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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】先行手摺
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/14 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
E04G5/14 301G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023033509
(22)【出願日】2023-03-06
【審査請求日】2023-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592178303
【氏名又は名称】東阪工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】松下 正文
(72)【発明者】
【氏名】松本 孝則
(72)【発明者】
【氏名】内藤 賢
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196657(JP,A)
【文献】特開2006-152593(JP,A)
【文献】特開2005-330707(JP,A)
【文献】特開2011-58225(JP,A)
【文献】特開2017-223082(JP,A)
【文献】特開2020-56247(JP,A)
【文献】特開2021-155929(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0007553(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00- 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に間隔をおいて立てられた複数本の支柱を備えており、各支柱の左右各側部に複数のソケット金具が上下方向に所定間隔おきに設けられている仮設足場において、左右に隣り合う2本の支柱間に架設される先行手摺であって、
左右方向にのびる水平な手摺本体と、
上部が手摺本体の左右各端部に前後方向にのびる回動中心軸線の周りに回動自在に連結されているとともに、下部に、前記2本の支柱の左右に対向する側部における所定高さ位置に設けられたソケット金具に挿入される挿入部を有している左右2つの係合部材と、
一端部が、左右各係合部材における手摺本体への連結部と挿入部との間の部分に、前後方向にのびる回動中心軸線の回りに回動自在に連結されているとともに、他端部に、前記2本の支柱における係合部材の挿入部が挿入されるソケット金具よりも下方の所定高さ位置に着脱自在に取り付けられる取付部を有しており、かつ前記2本の支柱間に互いに交差するように斜めに架設される2本のブレースとを備えている先行手摺であって、
前記先行手摺が、左右2つの係合部材の挿入部が手摺本体と直角をなす設置形態と、左右2つの係合部材が手摺本体の延長方向にのびるように回動させられるとともに、2本のブレースが手摺本体に沿うように回動させられる折り畳み形態を取りうるようになっている先行手摺において、
係合部材の上部に、前方から見て係合部材の回動中心軸線を中心とする円弧状の長穴が、前記回動中心軸線よりも手摺本体の長手方向中央部側に形成され、手摺本体に、前後方向に延びるとともに長穴に挿通されて当該長穴の長手方向に移動しうる位置決めピンが設けられ、係合部材の長穴の対向する2つの円弧状縁のうちのいずれか一方に、位置決めピンが嵌まる位置決め用切り欠きが形成され、手摺本体に、位置決めピンが位置決め用切り欠き内に嵌まった状態において、位置決めピンを位置決め用切り欠きの奥側に付勢する付勢手段が設けられており、係合部材の挿入部と手摺本体とが直角をなした前記設置形態で位置決めピンが位置決め用切り欠き内に嵌まるようになっている、先行手摺。
【請求項2】
左右2つの係合部材が手摺本体の延長方向にのびるように回動させられるとともに、2本のブレースが手摺本体に沿うように回動させられる折り畳み形態を取った状態で、位置決めピンが長穴の一端に位置し、係合部材の挿入部と手摺本体とが鋭角をなす状態で位置決めピンが長穴の他端に位置するようになっている、請求項1記載の先行手摺。
【請求項3】
係合部材が、前後方向に延びるとともに手摺本体に形成された連結ピン挿通穴に通された連結ピンにより手摺本体に回動自在に取り付けられており、長穴が、係合部材における連結ピンよりも手摺本体の長手方向中央部側に位置する部分に上下方向に一定の長さを有するように形成され、位置決めピンが、連結ピンよりも手摺本体の長手方向中央部側において、手摺本体の長手方向に移動しないように設けられ、位置決め用切り欠きが長穴における手摺本体の長手方向中央部側の円弧状縁に形成され、付勢手段が、連結ピンと位置決めピンとの間に配置された圧縮コイルばねからなる、請求項1記載の先行手摺。
【請求項4】
手摺本体が管状体からなり、連結ピンが手摺本体の周壁の前後両側部分に形成された連結ピン挿通穴に通されて手摺本体を直径方向に貫通し、位置決めピンが手摺本体の周壁の前後両側部分に形成されたピン挿通穴に通されて手摺本体を直径方向に貫通し、圧縮コイルばねが手摺本体内に配置されている、請求項3記載の先行手摺。
【請求項5】
連結ピンが通されている手摺本体の連結ピン挿通穴の上下方向の幅が、手摺本体における当該連結ピン挿通穴に近接した側の端部に向かって徐々に狭くなっている、請求項3記載の先行手摺。
【請求項6】
