(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】EUV級基板、EUVフォトマスクブランク、EUVフォトマスクおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/38 20120101AFI20230615BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20230615BHJP
【FI】
G03F1/38
G03F1/24
(21)【出願番号】P 2023078842
(22)【出願日】2023-05-11
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】202211075952.0
(32)【優先日】2022-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523175476
【氏名又は名称】上海伝芯半導体有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI CHUANXIN SEMICONDUCTOR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】5F South, Bldg 1, Lane 2699 Jiangshan Rd, Lingang Special Area, China (Shanghai) Pilot Free Trade Zone, Shanghai 201306, China
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】季明華
(72)【発明者】
【氏名】董于虎
(72)【発明者】
【氏名】黄早紅
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-047014(JP,A)
【文献】特開2015-122480(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114815492(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張係数が1ppm/℃以下の石英基板であるブランクを提供するステップ;
前記ブランク上に、熱膨張係数が-10ppm/℃~0ppm/℃であり、且つ弾性率が前記ブランクの弾性率よりも小さい、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層を形成するステップ;
前記有機ポリマー材料層を亀裂誘起処理して、対応する亀裂を形成するステップ;
前記有機ポリマー材料層の表面に正の熱膨張係数を有する炭素材料をスピンコートして、対応する前記亀裂を填充し、且つ平坦な表面を有するスピンオンカーボン層を形成し、前記スピンオンカーボン層の上面は、表面欠陥サイズが10nm未満の平坦性に達し、さらに、EUV級基板を形成し、且つ、EUV級基板の表面の熱膨張係数が0.1ppm/℃以下になるように、前記スピンオンカーボン層と前記有機ポリマー材料層の熱膨張係数が互いに補償し合うステップ;
を含む、ことを特徴とするEUV級基板の製造方法。
【請求項2】
前記有機ポリマー材料層と前記ブランクとの弾性率の比が0.1~0.9である、ことを特徴とする請求項1に記載のEUV級基板の製造方法。
【請求項3】
前記有機ポリマー材料層が、アミド構造を有するポリイミド材料を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のEUV級基板の製造方法。
【請求項4】
前記ブランク上に負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層を形成するステップは、
前記ブランクの表面に所望の厚さになるまで有機ポリマー材料をスピンコートまたは蒸着するステップ;
前記有機ポリマー材料を硬化して、前記有機ポリマー材料層を形成するステップ;
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のEUV級基板の製造方法。
【請求項5】
前記有機ポリマー材料を硬化させるステップは、
真空または窒素または不活性ガスの雰囲気下で、温度を低下させながら、互いに異なる温度で前記有機ポリマー材料を複数回ベークして硬化させて、前記有機ポリマー材料層を形成するステップを含む、ことを特徴とする請求項4に記載のEUV級基板の製造方法。
【請求項6】
前記有機ポリマー材料層に亀裂誘起処理を行う上記ステップは、
前記有機ポリマー材料層を複数回ベークして、前記有機ポリマー材料層の内部に対応する亀裂が形成されるようにするステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のEUV級基板の製造方法。
【請求項7】
前記亀裂誘起処理における毎回ベーク時の温度範囲が100℃~250℃であり、ベーク時間が1時間~3時間である、ことを特徴とする請求項6に記載のEUV級基板の製造方法。
【請求項8】
前記有機ポリマー材料層の厚さが20nm~100nmであり、および/または、前記亀裂のサイズが2nm~50nmである、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のEUV級基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のEUV級基板の製造方法によって、EUV級基板を形成するステップ;
前記EUV級基板のスピンオンカーボン層上に反射膜スタック層および吸収体層を順次形成して、EUVフォトマスクブランクを形成するステップ;を含む、
ことを特徴とするEUVフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載のEUV級基板の製造方法によって、EUV級基板を形成するステップ;
前記EUV級基板のスピンオンカーボン層上に反射膜スタック層および吸収体層を順次形成して、EUVフォトマスクブランクを形成するステップ;を含む、
ことを特徴とするEUVフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項11】
前記スピンオンカーボン層に前記反射膜スタック層を形成した後、前記吸収体層を形成する前に、前記反射膜スタック層にカバー層を形成するステップをさらに含み、
前記吸収体層を形成した後に、前記基板の、前記スピンオンカーボン層とは反対方向を向いた表面に裏面導電層を形成するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項9に記載のEUVフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項12】
前記スピンオンカーボン層に前記反射膜スタック層を形成した後、前記吸収体層を形成する前に、前記反射膜スタック層にカバー層を形成するステップをさらに含み、
前記吸収体層を形成した後に、前記基板の、前記スピンオンカーボン層とは反対方向を向いた表面に裏面導電層を形成するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項10に記載のEUVフォトマスクブランクの製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載のEUVフォトマスクブランクの製造方法によって、EUVフォトマスクブランクを形成するステップ;
前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層をエッチングして、前記吸収体層に第1パターンを形成するステップ;
前記第1パターンの外周の前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層および反射膜スタック層をエッチングし、且つ前記EUVフォトマスクブランクのスピンオンカーボン層の表面でエッチングを停止して、第2パターンを形成するステップ;を含む、ことを特徴とするEUVフォトマス
クの製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載のEUVフォトマスクブランクの製造方法によって、EUVフォトマスクブランクを形成するステップ;
前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層をエッチングして、前記吸収体層に第1パターンを形成するステップ;
前記第1パターンの外周の前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層および反射膜スタック層をエッチングし、且つ前記EUVフォトマスクブランクのスピンオンカーボン層の表面でエッチングを停止して、第2パターンを形成するステップ;を含む、ことを特徴とするEUVフォトマス
