(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】成形品トリミングの分離装置および成形品トリミング方法
(51)【国際特許分類】
B26D 7/18 20060101AFI20230615BHJP
B26F 1/40 20060101ALI20230615BHJP
B26F 1/44 20060101ALI20230615BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20230615BHJP
B65H 5/10 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B26D7/18 F
B26F1/40 B
B26F1/44 G
B65H5/06 J
B65H5/10 B
(21)【出願番号】P 2021183679
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2022-04-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年8月30日、株式会社エフピコ山形工場における実施
(73)【特許権者】
【識別番号】391003048
【氏名又は名称】曙機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 博史
(72)【発明者】
【氏名】堀越 武雄
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-314392(JP,A)
【文献】特開平08-281355(JP,A)
【文献】特開2001-088090(JP,A)
【文献】特開2020-026023(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107470(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/18
B26F 1/40
B26F 1/44
B65H 5/06
B65H 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形加工済みのシートを裁断機側に順次搬送し、
搬送される前記シートを前記裁断機によって裁断し、
裁断された前記シートを、搬送部材の先端部に吸着させて分離装置の分離台上方へ搬送し、前記分離装置の分離台に向けて降下させ、
保持基準位置まで降下した前記シートの両側を、固定ローラと、退避位置と保持基準位置との間で軸回転可能な可動ローラとにより挟み込むことによって保持し、
前記搬送部材
を分離台上方から最下位位置まで停止せずに連続的に降下させる打ち抜き動作によって、保持された前記シートから成形品を分離し、
成形品分離後の残存シートを前記分離台から送り出すトリミング方法であって、
前記シートの保持において、前記可動ローラ
が保持基準位置よりも退避位置側
にあってあらかじめ定められた制御切り替え位置
に達するまで、
前記可動ローラを位置制御により駆動し、
前記可動ローラが制御切り替え位置
に達すると、トルク制御により前記可動ローラを駆動することを特徴とする成形品トリミング方法。
【請求項2】
前記制御切り替え位置が、保持基準位置から3°の範囲内の角度で設定されていることを特徴とする請求項1に記載の成形品トリミング方法。
【請求項3】
前記残存シートを前記分離台から送り出す間、トルク制御に従って前記可動ローラを駆動することを特徴とする請求項1または2に記載の成形品トリミング方法。
【請求項4】
サーボモータによって、前記可動ローラを駆動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の成形品トリミング方法。
【請求項5】
裁断機によって裁断され、搬送部材の先端部に吸着された成形加工済みのシートの打ち抜き位置に応じて仕切り板が形成され、前記搬送部材の降下による打ち抜き動作に応じて、前記成形加工済みシートから成形品を分離する分離台と、
前記搬送部材を分離台上方から降下させて前記シートが保持される位置で停止させ、
更に最下位位置まで降下させる打ち抜き動作と、前記搬送部材を分離台上方から最下位位置まで停止せずに連続的に降下させる前記搬送部材による打ち抜き動作とを、実行可能な制御部と、
前記シートの両側を、固定ローラと、保持基準位置と退避位置との間で軸回転可能な可動ローラにより挟み込んで保持するクランプ機構と、