係合部材が、前後方向に延びるとともに手摺本体に形成された連結ピン挿通穴に通された連結ピンにより手摺本体に回動自在に取り付けられており、長穴が、係合部材における連結ピンよりも手摺本体の長手方向中央部側に突出した部分に上下方向に一定の長さを有するように形成され、位置決めピンが、連結ピンよりも手摺本体の長手方向中央部側において、手摺本体の長手方向に移動しうるように設けられており、位置決め用切り欠きが長穴における手摺本体の長手方向端部側の円弧状縁に形成され、付勢手段が、手摺本体に固定状に設けられたばね受けと位置決めピンとの間に配置された圧縮コイルばねとからなる、請求項1記載の先行手摺。
【請求項7】
手摺本体が管状体からなり、連結ピンが手摺本体の周壁の前後両側部分に形成された連結ピン挿通穴に通されて手摺本体を直径方向に貫通し、位置決めピンが手摺本体の周壁の前後両側部分に形成された手摺本体の長手方向に長いピン挿通穴に手摺本体の長手方向に移動しうるように通されて手摺本体を直径方向に貫通しており、ばね受けが手摺本体内に設けられるとともに圧縮コイルばねが手摺本体内に配置されている、請求項6記載の先行手摺。
【請求項8】
長穴が係合部材に設けられた前後1対の支持部に形成されており、連結ピンが両支持部間に渡し止められている、請求項4または7記載の先行手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、くさび緊結式足場等の仮設足場において、隣り合う支柱間に架設して作業者が作業床から墜落するのを防止する手摺に関し、より詳細には、仮設足場の組立時に、上層の作業床の設置に先行して、下層の作業床から上層の手摺を設置する手摺先行工法のために用いられる先行手摺に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、建物の周囲に立設された仮設足場における建物と反対側(例えば図1の向かって手間側)を「前」、同仮設足場における建物側(例えば図1の向かって奥側)を「後」といい、また、「左右」は、前から見た場合の左右(例えば図1の左右)をいうものとする。
【背景技術】
【0003】
手摺先行工法による仮設足場に用いられる先行手摺として、本出願人は、先に、特許文献1に記載のものを提案した。
【0004】
特許文献1記載の先行手摺は、左右方向に間隔をおいて立てられた複数本の支柱を備えており、各支柱の左右各側部に複数のソケット金具が上下方向に所定間隔おきに設けられている仮設足場において、左右に隣り合う2本の支柱間に架設される先行手摺であって、左右方向にのびる水平な手摺本体と、上部が手摺本体の左右各端部に前後方向にのびる回動中心軸線の周りに回動自在に連結されているとともに、下部に、前記2本の支柱の左右に対向する側部における所定高さ位置に設けられたソケット金具に挿入される挿入部を有している左右2つの係合部材と、一端部が、左右各係合部材における手摺本体への連結部と挿入部との間の部分に、前後方向にのびる回動中心軸線の回りに回動自在に連結されているとともに、他端部に、前記2本の支柱における係合部材の挿入部が挿入されるソケット金具よりも下方の所定高さ位置に着脱自在に取り付けられる取付部を有しており、かつ前記2本の支柱間に互いに交差するように斜めに架設される2本のブレースとを備えている先行手摺であって、前記先行手摺が、左右2つの係合部材の挿入部が手摺本体と直角をなす設置形態と、左右2つの係合部材が手摺本体の延長方向にのびるように回動させられるとともに、2本のブレースが手摺本体に沿うように回動させられる折り畳み形態を取りうるようになっている。
【0005】
特許文献1に記載された先行手摺のより具体的な第1の形態は、手摺本体の左右各端部および左右各係合部材の上端部のうちいずれか一方に、前後方向にのびる連結ピンが設けられているとともに、同他方に、連結ピンが挿通されるピン挿通穴を対応箇所に有する前後1対の連結壁部が設けられており、ピン挿通穴は、所定形状の長穴よりなるものであって、その長さ方向に沿って連結ピンが移動可能となされており、前記先行手摺が、左右2つの係合部材の挿入部が手摺本体と直角をなす設置形態にあるときに、連結ピンがピン挿通穴の両端部のうちの一方の端部に位置させられると、手摺本体の上下方向および左右方向の移動が規制され、同じく連結ピンがピン挿通穴の他方の端部に位置させられると、左右各係合部材が手摺本体の延長方向にのびるように回動可能となされており、手摺本体の左右各端部および左右各係合部材の上端部に、連結ピンがピン挿通穴の前記一方の端部に位置させられた時に互いに係り合わせられて左右各係合部材の左右方向外方または左右方向内方への回動を規制しうるが、連結ピンがピン挿通穴の前記他方の端部に位置させられた時に係り合わせが外れて左右各係合部材の前記方向への回動を許容しうる係合部が設けられているものである。。
【0006】
また、特許文献1に記載された先行手摺のより具体的な第2の形態は、手摺本体の左右各端面に平面より見て左右方向外方に開口したコ字形の保持金具の中央壁部が固着され、左右各係合部材の上部が、左右方向内方に向かって斜め上方にのびかつ先端部分が保持金具の内部に挿入されて保持金具の前後壁部の裏面に沿いうる前後1対の連結壁部を有するものとなされ、左右各係合部材における両連結壁部の先端部分が、保持金具の前後壁部に、これらを貫通する連結ピンによって取り付けられており、左右各係合部材における両連結壁部の先端部分に、前記先行手摺が、左右2つの係合部材の挿入部が手摺本体と直角をなす設置形態にあるときに、保持金具の中央壁部の外表面よりなる係合面に係り合わせられて、左右各係合部材の左右方向内方への回動を規制しうる係合縁が、係合面と向かい合うように形成されており、左右各係合部材における両連結壁部の先端部分および保持金具の前後壁部に、前記先行手摺が前記設置形態にあるときに、互いに合致して重なるピン挿通穴が形成され、左右各係合部材の前連結壁部の先端部分および保持金具の前壁部に形成されたピン挿通穴に、前連結ピンがまたがって挿通され、左右各係合部材の後連結壁部の先端部分および保持金具の後壁部に形成されたピン挿通穴に、後連結ピンがまたがって挿通されているとともに、前連結ピンと後連結ピンとの間にこれらを互いに離れる方向に付勢するバネが介在されており、前後各連結ピンの前後方向外端部を押さえながらまたは押さえることなく、前記相対位置にある左右各係合部材に対して左右方向外向きの外力を加えることにより、左右各係合部材が手摺本体の延長方向にのびるように回動させられるようになっているものである。