クの製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載のEUVフォトマスクブランクの製造方法によって、EUVフォトマスクブランクを形成するステップ;
前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層をエッチングして、前記吸収体層に第1パターンを形成するステップ;
前記第1パターンの外周の前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層および反射膜スタック層をエッチングし、且つ前記EUVフォトマスクブランクのスピンオンカーボン層の表面でエッチングを停止して、第2パターンを形成するステップ;を含む、ことを特徴とするEUVフォトマス
クの製造方法。
【請求項16】
請求項12に記載のEUVフォトマスクブランクの製造方法によって、EUVフォトマスクブランクを形成するステップ;
前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層をエッチングして、前記吸収体層に第1パターンを形成するステップ;
前記第1パターンの外周の前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層および反射膜スタック層をエッチングし、且つ前記EUVフォトマスクブランクのスピンオンカーボン層の表面でエッチングを停止して、第2パターンを形成するステップ;を含む、ことを特徴とするEUVフォトマス
クの製造方法。
【請求項17】
EUV級基板であって、
熱膨張係数が1ppm/℃以下の石英基板であるブランク;
前記ブランク上に形成され、熱膨張係数が-10ppm/℃~0ppm/℃であり、弾性率が前記ブランクの弾性率よりも小さく、対応する亀裂が形成されている、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層;
前記有機ポリマー材料層の表面に形成され、対応する亀裂を填充し除去可能なスピンオンカーボン層であって、前記スピンオンカーボン層の上面は、表面欠陥サイズが10nm未満の平坦性に達し、前記スピンオンカーボン層は正の熱膨張係数を有し、前記有機ポリマー材料層の熱膨張係数と互いに補償し合って、EUV級基板の表面の熱膨張係数が0.1ppm/℃以下になるようにする、スピンオンカーボン層;
を含む、ことを特徴とするEUV級基板。
【請求項18】
前記有機ポリマー材料層と前記ブランクとの弾性率の比が0.1~0.9である、ことを特徴とする請求項17に記載のEUV級基板。
【請求項19】
前記有機ポリマー材料層の材料は、アミド構造を有するポリイミド材料を含む、ことを特徴とする請求項17に記載のEUV級基板。
【請求項20】
前記有機ポリマー材料層の厚さが20nm~100nmであり、および/または、前記亀裂のサイズが2nm~50nmである、ことを特徴とする請求項17に記載のEUV級基板。
【請求項21】
請求項17~20の何れか一項に記載のEUV級基板;
前記EUV級基板のスピンオンカーボン層上に形成される反射膜スタック層;
前記反射膜スタック層に形成される吸収体層;
を含む、ことを特徴とするEUVフォトマスクブランク。
【請求項22】
前記反射膜スタック層の上層反射膜と前記吸収体層との間に形成されたカバー層;
前記EUV級基板の、前記反射膜スタック層とは反対方向を向いた表面に形成される裏面導電層;
を含む、ことを特徴とする請求項21に記載のEUVフォトマスクブランク。
【請求項23】
請求項21に記載のEUVフォトマスクブランクを
用いたEUVフォトマスクであって、
前記EUVフォトマスクは、第1パターンおよび第2パターンをさらに有し、
前記第1パターンは、前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層に形成され、
前記第2パターンは、前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層と反射膜スタック層を貫通して、前記EUVフォトマスクブランクのスピンオンカーボン層の表面を露出する、ことを特徴とするEUVフォトマスク。
【請求項24】
請求項22に記載のEUVフォトマスクブランクを
用いたEUVフォトマスクであって、
前記EUVフォトマスクは、第1パターンおよび第2パターンをさらに有し、
前記第1パターンは、前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層に形成され、
前記第2パターンは、前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層と反射膜スタック層を貫通して、前記EUVフォトマスクブランクのスピンオンカーボン層の表面を露出する、ことを特徴とするEUVフォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路製造技術分野に関し、特に、EUV級基板、EUVフォトマスクブランク、EUVフォトマスクおよびその製造方法、ならびに基板に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路製造産業の継続的な発展に伴い、極端紫外線リソグラフィ(extreme ultraviolet lithography、EUVLと略称)などの高度なフォトリソグラフィ技術が広く用いられている。そのうち、EUVフォトマスク(photo mask)は、フォトリソグラフィ工程において重要な構成要素である。フォトリソグラフィ工程は、通常、まず、ウェハの表面にフォトレジストなどのフォトレジスト層を塗布し、フォトレジスト層を乾燥した後、露光装置を用いてEUVフォトマスク上のパターンを特定の光源(例えば、極端紫外線EUV)でフォトレジスト層に露光し、次に、露光されたフォトレジスト層を現像液で現像し、現像されたフォトレジスト層のパターンをマスクとして用いて、ウェハに対してエッチングなどの工程を実施して、最終的にEUVフォトマスク上のパターンのウェハへの転写を完成する。
【0003】
UVリソグラフィは、反射光学系を用いるため、EUVリソグラフィの精度がEUVフォトマスクの熱膨張の影響を受けることになる。このことから、熱膨張が低く、平坦性の高いEUV級基板、EUVフォトマスクブランク、EUVフォトマスクを製造することが極めて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第102866580号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、EUVフォトマスクの欠陥を減少し、さらに、EUVリソグラフィの効果を向上させることができる、EUV級基板、EUVフォトマスクブランク、EUVフォトマスクおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、
熱膨張係数が1ppm/℃以下の石英基板であるブランクを提供するステップ;
前記ブランク上に、熱膨張係数が-10ppm/℃~0ppm/℃であり、且つ弾性率が前記ブランクの弾性率よりも小さい、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層を形成するステップ;
前記有機ポリマー材料層を亀裂誘起処理して、対応する亀裂を形成するステップ;
前記有機ポリマー材料層の表面に正の熱膨張係数を有する炭素材料をスピンコートして、対応する前記亀裂を填充し、且つ平坦な表面を有するスピンオンカーボン層を形成し、さらにEUV級基板を形成し、且つ、EUV級基板の表面の熱膨張係数が0.1ppm/℃以下になるように、前記スピンオンカーボン層と前記有機ポリマー材料層の熱膨張係数が互いに補償し合うステップ;
を含む、EUV級基板の製造方法を提供する。
【0007】
選択的に、前記有機ポリマー材料層と前記ブランクとの弾性率の比は0.1~0.9である。
【0008】
選択的に、前記有機ポリマー材料層は、アミド構造を有するポリイミド材料を含む。
【0009】
選択的に、前記ブランク上に負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層を形成するステップは、前記ブランクの表面に所望の厚さになるまで有機ポリマー材料をスピンコートまたは蒸着するステップ;
前記有機ポリマー材料を硬化して、前記有機ポリマー材料層を形成するステップ;
を含む。
【0010】
選択的に、前記有機ポリマー材料を硬化させるステップは、真空または窒素または不活性ガスの雰囲気下で、温度を低下させながら、互いに異なる温度で前記有機ポリマー材料を複数回ベークして硬化させて、前記有機ポリマー材料層を形成するステップを含む。
【0011】
選択的に、前記有機ポリマー材料層に亀裂誘起処理を行う上記ステップは、前記有機ポリマー材料層を複数回ベークして、前記有機ポリマー材料層の内部に対応する亀裂が形成されるようにするステップを含む。
