(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】トレーニング用ハードル
(51)【国際特許分類】
A63K 3/04 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
A63K3/04
(21)【出願番号】P 2022133534
(22)【出願日】2022-08-24
【審査請求日】2022-11-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513044500
【氏名又は名称】有限会社氷川工作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100104396
【氏名又は名称】新井 信昭
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 幸治
【審査官】右田 純生
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202761967(CN,U)
【文献】米国特許第03480273(US,A)
【文献】登録実用新案第3218136(JP,U)
【文献】登録実用新案第3143748(JP,U)
【文献】実開昭62-194400(JP,U)
【文献】実開昭59-150500(JP,U)
【文献】中国実用新案第210009630(CN,U)
【文献】中国実用新案第204307373(CN,U)
【文献】中国実用新案第201710982(CN,U)
【文献】中国実用新案第203507556(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236370(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0085816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63K 3/04
A63B 5/00- 5/22
A63B 6/00- 6/02
A63B 71/00-71/16
A63B 17/00-17/04
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体がクッション材のみにより構成されたトレーニング用ハードルにおいて、
互いに同じの、最大高さH、最大幅W、最大厚さTの一方の板状部材および他方の板状部材と、当該一方の板状部材と当該他方の板状部材を連結する屈曲連結部と、を含み、最大幅Wを横切る断面が略L字状に構成され、
当該他方の板状部材を走行面上に置いたときに当該一方の板状部材が起立可能に全体構成され、
当該一方の板状部材の最大厚さT方向には、風荷重軽減のための通風孔が少なくとも1個貫通形成され、
当該少なくとも1個の通風孔は、孔内壁に囲まれており、
当該孔内壁の軸方向途中には、周方向全長から中心に向かって突出する環状膨出部が形成されている、
ことを特徴とするトレーニング用ハードル。
【請求項2】
前記一方の板状部材を走行面上に置いたときに前記他方の板状部材をも起立可能に全体構成され、
前記他方の板状部材の厚さT方向にも、風荷重軽減のための通風孔が少なくとも1個貫通形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のトレーニング用ハードル。
【請求項3】
前記
他方の板状部材に貫通形成されている少なくとも1個の通風孔は、孔内壁に囲まれており、
当該孔内壁の軸方向途中には、周方向全長から中心に向かって突出する環状膨出部が形成されている、
ことを特徴とする請求項2記載のトレーニング用ハードル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
陸上競技のハードル競争やサッカー等の競技のトレーニング用に好適でかつ安全なトレーニング用ハードル(以下、適宜「ハードル」と略称する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、陸上競技に用いられる一般的なハードルであって、柔軟性のあるハードルバーと、ハードルバーとハードル基台との間に介在する衝撃吸収装置を有するものを開示する(特許文献1のハードル)。特許文献1のハードルは、ハードルバーに足を躓いた際に競技者が受ける衝撃を減少させることを目的とする。特許文献2は、発泡材からなる基台と、基台の上に固定可能な同じく発泡材からなる高さ調整ブロックとを有する安全ハードルを開示する(特許文献2のハードル)。横から見たときの基台は、走者にとって手前側が垂直面、同じく向こう側が若干の角度で傾斜する台形に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平2-121100号公報