前記制御部と接続し、前記可動ローラを、保持基準位置と退避位置との間で駆動するアクチュエータとを備え、
前記アクチュエータが、前記可動ローラ
が保持基準位置よりも退避位置側
にあってあらかじめ定められた制御切り替え位置
に達するまで、
前記可動ローラを位置制御に従って駆動し、
前記可動ローラが制御切り替え位置
に達すると、トルク制御により前記可動ローラを駆動することを特徴とする
成形品トリミング装置。
【請求項6】
前記制御切り替え位置が、保持基準位置から3°の範囲内の角度で設定されていることを特徴とする請求項
5に記載の
成形品トリミング装置。
【請求項7】
成形品分離後の残存シートを前記分離台から送り出す機構をさらに備え、
前記アクチュエータが、前記残存シートが送り出される間、トルク制御に従って前記可動ローラを駆動することを特徴とする請求項5または6に記載の
成形品トリミング装置。
【請求項8】
前記制御切り替え位置と前記保持基準位置とが、設定変更可能であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の
成形品トリミング装置。
【請求項9】
前記アクチュエータが、サーボモータで構成されることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の
成形品トリミング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートから成形品を裁断(打ち抜き)して分離するトリミング方法に関し、特に、成形品を分離するときのシート保持に関する。
【背景技術】
【0002】
食品トレーなどの合成樹脂成形品は、プレス機により成形後、トリミングされる。そこでは、成形品となる加工部分が多数配列したシートを搬送機構によって裁断装置に移送し、トムソン刃などによって打ち抜きする。その後、複数のパッドを打ち抜き位置に合わせて2次元配列させた搬送機構により吸着し、打ち抜いたシートを分離装置に搬送する。そして、吸着した打ち抜きシートをクランプ機構によって保持しながら搬送装置を更に降下させることにより、成形加工部分をシートから分離する(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-314392号公報
【文献】特開2020-26023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形品の生産性向上のためには、トリミング工程のサイクルをスピードアップさせる必要がある。しかしながら、分離装置において、シートから成形加工部分を打ち抜くときにシートをクランプ保持するとき、その保持の仕方、タイミングによっては、打ち抜くときのシートおよび打ち抜いた後の残存シートの保持状態が不安定となり、シートの撓み、シートの排出方向のずれなどが生じやすくなる。
【0005】
したがって、生産効率を高めながら、安定してシートを保持して成形品をシートから分離することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様であるトリミング方法は、成形加工済みのシートを裁断機側に順次搬送し、搬送されるシートを裁断機によって裁断し、裁断されたシートを、搬送部材の先端部に吸着させて分離装置の分離台上方へ搬送し、分離装置の分離台に向けて降下させ、保持基準位置まで降下したシートの両側を、固定ローラと、退避位置と保持基準位置との間で軸回転可能な可動ローラとにより挟み込むことによって保持し、搬送部材による打ち抜き動作によって、保持されたシートから成形品を分離し、成形品分離後の残存シートを分離台から送り出す。そして、シートの保持において、可動ローラを、保持基準位置よりも退避位置側の制御切り替え位置まで、位置制御により駆動し、制御切り替え位置から、トルク制御により可動ローラを駆動する。
【0007】
打ち抜き動作としては、例えば、搬送部材が保持位置で停止し、シート保持後にさらに降下することによって打ち抜く動作を行うことが可能である。あるいは、搬送部材が分離台上方から保持位置で停止せずに最下位点までそのまま連続的に降下する動作にすることも可能であり、搬送部材が降下している(動いている)中で、シート保持するようにしてもよい。このような可動ローラの位置制御からトルク制御の切替は、サーボモータによって実現可能である。保持基準位置は、分離台の構成、シート厚さ等に応じて設定し、制御切り替え位置は、保持位置より退避位置側に設定すればよく、その直前の位置(角度)に設定可能である。例えば、シートSに接触する位置、あるいは接触位置から僅かに退避位置側に設定することが可能である。
