(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】パンツタイプ使い捨て着用物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/496 20060101AFI20230615BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61F13/496 100
A61F13/49 410
A61F13/49 312A
(21)【出願番号】P 2018064482
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-02-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青地 晃平
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064224(JP,A)
【文献】特開2000-014697(JP,A)
【文献】特開2011-234847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃から後身頃にわたる一体的な外装体、又は前身頃及び後身頃に別々に設けられた外装体と、この外装体の幅方向中間部に取り付けられた、股間部の前後両側にわたる内装体と、前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシール部と、ウエスト開口及び左右一対の脚開口とを備えた、パンツタイプ使い捨て着用物品であって、
第1シート層及び通気性を有する第2シート層の間に弾性シートが介在され、前記第1シート層及び第2シート層が、幅方向及び前後方向に間隔を空けて配置された多数の融着による点状の接合部で接合された、弾性シート伸縮構造を備えており、
前記点状の接合部は、幅方向基準の形成ピッチが2.0~20.0mm、前後方向基準の長さが0.3~7.0mmの第1接合部の列と、前記第1接合部の列
の幅方向中間に形成され、前記第1接合部より小さい面積を有し、前記第1接合部の前後方向基準の相互の間隔より、前後方向基準の相互の間隔が長い第2接合部の列とを有し、
前記第1接合部の列と前記第2接合部の列とは幅方向に間隔をおいて前後方向に沿っており、
前記第1接合部の列と前記サイドシール部との間であって、かつ、前記サイドシール部と20mm以内の離間距離をもった位置において、前後方向に沿って、前記第1シート層及び第2シート層が融着接合している、切り裂き限界部を有し、
前記切り裂き限界部は、
(1)前記弾性シートの50%以上の前後方向長さにわたる長さをもって連続している切り裂き限界部、又は、
(2)前記弾性シートの50%以上の前後方向長さ範囲内において、前後方向に3mm以内の離間間隔を置いた複数の切り裂き限界部、
であり、
かつ、前記(2)の複数の切り裂き限界部であるとき、前記第1接合部の列の群における前記サイドシール部に最も近い第1接合部の列の前後方向の離間間隔の幅方向外方に延長した部分のそれぞれが、前記(2)の複数の切り裂き限界部と交差する関係にあり、
前記切り裂き限界部は、ウエスト開口縁部からの切り裂き開始の初期部分においては形成されておらず、脚開口側に偏在して形成されている、
前記弾性シートは、前記サイドシール部の幅方向外縁まで延在している、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記点状の接合部は、前記サイドシール部の幅方向外縁まで延在しているか、又はサイドシール部の内側までの範囲に形成されている請求項1記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性シートが第1シート層及び第2シート層で挟まれた伸縮構造を有するパンツタイプ使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の使い捨て着用物品においては、身体表面へのフィット性を向上するために、脚周りや胴周り等の適所に伸縮性を付与することが一般的である。伸縮性を付与するための手法としては、従来、糸ゴム等の細長状弾性部材をその長手方向に伸長した状態で取り付ける手法が広く採用されているが、ある程度の幅で伸縮性を付与したい場合には、糸ゴムを幅に間隔を置いて並べて配置した状態で固定する態様が採用されている。また、さらに面としてのフィット性に優れるものとして、弾性シートを伸縮性の付与方向に伸長した状態で取り付ける手法も本出願人のものも含めて提案されている。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この弾性フィルムによる伸縮構造(以下、弾性シート伸縮構造ともいう)は、伸縮領域が不織布からなる第1シート層と、不織布からなる第2シート層との間に弾性フィルムが積層されてなるとともに、弾性フィルムがそれらの表面に沿う伸縮方向に伸長された状態で、第1シート層及び第2シート層が、伸縮方向及びこれと直交する方向にそれぞれ間隔を空けて配列された多数の点状のシート接合部で、弾性フィルムを貫通する接合孔を通じて接合されてなるものである。
このような弾性シート伸縮構造は、自然長状態では、シート接合部間において弾性フィルムが収縮するので、シート接合部の間隔が狭くなり、第1シート層及び第2シート層におけるシート接合部間に伸縮方向と交差する方向に延びる収縮皺が形成される。
反対に伸長時には、シート接合部間において弾性フィルムが伸長するのに伴い、シート接合部の間隔及び第1シート層及び第2シート層における収縮皺が広がり、第1シート層及び第2シート層の完全展開状態まで弾性伸長が可能となる。この弾性シート伸縮構造は、面的なフィット性に優れるのはもちろん、第1シート層及び第2シート層と弾性フィルムとの面での接合が無く、かつ第1シート層及び第2シート層の接合も極めて少ないため非常に柔軟であり、また、弾性フィルムの接合孔が厚み方向の通気性向上にも寄与するという利点がある。
【0004】
他方、特許文献1に示されているように、前記伸縮構造はパンツタイプ使い捨て着用物品に好適に採用できる。
一般に、パンツタイプ使い捨て着用物品においては、廃棄時にサイドシール部を引き裂いて前身頃と後身頃とに分離することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5967736号公報
【文献】特開2015-204982号公報
【0006】
幅方向の伸縮部材として糸ゴムを幅方向に沿って配置したパンツタイプ使い捨て着用物品においては、廃棄時にサイドシール部を引き裂いて前身頃と後身頃とに分離することが容易である。
しかし、弾性シート、特に弾性フィルムを使用したパンツタイプ使い捨て着用物品においては、廃棄時にサイドシール部を引き裂き、前身頃と後身頃とに分離することが容易でない。
【0007】
通常、糸ゴムの場合よりより大きな引き裂き力を要するともに、サイドシール部に沿って前後方向に引き裂く時に、途中で横方向の引き裂きに転換されてしまい、前身頃と後身頃とに分離することが困難になる場合があることが知見された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる課題は、パンツタイプ使い捨て着用物品において、廃棄時にサイドシール部を引き裂き、前身頃と後身頃とに分離する際に、横方向の引き裂きに転換されることを防止し、サイドシール部に沿って前後方向に引き裂くことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明のパンツタイプ使い捨て着用物品の態様は、次のとおりである。
前身頃から後身頃にわたる一体的な外装体、又は前身頃及び後身頃に別々に設けられた外装体と、この外装体の幅方向中間部に取り付けられた、股間部の前後両側にわたる内装体と、前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシール部と、ウエスト開口及び左右一対の脚開口とを備えた、パンツタイプ使い捨て着用物品であって、
第1シート層及び通気性を有する第2シート層の間に弾性シートが介在され、前記第1シート層及び第2シート層が、幅方向及び前後方向に間隔を空けて配置された多数の融着による点状の接合部で接合された、弾性シート伸縮構造を備えており、
前記点状の接合部は、幅方向基準の形成ピッチが2.0~20.0mm、前後方向基準の長さが0.3~7.0mmの第1接合部の列と、前記第1接合部の列の幅方向中間に形成され、前記第1接合部より小さい面積を有し、前記第1接合部の前後方向基準の相互の間隔より、前後方向基準の相互の間隔が長い第2接合部の列とを有し、