【0007】
特許文献1記載の第1および第2形態の先行手摺によれば、コンパクトに折り畳んだ状態で保管や運搬を行うことができるので、保管等に必要なスペースが小さくなり、また、運搬性や作業性も向上する。また、折り畳み形態において、各ブレースの先端部は、手摺本体の両端から大きく突出しないため、保管や運搬等の際に外力によって曲がったり破損したりするおそれがない。
【0008】
さらに、前記第1の形態の先行手摺の場合、前記設置形態にあるときに、連結ピンがピン挿通穴の両端部のうちの一方の端部に位置させられると、手摺本体の上下方向および左右方向の移動が規制され、前記第2の形態の先行手摺の場合、前記設置形態にあるときに、各係合部材における両連結壁部の係合縁と保持金具の係合面とが係り合わせられて、各係合部材の左右方向内方への回動が規制されるので、2本の支柱間に水平に架設された手摺本体を作業者が掴んだ場合等でも手摺本体が不用意に動くことがなく、安心感が得られ、安全性も高められる。しかも、先行手摺の前記設置形態において、前記第1の形態の先行手摺の場合には、連結ピンをピン挿通穴の前記他方の端部に位置させることによって、左右各係合部材が手摺本体の延長方向にのびるように回動可能となされるので、折り畳み形態に容易に移行させることができ、組立・解体時の作業性が向上する。また、先行手摺の前記設置形態において、前記第2の形態の先行手摺の場合には、前後各連結ピンの前後方向外端部を押さえながらまたは押さえることなく、前記相対位置にある左右各連結リンクに対して左右方向外向きの外力を加えることにより、左右各係合部材が手摺本体の延長方向にのびるように回動可能となされるので、折り畳み形態に容易に移行させることができ、組立・解体時の作業性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6386205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1記載の第1の形態の先行手摺の場合、前記設置形態において、連結ピンがピン挿通穴の前記一方の端部に位置させられることによって、係合部の働きにより左右各係合部材の左右方向外方および左右方向内方のうちのいずれか一方のみへの回動が規制されるが、同じく他方への回動は規制されないので、両係合部材の挿入部を2つの支柱のソケット金具に同時に挿入する作業が困難である。また、上記特許文献1記載の第2の形態の先行手摺の場合、前記設置形態において、各係合部材における両連結壁部の係合縁と保持金具の係合面とが係り合わせられることによって、各係合部材の左右方向内方への回動が規制されるが、同じく他方への回動は規制されないので、両係合部材の挿入部を2つの支柱のソケット金具に同時に挿入する作業が困難である。したがって、いずれの形態の先行手摺においても、一方の係合部材の挿入部を一方の支柱のソケット金具に挿入した後に他方の係合部材の挿入部を他方の支柱のソケット金具に挿入する必要があり、先行手摺を2つの支柱間に架設する際の作業が面倒になる。
【0011】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、特許文献1記載の先行手摺に比べて、2つの支柱間に架設する際の作業を容易に行うことができる先行手摺を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0013】
1)左右方向に間隔をおいて立てられた複数本の支柱を備えており、各支柱の左右各側部に複数のソケット金具が上下方向に所定間隔おきに設けられている仮設足場において、左右に隣り合う2本の支柱間に架設される先行手摺であって、
左右方向にのびる水平な手摺本体と、
上部が手摺本体の左右各端部に前後方向にのびる回動中心軸線の周りに回動自在に連結されているとともに、下部に、前記2本の支柱の左右に対向する側部における所定高さ位置に設けられたソケット金具に挿入される挿入部を有している左右2つの係合部材と、
一端部が、左右各係合部材における手摺本体への連結部と挿入部との間の部分に、前後方向にのびる回動中心軸線の回りに回動自在に連結されているとともに、他端部に、前記2本の支柱における係合部材の挿入部が挿入されるソケット金具よりも下方の所定高さ位置に着脱自在に取り付けられる取付部を有しており、かつ前記2本の支柱間に互いに交差するように斜めに架設される2本のブレースとを備えている先行手摺であって、
前記先行手摺が、左右2つの係合部材の挿入部が手摺本体と直角をなす設置形態と、左右2つの係合部材が手摺本体の延長方向にのびるように回動させられるとともに、2本のブレースが手摺本体に沿うように回動させられる折り畳み形態を取りうるようになっている先行手摺において、
係合部材の上部に、前方から見て係合部材の回動中心軸線を中心とする円弧状の長穴が、前記回動中心軸線よりも手摺本体の長手方向中央部側に形成され、手摺本体に、前後方向に延びるとともに長穴に挿通されて当該長穴の長手方向に移動しうる位置決めピンが設けられ、係合部材の長穴の対向する2つの円弧状縁のうちのいずれか一方に、位置決めピンが嵌まる位置決め用切り欠きが形成され、手摺本体に、位置決めピンが位置決め用切り欠き内に嵌まった状態において、位置決めピンを位置決め用切り欠きの奥側に付勢する付勢手段が設けられており、係合部材の挿入部と手摺本体とが直角をなした前記設置形態で位置決めピンが位置決め用切り欠き内に嵌まるようになっている、先行手摺。
【0014】
