度が冷却媒体によって下がり過ぎてしまうという問題を解決することができる。その結果、ローラ本体2のロールシェル部2aの温度や熱ローラ装置100により処理される被処理物の温度を所望の温度に調節しやすくすることができる。
【0032】
<3.本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0033】
例えば、前記実施形態のローラ本体2は、ジャケット室21が形成されたものであったが、ジャケット室21が形成されていないものであっても良い。
【0034】
また、前記実施形態の断熱部材9はテフロン等のフッ素樹脂を用いたものであったが、その他の樹脂を用いたものであっても良いし、冷却媒体からローラ本体2への熱伝達率を低下させるものであれば、樹脂以外の素材を用いても良い。
【0035】
さらに、前記実施形態の断熱部材9は、冷却用流路81の直線流路部81aの内面において周方向全体に設けられているが、直線流路部81aの内面において周方向の一部に設けても良い。この場合、
図4に示すように、直線流路部81aの内面において径方向外側部分に断熱部材9を設けることが考えられる。その他、断熱部材9は、直線流路部81aの内面において、軸方向の一部に設けた構成としても良い。
【0036】
その上、ジャーナル部2bに形成した導入流路部81bや導出流路部81cにも断熱部材9を設けても良い。
【0037】
前記実施形態では、ローラ本体2のロールシェル部2aにおいて、ジャケット室21の径方向内側に冷却用流路81の直線流路部81aが形成されていたが、
図5(A)に示すように、ジャケット室21と同心円状に形成されていても良いし、
図5(B)に示すように、ジャケット室21を貫通するようにジャケット室21の内部に形成されても良いし、
図5(C)に示すように、ジャケット室21の径方向外側に形成されていても良い。
【0038】
前記実施形態の熱ローラ装置100は、誘導発熱ローラ装置であったが、その他、ローラ本体の内部に加熱用流体を通流させる通流ローラ装置に適用しても良いし、加熱機能を有さない熱ローラ装置に適用しても良い。
【0039】
その上、前記実施形態の熱ローラ装置100は、両持ち式の熱ローラ装置であったが、ローラ本体2の軸方向一端側からローラ本体2を支持する片持ち式の熱ローラ装置であっても良い。
【0040】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
100・・・誘導発熱ローラ装置
2 ・・・ローラ本体
21 ・・・ジャケット室
8 ・・・冷却機構
81 ・・・内部流路(冷却用流路)
9 ・・・断熱部材