前記第1接合部の列と前記第2接合部の列とは幅方向に間隔をおいて前後方向に沿っており、
前記第1接合部の列と前記サイドシール部との間であって、かつ、前記サイドシール部と20mm以内の離間距離をもった位置において、前後方向に沿って、前記第1シート層及び第2シート層が融着接合している、切り裂き限界部を有し、
前記切り裂き限界部は、
(1)前記弾性シートの50%以上の前後方向長さにわたる長さをもって連続している切り裂き限界部、又は、
(2)前記弾性シートの50%以上の前後方向長さ範囲内において、前後方向に3mm以内の離間間隔を置いた複数の切り裂き限界部、
であり、かつ、前記(2)の複数の切り裂き限界部であるとき、前記第1接合部の列の群における前記サイドシール部に最も近い第1接合部の列の前後方向の離間間隔の幅方向外方に延長した部分のそれぞれが、前記(2)の複数の切り裂き限界部と交差する関係にあり、
前記切り裂き限界部は、ウエスト開口縁部からの切り裂き開始の初期部分においては形成されておらず、脚開口側に偏在して形成されている、
前記弾性シートは、前記サイドシール部の幅方向外縁まで延在している。
【0010】
【0011】
前記点状の接合部は、前記サイドシール部の幅方向外縁まで延在しているか、又はサイドシール部の内側までの範囲に形成されている態様を含む。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、パンツタイプ使い捨て着用物品において、廃棄時にサイドシール部を引き裂き、前身頃と後身頃とに分離する際に、横方向の引き裂きに転換されることを防止し、サイドシール部に沿って前後方向に引き裂くことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。
【
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(外面側)である。
【
図3】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの要部のみ示す平面図である。
【
図4】(a)は
図1のC-C断面図、(b)は
図1のE-E断面図である。
【
図7】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつにおける伸縮領域の要部平面図(内面側)である。
【
図8】(a)は
図1のC-C線に対応する断面図、(b)は
図1のE-E線に対応する断面図である。
【
図9】特許文献1が開示する接合部配列を示す平面図及び断面図である。
【
図10】特許文献2が開示する接合部配列を示す平面図である。
【
図11】説明用参考例としての接合部配列を示す平面図である。
【
図12】本発明の接合部配列の第1実施例を示すもので(a)は平面図、(b)はB-B断面図である。
【
図13】本発明の接合部配列の第2実施例を示す平面図である。
【
図14】本発明の接合部配列の第3実施例を示す平面図である。
【
図15】本発明の接合部配列の第4実施例を示す平面図である。
【
図16】本発明の接合部配列の第5実施例を示す平面図である。
【
図17】本発明の接合部配列の第6実施例を示す平面図である。
【
図18】本発明の接合部配列の第7実施例を示す平面図である。
【
図19】本発明の接合部配列の第8実施例を示す平面図である。
【
図20】本発明の接合部配列の第9実施例を示す平面図である。
【
図21】本発明の接合部配列の第10実施例を示す平面図である。
【
図22】本発明の接合部配列の第11実施例を示す平面図である。
【
図24】本発明の接合部での接合形態例を示す断面図である。
【
図27】伸縮部材の製造用超音波シール装置の概略図である。
【
図28】胴周りに糸ゴムを使用するおむつにおけるサイドシール部での引き裂き態様を示す説明図である。
【
図29】胴周りに弾性シートを使用したおむつにおけるサイドシール部での引き裂き態様を示す部分説明図である。
【
図30】胴周りに弾性シートを使用したおむつにおけるサイドシール部での引き裂き態様を示す説明図である。
【
図31】本発明のパンツタイプ使い捨て着用物品例の部分正面図である。
【
図32】本発明のパンツタイプ使い捨て着用物品の他の例の部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。なお、断面図中の点模様部分はホットメルト接着剤等の接合手段を示している。
図1~
図6は、本発明のパンツタイプ使い捨ておむつの例示である。符号LD(縦方向)は前後方向を、WDは幅方向を示している。
このパンツタイプ使い捨ておむつ(以下、単におむつともいう。)は、前身頃F及び後身頃Bをなす外装体20と、この外装体20の内面に固定され一体化された内装体10とを有しており、内装体10は液透過性トップシート11と液不透過性シート12との間に吸収体13が介在されてなるものである。製造に際しては、外装体20の内面(上面)に対して内装体10の裏面がホットメルト接着剤などの接合手段によって接合された後に、内装体10及び外装体20が前身頃F及び後身頃Bの境界である前後方向LD(縦方向)の中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着又はホットメルト接着剤などによって接合されてサイドシール部21が形成されることによって、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されたパンツタイプ使い捨ておむつとなる。
【0015】
(内装体の構造例)
内装体10は、
図4~
図6に示すように、液透過性トップシート11と、ポリエチレン等からなる液不透過性シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、トップシート11を透過した排泄液を吸収保持するものである。内装体10の平面形状は特に限定されないが、
図1に示されるようにほぼ長方形とすることが一般的である。
【0016】
吸収体13の表側(肌側)を覆う液透過性トップシート11としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。液透過性トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性トップシート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏側まで延在している。
【0017】
吸収体13の裏側(非肌当接側)を覆う液不透過性シート12は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0018】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。
【0019】
吸収体13の形状は、股間部に前後両側よりも幅の狭い括れ部分13Nを有するほぼ砂時計状に形成されている。括れ部分13Nの寸法は適宜定めることができるが、括れ部分13Nの前後方向長さはおむつ全長の20~50%程度とすることができ、その最も狭い部分の幅は吸収体13の全幅の40~60%程度とすることができる。このような括れ部分13Nを有する場合において、内装体10の平面形状がほぼ長方形とされていると、内装体10における吸収体13の括れ部分13Nと対応する部分に、吸収体13を有しない無吸収体側部17が形成される。
【0020】
液不透過性シート12は、液透過性トップシート11とともに吸収体13の幅方向両側で裏側に折り返されている。この液不透過性シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0021】
内装体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザー90が形成されている。この立体ギャザー90は、
図5及び
図6に示されるように、内装体10の裏面の側部に固定された固定部91と、この固定部91から内装体10の側方を経て内装体10の表面の側部上まで延在する本体部92と、本体部92の前後端部が倒伏状態で内装体10の表面(図示形態ではトップシート11)の側部に固定されて形成された倒伏部分93と、この倒伏部分93間が非固定とされて形成された自由部分94とを有している。これらの各部は、不織布などのシートを折り返して二重シートとしたギャザーシート95により形成されている。ギャザーシート95は、内装体10の前後方向全体にわたり取り付けられており、倒伏部分93は無吸収体側部17よりも前側及び後側に設けられ、自由部分94は無吸収体側部17の前後両側に延在されている。また、二重のギャザーシート95間には、自由部分の先端部等に細長状ギャザー弾性部材96が配設されている。ギャザー弾性部材96は、製品状態において