2)左右2つの係合部材が手摺本体の延長方向にのびるように回動させられるとともに、2本のブレースが手摺本体に沿うように回動させられる折り畳み形態を取った状態で、位置決めピンが長穴の一端に位置し、係合部材の挿入部と手摺本体とが鋭角をなす状態で位置決めピンが長穴の他端に位置するようになっている、上記1)記載の先行手摺。
【0015】
3)係合部材が、前後方向に延びるとともに手摺本体に形成された連結ピン挿通穴に通された連結ピンにより手摺本体に回動自在に取り付けられており、長穴が、係合部材における連結ピンよりも手摺本体の長手方向中央部側に位置する部分に上下方向に一定の長さを有するように形成され、位置決めピンが、連結ピンよりも手摺本体の長手方向中央部側において、手摺本体の長手方向に移動しないように設けられ、位置決め用切り欠きが長穴における手摺本体の長手方向中央部側の円弧状縁に形成され、付勢手段が、連結ピンと位置決めピンとの間に配置された圧縮コイルばねからなる、上記1)記載の先行手摺。
【0016】
4)手摺本体が管状体からなり、連結ピンが手摺本体の周壁の前後両側部分に形成された連結ピン挿通穴に通されて手摺本体を直径方向に貫通し、位置決めピンが手摺本体の周壁の前後両側部分に形成されたピン挿通穴に通されて手摺本体を直径方向に貫通し、圧縮コイルばねが手摺本体内に配置されている、上記3)記載の先行手摺。
【0017】
5)連結ピンが通されている手摺本体の連結ピン挿通穴の上下方向の幅が、手摺本体における当該連結ピン挿通穴に近接した側の端部に向かって徐々に狭くなっている、上記3)記載の先行手摺。
【0018】
6)係合部材が、前後方向に延びるとともに手摺本体に形成された連結ピン挿通穴に通された連結ピンにより手摺本体に回動自在に取り付けられており、長穴が、係合部材における連結ピンよりも手摺本体の長手方向中央部側に突出した部分に上下方向に一定の長さを有するように形成され、位置決めピンが、連結ピンよりも手摺本体の長手方向中央部側において、手摺本体の長手方向に移動しうるように設けられており、位置決め用切り欠きが長穴における手摺本体の長手方向端部側の円弧状縁に形成され、付勢手段が、手摺本体に固定状に設けられたばね受けと位置決めピンとの間に配置された圧縮コイルばねとからなる、上記1)記載の先行手摺。
【0019】
7)手摺本体が管状体からなり、連結ピンが手摺本体の周壁の前後両側部分に形成された連結ピン挿通穴に通されて手摺本体を直径方向に貫通し、位置決めピンが手摺本体の周壁の前後両側部分に形成された手摺本体の長手方向に長いピン挿通穴に手摺本体の長手方向に移動しうるように通されて手摺本体を直径方向に貫通しており、ばね受けが手摺本体内に設けられるとともに圧縮コイルばねが手摺本体内に配置されている、上記6)記載の先行手摺。
【0020】
8)長穴が係合部材に設けられた前後1対の支持部に形成されており、連結ピンが両支持部間に渡し止められている、上記4)または7)記載の先行手摺。
【発明の効果】
【0021】
上記1)~8)の先行手摺によれば、係合部材の挿入部と手摺本体とが直角をなした設置形態で位置決めピンが位置決め用切り欠き内に嵌まるようになっており、両係合部材の長穴の位置決め用切り欠き内に嵌まっている位置決めピンは付勢手段によって位置決め用切り欠きの奥側に付勢されるので、両係合部材は、それぞれ挿入部が手摺本体に対して直角をなす正しい姿勢に確実に保持される。したがって、左右の係合部材の挿入部を同時かつ確実に左右の支柱のソケット金具に挿入することが可能になり、一方の係合部材の挿入部を一方の支柱のソケット金具に挿入した後に他方の係合部材の挿入部を他方の支柱のソケット金具に挿入する、特許文献1記載の先行手摺に比べて、2つの支柱間に架設する際の作業を容易に行うことができる。
【0022】
また、位置決めピンに付勢手段の付勢力よりも大きい位置決め用切り欠きから脱出する方向の力が加わるように、係合部材を左右方向外方へ回動させると、位置決めピンは位置決め用切り欠きから脱出して長穴内を移動することによって、折り畳み形態に移行する。したがって、連結ピンを長穴の他端部に移動させる必要がある特許文献1記載の第1の形態の先行手摺に比べて、折り畳み形態への移行作業を容易に行うことができる。
【0023】
上記2)の先行手摺によれば、位置決めピンの長穴内の位置によって係合部材の姿勢を簡単に確認することができる。また、先行手摺を架設すべき仮設足場の態様によっては、一方の係合部材の挿入部を一方の支柱のソケット金具に挿入した後に、他方の係合部材の挿入部を他方の支柱のソケット金具に挿入することがあるが、この場合には、位置決めピンが長穴の他端に位置するように係合部材を回動することによって、係合部材の挿入部と手摺本体とが鋭角をなす状態にしておけば、容易に行うことができる。
【0024】
上記3)および6)の先行手摺によれば、位置決めピンが位置決め用切り欠き内に嵌まった状態において、位置決めピンを位置決め用切り欠きの奥側に付勢する付勢手段を、比較的簡単な構成で設けることができる。
【0025】
上記4)の先行手摺によれば、付勢手段の圧縮コイルばねを、確実に連結ピンと位置決めピンとの間に保持することができる。
【0026】
上記5)の先行手摺によれば、手摺本体の両端の位置決めピンが、両係合部材の長穴の位置決め用切り欠きにそれぞれ嵌まるとともに、位置決めピンが付勢手段によって位置決め用切り欠きの奥側に付勢されており、係合部材の挿入部と手摺本体とが直角をなしている状態において、連結ピンが連結ピン挿通穴の上下方向の幅が狭くなっている部分に強く押しつけられるので、係合部材のがたつきが防止される。
【0027】
上記7)の先行手摺によれば、付勢手段の圧縮コイルばねを、確実にばね受けと位置決めピンとの間に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の先行手摺を備えた仮設足場を示す部分正面図である。
図2】この発明の先行手摺の設置形態を示す係合部材の一部を切り欠いた部分拡大正面図である。