【0008】
本発明の他の一態様である成形品のトリミング装置を構成する分離装置は、裁断機によって裁断され、搬送部材の先端部に吸着された成形加工済みのシートの打ち抜き位置に応じて仕切り板が形成され、搬送部材の降下による打ち抜き動作に応じて、成形加工済みシートから成形品を分離する分離台と、シートの両側を、固定ローラと、保持基準位置と退避位置との間で軸回転可能な可動ローラにより挟み込んで保持するクランプ機構と、可動ローラを、保持基準位置と退避位置との間で駆動するアクチュエータとを備え、アクチュエータが、可動ローラを、保持基準位置よりも退避位置側の制御切り替え位置まで、位置制御に従って駆動し、打ち抜き動作開始前の制御切り替え位置から、トルク制御により可動ローラを駆動する。
【0009】
分離装置は、例えば、成形品分離後の残存シートを分離台から送り出す機構をさらに備えることが可能である。アクチュエータは、残存シートが送り出される間、トルク制御に従って可動ローラを駆動することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形品のトリミングにおいて、生産効率を高めながら、安定してシートを保持して成形品をシートから分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】成形加工されたシートを分離装置上方から示した平面図である。
【
図6】分離装置のクランプ機構を示した概略的側面図である。
【
図8】打ち抜き動作時における可動ローラの駆動切り替え制御フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施形態であるトリミング装置について説明する。
【0013】
図1は、トリミング装置の概略的構成図である。トリミング装置10は、成形加工済みのシートを搬送する過程でシートから成形品を分離する装置であって、位置決め装置20と、裁断機を構成する裁断装置30および刃受盤40と、分離装置50とを備える。また、トリミング装置10は、搬送動作全体を制御する制御部400を備え、モニタパネル500と接続している。
【0014】
図2は、成形加工されたシートを示した図である。
図3は、成形加工されたシートの一部断面図である。シートSは、ここではプラスチックなどの合成樹脂製のシートで構成される。加熱成形機などの成形機12は、所定幅(例えば1m)のピッチでシートSを加工し、規則的に2次元配列した成形加工部分S1を形成する。成形加工部分S1は、ここでは食品トレーの形状になっている。成形加工されたシートSは、コンベア200によって位置決め装置20に搬送され、位置決めされる。
【0015】
図4は、トリミング装置10の概略的平面図である。位置決め装置20、裁断装置30との間のシートSの搬送は、搬送装置160によって行われる。搬送装置160は、レール195に沿って区間B1を往復移動可能であるとともに、昇降可能である。
【0016】
搬送装置160は、成形加工部分S1の配列に応じて2次元配列させた複数の搬送部材170を備える。搬送部材170は、位置決め装置20に配置されたシートSを吸着するパッド170Pを、その先端部に設けている。搬送装置160は、位置決め装置20に載せられたシートSを吸着後、裁断装置30まで移動して降下し、裁断装置30の抜刃台32上にシートSを載せる。
【0017】
抜刃台32は、シートSに形成された成形加工部分S1の位置に合わせて配置されたトムソン刃を備え、図示しない移動機構によって、刃受盤40の下方へ移動する。移動機構は、紙面垂直方向、すなわちレール120に垂直な方向(
図1のB方向参照)に沿って抜刃台32を往復移動させることが可能である。
【0018】
成形加工済みのシートSを載せた抜刃台32は、刃受盤40の下方まで移動すると、昇降機構34によって裁断位置まで上昇する。これによって、シートSが裁断(カットプレス)される。裁断(打ち抜き)後、抜刃台32は降下して元の位置、すなわちシートSの搬送路に復帰する。この間、搬送装置160は、次の加工済みシートSを搬送するために、位置決め装置20の上方へ戻る。裁断後のシートSは、積極的に分離作業を行わない限り、成形加工部分S1が分離されていない状態にある。
【0019】
搬送装置160に並んだ搬送装置180は、レール195に沿って裁断装置30と分離装置50との間(区間B2)を往復移動可能である。搬送装置180は、搬送装置160と同様、シートSの成形加工部部分S1の形成位置に合わせて2次元配列させた複数の搬送部材190を備え、その先端部にシートSを吸着するパッド190Pを設けている。