図5に示すように、弾性収縮力により自由部分94を立ち上げるためのものである。
【0022】
図5及び
図6に示す形態では、倒伏非伸縮部分97以外ではギャザー弾性部材96の位置のホットメルト接着剤を介して、ギャザー弾性部材96がギャザーシート95に接着固定されるとともに、ギャザーシート95の対向面が接合されているものの、倒伏非伸縮部分97では、ギャザー弾性部材96の位置にホットメルト接着剤が無く、したがってギャザー弾性部材96とギャザーシート95とが接着されておらず、ギャザー弾性部材96を有する位置でギャザーシート95の対向面が接合されていないものである。
【0023】
図5及び
図6に示される立体ギャザー90は、本体部92が折り返されていない形態である。
【0024】
ギャザー弾性部材96としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150~350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、ギャザー弾性部材96としては、図示形態のような糸状の他、ある程度の幅を有するテープ状のものを用いることもできる。
【0025】
前述のギャザーシート95を構成する素材繊維も液透過性トップシート11と同様に、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザーシート95については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロライド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0026】
図3~
図6に示すように、内装体10はその裏面が、内外固定領域10B(斜線領域)において、外装体20の内面に対してホットメルト接着剤等により接合される。この内外固定領域10Bは、適宜定めることができ、内装体10の幅方向WDのほぼ全体とすることもできるが、幅方向両端部は外装体20に固定しないことが好ましい。
【0027】
(外装体の構造例)
外装体20は吸収体13の側縁より外方に延在されている。外装体20は図示形態のように股間部において外装体20の側縁が内装体10の側縁より幅方向中央側に位置していても、また幅方向外側に位置していても良い。また、外装体20は、サイドシール部21と対応する前後方向範囲である胴周り部Tと、前身頃Fの胴周り部T及び後身頃Bの胴周り部Tの間の前後方向範囲である中間部Lとを有する。
【0028】
そして、図示形態の外装体20では、その中間部Lの前後方向中間を除いて、
図2及び
図4~
図6に示されるように、第1シート層20A及び第2シート層20Bの間に、弾性シート、例えば弾性フィルム30が介在されるとともに、
図9に示されるように、第1シート層20A及び第2シート層20Bが、間隔を空けて配列された多数のシート接合部40で弾性フィルム30を貫通する接合孔31を通じて接合された弾性シート伸縮構造20Xを有している。
上記おむつへの適用形態においては、弾性シート(
図9の例では弾性フィルム30)伸縮方向EDは、おむつの幅方向WDとされている。
【0029】
第1シート層20A及び第2シート層20Bは、弾性フィルム30の接合孔31を通じてではなく、弾性フィルム30を介して間接的に接合されていても良い。外装体20の平面形状は、中間部Lの幅方向両側縁がそれぞれ脚開口を形成するように凹状の脚周りライン29により形成されており、全体として砂時計に似た形状をなしている。外装体20は、前身頃F及び後身頃Bで個別に形成し、両者が股間部でおむつの前後方向LDに離間するように配置しても良い。
【0030】
図1及び
図2に示す形態は、弾性シート伸縮構造20Xがウエスト端部23まで延在されている形態であるが、ウエスト端部23に弾性シート伸縮構造20Xを用いると、ウエスト端部23の締め付けが不十分になる等、必要に応じて、
図7及び
図8に示すようにウエスト端部23には弾性シート伸縮構造20Xを設けずに、従来の細長状のウエスト部弾性部材24による伸縮構造を設けることもできる。ウエスト部弾性部材24は、前後方向LDに間隔をおいて配置された複数の糸ゴム等の細長状弾性部材であり、身体の胴周りを締め付けるように伸縮力を与えるものである。ウエスト部弾性部材24は、間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように前後方向に3~8mm程度の間隔を空けて、3本以上、好ましくは5本以上配置される。ウエスト部弾性部材24の固定時の伸長率は適宜定めることができるが、通常の成人用の場合230~320%程度とすることができる。ウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えば平ゴム等、他の細長状の伸縮部材を用いても良い。図示しないが、ウエスト端部23に弾性フィルム30を設けるとともに、弾性フィルム30と重なる位置に細長状のウエスト部弾性部材24を設け、両方の弾性部材による伸縮構造とすることもできる。また、図示形態では、外装体20における脚開口の縁部分には、脚開口に沿って延びる細長状弾性部材は設けられていないが、当該縁部分における弾性フィルム30と重なる位置に、又は当該縁部分の弾性フィルム30に代えて、細長状弾性部材を設けることもできる。
【0031】
他の形態としては、図示しないが、前身頃Fの胴周り部Tと後身頃Bの胴周り部Tとの間の中間部Lには弾性シート伸縮構造20Xを設けない形態としたり、前身頃Fの胴周り部T内から中間部Lを経て後身頃Bの胴周り部T内まで前後方向LDに連続的に弾性シート伸縮構造20Xを設けたり、前身頃F及び後身頃Bのいずれか一方にのみ弾性シート伸縮構造20Xを設けたりすること等、適宜の変形も可能である。
【0032】
本発明では、接合部の配置に特徴を有する。この特徴を明らかにするために従来例の接合部の配置について具体的に説明しておく。
【0033】
(接合部の形態)
本発明に係る接合部の形態について種々の例を挙げながら説明する。
図9は特許文献1に代表例として示されたものである。
すなわち、接合部40群は、千鳥状配列とされ、接合部40は伸縮方向と直交する方向に細長く、かつ伸縮方向の中央を通る中央線に関して線対称(
図9(a)において左右対称)の形状とされており、接合部40の伸縮方向の幅40xは好ましくは0.2~0.4mmとされ、伸縮方向に並ぶ接合部40の間隔d1は3~12.9mm、より好ましくは5~6.4mmとされ、伸縮方向と直交する方向に並ぶ接合部40の間隔d2は2~10.5mm、より好ましくは2.3~4.6mmとされたものである。
このように、伸縮方向の幅40xが顕著に狭い接合部40が、伸縮方向にある程度広い離間間隔d1で千鳥状に配列されるとともに、弾性フィルム30の収縮力が各接合部40に対して直接的に作用し、弾性フィルム30の接合孔31の位置に各接合部40の配置・間隔がしっかりと維持される結果、柔軟性が低下しにくい。また、襞25fが伸縮方向と直交する方向に沿って殆ど真っ直ぐに延び、しかも、その襞25fと襞25fとの間に接合部40が隠れて目立たなくなる。よって、柔軟性の低下を抑えつつ、より布に近い外観の弾性シート伸縮構造20Xとなる。
【0034】
これに対して接合部40の配列は千鳥状配列であるものの、接合部40の形状を円形とすると、皺の襞25fと襞25fとの間に接合部40がはっきりと視認されるだけでなく、襞25fが接合部40を大きく回り込むようにして伸縮方向と直交する方向に伸びるため、全体として波線状の襞25fが形成され、布のような外観が得られない傾向がある。
【0035】
このような観点から、接合部40の形状は伸縮方向と直交する方向に細長いものが望ましい。しかるに、接合部40の伸縮方向と直交する方向の最大長さが短すぎたり、長過ぎたりすると、襞25fの直線性が低下したり、柔軟性が低下したりするおそれがある。よって、これらの寸法は適宜定めることができるものの、接合部40の伸縮方向と直交する方向の長さ40yは0.4~3.2mm、特に0.7~1.4mmであることが好ましいとされている。
【0036】
他方、特許文献2(特開2015-204982号公報)では、
図10(a)(b)に示す2例とも、伸縮性フィルムの開口部(やや縦長の長方形で図示されている)の配列は同じく千鳥状配列であり、(b)の例では小円形の副接合部が長方形の主開口部間に配置されているものである。(b)例においても千鳥状配列の思想に基づくものである。