図3図2の先行手摺の設置形態を示す手摺本体を切り欠いた部分拡大正面図である。
図4図2の先行手摺の設置形態を示す左側面図である。
図5図2の先行手摺の折り畳み形態を示す一部を切り欠いた部分拡大正面図である。
図6図2の先行手摺の係合部材の挿入部が手摺本体に対して鋭角をなしている状態を示す一部を切り欠いた部分拡大正面図である。
図7図2の先行手摺の手摺本体の一部分を示す拡大正面図である。
図8図2の先行手摺の係合部材を示す拡大正面図である。
図9】この発明の先行手摺の他の実施形態を示す図2相当の図である。
図10図9の先行手摺を示す図3相当の図である。
図11図9の先行手摺の手摺本体の一部分を示す拡大正面図である。
図12図2の先行手摺の係合部材を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0030】
図1はこの発明の実施形態に係る先行手摺を架設した仮設足場を示し、図2図6はこの発明の実施形態に係る先行手摺を示す。また、図7はこの発明の実施形態に係る先行手摺の手摺本体を示し、図8は同じく係合部材を示す。
【0031】
図1において、仮設足場(1)には、所要の複数本の支柱(2)が、間隔をおいて前後2列にかつ列ごとに左右方向に間隔をおいて立てられている(図1では、前列の2本の支柱(2)のみを示している)。
【0032】
各支柱(2)の表面における前後左右それぞれの側部に、平面より見てコ字形の複数のソケット金具(21)が、上下方向に所定間隔おきに溶接固定されている。各支柱(21)において、前後左右のソケット金具(21)は同一の高さ位置に設けられている。
【0033】
前後に並んだ2つの支柱(2)の所定高さ位置において互いに向かい合う前後側部のソケット金具(21)に、横桟(図示略)の前後両端部に垂下状に設けられたくさび状のインサート金具(図示略)が上方から挿入されて係り止められ、それによって両支柱(2)と横桟とが連結されている。そして、左右に隣り合う2つの横桟に、踏板(図示略)の左右端部に設けられたフックが掛け止められ、それによって両横桟に踏板が渡し止められており、この踏板が仮設足場(1)の作業床(3)を構成している。
【0034】
そして、隣り合う2つの支柱(2)間における作業床(3)の上方領域に、この発明による先行手摺(4)が架設されている。
【0035】
なお、この発明による先行手摺(4)は、上記構造の仮設足場(1)に限らず、例えばソケット金具の種類や配置が異なる他のくさび緊結式足場等にも設置可能である。具体的には、例えば、各支柱に、略ドーナツ状のプレートの前後左右4箇所に係止部を挿入しうる垂直貫通穴があけられてなるプレートタイプのソケット金具(同プレートにおける垂直貫通穴を有する前後左右各部が、上記各ソケット金具(21)に相当)が、上下方向に所定間隔おきに取り付けられている仮設足場においても、この発明の先行手摺を設置することが可能である。
【0036】
図2図6に示すように、先行手摺(4)は、例えば横断面円形の鋼製管材等により形成された左右方向にのびる水平な手摺本体(5)と、上端部が、手摺本体(5)の左右各端部に前後方向に延びる横断面円形の連結ピン(6)によって前後方向にのびる回動中心軸線の周りに回動自在に連結されているとともに、下部に、前記2本の支柱(2)の左右に対向する側部における所定高さ位置(図1では最上位)に設けられたソケット金具(21)に挿入される挿入部(71)を有している左右2つの係合部材(7)と、一端部が、左右各係合部材(7)の長さ中間部における手摺本体(5)への連結部と挿入部(71)との間の部分に、前後方向にのびる回動中心軸線の回りに回動自在に連結されているとともに、他端部が、前記2本の支柱(2)における前記ソケット金具(21)よりも下方の所定高さ位置に着脱自在に取り付けられて2本の支柱(2)間に互いに交差するように斜めに架設される2本のブレース(8)とを備えている。
【0037】
先行手摺(4)は、左右2つの係合部材(7)の挿入部(71)が手摺本体(5)と直角をなす設置形態(図1図4参照)と、左右2つの係合部材(7)が手摺本体(5)の延長方向にのびるように回動させられるとともに、2本のブレース(8)が手摺本体(5)に沿うように回動させられる折り畳み形態(図5参照)と、係合部材(7)の挿入部(71)と手摺本体(5)とが鋭角をなす形態(図6参照)とを取りうるようになっている。
【0038】
図2図7に示すように、手摺本体(5)の左右各端部における周壁の前後両側部分に、それぞれ係合部材(7)を手摺本体(5)に回動自在に連結する連結ピン(6)を通す貫通状の連結ピン挿通穴(51)が形成されている。連結ピン挿通穴(51)の周縁は、手摺本体(5)の長手方向中央部側に形成され、かつ連結ピン(6)の半径よりも大きな曲率半径を有するとともに手摺本体(5)の長手方向中央部側に膨らんだ大円弧状部(52)と、手摺本体(5)における連結ピン挿通穴(51)に近接した端部側に形成され、かつ連結ピン(6)の半径よりも小さな曲率半径を有するとともに大円弧状部(52)とは反対側に膨らんだ小円弧状部(53)と、大円弧状部(52)の両端と小円弧状部(53)の両端とを結ぶ2つの直線部(54)とからなる(図7参照)。したがって、連結ピン挿通穴(51)の上下方向の幅は、手摺本体(5)の長手方向中央部側の端部が連結ピン(6)の外径よりも若干大きく、これと反対側(手摺本体(5)における当該連結ピン挿通穴(51)に近接した側)の端部が連結ピン(6)の外径よりも若干小さくなるように、手摺本体(5)の長手方向中央部側からこれと反対側に向かって徐々に狭くなっている。
【0039】
