(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】配管支持用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
F16L 3/24 20060101AFI20230615BHJP
F16L 3/00 20060101ALI20230615BHJP
F16L 3/08 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F16L3/24 Z
F16L3/00 D
F16L3/08 C
(21)【出願番号】P 2018184634
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】391039302
【氏名又は名称】株式会社昭和コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【氏名又は名称】岩田 敏
(72)【発明者】
【氏名】津久井 慎
(72)【発明者】
【氏名】中原 啓忠
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎治
(72)【発明者】
【氏名】本郷 善悟
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0149291(US,A1)
【文献】特開2010-266007(JP,A)
【文献】特開2008-240789(JP,A)
【文献】登録実用新案第3143248(JP,U)
【文献】特開2009-133430(JP,A)
【文献】特開2010-001978(JP,A)
【文献】特開2017-120113(JP,A)
【文献】米国特許第06224025(US,B1)
【文献】米国特許第09903524(US,B2)
【文献】中国実用新案第203892725(CN,U)
【文献】実開平02-090486(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0159759(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0108130(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を載置して支持するための長尺体からなる長尺体支持具と、被覆材で被覆された配管の配管被覆の潰れ又は破れを防ぐ目的で配管の長手方向に延伸させて被覆材の受圧面積を大きくした配管用受け具との間に介在させる配管支持用アタッチメントであって、配管用受け具の下面側に設けられた略T字型の係止突起をアタッチメントの係止孔へ差し込むことにより、
軸止するように係止孔と係止突起とが係止されて、アタッチメントに配管用受け具が取り付けられた状態になる第1取付機構を備えたことを特徴とする配管支持用アタッチメント。
【請求項2】
配管支持用アタッチメントが長尺体支持具との第2取付機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の配管支持用アタッチメント。
【請求項3】
配管支持用アタッチメントが長尺体支持具の長手方向へのスライドを可能とする摺動機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の配管支持用アタッチメント。
【請求項4】
配管支持用アタッチメントが長尺体支持具と敷設された配管との間に挿入が可能となる挿入機構を備えたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の配管支持用アタッチメント。
【請求項5】
配管用受け具が配管支持用アタッチメントに対して回動自在である第1取付機構を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の配管支持用アタッチメント。
【請求項6】
配管支持用アタッチメントが長尺体支持具に対して回動自在である第2取付機構を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の配管支持用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、アングルやチャンネル等の長尺体支持具に、被覆材で被覆された配管(例えば、被覆銅管等)を支持する配管支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アングルやチャンネル等の長尺体支持具に、被覆材で被覆された配管(例えば、被覆銅管等)を支持する配管支持構造において、従来は配管の自重による「配管被覆の潰れ」を防ぐ目的として、長尺体支持具の配管支持箇所の配管に対して保温テープを巻き、結露防止の措置をしていた。しかし、作業者の技術レベルにより、施工が不安定になることや、巻き数が足りないと必要な保温厚が確保できず、結露等につながることもあった。