そして、各開口部の配置及び寸法は、
図10に記載した寸法範囲(単位はmmである。)であることが、主に外観、肌触り及び通気性などの点が好ましいとしている。
【0037】
特許文献1及び2の両発明は、縦長の開口部を開示するとともに、千鳥状の配置を開示している。
しかし、従来例では、伸縮方向と直交する方向の、弾性フィルムの開口部間の離間間隔が大きく設定してあるので、伸縮方向の伸縮応力が高く、例えばパンツ型使い捨ておむつに適用した場合に過度に(幅方向に)強く締め付けることになると感じる着用者も少なからず存在する。
ここで、特許文献2においては、
図10に示す開口部長さBが0.3~0.7mm、離間間隔Hが0.6~1.4mmと好ましいとされているが、
(隣接する第1接合部間の離間距離)/(接合部の一点から隣接する第1接合部の対応する一点までの距離)の百分率を計算してみると、(0.3~0.7mm)/(0.6~1.4mm)=21.4~183%であり、計算上の下限値は小さいものの、現実には大きな値を想定しているものと思われる。
【0038】
これに対して、本出願人は、
図11に示すように、伸縮方向WD(ED)と直交する方向(図面では上下方向:符号LDの方向)の、弾性フィルムの開口部間の離間間隔を小さく設定すると伸縮方向の伸縮応力を小さくでき、もって、パンツ型使い捨ておむつに適用した場合に弱い締付力により着用者に対してやさしくフィットさせることが可能であることを知見している。
この理由は、開口部は、外部からの幅方向(弾性フィルムの伸縮方向)に小さい伸長力を与えるだけで、
図9のように幅方向に開口して接合孔31となるのに対し、開口部間の伸縮方向と直交する離間間隔領域では、幅方向に伸長させたとしても、開口部は存在しないので、弾性フィルムの伸長応力がそのまま収縮力となって着用者を締め付けるようになるためであると考えられる。
【0039】
図11に示す形態は、着用者に対してやさしくフィットさせることができるほか、接合部が占める面積率、幅方向に伸長した使用状態においては接合孔の占める面積率が高くなるので通気性に優れるとの利点ももたらされる。
しかし、
図11(a)に示す形態の製品における使用形態では、直交方向LDに沿った接合部40,40…の列と、これと伸縮方向WD(ED:幅方向)に離間する隣接する接合部40,40…の列との離間領域に、直交方向LDに沿った皺が形成される。この皺25Fは、
図11(b)に示すように、単に一様の山形状である。すなわち、特許文献2に示され、ここに
図9(c)に示す横断面と異なる。
図11に示す形態を、製品の伸縮領域全体としてデザインの観点からみたとき、直交方向LDに長い皺25Fが伸縮方向ED(WD)に一様の繰り返しで形成されているだけの、ともすれば単純なデザインであり、商品のアピール性が小さいものとなる。
【0040】
特に好ましい接合部の実施の形態について、以下代表例を挙げながら順次説明する。
【0041】
<第1実施例>
図12に示す第1実施例に係る伸縮部材においては、通気性を有する第1シート層及び通気性を有する第2シート層の間に弾性シートが介在され、前記第1シート層及び第2シート層が、間隔を空けて配列された多数のシート接合部で、弾性シートを貫通する接合孔を通じて又は前記弾性シートを介して接合された、弾性シート伸縮構造を備えている。
また、前記弾性シート伸縮構造を示す伸縮領域は、前記弾性シートの収縮力により伸縮方向に伸縮可能である。
本発明においては、前記接合部は、第1接合部40,40…のほか、第2接合部41,41…を有する。
【0042】
第1接合部40,40…は、直交方向LDに沿って間隔をおいて配列され、第1接合部列が形成されている。
後に例えば第8実施例として
図19によって説明するように、第1接合部40,40…列は、直交方向LDに沿うことなく、伸縮方向EDと交差する角度θが30度~150度の範囲で傾斜している(したがって90度は含まない)、より望ましくは45度~135度の範囲で傾斜している(90度は含まない)のが望ましい。
第1実施例では、傾斜していない交差する角度θが90度の例である。
【0043】
第1接合部40は、直交方向LD基準の長さLが0.3~7.0mm、好ましくは0.5~5.0mm、特に好ましくは0.7~2.5mmで形成される。
また、第1接合部40,40…列は、伸縮方向ED(WD)基準の形成ピッチS0が2.0~20.0mm、好ましくは3.0~15.0mm、特に好ましくは4.0~10.0mmで形成される。
【0044】
さらに、第1接合部40,40…列における隣接する第1接合部40,40相互関係が定める、直交方向LD基準での距離として、
(隣接する第1接合部間の離間距離d)/(接合部の一点から隣接する第1接合部の対応する一点までの距離P)の割合の百分率Rが5~60%、好ましくは10~45%、特に20~35%とするのが望ましい。
この百分率が過度に高いと、製品に適用した場合、幅方向(伸縮方向)の伸縮応力が高く着用物品として適切なフィット性を得がたい傾向を示す。
また、百分率が過度に低いと、直交方向LDに隣接する第1接合部40,40相互が製造過程で連続化する可能性を排除できないとともに、より根本的には、接合部を形成するアンビル及び加熱ホーンに過度に設備的な負担がかかり、安定操業を阻害する原因になる可能性がある。
【0045】
第2接合部41,41列内には、第1接合部40の長さL及びこれ以上の長さの接合部は形成されていないのが望ましい。この観点からも、
図10の態様とはまったく異なるものである。
【0046】
上記第1実施例においては、代表的に次の利点又は特徴を示すものとなる。
(1)前記百分率Rが低いので、伸縮方向の伸縮応力が低く、柔軟な伸びを有した伸縮シート部材となり、これを吸収性物品に適用した場合に着用感に優れたものとなる。
しかも、開口率が高くなるので通気性が高くなる。
(2)第1接合部40,40…列のみでなく、第2接合部41,41…列が形成されているので、第1接合部40,40…列と第2接合部41,41…列との間に列間プリーツRを形成できる。
(3)第2接合部41は、第1接合部40より小さい面積を示すので、模様状のものに見える。
(4)第1接合部40,40…列と第2接合部41,41…列との間に列間プリーツRを形成できることは、第1接合部40,40…列と第1接合部40,40…列との間に2つの列間プリーツを形成できることを意味する。しかしながら、第2接合部41,41…列では第2接合部41,41相互の間隔が長いので、アンビル及び加熱ホーンに過度に設備的な負担がかかることなくプリーツを形成できることを意味する。その結果、
図11のように第1接合部40,40…列のみで列間プリーツを形成する場合に比較して、単位面積あたり細幅で多数のプリーツを設備負担をかけることなく形成できる。
かくして、着用者の肌に対する接触面積が低減し、快適性の向上と柔らかさの向上を図ることができる。
【0047】
<第2実施例>
図13に示すように、第2接合部41,41…群を、第1接合部40,40の直交方向LDの相互間に配置することができる。この場合は、第1接合部40の長さLが短くとも、第2接合部41が位置することで、伸縮応力を低減できる。
【0048】
<第3実施例>
図14に示すように、第2接合部41は、第1接合部40に対して1対1で隣接させるのではなく、例えば2つの第1接合部40,40に対して1つの第2接合部41を隣接配置する形態とすることができる。
【0049】
<第4実施例>
図15に示すように、第1接合部40,40…列と第2接合部41,41…列との間に、直交方向LDの離間間隔が長い第3接合部42,42…列を形成することができる。
第3接合部42の形成によって、第1実施例で示した列間プリーツRを、直交方向LDに分断した大プリーツbfを形成できる。
第3接合部42と第1接合部40,40…列との間に小プリーツsfを形成できる。
列間プリーツRが分断したプリーツ群は、伸縮部材の曲げ剛性が低く(曲がりやすく)、身体の動きに対する追従性が良好なものとなる。
【0050】
<第5実施例>
図16に示すように第3接合部42の位置を第2接合部41と共に斜め配列することで、斜め配列の大プリーツbf群を形成でき、デザイン性が高いものとなる。
【0051】
<第6実施例>
図17に示すように第1接合部40,40…列に第4接合部43を挿入配置できる。この場合、第4接合部43,43…群は、伸縮方向EDに沿うほか、図示のように斜め配置にするができる。この場合、第4接合部43の面積は、第1接合部40の面積の5%以上で50%以下が好ましい。
【0052】
<第7実施例>
図18に示すように第1接合部40自体が傾斜していてもよい。第2接合部41も傾斜していてもよい。