【文献】実開昭59-150500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のハードルは、ハードルバーに躓いた足が受ける衝撃は減少できても、基台は柔軟性のある素材で構成されているわけではない。このため、特許文献1のハードルでは、ハードル自体を倒した時に横になった基台によって競技者が怪我をしてしまう恐れが高いという欠点がある。
【0005】
また、特許文献2のハードルは、全体が発泡材により構成されているので、練習者が足を躓いたり踏んづけたりしても、その衝撃は変形吸収するので競技者が怪我をする恐れは低い。しかし、走者にとって手前が垂直面の台形をしているため、練習者による躓いや踏んづけにより簡単に横転してしまいし、横転によりハードルの高さが変化してしまう。このため、横転するごとにハードルを正しい姿勢に直さなくてはならず、したがって、効率のよいトレーニングがしづらいという欠点がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、前記欠点を補うことにあり、躓いたり踏んづけたりしても、それが原因で競技者が怪我をしないで済み、横転しづらいか若しくは横転してもそのまま使用可能なトレーニング用ハードルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記欠点を改善するため本発明では、全体がクッション材のみにより構成されたトレーニング用ハードルにおいて、次の構成を備えている。なお、説明の都合上「一方」と「他方」という表現を用いるが、これは二つあるもののうち何れかを特定する趣旨ではない。
【0008】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係るトレーニング用ハードル(以下、「請求項1のハードル」という)は、全体がクッション材のみにより構成されたトレーニング用ハードルである。請求項1のハードルは、互いに同じの、最大高さH、最大幅W、最大厚さTの一方の板状部材と、当該一方の板状部材と当該他方の板状部材を連結する屈曲連結部と、を含み、最大幅Wを横切る断面が略L字状に構成され、当該他方の板状部材を走行面(地面や体育館の床面などトレーニングする床面)の上に置いたときに当該一方の板状部材が起立可能に全体構成され、当該一方の板状部材の最大厚さT方向には、風荷重軽減のための通風孔が少なくとも1個貫通形成され、当該少なくとも1個の通風孔は、孔内壁に囲まれており、当該孔内壁の軸方向途中には、周方向全長から中心に向かって突出する環状膨出部が形成されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項1のハードルによれば、全体がクッション材のみ、つまり、クッション材以外の素材を含まないので、躓いたり踏んづけたりしたときに十分に変形して衝撃吸収してくれる。このため安全にトレーニングすることができる。他方の板状部材を走行面上におけば一方の板状部材が自立するから、これにより飛び越したり跨いだりするトレーニング用のハードルとして準備が整う。なお、トレーニングする者、すなわちトレーニーから見た請求項1のハードルは、前後を問わない。つまり、他方の板状部材が一方の板状部材の手前にあっても後ろ側にあってもトレーニング可能である。また、トレーニングは体育館のような屋内の場合もあるが、屋外のグランドなどで行う場合もある。軽量であるため屋外に設置すると風の影響を受けて横転しやすくなるが、請求項1のハードルによれば通風孔が衝突した風を逃がすので、その分、風荷重が軽減されて横転をしづらくする。また、クッション材のみの構成は、破損しづらくし軽量化に貢献する。通風孔の形成は、トレーニング用ハードルを、より変形しやすく、また軽量化する。さらに、環状膨出部の突出がその分だけ通風孔を狭くすることになるから、通風方向から見た通風孔の断面積は、広い、狭い、広い、の順で径が変化してベンチュリ管に似た構成となる。これを狭い部分から広い部分に圧力面から見ると、ベンチュリ効果により、断面積の狭い部分によって一端低くなった風圧が下流の広い部分に向かって高まり、その結果、流体(空気)の剥離が生じる。これにより乱流が発生して通過方向の空気と衝突してエネルギーを損失させる。つまり、風のエネルギーを減少させてハードルの転倒を抑制する。つまり、ハードルがより倒れづらくなる。