【0003】
また、長尺体支持具(特に金属製であった場合)との接触が原因となる「配管被覆の破れ」を防ぐ目的として、塩ビ管の半割れ等(配管受け具)を用意し、長尺体支持具と配管との間に設けることで、長尺体支持具と配管被覆が接触することを原因(例えば、配管伸縮・偏荷重などでの摩擦・ひっかかり等)とする被覆の破れを避けるとともに、長尺体支持具の支持箇所の幅よりも長い幅の配管受け具にすることで、被覆材の受圧面積を大きく(長く)するような施工方法もある。しかし、長尺体支持具と配管受け具との固定が難しく、配管受け具が前後左右にずれてしまったり、配管受け具を現場で用意する際に切断加工等の手間が増える。
【0004】
こうした状況に対して、特許文献1~4に係る製品が開発された。
特許文献1及び2に係る製品は、配管敷設前に施工される先付け方式のものであるが、
図10に図示するように、その固定方法は、配管受け具に相当する結露防止プレート10を略U字形状のプレート保持具20に取り付けるとともに、そのプレート保持具20はその底部に突設した係止突起26を長尺体支持具Rに形成された長孔R1に挿入固定することで、長尺体支持具に配管を固定する構造となっている。
【0005】
特許文献3及び4に係る製品は、配管敷設後に施工される後付け方式のものであるが、
図11に図示するように、その固定方法は、長尺体支持具(配管支持具)と配管の間に配管受け具(配管用支持板)を差し込み、配管の自重を利用して長尺体支持具(配管支持具)と配管受け具(配管用支持板)の突起(位置ズレ防止リブ)を係止させることで、長尺体支持具に配管を固定する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-266007号公報
【文献】意匠登録第1381137号公報
【文献】意匠登録第1590688号公報
【文献】意匠登録第1590689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1及び2に係る製品については、次のような課題がある。
(1)長尺体支持具Rに形成された長孔R1の長孔径の範囲(指定された長孔径の範囲)でなければ固定できない。また、係止突起26を長孔R1に挿入固定する嵌め込み方式のため、負荷を掛けると外れる可能性もある(=ボルト・ナット等で確実に固定する方法がない)。さらには、この係止突起26がプレート保持具20の底部にあるため、配管敷設後の取り付け(後付け)には適さない(無理に後付けしようとすると、配管が大きく湾曲することになる)。
(2)配管を「雪だるま」のように保持するが(特許文献1
図9を参照)、配管受け具に相当する結露防止プレート10は緩やかな曲面しか形成されていないため、配管に合わせた曲面をプレート保持具20側で作る必要がある。そして、所定の配管径を逸脱した場合、隙間ができる又は大きく膨らんでしまう(施工できない)ため、プレート保持具20をその径に対応させる必要がある。
(3)確実な配管の保持には、プレート保持具20の頭頂部に専用の結束具(緊締具28)である専用品を用意する必要があり、一般的な支持具(Uバンドや樹脂製自在バンド等)を使用できない。
【0008】
上記特許文献3及び4に係る製品については、次のような課題がある。
(1)配管の自重を利用して長尺体支持具(配管支持具)と配管受け具(配管用支持板)の突起(位置ズレ防止リブ)を係止させるものであるため、配管敷設前の取り付け(先付け)ができない。すなわち、配管無しに配管受け具(配管用支持板)を単体で長尺体支持具(配管支持具)に設置することができない。
(2)敷設する配管は必ずしも直線ではないため(例えば、コイル状のものを現場で伸ばす場合がある)、施工箇所全てに均等に配管の自重がかかるわけではなく、かからない箇所では脱落する危険性がある。
(3)配管受け具(配管用支持板)を長尺体支持具(配管支持具)へ直接に固定する方法がないため、稼働後の配管の伸縮等で脱落する可能性がある。
【0009】
これに対して、本願発明者は、上記特許文献1乃至特許文献4に係る製品の課題を解決して、アングルやチャンネル等の長尺体支持具に被覆材で被覆された配管を容易且つ確実に支持する配管支持構造を提供すべく鋭意試験・研究を行い、本願発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の第1の発明は、長尺体支持具と配管用受け具との間に介在させる配管支持用アタッチメントであって、配管用受け具との第1取付機構を備えたことを特徴とするものである。