本発明においては、接合部長さは直交方向LDを基準とするから、
図18に示すように、第1接合部40の長さLは一辺の中央から他辺の中央部までの直交方向LD長さが接合部長さとなる。
離間間隔も辺の中央と対向する辺の中央との直交方向LD距離が離間距離dとなる。
【0053】
<第8実施例>
図19に示すように第1接合部40及び第2接合部41が共に傾斜しており、各接合部の列は、直交方向LDに沿うことなく、伸縮方向EDと交差する角度θが30度~150度、望ましくは45度~135度の範囲で傾斜している例を示している。交差する角度θは、特に好ましくは60度~120度である。ただし、傾斜を示すこれらの角度範囲においては当然に90度を含まない。
この接合部列が、直交方向LDに沿うことなく、伸縮方向EDと交差して傾斜している利点は、
図18に示す第7実施例とを比較すると明らかになる。すなわち、
図19に示す例においては、直交方向LD線上についての、例えば第1接合部40,40間の離間間隔が、
図18に示す第7実施例よりかなり大きいことが利点をもたらす原因である。
【0054】
すなわち、例えば、シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合は、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着による接合手段によりなされるのが望ましい。
連続生産の場合には、アンビルロールと超音波ホーンとの間で超音波によるシール溶融を行うが、エネルギーロスを防ぐために、アンビルロールの軸線方向全体に、シートに対して超音波ホーンも密接していることが重要となるが、このために線接触する母線に沿って
図12の接合部40,40…列のようにアンビルロール凸部割合が大きいパターンを形成する場合には大きな超音波出力を出す必要があり、このために線接触する母線に沿って過大な密接力を作用させるのでは、設備側の負担が大きい。
これに対して、
図19に示す第8実施例の場合(一般に傾斜配置の場合)には、直交方向LDの線上に位置する接合部が占める割合が小さいものとなり、安定した線圧となるので、設備負担は小さいものとなり、安定操業が可能である。
図19に示す第8実施例では、第1接合部40(及び第2接合部41)が傾斜しているために、デザイン性に優れた襞及びプリーツを形成できる利点もあわせ持っている。
【0055】
<第9実施例>
図20に示す第9実施例は、第1接合部40,40…列及び第接合部41,41…列を伸縮方向ED方向に振れる波形曲線に沿う態様としたものである。
波形曲線の配列は、美観に優れたものとなる。
【0056】
<第10実施例>
図21に示す第10実施例は、大プリーツbfが、直交方向LDに振れる波形曲線に沿う態様としたものである。この波形曲線の配列も、美観に優れたものとなる。
【0057】
<第11実施例>
図22に示す第11実施例は、第1接合部40,40…列及び第2接合部41,41…列を伸縮方向ED方向に振れる波形曲線に沿うとともに、傾斜する大プリーツbfが、直交方向LDに振れる波形曲線に沿う態様としたものである。この波形曲線の配列は、複雑なプリーツの形成が可能であり、美観に優れたものとなる。
さらに、本発明の実施の形態を説明する。
【0058】
個々のシート接合部40及び接合孔31の自然長状態での形状は、既述の長方形のほか適宜定めることができる。例えば
図23に一例を示すように凸レンズ形(
図23(a)参照)、ひし形(
図23(b)参照)、凹レンズ形(
図23(c)参照)、楕円形(
図23(d)参照)のほか、真円形、三角形、多角形、あるい、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。
【0059】
接合孔31は、主に接合部40(41,42,43)の形状と、製造段階又は伸縮の程度に関係してくる。
【0060】
シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合は、弾性フィルム30に形成された接合孔31を通じて接合される場合、少なくともシート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20B間以外では、第1シート層20A及び第2シート層20Bは弾性フィルム30と接合されていないことが望ましい。
【0061】
シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合手段は特に限定されない。例えば、シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合はホットメルト接着剤によりなされていても、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着による接合手段によりなされていても良い。
【0062】
シート接合部40において第1シート層20A及び第2シート層20Bが弾性フィルム30の接合孔31を通じて接合される場合、シート接合部40が素材溶着により形成される形態は、シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の大部分又は一部の溶融固化物20mのみにより第1シート層20A及び第2シート層20Bが接合される第1溶着形態(
図24(a)参照)、シート接合部40における弾性フィルム30の全部若しくは大部分又は一部の溶融固化物30mのみにより第1シート層20A及び第2シート層20Bが接合される第2溶着形態(
図24(b)参照)、及びこれらの両者が組み合わさった第3溶着形態(
図24(c)参照)のいずれでも良いが、第2、第3溶着形態が好ましい。
特に好ましいのは、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部の溶融固化物20mと、シート接合部40における弾性フィルム30の全部若しくは大部分の溶融固化物30mとにより第1シート層20A及び第2シート層20Bが接合される形態である。なお、
図26(b)に示される第3溶着形態では、黒色に写っている第1シート層20A又は第2シート層20Bの繊維溶融固化物20m間に、白色に写っている弾性フィルム30の溶融固化物30mが見られるのに対して、
図26(a)に示される第1溶着形態では、第1シート層20A又は第2シート層20Bの繊維溶融固化物20m間に弾性フィルムの溶融固化物は見られない。
【0063】
第1接着形態や第3接着形態のように、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の大部分又は一部の溶融固化物20mを接着剤として第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合する場合、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部は溶融しない方がシート接合部40が硬質化しないため好ましい。
なお、第1シート層20A及び第2シート層20Bが不織布であるときには、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部が溶融しないことには、シート接合部40の全繊維について芯(複合繊維における芯だけでなく単成分繊維の中心部分を含む)は残るがその周囲部分(複合繊維における鞘だけでなく単成分繊維の表層側の部分を含む)は溶融する形態や、一部の繊維は全く溶融しないが、残りの繊維は全部が溶融する又は芯は残るがその周囲部分は溶融する形態を含む。
【0064】
第2溶着形態及び第3溶着形態のように、弾性フィルム30の溶融固化物30mを接着剤として第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合すると、剥離強度が高いものとなる。第2溶着形態では、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の融点が弾性フィルム30の融点及びシート接合部40形成時の加熱温度よりも高い条件下で、第1シート層20A及び第2シート層20B間に弾性フィルム30を挟み、シート接合部40となる部位を加圧・加熱し、弾性フィルム30のみを溶融することにより製造することができる。
一方、第3溶着形態では、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の融点が弾性フィルム30の融点よりも高い条件下で、第1シート層20A及び第2シート層20B間に弾性フィルム30を挟み、シート接合部40となる部位を加圧・加熱し、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方と弾性フィルム30とを溶融することにより製造することができる。