また、手摺本体(5)の周壁の左右各端部における連結ピン挿通穴(51)よりも手摺本体(5)の長手方向中央側の前後両側部分に、それぞれ円形のピン挿通穴(55)が形成されている(図7参照)。そして、前後方向に延びるとともに係合部材(7)の手摺本体(5)に対する回動位置を決める位置決めピン(9)が、両ピン挿通穴(55)に通されて手摺本体(5)を直径方向に貫通した状態で、手摺本体(5)の長手方向に移動しないように手摺本体(5)に取り付けられている。位置決めピン(9)の前後両端部の所要の長さ部分が、手摺本体(5)の周壁の外方に突出している。手摺本体(5)内における連結ピン(6)と位置決めピン(9)との間には、連結ピン(6)を手摺本体(5)における連結ピン挿通穴(51)の小円弧状部(53)側に付勢するとともに、位置決めピン(9)を手摺本体(5)の長手方向中央部側(図3の右側)に付勢する圧縮コイルばね(11)が配置されている。
【0040】
図2図6図8に示すように、係合部材(7)は、本体部(72)と、本体部(72)の上端に連なって一体に設けられた手摺本体(5)への取付部(73)とよりなる。本体部(72)は横断面略U字形で、前後1対のフランジ部(721)と、両フランジ部(721)の左右方向外側縁どうしを一体に連結するウェブ部(722)とよりなり、正面から見てくの字状になるように長手方向の中間部において屈曲されている。ウェブ部(722)における手摺本体(5)への連結部とは反対側の端部は所要の長さにわたって切除されており、ウェブ部(722)の当該切除部において、両フランジ部(721)が互いに接近する方向に曲げられることにより、本体部(72)の一端部に先細り部(723)が設けられている(図4参照)。そして、本体部(72)における中央の屈曲部よりも先細り部(723)側の部分が、支柱(2)のソケット金具(21)に挿入される挿入部(71)となっている。また、本体部(72)の長手方中央部の屈曲部において、前後両フランジ部(721)にそれぞれ手摺本体(5)の長手方向中央側(左右方向内方)に突出した突出部(724)が設けられている。
【0041】
係合部材(7)の取付部(73)は、本体部(72)の各フランジ部(721)の上端に連なって各フランジ部(721)の上部と直角をなすように前後方向外方に突出した前後2つの板状ベース部(731)と、各ベース部(731)の前後方向外側縁に連なって各ベース部(731)と直角をなすように上方突出状に設けられた板状の支持部(732)とよりなる。そして、前後方向に延びる連結ピン(6)が、手摺本体(5)に形成された連結ピン挿通穴(51)に通されるとともに、前後両端部が両支持部(732)に形成された円形貫通穴(734)に通された状態で支持部(732)に取り付けられており、連結ピン(6)によって係合部材(7)が手摺本体(5)に前後方向に延びる回動中心軸線の周りに回動自在となっている。貫通穴(734)の穴径は連結ピン(6)の外径よりも若干大きくなっている。連結ピン(6)の前後両端部はそれぞれ前後の支持部(732)よりも前後方向外方に突出しており、突出端部に貫通穴(734)からの抜けを防止する頭部(61)が設けられている(図4参照)。
【0042】
係合部材(7)の取付部(73)の両支持部(732)における連結ピン(6)よりも手摺本体(5)の長手方向中央部側の部分に、連結ピン(6)の中心軸線、すなわち係合部材(7)の回動中心軸線を中心とした前方から見て円弧状の長穴(12)が形成されている。長穴(12)は上下方向に一定の寸法を有している。そして、位置決めピン(9)の前後両端部における手摺本体(5)の周壁よりも外方に突出した部分が、長穴(12)内に長穴(12)の長手方向に移動しうるように挿通されている。位置決めピン(9)は、係合部材(7)の長穴(12)および手摺本体(5)の円形ピン挿通穴(55)から抜けないようになっている。たとえば、位置決めピン(9)の前後両端部は前後両支持部(732)よりも前後方向外側に突出しており、当該突出部に、位置決めピン(9)が係合部材(7)の長穴(12)および手摺本体(5)の円形ピン挿通穴(55)から抜けるのを防止する頭部(図示略)が設けられている。長穴(12)の対向する2つの円弧状縁(121)のうちのいずれか一方、ここでは手摺本体(5)の長手方向中央部側の円弧状縁(121)における長穴(12)の長手方向の中央部に、位置決めピン(9)が嵌まる位置決め用切り欠き(13)が形成されている。
【0043】
位置決めピン(9)は、先行手摺(4)の上述した設置形態において位置決め用切り欠き(13)内に嵌まるとともに、圧縮コイルばね(11)によって手摺本体(5)の長手方向中央部側、すなわち位置決め用切り欠き(13)の奥側に付勢される。また、位置決めピン(9)は、先行手摺(4)の上述した折り畳み形態において長穴(12)における係合部材(7)の回動中心を中心として反時計側の端部に位置し、係合部材(7)の挿入部(71)と手摺本体(5)とが鋭角をなす状態において長穴(12)における係合部材(7)の回動中心を中心として時計側の端部に位置する。
【0044】
2本のブレース(8)(筋交)は、例えば横断面円形の鋼製管材等よりなり、両支柱(2)間に互いに交差するように斜めに架設されている。各ブレース(8)の一端部には、前後方向に押しつぶされることにより圧潰部(81)が形成されており、圧潰部(81)が係合部材(7)の本体部(72)の両突出部(724)間に配置され、突出部(724)および圧潰部(81)を貫通した前後方向に延びる支持ピン(14)によって、前後方向に延びる水平軸線の周りに回動自在に枢着されている。各ブレース(8)の他端部、すなわち先端部には、両支柱(2)における前記ソケット金具(21)よりも下方の所定高さ位置に着脱自在に取り付けられる取付部(82)が設けられている(図1参照)。取付部(82)は、正面より見て左右方向外方に開口したコ字形をなしている。なお、取付部(82)は、上記構成のものには限定されず、その他、例えばクランプ等であってもよい。
【0045】