第2の発明は、配管支持用アタッチメントが長尺体支持具との第2取付機構を備えたことを特徴とする同配管支持用アタッチメントである。
第3の発明は、配管支持用アタッチメントが長尺体支持具の長手方向へのスライドを可能とする摺動機構を備えたことを特徴とする同配管支持用アタッチメントである。
第4の発明は、配管支持用アタッチメントが長尺体支持具と敷設された配管との間に挿入が可能となる挿入機構を備えたことを特徴とする同配管支持用アタッチメントである。
第5の発明は、配管用受け具が配管支持用アタッチメントに対して回動自在である第1取付機構を備えたことを特徴とする同配管支持用アタッチメントである。
第6の発明は、配管支持用アタッチメントが長尺体支持具に対して回動自在である第2取付機構を備えたことを特徴とする同配管支持用アタッチメントである。
【発明の効果】
【0011】
上記した本願発明によれば、上記特許文献1及び2に係る製品に比較して、次のような効果を有する。
(1)本願発明の配管支持用アタッチメント(以下、「アタッチメント」ともいう)は、アタッチメント単体で長尺体支持具に固定できる取付長孔(第2取付機構)を有しているため、ボルト・ナット等で確実な固定ができる。
(2)長尺体支持具への固定前には、長尺体支持具長手方向へスライド調整が可能である。
(3)予め長孔が開いている長尺体支持具(例えば、穴あきアングル)の場合、長尺体支持具に開いた長孔とアタッチメントの取付長孔どうし(第2取付機構)がどこでもボルト等の挿入可能なため(例えば、
図5参照)、施工位置に制約がない。
(4)アタッチメントに取り付ける配管用受け具には、配管に沿った曲面が形成されているため、配管径を問わず使用できる。
(5)配管用受け具のみを変更するだけで、多種の配管サイズに対応できる。
【0012】
上記した本願発明によれば、上記特許文献3及び4に係る製品に比較して、次のような効果を有する。
(1)本願発明の配管支持用アタッチメントは、アタッチメント単体で長尺体支持具に固定できる取付長孔(第2取付機構)を有しているため、ボルト・ナット等で確実な固定ができる。
(2)一般的な支持金具(例えば、UバンドやUボルト等)で施工する際には、アタッチメントごと保持するため、確実な固定が可能となる。また、結束バンド等での簡易的な固定も可能となる。
【0013】
上記した本願発明によれば、本願発明に特有の次のような効果を有する。
(1)配管用受け具の係止突起(第1取付機構)を軸とした、配管用受け具単体で回転が可能となる。また、第2取付機構での回転を可能とすることもできる。
(2)それによって、長尺体支持具と配管とが必ずしも直交である必要がない(特許文献1乃至特許文献4に係る製品は直交でしか施工ができない)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願発明の第1実施形態を示す説明図(その1)。
【
図2】本願発明の第1実施形態を示す説明図(その2)。
【
図3】本願発明の第1実施形態を示す説明図(その3)。
【
図4-1】本願発明の第1実施形態を示す説明図(その4)。
【
図4-2】本願発明の第1実施形態を示す説明図(その5)。
【
図5】本願発明の第1実施形態を示す説明図(その6)。
【
図6】本願発明の第1実施形態を示す説明図(その7)。
【
図7】本願発明の第1実施形態を示す説明図(その8)。
【
図8】本願発明の第2実施形態を示す説明図(その1)。
【
図9】本願発明の第2実施形態を示す説明図(その2)。
【
図10】特許文献1及び2に係る製品を示す説明図。
【
図11】特許文献3及び4に係る製品を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明の実施形態(一例)を図面に基づいて説明する。なお、図示された実施形態は本願発明の一例で有り、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
図1乃至
図6は、本願発明の第1実施形態を示す説明図である。
図1に図示するように、本願発明の配管支持用アタッチメント10(以下、「アタッチメント10」ともいう)は、配管受け具との第1取付機構となる係止孔11と、長尺体支持具との第2取付機構となる取付長孔12と、長尺体支持具の長手方向へスライドを可能とする摺動機構となる規制部13と、長尺体支持具と敷設された配管との間に挿入を可能とする挿入機構となる傾斜部14と、を備える。
【0017】
まず、第1取付機構について説明すると、
図2に図示するように、配管用受け具20の下面側に設けられた略T字型の係止突起21をアタッチメント10の係止孔11へ差し込むことにより、係止孔11と係止突起21とが係止されて、アタッチメント10に配管用受け具20が取り付けられた状態になる。この時、係止突起21が軸となり、配管用受け具20がアタッチメント10に対して回転(回動)可能となるので、配管(図示省略)の敷設方向に柔軟に対応できる。なお、第1取付機構は、図示のものに限定されるものではない。