このような観点から、弾性フィルム30の融点は80~145℃程度のものが好ましく、第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点は85~190℃程度、特に150~190℃程度のものが好ましく、第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点と弾性フィルム30の融点との差は60~90℃程度であるのが好ましい。また、加熱温度は100~150℃程度とするのが好ましい。
【0065】
第2溶着形態及び第3溶着形態では、第1シート層20A及び第2シート層20Bが不織布であるときには、弾性フィルム30の溶融固化物30mは、
図25(c)に示すようにシート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの厚み方向全体にわたり繊維間に浸透していても良いが、
図25(a)に示すように厚み方向中間まで繊維間に浸透する形態、又は
図25(b)に示すように第1シート層20A及び第2シート層20Bの繊維間にほとんど浸透しない形態の方が、シート接合部40の柔軟性が高いものとなる。
【0066】
図27は、第2溶着形態及び第3溶着形態を形成するのに好適な超音波シール装置の例を示している。この超音波シール装置では、シート接合部40の形成に際して、外面にシート接合部40のパターンで形成した突起部60aを有するアンビルロール60と超音波ホーン61との間に、第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bを送り込む。この際、例えば上流側の弾性フィルム30の送り込み駆動ロール63及びニップロール62による送り込み移送速度を、アンビルロール60及び超音波ホーン61以降の移送速度よりも遅くすることにより、送り込み駆動ロール63及びニップロール62によるニップ位置からアンビルロール60及び超音波ホーン61によるシール位置までの経路で、弾性フィルム30をMD方向(マシン方向、流れ方向)に所定の伸長率まで伸長する。この弾性フィルム30の伸長率は、アンビルロール60及び送り込み駆動ロール63の速度差を選択することにより設定することができ、例えば300%~500%程度とすることができる。62はニップロールである。
アンビルロール60と超音波ホーン61との間に送り込まれた、第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bは、この順に積層した状態で、突起部60aと超音波ホーン61との間で加圧しつつ、超音波ホーン61の超音波振動エネルギーにより加熱し、弾性フィルム30のみを溶融するか、又は第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方と弾性フィルム30とを溶融することによって、弾性フィルム30に接合孔31を形成するのと同時に、その接合孔31を通じて第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合する。したがって、この場合にはアンビルロール60の突起部60aの大きさ、形状、離間間隔、ロール長方向及びロール周方向の配置パターンなどを選定することにより、シート接合部40の面積率を選択することができる。
【0067】
接合孔31が形成される理由は必ずしも明確ではないが、弾性フィルム30におけるアンビルロール60の突起部60aと対応する部分が溶融して周囲から離脱することにより開孔するものと考えられる。この際、弾性フィルム30における、伸縮方向EDに並ぶ隣接する接合孔31の間の部分は、
図9(a)及び
図11(a)に示すように、接合孔31により伸縮方向両側の部分から切断され、収縮方向両側の支えを失うことになるため、収縮方向と直交する方向の連続性を保ちうる範囲で、伸縮方向EDと直交する方向LDの中央側ほど伸縮方向中央側に釣り合うまで収縮し、接合孔31が伸縮方向EDに拡大する。
【0068】
第1シート層20A及び第2シート層20Bの構成材は、シート状のものであれば特に限定無く使用できるが、通気性及び柔軟性の観点から不織布を用いることが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。
加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは10~25g/m2程度とするのが好ましい。また、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部又は全部は、一枚の資材を折り返して対向させた一対の層であっても良い。例えば、図示形態のように、ウエスト端部23では、外側に位置する構成材を第2シート層20Bとし、かつそのウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20Cを第1シート層20Aとして、その間に弾性フィルム30を介在させるとともに、それ以外の部分では内側に位置する構成材を第1シート層20Aとし、外側に位置する構成材を第2シート層20Bとして、その間に弾性フィルム30を介在させることができる。もちろん、前後方向LDの全体にわたり第1シート層20Aの構成材及び第2シート層20Bの構成材を個別に設け、構成材を折り返しすることなく、第1シート層20Aの構成材及び第2シート層20Bの構成材間に弾性フィルム30を介在させることもできる。
【0069】
弾性フィルム30は特に限定されるものではなく、それ自体弾性を有する熱可塑性樹脂フィルムであれば、無孔のものの他、通気のために多数の孔やスリットが形成されたものも用いることができる。特に、幅方向WD(伸縮方向ED、MD方向)における引張強度が8~25N/35mm、前後方向LD(伸縮方向と直交する方向LD、CD方向)における引張強度が5~20N/35mm、幅方向WDにおける引張伸度が450~1050%、及び前後方向LDにおける引張伸度が450~1400%の弾性フィルム30であると好ましい。弾性フィルム30の厚みは特に限定されないが、20~40μm程度であるのが好ましい。
【0070】
(伸縮領域)
外装体20における弾性シート伸縮構造20Xを有する領域は、幅方向WDに伸縮可能な伸縮領域を有している。伸縮領域80では、弾性フィルム30が幅方向WDに沿って直線的に連続する部分32(
図12(a)参照)を有しており、かつ弾性フィルム30の収縮力により幅方向WDに収縮しているとともに、幅方向WDに伸長可能となっている。より具体的には、弾性フィルム30を幅方向WDに伸長した状態で、幅方向WD及びこれと直交する前後方向LD(伸縮方向と直交する方向LD)にそれぞれ間隔を空けて、弾性フィルム30の接合孔31を介して第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合し、多数のシート接合部40を形成することにより、弾性シート伸縮構造20Xを形成するとともに、伸縮領域80では弾性フィルム30が幅方向WDに沿って直線的に連続する部分32(
図12(a)参照)を有するように接合孔31を配置することによって、このような伸縮性を付与することができる。
【0071】
伸縮領域は、自然長状態では、
図9及び
図12(b)に示すように、シート接合部40間の第1シート層20A及び第2シート層20Bが互いに離間する方向に膨らんで、前後方向LDに延びる収縮皺25f,25Fが形成され、幅方向WDにある程度伸長した装着状態でも、収縮皺25Fは伸ばされるものの、残るようになっている。また、図示形態のように、第1シート層20A及び第2シート層20Bは、少なくともシート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20B間以外では弾性フィルム30と接合されていないと、装着状態を想定した
図9(c)、及び、第1シート層20A及び第2シート層20Bの展開状態を想定した
図9(a)からも分かるように、これらの状態では、弾性フィルム30における接合孔31と、シート接合部40との間に隙間が形成され、弾性フィルム30の素材が無孔のフィルムやシートであっても、この隙間により通気性が付加される。また、自然長状態では、弾性フィルム30のさらなる収縮により接合孔31がすぼまり、接合孔31とシート接合部40との間に隙間がほとんど形成されない。
【0072】