【0012】
選択的に、前記亀裂誘起処理における毎回ベーク時の温度範囲は100℃~250℃であり、ベーク時間が1時間~3時間である。
【0013】
選択的に、前記有機ポリマー材料層の厚さは20nm~100nmであり、および/または、前記亀裂のサイズは2nm~50nmである。
【0014】
同じ発明概念に基づいて、本発明は、
本発明に記載のEUV級基板の製造方法によって、EUV級基板を形成するステップ;
前記EUV級基板のスピンオンカーボン層上に反射膜スタック層および吸収体層を順次形成して、EUVフォトマスクブランクを形成するステップ;
を含むEUVフォトマスクブランクの製造方法をさらに提供する。
【0015】
選択的に、前記EUVフォトマスクブランクの製造方法は、
前記スピンオンカーボン層に前記反射膜スタック層を形成した後、前記吸収体層を形成する前に、前記反射膜スタック層にカバー層を形成するステップをさらに含み、
前記吸収体層を形成した後に、前記基板の、前記スピンオンカーボン層とは反対方向を向いた表面に裏面導電層を形成するステップをさらに含む。
【0016】
同じ発明概念に基づいて、本発明は、
本発明に記載のEUVフォトマスクブランクの製造方法によって、EUVフォトマスクブランクを形成するステップ;
前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層をエッチングして、前記吸収体層に第1パターンを形成するステップ;
前記第1パターンの外周の前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層および反射膜スタック層をエッチングし、且つ前記EUVフォトマスクブランクのスピンオンカーボン層の表面でエッチングを停止して、第2パターンを形成するステップ;
を含む、EUVフォトマスクブランクの製造方法さらに提供する。
【0017】
同じ発明概念に基づいて、本発明は、EUV級基板であって、
熱膨張係数が1ppm/℃以下の石英基板であるブランク;
前記ブランク上に形成され、熱膨張係数が-10ppm/℃~0ppm/℃であり、弾性率が前記ブランクの弾性率よりも小さく、対応する亀裂が形成されている、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層;
前記有機ポリマー材料層の表面に形成され、対応する亀裂を填充し除去可能なスピンオンカーボン層であって、前記スピンオンカーボン層の上面は、表面欠陥サイズが10nm未満の平坦性に達し、前記スピンオンカーボン層は正の熱膨張係数を有し、前記有機ポリマー材料層の熱膨張係数と互いに補償し合って、EUV級基板の表面の熱膨張係数が0.1ppm/℃以下になるようにする、スピンオンカーボン層;
を含む、EUV級基板をさらに提供する。
【0018】
選択的に、前記有機ポリマー材料層と前記ブランクとの弾性率の比は0.1~0.9である。
【0019】
選択的に、前記有機ポリマー材料層の材料は、アミド構造を有するポリイミド材料を含む。
【0020】
選択的に、前記有機ポリマー材料層の厚さは20nm~100nmであり、および/または、前記亀裂のサイズは2nm~50nmである。
【0021】
同じ発明概念に基づいて、本発明は、
本発明に記載のEUV級基板;
前記EUV級基板のスピンオンカーボン層上に形成される反射膜スタック層;
前記反射膜スタック層に形成される吸収体層;
を含むEUVフォトマスクブランクをさらに提供する。
【0022】
選択的に、上記のEUVフォトマスクブランクは、前記反射膜スタック層の上層反射膜と前記吸収体層との間に形成されたカバー層;
前記EUV級基板の、前記反射膜スタック層とは反対方向を向いた表面に形成される裏面導電層;
をさらに含む。
【0023】
同じ発明概念に基づいて、本発明は、本発明に記載のEUVフォトマスクブランクを有し、且つ、前記EUVフォトマスクは、第1パターンおよび第2パターンをさらに有し、前記第1パターンは、前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層に形成され、前記第2パターンは、前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層と反射膜スタック層を貫通して、前記EUVフォトマスクブランクのスピンオンカーボン層の表面を露出する、EUVフォトマスクをさらに提供する。
【0024】
従来技術に比べて、本発明の技術的手段は、少なくとも以下の有益な効果を奏する。
1.DUV級以下の石英ガラス等のブランク上に負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層を形成し、また、有機ポリマー材料層に対して亀裂誘起処理をして、その中に対応する亀裂を形成し、さらに、有機ポリマー材料層にカーボン材料(正の熱膨張係数を有する)をスピンコートして亀裂を埋めることにより、欠陥を修復して、平坦で、且つ滑らかな表面を形成し(表面欠陥サイズが10nm未満の平坦性を実現)、且つ、有機ポリマー材料層とスピンオンカーボン層の熱膨張係数CTEが互いに補償し合って、EUV基板の表面が0に近い熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)を実現するようにする。
【0025】
2.スピンオンカーボン層は、再生「犠牲層」として、酸素プラズマアッシングによって除去されやすく、EUV級基板の表面品質を低下させることなく、EUV級基板を回収して、新しいEUVフォトマスクの製造に用いることができ、さらに、新しいEUVフォトマスクの製造コストを低減することができる。ここで、スピンオンカーボン層は、米国のBrewer Science社から商業的に供給されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来のEUVフォトマスクの断面構造を示す図である。
【
図2】EUVフォトマスクまたはEUVフォトマスクブランクにおける5つの典型的な欠陥の構造を示す図である。
【
図3】従来のEUVフォトマスクまたはEUVフォトマスクブランクにおける5つの典型的な欠陥の構造を示す図である。
【
図4】従来のEUVフォトマスクまたはEUVフォトマスクブランクにおける5つの典型的な欠陥の構造を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるEUV級基板の製造方法のフローチャートである。
【
図6】本発明の具体的な実施形態によるEUV級基板の製造方法における断面構造を示す図である。
【
図7】スピンオンカーボン層の填充能力および表面平坦性を示す図である。
【
図8】スピンオンカーボン層の填充能力および表面平坦性を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるEUVフォトマスクブランクの製造方法における断面構造を示す図である。
【
図10】本発明の具体的な実施形態によるEUVフォトマスクの製造方法のフローチャートである。
【
図11】本発明の具体的な実施形態によるEUVフォトマスクの製造方法における断面構造を示す図である。
【
図12】本発明の具体的な実施形態による基板回収方法における断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明では、本発明をより完全に理解するために、多数の特定の詳細について説明する。しかしながら、これらの特定の詳細の1つまたは複数がなくても本発明を実施することができることは、当業者にとって自明である。他の例において、本発明を不明瞭にすることを回避するために、本分野において公知の特徴は説明しない。なお、本発明は、様々な形態で実施されることができ、ここで開示される実施例に限定されるように解釈されてはならないことに理解されるべきである。それどころか、これらの例は、これら実施例を十分且つ完全に開示するために提供され、当業者に本発明の範囲を十分に受け止めてもらうために提供される。図面においては、明瞭さの目的で、層および領域の大きさおよび相対的大きさが誇張されていることがあり、図面において、同じ参照符号は同じ要素を示す。
【0028】
解すべきことは、要素または層が他の要素または層「...の上にある」と記載される場合、それは、直接他の要素または層の上にあり、それに隣接し、接続されまたは結合されてもよく、またはそれらは、中間の要素または層が存在してもよい。逆に、要素が他の要素または層に「直接...の上にある」と呼ばれる場合、中間の要素または層が存在しない。理解すべきことは、第一、第二、第三という用語を用いて各種の要素、部品、領域、層、部分および/または工程を記述することができるが、これらの要素、部品、領域、層、部分および/または工程は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、一つの要素、部品、領域、層、部分および/または工程を別の要素、部品、領域、層、部分および/または工程と区別する目的のみに用いられる。したがって、本発明の教示を逸脱することなく、以下に討論される第一の要素、部品、領域、層、部分および/または工程は、第二の要素、部品、領域、層、部分および/または工程と表してもよい。