なお、図2図8には、手摺本体(5)の左側部分、左側の係合部材(7)、手摺本体(5)と左側の係合部材(7)との連結構造、および左側の係合部材(7)とブレース(8)の左端部との連結構造の詳細が示されているが、手摺本体(5)の右側部分、右側の係合部材(7)、手摺本体(5)と右側の係合部材(7)との連結構造、および右側の係合部材(7)とブレース(8)の右端部との連結構造は左右対称であるので、図示は省略する。
【0046】
図2および図3に示すように、係合部材(7)の挿入部(71)と手摺本体(5)とが直角をなした設置形態で、位置決めピン(9)が位置決め用切り欠き(13)内に嵌まるようになっている。両係合部材(7)の位置決め用切り欠き(13)内に嵌まっている位置決めピン(9)は、圧縮コイルばね(11)によって位置決め用切り欠き(13)の奥側に付勢されるので、位置決めピン(9)の位置決め用切り欠き(13)からの脱出が阻止され、その結果両係合部材(7)はそれぞれ挿入部(71)が手摺本体(5)に対して直角をなす正しい姿勢に確実に保持される。したがって、左右の係合部材(7)の挿入部(71)を同時かつ確実に左右の支柱(2)のソケット金具(21)に挿入することが可能になる。
【0047】
また、圧縮コイルばね(11)の付勢力に抗して係合部材(7)を左右方向外側(図2および図3の時計方向)に回すと、位置決めピン(9)が位置決め用切り欠き(13)から脱出して長穴(12)内を図2および図3の反時計方向に相対的に移動可能となり、係合部材(7)の左右方向外側への回動が許容される。したがって、先行手摺(4)を保管・運搬する際には、図5に示すように、位置決めピン(9)を長穴(12)における係合部材(7)の回動中心を中心として反時計側の端部まで移動させて左右2つの係合部材(7)を手摺本体(5)の延長方向にのびるように回動させるとともに、2本のブレース(8)を手摺本体(5)に近接または当接して沿うように回動させて、折り畳み形態に移行させればよい。
【0048】
さらに、先行手摺(4)を架設すべき仮設足場の態様によっては、一方の係合部材(7)の挿入部(71)を一方の支柱(2)のソケット金具(21)に挿入した後に、他方の係合部材(7)の挿入部(71)を他方の支柱(2)のソケット金具(21)に挿入することがあるが、この場合には、図6に示すように、位置決めピン(9)を長穴(12)の他端(長穴(12)における係合部材(7)の回動中心を中心として時計側の端部)に位置するように係合部材(7)を回動することによって、各係合部材(7)の挿入部(71)と手摺本体(5)とが鋭角をなす状態にしておけば、容易に行うことができる。
【0049】
上記実施形態において、長穴(12)の位置決め用切り欠き(13)内に嵌まった位置決めピン(9)は、連結ピン(6)と位置決めピン(9)との間に配置された圧縮コイルばね(11)により位置決め用切り欠き(13)の奥側に付勢されている。しかしながら、これに限定されるものではなく、手摺本体(5)内における位置決めピン(9)よりも長手方向中央部(図3の右側)にばね取付部を固定状に設けておき、一端部がばね取付部に取り付けられるとともに、他端部が位置決めピン(9)に取り付けられた引張コイルばねにより、位置決め用切り欠き(13)内に嵌まった位置決めピン(9)を位置決め用切り欠き(13)の奥側に付勢するようにしてもよい。
【0050】
図9図12はこの発明の先行手摺の他の実施形態を示す。
【0051】
なお、図9図12において、図1図8に示すものと同一物および同一部分には同一符号を付す。
【0052】
図9図12において、先行手摺(4A)の手摺本体(5)の左右各端部における周壁の前後両側部分に、それぞれ係合部材(7A)を手摺本体(5)に回動自在に連結する連結ピン(6)を通す貫通状の円形連結ピン挿通穴(56)が形成されている。連結ピン挿通穴(56)の穴径は連結ピン(6)の外径よりも若干大きくなっている。前後方向に延びる連結ピン(6)は、手摺本体(5A)に形成された連結ピン挿通穴(56)に通されるとともに、前後両端部が係合部材(7A)の両支持部(732)に形成された円形貫通穴(734)に通された状態で支持部(732)に取り付けられており、連結ピン(6)によって係合部材(7A)が手摺本体(5)に前後方向に延びる回動中心軸線の周りに回動自在となっている。
【0053】
また、手摺本体(5A)の周壁の左右各端部における連結ピン挿通穴(56)よりも手摺本体(5A)の長手方向中央側の前後両側部分に、それぞれ手摺本体(5A)の長手方向に長い貫通状の長穴からなるピン挿通穴(57)が形成されている。そして、前後方向に延びるとともに係合部材(7A)の手摺本体(5A)に対する回動位置を決める位置決めピン(9)が、両ピン挿通穴(57)に通されて手摺本体(5A)を直径方向に貫通した状態で、ピン挿通穴(57)の長手方向に移動しうるように手摺本体(5A)に取り付けられている。位置決めピン(9)の前後両端部の所要の長さ部分が、手摺本体(5A)の周壁の外方に突出している。さらに、手摺本体(5A)内におけるピン挿通穴(57)よりも手摺本体(5A)の長手方向中央部側にはばね受け(58)が固定状に設けられており、位置決めピン(9)とばね受け(58)との間に、位置決めピン(9)を手摺本体(5A)の長手方向の端部側(図10の左側)に付勢する圧縮コイルばね(11)が配置されている。
【0054】