【0010】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係るトレーニング用ハードル(以下、「請求項2のハードル」という)は、請求項1のハードルの好ましい形態として、前記一方の板状部材を走行面上に置いたときに前記他方の板状部材をも起立可能に全体構成され、前記他方の板状部材の厚さT方向にも、風荷重軽減のための通風孔が少なくとも1個貫通形成されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2のハードルによれば、一方の板状部材と他方の板状部材とを区別することなく、何れかの板状部材を走行面上に置いたとき他の板状部材が起立する。いずれの板状部材が起立しても、そこには通風孔が開口している。しかも、トレーニーから見て前後を問わない。したがって、走行面上において走行方向を横切るようにトレーニング用ハードルを置いただけでトレーニングを開始ないし再開することができるので、とても使い勝手がよくなる。
【0012】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係るトレーニング用ハードル(以下、「請求項3のハードル」という)は、請求項2のハードルの好ましい態様として、前記他方の板状部材に貫通形成されている少なくとも1個の通風孔は、孔内壁に囲まれており、当該孔内壁の軸方向途中には、周方向全長から中心に向かって突出する環状膨出部が形成されている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3のハードルによれば、環状膨出部の突出がその分だけ通風孔を狭くすることになるから、通風方向から見た通風孔の断面積は、広い、狭い、広い、の順で径が変化してベンチュリ管に似た構成となる。これを狭い部分から広い部分に圧力面から見ると、ベンチュリ効果により、断面積の狭い部分によって一端低くなった風圧が下流の広い部分に向かって高まり、その結果、流体(空気)の剥離が生じる。これにより乱流が発生して通過方向の空気と衝突してエネルギーを損失させる。つまり、風のエネルギーを減少させてハードルの転倒を抑制する。つまり、ハードルがより倒れづらくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、躓いたり踏んづけたりしても、それが原因で競技者が怪我をしないで済み、横転しづらいか若しくは横転してもそのまま使用可能なトレーニング用ハードルを提供するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一方の板状部材を走行面上に置いた(以下、
図4を除いて同じ)トレーニン グ用ハードル(ハードル)の部分斜視図である。
【
図8】ハードルの左斜視図である(右斜視図は左右線対称に表れる)。
【
図9】好ましい通風孔の縦断面を示す部分拡大図である。
【
図10】ハードルの使用状態を示す右側面図である。
【
図11】ハードルの前後を入れ替えて使用する状態を示す左断面図である。
【
図12】ハードルを逆立ちさせて使用する状態を示す右断面図である。
【
図13】競技者の靴によって踏みつけられて変形するハードルの右断面図である。
【
図14】競技者の靴によって踏みつけられて変形するハードルの左断面図である。
【
図15】競技者の靴によって躓いられて横転するハードルの右断面図である。
【
図16】ロープでつないでラダートレーニング用のハードルとして使用する状態の 右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(ハードルの概略構造)
発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)の説明を行う。