【0029】
空間的関係用語、例えば「・・・の下にある」、「・・・の下方にある」、「下の」、「・・・の下部にある」、「・・・の上にある」、「上の」、「頂部に」、「底面に」、「正面」、「背面」などは、本明細書では、記述を容易にするために使用されてもよく、それによって、図に示された一つの要素または特徴と他の要素または特徴との関係を記述する。理解すべきことは、図に示される配向のほか、空間的関係用語は、使用および操作中のデバイスの異なる配向をさらに含むことを意図する。例えば、添付図面における要素が反転する場合、「他の要素の下にある」または「その下にある」または「その下方にある」または「底面で」または「その背面で」と記述される要素または特徴は、他の要素または特徴の「上」または「頂」または「正」にあると配向される。したがって、「・・・の下にある」、「・・・の下方にある」および「背面にある」という例示的な用語は、上と下の両方の配向を含んでもよい。デバイスは、追加的に配向(90度回転または他の配向)されてもよく、且つ本明細書で使用される空間的記述用語は、それに応じて解釈される。
【0030】
本明細書で使用される用語の目的は、具体的な実施例を記述するだけであり、且つ本発明を限定するものではない。ここで、単数形の「一」、「一つ」および「前記/該」が使用される場合において、文脈が他の方式を明示的に示していない限り、複数形を含むことも意図する。さらに理解すべきことは、用語「構成する」および/または「含む」は、該明細書で使用されるとき、前記特徴、整数、ステップ、操作、要素および/または部品の存在を決定するが、一つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、部品および/または組の存在または追加を排除するものではない。ここで使用されるとき、「および/または」という用語は、関連列挙項目のいずれかおよび全ての組み合わせを含む。
【0031】
背景技術に記載されたように、低コスト、低欠陥、高性能のEUVフォトマスクを製造することは極めて重要となっている。
【0032】
EUVフォトマスクは、EUVリソグラフィ(EUVL)システムで用いられる主な構成要素である。EUVリソグラフィは、約1nm~約100nmの波長、例えば13.6nmの波長を有する極端紫外線(EUV)領域の光(すなわち、露光用光)を用いるスキャナを用いる。光学材料は、EUV放射に対して不透明であるため、EUVフォトマスクは反射マスクである。通常、EUVフォトマスクのブランクは、順次積層された基板(ガラスや石英など)、反射膜スタック層(モリブデンMoとシリコンSiが交互に積層されてなり、反射構造とも呼ばれる)および吸収体層(単層膜または複数層膜であってもよい)を有し、反射膜スタック層は、露光用光を反射するために用いられ、吸収体層は、この露光用光を吸収するために用いられ、且つ集積回路の製造に必要な所定のパターン(すなわち回路パターン)にエッチングされる。吸収体層は、EUV反射率が低く、例えば3~5%未満である。
【0033】
ここで、
図1~
図4を参照すると、慣用のEUVフォトマスクブランク(EUVフォトマスクブランク、ブランクEUVフォトマスクとも呼ばれる)は、通常、基板100、反射膜スタック層101、カバー層102、および吸収体層103を含み、慣用のEUVフォトマスクブランクは、EUVフォトマスクブランクに第1パターン103aおよび第2パターン104を形成する。
【0034】
EUVリソグラフィ技術はEUVフォトマスクブランクおよびEUVフォトマスクの欠陥に非常に敏感であり、その欠陥が発生する原因として、基板100の表面欠陥(ピット、スリット、溝、突起、汚染粒子またはスクラッチなど)による欠陥がその一つであることが発明者によって見つけられた。具体的には、以下のことを含む。
a)基板100の表面自体に既に存在するサイズが比較的大きい(>10nmサイズ)ピット(pits)(またはスリット、スクラッチ)欠陥100aによって誘発される第1タイプの欠陥101aであって、
図2に示されるように、これら基板100上のピット欠陥100aは、化学的機械研磨(CMP)および洗浄などの工程によって基板100の表面に形成され、且つ、基板100から上方へまっすぐに上に堆積された反射膜スタック層101の各膜層に向かって誘導されて、第1タイプの欠陥101aが形成されること;
b)基板100の表面自体に既に存在するサイズが比較的大きい(>10nmサイズ)突起(bumps)欠陥または汚染粒子などによって誘発される第2タイプの欠陥101bであって、
図3に示されるように、これら基板100上の突起欠陥101bまたは汚染粒子などは化学的機械研磨(CMP)、洗浄などの工程によって基板100の表面に形成され、且つ、基板から上方へまっすぐに上に堆積された反射膜スタック層101の各膜層に向かって誘導され、また、上方へ誘導される過程で、応力、厚さの変化などの要因によって欠陥のサイズが大きくなる可能性があり、それにより、第2タイプの欠陥101bが形成されること;
c)基板100の表面自体に既に存在するサイズが比較的大きい(>10nmサイズ)欠陥100c(ピット、スリット、突起、汚染粒子またはスクラッチなど)によって誘発される第3タイプの欠陥101cであって、
図4に示されるように、基板100上の欠陥101cは、基板100から上方へまっすぐに上に堆積された反射膜スタック層101の各膜層に向かって誘導され、また、上方へ誘導される過程で、応力、厚さの変化などの要因により横方向へ位置ズレが発生して、第3タイプの欠陥101cが形成されること;
【0035】
これら基板表面上の上述した全ての欠陥は、EUVフォトマスクに欠陥を発生させ、さらに、このEUVフォトマスクを用いてEUVリソグラフィを行う最終効果に影響を与える。
【0036】
従来技術では、基板100に発生される欠陥を減少するために、一般に、表面が比較的平坦で、且つ滑らかな石英ガラスが選択される。なお、技術の発展に伴い、後続する過程で、基板100が熱膨張によりさらに欠陥を引き起こす問題を解決するために、ガラスの代わりに、シリコン、ガラスセラミックス(Zerodur)、超低膨張係数の石英ガラス(ULE、ゼロ膨張ガラスとも呼ばれる)などを採用して、基板100とする方案を提案した。
【0037】
しかしながら、従来技術における基板100は、用いられる材料に関わらず、その合成が難しく、処理費用が非常に高く、また、基板の化学的機械研磨(CMP)および洗浄などの工程によって発生された表面欠陥がEUVフォトマスクの性能に影響を与える。
【0038】
これに鑑みて、本発明は、熱膨張係数が0に近い処理面を有するEUV級基板を提供することができ、さらに、低コスト、低熱膨張、高平坦性のEUV級基板、EUVフォトマスクブランク、EUVフォトマスクを製造することができるEUV級基板、EUVフォトマスクブランク、EUVフォトマスクおよびその製造方法を提供する。
【0039】
以下、
図5~
図12および具体的な実施形態を結合して、本発明の技術的手段について詳しく説明する。
【0040】
図5を参照すると、本発明の一実施形態は、
S11:熱膨張係数が1ppm/℃以下の石英基板であるブランクを提供するステップ;
S12:前記ブランク上に、熱膨張係数が-10ppm/℃~0ppm/℃であり、弾性率が前記基板の弾性率よりも小さい負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層を形成するステップ;
S13:前記有機ポリマー材料層を亀裂誘起処理して、対応する亀裂を形成するステップ;
S14:前記有機ポリマー材料層の表面に正の熱膨張係数を有する炭素材料をスピンコートして、対応する前記亀裂を填充し、且つ平坦な表面を有するスピンオンカーボン層を形成し、さらに、EUV級基板を形成し、且つ前記スピンオンカーボン層と前記有機ポリマー材料層の熱膨張係数が互いに補償し合って、EUV級基板表面の熱膨張係数が0.1ppm/℃以下になるようにするステップ;
を含むEUV級基板の製造方法を提供する。
【0041】
図6を参照すると、ステップS11において、提供されるブランク200aは、DUV級以下の石英ガラス基板であってもよく、その材料は、合成石英ガラス材料であり、正の熱膨張係数が低く、対応する作業温度(例えば、DUV曝露温度またはEUV曝露温度)での熱膨張係数CTEは、例えば、1ppm/℃以下である。ここで、DUV級の石英ガラス基板は、193nm、248nmまたは365nmのDUVリソグラフィのブランクマスクブランクの標準基板であり、DUV範囲内で高い透過率を有してもよい(例えば、透過率が80%を超える)。
【0042】
続いて、