【0020】
成形加工済みのシートSを載せた抜刃台32が元の搬送路に沿った位置へ戻ると、搬送装置180が降下し、シートSを吸着する。シートSを吸着した搬送装置180は上昇し、分離装置50上方まで移動する。分離装置50は、成形品となる成形加工部分S1(
図3参照)をシートSから分離する分離部60と、分離された成形品を積載する積載部70とを設けている。
【0021】
図2では、分離部60上方に配置された成形加工済みのシートSを示している。搬送装置180は、分離装置50上方まで移動すると、シートSが保持される位置まで降下する。そして、搬送装置180が保持位置からさらに降下する打ち抜き動作が行われることによりラインL1、L2に沿ってシートSから成形加工部分(以下、成形品ともいう)S1が分離される。成形品S1の分離後に残った残存するシート(
図2のハッチング部分、以下屑シートという)S2は、相対するローラ68A、68Bから構成される送り出し機構68によって、コンベア300(
図1参照)に送り出される。
【0022】
分離部60の下方に設けられた積載部70は、順次搬送されてくるシートSから成形品S1が分離される度に、その成形品厚さ分だけ段階的に降下していく。積載部70に成形品S1が順次積み重なり、あらかじめ定められた所定数(例えば50個)に達すると、成形品S1は、図示しないプッシャーによって分離装置50から排出される。積載部70は、排出後に上昇して元の位置に復帰する。
【0023】
搬送装置160と搬送装置180は、レール195に沿って一体的に移動する。打ち抜き動作による成形品S1の分離が行われると、搬送装置160と搬送装置180は、それぞれ位置決め装置20と裁断装置30上方位置まで一体的に移動する。搬送装置160は、新たに位置決め装置20に運ばれてきたシートSを吸着し、搬送装置180は、裁断装置30の抜刃台32に新たに搭載された裁断済みのシートSを吸着する。
【0024】
搬送装置160と搬送装置180は、再び上昇してそれぞれ裁断装置30と分離装置50上方まで移動し、搬送装置160が抜刃台32にシートSを載せ、搬送装置180は分離部60まで降下し、シートSから成形品S1を分離する。トリミング装置10は、このような一連のトリミング工程を所定の時間間隔(例えば数秒程度)で繰り返し行う。
【0025】
搬送装置160、180、抜刃台32、分離装置50のトリミング工程に伴う移動/停止、位置決めは、サーボモータなどのアクチュエータによって行われ、制御部400によって動作制御されている。なお、トリミング装置10の構成としては、上述した構成に依らずに構成することも可能であり、成形機12から分離装置50までの過程でシートSが裁断され、連続的に成形加工および裁断済みのシートSが分離装置50へ供給できる構成であればよい。
【0026】
図5は、分離装置50の分離部60を示した概略的側面図である。
図6は、分離装置50の分離部60を搬送路(コンベア300)側から示した概略的断面図である。
【0027】
分離部60は、シートSの成形加工部分S1の配列に合わせて仕切区画板65Aを備えた分離台65を備えている。ここでは、仕切区画板65Aが格子状に配列している。なお、成形加工部分S1の配列の仕方よっては、シート排出方向またはそれに垂直な方向に沿った仕切区画板を形成すればよい。また、分離部60には、側壁64に沿ってクランプ機構62が設けられている。クランプ機構62は、可動ローラ62Aと固定ローラ62Bとが対となり、側壁64に沿って複数並んで配置されている。
【0028】
可動ローラ62Aは、支持部材135によって支持される軸130によって軸支され、保持位置と退避位置との間で軸回転可能である。
図5では、可動ローラ62Aは退避位置に位置決めされた状態を示している。クランプ機構62は、可動ローラ62Aが退避位置から保持位置まで倒れ込むように軸回転することによって、シートSの両側(長手方向側面端部)を挟み込み、保持する。なお、
図4では、クランプ機構62の図示を省略している。
【0029】
搬送装置180が分離台65まで降下し、成形加工部分S1が未分離状態のシートSがクランプ機構62によって保持されると、搬送装置180はさらに降下し、打ち抜き動作を行う。搬送装置180の搬送部材190がシートSを下方へ押し込む結果、仕切区画板65Aによって区画された領域ごとに、成形加工部分S1がシートSから分離される。分離台65に残った屑シートS2は、クランプ機構62によって保持された状態で、コンベア300側へ送り出される。