係合部材(7A)の取付部(73)の両支持部(732)における連結ピン(6)よりも手摺本体(5)の長手方向中央部側の部分に、連結ピン(6)の中心軸線、すなわち係合部材(7A)の回動中心軸線を中心とした前方から見て円弧状の長穴(15)が形成されている。長穴(15)は上下方向に一定の寸法を有している。そして、位置決めピン(9)の前後両端部における手摺本体(5A)の周壁よりも外方に突出した部分が、長穴(15)内に長穴(15)の長手方向に移動しうるように挿通されている。位置決めピン(9)は、係合部材(7A)の長穴(15)および手摺本体(5)のピン挿通穴(57)から抜けないようになっている。たとえば、位置決めピン(9)の前後両端部は前後両支持部(732)よりも前後方向外側に突出しており、当該突出部に、位置決めピン(9)が係合部材(7A)の長穴(15)および手摺本体(5A)のピン挿通穴(57)から抜けるのを防止する頭部(91)が設けられている。長穴(15)の対向する2つの円弧状縁(151)のうちの手摺本体(5A)の長手方向端部側の円弧状縁(151)における長穴(15)の長手方向の中央部に、位置決めピン(9)が嵌まる位置決め用切り欠き(16)が形成されている。また、長穴(15)における手摺本体(5A)の長手方向中央部側の円弧状縁(151)に、位置決めピン(9)の頭部(91)の少なくとも一部が長穴(15)内に嵌まること防止する凸部(17)が、手摺本体(5A)の長手方向端部側に突出するように設けられている。
【0055】
位置決めピン(9)は、係合部材(7A)の挿入部(71)と手摺本体(5A)とが直角をなす先行手摺(4A)の設置形態において位置決め用切り欠き(16)内に嵌まるとともに、圧縮コイルばね(11)によって手摺本体(5A)の長穴(15)に近接した端部側、すなわち位置決め用切り欠き(16)の奥側に付勢される。
【0056】
係合部材(7A)の挿入部(71)と手摺本体(5A)とが直角をなした設置形態で位置決めピン(9)が位置決め用切り欠き(16)内に嵌まるようになっている。両係合部材(7A)の長穴(15)の位置決め用切り欠き(16)内に嵌まっている位置決めピン(9)は、圧縮コイルばね(11)によって位置決め用切り欠き(16)の奥側に付勢されるので、位置決めピン(9)の位置決め用切り欠き(16)からの脱出が阻止され、その結果両係合部材(7A)はそれぞれ挿入部(71)が手摺本体(5A)に対して直角をなす正しい姿勢に確実に保持される。したがって、左右の係合部材(7A)の挿入部(71)を同時かつ確実に左右の支柱(2)のソケット金具(21)に挿入することが可能になる。
【0057】
また、圧縮コイルばね(11)の付勢力に抗して係合部材(7A)を左右方向外側(図9および図10の時計方向)に回すと、位置決めピン(9)が位置決め用切り欠き(16)から脱出して長穴(15)内を図9および図10の反時計方向に移動可能となり、係合部材(7A)の左右方向外側への回動が許容される。したがって、先行手摺(4)を保管・運搬する際には、位置決めピン(9)を長穴(15)における係合部材(7A)の回動中心を中心として反時計側の端部まで移動させて左右2つの係合部材(7A)を手摺本体(5A)の延長方向にのびるように回動させるとともに、2本のブレース(8)を手摺本体(5A)に近接または当接して沿うように回動させて、折り畳み形態に移行させればよい。
【0058】
さらに、先行手摺(4A)を架設すべき仮設足場(1)の態様によっては、一方の係合部材(7A)の挿入部(71)を一方の支柱(2)のソケット金具(21)に挿入した後に、他方の係合部材(7A)の挿入部(71)を他方の支柱(2)のソケット金具(21)に挿入することがあるが、この場合には、位置決めピン(9)が長穴(15)の他端(長穴(15)における係合部材(7A)の回動中心を中心として時計側の端部)に位置するように係合部材(7A)を回動することによって、各係合部材(7A)の挿入部(71)と手摺本体(5A)とが鋭角をなす状態にしておけば、容易に行うことができる。
【0059】
図9図12に示す上記他の実施形態において、長穴(15)の位置決め用切り欠き(16)内に嵌まった位置決めピン(9)は、位置決めピン(9)とばね受け(58)との間に配置された圧縮コイルばね(11)により位置決め用切り欠き(16)の奥側に付勢されている。しかしながら、これに限定されるものではなく、手摺本体(5)内における位置決めピン(9)よりも長手方向端部(図10の左側)にばね取付部を固定状に設けておき、一端部がばね取付部に取り付けられるとともに、他端部が位置決めピン(9)に取り付けられた引張コイルばねにより、位置決め用切り欠き(16)内に嵌まった位置決めピン(9)を位置決め用切り欠き(16)の奥側に付勢するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明は、手摺先行工法による組立・解体が行われる仮設足場において、作業床からの作業員の墜落事故を防止するため先行手摺として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0061】

(1):仮設足場、(2):支柱、(21):ソケット金具、(4)(4A):先行手摺、(5)(5A):手摺本体、(51)(56):連結ピン挿通穴、(55)(57):ピン挿通穴、(58):ばね受け、(6):連結ピン、(7)(7A):係合部材、(71):挿入部、(8):ブレース、(82):取付部、(9):位置決めピン、(12)(15):円弧状の長穴、(121)(151):円弧状縁、(11):圧縮コイルばね、(13)(16):位置決め用切り欠き。
【要約】
【課題】2つの支柱間に架設する際の作業を容易に行うことができる先行手摺をを提供する。
【解決手段】先行手摺4の係合部材7の上部に、前方から見て係合部材の回動中心軸線を中心とする円弧状の長穴12を、係合部材7の回動中心軸線よりも手摺本体5の長手方向中央部側に形成する。手摺本体5に、前後方向に延びるとともに長穴12に挿通されて当該長穴12の長手方向に移動しうる位置決めピン9を設ける。長穴12の一方の円弧状縁121に、位置決めピン9が嵌まる位置決め用切り欠き13を形成する。手摺本体5に、位置決め用切り欠き13内に嵌まった位置決めピン9を位置決め用切り欠き13の奥側に付勢する圧縮コイルばね11を設ける。係合部材7の挿入部71と手摺本体5とが直角をなした設置形態で位置決めピン9が位置決め用切り欠き13内に嵌まる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12