図6を参照すると、ステップS12において、まず、ブランク200aの上面(すなわち。作業面)を洗浄し、スピンコートまたはその他適切な堆積工程によって、ブランク200aの上面に負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料を堆積することができる。次に、有機ポリマー材料を硬化して、所望の有機ポリマー材料層200bを形成する。ここで、形成された前記有機ポリマー材料層200bの作業温度(例えば、EUV露光温度)での熱膨張係数は、例えば、-10ppm/℃~0ppm/℃であり、前記有機ポリマー材料層200bの弾性率は、前記ブランク200aの弾性率より小さいので、ステップS13で有機ポリマー材料層200bに亀裂を発生しやすくなり、最終的に、EUV級基板のCTEをゼロ近くにすることに役立つ。
【0043】
選択的に、前記有機ポリマー材料層200bと前記ブランク200aとの弾性率の比は0.1~0.9であり、これは、ステップS13で有機ポリマー材料層200bにさらに亀裂を発生しやすくする。
【0044】
ここで、形成された負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの被覆厚さは、必要に応じて合理的に設定してもよく、例えば、20nm~100nmであり、それにより、後続するステップS13で十分に必要な亀裂を形成することができ、また、形成された亀裂の大部分が有機ポリマー材料層200bを貫通できないようにすることが必要である。
【0045】
一例として、自動フィルムコータを用いてブランク200aの表面に有機ポリマー材料を均一にコーティングし、さらに、高温オーブンの中に入れて、圧力が10torr~200torrの真空または窒素または不活性ガスの雰囲気で、勾配プログラム降温により互いに異なる温度(例えば、それぞれ350℃、250℃、60℃)で負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料を複数回ベークして硬化し、最後に室温まで温度を下げて、固体状態の有機ポリマー材料層200bを形成する。
【0046】
選択的に、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bは、アミド構造を有するポリイミド材料を含み、例えば、ポリイミドフィルムまたはポリアミド-イミドフィルムであってもよい。
【0047】
本発明の他の実施形態において、有機ポリマー材料は、任意の適切な材料をさらに選択してもよく、例えば、有機ポリマー材料の分子式はR1-(C≡C)n-R2であり、nは2の整数倍であり、R1およびR2は、極性基または非極性基、無機基または有機基であってもよく、極性基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル化ヒドロキシ基、ウレタン基、尿素基、アミド基またはイミド基などのO、S、NまたはPを含む。
【0048】
続いて、
図6を参照すると、ステップS13において、有機ポリマー材料層200bに亀裂が発生するように、適切な温度で硬化された負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bに亀裂誘起処理を行って、所望の亀裂200cを形成する。
【0049】
一例として、本ステップにおいて、前記有機ポリマー材料層200bに亀裂誘起処理を行うステップは、前記有機ポリマー材料層200bを複数回ベークして、有機ポリマー材料層200bの内部に対応する亀裂を形成させるステップを含む。且つ、亀裂誘起処理を行う各ベーク温度は、いずれも有機ポリマー材料層200bの溶融温度よりも低い。
【0050】
ここで、ベークによって亀裂を誘発することができる原理としては、ブランク200aの弾性率が有機ポリマー材料層200bの弾性率の数倍であり(例えば、ブランク200aの石英ガラスの弾性率が有機ポリマー材料層200bにおけるポリイミドの7倍)、且つブランク200aの熱膨張係数は正であり、引張応力を発生し、有機ポリマー材料層200bの熱膨張係数は負であり、圧縮応力を発生し、ブランク200aと有機ポリマー材料層200bとの熱膨張表面応力が相反するので、硬化後の有機ポリマー材料層200bをベークするときに、室温からベーク温度まで、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bで不可逆的に亀裂200cが形成されることができる。
【0051】
一例として、本ステップにおいて、亀裂誘起処理を行う際の各ベークの温度範囲は100℃~250℃であり、ベーク時間は1時間~3時間である。具体的には、例えば、有機ポリマー材料層200bの溶融温度(例えば、400℃)よりも低いベーク温度(例えば、約100℃~250℃)で、有機ポリマー材料層200bを炉内で1時間~3時間ベークした後、ベーク温度を室温などの温度に冷却すると、有機ポリマー材料層200bに対応する亀裂200cが形成される。
【0052】
もちろん、本発明の他の実施形態では、その他任意の適切な方法を採用して、有機ポリマー材料層200bに機械的応力を加えたり、表面にスクラッチを入れるなどの亀裂誘起処理を実施して、対応する亀裂を形成してもよい。
【0053】
好ましくは、本ステップにおいて、有機ポリマー材料層200bでの亀裂200cは分布密度がほぼ均一で、且つ、亀裂200cの大きさは2nm~50nmである。
【0054】
なお、ブランク200aの上面から負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの上面まで、亀裂200cの形状および大きさは異なってもよく(
図6に示すように)、有機ポリマー材料層200bを貫通する亀裂200cもあれば、有機ポリマー材料層200bを貫通しない亀裂200cもあり、有機ポリマー材料層200bの上面に開口部を有する亀裂200cもあれば、有機ポリマー材料層200bの底面上に開口部を有する亀裂200cもある。
【0055】
図6を参照すると、ステップS14において、有機ポリマー材料層200bの表面にスピンコート工程によって正の熱膨張係数の炭素材料をスピンコートして、有機ポリマー材料層200bの上面の亀裂200cを填充するスピンオンカーボン層201を形成する。ここで、このスピンオンカーボン層201は、平坦で、且つ滑らかな上面を有し、このスピンオンカーボン層201の上面は、表面欠陥サイズが10nm未満の平坦性に達することができる。このようにして、EUV級基板が実現される。また、前記スピンオンカーボン層201は、正の熱膨張係数を有し、前記有機ポリマー材料層200bの熱膨張係数と互いに補償し合って、EUV級基板表面の熱膨張係数が0.1ppm/℃以下(例えば、0.01ppm/℃以下)になるようにする。
【0056】
スピンオンカーボン層201を形成する具体的な過程は、以下を含む。
まず、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの表面をウェットクリーンし、その後、スピンコート工程で、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの表面に炭素材料を所望の厚さになるまでスピンコートする。
次に、第1温度(例えば、100℃~200℃、例えば170℃)でスピンコートされた炭素材料をソフトベークした後、第2温度(例えば、250℃~500℃)でスピンコートされた炭素材料をハードベークし、第2温度は第1温度よりも高く、それにより、スピンオンカーボン層201が形成される。ここで、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの表面にスピンコートされた炭素材料は、第1温度で熱を受けて架橋反応を開始して、その中の炭素主鎖ポリマーを部分的に架橋し、また、スピンコートされた炭素材料がある程度還流されるように保持して、より平坦な表面を形成するようにする。
さらに、スピンコートされた炭素材料は第2温度で熱を受けて、より激烈な架橋反応を行うことにより、その中の炭素主鎖ポリマーをさらに架橋し、スピンコートされた炭素材料の還流が減少して、最終的に固体のスピンオンカーボン層201が形成される。
【0057】
一例として、このスピンコートされた炭素材料(米国Brewer Science社等を含めて商品化されている)は、液体状態のスピンコート炭素合成物であり、溶媒、炭素主鎖ポリマーおよび架橋剤を含み、炭素主鎖ポリマーは、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ポリヒドロキシスチレン、ポリアクリレートまたはポリメチルメタクリレートなどのうちの少なくとも1つを含み、
架橋剤は、A-(OR)x、A-(NR)x、A-(OH)x、A-(C=C)xおよびA-(C≡C)x、の群の少なくとも一つを含み、
Aは、100~20000の範囲の分子量を有する単一分子、ポリマーまたは第2ポリマーであり、
Rは、炭化水素基、シクロアルキル基、シクロアルキルエポキシ基またはC3-C15ヘテロシクリル基であり;