図1および2に示す符号1は、ハードルを示す。ハードル1は、一方の板状部材3(以下、単に「板状部材3」という)および他方の板状部材5(以下、単に「板状部材5」という)と、板状部材3と板状部材5を連結する屈曲連結部7と、を含み、幅Wを横切る断面(縦断面)が略L字状に構成され、板状部材5を走行面G(
図9)の上に置いたときに板状部材3が起立可能に全体構成されている。
【0017】
ここで、説明のみのために、方向を定義する。すなわち、
図1に示す状態のハードル1において、板状部材5を走行面G(
図9)の上に置いて板状部材3が起立させたときの起立方向を上、逆を下とする。さらに、後に板状部材5を配したときの板状部材3の手前を前とする。したがって、
図2はハードル1の正面図となり、
図3は同じく背面図になる。板状部材3の左方向が左、右方向が右になる。したがって、
図8はハードル1右側面図になる。
【0018】
(ハードルの素材)
ハードル1全体は、クッション材のみによって一体構成されている。クッション材以外の硬い素材(たとえば、金属)を含まない。躓いたり踏んづけたりしたときに十分に変形して衝撃を吸収するとともに、硬いものから競技者を守るためである。複数種のクッション材によって構成されている場合も含む。クッション材としては、たとえば、ウレタン(ポリウレタン)や発泡ゴムなどがある。合成スポンジはウレタンの一種である。ウレタンには、発泡させた発泡ウレタンや、発泡させていない非発泡ウレタンがある。ハードル1が求める衝撃吸収性と自立性等を満足させるため、配合剤や発泡度合いなどを調整して硬度を決めるとよい。発泡ゴムは、天然ボムや合成ゴムのラテックスを機械的又は化学的に泡立てて固め加硫してつくるのが一般的である。クッション材には、これに表面塗装や装飾などを施したものも含まれる。好みにより、彩色したり文字や模様などを描いたりすることもできる。本実施形態のハードル1は発泡ウレタンで構成され、両端面を除く表面には、発泡による凹凸を埋めて耐久性を高めるためのコーティングが施されている。
【0019】
(一方の板状部材の構成)
図2ないし3に示すように、一方の板状部材3は、最大高さH、最大幅W、最大厚さTの長方形類似の板状部材である。ここで、「最大」と表現したのは、クッション部材のみで構成されているため、板状部材3の表面が平面になりにくく、また寸法にバラつきが生じやすいからである。好ましい態様の板状部材3は、正面からみたときの一番高いところから手前に向かって、最大高さHの3分の1程まで丸みが形成されている。この丸みがあることにより、角部の破損がしにくくなる。本実施形態の板状部材3の寸法は、最大高さH5cm、最大幅W30cm、最大厚さT3cmであるが、たとえば、最大高さHが4~10cm、同じく最大幅Wが25~45cm、最大厚さTが1.5~3,5cmの範囲で調整可能である。これらの寸法例は、子供から大人を含めた競技者1人がトレーニングすることを前提としているので、競技者の範囲やトレーニング目的に応じて変更可能である。たとえば競技者2人を前提とするのであれば、最大幅Wを上記寸法の2倍もしくはそれ以上に設定する必要がある。
【0020】
(通風孔の構成)
好ましい態様の板状部材3の厚さT方向には、風荷重軽減のための通風孔13が7個貫通形成されている。風荷重軽減により、特に屋外使用時において受風によるハードル1の横転を抑制するためである。通風孔13の形成は、ハードル1全体の軽量化にも資する。通風孔13の形状や個数には、上記した横転抑制や軽量化という目的から外れない範囲であれば特に制限はない。本実施形態のハードル1は、それぞれ正面視の最大径D2.5cmであって、板状部材3の幅方向Wに沿って並ぶ7個の通風孔13を備えている(
図3)。上記寸法例における通風孔13の最大径Dは、たとえば、20~40cm程度が好ましい。なお、板状部材3の通風孔13は、製造者がこれを不要と考えるなら省略することを妨げない。
【0021】
風荷重軽減を目的とする通風孔13は、上述のとおり本実施形態では7個であるが、その目的の範囲内において少なくとも1個あればよく、6個以下でも8個以上でも構わない。先に説明したように本実施形態の通風孔13はどれも円形に形成してあるが、たとえば、円形と四角形を混在させるなど一部又は全部を相異なる形状に形成してもよい。
図5に示す第1変形例のハードル1Aの板状部材3には、楕円形の通風孔23が横並びに2個が貫通形成され、これに併せて環状膨出部23aが突出形成されている。さらに
図6に示す第2変形例のハードル1Bには、中央部が上から下に凹んだ変形四角形の通風孔33が1個、貫通形成され、これに併せて環状膨出部33aが突出形成されている。