【0030】
図5に示すサーボモータ機構100は、減速機120を介して軸130に接続されている。サーボモータ機構100は、サーボモータ110とモータ制御部115とを備え、サーボモータ110は、軸130を軸回転させることによって可動ローラ62Aを駆動する。サーボモータ機構100は、位置制御、トルク制御によって可動ローラ62Aを駆動可能であり、図示しないエンコーダ、トルクセンサによって位置検出およびトルク検出を行う。
【0031】
サーボモータ機構100は、制御部400と接続し、トリミング工程に合わせて可動ローラ62Aの駆動タイミングを制御する。そして、成形品S1をシートSから分離する押し抜き動作のとき、位置制御とトルク制御の組み合わせによって可動ローラ62Aを駆動し、シートSを保持する。以下、これについて詳述する。
【0032】
図7は、打ち抜き動作の工程を示した図である。
図8は、可動ローラ62Aの駆動制御の切り替えフローを示した図である。
【0033】
図7の(A)に示すように、搬送装置180の搬送部材190が分離台65上方から降下して所定位置(移動開始位置)に到達したとき、可動ローラ62Aは退避位置から軸回転を開始する。ここでは、可動ローラ62Aの軸回転開始タイミングは、タイマー設定によって行われる。
【0034】
可動ローラ62Aは、サーボモータ110によって退避位置から保持位置に向けて軸回転していく。ここでの退避位置は、分離台65の上下方向(鉛直方向)、すなわち可動ローラ62Aが真上に向いた状態であり、鉛直方向を基準として0度に設定されている。ただし、搬送装置180の降下の障害にならない範囲で、所定角度傾けた退避位置に設定してもよく、モニタパネル500を操作することによって設定変更可能である。例えば、鉛直方向を基準として20~30°の範囲で分離台65の側に傾斜した位置を、退避位置と設定してもよい。
【0035】
可動ローラ62Aを退避位置から移動開始させるとき、サーボモータ機構100は、可動ローラ62Aを位置決め制御によって駆動する。位置決め制御による可動ローラ62Aの駆動は、
図8に示す保持位置よりも僅かに退避位置側の位置(以下、制御切り替え位置という)まで実行される。
【0036】
可動ローラ62Aが制御切り替え位置まで軸回転すると、サーボモータ機構100は、位置制御からトルク制御に切り替えて可動ローラ62Aを駆動する。制御切り替え位置は、シートSの厚み、分離台65の位置に基づく可動ローラ62Aの保持位置などの条件に従い、保持位置の直前位置(角度)に設定されている。例えば、制御切り替え位置は、保持位置よりも1°~3°の範囲内で退避位置側の位置(角度)に設定される。
【0037】
可動ローラ62Aに対する駆動がトルク制御に切り替わると、打ち抜き動作が行われ、搬送部材190は最下位位置まで降下する。その結果、成形品S1がシートSから分離される(
図7の(B)、(C)参照)。この間、可動ローラ62Aは、定められた一定トルクでシートSを保持するように、駆動される(
図8参照)。例えば、モータ定格の50%のトルクに基づいて可動ローラ62Aをトルク制御することが可能である。
【0038】
打ち抜き動作によって成形品S1がシートSから分離されると、搬送部材190が上昇し(
図7の(D)参照)、上述したように、屑シートS2が送り出し機構68によってコンベア300側へ排出される。この間、可動ローラ62Aはトルク制御に従って駆動する。屑シートS2の分離台65からの送り出しが終了すると、可動ローラ62Aに対する駆動は、トルク制御から位置制御に切り替わり、可動ローラ62Aは退位位置に戻る(
図8参照)。
【0039】
上述したように、一連のトリミング工程は非常に高速で行われるものであり、
図7(A)~(D)に示す搬送部材190の保持位置までの降下、クランプ機構62によるシートSの保持、打ち抜き動作、そして搬送部材190の上昇動作は、非常に高速であって短期間で行われる。そのため、クランプ機構62の応答特性が良好でないと、シートSの保持が不安定化し、屑シートS2の送り出し方向のずれやトリミング停止の事態が生じる。
【0040】
具体的には、生産性向上のため、シートSの保持タイミングと打ち抜き動作のタイミングをできる限り近づける必要があるが、可動ローラ62Aを退避位置から保持位置まで高速降下させることに制限などがあると、クランプ機構62によるシートSの保持が遅れ、シートSの保持状態が不安定となる。
【0041】