ORは、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、カーボネート基、アルキルカーボネート基、アルキルカルボキシレート基、トシレート基またはメシレート基であり;
NRは、アルキルアミド基またはアルキルアミノ基であり;
xは、2~1000の範囲またはC3-C15ヘテロシクリル基であり;
ORは、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、カーボネート基、アルキルカーボネート基、アルキルカルボキシレート基、トシレート基またはメシレート基であり、
NRは、アルキルアミド基またはアルキルアミノ基であり、xの範囲は2~1000である。
炭素主鎖ポリマーおよび架橋剤は溶媒に均一に溶解されて、有機ポリマー基板200の表面にスピンコートされる。いくつかの実施形態において、溶媒は有機溶媒であり、例えば、ケトン、アルコール、ポリオール、エーテル、グリコールエーテル、環状エーテル、芳香族化合物、エステル、プロピオン酸エステル、乳酸エステル、乳酸エステル、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルキルアルコキシ基プロピオネート、環状ラクトン、環含有モノケトン化合物、アルキレンカーボネート、アルキルオキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル、乳酸エステル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、アルキレングリコールアルキルエーテルエステル、アルキレングリコールモノアルキルエステルなどの少なくとも一つを含む。
【0058】
ここで、形成されるスピンオンカーボン層201は、一方では、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの上面の亀裂200cなどの欠陥を填充して埋めるのに十分厚いので、十分に平坦な上面に向上させ、これらの欠陥が後で堆積される反射膜スタック層202および吸収体層204に欠陥を誘発することを防止することができる。他方では、十分に薄くて、且つ不透明であるので、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの表面を、より平坦で、且つ欠陥の少ない新しい基板に「リセット」し、同時に、EUV級基板表面の熱膨張係数が0に近くなるようにすることにより、コストがより低廉で、欠陥がより少なく、性能がより高いEUVフォトマスクブランク、およびEUVフォトマスクを製造することができるようにする。
【0059】
一例として、ステップS14において、スピンコートされる炭素材料の厚さが要件を満たすまで、1500pm/60sの速度で液体状態の炭素材料を負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの表面にスピンコートする。その後に、N2雰囲気で、100℃~200℃の温度で、スピンコートされた炭素材料を1分~5分間ソフトベークし、その後に、N2雰囲気で、200℃~400℃の温度でスピンコートされた炭素材料を5分~20分間ハードベークして、最終的に厚さ20nm以下(例えば10nmまたは10nm以下)の固体スピンオンカーボン層201を形成し、それにより、EUV級基板が得られる。
【0060】
ステップS14では、スピンコート法を用いてスピンオンカーボン層201を形成し、工程が単純で、コストが低く、且つ、CVD、ALDまたはスパッタリングなどの他の方法によって形成されたカーボン層に比べて、深いギャップに対してより強力な填充能力、局所的および全体的平面化能力を有し、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bに全体的に平坦な工程表面(その上面を10nm未満のスケールまで平坦化することができる)を形成することができる。例えば、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200b上の亀裂の線幅が異なり(
図7に示すように、間隔L1が非常に大きい亀裂もあれば、間隔L2が非常に小さい亀裂もある)、亀裂の間隔の大きさも異なる(
図7に示すように、間隔の線幅W1が非常に大きい亀裂もあれば、間隔の線幅W2が非常に小さい亀裂もある)が、スピンコート法でスピンオンカーボン層を形成しても亀裂を填充してその間隔などを埋めることができ、全体的に平坦な工程表面を形成することができる。別の例として、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの上面の亀裂は、アスペクト比の高いスリットであり、
図8に示されるように、スピンコート法でスピンオンカーボン層を形成した後、炭素原子のサイズが小さい特徴を利用して、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの亀裂の底部に充填することができ、且つ亀裂を填充した後、全体的に平坦な工程表面を形成する。
【0061】
また、スピンコート法を利用して同じ厚さの炭素層を形成することを前提として、CVD、ALD、またはスパッタリングなどの他の方法で形成された炭素層は、
図7に示される欠陥の場合、欠陥の散在および密集効果によってピットまたは突起の問題が発生し、最終的に形成された炭素層の上面の平坦性が不十分になる。
図8に示される欠陥の場合、スリットの底部を填充できなかったり、またはスリットに対する封止が速すぎて、空洞が形成される問題、または堆積によって上面にピットまたは突起の問題が発生して、最終的に形成された炭素層の上面の平坦性が不十分になる。すなわち、CVD、ALD、またはスパッタリングなどの他の方法で基板上に炭素層を形成すると、より高い性能を有するEUVフォトマスクブランクまたはEUVフォトマスクの、基板の上面の平坦化に対する要件を満たすことができず、本発明の技術的効果を達成することができない。
【0062】
さらに、スピンオンカーボン層201は、ブランク200aと同様の正のCTE(例えば、2ppm/℃)を有する。有機ポリマー材料層200bは、負のCTE(例えば、-1ppm/℃~-3ppm/℃)を有し、スピンオンカーボン層201と有機ポリマー材料層200bによって形成された複合層は、約100℃~200℃の動作温度範囲内で(亀裂200cが形成されるベーク温度に近いが、それより低い)CTEの相互補償を実現することができ、EUV級基板の上面がゼロに近いCTEを有するようにする。
【0063】
また、スピンオンカーボン層201が形成された後にも、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bが充填されていない亀裂200cが存在するので、有機ポリマー材料層200bが後続する工程(例えば、反射膜スタック層、吸収体層の堆積およびエッチングなどの工程)で応力遷移バッファ層として用いられるように、これら填充されていない亀裂200cを構造歪み点とすることができ、これにより、応力による欠陥の発生を避けることができ、後続する工程に良好な工程条件を提供することができるので、最終的に製造されるEUVフォトマスクブランクまたはEUVフォトマスクの欠陥を減少して、EUVフォトマスクの反射膜スタック層(つまり、ブラッグ反射器)の反射率を顕著に向上し、ハード欠陥と位相欠陥を排除して、反射型EUVフォトマスクの解像度およびコントラストを向上させる。
【0064】
図6を参照すると、本実施形態は、EUVフォトマスクブランクまたはEUVフォトマスクに用いられ、本実施形態のEUV級基板の製造方法によって形成されることができ、且つ順次積層されたブランク200a、亀裂200cを有し、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200b、および除去可能なスピンオンカーボン層201を含むEUV級基板をさらに提供する。
【0065】
前記ブランク200aは、熱膨張係数が1ppm/℃以下の石英基板である。前記有機ポリマー材料層200bの熱膨張係数は-10ppm/℃~0ppm/℃であり、前記有機ポリマー材料層200bの弾性率は前記基板の弾性率よりも小さい。一例として、前記有機ポリマー材料層200bと前記ブランク200aとの弾性率の比は、0.1~0.9である。前記有機ポリマー材料層200bは、アミド構造を有するポリイミド材料を含む。
【0066】
スピンオンカーボン層201の厚さは、20nm以下、例えば10nmである。前記スピンオンカーボン層201は、負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層200bの表面欠陥(亀裂を含む)を埋めて、平坦な工程表面を提供することができる。前記スピンオンカーボン層201と有機ポリマー材料層200bとを積層すると、前記スピンオンカーボン層201と前記有機ポリマー材料層200bの熱膨張係数が互いに補い合って、EUV級基板表面の熱膨張係数が0.1ppm/℃以下(例えば、0.01ppm/℃以下)になるようにする。