【0022】
(通風孔の内部形状)
通風孔13の縦断面は、
図7に示すように通風方向に沿って真っ直ぐ、つまり孔内壁13aの孔径一定でもよいが、
図2、3及び8、9に示すように、環状膨出部13bを設けることが好ましい。環状膨出部13bは、孔内壁の軸方向途中にあって、周方向全長から中心に向かって突出する部位である。環状膨出部13bの突出により、その分だけ通風孔を狭くすることになるから、
図8および9が最もよく示すように矢印で示す通風方向から見た通風孔の断面積は、
図9に示すように、広い、狭い、広い、の順で径が変化してベンチュリ管に似た構成となる。換言すると、環状膨出部13bは、通風孔13にベンチュリ効果を発揮させるためのものである。そのため環状膨出部13bの断面形状は、流体である風が極端に停滞しないように、なだらかな小さい山(バスタブの底)に似た形状が好ましい。
【0023】
ベンチュリ効果により通風孔13を風(空気)が通過するとき、断面積の狭い部分によって一端低くなった風圧が下流の広い部分に向かって高まり、その結果、空気の剥離(Separation)が生じる(
図9の矢印S)。これにより乱流(Turbulence)が発生する(
図9の矢印T)。乱流は通過方向の空気と衝突してエネルギーを損失させる。つまり、風のエネルギーを減少させてハードルの転倒を抑制する。つまり、ハードルがより倒れづらくなる。
【0024】
(他方の板状部材の構成)
次は、板状部材5について説明する。板状部材5は、好ましくは板状部材3と互いに実質的同形に構成することが好ましい。互いに異なる形状を否定する意味ではないが、同形構成することによって、何れを走行面Gの上に置いても他方が起立する、すなわち、置き方を問わないので使い勝手が格段によくなるからである。よって、板状部材5の説明は基本的に省略するが、板状部材3と板状部材5とを区別しやすいように、部材番号だけを異ならせてある。
【0025】
すなわち、
図2ないし4において、板状部材3の通風孔13に対応する板状部材5の通風孔の符号を15と、同じく環状膨出部13bに対応する環状膨出部の符号を15bと、それぞれ記載してある。
図5において板状部材3の通風孔23(環状膨出部23b)に対応させて板状部材5の通風孔の符号を25(25b)と記載してある。同様に
図6において板状部材3の通風孔33(環状膨出部33b)に対応させて板状部材5の通風孔の符号を35(35b)と記載してある。
【0026】
(屈曲連結部の構成)
屈曲連結部7は、板状部材3と板状部材5とを連結し、両板状部材を含め断面略L字状を一体形成する部位である。屈曲連結部7の角部7aは、
図1および8に示すように丸みを持たせておくとよい。角張っていると、その部位の発泡ウレタンのちぎれ防止のためである。なお、本願において「L字状」とあるが、これは板状部材3と板状部材5とが互いに直交していなければならないという意味では必ずしもなく、実質的にL字に類似する位置関係であることを示す。
【0027】
(ハードルの製造方法)
本実施形態のハードル1は発泡ウレタンで構成されているため、ハードル1の製造は即ち発泡ウレタンの製造・加工になる。以下、製造方法の一例を示す。すなわちハードル1の製造は、好みの色彩が付与された発泡ウレタンを押出成形して長尺(たとえば、120cm)の断面L字状棒を製造する。押し出し成形以外の成形方法や複数部材を一体化させる方法を採用することもできるが、ハードル1の基本構造を1工程で製造するためには押出成形が便利である。
【0028】
押出成形によりハードル1の最大幅Wの30cmの長さに成形することもできるが、上例のとおり120cmの長尺成形としたのは、これを長さ方向に4分割すれば1回の成形と3回の切断により4個のハードル1の基本構造を製造できて便利だからである。この製造方法によれば、ハードル1の少なくとも一方もしくは双方の端面が切断面となるが、これはハードル1の作用効果を何ら減ずるものではない。次に、必要に応じてハードル1の表面をコーティングすることも可能だが、発泡ウレタンを押出成形すると滑らかで光沢のある表面が形成されるので、本実施形態では押出成形したままにしている。
【0029】