シートSの保持が安定化しないことにより、屑シートS2を搬送路に沿って平面状に保持する姿勢に保つことができず、保持姿勢が崩れてしまう状況が生じる。これによって、搬送部材190が上昇するときに屑シートS2の一部と接触する事態が生じ、屑シートS2が撓むことになる(
図7(D)の符号S2’参照)。このような屑シートS2の撓みは、屑シートS2の排出不能、すなわちトリミング工程の停止を招く。
【0042】
また、打ち抜き動作時にシートSを適正な姿勢で保持できないと、屑シートS2をコンベア300側へ送り出すとき、搬送路に沿った方向Lに屑シートS2を移動させることができず、排出方向がずれてしまう(
図2の符号L’参照)。
【0043】
本実施形態では、サーボモータ機構100によって、位置制御とトルク制御とを切り替えながら可動ローラ62Aを駆動している。これにより、可動ローラ62Aを制御切り替え位置まで、正確な位置精度で高速降下させることが可能となり、クランプ機構62によるシートSのクランプ動作が、搬送部材190に遅れることなく応答し、安定化する。
【0044】
また、可動ローラ62Aが制御切り替え位置まで移動すると、位置制御からトルク制御に切り替わることにより、可動ローラ62Aの位置は、トルク変動に応じて位置が変動可能となる。これにより、打ち抜き動作時のシートSに対して作用する力に対しても、シートSの保持姿勢を保つようにクランプ機構62が動作する。特に、制御切り替え位置が保持位置より僅か上方の位置に定められているため、打ち抜き動作によるシートS両の上方側への反りに対して可動ローラ62Aが位置変動可能となり、打ち抜き動作開始直後に可動ローラ62Aの加速が急激に増加することなく、安定してシートSを保持することができる。
【0045】
その結果、屑シートS2が搬送部材190の上昇時に接触することを防ぎ、屑シートS2が搬送路Lからずれて排出されるのを防ぐことができる。また、屑シートS2を送り出す間、トルク制御に基づいて可動ローラ62Aを駆動するため、屑シートS2を搬送路Lに沿って安定して排出することができる。そして、屑シートS2の排出後、可動ローラ62Aの駆動をトルク制御から位置制御に切り替えることにより、可動ローラ62Aを高速で退避位置まで復帰させることができる。
【0046】
このようなクランプ機構62による安定したクランプ動作、および屑シートS2の確実な送り出しを実現するように、保持位置および制御切り替え位置を定めればよい。ここでは、可動ローラ62Aの保持位置および制御切り替え位置を、モニタパネル500によって設定変更することが可能である。
【0047】
例えば、シートSの厚さなどの諸条件に基づき、鉛直方向を基準として85°~90°の範囲で保持位置を設定することが可能である(以下では、保持基準位置という)。設定された保持基準位置に応じて、制御切り替え位置を設定すればよい。例えば、87°以上に設定することが可能である。
【0048】
本実施形態では、搬送部材190が保持位置まで降下して停止し、クランプ機構62によるシート保持に応じて最下点位置まで更に降下する打ち抜き動作を実行するが、成形品生成サイクル短縮のため、搬送部材190が保持位置で停止せず、最下点までそのまま連続的に降下する打ち抜き動作を実行することが可能である。
【0049】
その場合、サーボモータ機構100が、搬送部材190の降下開始タイミング、降下速度に従い、可動ローラ62Aの回転開始タイマーの設定、可動ローラ62Aに対する加減速、速度パラメータを適宜設定、制御する。これによって、搬送部材190の連続的降下を行う打ち抜き動作においても、クランプ機構62による適切なシート保持が可能となる。
【0050】
サーボモータ機構100以外のアクチュエータによって、位置制御とトルク制御の切り替えに基づいた可動ローラ62Aの駆動を行ってもよい。分離台65は、成形加工済みのシートSの成形加工部分S1の形状に応じて構成され、複数の成形加工部分S1を分離する構成だけに限定されない。クランプ機構62に関しても、上述した可動ローラ62A、固定ローラ62Bの配置に限定されず、サーボモータ機構100との連結構成も限定されない。また、積載部70を別途設けて分離装置50を構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 トリミング装置
20 位置決め装置
30 裁断装置
40 刃受盤
50 分離装置
60 分離部
62 クランプ機構
62A 可動ローラ
62B 固定ローラ
100 サーボモータ機構
110 サーボモータ
S シート
S1 成形品(成形加工部分)
S2 屑シート(残存シート)