【0067】
選択的に、前記有機ポリマー材料層200bの厚さは20nm~100nmである。
【0068】
選択的に、前記亀裂200cの幅は2nm~50nmであり、亀裂200cの深さは2nm~50nmである。
【0069】
また、スピンオンカーボン層201は、除去可能な犠牲層としてもよく、EUV級基板の再加工、回収、およびリサイクルが必要な場合、酸素プラズマアッシング工程によって除去することができる。
【0070】
図9を参照すると、本実施形態は、以下のステップを含むEUVフォトマスクブランクの製造方法をさらに提供する。
まず、本発明によるEUV級基板の製造方法によって、EUV級基板を形成し、前記EUV級基板は、ブランク200a、亀裂200cを有する有機ポリマー材料層200b、およびスピンオンカーボン層201を含む。
【0071】
その後、前記EUV級基板のスピンオンカーボン層201上に反射膜スタック層202を形成する。
図9を参照すると、通常、反射膜スタック層202は、特定の波長の露光光に対して高い反射率を有することが要求され、例えば、13.6nmの極端紫外線に対する反射率は60%よりも高く、好ましくは、65%よりも高い。本実施形態において、反射膜スタック層202は、主に、第1反射膜(図示せず)と第2反射膜(図示せず)とが一対で交互に積層されてなり、計40~50対の積層である。ここで、第1反射膜と第2反射膜の膜厚は、それぞれ約3nm~4nmである。第1反射膜および第2反射膜の膜厚は、特定波長(例えば13.6nm)の極端紫外線に対して高反射率(例えば70%以上)を達成できる任意の適切な材料によって決められる。例えば、第1反射膜の材料はシリコン(Si)であり、第2反射膜の材料はモリブデン(Mo)である。別の例として、第1反射膜の材料はMoであり、第2反射膜の材料はベリリウム(Be)である。具体的には、スパッタリング(PVD)、化学気相堆積(Chemical Vapor Deposition、CVD)、プラズマCVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition、PECVD)、原子層堆積(Atomic Layer Deposition、ALD)、プラズマALD(PEALD)、IBD(Ion Beam Deposition、イオンビーム堆積)、JVD(Jet Vapor Deposition、ジェット気相堆積)などの任意の適切な堆積工程を利用して、第1反射膜と第2反射膜を交互に形成し、その後、所望の反射膜スタック層202を形成することができる。ここで、反射膜スタック層202の形成する過程で熱応力によって誘発される欠陥を最大限に減少するために、反射膜スタック層202における各膜層の堆積温度はできるだけ室温に近い温度、例えば、室温と100℃との間に制御する。
【0072】
次に、反射膜スタック層202の表面にカバー層203を形成する。具体的には、スパッタリング(PVD)、CVD、PECVD、ALD、PEALD、IBD、JVDなどの任意の適切な堆積工程によって、反射膜スタック層202の上面にカバー層203を形成する。カバー層203は、反射膜スタック層202がエッチング工程によって破壊されることを防止する。その材料は、ルテニウム(Ru)、ルテニウム合金(例えば、RuB、RuSiまたはRuNb)または酸化ルテニウム(例えば、RuO2またはRuNbO)の少なくとも1つを含んでもよく、単層膜構造であってもよく、多層膜構造からなる構造であってもよい。カバー層203の厚さは、例えば、2nm~4nmである。本発明の他の実施形態において、反射膜スタック層202の上層膜がシリコンである場合、カバー層203の製造は省略してもよく、または、反射膜スタック層202を形成する時に、カバー層203として、さらにシリコン膜を堆積してもよい(すなわち、上層の第1反射膜)。
【0073】
その後、スパッタリング(PVD)、CVD、PECVD、ALD、PEALD、IBD、JVDなどの任意の適切な堆積工程によって、カバー層203の上面に吸収体層204を形成してもよい。ここで、吸収体層204は、単層膜構造であってもよく、多層膜を積層してなる複合構造であってもよい。その材料は、コバルト(Co)、テルル(Te)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、タンタル系材料、クロム系材料などの少なくとも一つを含む。吸収体層204の全体厚さは、例えば50nm~75nmであり、吸収体層204が多層膜を積層してなる複合構造である場合、ここでの単層膜の厚さは、例えば3nm~6nmである。ここで、反射膜スタック層202の形成過程で熱応力によって誘発される欠陥を最大限に減少するために、吸収体層204における各膜層の堆積温度はできるだけ室温に近い温度、例えば、室温と100℃との間に制御する。
【0074】
続いて、
図9を参照すると、選択的に、スパッタリング、蒸着、CVD、PECVD、ALD、PEALD、分子線エピタキシー、IBD、JVDなどの任意の適切な堆積工程によって、EUV級基板の、吸収体層204とは反対方向を向いた表面に裏面導電層206を堆積することができる。裏面導電層206の材料は、クロム、クロム系材料(例えば、窒化クロム(CrN)または酸窒化クロム(CrON))、タンタルまたはタンタル系材料(例えば、硼化タンタル(TaB)、酸化タンタル(TaO)、窒化タンタル(TaN)、タンタルホウ素酸化物(TaBO)またはタンタルホウ素窒化物(TaBN))の少なくとも1つの導電性材料を含んでもよい。裏面導電層206の厚さは、例えば、60nm~75nmである。
【0075】
以上によりEUVフォトマスクブランクの製造が完成される。
【0076】
なお、本実施形態において、裏面導電層206は吸収体層204の堆積後に形成されるが、本発明の技術的手段はこれに限定されず、本発明の他の実施形態において、裏面導電層206の堆積は、反射膜スタック層202の堆積前に実行されてもよく、反射膜スタック層202の堆積後、且つカバー層203の堆積前に実行されてもよく、カバー層203の堆積後、且つ吸収体層204の堆積前に実行されてもよい。
【0077】
本実施形態によるEUVフォトマスクブランクの製造方法は、本発明のEUV級基板に基づいて形成されるため、熱膨張が低く、欠陥が少ないという長所を有し、EUVリソグラフィ効果を向上させることができる。
【0078】
図9を参照されるように、本実施形態では、本実施形態のEUVフォトマスクブランクの製造方法によって製造されることが好ましいEUVフォトマスクブランクをさらに提供する。このEUVフォトマスクブランクは、順次積層された本発明によるEUV級基板(すなわち、順次積層されたブランク200a、亀裂200cを有する有機ポリマー材料層200b、およびスピンオンカーボン層201を含む)、反射膜スタック層202、および吸収体層204を含む。
【0079】
選択的に、反射膜スタック層202は、交互に積層された一対の第1反射膜と第2反射膜を含み、且つ、この第1反射膜と第2反射膜の積層数は30~60対である。
【0080】
選択的に、前記EUVフォトマスクブランクは、カバー層203、および裏面導電層206をさらに含む。カバー層203は、反射膜スタック層202の上層反射膜と吸収体層204との間に形成され、裏面導電層206は、有機ポリマー基板200の、スピンオンカーボン層201とは反対方向を向いた表面に形成される。
【0081】
なお、EUV級基板、反射膜スタック層202、吸収体層204、カバー層203、および裏面導電層206の材料は、上述した本発明のEUVフォトマスクブランクの製造方法に関する説明を参照することができる。詳細はここには繰り返さない。
【0082】
同一発明の思想に基づいて、
図10を参照すると、本実施形態は、
S21:本発明によるEUVフォトマスクブランクの製造方法によって、EUVフォトマスクブランクを形成するステップ;
S22:前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層をエッチングして、前記吸収体層に第1パターンを形成するステップ;
S23:前記第1パターンの外周の前記EUVフォトマスクブランクの吸収体層および反射膜スタック層をエッチングし、且つ前記EUVフォトマスクブランクのスピンオンカーボン層の表面でエッチングを停止して、第2パターンを形成するステップ;
を含むEUVフォトマスクの製造方法をさらに提供する。
【0083】
ここで、ステップS21のプロセスは、上述した本発明のEUVフォトマスクブランクの製造方法であり、ここでは繰り返さない。
【0084】
ステップS22では、まず、