次に、板状部材3と板状部材5の両方に、図示を省略する円形刃を用いた型抜きプレスによって通風孔3b,5bをそれぞれ7個ずつ形成する。型抜きされる発泡ウレタンは一度圧縮され、さらなる加圧によりせん断されるが、この圧縮直後に膨出するので、この膨出により環状膨出部3b,5bが形成される。以上により、ハードル1の製造が完了する。
【0030】
(ハードルの使用方法)
図10ないし16を参照する。
図10に示すようにハードル1は、板状部材5を走行面Gの上に置く。このとき板状部材3は起立する。
図10に示すハードル1は1個であるが、複数個のハードル1を所定間隔ごとに直線上に並べてもよい。競技者はこれらを跳び越えることで安全なトレーニングができる。板状部材5の向きは、競技者から見て板状部材3の手前でも後方でもよい。
図10では、競技者(の靴)から見た板状部材5は板状部材3の後方(右側)に置かれている。これとは反対に競技者(の靴)から見た板状部材5は板状部材3が手前(左側)に置かれた状態が、
図11に示す状態である。
【0031】
一方で、
図12に示すように、ハードル1を逆さV字に走行面に置いても、ハードルとして十分に活用可能である。このように置けば、水平方向や斜め方向からの風が板状部材3及び板状部材5は斜めに当たることになるので、正面から当たる場合に比べて安定性が向上する。通風孔3b,5bも風圧低減に貢献する。
【0032】
(ハードルの安全性・有用性)
ハードル1がクッション材、具体的には発泡ウレタンのみによって構成され、そのクッション性により変形性・衝撃吸収性に優れているという趣旨を繰り返して述べてきた。板状部材5を競技者(の靴)から見て板状部材の後方においた場合(
図13)、同じく手前に置いた場合(
図14)、何れにおいても競技者が跳び越えるのは起立した1枚板の板状部材3である(板状部材5を起立させる場合もある)。つまり、板状部材3の後方は変形による板状部材3の移動を許す空間になっているため、変形が容易である。
図12に示す逆さV字状に置かれた場合のV字の下の三角空間が、板状部材3,5の移動空間となって変形を容易化する。
【0033】
競技者(の靴)が躓いて板状部材3の上の部位に衝突した場合のハードル1は、その衝撃を変形で吸収しきれないときは、
図15に示すように横転する。横転が終わったとき、たとえば、同図の右端に示すように逆さV字状態で落ち着いたとき、その上を競技者が踏みつけても、上述のように変形するから競技者が足を痛めたりする恐れはほぼ皆無である。以上のとおり、ハードル1は、非常に安全性の高いトレーニング用ハードルである。これに加えハードル1は、前述のとおり使用する際の設置方向を問わないし、通風孔3b,5bの働きにより風による横転が有効に抑制されるため有用性が極めて高い。
【0034】
複数のハードル1は、これらを柔軟性あるロープRで所定間隔ごとに繋ぐことで、トレーニング用のラダー(梯子)を構成することができる。サッカー選手などがラダートレーニングするのに好都合である。並べる際に自動的に所定間隔を隔てることができるので、設置が楽である。一方、互いにつながっているため、ハードル1は横転しづらくなるが、クッション性が十分に衝撃を吸収してくれるので、安全性に支障はない。なお、ロープRと各ハードル1との連結も、柔軟性のあるゴムやロープによるリンク部材を使用すべきことは、安全性を担保するために当然である。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B トレーニング用ハードル(ハードル)
3 一方の板状部材
5 他方の板状部材
7 屈曲連結部
7a 角部
13,15,23,33 通風孔
13a 孔内壁
13b,23b,33b 環状膨出部
G 走行面
【要約】 (修正有)
【課題】躓いたり踏んづけたりしても、それが原因で競技者が怪我をしないで済み、横転しづらいか若しくは横転してもそのまま使用可能なトレーニング用ハードルを提供する。
【解決手段】全体がクッション材のみにより構成されたトレーニング用ハードル1において、互いに同じの、最大高さH、最大幅W、最大厚さTの一方の板状部材3および他方の板状部材5と、一方の板状部材と他方の板状部材を連結する屈曲連結部7と、を含み、最大幅Wを横切る断面が略L字状に構成され、他方の板状部材を走行面上に置いたときに一方の板状部材が起立可能に全体構成されている。クッション材による全体構成なので、躓き・踏んづけで使用者が怪我をしない。一方又は他方が常に起立するため、置くときの方向を選ばず、また、横転してもすぐに使用可能な状態になる。安全で便利である。
【選択図】
図1