【0018】
次に、第2取付機構について説明すると、
図3に図示するように、長尺体支持具であるアングル30にアタッチメント10を組み付けて、アタッチメント10の取付長孔12とアングル30に設けられている連結長孔31をボルト・ナット等の締結具60で接続することにより、アングル30にアタッチメント10が取り付けられた状態になる。この場合、配管用受け具20と配管50は別の締結具(例えば、結束バンド70,71等)で固定すればよい。
【0019】
また、第2取付機構についてその他の態様を説明すると、
図4-1に図示するように、長尺体支持具であるアングル30にアタッチメント10を組み付けて、アタッチメント10の取付長孔12とアングル30に設けられている連結長孔31を樹脂製バンド61やUボルト62(又はUバンド)等を使用して接続する。これにより、アングル30とアタッチメント10とだけでなく、配管用受け具20及び配管50も一括して固定できることになる。
【0020】
なお、
図4-2に図示するように、アングル30とアタッチメント10の接続は、結束バンド70でもよいし、図示省略するが、ボルト・ナットやテープ巻きなどであってもよい。
【0021】
更に、第2取付機構についてその他の態様を説明すると、
図5に図示(アタッチメント10を底部側から図示)するように、アングル30を一部の規制部13’,13’で両側から挟むことでアタッチメント10がアングル30に対して回転(回動)可能となっている。これにより、配管(図示省略)の敷設方向に柔軟に対応でき、
図2に図示する第1取付機構の回転(回動)と相伴うことで、より柔軟性が高まる。なお、第2取付機構は、
図3~
図5に図示されたものに限定されるものではない。
【0022】
次に、摺動機構について説明すると、
図6に図示するように、アタッチメント10に設けられた規制部13がアングル30の長手方向の両端部32に当接することにより、アタッチメント10のアングル30に対する可動範囲が規制されて、アングル30の長手方向へのスライドを可能とすることになる。なお、摺動機構は、図示のものに限定されるものではない。また、摺動機構だけではなく、アタッチメント10をアングル30に対して仮止めできる仮止め機構を設けてもよい。仮止め機構としては、図示省略するが、アングル30の幅寸法に合致した寸法に調整した一対の規制部13,13で挟み付けたり、規制部13に爪を設けたり、アングル30の連結長孔31に嵌合する突起等を設けることにより達成できるものである。
【0023】
また、挿入機構について説明すると、
図7に図示するように、長尺体支持具であるアングル30と敷設された配管50との間にアタッチメント10の傾斜部14を当てて、アタッチメント10を押し込むことにより挿入が可能となる(=後付け施工が可能となる)。
【0024】
図8は、本願発明の第2実施形態を示す説明図である。
図8に図示するアタッチメント10’が、
図1に図示するアタッチメント10と異なるのは、両先端部側に設けられる規制部13及び傾斜部14を内側へセットバックしている点にある。これにより、両先端部にコーナー部15を新たに設けることができて、
図9に図示するようにこのコーナー部15を利用して配管50及び配管用受け具20をバンド等でたすき掛けに固定することができるようになる。また、穿孔19を形成し、これを利用してバンド等で固定してもよい(第1実施形態において同じ)。
【0025】
なお、図示省略するが、敷設する配管50,50,…の間隔に応じて取付長孔12を備えないものや取付長孔12を欠け孔にしたり、なくしたりした短尺形状のアタッチメントにしてもよい(アタッチメントそのものを縮小してもよいし、中心部分のみを残したものであってもよい)。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本願発明に係る配管支持用アタッチメントは、アングルやチャンネル等の長尺体支持具に、被覆材で被覆された配管(例えば、被覆銅管等)を支持する配管支持構造として広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0027】
10 配管支持用アタッチメント(アタッチメント)
11 係止孔(第1取付機構)
12 取付長孔(第2取付機構)
13 規制部(摺動機構)
14 傾斜部(挿入機構)
15 コーナー部
19 穿孔
20 配管用受け具
21 係止突起(第1取付機構)
30 アングル(長尺体支持具)
31 連結長孔(第2取付機構)
32 両端部
50 配管
60 締結具(ボルト・ナット等)
61 樹脂製バンド
62 Uボルト
70 結束バンド
71 結束バンド