図11に示すように、スパッタリング、CVD、PECVD、ALD、PEALD、IBD、JVDなどの任意の適切な堆積工程によって、吸収体層204の上面にハードマスク層205を形成する。ここで、ハードマスク層205の材料は、タンタル(Ta)、タンタル系材料(例えば、硼化タンタル(TaB)、酸化タンタル(TaO)、窒化タンタル(TaN)、タンタルホウ素酸化物(TaBO)またはタンタルホウ素窒化物(TaBN))、シリコン、シリコン系材料(例えば、窒化シリコン(SiN)または酸窒化シリコン(SiON))など)、ルテニウム、ルテニウム系材料(例えば、ホウ化ルテニウム(RuB))の少なくとも1つの材料で製造されてもよく、ハードマスク層の厚さは、例えば、4nm~20nmである。
【0085】
ここで、ハードマスク層205の堆積は、吸収体層204の堆積後、且つ裏面導電層206の堆積前に実行されてもよく、または吸収体層204の堆積後、且つ裏面導電層206の堆積後に実行されてもよい。
【0086】
ステップS22で、続いて
図11を参照すると、ハードマスク層205を堆積した後に、次のプロセスを実行する。
まず、第1フォトレジスト層207をコーティングし、第1フォトレジスト層207を露光、現像して、第1フォトレジスト層207をパターン化する。
【0087】
次に、パターン化された第1フォトレジスト層207をマスクとして、原子層エッチング、プラズマエッチングなどの任意の適切な工程によって、ハードマスク層205から吸収体層204の上面までエッチングして、第1フォトレジスト層207のパターンをハードマスク層205に転写して、パターン化されたハードマスク層205’を形成する。
【0088】
その後、プラズマアッシング(dry ashing)などのドライ剥離または適切なウェット剥離(wet stripping)工程によって、第1フォトレジスト層207を除去する。例えば、まず、酸素(O2)プラズマを用いて、第1フォトレジスト層207をドライアッシング(dry ashing)し、さらに、高温で各種有機酸と、無機硫酸およびH2O2を用いて第1フォトレジスト層207をウェット剥離(wet stripping)し、その後、イソプロピルアルコール(IPA)洗浄およびCO2洗浄を行って、第1フォトレジスト層207を除去する。
【0089】
次に、パターン化されたハードマスク層205’をマスクとして、原子層エッチングなどの適切なエッチング工程によって吸収体層204からカバー層203の上面または反射膜スタック層202の上面までエッチングして、吸収体層204に第1パターン204aを形成し、第1パターン204aは集積回路の製造に必要な回路および/またはデバイスのパターンである。
【0090】
図11を参照すると、ステップS23では、まず、パターン化されたハードマスク層205’およびEUVフォトマスクブランク上に第2フォトレジスト層208をコーティングし、また、第2フォトレジスト層208を露光および現像して、第2フォトレジスト層をパターン化する。パターン化された第2フォトレジスト層208は、EUVフォトマスクブランクの第1パターン204aの形成領域を保護することができ、第2パターンが形成される領域にEUVフォトマスクブランクを露出させ、この領域は、第1パターン204aの外周に位置する。
【0091】
その後、パターン化された第2フォトレジスト層208をマスクとして、原子層エッチングなどの適切なエッチング工程によって、ハードマスク層205’、吸収体層204、カバー層203、および反射膜スタック層202をエッチングし、エッチングはスピンオンカーボン層201の表面で停止して第2パターン209を形成し、これによってEUVフォトマスクが得られる。ここで、第2パターン209はEUVフォトマスクのベゼルである。
【0092】
その後、プラズマアッシングまたはドライ剥離または適切なウェット剥離工程を通じて第2フォトレジスト層208が除去される。さらに、ハードマスク層205’を除去することにより、第1パターン204aおよび第2パターン209を有するEUVフォトマスクが形成される。
【0093】
本実施形態によるEUVフォトマスクの製造方法は、本発明のEUVフォトマスクブランクに基づいて製造されるので、コストがさらに低く、欠陥がさらに少なく、さらに高性能のEUVフォトマスクを製造することができる。
【0094】
図11を参照すると、本実施形態は、本実施形態のEUVフォトマスクの製造方法によって形成され、本実施形態のEUVフォトマスクブランクを有するだけでなく、所望のパターンも有するEUVフォトマスクをさらに提供する。具体的には、
図11の最後の図に示されるように、前記EUVフォトマスクは、第1パターン204aおよび第2パターン209を有し、第1パターン204aは吸収体層204を貫通し、且つEUVフォトマスクブランクの反射膜スタック層202の上層反射膜の上方に位置し、第2パターン209は、EUVフォトマスクブランクの吸収体層204および反射膜スタック層202を貫通して、EUVフォトマスクブランクのスピンオンカーボン層201の上面を露出させる。第1パターン204aは所望の回路パターンであり、第2パターン209は回路外周の所望のベゼルパターンである。
【0095】
なお、本発明のEUVフォトマスクブランクおよびEUVフォトマスクの製造過程、ならびにEUVフォトマスクを用いてEUVリソグラフィを行う過程において、適切な周囲温度(例えば、100℃~200℃)で対応する操作を行うとき、操作中に、有機ポリマー材料層200bは、填充されていない亀裂200cの存在により応力遷移バッファ層として用いることができ、それにより、不要な変形および欠陥の発生を避け、対応する操作の効果を確保する。
【0096】
また、スピンオンカーボン層201の存在により、スピンオンカーボン層201を再生可能な「犠牲層」と見なしてもよく、さらに、O2プラズマアッシングによって除去することにより、基板の回収およびリサイクルを実現する。
【0097】
図12を参照すると、本発明のEUVフォトマスクの基板を回収する例として、本実施形態による基板の回収方法は、具体的には、まず、ウェットエッチング、プラズマエッチング、化学的機械研磨などの任意の工程を利用して、前記EUVフォトマスクの吸収体層204、カバー層203および反射膜スタック層202を順次除去して、前記EUVフォトマスクのスピンオンカーボン層201を露出させ、その後、プラズマアッシングにより前記スピンオンカーボン層201を除去して、前記EUVフォトマスクの有機ポリマー材料層200bの表面を露出させる。このようにして、EUVフォトマスクの基板が回収され、この基板は新しいEUVフォトマスクまたは他のデバイスの製造に用いられることができる。
【0098】
選択的に、本実施形態では、吸収体層204を除去する前、または反射膜スタック層202を除去した後、且つスピンオンカーボン層201を除去する前、またはスピンオンカーボン層201を除去した後に、ブランク200aのスピンオンカーボン層201とは反対方向を向いた表面上の背面導電層206も除去する。
【0099】
さらに、選択的に、上述したステップS13の方法を採用して、露出された有機ポリマー材料200bの表面に、正の熱膨張係数を有する炭素材料を再度スピンコートして、新しいスピンオンカーボン層を形成することにより、有機ポリマー材料の表面欠陥を修復することができ、それにより、再び本発明のEUVフォトマスクブランクおよびEUVフォトマスクに用いられるEUV級基板が得られる。
【0100】
明らかなように、本発明において、スピンオンカーボン層201は犠牲層として、その厚さが比較的薄く、プラズマアッシングによって容易に除去することができ、有機ポリマー材料層200bの表面損傷により、有機ポリマー材料層200bの表面平滑性および熱膨張係数などが低下するという問題が発生せず、EUVフォトマスクブランクおよびEUVフォトマスク内の基板の回収およびリサイクルに用いられることができるので、リサイクル費用が低く、且つ、古いEUVフォトマスクブランクおよびEUVフォトマスクから回収された基板を用いて新しいEUVフォトマスクブランクおよびEUVフォトマスクをさらに製造することができるので、新しいEUVフォトマスクブランクおよびEUVフォトマスクの製造コストをさらに低減することができる。
【0101】
上記説明は本発明の好ましい実施形態の説明に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。当業者が上記開示された内容に基づいて施した如何なる変更、および修正はいずれも本発明の技術的手段の範囲に属するとすべきである。
【要約】
【課題】本発明は、EUV級基板、EUVフォトマスクブランク、EUVフォトマスクおよびその製造方法を開示する。
【解決手段】ブランク上に負の熱膨張係数を有する有機ポリマー材料層を覆い、有機ポリマー材料層を亀裂誘起処理して、対応する亀裂を形成し、さらに、有機ポリマー材料層の亀裂の中および表面にスピンオンカーボン層を覆って、EUV級基板の表面の熱膨張係数が0.1ppm/℃以下になるようにする。それにより、コストが低く、性能が高く、且つ欠陥の少ない、EUV級基板、EUVフォトマスクブランクおよびEUVフォトマスクが得られる。
【選択図】
図6