伸縮領域80の幅方向WDの弾性限界伸びは200%以上(好ましくは265~295%)とすることが望ましい。伸縮領域80の弾性限界伸びは、製造時の弾性フィルム30の伸長率によってほぼ決まるがこれを基本として、幅方向WDの収縮を阻害する要因により低下する。このような阻害要因の主なものは、幅方向WDにおいて単位長さ当たりに占めるシート接合部40の長さLの割合であり、この割合が大きくなるほど弾性限界伸びが低下する。通常の場合、シート接合部40の長さLはシート接合部40の面積率と相関があるため、伸縮領域80の弾性限界伸びはシート接合部40の面積率により調整できる。
【0073】
伸縮領域80の伸長応力は、主に弾性フィルム30が幅方向WDに沿って直線的に連続する部分32(
図12(a)参照)の直交方向LD距離(離間距離d)の総和により調整することができる。
【0074】
伸縮領域80におけるシート接合部40の面積率及び個々のシート接合部40の面積は適宜定めることができるが、通常の場合、次の範囲内とするのが好ましい。
シート接合部40の面積:0.14~3.5mm2(特に0.14~1.0mm2)
シート接合部40の面積率:1.8~19.1%(特に1.8~10.6%)
【0075】
このように、伸縮領域80の弾性限界伸び及び伸長応力はシート接合部40の面積により調整できるため、
図7に示すように、伸縮領域80内にシート接合部40の面積率が異なる複数の領域を設け、部位に応じてフィット性を変化させることができる。
図7に示す形態では、脚開口の縁部伸縮領域82を設け、この縁部伸縮領域82を、それ以外の領域と比べてシート接合部40の面積率が高く、従って伸長応力が弱く、柔軟に伸縮する領域としてある。
【0076】
(非伸縮領域)
外装体20における弾性シート伸縮構造20Xを有する領域には、
図7に示すように、伸縮領域80の少なくとも幅方向一方側に非伸縮領域70を設けることができる。伸縮領域80及び非伸縮領域70の配置は適宜定めることができる。本実施形態のようなパンツタイプ使い捨ておむつの外装体20の場合、吸収体13と重なる部分は伸縮が不要な領域であるため、図示形態のように、吸収体13と重なる部分の一部又は全部(内外固定領域10Bのほぼ全体を含むことが望ましい)を非伸縮領域70とするのは好ましい。もちろん、吸収体13と重なる領域からその幅方向WD又は前後方向LDに位置する吸収体13と重ならない領域にかけて非伸縮領域70を設けることもでき、吸収体13と重ならない領域にのみ非伸縮領域70を設けることもできる。
【0077】
非伸縮領域70は、弾性フィルム30は幅方向WDに連続するものの、接合孔31の存在により幅方向WDに沿って直線的に連続する部分を有しない領域とされている。したがって、弾性フィルム30を幅方向WDに伸長した状態で、幅方向WD及びこれと直交する前後方向LDにそれぞれ間隔を空けて、弾性フィルム30の接合孔31を介して第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合し、多数のシート接合部40を形成することにより、伸縮領域80及び非伸縮領域70の両者を含む弾性シート伸縮構造20X全体を形成するとしても、非伸縮領域70では、弾性フィルム30が幅方向WDに沿って直線的に連続しないため、弾性フィルム30の収縮力が第1シート層20A及び第2シート層20Bにほとんど作用せず、伸縮性がほぼ消失し、弾性限界伸びは100%に近くなるのである。
このような非伸縮領域70では、第1シート層20A及び第2シート層20Bが間隔を空けて配列された多数のシート接合部40で接合されており、シート接合部40が連続的とならないため、柔軟性の低下は防止される。
【0078】
非伸縮領域70における弾性フィルム30における接合孔31の配列パターンは適宜定めることができる。
非伸縮領域におけるシート接合部40の面積率及び個々のシート接合部40の面積は適宜定めることができるが、通常の場合、次の範囲内とすると、各シート接合部40の面積が小さくかつシート接合部40の面積率が低いことにより非伸縮領域70が硬くならないのが好ましい。
シート接合部40の面積:0.10~0.75mm2(特に0.10~0.35mm2)
シート接合部40の面積率:4~13%(特に5~10%)
【0079】
上記例においては、弾性シートとして弾性フィルムを使用している。しかし、弾性不織布を使用することもできる。また、弾性フィルムの片側又は両側に弾性不織布を設け、これを1シート層20Aと第2シート層20Bの間に介在させることができる。
【0080】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前身頃」「後身頃」は、パンツタイプ使い捨ておむつの前後方向中央を境としてそれぞれ前側及び後側の部分を意味する。また、股間部は、パンツタイプ使い捨ておむつの前後方向中央を含む前後方向範囲を意味し、吸収体が括れ部を有する場合には当該括れ部を有する部分の前後方向範囲を意味する。
・「弾性限界伸び」とは、伸縮方向EDにおける弾性限界(換言すれば第1シート層及び第2シート層が完全に展開した状態)の伸びを意味し、弾性限界時の長さを自然長を100%としたときの百分率で表すものである。
・「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えば伸縮領域80、非伸縮領域70)における対象部分(例えばシート接合部40、接合孔31の開口、通気孔)の総和面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものであり、特に伸縮構造を有する領域における「面積率」とは、伸縮方向EDに弾性限界まで伸ばした状態の面積率を意味するものである。対象部分が間隔を空けて多数設けられる形態では、対象部分が10個以上含まれるような大きさに対象領域を設定して、面積率を求めることが望ましい。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、10倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・吸収体の「厚み」は、株式会社尾崎製作所の厚み測定器(ピーコック、ダイヤルシックネスゲージ大型タイプ、型式J-B(測定範囲0~35mm)又は型式K-4(測定範囲0~50mm))を用い、試料と厚み測定器を水平にして、測定する。
・上記以外の「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
・「引張強度」及び「引張伸度(破断伸び)」は、試験片を幅35mm×長さ80mmの長方形状とする以外は、JIS K7127:1999「プラスチック-引張特性の試験方法-」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとして測定される値を意味する。引張試験機としては、例えばSHIMADZU社製のAUTOGRAPH AGS-G100Nを用いることができる。
・「伸長応力」とは、JIS K7127:1999「プラスチック-引張特性の試験方法-」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとする引張試験により、弾性領域内で伸長するときに測定される引張応力(N/35mm)を意味し、伸長の程度は試験対象により適宜決定することができる。試験片は幅35mm、長さ80mm以上の長方形状とすることが好ましいが、幅35mmの試験片を切り出すことができない場合には、切り出し可能な幅で試験片を作成し、測定値を幅35mmに換算した値とする。また、対象領域が小さく、十分な試験片を採取できない場合であっても、伸長応力の大小を比較するのであれば、適宜小さい試験片でも同寸法の試験片を用いる限り少なくとも比較は可能である。引張試験機としては、例えばSHIMADZU社製のAUTOGRAPH AGS-G100Nを用いることができる。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。特に接合部の寸法は、限界まで展開した状態(第1シート層及び第2シート層が破断する前の状態)における寸法であって、アンビルロールにおける接合部パターン寸法と実質的に一致する。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【0081】
<切り裂き限界部>
本発明は、パンツタイプ使い捨て着用物品において、廃棄時にサイドシール部を引き裂き、前身頃と後身頃とに分離する際に、横方向の引き裂きに転換されることを防止することを課題としている。
【0082】
幅方向の伸縮部材として糸ゴムを幅方向に沿って配置したパンツタイプ使い捨て着用物品においては、
図28に示すように、廃棄時にサイドシール部21を引き裂いて前身頃Fと後身頃Bとに分離することが容易である。通常は、サイドシール部21の前身頃F部分と後身頃B部分とに層間剥離する態様で、前身頃Fと後身頃Bとに分離することができる。
【0083】
第1シート層20A及び第2シート層20Bの間に弾性フィルム30が介在され、第1第1シート層20A及び第2シート層20Bが、幅方向及び前後方向に間隔を空けて配置された多数の融着による点状の接合部で接合された、弾性シート伸縮構造を有するパンツタイプ使い捨て着用物品においては、廃棄時にサイドシール部21を引き裂き、前身頃Fと後身頃Bとに分離する際に、横方向の引き裂きに転換される場合がある。
この具体的な一例について説明する。
すなわち、
図29に示す例は、
図12に示す接合部40,41が形成されるとともに、弾性部材24としての糸ゴムがウエスト部分に設けられたものである。サイドシール部21は、超音波接合によるシール部21aが前後方向に間欠的に設けられることにより形成される。
シール部21aの幅w及び高さhは適宜選定されるが、その一例は、幅wが3.5mm、高さhが0.2mmである。
【0084】
この種の形態のパンツタイプ使い捨て着用物品において、廃棄時にサイドシール部21を引き裂き、前身頃Fと後身頃Bとに分離する際における現象例は次のとおりである。
片方の手で前身頃Fのウエスト開口縁部を摘まみ、他方の手で後身頃Bのウエスト開口縁部を摘まみ、両者が離れるように前後に引き裂く。この引き裂きに際しては、幅方向の伸縮手段として糸ゴムを配置した形態においては、サイドシール部21の前身頃F部分と後身頃B部分とに層間剥離することが多いが、幅方向の伸縮手段として弾性フィルムを設けた形態においては、
図29に示すように、サイドシール部21のやや内側(幅方向中央側)において引き裂かれることが多い。
この現象が生じる理由は、前身頃Fの第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bからなる前身頃素材と、後身頃Bの第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bからなる後身頃素材とを、サイドシール部21を形成するためのシール部21aによって接合する際に、前身頃Fの弾性フィルム30及び前身頃Bの弾性フィルム30が溶融して、それぞれ前身頃Fの第1シート層20A及び後身頃Bの第1シート層20Aを浸透し相互に接合するようになるために、サイドシール部21が前身頃F部分と後身頃B部分とに層間剥離することなく、サイドシール部21のやや内側(幅方向中央側)において引き裂かれるものと推測される。
【0085】
さらに引き裂きを続行すると、
図29、
図30に示すように、ある位置において、サイドシール部21から離れて、おむつの中央側に符号Sで示すように横裂けが生じることがある。この横裂けSが生じると、サイドシール部21に沿って、脚周りライン29まで引き裂くことができないことになる。その結果、前身頃Fと後身頃Bとに分離することができないことになる。
【0086】
この横裂けSが生じる理由は定かではないが、横裂けSが開始する位置に近傍では小さい孔S1の発生及び残存領域Zをみることができる。このことからすれば、残存領域Zが縦裂けの力を阻止する抵抗となり、その代わりに、接合部40,40間の幅方向WDに沿う連続する部分32が弱い部分として、その部分32に沿って切り裂きが生じるものと考えられる。
残存領域Zは、シール部21a,21a間の離間部分21bであり、弾性フィルム30が固定されていない部分であるために、離間部分21b及び残存領域Zが自身の伸びによって縦裂けの力を阻止する抵抗となるものと考えられる。
【0087】
本発明は、例えば
図31に示すように、サイドシール部21と20mm以内、より望ましくは10mm以内、特に望ましくは5mm以内の離間距離50dをもった位置において、前後方向(縦方向)に沿って、第1シート層20A及び第2シート層20Bが融着接合している、切り裂き限界部50を形成する。
【0088】
切り裂き限界部50は、
図31に示すように、弾性シート(弾性フィルム)30の前後方向長さの50%以上、より望ましくは80%以上、特に望ましくは90%以上の前後方向長さにわたる長さをもって連続しているものである。
【0089】
かかる形態では、切り裂き限界部50が壁となり、横裂けSを防止でき、切り裂き限界部50とサイドシール部21との間で前後方向(縦方向)に沿って切り裂きを行うことができ、前身頃Fと後身頃Bとに分離することができる。
【0090】
切り裂き限界部50は、
図32に示すように、弾性シート(弾性フィルム)30の前後方向長さの50%以上の長さ範囲内において、例えば前後方向に3mm以内の離間間隔50hを置いた複数の切り裂き限界部50a、50aとすることもできる。
【0091】
切り裂き限界部50又は切り裂き限界部50a、50a群の前後方向(縦方向)の形成範囲を、50%以上とする理由は、50%未満では横裂けSの発生頻度が多くなるからである。
他方で、弾性シート(弾性フィルム)30の前後方向長さの100%又はその近傍の長さ範囲としていない理由は次のとおりである。
ウエスト開口縁部に近い切り裂き開始からの初期部分においては、摘まんでいる各手が切り裂きの方向を定めているために横裂けSが生じ難く、切り裂きの中盤から終盤にかけては、脚周りライン29近くを各手により摘まむものではない自由部分であり、切り裂きの方向を定めることができず横裂けSが生じ易い傾向にある。よって、前記初期部分については、切り裂き限界部50又は切り裂き限界部50a、50a群を形成する要請は少ないからである。
したがって、切り裂き限界部50又は切り裂き限界部50a、50a群を形成する領域は、脚周りライン29側に偏在させるのが望ましい。
【0092】
切り裂き限界部50又は切り裂き限界部50a、50aの形成に際しては、接合部40、41、42、43の形成段階で同時に形成できる。
切り裂き限界部50又は切り裂き限界部50aの幅50wに限定はないが、1~20mmの範囲で選択できる。
切り裂き限界部50又は切り裂き限界部50aは、図示のように長方形のほか適宜の形状を選択できる。
【0093】
図32に示すように、切り裂き限界部50aが連続する部分32と交差する関係にあることが望ましい。
仮に、切り裂き限界部50a、50a間の離間間隔50h部分が連続する部分32の延長にあると、離間間隔50h部分から連続する部分32に向かって横裂けSを生じる可能性がある。
【0094】
他方で、
図29~
図32の図示例は、弾性シート(弾性フィルム)30がウエスト開口まで達していないが、
図1及び
図2に示す例のように、ウエスト開口まで達する形態であってもよい。
【0095】
また、
図29~
図32の図示例は、弾性シート(弾性フィルム)30がサイドシール部21の幅方向外縁まで延在している例である。また、点状の接合部40、41、42、43は、サイドシール部21の幅方向外縁まで延在している。
点状の接合部40、41、42、43は、サイドシール部21の幅方向外縁まで延在している必要はなく、適宜の位置、例えばサイドシール部21の内側までの範囲に形成されるものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、弾性シート伸縮構造を適用可能な伸縮領域を有するものである限り、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつの他、テープタイプ、パッドタイプ等の各種使い捨ておむつ、生理用ナプキン、スイミングや水遊び用の使い捨て着用物品等、使い捨て着用物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0097】
10…内装体、10B…内外固定領域、11…トップシート、12…液不透過性シート、13…吸収体、13N…括れ部分、14…包装シート、17…無吸収体側部、20…外装体、20A…第1シート層、20B…第2シート層、20C…折り返し部分、20X…弾性シート伸縮構造、21…サイドシール部、23…ウエスト端部、24…ウエスト部弾性部材、25F,25f…収縮皺、29…脚周りライン、30…弾性フィルム、31…接合孔、33…通気孔、40、40A、40B…シート接合部(第1接合部)、41…第2接合部、42…第3接合部、43…第4接合部、50,50a…切り裂き限界部、70…非伸縮領域、80…伸縮領域、82…縁部伸縮領域、90…立体ギャザー、93…倒伏部分、94…自由部分、95…ギャザーシート、96…ギャザー弾性部材、B…後身頃、ED…伸縮方向(幅方向)、F…前身頃、L…中間部、LD…直交方向(前後方向)、T…胴周り部。